もしもキューが猛烈な反抗期だったら


時代:ジェスターのひとり言(シーズン15辺り)

キュピル
「うわっ!やべ!」
キュー
「ん?どうかしたのかー?」
キュピル
「この依頼の納品期限明日だ!!もう夜だが『やり忘れました』とか言えない!
ちょっとクライデン平原に行ってくる!」
キュー
「おーおー、アタシも手伝うぜ!」
キュピル
「頼む!」


ルイ
「キューさんってキュピルさんに対して物凄く従順ですね。」
ファン
「やっぱり父親だからだと思いますよ。」
ルイ
「でもあのぐらいの年齢ってそろそろ反抗期が訪れると思いますけど・・・反抗期が来たらどうなるんでしょうか?」
ファン
「・・・予測できませんが、我が家には常に反抗期の方が一人いらっしゃいますよ。」
ジェスター
「んー?何でこっち見てるの?・・・あー!悪口言ったね?わあああああああああああ!!!!」
ファン
「ヒ、ヒィィィィ」
ルイ
「・・・もしキューさんが反抗期だったら・・・うーん・・・・。」









もしもキューが猛烈な反抗期だったら










リビングでキュピルとキューがすれ違う。
二人とも何も言葉を交わす事なくお互いの目的に沿って進む。

ルイ
「最近キュピルさんとキューさん、険悪の仲ですね・・・。」
ファン
「初めはとても仲がよかったのに何処で入れ違いを起こしたのでしょうか?」
ジェスター
「見てるこっちもすごくピリピリする・・・。」

ジェスターが髪の毛を逆立てている。
不安といら立ちを感じているらしい。
その時、キュピルが振り返る。

・・・キューがポケットに何か分厚い物を突っ込んでいる。

キュピル
「キュー、ちょっと待った。ポケットに何を入れているんだ?」

呼びかけても止まらない。
そのまま外に出ようとしたためキューの肩の上に手を置いて制止させる。

キュピル
「キュー。」
キュー
「触んないで。汚い。」

キューがキュピルの手を振りほどき肩をパッパッとはたく。

ジェスター
「えー、キュピルの手汚いの?ちゃんと手洗ってるー?」
キュピル
「キューはそういう意味で言ったんじゃない・・・。」

キュピルが渋い顔をする。

キュピル
「キューの奴・・・本格的に反抗期を迎えたな・・・・。そろそろ手がつけられなくなってきた・・・。」
ファン
「対策を講じましょう。」
ルイ
「・・・でも対策が思いつきません・・。最近私達全員を拒否していますよね・・・。」
ジェスター
「勝手に未来が来て迷惑かけるなんて何か最悪ー。」
キュピル
「・・・うーむ・・・。」


・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・。


それから数日後。



キュピル
「・・・むぅ。」

・・・ここ最近ある事に悩まされている。
財布から時々お札が一枚だけ消えている。

ルイ
「どうかしましたか?」
キュピル
「誰かが勝手に俺の財布から金を盗んでいる。・・・一枚だけならばれないと思っているんだろうが
俺は貧乏人だ。一枚消えたら一大事件!
ルイ
「悲しくなるような事言わないでください・・・。
でも一体誰がお金をくすねているんでしょうか・・・。」
キュピル
「犯人は必ず身内。」
ルイ
「先に言っておきますけれど私じゃありませんからね?」
キュピル
「ルイの場合持っていくとしたら財布事だろうなぁ・・・。」
ルイ
「今何て言いましたか!!」
キュピル
「いででで!冗談!冗ー談ンンン!!!」


キュー
「・・・・・・。」



・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・。




ルイ
「皆さん、ご飯出来ましたので席についてくださいー。」
キュピル
「お、ありがとう。ジェスター。ご飯出来たぞー。」
ジェスター
「わーい!」

ジェスターが部屋から飛び出て席に座る。
ファンはとある装置の開発に集中しているため後でご飯を食べると前もって言われている。
キューの部屋はクエストショップ側にあるのでここから呼んでも届かないのでキュピルが呼びに行く。


クエストショップ側の建物に入るとリビングに治療箱を持ったテルミットと怪我した琶月がいた。

キュピル
「ん?どうかしたのか?ははん、さてはお師匠さんに模擬試合でボコボコにされたな?」
琶月
「それだったら幸s・・・じゃなくて!!」
テルミット
「ちょっとキューさんと喧嘩したそうで引っ掻き合いしたそうです。」
琶月
「か、顔が痛いぃ〜・・・。」
キュピル
「む、そうなのか?・・・ちょうどこれからキューを呼びに行く所だったからちょっと話し聞いてくる。
その前に事の発端は何だ?」
琶月
「私の部屋にキューさんが忍び込んでいて何してるのか問い詰めたら金銭をくすねていました!!
叱ったら反撃にあって・・・うぅぅ・・・。」
キュピル
「(・・・また金銭トラブルか・・・)」

・・・気付かぬふりをしていたがそろそろ限界だろう。
最近キューが色んな人から盗みを働いている。

琶月
「挙句の果てにお金盗られたままですし、今日の出来事を秘密にしないとバラバラにするぞって脅されました!!
でも脅しに屈する私じゃありませんからね。ふっふっふー。」

自慢げに言う琶月。

キュピル
「わかった、叱ってくる。」

クエストショップと繋がっている廊下に入りキューの部屋へと向かう。
扉の前へと移動し部屋の中に入る。

キュピル
「キュー・・・ぐあっ!」

部屋を開けた瞬間いきなり枕がキュピルの顔に飛んできた。

キュー
「勝手に入ってくんなー!」
キュピル
「ええい、俺は怯まんぞ!!
キュー!!気付かれていないと思っているのかもしれないが全部ばれているからな!!!
お前が俺の財布から金を取っている事も今日琶月の部屋からお金を盗んだ事も!」
キュー
「それがどうしたって言うんだ!」

父親と似た台詞で言い返すキュー。

キュピル
「どうしたもこうしたもあるか!!金を盗むってのは犯罪行為だからな!!
そんな行いが許されると思っているのか!?」
キュー
「知らない!っていうか早く出て行けー!!」

キューがベッドの近くに置いてある幽霊刀を抜刀し振り回しながらこっちに突撃してきた。
流石に武器を持った相手を素手で止める術はない。
仮に武器を持っていたとしても幽霊刀の力を借りたキューを止めるのは至難の技だ。
一旦大人しく部屋から出て行く。
その後、鍵の閉まる音が聞こえた。

キュピル
「今日の晩御飯無しにするぞ!」
キュー
「虐待!」
キュピル
「犯罪ごとを起こすお前には言われたくないな!」

大きな足音を立てながらその場から離れて行く。



琶月
「・・・あのぉ〜・・・。」
キュピル
「すまん、当分手がつけられそうにない。いくら盗られた?代弁しよう・・。」
琶月
「あ、一万Seedです!」
キュピル
「何、一万!?・・・くそ・・・。」

キュピルが財布から一枚のお札を取り出し琶月に渡す。
そのまま万歳しながら部屋に戻って行ってしまった。

テルミット
「一万抜き取るなんてかなり大胆な事しますね、キューさん。
そんな事すれば必ずばれると思いますが・・・。」
キュピル
「全くだ。・・・段々面倒な事になってきたな。」
テルミット
「そうですね・・・。キューさんが来た当時はキュピルさんによく懐いていたのに・・・。
やっぱり反抗期ですかね。」
キュピル
「反抗期なぁ・・。とにかく俺は一旦家に戻るよ。また後で詳しく話しを聞くとするよ・・・。」
テルミット
「わかりました、お疲れ様です。」
キュピル
「お疲れ様。」




・・・・。


ルイ
「あ、おかえりなさい。随分遅かったですね。」
キュピル
「キューと喧嘩しちまった・・。」
ジェスター
「えー?何があったの?」
キュピル
「どうやら・・・。かくかくしかじか。

・・・・・。

ジェスター
「あー!ずるい!!私にも一万Seed〜!!」
キュピル
「どうすればそういう考えに至る!!」

ルイ
「困りましたね・・・。幽霊刀がキューさんの部屋にある限りそう簡単には抑えられませんよ。」
キュピル
「・・・どうしたもんか。」




・・・その夜。




琶月がキューの扉の前に立っていた。


コンコン


琶月
「キューさん?起きてます?」
キュー
「起きてるぜ。」

キューが琶月を部屋に招き入れる。
部屋の明りはなるべく抑え寝ているように思わせる。

キュー
「どうだー?上手くいったか?」
琶月
「ばっちりです!ほら、一万Seed!」

琶月が一万Seedをキューに渡す。

キュー
「にひひ、お父さんもちょろいな〜。こんな芝居に騙されるなんて。」
琶月
「っというわけで約束通り5000seedを・・・。」
キュー
「何か言った?」
琶月
「あ、だから5000Seed・・・。」
キュー
「そんな要求呑み込めないぜ。」
琶月
「あー!ずるいです!!卑怯!!」
キュー
「うだうだ言ってると斬るよ?」
琶月
「うっ・・・。」

琶月が渋い顔をする。

琶月
「・・・早くキュピルさんに粛清されてしまえー!!天罰!天罰!!」

捨て台詞を吐きながらキューの部屋から出て行く。
キューが近くに転がっていた定規を琶月に投げつける。扉が閉まる瞬間に隙間から定規が飛び出し
琶月の顔面にぶつかった。扉の向こうで琶月の叫ぶ声が聞こえる。
その後、扉を閉め鍵も閉める

キュー
「・・・大分お金貯まってきたなー。」

引き出しの中にしまってある貯金箱を取り出す。
貯金箱の中には大金が入ってある。・・・ざっと見て20万Seed。

勿論これは財布や芝居から手に入れたお金だけじゃない。
輝月やヘルからなど金銭管理に疎い人物からお金をくすね続け
失くし物の多い琶月とジェスターの部屋から物を盗んでお金に替え、
最後にルイの部屋から引き出しの中に仕舞われたオカルトグッズを売り払ってここまでお金を貯めてきた。
子供が持つにしてはあまりにも大金。

キュー
「にひひ、これだけあればそろそろだなぁ。」

ぼそっとひとり言を呟く。その時。

キュピル
「何がそろそろだ?」

キュー
「!」

扉の向こうからキュピルの声が聞こえた。
鍵が仕舞っているので扉越しに会話する。

キュー
「盗み聞きとか最低!変態!!」
キュピル
「琶月の叫び声が聞こえたからな。また問題ごとを起こしたんじゃないのかと見に来た。
ついでに琶月!お前今月の給料なしだ!」
琶月
「ああああああああああああああああああ!!!!!!
ばれてるーーー!!!ごめんなさい、ごめんなさい!!!」
キュピル
「今回の一件は輝月にも言っておくからな。」
琶月
「ああああああああ(ry」
キュピル
「だが一番叱るべき相手はキューだ。キュー、その扉を開けろ。」

キュー
「いーやーだー。」

キュピル
「キュー。ファンの検査で俺とおまえは親子だという事は科学的には証明された。
だが、一つ重大な事がある。俺は未だに子を持ったという実感がないという事だ。
慈悲深くなくとも普通の親であれば子に手を上げたり怒鳴るのは抵抗感があるだろう。
だが今の俺にはそれがないぞ。俺の中ではキュー、お前は赤の他人だ。」

キュー
「ふーん、それで?」

キュピル
「その気になればこの扉をぶち破ってこの家から追い出す。飯も水も服も寝る所も一切出さない。」

キュー
「好きにすればー?でもこの幽霊刀で抵抗するからね。」

キュピル
「・・・・・。」

・・・流石にここでマジ喧嘩すると建物自体に被害が及ぶのは確実。
それにキュピル一人では下手すると負ける可能性もある。
・・・ヘルや輝月、あるいはテルミットやルイの力を借りる事が出来れば確実に追い出せるだろうが・・・。

・・・今この場に琶月がいるが琶月じゃ無理だな。それに共犯者だ。
下手すると土壇場で再び手を組む恐れだってある。

だがこのまま引き下がるのももう限界だ。

キュピル
「・・・明日、覚悟しろよ。」

キュー
「・・・・。」

琶月が自分の部屋に逃げる。
僅かに隙間から様子を伺っているが・・。

キュピル
「(・・・明日朝一にヘルと輝月とテルミットに頼んでキューをいったん部屋から追い出して貰おう・・。
所詮ただの子供。どんなに長くても数日間外に放りだされたら嫌になって悔い改めるはずだ・・。)」

それで改心してくれたら万々歳なんだが・・・。
勿論今は怒っているが改心したらしっかり暖かく迎えてあげる予定だ。

キュピル
「(反抗期ってのは自然に訪れる物だけど親の教育方法によって早くなったり遅くなったり
来なかったり悪化したりするからなぁ・・・。もしかすると何か間違っていたのかもしれない。)」

そんな事を考えながら自分の部屋へと戻り再びベッドへと入る。


・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



翌日。ヘルと輝月に事を話しキューの部屋に突撃するが既に部屋にキューの姿はいなかった。

ヘル
「・・・逃亡したのか?」
輝月
「ふっ、流石にワシ等を相手にするのは無理だと判断したのじゃろうな。
厄介者がいなくなってよかったのぉ?キュピルよ。」
キュピル
「・・・・・・・。」

少し悲しい表情をしながらその場を去るキュピル。

・・・昨日の夜考えていた通りのシナリオに進めばいいんだが・・・・。



・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・。


それから数日間、キューは戻って来ず既にヘルや輝月からはキューの存在そのものを忘れられてしまった。

ルイ
「ちょっとだけ心配ですね・・・。」
キュピル
「ああ・・・。とにかく今日ももうすぐ終わる。明日も仕事あるからそろそろ寝るよ。」
ルイ
「はい。おやすみなさい、キュピルさん。」

ルイがお辞儀しながら言う。





・・・・。

・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





キュー
「お父さん。」


深夜。突然キューの声が聞こえた。



キュピル
「・・・・ん・・・。・・・キュー!?」

突然キューに起こされ慌てて起き上がる。
が、途中腕が引っ張られ再びベッドの上に倒れる。
何事かと思い引っ張られた方に目をやる。

キュピル
「(・・・手錠!?)」

引っ張られたのではなく、手錠で拘束されていた。

キュピル
「キュー、これは一体どういうことだ!」
キュー
「ちょっと計画達成のため家出してた。今計画を実行する予定。」

キューが幽霊刀を抜刀し逆手に持つ。キュピルの胸に刀を突き刺すつもりだ。

キュピル
「おい!一旦何のためにこんな事をする!?
仮にここで俺を殺したらそれこそ街、国が黙ってるはずがない!必ず誰かが警察に通報して
不自由な生活が始まるぞ!」
キュー
「自分が今死ぬ直前なのに他人の事心配するんだ。
でもその点は大丈夫。お父さん。いや、皆は事故死扱いされるから。」
キュピル
「皆?幽霊刀の力を随分と過信しているようだがヘルや輝月を同時に相手したらいくら幽霊刀の力を
解放したとしても勝てやしない。今すぐこんな馬鹿な事をやめてこの手錠を外すんだ。」
キュー
「これ、何だかわかる?」

キューが缶っぽい何かを見せる。

キュピル
「何だそいつは。」
キュー
「催眠ガス。今頃お父さん以外の皆はぐっすり熟睡しているはずだよ。」
キュピル
「寝ている間に全員その刀で刺そうってか・・?」
キュー
「それじゃ司法解剖した時に事件だってばれちゃうじゃん。頭悪いね。」

キュピルの眉がピクッと動く。苛立っている。

キュー
「これ、わかる?」

キューが一本の煙草を見せる。

キュー
「これで火事起こすだけ。出火原因は寝たばこ。完璧だね。」
キュピル
「一体何のために・・・こんなことを!!
何が不満なんだ!?俺か!?」

ただの反抗期にしてはその域を出ている・・。

キュー
「初めてアタシがここに来た時、アタシが何処から来たか言ったけど覚えてる?」
キュピル
「・・・未来からか?」
キュー
「そう。未来でね、作者がお父さんを狙ってアノマラドで悪さを企むんだけど
お父さんさえいなければそんな事が起きない。悲惨な時代を迎える前に皆消しちゃおうって事。
そのために未来から来たんだ、アタシ。」

この時、キュピルは確信した。

キュピル
「(確実に殺される)」

キュー
「もし、また会えたら今度は地獄で会おうね。お父さん。」

そういうとキューはキュピルの顔に催眠ガスを吹きかける。
意識が落ちる直前に手錠の外れる音が聞こえたが脱出する前に眠りに落ちてしまった。






その晩。ディバンの部屋で火事が発生した。
出火原因は寝たばこと判定された。ディバンは愛煙家であったためこの事に誰も疑問は持たなかった。
唯一、疑問が持たれたのは傭兵を雇っておきながら誰ひとり火事に気付かずそのまま焼死してしまった事だけだが
事件だと気付く決定打にはならず、結局この火事は事故として処理されそのまま誰の記憶にも残らず
キュピルのクエストショップは消滅した。






















ルイ
「ってな事になったらどうするんですかーーーーーー!!!!」

キュピル
「クライデン平原から帰った直後にそんな事言われても物凄く困る。
というかそれは反抗期ではない。


キュー
「にひひ、なんていうかそれ。本当の黒幕はアタシを過去に送り込ませた未来のお父さんだよなー。」
ルイ
「こんな事になったら困りますのでキューさん!反抗期を起こさないでくださいね!!」
キュー
「おーおー何か凄い事言われちゃったぜ。でもアタシはお父さんを『守るために』過去に来たからなー。
そんな本末転倒な事はしないぜ。」
キュピル
「むしろ俺を守るためにキューが来たという事を今初めて聞いたんだが。」

キュー
「頼りないお父さんを見てアタシがちょっと前に決めたー。」
キュピル
「悪かったな!」





もしもキューが反抗期だったら   終わり


追伸

キュピルが言った通り。

何か途中で話しの軸がずれた。



節子、それ反抗期ちゃう!!ただの陰謀や!(←だったらタイトル『もしもキューが陰謀を持っていたら?』に変えろ



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