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2019年

1月~(今ここ)


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1月26日


「システムを起動します」




自身の身体を保護しているエクソスーツのナビゲーションを聞き私は目を醒ました。
目を醒ました場所は酷く寒い場所でエクソスーツを身に纏っていなければすぐにでも凍死してしまいそうな場所だった。
なぜ私はこんなところにいるのだろうか。
記憶を遡り一体私に何が起きたのか懸命に思い出そうとする。しかし努力虚しく何一つ思い出すことは出来なかった。

なぜここにいるのか。それ自体とても気になる事だがそれ以上に気になることがあった。

私は誰なのか?

そう、ここにいる理由も分からなければ私自身が誰なのかすらわからないのだ。


「生命維持システム・・・正常」


混乱している私を他所にエクソスーツは淡々とシステムに異常が生じていないか検査する。

「危険防御システム・・・正常」
「マルチツール・・一部正常」

幸いにも主要な機能のほとんどは正常のようだ。
しかし私は長時間ここで意識を失っていたのだろう。過酷な環境からエクソスーツを守るために働いていた危険防御システムのエネルギー残量が今にも底をつきそうなことに私は気づいた。
このままここに立ち尽くしていては危険防御システムは機能を停止し、適温で保たれていたエクソスーツ内部の温度も瞬く間に極寒の寒さへと落ちていくだろう。そうなっては私の命はない。

積る疑問は一旦置いて私は立ち上がり行動を開始した。
まずはこの寒さから身を守れる場所を探さなければならないが運がよかったことにすぐ近くに天然の空洞を見つけることが出来た。
空洞内部は決して暖かい場所とは言えないが外と比較すれば遥かに暖かく、空洞内部であれば危険防御システムにかかる負荷は微々たるものでリチャージを開始してくれた。


※偶然見つけることの出来た空洞。空洞内部も十分寒いが一定の温度内であれば危険防御システムの負荷が減りリチャージを開始する。ゲージ残量が少なくなったら安全な場所を探して回復を図ろう。

私は危険防御システムのエネルギーが十分にリチャージされるのを待つ間、現在自分の置かれた状況について確認をした。
私は記憶を失ってこそいるが言葉を忘れていないのと同様に道具に関する知識も忘れてはいないようだ。
目を醒ました時に手に握りしめていたこの銃のようなものが「マルチツール」と呼ばれている代物であることも勿論覚えている。
このマルチツールはトリガーを引くことで銃口からマインビームを射出することが出来、特定の物質に照射することで物質を分子レベルに分解し資源にすることができる。
その他にマルチツールには周囲の地形をスキャンにかけ有益な資源があるか調査する事も出来るがそのスキャン機能が故障しているようだ。
このスキャン機能を修復させることができれば記憶を失う前、私が何をしていたのか調べる手がかりになるかもしれない。
まずはスキャナーの修復を行うことに決めた。幸いにも修理に必要な資源はフェライト塵少量で済むようだ。この資源は岩や鉄のような物質から容易に採集ことが出来る。
私は危険防御システムのエネルギーが十分に回復したことを確認してから空洞の外へ出ていき、フェライト塵を集め始めた。


※フェライト塵は岩のような物質にマインレーザーを照射することで入手出来る。不思議な力で直接殴っても入手することが可能だ。マインレーザーを照射し続けるとエネルギー残量が徐々に減少していく。減少したエネルギーは資源「炭素」を消費することでリチャージすることが出来る。炭素は植物や木々から入手可能だ。

危険防御システムのエネルギー残量に気をつけつつ私は十分な数のフェライト塵を集めることに成功した。
これでスキャナーを修理することが出来るようになったはずだ。


※アイテム画面を開き、マルチツールのタブから故障しているテクノロジーや機能を修理することができる。

スキャナーの修理を終えた私はさっそく周囲の地形をスキャンにかけた。
するとどういうことかスキャンした地形データに混ざって宇宙船の通信反応が返ってきた。
その宇宙船は私が所有している宇宙船のようだ。自分の宇宙船へ戻れば自分の事についてもっとわかるかもしれない。
私は通信反応が返ってきた場所を特定し、宇宙船へ向けて歩を進めた。

宇宙船までの距離は遠くはなかったがこの極寒の中を歩くには脅威な距離だった。
先の空洞で危険防御システムのエネルギーを満タンになるまでリチャージしてから向かっても道中でエネルギーは底をつき極寒の寒さに震えることになるだろう。
危険防御システムのエネルギーはゾジウムと呼ばれる資源を触媒にすることでエネルギーを回復させることができる。一般的には特定の鉱物にマインビームを照射することでソジウムを入手することができるが一部の植物にソジウムが豊富に含まれていることがある。その植物を手で摘み取ることでまとまった数のソジウムを手にすることも出来るはずだ。
修理したスキャナーを使用してソジウムが豊富に含まれている植物がないか調べながら私は宇宙船へと向かった。幸運にも宇宙船へ向かう道中にソジウムの含まれた植物が一つ見つかり私は危険防御システムのエネルギーを回復させながら宇宙船へと向かった。

それでも十分な分だけエネルギーを回復させるには至らなかった。
モタモタしていればあっという間に危険防御システムのエネルギーは底をついてしまうだろう。私は重いエクソスーツを身に纏いながらも懸命に走り宇宙船へと向かった。


※地表で警戒すべきことは厳しい環境だけではない。時には危害を加えてくる生物や植物に遭遇することもある。エクソスーツにはシールドが張られており、エクソスーツにダメージが入りそうになるとシールドがバリアのような機能を果たし損傷を受けるのを防止してくれる。しかしシールドのエネルギー残量が底をつくと次は直にダメージが入る。一定量のダメージを受けると命を失ってしまう。

私は走り続けた。途中に蔦を伸ばして攻撃を仕掛けてくる有害植物に襲われたがシールドが私を守ってくれた。このシールドも無限に驚異から守ってくれるわけではない、もっと慎重に行動しなければ。
危険防御システムのエネルギーがそろそろ底をつきそうになった頃、目の前に宇宙船らしきものが視界に入った。スキャンしたデータによればあれが私の宇宙船のようだ。
私は駆け込むように自らの宇宙船へ乗り込んだ。宇宙船の電源は生きており内部は適温で保たれていた。底を付きかけていた危険防御システムのエネルギーもリチャージを開始し私はホッと胸をなでおろした。この宇宙船はある種の拠点のような機能を果たしており、私はこの宇宙船に乗り込む事であらゆる有害な環境から身を守ってくれる事だろう。

宇宙船を見つけることは出来たが私はあることに気づいた。この宇宙船は故障しているようだ・・・。
電源こそ生きているが発射エンジンとパルスドライブが故障しており宇宙船を発射することが出来ない状態でいる。この2つの装置を修理することが出来なければ私は永遠にこの極寒の惑星に取り残されることになるだろう。
宇宙船に搭載されているガイドAIが私に為すべき事を示してくれており、資源さえ集めることができれば自力で修理することができそうだ。
修理素材として要求されているものは「ピュアフェライト」、「二水素ゼリー」、「金属プレート」、「気密シール」の4つだ。
スキャナーを修理した時とは違い、今回は加工した材料を用意する必要があるようだ。


※任意のアイテム画面の空白を選択することでアイテムを作成することができる。例えば金属プレートを作成するにはフェライト塵を50用意した状態で選択すればその場で即作成することができる。

二水素ゼリー、金属プレートは必要な資源を用意することができれば手元ですぐに作ることが出来る事を私は覚えていた。失われた記憶は自分の生い立ちだけのようだ・・・。
宇宙船を修理するために一度宇宙船から降り必要な資源を集めることにした。




※ピュアフェライト塵はスタートした惑星にもよるが一部の惑星では手に入らない事がある。その場合、ポータブル精製機を作成しフェライト塵を加工することでピュアフェライトを手に入れることができる。ポータブル精製機の作成材料はどの惑星からでも手に入るもので構成されているため作れないという心配はない。なお、ポータブル精製機を稼働させるには燃料として炭素が必要になるため注意。

修理に必要な材料を探し求めたがこれには難航した。二水素ゼリーと金属プレートの作成は簡単に作ることは出来たしピュアフェライトも時間こそかかったが同じく作ることに成功した。だが気密シールの作り方が私には分からなかったのだ。それは記憶喪失に至る過程でエクソスーツが故障し加工方法が失われてしまったのか、それとも単に記憶を牛舞う前からレシピを知らなかったのか。いずれにせよ必要となる資源も分からなければそれを作る方法もわからないのだ。
途方に暮れていたところに宇宙船ガイドが私に信号ブースターを作成し惑星全体をスキャンにかけて気密シールのレシピを保持している施設がないか調査するようアドバイスをくれた。私はそのアドバイスに従い信号ブースターを作成し惑星全体をスキャンにかけた。するとここからそう遠く離れていない位置に気密シールの現物とレシピを保管している施設があることが判明した。さっそくその施設へと向かった。

だがここで新たな障害が私の前に立ちはだかった。エクソスーツがブリザードが接近していることを警告してきた。


※常に穏やかな気候であるとは限らない。その惑星固有の嵐に襲われることがある。惑星に寄ってブリザード、熱風、有毒ガスのストームなど形は異なるがどれも外へ出るには非常に危険な状態であることは共通している。嵐が来ると危険防御システムのゲージの上に「STORM」と表示されエネルギー残量が非常に早い速度で減少するため直ちに安全な場所へ避難する必要がある。

私は慌てて元きた道を引き返し宇宙船内へ避難した。程なくして厚い雲が惑星上空を覆い猛風と共に氷の粒が地表に降り注いできた。船体と氷の粒がぶつかりあう音が私のいる操縦席にまで鳴り響く。外気温は-60℃近くから-103℃近くへと一気に下がり私の想像を超える気温へと落ちている。この状態では例え危険防御システムのエネルギーがMAXまでチャージされていたとしても30秒ももたずに空となるだろう。引き返して正解だったようだ。

それから私は、船内の中で時間を潰しブリザードが止むのを待った。目が覚めてから初めてただ呆然としながら時を過ごした。
ジッとしている間、私は自分の生い立ちのことについて思い出そうとするがやはり何一つ浮かび上がることはなかった。宇宙船に何か記録が残されていないか調べてみたが手がかりになりそうなデータは見つからない。スキャナーデータによれば確かにこれは私の宇宙船のようだが、この有様ではこれが本当に私の宇宙船なのかどうかすら怪しくなってきた。

自分の事について知る成果は得られなかったが、調べている間に嵐は止んだようだ。
私はもう一度気密シールを手にするために宇宙船の外へ飛び出した。




気密シールが存在しているというその目的地には誰かが作ったシェルターのようなものが建っていた。
シェルター内部には私と同じくこの惑星に不時着し宇宙船の修理を試みた者のログデータが残されていた。私はログデータの中身を確認する。
ログデータを残した人物は原因は不明だが宇宙船を修理することが出来なかったらしく、将来この惑星に困ったものが現れた時のために気密シールとその作り方を残してくれていたようだ。
私は彼の安否がその後どうなったのか気になったがそれを知る術はないが彼の好意に感謝しつつ、その者が誰かの助けを得て無事宇宙船を修理することに成功し今も生きている事を願いながら宇宙船へと戻る。


宇宙船を修理するための必要な材料は揃った。
さっそく宇宙船のナビゲートに従いながら私は修理へ取り掛かった。ものの数分で宇宙船は修理されいつでも宇宙へと飛び立てる状態へと修復された!
発進するためのエンジンの燃料は十分に充填されており各種武器系統も正常に機能している。宇宙船の操作方法の記憶も失われていない。私は一度大きく深呼吸した後、宇宙船を離陸させるためのボタンを押し空へと上がった。



コクピットから外を覗き眼前に広がる景色。さっきまで私が寒さに耐えながら歩いていた大地が一望出来る。
気密シールを取りに行ったあのシェルターも見え、私が長い時間かけた末にたどり着いたあの場所も宇宙船に乗った今ではものの数秒でたどり着くことが出来る。宇宙船が修理されたことで行動範囲が一気に広がったことは確かであり、私はこの惑星の楔から解き放たれ自由になったような気分でいた。

私は操縦桿を一気に引いた後、ブーストをかけて一気に大気圏の外へと飛び出した。



無数に広がるデブリ。さっきよりも遥かに蒼い深宇宙の色。
記憶を失う前は何度も大気圏離脱を行っていたのだろうが、今の私には初めての体験に感じ高揚した気分でいた。

惑星の重力圏からちょうど離脱したその時だった。差出人不明の周波数を受信。それは私宛へのメッセージのようだった。

「教えてほしい・・・あなたが何者なのか。私は kzzkttk」

生き物の声とも機械による人工音声とも思えない、それはまるで宇宙が私に語りかけてきているような・・・。

「kzzkttk を追って....」

私は自分の名前を名乗った。しかし私の声が届いたのか、届かなかったのか。送り主から返事が来ることはなく、代わりにきたのはとある惑星の座標データだった・・・。




続く

追伸

このゲームは自由度がとても高い事ばかり注目されていますが、この哲学的なストーリーもプレーヤーからは高い評価を与えています。
今回、この主人公であるトラベラー目線に立ったThis war of mine風の更新を続けていくつもりです。


2月2日

私は送られてきた座標データを宇宙船へ入力し処理する。座標データは同じ星系のとある惑星の緯度経度を示していた。
その場所には一体何があるというのか。私に語りかけてきた人物(生き物かどうかすら定かではないが)は私のことを知っているのだろうか?
もし知っているのであれば記憶を呼び戻す手助けとなるかもしれない。宇宙船を直したもののそれ以降行く宛がなかったため、次に進むべき道がすぐに出てきたことは幸いだった。

私が目を醒ました惑星と座標データが示す惑星との距離は遠い。そのまま飛行すれば数時間に及ぶ旅となることだろう。
しかしこの宇宙船にはパルスドライブが搭載されており特別な燃料を消費するが通常飛行よりも遥かに高速で航行することができる。
私は送られてきた座標データの位置へ照準を向けパルスドライブを起動した。強力なGと衝撃が走った後、宇宙船はまるで光のごとく高速で航行を始めた。



ある程度接近したところでパルスドライブの燃料が尽きてしまった。よく確認していなかったが残り燃料が少なかったようだ。
パルスドライブを起動及び稼働させるには三重水素という資源が必要になる。この三重水素は宇宙に漂うデブリを破壊することで少量ではあるが三重水素を収集することが出来る。時折三重水素ではなく銀や金など貴重な資源が取れることもあり、こういった光り物は宇宙ステーションで売却すればまとまった資金を得られることが出来る。
今更ではあるが今私は1銭たりともお金を持っていないことに気づいた。もしかして私は宇宙海賊に襲撃され金銭や価値ある物質を強奪された後に惑星へ墜落、その衝撃で記憶喪失になったのではないか・・・。

先行く旅には資金は必要となる。私は一番の目的である三重水素を集めつつ、可能な範囲で金と銀の採集を行った。
十分な数の三重水素を集め終えた頃には少量ではあるが手元にいくつかの金と銀が集まっていた。光り物は人の心を魅了する。(時としてその魅了は人を変え悪の道へと走らせる事もあるが・・



少し時間はかかったが送られてきた座標データが示す惑星までたどり着くことが出来た。
眼前に広がる惑星はほとんどが海面に覆われており、陸地こそ少ないが人の住める快適な環境に見える。
私は宇宙船に搭載されているマルチツールのそれより遥かに強力で広範囲なスキャン機能を使用しその惑星の特性を調査した。
するとその惑星は見た目に反して有毒ガスに満ちた危険極まりない惑星であることが判明した。この惑星の大気中に含まれているガスは人体に悪影響を与えるだけでなく、エクソスーツに使われている一部素材を腐食しダメにしてしまう成分が含まれている。危険防御システムが私を守ってくれるだろうが一つ前の極寒の惑星の時と同じように危険防御システムのエネルギー残量には気を使わなければいけなさそうだ。そしてこれからはあまり惑星の見た目は信じないようにする。



有毒ガスに満ちた惑星の大気圏へ突入した。
超高速で突入することで前面の空気が圧縮、激しくぶつかりあうことで熱が生じ船体の前方部分が熱を持ち赤く発光し始める。
今更ながらこの宇宙船に大気圏突入に耐えうる作りとなっているか心配になったがその心配は杞憂だった。
座標データが示していた地点の近くに宇宙船を着陸させ、私は船から降りる。



この惑星は気温が20℃前後と最適な気温かつ水も存在しているため生命を育むのに非常に適した惑星だったであろう。この惑星を覆う毒の大気は一見生命の存在を否定する材料にも見えるが、この大気に適応した独特の形をしている植物が多く植生している。この植物はこの毒性の大気に適応したのか、それともこの植物が毒性の大気を放っているのか・・・。私は科学者ではないため断定することはできないが、こうした環境下においても生命活動の痕跡が見られるというのは大変興味深いことである。
私は強く毒を放出する植物や腐食性の強い水たまりに注意をはらいながら座標データが示す地点へ歩き、そしてたどり着いた。
そこには火花を散らしながら何もない空間へ信号を発し続けるデバイスが一つだけ落ちていた。

慎重にデバイスに触れターミナルにアクセスする。デバイスはまた生きているようだ。
デバイスにはログデータといくつかの設計図が残されていた。ログデータには何者かがどこかの惑星に墜落し脱出を図るために基地を作った日記ともとれる文章が記録されている。しかしこのログデータは随分と昔に作成されたもののようで仮にその惑星から脱出出来ていたとしてももう生きてはいない可能性があるほど古いものだった。



私はデバイスから基地コンピューターの設計図と地形操作機の設計図データを抽出した。デバイスの中にはその他の設計図も含まれているようだったが半分故障していることもあってかデータの一部が断片化されており、今度な演算処理能力を持つ基地コンピューターを作成して解析する必要がありそうだ。

私は真意を図りかねていた。故障した船を直し宇宙へ上がった時に送られてきた差出人不明の謎の信号。そして信号に含まれていた座標データを追ってきたが直接私に関係のあるような代物には到底見えなかったからだ。一体なんのためにこのデバイスの位置を私に知らせたのか。早くも私は自分の記憶を取り戻すための道標を失ってしまった。
私は腕を組みながら、次に何をすべきか自問自答する。今の私には資金がなく、また家や拠点といった腰を落ち着ける場所もない。宇宙船こそあるが半分ホームレスのようなものだ。そうなるとやはり今手に入れた基地コンピューターを構築し、腰を据えることの出来る場所を建設したほうが今後のためになるだろう。

そうなると次はどこに基地コンピューターを構築するかが問題になる。基地を作るといっても何処でもよいわけではない。当然可能な限り快適な場所でありたい。
そういう意味では今私がいる毒の惑星はまさに最悪とも言える場所だ。こんなところで日々を過ごしていてはきっと早死にする。ここは一つ情報収集を行おう。私はもう一度宇宙船に乗り込み、離陸。そのまま大気圏離脱しこの毒の惑星から離れたのであった・・・。



続く


2月10日



そうして私が向かった先はこの星系内のどの惑星重力圏にもない、不思議な形をした構造物。
これは宇宙ステーションであり、殆どの星系に存在しているいわば宇宙の民のための宿のようなものだ。この宇宙ステーションでは宇宙船の整備は勿論、私が使っているマルチツールにモジュールを装着して便利な機能を追加、強化したりマルチツールそのものを新たに購入する店などもある。それらを利用するために宇宙ステーションにはあらゆる種族が集まり必要な行動を起こしている。情報収集を行うなら宇宙ステーションに行けば必ずできると私は確信していた。



※例外もあるが宇宙ステーションはほぼ全ての星系に存在している。この宇宙ステーションで資源の売買を行ったり仕事を受注し達成することで相応の対価を得ることもできる。そうして得た資金でエクソスーツやマルチツール、宇宙船などを強化しより危険な宙域を訪れた時の安全度を高めることが出来る。

宇宙ステーションに到着した私は船から降り、宇宙船のコンテナ内から金や銀など収集した資源を回収する。まずはこの貴金属を売却して旅の資金に充てることにした。宇宙ステーションに備え付けられている銀河貿易ターミナルにアクセスし私は持っていた資源をターミナルへ収めた。後は機械が収めた量に応じてその星系の経済レベルとタイプを補正に加えながら対価を口座に振り込んでくれる。手にした資金を何に使うかは迷いどころではあるがソジウムなどいざというとき自分の身を守ってくれるものをまずは充足させることにした。エクソスーツ内の酸素残量が残り僅かでもあったため酸素カプセルもいくつか買い置きをする。

酸素カプセルやソジウムといった長期の探索を安定させてくれるものの他に私はいくつかの資源も購入した。具体的に言うと銅だ。銅を買ったのには理由があり、私が作ろうとしている基地コンピューターを作成するのに必要なる材料だからだ。基地コンピューターを作成するには有機金属が必要になるのだがこの有機金属は銅を精製器にかけることで生み出すことが出来る。銅は通常のマインビームでは手にすることが出来ない特殊な資源の一つであり、今の私には入手できない代物ゆえ銅を購入した。
銅を手に入れる手段は勿論購入だけではないし、その気になればスキャナーを使って銅鉱脈を探し出し例の火花を散らしていたデバイスから入手した地形操作機を組み立てて銅を掘削して入手することも出来る。しかしそうして手に入れられる銅の量はあまり多くなく、有害な惑星を探索するなら当然リスクも背負う必要がある。銀河貿易ターミナルで購入出来るのであればお金は惜しまず購入してしまう。それが私の性分だ。



物資の調達を済ませた後、私はエクソスーツを専門に取り扱う施設を訪ねた。ここではエクソスーツ内に資源を収納出来るコンテナ領域を拡張したり熱い環境、寒い環境、はたまた有毒ガスから放射能にまで様々な環境に順応して長時間滞在出来るようにエクソスーツを強化することが出来る施設だ。勿論それには相応の対価を支払う必要があるがコンテナの拡張なら手持ちの金額で十分受け付けてくれそうだ。私は必要な対価を支払った後、エクソスーツのアップグレードを行った。これにより持ち運べる資源量の数が増え、長期探索時に資源が持ちきれなくなるリスクを低減させることが出来た。



※なお宇宙ステーションでは自由に見た目を変更出来る外見変更モジュールというものがある。デフォルトではアノマリー+黄色い宇宙服となっているが種族そのものを変更可能。設定上では光を屈折させて別の外見に見せかけているらしい。ストーリーとは絡まないが、いつものカラーに少し似せた外見へと変更する。

次の探索へ出るのに必要な準備は大体済ませた。残すところは情報収集のみである。私は宇宙ステーションにある各種設備の利用方法についてはしっかり記憶していたのだが・・・困ったことに私はこの宇宙ステーションを管理している種族の言葉が分からなかった。
彼らがゲックと呼ばれる種族であることだけは理解している。しかし彼らの言語が私には分からない。だが私が発する言葉は彼らには理解出来るらしい。あまり難しい質問をしても私が理解できないので控えるが、簡単なことなら彼らの仕草でなんとなく理解することはできるだろう。また、エクソスーツには言語に関する自動翻訳の機能が搭載されている。彼らから言葉の意味を教えてもらうことができれば以降その単語の意味を理解することが出来るはずだ。(ただし言語の意味を質問する場合は謝礼を用意したほうがよさそうだろう。


※宇宙ステーションには従業員や傭兵、時には宇宙を旅する同族が同じ空間で過ごしている。彼らとコミュニケーションを取ることで同じ星系にある惑星の興味深いポイントを教えてくれたり、今いる星系を支配している種族の言語について教えを乞う事が出来る。ただし、初めのうちは彼らが何を言っているかは全く分からないため選択には注意を払う必要がある。時には期限を損ねて自身への評価を下げてしまうこともアレば自覚がないまま犯罪行為に加担してしまうことも・・・。

私のエクソスーツが少しでもゲックの言葉を翻訳してくれれば有難かったのだが残念ながら一つも単語が登録されていなく、1から彼の言語を理解する必要がありそうだった。エクソスーツのパーソナルデータによればゲックは貿易で発展した種族であり、かつて武力によって大帝国を築き上げていたという。今の私にはまだ詳しい経緯は不明だが共通してユニット(銀河中で使える貨幣通貨のこと)を稼ぐことを好むそうだ。私は謝礼として少しばかりのユニットを支払い、ゲックから言語について教えてもらいつつ、これから拠点を建築するにあたっておすすめの場所がないか聞いて回った。すると一人のゲックがとある惑星に交易所があることを教えてくれた。これから作る拠点は交易所の近くはどうだろうか・・・。必要な物資も手に入れやすく資源の売買もしやすいとなればそこにしない理由はないだろう。
私はゲックにお礼を言うと宇宙船の発着場へと戻った。

自分の宇宙船に乗り込み教えてくれた交易所へと向かう。
超電導の力で宇宙船を浮遊させると磁場の力で射出され、私は再び星の海へと飛び出していったのだった。

続く


2月17日

宇宙ステーションに滞在するゲックから教えてもらった貿易所を目指し私は宇宙船を飛行させた。
その貿易所が存在している惑星は宇宙から見ても極度に乾燥している事がはっきりとわかった。宇宙船のスキャナーで調査すればその惑星は他の惑星と比較して気温が高く雨が一切降らない干からびた大地のようだ。



しかしそんな過酷な大地にでも植物は自生しており、またこの星で暮らそうとする者たちがいる。
そして目の前には教えてもらったとおり7つの発着場を備えた貿易所らしきものが存在していた。さっそく私は貿易所に宇宙船を着陸させ、船から降りて周囲を見渡す。乾燥した大地、記憶を失ってから初めて目を醒ました極寒の惑星とは正反対のような気温。温度は60℃近くあり、危険防御システムが稼働しエクソスーツ内部の温度を快適な気温に保ってくれている。この惑星も探索する際は危険防御システムのエネルギー残量に気を使う必要がありそうだった。

貿易所内部には資源の売買を行うための銀河貿易ターミナルが一つ、そして貿易所で働くゲックが数名活動をしていた。ここでは本当に資源の売買程度しか出来なさそうだが船の発着場があれば発射エンジンの燃料を消費せずに発進可能でかつわざわざ宇宙ステーションへ行かずとも売買が行えるのは大きなメリットだ。なにもない所に作るより遥かに合理的である。
私は交易所の直ぐ側に基地コンピューターを構築し、拠点を構築するための基礎を作り上げる。



※基地コンピューターを設置した場所から150u内に建築物を設置出来るようになる。滅多にないが該当の惑星上で他のプレイヤーが既に拠点を構築シていた場合、拠点周辺に基地コンピューターを設置することは出来ない。

私は交易所の足元で拠点建設を開始した。貿易所のデッキにいるゲックが私のことを見下ろして興味深く見つめている。彼らにとって迷惑でないか心配だったが、交易が盛んなところには得てして人が集まり建物が出来上がっていくもので自然な流れなのであろう。特に文句を言われることも干渉されることもなかった。

基地コンピューターには木造の建造物の設計図データが最初から登録されている。この木造建造物は炭素を資源にすることで土台、壁、天井などを作ることが出来る。ただしそれ以外の物を建築及び構築したい場合は設計図分析機を用いて新たなレシピを習得する必要がある。

この銀河において通常、拠点を構築する際は専門職に頼んで作業してもらうのが一般的である。どれだけ頑張ろうと個人で出来ることは限られており、私がどれだけ努力を積み重ねようと目の前にある交易所のような施設を作り上げることは出来ないからだ。(勿論頑張ればそれに近しいものは作れるかもしれない)。
しかしお尋ね者となっている海賊や表立って人前に現れることの出来ない逸れ物など業者に発注を行うことが出来ない人達も世の中にはいる。そういった輩は自分の力で船をメンテナンス出来る拠点を作り上げる必要があるが拠点建設のレシピは一般には公開されていない。それでも業者に紛れ込んだスパイが仲間にテクノロジーレシピを渡すために秘密裏に惑星の地中に埋めて引き渡しを画策する輩がいる。この銀河は私が想像している以上に治安が悪く、スキャン装置を通して地表を調べるとあちこちに未回収のテクノロジーモジュールが見つかる。埋められたテクノロジーモジュールを回収して設計図分析機に通せば新しい建築レシピを習得出来るだろう。(堂々と利用して良いのか疑問は残るが・・

私はスキャナーを通して惑星地表を調べ上げる。この貿易所周辺にも埋められたテクノロジーモジュールが存在しているようだ。私はその場所まで趣き、毒の惑星で入手した地形操作機を用いて掘削工事を行う。この地形操作機はフェライト塵やピュアフェライト系列の資源を燃料に特殊なビームを照射する。照射した先にある土を瞬時に蒸発、消滅させることで穴を開けたり掘る事が出来る。
掘り下げた先に何者かが埋めたコンテナがが露呈した。


※回収したテクノロジーモジュールはそのまま「回収されたテクノロジー」という名前でアイテム枠に追加される。「回収されたテクノロジー」を消費することで設計図分析機という端末から新たなレシピを習得することができる。「回収されたテクノロジー」は意識して探さなければ基本見つかることはない。レシピをコンプリートするにはかなりの量が必要になるため豆に探して回収しておくと良い。なお、画面左上に写っているドローンは「センチネル」と呼ばれる警備ドローン。詳細は後述するが、センチネルは惑星の保護を目的としており、目の前でマインビームを照射すると取締のために攻撃を仕掛けてくるので注意。

私はテクノロジーモジュールを回収し自分の基地へと戻る。この埋蔵されたテクノロジーモジュールを手に入れるために少し遠くまで歩いてきている。トラブルさえなければ特に問題はないのだが・・・



しかし何事も順風満帆とは行かない。この惑星特有の嵐が襲いかかってきた。熱風の旋風が襲いかかりただでさえ高かった気温が更に上昇し始めたのだ。
気温はグングン上昇しついには100℃を超える気温へとなってしまった。強い風が惑星の表面を吹き上げ塵が舞う。生身でこの大気に触れればきっと大やけどするだろう。この気温ではものの十数秒で危険防御システムのエネルギーが底をついてしまう。エクソスーツを通してヒリヒリとした熱が伝わる。まるでオーブンの中に閉じ込められたかのような状態だ。このままでは危ない。

とにかくこの熱風から実を守る必要がある。私は地形操作機を使用してその場に穴を掘り始める。ある一定の深さまで掘った後、地形操作機に備え付けられたもう一つの機能を使用して穴を塞いだ。地形操作機は穴を掘るだけでなく、地形を盛ることも出来る。私は入り口を塞ぎ即席のシェルターを作り上げた。


※万が一地中で密室空間を作りかつ地形操作機のエネルギー残量が底をついてしまった場合、緩やかな死が待っている。

危険防御システムのエネルギーが回復することはないが、消費することもない。この空間なら安全に熱風をやり過ごすことができそうだ。
ソジウムを使用して危険防御システムのエネルギーを回復させた後、私は熱風が止むのをジッと待ち続けた・・・。

しばらくして、嵐が止んだことをAIが知らせてくれた。私は地形操作機を操作して出入り口の穴を空け外の様子を伺う。

知らせの通り嵐は過ぎ去っていたようだ。以前として暑いが先程の気温と比較すれば遥かにマシな温度へ下がっていた。
私は周囲の安全に気を払いつつ自分の拠点へと戻っていった・・。



続く


2月24日

灼熱の旋風をしのいだ後、私は一直線に自分の拠点建築ポイントへ戻っていった。
テクノロジーの回収により基地コンピューターに内蔵されているもの以外の建築物も作れるようになった。
さっそく拠点の建築を開始しよう。



※木の建築物は簡素な見た目だが密閉空間を作れば生命維持装置の酸素が消費されなくなり、更に危険な気候から身を守ってくれるようになる。回収したテクノロジーは設計図分析機にかけることで新しいレシピを習得することができる。

信号ブースター、ポータブル精製機の他、建築監督官用の専門ターミナルを設置した。
今後この拠点を大きくしていくには専門のノウハウを持った監督官の存在が必要不可欠となるはずだ。残念ながら私にはそのノウハウがないため誰かを雇う必要がある。監督官は知能生命体が集まる宇宙ステーションへ行けば探しやすいだろう。なお、どれくらいの報酬を払う必要があるか・・・については交渉次第だろう・・・。
体を休ませられる居住空間を作り上げたら、次は宇宙ステーションから自分の拠点へ一瞬でワープ出来るテレポーターを設置する。



※テレポーターを設置することで宇宙ステーションに設置されているテレポーターから自由に行き来することができる。別の星系からでも行き来することは可能だ。テレポートした後は宇宙船が近くまで自動的に移動してきてくれる。メタだが本ゲームにおけるファストトラベルである。

テレポーターを設置した直後、基地コンピューターからけたたましくビープ音が鳴り響いた。このような挙動は聞いたことがない。私は恐る恐る基地コンピューターの画面を覗く。
そこにはひたすら16という数字だけが並んでいた。勿論それに意味はない。この惑星の気候に耐えられず基地コンピューターが故障したかと思ったが数字の羅列の中に救難信号のコードが紛れ込んでいたのを偶然発見した。それを見つけた瞬間、基地コンピューターの挙動はもとに戻り、アーカイブの回復処理へと戻った。
救難信号のコードはこの星系の宇宙ステーションを示していた。宇宙ステーションから救難信号が出されるのはありえないことだ。なぜなら本来宇宙ステーションは誰にとっても安全な場所のはずだからだ。ではイタズラかなにかか?だが私の基地コンピューターをピンポイントに狙ってそのようなイタズラをするのは難しい。宇宙ネットワークに繋がっていない上に権限も与えられていない。

これのためだけにわざわざ宇宙ステーションへ行く気にはならなかったが、建築ターミナルの監督官を雇い入れるために宇宙ステーションへ向かう予定だったのでそのついでにこの救難信号のコードについて聞きまわってみることにしよう。

ある程度の建築を終えた後、私は宇宙ステーションへと向かった。


宇宙ステーションへたどり着いた後、さっそく私は監督官を探し始めた。
手持ちの通貨はあまり多くないが、相場を知るためにまずは声をかけて積極的に調査したい。さっそく眼の前でポテトチップスのようなものを素手でボリボリと食べているゲックに話しかけようとしたそのとき、横から別のゲックに私は話しかけられた。

「見つけた。君は今建築ターミナルの監督官を探しているね?」

そのゲックは私の言語で話しかけてきた。このようなことは記憶を失って目が覚めてから初めてのことだ。

「驚くのも無理はないけれど、僕は建築ターミナルの監督官をやっている。そして君を手伝うように言われているんだ。大丈夫、お代はもう君から貰っているか。」

驚きの連鎖とはこういうことをいうのだろうか、それとも開いた口が塞がらない・・か?いや、これは良い意味には言わないだろう。とにかく私は今混乱している。
間違いなくこのゲックとは初対面のはずだ。それなのにもう私から対価を頂いているというのだ。

「あぁ、混乱してるよね。でもこれは事実なんだ。未来の君からもう受け取っててね。それで基地はもうある?」

このゲックは私のことをからかっているのかと思ったが、本当のことのように話してくる。
事ここに至るまで一体何があったのか。私には知る由もないが協力を得られるのであればそれを断る理由はない。私はこのゲックを建築監督として採用した。


※プレイヤーを助けてくれる不思議なゲック。彼がいる場所は宇宙ステーションだがマーカーは立たないため出会えるかどうかは若干の運がいる。

私は拠点の場所をゲックに教えた。彼は準備が整い次第私の拠点へ向かうと言ってくれた。
結果的に見れば私は頼もしい仲間を一人得たことになったが経緯が経緯なだけに若干の不気味さは感じてはいる。

続いて私は基地コンピューターが吐き出した謎の救難信号について調査をすることにした。しかしこの救難信号は場所が宇宙ステーションであるということしか書かれていなく、それ以上に具体的な記載は含まれていなかった。
私は手当たり次第に宇宙ステーションにいる他のゲック立ちにコードのことについて聞きまわった。あるものは何も知らなさそうな仕草をとり、またあるものは私のことを不気味な存在と捉え怯えたり何一つ成果を得られていない。次のゲックに聞いて何も分からなければ引き上げる・・・そう心の中で呟いて眼の前のゲックに救難信号のコードについて口にした瞬間、ゲックの目が一瞬赤く光ったかのように私は感じた。



「我々は君を見ているぞ、旅行者よ。君に残した物を見つけなさい。」

ゲックは彼ら自身のものではない言語で喋っている。私のデバイスの中にある救難信号のコードが赤くギラギラした光を通して私に反響し、座標に変化した。
赤い光は薄れていき、ゲックが私を期待の眼差しで見ていることに気づく。何が起こったのか不明だが、彼らには何も見えていなかったようだ。眼の前のゲックは不思議そうな表情をしている。ここは立ち去って座標データに向かい私に残したというものを見つけるべきだろう・・・。
コードから座標データに変化したそれは私が拠点を構えている惑星のとある地点を示していた。私は宇宙船に乗り込みその地点へと目指した・・・。


続く


3月10日

救難信号が変化して座標データへ変わる。こんなことは常識外だ。見えない力が働いている・・・そう感じざるを得なかった。座標データが示す地点へ向かうと、そこには墜落した貨物船があった。原型を留めないレベルで破損しており残骸があちこちに散らばっている。




自分の宇宙船の何百倍・・いや、何千倍と大きい船が墜落しているのだから目を見張るものがある。
この破損具合を見ると不時着ではなく何かに衝突・・・いや、戦闘が起きたのだろう。攻撃を受けて重大な損傷を受けて制御を失い、惑星の重力に引かれて墜落。しかし貨物船には護衛のフリゲート艦がついているはずで、ここまで無残に撃沈されているのはあまり聞かない話だ。頻繁に出くわす宇宙海賊程度がここまでの損傷を与えられるとは思いにくい。もっと・・・強力な何かが襲ったのかもしれない・・。
私は船を近くに着陸させ周囲の様子を伺う。




墜落した貨物船の救難ビーコンが落ちているのを発見した。変化した座標データはこの救難ビーコンの位置を示していたようだ・・・。
救難ビーコンの電源は死んでいるがログデーターを漁ることは可能なようだ。
もしかするとこの貨物船が墜落した原因がわかるかもしれない。私は単純に好奇心でログデーターの中身を解析した。だがログデーターに含まれていた音声は私が想像していたのとは全く異なるものだった。



「アノマリーが星々を求めてやってくる。逃げろ。」






一体何のことなのかこれっぽっちも検討がつかない。
アノマリーとは何だ?そのアノマリーがこの貨物船を墜落させたというのか?
私の知見もエクソスーツのデータベースにもアノマリーが何のことか示す情報はない。(私の場合は単純に記憶を失って思いだせないだけなのかもしれないが・・・

救難ビーコンにはログデーターの他にハイパードライブの設計図が含まれていた。
一般的な宇宙船用で、貨物船のような大型艦用のではない。貨物船が墜落した後に誰かがここに残していったもののようだ。
このハイパードライブを宇宙船にインストールすれば光より早く航行することができるようになり、異なる星系にも一瞬で移動することができるだろう。
このハイパードライブを使ってアノマリーから逃げろとでも言っているのだろうか・・・。
私は救難ビーコンから離れ、貨物船内を探索することにした。


※墜落した貨物船内や地面に保管庫が転がっていることがある。開けるにはそれ相応の資源が必要になるが解錠することができれば価値の高いアイテムを手に入れられる可能性がある。

貨物船内の電源は当然死んでおり、船内は非常に暗い。もしかしたら生き残りがいるかもしれないと思ったが、この様子を見る限りその可能性は皆無と見ていいだろう。脅威がないか慎重に探索しつつ、何か有益なものがないか調査する。
殆どはガラクタが転がっているだけで、あらかた重要なものは持ち出されているようだったが手付かずの保管庫を見つけた。解錠するにはコバルトなどいくつかの資源が必要であり、今の私には解錠するための資源は持ち合わせていない。宇宙ステーション、もしくは交易所へ行けば解錠するための資源を購入することも出来るかもしれないが何が入っているか分からない保管庫のために少ない資金を浪費することはないだろう。それよりもハイパードライブの設計図があるのだからインストールに必要なマイクロプロセッサーを購入したほうが遥かに有益だ。



私は宇宙船に搭乗し、宇宙ステーションへ向けて船を発進させた。
次第に小さくなっていく貨物船。この貨物船に乗り込んでいた乗員が無事であることを私は祈りつつ、その正体不明のアノマリーとやらが私に襲いかかってこないことを切に願った。


3月31日


墜落した貨物船の近くに落ちていた救難ビーコンにハイパードライブの設計図が入っていた。
私は宇宙ステーションに一度戻り、ハイパードライブを構築するのに必要な素材を購入した。
ハイパードライブさえあればこことは別の星系に行くことも出来るようになり、私の知る銀河では異なる星系へ行くのは特別なことではない。
設計図の入手は専門の機関から手にする必要があるため、今回のように救難ビーコンから手に入れるのはレアケースだが構築に必要な素材自体は宇宙ステーションで容易に入手可能だ。
ハイパードライブを動かすための燃料素材も宇宙ステーションから容易に購入可能なのだが・・・いかんせんハイパードライブの燃料となるワープセルの設計図がない。
ワープセルを作るには反物質格納容器と反物質が必要になり、どちらもそれぞれ設計図が必要となる。
これはエクソスーツの機能を使って各素材を精製しワープセルを作ることが出来るのだが、設計図がなければエクソスーツが働かない。

ハイパードライブが完成し宇宙船に積み込む所までは進めた。
肝心の燃料についてはどうすればよいか・・・。宇宙を漂いながら頭を悩ましていたその時、正体不明の電波を宇宙船がキャッチした。
私が目覚めてから度々受信している電波だ。電波にはメッセージは含まれていなく、あるのはまた目的地不明の座標データだった。何者かが私を導いている。導きに従えば上手くいくだろう。
まるで操られているかのように私はその導きに従って座標データの元へ向かった。



座標データは地形操作機の設計図が置いてあったあの毒の惑星にあった。大気圏突入し、目的の座標データへたどり着くとそこには放棄された施設が佇んでいた。
電源は生きているが深刻なエラーが起きているようで中にいる者を守る役割を果たせていない。
それだけでなくこの施設の回りにはおどろおどろしいヘドロのようなものが散らばっていてその側に蠢く卵のようなものが転がっている。
ここは危険な所だ。本能がそう告げている。しかし座標データはこの施設の中にあるターミナルを示している。それを確かめる前に帰るわけにはいかない。



施設の中は更に酷い状況となっており、表にあったヘドロのようなものが施設内部に侵食していて施設のあらゆる機能を阻害していた。
目の前にターミナルがあるがヘドロのようなものがこびりついている。このままではターミナルを使用出来ない。
恐る恐る手を伸ばし、こびりついたヘドロを剥がそうとする。柔らかい感触。それは泥というより肉片のようだった。
酸のようなエクソスーツにダメージを与える物質が含まれていないことを確認してこの正体不明の何かを引き剥がす。
ターミナルの電源はきちんと立ち上がるのか?その一点が心配だったが杞憂だったようで弱々しいがたしかに信号が返ってきていた。
そして蓋が開く。ターミナルにメッセージと一つのアイテムが格納されていた。



「時が来れば、お前は我々を見出すであろう。16 16 16 16 16 16 16」

薄々気づいていたが、何者かが私を監視している。
これは明らかに私に向けたメッセージだ。施設に住む前任者がイタズラで書き込んだものではない。
その証拠にターミナルにはワープセルが一つ置かれており、ワープセルだけがなくて困っていた私にこれだけがピンポイントに手に入るというのはあまりに出来すぎている。目覚めてから度々何者かの加護とも言える導きを与えられてここまで来たが、この施設を覆う悍ましい物を見てからは加護ではなく呪いのように見えてきた。足取りが思わず早くなる。
必要なものはきっと全て手に入ったはずだと自分に言い聞かし早々に施設から立ち去る。




宇宙船を発進させそのまま勢いよく宇宙へ飛び出す。
ワープセルを宇宙船に取り込みハイパードライブのエンジンを起動させる。システムは正常に稼働している、いつでも他の星系に移動出来る!



※ハイパードライブが使えるようになるとギャラクシーマップ画面が開けるようになる。星一つ一つが星系でその全ての星に移動可能。ただし、緑色の星や赤色の星は専用のエンジンがないと突入することが出来ないため初期は黄色の星にのみ移動可能。



私はAytoska星系へ向かう事にした。
理由は特に無い。ただ自分の直感がここへ行けと言っているように感じただけだ。
行き先を決めハイパードライブの出力を全開にする。すぐに宇宙船は亜光速で航行し始めた。



(続く)



4月14日


眩い光に包まれながら航行する宇宙船。
目的の星系へたどり着くと自動的にハイパードライブの機能が停止し、深宇宙の景色へと戻る。



先程まで居た星系と比較してここは非常に明かりが強く宇宙が紫色に光っているかのように見える。
この星系の太陽とも呼べるB型主系列星は青色で極めて明るく光る。幾分珍しい星ではあるがその高い光度によって離れた星系からでも星として一際目立つ存在となる。私のように宇宙を流離う者にとって、B型主系列星はある種の灯台のような役割を果たしてくれている。



宇宙船から見て右側に見える一際大きな星はヤマルと名付けられた星だ。
窒素と酸素を主成分とする大気を持っており、湿度に富んだ惑星だ。生命を育むのに非常に適している惑星で航海者に与える環境脅威はない。
一見すると赤い海のようなものが見えるが、これは水ではなく赤い植物が濃密に植生しており宇宙からでもこのように見えているだけのようだ。
行く宛のない私は吸い寄せられるかのようにこの星へと降り立った。

20何度と非常に快適な温度。惑星を覆う芝。データが示している通りここは数ある惑星の中でも一際穏やかな惑星だった。


※稀に生命が育むのに適した惑星が見つかる時がある。このような惑星は資源があまり富んでいないが危険防御システムがなくても活動出来るため酸素が無くなるまで活動を続けることが出来る。

私はこの星の美しさに見とれていた。その時、宇宙船がまた正体不明の電波をキャッチした。これまでも度々キャッチしている電波と同じ類のものだ。差出人は不明で中身も座標データだけが残されている。
その座標データは今私が降り立っている惑星のとある地点を示していた。すぐに宇宙船へと戻りその座標データの場所へと宇宙船を向かわせた。




その場所はこの惑星に作られた交易所だった。
もし交易所を管理する仕事に就くとしたらこの惑星のように穏やかな気候の惑星で働きたいものだ。私は宇宙船を発着場に止めた。

座標データは確かにここの交易所を示しているのだが特段気になるような物は見当たらない。
この交易所もまたゲックが管理しているようだが・・・この中の誰かが私宛に座標データを送ったのだろうか・・・。
私は手当たり次第に話しかけ送られてきた座標データの事についてなにか知らないか質問して回った。



ゲックの言葉は分からないが彼らの反応を見る限り身に覚えがなさそうである。
この座標データは私を導く不思議なデータ・・・ではなく、ただのイタズラだったのかもしれない・・・。
最後に交易拠点の縁に座っているゲックに質問して知らないようであればここから離れよう。私はゲックに話しかけ、自分の宇宙船に正体不明の座標データが送られてきた事について話しなにか知らないかと質問した。

「トラベラーアノマリーの可能性はこれで2つの標準偏差を超えた。さらなる支援を提案する。設計図を受け取れ。」

・・・このゲックは今まで出会った生命体と違って私の知る言語で話しかけてきた。
だが私には肝心の話の意味がさっぱり分からなかった。

本人も自分が何を言っているのかわかっていない様子で、他人に思考を乗っ取られているように見える。
異星人は反物質の設計図を私に差し出してきた・・・。



私は反物質の設計図を受け取った。私をここに導いたのが誰にせよ、何らかの思惑があったのは違いない。
だがその思惑何なのかを推し量るすべもない。

反物質はハイパードライブの燃料となるワープセルの材料になる。
ワープセル用の格納容器の設計図をまだ知らないため自力でワープセルを作ることはまだ出来ない。
設計図を受け取った後、ゲックは正気に返ったようだが自分が何をしていたのか全く理解していないようだ。むしろ私になにかされたのではないかと勘違いし、その場で脂汗をかきながら震え始めた。
このゲックの側に居続けると可哀想なので早々にここから立ち去ることにした・・・・。

私は自分の宇宙船に乗り一度宇宙へと戻ることにした。



(続く)


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