シーズン13 目次 & ショートカット


第一話 : 第二話 : 第三話 : 第四話 : 第五話 : 第六話 : 第七話 

第八話 : 第九話 : 第十話 : 第十一話 : 第十二話 : 第十三話 : 第十四話

第十五話   :  最終話


第一話

==昼の1時

ガチャ

ルイ
「あ、ファンさん。おかえりなさいー」
ファン
「ただいまです。そしてごめんなさい、キュピルさん。アノマラド魔法台立学校にスカウトされてしまいました」
キュピル
「・・・・・え?」
ファン
「あと一時間以内にここを出ないとアノマラド魔法台立学校への船が無くなるので皆さん準備お願いします」



==船内



ジェスター
「キュピルー!ここのお弁当食べたいー!!」
キュピル
「うーむ、確かに俺も食べてみたいな・・・。この弁当・・。うまそうだぞ・・」
ルイ
「私が皆の弁当作ってありますからこっち食べてください」
ジェスター
「私あっちのがいい・・・」
ルイ
「今なんて言いました?」
ジェスター
「何でもない!!」
キュピル
「それにしても何で俺達までアノマラド魔法大立学校へ向かっているんだか・・・」
ルイ
「それは向こうに入学するからでしょ?」
キュピル
「い、いやぁ。それは理解してるんだ。しかし何でファンだけじゃなくて俺達まで入学することになったんだ?」
ファン
「皆さんがスカウトされたんです」
キュピル
「うーむ。ファンがスカウトされるのはなんとなく理解できるんだ・・・。ファンはかなり技術レベルが高い。
そんな人が学校に入ったら学校自体の技術レベルや名誉とか評判云々上がる。
しかしなーんで俺がスカウトされたのか・・・」
ファン
「えーっと、ここに手紙があります。」
キュピル
「準備で忙しくて全く手紙とか読んでなかった。見せてくれ」


『キュピル殿へ

ファン殿の技術レベルに大変感激しました。ぜひとも我が校への入学を許可していただきたい。
そなたが宜しければファン殿と同時にそなた等一同の入学も許可します。』

キュピル
「短・・・。・・・・って、待て。これ任意だったのか!?」
ファン
「そうですね。ですがせっかくですから行きましょう。みなさん勉強は大切です」
ジェスター
「えー、私勉強嫌だ〜!」
キュピル
「ファンと俺とジェスターで開いた勉強会を思い出すな・・・(シーズン5参照」
ルイ
「そんなことしてたんですね」
キュピル
「んむ。うーむ・・・。しかしなぁ・・・。俺も勉強は正直得意・・ではないんだが・・・。
アノマラド魔法台立学校だよな?魔法がついてるからには魔法も勉強するんだよな?」
ファン
「そうですね。」
キュピル
「よっし!魔法が習得できるならやってやるぜ!」
ジェスター
「私も魔法おぼえたーい!」
ルイ
「私は霊術を習得したいな〜」
キュピル
「やめてくれ・・・」
ジェスター
「でもアノマラド魔法台立学校ってどんなところなの?」
ファン
「そこの学校はアノマラド大陸の中心に存在する学校で様々な国がここの学校へ
入学するために猛勉強するほどのエリート校です。
ここの学校を無事卒業出来た人たちは職には一生困らないって言うぐらいエリート校ですね。
敷地もかなり広く学生寮などがあります。僕達もここの学生寮で寝泊まりすることになりますね」
ジェスター
「ふーん・・・」
ファン
「興味なさそうですね・・・」
ジェスター
「キュピル〜。おやつ〜」
キュピル
「先に弁当食え。だがファンよ、アノマラド大陸の中心にあるのだろ?何故船で行ってるんだ?」
ファン
「そのうち分りますよ」
キュピル
「むー・・・?」


船の旅を続ける事三時間。そろそろ皆船の旅に飽き始めた頃。

ルイ
「やった!勝った!!」
ジェスター
「えー!何でルイはそんなにトランプ強いの!」
ルイ
「ふふふ、」
ジェスター
「キュピルには勝つ!」
キュピル
「こいつだな」

キュピルがジェスターからカードを一枚引き抜く。

キュピル
「おっしゃ、上がりだ」
ジェスター
「えー!!!」
ファン
「よくババ抜きでそこまでテンションあげれますね」
ジェスター
「だって暇なんだもーん」

が、その時突然激しい揺れが発生した。

キュピル
「うおぉっ!!」
ジェスター
「わっ!!」
キュピル
「何だ!?襲撃か!?それとも津波か!?」
ファン
「もうこんな時間でしたか。みなさん外を見てください」
ルイ
「な、何でしょうか・・・」

ルイが恐る恐る外を見る。

ルイ
「と、飛んでる・・・!!この船、空を飛んでます!!」
キュピル
「ナ、ナンダッテー!!(AA略」

キュピルも窓を見る。続いてジェスター、ファンも見る

キュピル
「すげぇな!空を飛んでるぞ!!」
ジェスター
「ぎゃー!!私高い所怖い!!おやすみ!!」

ジェスターが部屋にあるベッドに潜った。

キュピル
「なるほど、そういうことだったのか・・・」
ファン
「あと二時間程度で到着しますよ。空に飛んでしまえばジェット気流であっという間に到着します。」
ルイ
「何だか凄いですねー・・」
キュピル
「魔法にしてもこんな巨大な船を浮かすとは・・。かなり強い魔力だと見える。
この船内の中に魔術師がいるんだよな?」
ファン
「いえ、全部アノマラド魔法大立学校から操作してます」
キュピル
「あんな遠くにあるのにマナが届くのか!?」
ファン
「あの学校にとってこの程度造作もありませんから。」
キュピル
「恐ろしい学校だなぁ・・・」
ジェスター
「ガクガクブルブル」
ルイ
「あ、ジェスターさん。ほら、もう大丈夫ですよ。よしよし・・・」
ジェスター
「怖い・・・」


==二時間後


ゆっくり船が降下を始める。
降下しているところを皆で眺める。ジェスターは震えていたが

降りてる最中に巨大な館が見えてきた。

キュピル
「もしかしてあれがそうなのか?」
ファン
「です、あれがアノマラド魔法大立学校です」
ルイ
「おー・・・相当大きい・・。」
キュピル
「いや、相当ってレベルじゃない・・。ナルビクの10倍ぐらい大きいぞ・・・!」
ジェスター
「迷子になりそう・・・」
キュピル
「はぐれないように」
ジェスター
「うん」

その時アナウンスが鳴った

『アノマラド魔法大立学校、正門前に到着しました。お忘れ物がないようお気を付けください』

ファン
「到着したようですね。行きましょう」
ジェスター
「うーん、なんか怖いー・・・」



==アノマラド魔法大立学校、正門前

キュピル
「やれやれ、一々言うのも大変なぐらい名前が長い場所だ。アノマラド魔法大立学校正門前?」
ルイ
「早口言葉で三回!!」
キュピル
「アノマラド魔法大立学校正門前アノマラド魔法大立学校正門前アノマラド魔学校大立正門・・・む?」
ルイ
「もう何が何だか分からなくなっちゃいますね」

その時ちょっと遠いところから片方だけ眼鏡をかけたそこそこ年のいってる老人が現れた。

片方だけ眼鏡かけてる人
「お待ちしておりました。ファン様ですね?」
ファン
「そうです」
片方だけ眼鏡かけてる人
「私の名はセバンと申します。お話は伺っております。どうぞこちらへ。
後ろの方達はファン様のお連れですよね?」
キュピル
「連れじゃない。むしろ俺が(ry」

ルイがキュピルの口を抑える

ルイ
「シィッー!!今だけプライドは捨ててください!
キュピル
「ぬ、ぬぐぉぉぉ・・・」
ジェスター
「困った大人〜」
ファン
「え、えーっと、はい。一応連れです」
セバン
「愉快な方達ですね。」

セバンが四人を別のところへ連れて行く。
正門から少し左にずれた小さな入口から校内へと入ってく。
何度も曲がり角を曲がり10分ぐらい歩いてようやく建物の中に入った。

ジェスター
「結構歩いたねー?」
キュピル
「そうだな、とても学校とは思えない広さだ」

建物の中に入ってすぐ近くの階段を上り三階まで上がる。
そこから少し歩くと扉の前で止まった。

セバン
「どうぞ、校長がお待ちになっております」
ファン
「わかりました」
キュピル
「凄いな・・。いきなりこんな大きな学校を運営してる校長に会うんだぞ・・・」
ルイ
「ジェスターさん。礼儀正しくお願いしますね。キュピルさんも」
キュピル
「う・・うむ・・。この場合ルイの方が慣れてるからな・・・」

キュピルが服の乱れを直す。ジェスターもパンパンとワンピースを叩く。


ガチャ

ファン
「失礼します」
校長
「おぉ、ファン殿。よくぞまいった。長旅で疲れておるだろ?ささ、どうぞこちらへ。
後ろの三人方も遠慮せずに」
ジェスター
「し、失礼します!!」
ルイ
「ジ、ジェスターさん・・。無駄に声でかいです・・」
ジェスター
「ご、ごめん・・・・・」
キュピル
「失礼シマァース!!」
ルイ
「ぶ!!」

あまりの緊張にキュピルの声が裏返った
校長も苦笑いしている

校長
「そんな緊張しなくていいですぞ」
キュピル
「す、すみません・・・。何だが自分が小さいころを思い出して・・・」
校長
「ほぉ、小さい頃ですか?」
キュピル
「はい。校長が苦手でした・・」
ルイ
「ぶ!!」
ファン
「それ今言う場面じゃありません・・」
キュピル
「くっ、礼儀なんてもう忘れちまったぜ」
ルイ
「よく依頼を引き受ける事が出来ましたね・・」
キュピル
「俺凄い偉い人の前に立つと緊張しちまって・・・」
校長
「ハッハッハ、まぁ椅子に座ってくだされ」
キュピル
「失礼します・・」

四人とも椅子に座る

校長
「ワシからの手紙はもう読んだかな?」
ファン
「はい。まさかアノマラド魔法大立学校からスカウトを受けるなんて思っても居ませんでした。」
キュピル
「やっぱり凄いことなのか・・」
ファン
「大変名誉なことですよ」
校長
「ワシがな、偶然技術コンクールの試験会場でファン殿を見かけましてな。
ファン殿の技術に大変驚きぜひここの学校でさらなる技術を磨いてもらって
一流の技術師になってもらおうと思ってな」
ルイ
「あの、ファンさんは何を作ったんですか?」
校長
「異次元ワープ装置機じゃよ。こんな装置作れる者なんぞどこにもおらん!」
キュピル
「(いつも平然と使ってたけど考えてみればそうだよな・・・)」
ルイ
「(確かに・・・。普通いませんよね・・・)」
ジェスター
「(そうなの?)」

皆心の中で妙に納得してしまう。

ルイ
「あの、失礼な事聞きますが何故私達までスカウトしたのでしょうか・・?普通ファンさんだけですよね・・?」
校長
「君、名は何と言う?」
ルイ
「え、ルイ・アリス・トラクシーと申します」
校長
「ルイ殿。人はどういう状況に居ると成長が早いか分るかね?」
ルイ
「えーっと・・・。学校とか・・試験前とか・・・ライバルがいる・・とか?」
校長
「うむ、どれも重要な要素じゃな。だが一番大切な物が抜けておる」
ジェスター
「はーい!!仲間!!」
校長
「正解じゃ」
キュピル
「げぇっ、ジェスターが何故か正解した!!」
ジェスター
「あー、喧嘩売ってるの?」
キュピル
「売ってない」
ルイ
「お二人ともお静かに!!」
二人
「ハイッ・・」
校長
「一人では成長しない。近くに楽しい仲間がおるから楽しく学ぶこともできる。
ワシはこれが一番重要じゃと思っておるのだよ」
キュピル
「ふ〜む・・・。確かに深いな・・・」
校長
「ま、そういうことだ。諸君!!このアノマラド魔法大立学校で大いに学ぶがよい!」
一同
「はい!!」
校長
「うむ、以上じゃ」

最後はにこやかに校長が笑った。


==廊下

キュピル
「はぁ、緊張したぞ・・」
ルイ
「学校に入学なんて凄く久しぶりです。あー、もう一回あの青春を謳歌できるなんてドキドキします!」
ジェスター
「謳歌って何?」
キュピル
「簡単に言えば仲間とともに喜びを分かち合うこと」
ジェスター
「おー、私も謳歌したーい」
セバン
「皆さん張りきってらっしゃいますね。では手続きへまいりましょう。事務所へ行きましょう」



==事務所


校長室から歩いて3分の所に事務所はあった。
どうやらここの校舎は管理系の校舎のようだ。


係員
「これが皆さんの制服と紋章です。この紋章を失くされますと様々の権限を失うのでお気をつけください」
ジェスター
「様々な権限?」
係員
「校内ではアルターと呼ばれるワープ装置機があります。このアルターに乗って番地を指定しますと
そこまでワープすることができ広い校舎を素早く移動することができます。
紋章を失くしますとアルターを使用する権限を失うのでお気を付けください。
また紋章を失くした状態で校内を歩きまわりますと部外者と認定されるのでご了承ください」
ファン
「確かにこれだけ広い学校ですと生徒全員の顔は覚えられませんよね。」
キュピル
「なるほど。深いな」
ルイ
「ここまで来る途中様々な人がいましたね。肌が黒い方から青い方まで・・・」
キュピル
「ジェスター種の奴もいたな」
ジェスター
「イニュイトとかクルノも見かけたよ!」
ファン
「本当に様々な国から来てるんですね。」
係員
「本来は男性寮、女性寮に分れてそこで生活してもらうのですが家族と聞いていますので
別の寮を用意しておりますのでそちらへ向かってください。」
キュピル
「(え?家族?)」

家族と聞いてレッドと話した事を思い出す。



そう。最初こそトレーナーもポケモンもお互い事をよく知らないけど一緒に冒険したり何かをやって
お互い分かりあい何年も一緒にいたらそりゃ誰だって家族と言っちゃうさ




キュピル
「(う〜ん、三か月も前の事だってのに何でこうも鮮明に覚えているんだろうなぁ・・・)」

頭をかきながら渋い顔をする。

ルイ
「どうしました?キュピルさん」
キュピル
「いや、何でもない。」
係員
「アルターはここを出て左の方に曲がり次の曲がり角を右に曲がりますとアルターがあります。
3-16番地へワープしますと寮の前にたどり着くのでそちらへ向かってください。
これが部屋のカギです。」

そういうと係員の人がカードを四枚カウンターの上に置く

係員
「そのカードを扉の前にかざすと鍵が開きます。紛失した場合1万Seed要求しますのでお気を付けください」
キュピル
「ここはホテルかよ」
係員
「お部屋番号はカードに書いてありますので。良い学園生活を送ってください」



==アルター


アルターと呼ばれるものの前についた
見た目はどうみても巨大な水晶だ。

ファン
「これに触れた状態で番地を言うとそこまでワープするそうです」
ジェスター
「私が一番最初にやる!!3-16!!」

そう発言した瞬間ジェスターが光に包まれ消えた。

キュピル
「おぉ、面白そうだな。3-16!!」

キュピルが光に包まれる。光が無くなった時には別の場所にいた。

キュピル
「ここが俺たちの寮なのか?」
ジェスター
「大きい!」

続いてルイとファンもやってきた。

ルイ
「部屋に行きましょう」



==特殊寮、502号室

キュピル
「ここが俺達の寮か。どれ」

キュピルがカードをかざす。ロックの外れた音が聞こえた。

キュピル
「魔法って不思議だな・・・。」

部屋の中に入る。

ジェスター
「広い!!」
キュピル
「うえぇっ!!?何でこんな広いんだよ!?」
ファン
「魔法で部屋がちょっと拡張されてますね。辺りにマナが漂っています」
ルイ
「本当だ・・。強烈なマナを感じますね・・・。でも不思議と心地良い・・・」
キュピル
「全然分らん。」
ジェスター
「わぁ〜!!」

ジェスターが部屋の中を走り回る。

キュピル
「やれやれ。自宅より広いとは。なんだが悲しいな」
ルイ
「ちょっと長旅したせいで疲れが・・・」
キュピル
「むぅ、確かに俺も疲れたなぁ・・」
ファン
「明日から編入生という扱いでクラスに入るそうです。僕達全員同じクラスみたいですね」
キュピル
「そうか。それならよかった。」
ファン
「今日はもうゆっくり休みましょう」
ジェスター
「えー、私遊ぶ!」
ファン
「休んでください」
ジェスター
「えー・・・。じゃぁ寝る!」
ファン
「そうしてください」

全員それぞれ自分の小部屋を決めたらそこに荷物を置き
すぐに眠りに就いた。

時刻はまだ八時だった・・・。



続く


追伸

学園物語?
いいなー、自分で書いておいて俺もこの学校入りたい。凄い楽しそう。



第二話


アノマラド魔法大立学校へ入学した一同。しかし・・?



=E-4組


キーンコーンカーンコーン


キュピル
「やーれやれ、ついに鐘まで鳴っちまったぞ。俺は知らん。本当に知らん」
ルイ
「あ、あはは・・・」
ジェスター
「zzz・・・zzz・・・」

机に突っ伏しながら眠るジェスターの姿があった。
ルイに頼んで制服を着させたものの一回も起きていない。
起きたら絶対驚くだろう・・・・。

鐘が鳴り終わった瞬間先生が教室に入ってきた。

青髪の先生
「おはようございます。SHRへ入る前に今日は編入生の紹介をします」

先生が誰だかを示す前に皆俺達を見た。そりゃそうだろう。

青髪の先生
「まず一番最初に。オレンジ色でミニ恐竜みたいなのがファンさんです」
ファン
「はじめまして。ナルビクからやってきたファンです。」
青髪の先生
「ファンさんはここの校長自らがスカウトしたエリート生です。」
ゴーグルをつけた青年
「うわ、まじかよ・・・」
銀のサークレットをつけた少女
「信じられない・・・」

ざわついてきたが先生が喋るとすぐに黙った

青髪の先生
「次に黒髪の人間がキュピルさんですね」

人間って言われるのも少しおかしい気もしたが人間以外の人もいるみたいだから
まぁ不思議ではないんだろうな。

キュピル
「どうも、キュピルと申します。ファンと比べると全然頭良くないですが以後よろしく頼みます」
青髪の先生
「次に白い髪が目印のジェスターさんです。」
ジェスター
「zzz・・・zzz・・・」

キュピルがジェスターを持ち上げる。

キュピル
「あー、すまない。まだ寝てるから変わりに紹介します。
中々に生意気でワガママだが根は悪くない奴なんだ。多めに見てくれ」
ルイ
「悪いとこしか言ってませんよね・・・」
ジェスター
「うー・・ん・・・?」
キュピル
「お、起きた」
ジェスター
「わ!ここどこ!?助けてー!!」
キュピル
「・・・・・・・・・・」

穴があったら入りたい・・・・。

キュピル
「ついでに学問に関しての知識は皆無だ・・・。皆頼む・・・・」

席につく。
ジェスターはポカンとしてる。

青髪の先生
「次はキュピルさんと同じく黒髪の人間がルイさんです。」
ルイ
「はじめまして。本名はルイ・アリス・トラクシーです。出身地がアノマラドではないので
この地方に関してはあまり詳しくありませんがよろしくお願いします!」
青髪の先生
「編入生の紹介はこの辺にしておきましょう。もっと知りたい方は自分で聞きに行ってください。
それでは今日の連絡事項をお伝えしておきます」

先生が連絡事項らしきものを伝えているが全く分らなかった。

青髪の先生
「以上です。・・・おっと、忘れていました。私の名は『ナワン』です。」

ファンがメモってる。用意周到・・・。

青髪の先生
「それでは失礼します」

先生が教室から去ると教室が一気にざわめきはじめた。
数人こっちにきた。

ゴーグルをつけた青年
「よっ、まぁとんでもない時期にきたな。ハハハ」
キュピル
「とんでもない時期?」
ゴーグルをつけた青年
「まぁな。そうそう俺の名前はダインだ。よろしくな」

グッと親指をあげる。威勢のいい青年だな・・・。

ルイ
「それで、ダインさん・・。とんでもない時期ってのは・・・?」
ダイン
「あぁ、来週クラス対抗勝負が開かれるんだ。通称魔法戦争」
ファン
「魔法戦争・・ですか?」
ダイン
「あぁ。基本的には破壊魔法と呼ばれる魔法を使ってひたすら敵を倒して拠点を占拠するルールだな。
魔法を使わなくても別にいいんだが皆高位技術の魔法を使ってくるから純粋な物理攻撃は
滅多に効かない。だから魔法戦争って呼ばれてる。毎年重症患者が出てな・・・」
ファン
「じ、自分戦闘苦手なんですが・・・」
ダイン
「そうなのか?援護とかに徹したらどうかな」
キュピル
「そういうのもあるんだな」

ふーむ、と相槌を打つように頷くキュピル

ジェスター
「ふぁああぁぁ〜・・・」
ダイン
「全然興味なさそうなジェスターが一名・・」
ジェスター
「だって興味ないんだもーん」
キュピル
「やれやれ、これは大けがするパターンだな」
ジェスター
「えー?」
ダイン
「っと、そろそろ授業始まる。そいじゃまた」

颯爽とダインが立ち去った。

キュピル
「ファン。俺達の授業ってどうなってるんだ?」
ファン
「昨日事務所から色々貰ってます。僕たちは一番最初に魔法学というものをまなぶそうです。
魔法を理論的に考えその仕組み、発動方法を学ぶ授業だそうです」
キュピル
「おぉ!初っ端から魔法の授業を受けれるってのか!」
ジェスター
「わーい!今日から魔法少女ジェスターになる!」
キュピル
「痛いな・・・」
ジェスター
「何か言った?」
キュピル
「そういうお年頃なんだよな?な?」
ジェスター
「むぅぅー」
ルイ
「とにかく急ぎましょう。あと五分しかないそうですよ!」
ファン
「アルターを使いましょう」



==魔法学質

プラチナやレアメタルによって作られた窓や鏡。
高価そうな石があちこちに置いてある。
適当な席を見つけ四人近くに座る。

ルイ
「なんかドキドキしますね」
ジェスター
「魔法使えるかな?」
ルイ
「うーん、でもやっぱりそれなりの勉強はしないとだめですよね」


しばらくすると教授が入ってきた。

魔法学の教授
「ごきげんよう、諸君。それではさっそく授業を始めようか。」

いきなり授業が始まった。
編入生だからって手加減はないってことか。
ノートを開いてメモをとる準備をしておく。

魔法学の教授
「それではマナストーンを机の上に置いておくれ」
キュピル
「マ、マナストーン?」
ファン
「あ、これです」

ファンが皆の前に石を置く。なんかファンに任せてれば大丈夫な気がしてきた。

魔法学の教授
「それでは前回の続きから・・・」



〜〜一時間半後〜〜

キーンコーンカーンコーン

魔法学の教授
「それではまた次回」

皆ぞろぞろと教室から出て行く

キュピル
「うへっ・・・」
ルイ
「やっと授業終わりましたね・・・」
ジェスター
「zzz・・・zzz・・・」
キュピル
「こら、寝るな」
ジェスター
「だってー。全然わかんないんだもーん。」
ルイ
「確かに想像してたものと全然違いましたけど・・・」

マナストーンとやらを取り出したからこれを使って何か魔法を唱えるのかと思ったら
そういうわけではなかった。ただひたすらマナストーンの原理とやらを知り
そして魔法の物理学的な勉強。なんかレニウム(Re)とやらは対電熱に優れていて
魔法を扱うのに最も優れている物質だーとか?えー?何?

ファン
「今のは魔法の基礎の基礎ですね。今日はおさらいだったそうなので結構簡単な方でした」
キュピル
「あ、あれで簡単だと?くあぁぁぁぁ〜・・・」
ルイ
「あ、キュピルさんの顔から何か白いものが・・・」
ファン
「幽霊離脱してますね」
キュピル
「エモートアイテム、幽霊離脱だ」
ルイ
「懐かしいもの使ってますね・・・」
ジェスター
「私こんなのがずっと続くって思うと気が狂いそうー・・・」
キュピル
「同意」
ルイ
「と、とりあえず次行ってみましょうか!」
ファン
「次は・・・。・・・えーと、魔法訓練所・・・?とにかく行ってみましょう」


==魔法訓練所


ルイ
「アルター使うと一分もかからずいけるのがいいですね」
キュピル
「我が家にもアルターとやらを設置してみたいな」
ファン
「アルター使わなくても10秒で自宅横断できますよね」
キュピル
「むぐ・・」


やってきた場所は室内ではあるもののかなり広い場所だ。
的みたいなものも見える・・・。もしかして・・・。
教授がやってきた。老婆だ

老婆教授
「皆さん、こんにちは。さっそく授業始めますよ。しっかり話は聞いてくださいよ。単位あげれませんからね」
ルイ
「いきなり単位の話・・・。」

一旦席につく。

老婆教授
「ではマナストーンを出してください」
キュピル
「またマナストーンか。」
老婆教授
「私語は慎むように」
キュピル
「うぐっ」

あんな離れてるのにまさか聞こえたのか・・・?
迂闊に喋れないな・・・。

老婆教授
「それでは教科書P275を開いてください」

めちゃくちゃ分厚い教科書をめくる。1ページがやたらと分厚い・・・。

ジェスター
「おもーい・・。ルイー。あけてー・・」
ルイ
「はい、どうぞ」


老婆教授
「いいですか、今日は皆さんに新しい魔法の効能とその使い方を説明します」
キュピル
「(おぉ、やったぞ!これは魔法使うために必要な勉強なんじゃないのか!?)」
ルイ
「(みたいですね!)」

老婆教授
「P275に書かれてる物を読み上げてください。では・・・ダイン君。どうぞ」
キュピル
「(お、さっきの奴じゃないか)」

ダイン
「えーと、はい。魔法名、バースト。体内のエネルギーから火の玉を作り出す破壊魔法の一つ。
この魔法はマナストーンからの手助けも必要であり更にその触媒(しょくばい)に自らのエネルギーも使うため
使いすぎると自身が動けなくなってしまうこともあるが戦闘の際一番よく使われる主力魔法です」
老婆教授
「はいどうも。今日は皆さんにこのバーストっというのを覚えて貰えます。
バーストを発動するにはこのマナストーンを握りバーストと言います。
その際右手を前に突き出し左手を右手の上に乗せその衝撃に耐えれる体制にしてください。
下手な体制は事故と怪我を招きます。いいですね?」

はい という声がホール内に響く。全員立ち上がり既定の場所に立つ。
もちろんキュピル達も指定された場所に立つ。

老婆教授
「それでは、始め!」

全員口々にバーストと叫ぶ。掌から炎の弾が形成され的に向かって飛んでいく。
火の玉がぶつかってきた板は激しく揺れ残り火が燃えていた。

ルイ
「バースト!!」

ルイの掌から炎の弾が飛んでいく。見事に火の玉を生み出すことに成功し的にぶつかった。

ルイ
「実は私この魔法昔から使ってたりします・・・」
キュピル
「なんてこったい。バースト!!」

・・・・・。全く発動しない。

ファン
「バースト!・・・おかしいですね・・・。」

ファンも発動しないようだ。

ジェスター
「バースト!!」

・・・ジェスターもダメのようだ。

ルイ
「あ、みなさん。実はちょっとしたコツがあるんです・・・。
さっきあの先生は何も言ってませんでしたけど実は空気中にマナと呼ばれる魔法のエネルギーの源となる
物が宙に浮いてるってのはご存知ですか?」
キュピル
「そういえばそんなこと聞いた事があるな」
ルイ
「そのマナを上手く吸い込んでいかないと魔法って発動できないんです。慣れてるとマナを体で感じる
事が出来るようになるんですけど・・・。これは慣れないとちょっと難しいんですよね。ちょっといいですか?」

ルイがキュピルの肩に触れる。
そしてググッと肩を掴む

キュピル
「いでいで!」
ルイ
「ジッとしてください!」
キュピル
「ぐおぉぉぉぉぉ!何だ!?ただの拷問なのか!!?」
ジェスター
「じぃー・・・」

しばらく痛いのが続いたがしばらくしてルイが離した

キュピル
「な、何だ!?何か必要だったのか今!?」
ルイ
「今マナをキュピルさんの体内に移動させました。今ならバーストが発動できるはずですよ」
キュピル
「ほ、ほぉ・・・。どれどれ」

もう一度的に向き直り・・・

キュピル
「バースト!!」

一瞬体全体が熱く燃えるように感じられたがすぐに火の玉が現れ的に向かって飛んで行った。

キュピル
「おぉ!!出来た!出来たぞ!!!」

その時さっきの老婆の教授がやってきた。

老婆教授
「おやおや、マナを移し替えるとは中々高位技術の魔法を持っているんですね。ルイさん」
ルイ
「え、あ、はい・・・」
老婆教授
「あなたにはもっと上位の魔法を教えてもよさそうですね。逆にキュピルさん。ジェスターさん。ファンさん。
貴方にはもう少し低ランクの・・・」

ファン
「バースト!」

ファンの掌から火の玉が生み出され的に向かって飛んで行った。
が、的にぶつかるのではなく突き破っていった。

ファン
「おぉ、できましたよ!・・・っておや?・・威力が強すぎたみたいですけど・・」
ジェスター
「えぇー!何でファンさっきまで魔法できなかったのに出来たの!?」
ファン
「ルイさんの話を聞いてリラックスすれば出来るかなって思って少し力を抜いたら
段々マナの流れを感じる事ができるようになりまして・・・」
ジェスター
「・・・えぇー・・」
老婆教授
「驚きました。今日編入したばっかりですから仕方ないと思っていましたけれどもまさかこの短時間で
中級魔法を扱えるようになるとは。貴方もルイさんと同じく上位の魔法を教えてもよさそうですね」

しばらくしてルイとファンは別の部屋へ案内されキュピルとジェスターはひたすらバーストの練習に入ったとか・・。

ジェスター
「キュピル!!私の肩掴んで!そしてマナ頂戴!」
キュピル
「どうやればマナ送れるのか分らん!」
老婆教授
「もっとリラックスして。香りを吸い込むようにマナを吸収してくのです。精神を集中させるのですよ」
ジェスター
「うぅぅーん・・・。」



==数十分後・・・


老婆教授
「はい、そこまで。いいですか。バーストはもっとも基本となる攻撃魔法です。
帰った後も自習練を続けてください。それでは今回の授業は一旦ここまでとします」



==E-4組


キュピル
「どぅぉぁぁあ〜・・・」
ジェスター
「もう無理〜・・・」
ファン
「もう無理って・・・あと三回授業残ってますよ」
ジェスター
「えぇー・・・!!」

するとダインがやってきた

ダイン
「あらら・・・随分とこってり絞り取られたね?」
キュピル
「あぁ・・・俺辛くてしょうがないわ・・・。ルイとファンはドンドン↑にいっちまうし・・」
ダイン
「まぁな・・・。でも数回成功してたじゃないか?キュピル」
キュピル
「ルイがマナくれた奴だな・・・。あまりにも俺とジェスターが成功しないもんだからあの教授が
バーストの弱いミニバーストからやってみろ言われちまった。そっちは数回成功したんだがなぁ・・」
ルイ
「ミニバーストって・・当たってもあんまり痛くないですよね・・?」
キュピル
「まぁな・・・。そぉら、ミニバースト!」
ルイ
「あちっ・・!・・・って私に向けて撃たないでください!!」
キュピル
「ハハハ」
ルイ
「笑わない!」
キュピル
「はい・・・」
ジェスター
「いいなー、私もルイに向けてマイナーバーストうちたーい」
ルイ
「や、やめてください!」
ファン
「ジェスターさん、次は体を直接動かす授業のようですよ。息抜きにはなるんじゃないでしょうか」
ジェスター
「おー、私あんまり考えるの苦手ー」
ダイン
「それ魔法に向いてないってことだよな・・・」
ジェスター
「何か言ったー?」
ダイン
「何でもない」
超身長がでかい男
「おっす、ダイン。」

突然ダインの傍にめちゃくちゃでかい男が現れた。
身長3mぐらいあるんじゃ・・・!?
人間とは思えん!!

ダイン
「よぉ、カジ。」
カジ
「この人たちは誰だ?」
ダイン
「今日新しく入った編入生だよ。」
カジ
「はっはー、そうかそうか。まぁよろしく頼むよ。」

凄いでかい手を前に出した。握手・・?

キュピル
「よ、よろしく頼むよ。キュピルだ」
カジ
「デイドラ族のカジだ。よろしく頼む」

カジの親指と握手する。親指一本が手のひらでようやく包めるってどういう大きさ・・・

ファン
「デイドラって・・・まさかあのデイドラ族なんですか?」
カジ
「なんだ、俺の族のこと知ってるのか?」
ジェスター
「デイドラ族って何ー?」
ファン
「はるか古代から語り継がれてきた伝説の族ですね。てっきりまやかしだと思っていたのですが・・・。
力が非常に強く知識もかなり高い種族です。力だけではなく魔法もまで自由自在に扱えるそうです。」
ジェスター
「へぇー・・。でもおっきー!!」
カジ
「ジェスター族か。相変わらず小さいなー。ハハハ」
ジェスター
「小さくない!」

カジがジェスターをつまむ

ジェスター
「ぎゃっっー!!」
ダイン
「ハハハ」
ファン
「そろそろ授業始まっちゃいますよ」
ダイン
「おぉ、もうか」
キュピル
「お互い別々なんだっけか?」
ダイン
「そうだな。クラスは同じでもランクが違うからな」
キュピル
「普通同じクラスならランクも同じ気がするんだがなぁ・・・。とりあえずまた会おうか」
ルイ
「さ、いきましょう。ジェスターさん」
ジェスター
「離して〜!!」

まだ掴まれてたのか



==グラウンド


全員ジャージに着替えてきている。もちろん俺達もだ。
しばらくすると体育系の男が現れた。

体育系教授
「おし、授業始めんぞ。」

全員整列して話を聞く。

体育系教授
「毎回疑問に思ってる奴らがいるから俺は何度でもこの台詞は言うからな!!
何故魔法に運動がいるのか!おい、レーヴァ。答えてみろ」

三つ編みの女性が答えた

レーヴァ
「魔法の大多数は自らのエネルギーを消耗する魔法が多いため持久力などをつける必要があります。
その持久力だけは魔法でどうにかすることはできずこうやって運動し体力をつける必要があるからです」
体育系教授
「おし、上出来だ。今日はその持久力をつけるぞ!グラウンド10週だ!!それだけじゃない!!
所々に的を置いてある!走りながらその的を破壊魔法で撃ちぬけ!魔法は何でも良い!!さぁ走れ!」

全員「はいっ」と叫んだ後それぞれグラウンドを走り始めた。

ファン
「や、やばいですね。運動はちょっと苦手なんですよ・・」
ルイ
「うーん、グラウンド一周何キロ何でしょうか・・・」
ジェスター
「ミニバーストー!」

ジェスターがひょろひょろの火の玉を放つ。
全然的に命中してない。

ルイ
「バースト!!」

びしばしルイが的にバーストをあてていく。キュピルもミニではあるもののしっかり当てて行く。


==数十分後

キュピル
「ぜぇはぁ。どうだ、五周ぐらいはいったんじゃないのか?」
体育系教授
「おし!残り九周だ!!」
キュピル
「な、なにぃー!?」

思わず古臭い一言を言っちまった。いまどきなにぃー!?はないだろう・・・。

ジェスター
「嫌だ〜・・。もう走らない!」
体育系教授
「バカ野郎!!」
ジェスター
「わ!!ごめんなさい!!!」

ジェスターが涙目になりながら走り続けた。頑張れ・・・

キュピル
「ちくしょー、負けてたまるか、うおぉぉぉぉ」

キュピルだけが猪突猛進する。

ルイ
「さ、さすがキュピルさんですね・・。スタミナはやはりかなりありますね・・」

その後も他の人をぶっちぎってキュピルがゴールした



キュピル
「うおぉっしゃー!一位だ!!」
体育系教授
「やるな、お前。」

グッとガッツポーズ取る。

ジェスター
「もー、いいよねー・・・?」
体育系教授
「貴様まだ六周だろうが!!」
ジェスター
「ぐすん・・!!」

泣きながらジェスターが走りだした。
その後結局10周走るまで解放されなかったとか・・・



=特殊寮502号室

ジェスター
「もうー疲れたー!!!」
キュピル
「風呂入ってとっとと寝るか・・・」
ルイ
「私もちょっと今日は凄い疲れました・・・」

ルイが頭を抑える

ファン
「僕も疲れました・・・」

全員やることを済ませてはバタバタッとベッドの上に倒れた。



気がつけばクラス対抗勝負は明日に迫っている・・・・




続く



第三話


疲労が残ってる状態のまま全員起床。


ジェスター
「うぅ〜ん!!疲れたー!私今日休むー!」
キュピル
「待て、昨日『も』休んだろ」
ジェスター
「休む〜!!」
キュピル
「いーや、ダメだ!!今日はクラス対抗勝負があるからな。戦力として無理やりにでも(ry」
ジェスター
「わぁー!!助けてー!幼い子供を戦場に連れ出そうとする〜!!」
キュピル
「普段から大人大人言ってる奴が何を言ってる!ほら、もうルイとファン行ったぞ!制服に着替えろー!!」
ジェスター
「ぎゃ〜!」




==教室E-4


ジェスター
「ぎゃ〜!!」
ダイン
「・・・朝から何やってるんだ?」
キュピル
「あまりにもワガママ言うものだから今日という今日は無理やり出席させにきた」
ジェスター
「いやだ〜!勝負嫌だ〜!!」
ダイン
「なんだいなんだい。勝負苦手なのかー?」
ジェスター
「そんなことないもん。」

急にキリッと何事もなかったかのように立つジェスター。
プライド高いのか低いのか・・・
するといつもより早めに鐘がなった

キュピル
「ん?早いな」
ダイン
「今日は特別だ。頼りにしてますよ旦那。へっへっへ」
キュピル
「お、おいおい。俺に期待しないでくれ。俺こそダインに期待してるぜ」
ダイン
「まぁ見てろ。」
ジェスター
「私キュピルの後ろに隠れてる・・・」
キュピル
「OK、隠れてていいよ」
ジェスター
「ほんと?優しい!!!」
キュピル
「後ろからの攻撃の盾になる」
ジェスター
「・・・・・・・ぐすん・・・」
キュピル
「な、泣くなって・・・。冗談だ・・・・。」



==試合会場


試合会場はとにかく広かった。
様々な障害物がありビルのように極端に高い壁から屈まないと敵の攻撃を食らってしまうほど小さい壁など
とにかく多種多様の障害物があった。
中には機銃にも見えるものも設置されていた。

キュピル
「なんだ、これは・・?」
ルイ
「それは弾幕機銃ですよ」
キュピル
「うお、ルイ。後ろにいたのか」
ルイ
「キュピルさんを見つけたので後を追いました。
この機銃は普通の銃器と違って引き金をひきますと・・」

ルイが機銃を握り引き金を引く。
その瞬間眩い魔法弾が物凄い広範囲に乱射されてった。

キュピル
「うお、眩しいな。こいつは・・・」
ルイ
「かなり広範囲の敵を攻撃しますからね。ですが・・欠点なのは反動の大きさです。
待機中からマナを取り入れて半強制的に機銃内部で魔法弾を作りあげるので
無限に撃てる代わりに激しく銃口がぶれます。」
キュピル
「さ、さすが銃器マニア・・・」
ルイ
「マニアじゃないです・・・。」

その時後方から声が聞こえた

ダイン
「おーい!キューピル!試合はじまんぞ!早くこっちに集合しろー!」
キュピル
「お、おう!悪い!今いく!」



自分のクラスの間にまぎれる。
暫くすると例の体育系教授が現れた。
この一週間散々厳しい訓練を受けたから俺の中では鬼教授と改名した

鬼教授
「今日はクラス対抗勝負!ルールは簡単だ。
先に敵本拠点を制圧、あるいは敵全員ぶちのめしたら勝利だ!
戦闘エリアはこの会場めいいっぱい使ってもらう!
確認これまでの授業で習った事を精いっぱい活用するように!!以上だ。
これより十分後に号砲を鳴らす。その合図がなったら試合開始だ。背を向けてる奴に
構わず攻撃をぶちかませ!」

全員ハイッ!と答える。

キュピル
「構わず攻撃をぶちかませって・・・それ教授が言う言葉なのかよ・・」
ジェスター
「ちょっと怖い・・・」
カジ
「よし、お前ら。作戦会議開くからこっちこい」

E-4組の全員が本拠点に集まる
戦闘エリアの地図を開く

ダイン
「おっし、作戦会議始めるぜ!」
黒いキャスケットを被った青年
「ダイン。相手ってどこだ?」
ダイン
「相手はE-1組だ。相手の情報は悪いが全然知らない・・・」

望遠鏡を持った蒼いロングヘアーの少女が割り込んできた

望遠鏡を持った少女
「相手の情報ならワシに任せんしゃい!ぜーんぶ調べてあるわい!」
キュピル
「なんつー喋り方や」
望遠鏡を持った少女
「ぬぬ?ぬぬぬぬぬぬ?」
キュピル
「うお」

望遠鏡を持ってググッと覗き見するかのようにマジマジと見られる

望遠鏡を持った少女
「・・・戦闘能力5!コケ!」
キュピル
「失礼な!!」
ダイン
「まーまー。ピアさん。早く相手の情報とやらを教えてくれよ」

あの凄い特徴のある子はピアと言うのか・・

ピア
「相手はいわゆる魔法戦士やな!前衛に体術が得意な人を並べて巨剣を持っておった。
後方で強化魔法や回復魔法などを唱えて前衛のものを強化させておったわい。
巨剣一発に斬られたらお終いやで?斬られた傷口がバゴーーンと!爆発するで!!」
ファン
「複合魔法を唱えてる人がいるんですね・・。おそらく武器に雷と火の属性を宿らせているのでしょう。
火と雷が合わさり衝撃を与えることによって爆発させてるのでしょう。
直撃でなくてもかすっただけで致命傷ですね。下手したら命を落としかねません」
ダイン
「流石ファンだ、この辺には詳しいんだな!」
カジ
「うむ・・。そうなると奴らとまともにやりあうのは少々部が悪いな」
ルイ
「あの、私達のクラスはどういう人が多いんですか?」
カジ
「皆の物。武器をあげてみろ」

そういうと皆様々な武器を上げた。

ルイ
「じゅ、十人十色・・・」
カジ
「俺に関しては素手だ。ただし魔法で強化しているがな」
ダイン
「俺はカトラスっていう剣だぜ!もちろん魔法も使うけどな」
キュピル
「良く言えば臨機応変、悪く言えばバラバラか・・・」
カジ
「おい、ピア。前衛の奴の装備はどうなっている?」
ピア
「うんんんん?かなりガッチガチの鎧を着込んでたの。
動くの遅いんじゃなかろうかね?」
カジ
「やはりか。やつらとまともにやりあっては圧倒的不利。こちらは機動力で撹乱させる戦法でいこう。
撹乱し分断させたら一人ずつ集団で潰しにいこう。
機動に自信があるものはおるか!?」
キュピル
「ほい!」
黒いキャスケットを被った青年
「はいよっと!」
包帯だらけの謎の人
「・・・・ふっ(手をあげている)」
カジ
「3人いれば十分だろう。彼等お前達は前衛で常に動いてもらう。
臨機応変に頼むぞ」
黒いキャスケットを被った青年
「へへ、任せてくれよ。」

カジ
「次だ。前衛はこの三人がカバーしてくれる。今度は敵の後方についてる支援兵をぶちのめさねばならん。
誰にも見つからずに奴らに秘密裏に接近、あるいは暗殺できるものはおるか?」
ルイ
「はい!」
ピア
「は〜い!!」
カジ
「うむ、なら彼女等には二手に分かれて行動してもらおう。」

他の人たちは拠点の防衛、弾幕張りなど主にディフェンスに回った。
ジェスターは負傷者の手当て、拠点の修理などについた。。ファンは参謀関係についた。

ダイン
「おし!皆持ち場につけー!」

全員口々に気合を高める声をあげるとそれぞれ持ち場についた。
拠点に固まる人。草むらに身をひそめる者。剣と鎧をもって前衛に立つ者。
杖を持ってマナを集めるもの。狙撃銃を持って高台にスタンバイする者。

そしてついに号砲が鳴り響いた!!


敵との拠点がかなり離れてるため敵がどのような陣形で進んできてるのかは分らない。
しかし前衛のラインを高めるために間違いなく猛スピードでこっちに向かってきているはずだ。
それはこちらにとって不利なのは間違いない。E-4の組も全員猛スピードで走る

カジ
「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
ダイン
「いっくぜええええぇぇぇぇっっ!!!!」
カジ
「皆の者!!後につづけぇい!!!」

『おおうっ!!』
 


20人程がまとめて叫んだためかなり大きな声となった。
本当にクラス対抗勝負なのだろうか。まるで戦争やってる気分になる。
前衛は20人・・後衛も20人ほどいる。とにかく俺たちが前衛を押し上げ戦線を維持させないといけない!

カジ
「キュピル!カタリ!ミーア!お前ら三人は俺達より先に進んで敵の前衛を撹乱させてくれ!
なるだけ分断させるんだぞ!!」
カタリ
「おう!カタリいっきまーす!」

カタリが物凄いスピードで前を走りぬける。は、はやい!
黒のキャスケットを右手に持って全力で走りぬけてる・・・。
包帯を巻いてる男か女か分らない人も物凄いスピードで前衛を走りぬけた!

キュピル
「な、なんだあんなに早いんだ!?」
カジ
「魔法だ愚か者!」
キュピル
「はっ、そうか。自己強化魔法か!」

いまだに魔法の才能が開花しないキュピル。
自己強化魔法という下位魔法すら扱えない。
見かねた他の支援兵がキュピルに風の加護、シルフウィンドを付加させる魔法を唱えた。
詠唱が終わりシルフの加護を受ける。その瞬間体が急に軽くなり一気に移動速度があがった。

キュピル
「疲れを感じない!これならいける!」

カタリ、ミーアの跡を追う。



ジェスター
「よいしょ、よいしょ。トントントン」

魔法で作られた透明な板を何枚も金槌で地面に刺すジェスター。
今回防衛が要となるのでなるべく拠点の防御力はあげておいたほうがいい。
敵が来るまで拠点の守備を上げさせる方針だ。

ファン
「ジェスターさん。ここばっかりではなく他の拠点にもお願いしますね」
ジェスター
「わかった」

本拠点一カ所を叩かれるとあっという間に陥落すると予測されている。
そのため複数の拠点を急ピッチで作りあげ前衛の敵を削ってから本拠点で凌ぐという作戦だ。
凌いでる最中にルイとピアが敵の支援魔法を唱える敵を倒せたら一気に攻勢に反転する予定だ。

ジェスター
「うーん、思ったより忙しい。」
ファン
「(ジェスターさんが珍しく仕事してる・・・)」




ミーア
「・・・・・。新入り」
キュピル
「え?」

凄いボソと言われたので思わず聞き返してしまった。

ミーア
「新入り。お前は左いけ。」
キュピル
「あ、あぁ・・・」

不気味すぎて思わず言うことを丸のみしてしまった。
とにかく左の方に走る。しばらく走り続けると銀装甲に包まれた重剣士を8人見つけた。

キュピル
「げぇっ!!俺一人でこいつら全員引きつけなきゃいけないのかよ!!」
銀装甲に包まれた重剣士
「見つけたぞ!斬り潰せ!!」
キュピル
「本当にクラス対抗勝負かよ!!」

とにかく時間を稼ぎ、分断させないといけない。

キュピル
「これでもくらえ!」

携行していたグレネードを敵の中心に投げつけ周囲にいた敵を吹き飛ばした。
だが吹き飛んだだけでダメージ自体は全く負ってなさそうだ。

キュピル
「よいしょっと」

全員転んでる隙に敵を踏みつけて向こう側まで移動する。
そしてあからさまに大きな声で

キュピル
「おっしゃー!このまま敵の拠点を潰しに行くぜ!」

と叫ぶ。
その言葉を聞いた敵は案の定キュピルを追いかけはじめた。

キュピル
「(よしよし、なんとか八人引きつけておけそうだな。)」

時々後ろを見ながら敵の拠点へ向かう。・・・が。

キュピル
「げぇっ!!」

敵の持ってる巨剣が突然二つに割れ銃口が見えた。
そして破壊力のある魔法弾をいくつも乱射してきた!!

キュピル
「こんなん聞いてねーぞ!!」

慌てて近くの草むらに飛び込み横に転がり続ける。
敵が見失って変な方向へ乱射している。
偶然近くに魔法機銃を見つけた。

キュピル
「こんちくしょう!」






ミーア
「・・・連れてきたぞ」

ミーアが敵五人を連れてきた。
敵がこちらの前衛を見るや驚き後ろに引こうとしたが既に囲まれていた。

銀装甲に包まれた敵
「リ、リンチされる・・・!?」
銀装甲に包まれた敵2
「ええい、こうなったら一人でも倒す!」
ダイン
「おりゃぁ!!」
銀装甲に包まれた敵
「おるぁ!!」

ついに前衛同士がぶつかりあった。
激しい白兵戦が繰り広げられている。

カジ
「どぉぉるぁあああ!!」


カジが身の丈と同じぐらいの巨剣を両手で振り回す。
身の丈と言うが3m弱もあり一般人からすれば巨木が倒れてくるような感覚がした。

銀装甲に包まれた敵
「ぐっ!!!」
カジ
「ほぉ・・。俺の攻撃を受け止めるとは・・・。流石強化魔法を受けているだけはある。
ふん!」
銀装甲に包まれた敵
「ぐおぉ!」

カジが思いっきり敵を蹴り飛ばした。4メートルは吹き飛んだのではないだろうか・・・。
20人vs5人ということもあってか現在前衛はかなり有利に動いていた。
だが突然辺りが暗くなった。

カジ
「ええい・・。何事だ」
ダイン
「まずい!カジ!破壊魔法だ!!」
カジ
「撤退だ!!」

E-4組の前衛が後ろへ少しずつ下がる。
さっき居た場所には巨大な稲妻が降ってきた。
どうやら敵拠点には破壊魔法を使って遠距離攻撃してくる敵もいるようだ。
この一方的な攻撃は流石にどうすることもできず徐々に後退するしかなかった。




ジェスター
「ねーねー。ファン!見て!向こうの拠点で戦闘が起きてるよ!」
ファン
「防衛拠点ですね。あそこには最低限の人しかいません。陥落は必須でしょう・・」

拠点の扉はがっちり閉められており敵の戦士がハンマーで門を壊している。

ジェスター
「助けなくていいの?」
ファン
「今ここで人数を分散させるのは危険です。まもなくここの本拠点にも敵の攻勢がやってくるはずです。」
ジェスター
「よーし、私久々に本気出しちゃうよー!」
ファン
「ジェスターさん怪我人の治療だったんじゃ・・」
ジェスター
「いーの」
ファン
「・・・好きにしてください・・・」




始めは押してるかのように思われた。
しかし敵の破壊魔法による遠距離攻撃にはどうすることもできず、じわじわと
防衛拠点に押し込められていた。

ダイン
「くっ、まずいぜこいつは・・・。カジ。機動力のある三人には敵拠点に乗り込んでもらって
工作して貰った方がいいんじゃないか・・?」
カジ
「賢明だな」

カジがトランシーバーを取り出し三人に伝令する


カジ
「おい、キュピル、ミーア、カタリ。それぞれ三つある拠点に潜りこんで敵魔術師をしとめてこい。
門の扉を開ける事も忘れんな」

ザッと無線が切れる音がする。そしてすぐに誰かの声が入った

カタリ
「よぉーよぉー、カジの旦那!相変わらず偉そうだな!了解!」

その後すぐに

ミーア
「・・・わかった」

しばらくした後

キュピル
「ちょっとまってくれ。敵前衛八人引きつけるのに精いっぱいだ。誰か俺の代わりを頼む」
カジ
「誰かキュピルをサポートしてやれ」

ちょっとした後に誰かが言った

ルイ
「私に任せてください!」



キュピル
「ま、任せてくださいって・・。ルイは潜入中だろ!?って、うおぉっぉ!!」

敵の強力なエネルギー弾が頬をかすめる。
皮膚がひりひりする。

キュピル
「まずい・・」

その時突然ガキンッ!!という鈍い金属音が鳴り前衛の一人が倒れた。
続いてもう一人、また一人倒れた。
何が起きたのかよくわからなかったが無線が入った

ルイ
「偶然キュピルさんが見える場所にいたので狙撃で援護しました。
ですがこれ以上射撃すると場所がばれるので後は誰かに任せます!」

他の誰かが無線で言った。ピアだ

ピア
「キュピルが攻める予定の拠点はワシが攻めにいくばい!」
キュピル
「助かる」

滅茶苦茶すぎる言葉は突っ込まないでおいた。
よし、頑張って五人を引きとめる!ここで下がっちゃ男の名が廃る。

キュピル
「うおりゃぁっ!!」

魔法機銃を使ってババババババッと連射する。
敵の前進を食いとめる事が出来た。
だが敵も盾を構えながら魔法弾を飛ばして応戦してくる。
流石にまともに打ち合うとまずいので機銃から離れ逃げる。
とにかく今はこいつらを引きつけていればいいんだ・・・。




ファン
「皆さん!十分に引きつけてください!」

重要防衛拠点にて防衛兵が狙撃銃や魔法の杖を構えて待機している。
敵の前衛がすぐ近くまで迫ってきている。

ジェスター
「うー!ファンまだー!?」
ファン
「まだです」

いよいよ目と鼻の先になろうとした瞬間。

ファン
「今です!」

突然拠点の窓が開きそこから沢山の迎撃弾や魔法弾が発射された。
不意を突かれた敵はその攻撃を防御することができず致命的なダメージを受けた。
敵の陣が崩れた隙に正門が大きく開いた。

カジ
「いくぞ、皆の物!!」

もう一度 おぉぉ! と大きな声をあげて隠れてた前衛の人たちが前に出た。

ジェスター
「私の一撃!!」

特殊な鉄の棍棒を振り回す。ペットとは思えない強烈な一撃が敵の鎧を破壊した。


「ば、ばかな!強化魔法を受けてる鎧が・・・」
ジェスター
「んー!!!」

ジェスターが次の一撃を繰り出そうとする。
だがすぐに他の前衛の物がタックルしてジェスターを弾き飛ばす。

ジェスター
「痛い!」

ゴロゴロと10mぐらい吹き飛んだ。
そして再び混戦となった。
しかし迎撃態勢が整った敵に対し殆どダメージが入っていなかった。

ファン
「頑張れば10分は持つでしょう。ですが陥落も時間の問題です。指定された人は本拠点まで引いてください」

何人かが防衛拠点から逃げる。




キュピル
「逃げる俺は誰にも追いつかれないぜ!!!」

後ろから多数の魔法弾が飛んでるが今のところ命中していない。
その時大きく門を開いた拠点にたどり着いた。

カタリ
「げげっ!キュピル!俺のところに来るなよ!!」
キュピル
「うおぉぉ!カタリちょっとすまん!!」

そのまま敵の拠点に入る。
もちろん追ってる前衛の人も入る。

カタリ
「ばっか!せっかく工作してたのに!!」
キュピル
「文句言ってる暇あったらとっとと破壊魔法出してる魔術師叩くぞ!」

拠点内におどおどと同様してる魔術師が何人か見えた。だがこちらに杖を向けた!
抜刀し迎撃される前に一気に切り刻んだ!
悲鳴を上げそのまま地面に倒れた。

カタリ
「あらよっと!」

カタリも片手で扱える軽い槍で敵を突く。
簡単に槍が刺さり魔術師が倒れる。
その時突然追ってる前衛の敵が急に動きが鈍くなった。
無線が入った。

ルイ
「敵本拠点にいる支援兵一人を狙撃銃で倒しました。ですが一人倒したら他の支援兵が
拠点の壁に囲まれた場所に移動してしまい狙撃できなくなってしまいました・・・。
恐らく一部の所で強化魔法が切れてるはずです!」
カタリ
「俺達のいる場所で強化魔法が切れたぜい!」

今まで前衛の敵は鎧を軽くする魔法を受けてたためかなりのスピードで追ってきた。
だがその強化魔法の恩恵がなくなり物凄く遅くなった。
それどころか今までガチガチの鎧だと思われてたものが急にボロボロに見えてきた。

キュピル
「今ならいける!!」

キュピルが思いっきり銀装甲に身を包まれていた敵を剣で思いっきり叩いた。
その瞬間鎧がボロボロとはがれおち中身が出てきた。


「う、うえぇ!!」
キュピル
「さっきはよくもやってくれたな!くらえ!」

思いっきり敵の顔面を蹴る。
蹴られた敵が両手を上げ降参の合図を出した。
一気にここの拠点を制圧してしまおう!!




ファン
「無線が入りました。カタリさんが拠点制圧に成功したようです。どうやらキュピルさんも一緒だとか」
カジ
「こっちは経った今前衛から離脱。拠点は制圧された。どうやら担当してる支援兵が倒されると前衛の奴らの
強化魔法が瞬時に消える仕組みのようだ。だがこちらが相手してる前衛の敵は一人も効果が消えなかった。
全ての支援兵を撃破せねば我らに勝利はない。工作兵、全ての支援兵を撃破せよ!」
ミーア
「こちらミーア。一つの拠点を制圧、魔術師も撃破。支援兵は0。
ピア。そっちはどうなっている」

ピアから反応がない。まさかやられたのか?

ダイン
「ったく、あいつ無線どっかにすてたんじゃねーの!?」
キュピル
「やられたという類は?」
ダイン
「あいつは簡単には倒れないぜ。だがかなり軽装だろ、あいつは。邪魔なもんは全部捨ててな・・」
キュピル
「・・・・・・」
カジ
「ミーア、キュピル、カタリ。もう一個の拠点を落とせ」
カタリ
「りょーかい!」

無線が切れる。
その後すぐにカジ達が本拠点に戻っていった。

ファン
「本拠点が落とされるのも時間の問題です。迅速にお願いします」
キュピル
「わかった」
ファン
「そこの拠点を落とせば敵の破壊魔法による援護がなくなります。そうすれば少しは押し返せれると思います。
・・・・もう敵が来ました。みなさん、迎撃準備です!」

ここで無線が途切れた。




ルイ
「くっ」

敵の本拠点すぐそばまでやってこれた。
だが全ての入り口が堅くとざれており中にどうあがいても侵入できない。
これでは支援兵を倒す事ができない・・!
その時凄い軽やかなステップで高く飛び上がる誰かを見つけた。ピアだ。

ピア
「アハハハ!」

そのままピアが壁を乗り越えるすさまじいジャンプで敵本拠点の中に入って行った。
凄い人だ・・・・。
ルイも中に入ろうとしたがやはり入れない。

ルイ
「ピ、ピアさん・・。お願いします・・・!」




カジ
「おどるぁぁああ!!!」

銀装甲に身を包まれた敵
「ぐあっ!」

カジの強烈な横なぎの攻撃はいくら防御の構えを取っても後方に吹き飛ばされる。
転んだ敵のすぐ近くにジェスターが立っていた。

銀装甲に身を包まれた敵
「どきやがれ、このペット野郎!」
ジェスター
「えいっ!!!」

渾身の力で鉄の棍棒を使って敵を思いっきり殴る。
またパキパキと鎧にヒビが入り割れた。

銀装甲に身を包まれた敵
「ひ、ひぃぃぃ!!こ、降参!!!」
ジェスター
「ゆるさなーい!」

殴ろうとした時棍棒が止まった。カジに棍棒を掴まれていた。

カジ
「降参したものを殴ると即時退場を命じられる。」
ジェスター
「む、むぅー・・!」

ちょっとご機嫌斜めのジェスター。
しかしすぐ後ろに敵が迫ってきていた。

ジェスター
「えい!えい!えい!!!」

ジェスターがぶんぶんと鉄の棍棒を振り回す。
だがさっきの光景を見てから誰もジェスターに近寄らず皆避けて戦ってる。
それに気付かずジェスターはただブンブン振り回していた。
その時遠距離破壊魔法が本拠点の一部の支柱に命中し破壊され
壁がいくつか消えた。

ファン
「被害甚大!!本拠点陥落まで間近!!敵支援兵撃破まで後どのくらいですか!?」
ルイ
「ファンさん!頑張って10分ぐらいかかると思います!」
ファン
「五分で済ませてください!!」
ルイ
「そんな無茶な!」

無線を聞いてキュピルが首をかしげる

キュピル
「(どっかで聞いたことある流れだ・・・)」
ミーア
「・・・死ね」
キュピル
「うお」

自分に言われたのかと思いびっくりするが敵に向けてだった。

カタリ
「へへっ、敵拠点陥落させたぜ!破壊魔法による援護はなくなったぞ!」
カジ
「上出来だ。これで幾分か戦いやすくなった」
ファン
「10分は持ちそうです」

その時突然敵の動きが凄い鈍くなり隙も莫大なものになった。
チャンスを逃さなかった人は今の一瞬で一気に大量の前衛を転倒させた。
無線が入った

ルイ
「やりました!ピアさんが支援兵倒しました!」
ダイン
「根拠は?」
ルイ
「拠点から『倒した倒したー!』って叫んでる声が聞こえます・・・」
カジ
「確かに敵の動きが一気に鈍くなった。いまだ、作戦通り押し返せ!!!」


それから10分後。強化魔法の恩恵がなくなった敵は
怒涛の電光石火な攻撃を防ぎきることができずあっという間に本拠点陥落。
見事E-4組の作戦勝ちとなった!


キュピル
「おっしゃ!やったぞ!」

バッと飛び跳ねる。

ジェスター
「わーいわーい!私頑張ったよー!」

キュピルと一緒に飛び跳ねる。他から見れば完全に子供でちょっと目をそむけたくなったが

カタリ
「いやっほーい!!やったな、ははは!!」

カタリも混ざって大はしゃぎ。三人で肩を組み合う。

ダイン
「おい、このやろ。俺も混ぜろよ!」
キュピル
「うわっ!!ちょっとまってくれ押すなって!」

ダインに押されてバタバタと倒れる。ドミノ倒し状態

ルイ
「いつからそんなに仲良くなったんですか・・?」
カタリ
「わかんね」
キュピル
「なんか知らんが無性に気があいそうだぜ」
ダイン
「ハハハハハ」

カジがぼそりと呟く

カジ
「やんちゃっていう面が全員合ってるのではなかろうか・・・」
ルイ
「な、なるほど・・・」
ファン
「はぁ・・。なんか物凄く疲れました・・・。やっぱり勝負って怖いですね」
ルイ
「ファンさんは普段戦闘に出ませんからね。」
キュピル
「おし、クラスに戻るかー」
カジ
「うむ」
ファン
「そうですね」

クラスが極端に多いので次の予選はまだまだ先だ。
このクラスに馴染みながらしっかり勉強して強くなろう・・・。
全員そう思った瞬間であった。

続く



追伸


キュピルが「どこかで聞いたことある流れだな・・・」と発言した部分。
知ってる人は知っている。ポケットの中の戦争の台詞・・・。



第四話


前回の試合から一週間後。
次の試合は約一週間後。それまで全員授業を受けているが・・・?


==魔法訓練所

老婆教授
「いいですか?今日はエンチャントについて皆さんに学んでもらいますよ。
ファン、わかりますか?」
ファン
「エンチャント魔法は武器などに魔法効果を乗せる魔法です。
例えば剣に火の属性を宿らせれば敵を切りつけた時に火属性の追加魔法攻撃を与える事が出来ます。」
老婆教授
「そのとおり」

ルイ
「流石ファンさん。詳しいですね」
ファン
「ありがとうございます」

その時誰かが席を立った。
オールバックで物凄い髪の長い青年だ。
腰ぐらいまであるだろうか?髪の色は白く目付きも悪い。

物凄い髪の長い青年
「先生、お言葉ですが微妙に違います」
老婆教授
「ではギーン、答えてください」
ギーン
「エンチャント魔法は正式には精霊から力を借りる魔法です。精霊を呼び出し武器に宿らせることによって
切りつけた対象に精霊が共に攻撃してくれる魔法です。
魔法効果を乗せるというのは間違いです」

ファンも立ち上がった

ファン
「ギーンさんの言ってる魔法は召喚式のエンチャント魔法です。現在主流なのは魔法効果を乗せる
エンチャント魔法です」
ギーン
「いいや、正しいのは精霊を呼び出す召喚式のエンチャント魔法だ。確かに今お前の言った
形式のは多いようだが正式な軍隊でもこの召喚式のが用いられている。
威力も属性もこちらのが上だ。正しい魔法はこっちだ」

キュピル
「何の話かさっぱりだ」
カタリ
「全くだぜ」
ダイン
「おいおい・・・。お前ら話聞いておけよ・・・」

喧嘩になりそうな雰囲気だったため先生が止めた。

老婆教授
「そこまでです。ファン、ギーン。二人とも確かに正しい魔法です。
ですが二つの魔法にはそれぞれ使われるタイミングがあります。魔法に優劣をつけることはできません。」
ギーン
「・・・ふん」
ファン
「・・・はい」

二人とも席に座る。
だが密かに闘士が燃えてるのがよくわかる。

キュピル
「・・・・ギーンか。なんか感じ悪いな」
カタリ
「あいつ男の癖に髪何であんなになげーんだ?」
ダイン
「お前は19の癖に何でそんな背が小さいんだ?」
カタリ
「なんだよ!」
ダイン
「ハハハハ」
老婆教授
「そこ!黙らっしゃい!!」
ダイン
「はい・・・」


キュピル
「(ふーむ・・・・)」


老婆教授
「エンチャント魔法はまた別の時に紹介しましょう。今日もバーストの魔法で
射撃訓練を行いましょう。百発百中を心がけるように」

老婆教授がその場から離れる。
各自それぞれ的の前に立って魔法を放ち始めた。

ファン
「バースト!」

炎の弾を召喚し的にぶつける。ど真ん中だ。

ルイ
「バースト!・・・あぁ、外れてしまいました・・・」
ジェスター
「ルイ〜・・・。バースト全然発動できないよー・・・」
ルイ
「マナをまだ取りこむのが苦手みたいですね。リラックスしてください」
ジェスター
「リラックスできな〜い!」
ルイ
「む、難しいですね・・・」


ギーン
「バースト!!」

ギーンがド派手なバーストを10連射した。反動もすさまじいはずなのに百発百中だ!

ふっ とでも言いたいような顔でファンをチラッと見る。
ファンも対抗する

ファン
「メガバースト!!」
ギーン
「なに!?」

ファンが巨大な炎の弾を作り出し的を貫通させた!!
その絶大な威力を見て何人かが腰を抜かした

キュピル
「ヒ、ヒエェェ」
ジェスター
「ギャアァァ」
ルイ
「ふ、二人ともしっかり・・・」

だがそれを見てギーンは更にまだ対抗する。メガバーストを連射しはじめた!
的どころか後ろの壁すら崩し始めた。騒ぎをききつけ先生がやってきた

老婆教授
「まぁ!バーストの上のメガバーストの連射だなんて!
貴方達。いい加減にしなさい!」

しかし二人とも悪びれた事はしてないと微妙に態度を崩さない。
これは本格的な喧嘩になるかもしれない。
それにしてもあの温厚のファンが強硬な態度を崩さないとは珍しすぎる



==E-4組



ダイン
「よぉ、キュピル!聞いてくれよ!カタリったら二人のメガバースト見てちびっちまったらしいぜ!」
カタリ
「なんだよ!!俺ちびってなんかいねぇーよ!!」
キュピル
「ぶっ!」

思わず噴き出す

ジェスター
「子供〜」
カタリ
「ジェスターだって子供じゃないか!」
ジェスター
「私は子供じゃない!わぁぁあああ!」
カタリ
「な、なんだよ!このー!」

二人ともポカポカ叩きあってる。子供だ。

ルイ
「二人の喧嘩は全然可愛げがあっていいですけど・・・。」
キュピル
「あぁ、ファンとギーンだろ?」

さっきから絶対にこいつには負けないオーラーが漂っている。
周りに居る者も少し居心地が悪いようだ。

キュピル
「何とかしたいな・・・」




==魔法実験室

この部屋には初めて入る。
どうやら魔法も薬とかと同じく魔法と魔法を合わせることによって全く新しい別物の魔法が
出来上がる事があるらしい。ここではその魔法の融合を学ぶ部屋のようだ。
白衣を着た教授が現れた。ハゲだ・・・。こっそりハゲ教授と呼ばせてもらおう。

ルイ
「・・・・くすっ・・」
キュピル
「今同じ事考えたな?ルイ・・・」
ルイ
「かもしれませんね・・・」

苦笑いする。

ハゲ教授
「よし、いいかー?今日は相対魔法というのを学んでもらうぞー。
相対魔法学。誰か分る奴はいるか?」

ファンとギーンが手を挙げた。

ハゲ教授
「そうだな、ならギーン。答えてみろ」
ギーン
「相対学とは相対する正の力と負の力を組み合わせることによって全く未知の魔法を作り出すことです。
一般的に光属性と闇属性。水属性と火属性などといった双方がそれぞれを打ち消す魔法が
組み合わされます。」
ハゲ教授
「その通り。」

ファンが何か言い返すかと思いルイ、キュピルがチラっとファンを見たが席に座ったままで
何も反論しない。
知識がこれ以上ないのか?それとも大人なのか?

ハゲ教授
「さて、この相対魔法学はどのような時に使われるか分るか?」

再びファンとギーンが手を挙げた。他の者は上げていない

ハゲ教授
「では今度はファン。答えてみろ」
ファン
「相対魔法は基本的に互いの効力を混ぜ合わせ二つともその力を失います。
例えば対象が毒に犯されてる時その相対となる魔法を体内に入れることによって
強力な猛毒でも相反させ打ち消すことができます。他にも強力な破壊魔法を放ってきても
その魔法と相対する破壊魔法を放てば相殺させ打ち消す事が出来ます。
このように相対魔法は効果を打ち消す魔法が多いため防衛魔法と呼ばれる事が多いです」
ハゲ教授
「うむ。正解だ」

が、ギーンが手をあげたままだ。

ハゲ教授
「ん?何だ?ギーン」
ギーン
「先生。相対魔法の大事な部分を言い忘れています」
ハゲ教授
「言ってみろ」

少しギーンに注目が集まる。

ギーン
「先程相反する魔法を放てば打ち消す事が出来ると言っていましたが違います。
ただ相反する属性の魔法を放つだけではどちらか一方だけが打ち消される事が多々。
そのため相反させ両方の効果を打ち消すにはマナ量を誤差EMP5以内に収め相反させる必要があります。
この誤差EMP5を上回る、あるいは下回ると相反できずどちらかだけが消される可能性があります。
また本来混ざりあわない魔法同士を混ぜ合わせる必要があるため特殊な詠唱術も必要になるということも
先程の説明には抜けていました」
ハゲ教授
「その通りだ。百点満点の答えだ」

ギーンが勝ち誇ったような顔する。
ファンはガン無視を決め込んでるのか見向きもしない。
いよいよ教室の空気が悪くなってきた

ハゲ教授
「だがギーン。お前はいつも先を行きすぎている。皆と歩調を合わせろ。
ここはお前だけの授業じゃないんだ」

ギーンが物凄い小さな声でボヤいた。

ギーン
「全員頭悪すぎるだけだろ・・・」
ダイン
「おいお前今何て言った」

すぐ隣にいたダインがギーンに食いついた。
しかしその隣にいたミーアが

ミーア
「・・・やめろ。相手にするな」
ダイン
「・・・・」

無言でギーンを離す。
しかしギーンは見下す眼でダインを見ている。
その後は誰も口出しをしなかった。
ハゲ教授も溜息をついたがそのまま授業を続けた。




==放課後


鐘がなった。全ての授業が終わった。ここから先は自由だ。

キュピル
「お疲れ、ファン」
ファン
「お疲れ様です」
キュピル
「あいつの事は気にするな。周りの空気が読めてない輩だ」
ファン
「気にしてませんよ」

嘘だ。本当に気にしてないなら老婆教授の授業の時強硬姿勢を崩しただろう。

ジェスター
「キュピル〜・・。お腹減った〜・・・」
キュピル
「ん、悪い。今機械のネジ持ってないな・・・・」
ルイ
「すいません。私も今食べる物持ってません・・・」
ジェスター
「えー、お腹減ったー!」

ジェスターがファンの上に乗る。

ジェスター
「売店いこ!売店!はいやー」
ファン
「僕は馬じゃありませんよ!?」

しぶしぶジェスターを乗せたまま購買部に行くことになった。


==購買部

ここの購買部は何でもそろっている。
授業に使う筆記用具はもちろん。マナストーンから何に使うのか分らない鋼鉄まで。
どっかのよろず屋なんかより全然そろっている。
もちろんお菓子や食べ物も売っている

ジェスター
「おやつー」
キュピル
「五時だからちょっとだけな」
ジェスター
「えー」

その一方で新聞を売っているコーナーに誰か立っているのに気付いた。
ギーンだ・・・。
こちらには気づいていないようだ。何か新聞を立ち読みした後そのまま去って行った。
つい気になりキュピルもギーンが読んでいた新聞を手に取り一面を見る。


『ドラケンズ戦争 拡大

アノマラドの領土拡大戦争はオルランヌを制圧し一見順調に進んでいるように思われた。
しかし長引く戦争にアノマラドにも疲労が見え始めた。その隙をトラバチェスが電光石火の勢いで
戦争に参加。宣戦布告してから5分の出来事だったためアノマラドの管轄下となったオルランヌから
一時撤退。更に撤退したその隙にオルランヌが決起。現在アノマラドとオルランヌとトラバチェスによる
三つ巴戦争が続いている。

戦術評論家によるとこの戦争は大変長引くと予測されたがアノマラドの敗北は極めて薄いとのこと。
後ろ盾となるのがアノマラド魔法大立学校の存在がそう言わせている。この学校は様々な国からの生徒が集まる
優秀な学校だがアノマラドの管轄下にあるためいざとなればこの学校で生み出された技術が
戦争に使われるだろうとのこと。学校の技術は軍の遥か数倍以上進んでおり現在司令部は
アノマラド魔法大立学校に技術支援を要請中とのこと。しかし校長はこの要請を承諾しない模様。』


キュピル
「何だ何だ・・?うちの学校は随分とやばそうだな」
カタリ
「お、キュピルじゃねーか。何読んでんだ?面白い四コマ漫画でも乗ってたか?」
キュピル
「今日の四コマは休刊だ」
カタリ
「ちぇ、つまんねーの」
キュピル
「それよりこの記事、カタリはもう知ってるのか?」

キュピルがさっきの一面を広げてカタリに見せる

カタリ
「あぁ、知ってるぜ。でも位置的に考えて絶対うちらのとこにはやってこねーよ。」
キュピル
「俺知ってる。今フラグだったっていう言葉を・・・」
カタリ
「なんだ?そのフラグとかって?」
キュピル
「油断しないほうがいいよってことだ。」
カタリ
「なーに、うちらの学校は軍事力だってあるんだぜ。毎年毎年クラス対抗勝負してっからな。
そのお陰でだーれもうちの学校には攻めてこねーんだ」
キュピル
「あぁ・・なるほど。」

確かにあの勝負を見てしまうと他の国も迂闊にはこの学校には手出さないだろう。
それにこの学校に手を出すこと自体が自殺行為に近い。
いろんな国が集まっているんだ。ここの学校を潰したら自国以外全てが敵になるといっても過言ではない。
ここの学校は完全なる中立地帯・・・。

キュピル
「(ふーむ・・・。しかし完全に無関係ではなさそうだ・・・。ギーンもこの記事を読んでいたし・・・
少し調査してみる必要がありそうだ)」
ジェスター
「キュピルー、このマジカル魔法キャンディーかいたーい」
キュピル
「何だって?全然聞いたことない名前だ」
ジェスター
「一定時間マナの力が増大するお菓子!」
カタリ
「まずいぜ、それ」
ジェスター
「えぇー・・・。お菓子じゃないじゃん・・・」

ジェスターの言う通りである。

ルイ
「味の無くならないガムですって!」
カタリ
「食えるもんなら食ってみろや。超堅いぜ」
ルイ
「・・・・・・」
キュピル
「純粋なお菓子出せ、この購買部。」
ファン
「おや、機械のネジ売ってますよ」
ジェスター
「それ食べるー」
キュピル
「・・・一個500Seed・・高い。部屋にあるから帰ったらあげる」
ジェスター
「えー」

何がえーなんだろうか。




=特殊寮502号室(自室)

キュピル
「ふぅ、ただいま」
ルイ
「さてと、そいじゃご飯でも作りましょうか」

学園内に食堂もあるにはあるが普通の食料販売店もある。
ガス代や電気代の負担がないため普通に調理したほうが安上がりになる事が多い。
自宅にいる時と同じように夜は殆どいつも通りである。

強いて何が違うといえば部屋がいつもより広くて綺麗なぐらいだ。

ジェスター
「機械のネジちょーだい!」
キュピル
「飯の後」
ジェスター
「あ、嘘ついた!!わああああ!!!」
キュピル
「う、うるせー!」

その時ノックが鳴った。

キュピル
「ん?誰だ?」
ジェスター
「ただいまジェスター様はお怒り中!お引き取り願います!」

こういうときだけ無駄に正しい言葉を使う。いや、正しくないか。
ジェスターを無視して扉を開ける。

キュピル
「誰だ?」
カタリ
「おいすー」
ダイン
「明日授業休みだから遊びに来たぜ」
カジ
「邪魔しに来た」
キュピル
「ぎょえー!カジは入るのか!?この部屋に!?」
カジ
「ちと窮屈だな・・・」

そりゃそうだろう。

キュピル
「悪いけど三人分の飯はないんだが・・」
ダイン
「そこまで食い意地張ってないぜ。ちゃんと自分の飯買ってきてある。せっかくだから一緒に食おうぜ」
キュピル
「おう、そういう事なら歓迎しておこう」


その晩、かなり夜遅くまで雑談が続いた。



夜11時



そろそろ消灯が近い。
殆どの人が酒を飲んだが全員酒には強いらしく誰も酔っぱらっていない。
唯一ルイだけが酔っぱらっている。キュピルは飲んでいない
そろそろ雑談もお終いかな・・・。そう思ってる時ルイが突然ある話題を切り出した。

ルイ
「そういえばあのギーンって人。偉そうですね。あんな雰囲気悪くする人なんて即刻退学ですよ退学!」

早口でべらべらしゃべる。何人かが苦笑いする。

ダイン
「まぁ確かにあいつはむかつくよ。有能なのは認めるが俺はどうもあいつとは馴染めないな」
カジ
「能ある鷹は爪を隠す。自分が有能だと言い張る奴ほど無能の証明だ」

椅子には座れないのでカジはあぐらをかいてる。それでも普通の人が立ってる背の高さだ。

キュピル
「・・・・・・・・」
ダイン
「どうした?キュピル。急にだまっちまって」
キュピル
「いや、何でもない」

今日の新聞を見た内容とそれを読んでいたギーンを思い出した。

キュピル
「(面倒だが今度直接ギーンと会話してみるか・・・)」
ルイ
「今度ギーンが変な事言ってきたらこの私がギタギタに・・・」
キュピル
「あー、悪い。皆。ルイはもうだめだ。今日はお開きにしよう」
ルイ
「全然だめじゃないですまだまだこれからですよあーおもいだしたらまたはらがたってきました!」

早口すぎて何言ってるのかよくわからない。
それを見て全員苦笑する。キュピルだけ苦い顔をする。

ダイン
「じゃあな、キュピル、ルイ」
キュピル
「あいよ」
ルイ
「ギーンに会ったら覚悟しなさいって伝えるんです!」
キュピル
「早く着替えて寝れ!!」




==翌日


今日は休日だというのに外は生憎の雨模様。
外を覗いても誰も歩いていない。・・・いや、もしかしたらミニアルターにのって校舎内を
ぶらついてるかも・・・。

ルイ
「キュ、キュピルさん・・。すいません・・。ちょっと頭痛いので頭痛薬取ってくれませんか・・・」
キュピル
「昨日あんだけ酒飲んだらそりゃ二日酔いになる。」
ルイ
「ごめんなさい・・・」
ジェスター
「私早く寝ちゃったけどそんなにひどかったの?」
キュピル
「ルイは酔うと歯止めが利かなくなる。」
ジェスター
「怖い」

ジェスターがキュピルの後ろに回って隠れる。

ジェスター
「じぃー・・・・」
ルイ
「別に今は酔っていませんから・・・あいたた・・・」
キュピル
「本当に痛そうだな。」
ファン
「キュピルさん。頭痛薬がないです。購買部で買う必要があります」
キュピル
「そうか、んじゃ俺が買ってくる。」
ジェスター
「おやつー」
キュピル
「またかよ」

ジェスターもついてくることになった。



==購買部


購買部は何気に賑わっていた。
毎回ここに来るたびに思うのだが本当に広い。大型のショッピングモールなのか?と思うぐらい広い

キュピル
「頭痛薬探さないとな」
ジェスター
「おやつー」
キュピル
「さっきからそれしか言ってないな。300Seedまで」
ジェスター
「わーい」

そういってジェスターが何処かに走って行った。やれやれ。

キュピル
「ん」

入口の近くの方に目をやるとまたギーンが立っていた。
また新聞を読んでいるようだが・・・。
ちょっと気になるから話しかけてみるか。
とりあえず気さくな感じで話しかけるか相手を尊重する話し方でいくか・・。
しかし後者は気に入らないから前者で
結局いつも通りか。


キュピル
「うす、ギーン。」
ギーン
「・・・何のようだ?」
キュピル
「来るたびに新聞読んでるが何読んでるんだ?」
ギーン
「君には関係のないことだろう」
キュピル
「俺も結構新聞は読む方でね。特に政治絡みや情勢系には好んで読む。ギーンは何を読んでいるんだ?」
ギーン
「・・・君と同じだ。主に政治・勢力についてだ」
キュピル
「同じならこの話は通じそうだな。ドラケンズ戦争が拡大したようだな」
ギーン
「君も見たか。元々アノマラドが仕掛けた戦争だ。自分で仕掛けた戦争負けそうになるとは
どんだけ恥知らずなんだ。」
キュピル
「負けそうになる?しかし新聞には負ける確率は低いと・・・」
ギーン
「鵜呑みにするな。情報統制という言葉を知らないのか」
キュピル
「情報統制・・・・。マスメディアの規制か」
ギーン
「オルランヌはトラバチェスから支援を受けたという情報もある。事実なら盛り返して
すぐにアノマラドに戦火は広がるだろう」
キュピル
「それは嫌な知らせだな・・・。最近戦争していることすら忘れていたというのに」
ギーン
「頭の悪い奴ら同士で勝手にやってればいいのにな」
キュピル
「(頭の悪い奴ら・・・?)」

そう言ってギーンは購買部から出て行った。
少し神妙に考えてしまう

キュピル
「(ギーンは前にも『皆頭悪すぎだろう・・』と言ったような気がするな・・・。
始めは能力にこだわっているのかと思ったが少し違う気がするな・・・・)」
ジェスター
「キュピルー。これたべたーい」

ジェスターが様々のペットの形をした可愛いグミ菓子を持ってきた。
しかも袋を開けると魔法で動くとか・・・。なんじゃそりゃ。

キュピル
「やべ、頭痛薬買わないと」

慌てて頭痛薬を探しジェスターの欲しがっているグミと一緒に買った。




それから三日後。



ギーンの予測は的中した。
オルランヌはトラバチェスから非公式の支援を受けていた。
すぐにオルランヌは国としての力を取り返し反転迎撃を始めた。

オルランヌは魔法を中心とした国だ。
物理戦が目立つアノマラドにとってかなり苦戦を強いていた。
じわじわと前衛戦が押し戻されていく。

その出来事は購買部の新聞にももちろん乗っていた。
学校内でも噂が広がってきている。
一部アノマラド出身の人とオルランヌ出身の人の間ではイザコザが起きているらしい。
幸い俺達はそのどちらでもないのだがこのイザコザは大分大事になってきている。

学校中の雰囲気が少し悪い。
このままで大丈夫なのだろうか・・・。
それは誰しもが思っていた。

ダイン
「はぁ・・。今日も授業の帰り道に喧嘩してる奴ら見かけたぜ。最近どうかしてるぜ」
カタリ
「へへ、俺はかんけーねーぜ」
キュピル
「・・・・そうだ。校長に頼もう」
ダイン
「校長?」
キュピル
「校長はこう言っていた・・・・。
『一人では成長しない。近くに楽しい仲間がおるから楽しく学ぶこともできる。』
こんな敵だらけの中で学ぶことなんで出来ない。言えばきっと対処してくれるだろう」
ダイン
「キュピルが行くなら俺もいくぜ」
カタリ
「俺もいく!」
キュピル
「よし、行こう」



三人そろってミニアルターに乗ろうとしたその瞬間であった。
突然魔法弾が飛んできた!
後ろから飛んできたため気づくことが出来ずキュピルに命中した。
派手に吹き飛びミニアルターに強く頭を打つ
慌ててダインとカタリが身構える。

赤い髪の毛をした人
「お前・・・アノマラド人だな?」
カタリ
「ちげーよ!!」
赤い髪の毛をした人
「お前じゃない。ゴーグルをつけたお前だ!!」
ダイン
「・・・・そうだ。俺はアノマラド人だ。だけどそれがどうした!!」
赤い髪の毛をした人
「オルランヌ出身の俺達がどれだけアノマラドに苦しめられてきたか・・・お前は知っているか!?
突然訳も分からない戦争を仕掛けられ街を破壊され友を殺され・・・。」
ダイン
「皆口々にそう言うが俺は何もしてねぇ!!!俺じゃない奴らが勝手にやったことだ!!」
赤い髪の毛をした人
「黙れ!」

そういって喧嘩が始まった。
意識が薄らぎ視線がはっきりしない中で何とか立ち上がる。
カタリとダインが戦っている・・・。相手は八人・・・いるか?
こんなの・・学校じゃない・・・。

様々な魔法弾が飛び交う。時には物理攻撃。
しかしダインもカタリも防戦一方だ。このままではやられる。
何人かがキュピルに刃を向ける。まずい、半殺しにされる。

その時だった。突如ダインとカタリの武器が青白く光りだした。

カタリ
「お?こいつはエンチャント魔法じゃねーか!ラッキー!」

カタリが片手で扱う槍を突き出す。突いた瞬間敵が凍った。
四人ぐらいやられた所で敵の勢いが衰えた。

赤い髪の毛をした人
「ちっ・・・誰がこんな魔法を・・・・」

「・・・俺だが?」

ミニアルターのすぐ横からギーンがやってきた。

赤い髪の毛をした人
「おい、お前。何故奴らを手助けした。お前はオルランヌ人だろう!!」

何だって?ギーンはオルランヌ人なのか・・・?

ギーン
「馬鹿が、お前は馬鹿だ。カスだ」
赤い髪の毛をした人
「なんだと?」
ギーン
「おい。オルランヌが勢いづいたからって何調子に乗ってんだ?
オルランヌが復活してアノマラドをボコボコにするとでも思ってるのか?」
赤い髪の毛をした人
「違う!復讐だよ!」
ギーン
「カス。だから俺は馬鹿が嫌いだ。
・・・・全部馬鹿が始めたことじゃねーか・・・」

最後小さくつぶやいた。それはキュピルにしか聞こえなかった。

赤い髪の毛をした人
「・・・・くそ!」

そういって赤い髪の毛をした人とその取り巻きが逃げて行った。
恐らくギーンと戦っても勝てないと判断したのだろう。

ギーン
「・・・・」

無言のまま立ち去った。

キュピル
「ギーン。」
ギーン
「何だ?」
キュピル
「貸しはいつか返す・・・。ありがとう」
ギーン
「・・・キュピル、と言ったな?貸した覚えはない。」

そういってミニアルターに乗って何処かにワープした。
しばらくしてハッとして気付いたかのようにダインとカタリがやってきた。

ダイン
「キュピル、大丈夫か!?今すぐ医務室にいくぞ!」
キュピル
「あぁ、大丈夫大丈夫。ちと頭を強く打ちつけただけだ」
ダイン
「そうか・・・」
カタリ
「しっかり俺びっくりしちまったぜ・・・。あのギーンが俺達を助けるだなんてね」
ダイン
「全くだ。俺もびっくりした・・・」
キュピル
「・・・・・・」

悪い奴だと思っていた。
だけど違う。彼の心の奥に何か深い闇がある。
何故だかギーンに興味がわいてきた。

ダイン
「さぁ、帰ろうぜ。校長に相談はまたの機会だ。」
キュピル
「そうだな・・。ちょっと頭が痛くてこれじゃ話せないしな・・」
カタリ
「寮まで運ぶよ」

二人の肩を借りて何とか自分の寮に戻れた。
部屋にはファンが居て、とにかくびっくりしていた。
何があったのかダインとカタリが全て話してくれた。



そして翌日。
学校がついに動き始めた。誰が相談したのか分らないが校長自らが動き出し
学校内での暴動を厳しく取り締まった。
校長曰く集中して授業を受けれない学校は学校ではないと主張。
徹底した制度と規制により悪い雰囲気すら消えた。


第二回戦クラス対抗勝負は三日後だ。


続く



追伸

第四話が全シリーズの中で見ても結構長い話になってる。全体的にこのシーズンは
一話一話長くなりそうです。相変わらずジェスター空気。



第五話

(滅茶苦茶長いです。全シリーズ中最長。二話に分けようかと思ったのですがあえて一話で



ギーンの思惑。そしてオルランヌの復活。アノマラドの衰退。
世界の情勢は動く中・・・?


ジェスター
「混ぜ混ぜ」

ジェスターが薬壺の中に入っている物をグルグルとかき混ぜる。
今日の授業は薬品調合だ。マナを混ぜることによってその薬の効果を何倍も増大させる。

キュピル
「ポーションを自作できるようになったら家計がグッと楽になるな」
ルイ
「私普段から調合やっててポーション自作できますけど・・」
キュピル
「ナ、ナンダッテー!?何故それを早く言ってくれなかった!?」
ルイ
「あ、あの。効果でも薄いですよ?」
キュピル
「ふむ・・・・」
ファン
「今のうちにしっかり覚えてきましょう。」

ファンがさっきから色んな薬品やら材料やら頬り込んでる。色は滅茶苦茶濁ってて汚いのだが
不思議と甘い香りがする。

ジェスター
「んー?なんか他の人と比べると私のだけ変な色してるー・・・」

茶色く濁ってる。

キュピル
「ん?本当だな。ジェスター、材料に仙人人参はいれたか?」
ジェスター
「あ、入れてない。えい」

ジェスターがボトッと薬壺の中に頬り込む。・・・・なんか違うの入れた気がするが?
しばらくして入れたものが浮かんできた。

キュピル
「も、木炭入れやがった!逃げろ!!」
ジェスター
「え?」

キュピルが叫んだ瞬間皆ジェスターの薬壺から逃げた

ジェスター
「なになにー?」

ジェスターが薬壺を覗きこんだ瞬間黒い煤(すす)がブワァッ!!と舞い上がった。
舞い上がる煤がなくなり目を開けると顔や髪。上半身が真っ黒になっていた。目をぱちぱちさせる。
しばらくして先生がやってきた

鼻がでかい教授
「しっかり話を聞いてないからこうなるのですぞ!!木炭は火属性の材料です!
傷口を治療させる光属性と若干相反する材料!だから今化学反応が起き失敗したのだ!」
ジェスター
「・・・・ぐ、ぐすん・・・」
鼻がでかい教授
「泣いて許されると思ったら大間違いだぞ!罰として放課後薬壺の掃除は全部ジェスターがやれ!」
ジェスター
「え、えぇー!!」

そこでチャイムが鳴った。本日の授業は終了だ。

鼻がでかい教授
「それではこれにて本日の授業をおしまいにする!以上」

皆口々にジェスターにこう言う

ダイン
「後は頼んだぜ、ジェスター」
カタリ
「へへっ、悪いな」
カジ
「・・・頑張れ」
ジェスター
「・・・わ、わーん・・・。ぐすん・・・」
キュピル
「そういうわけだ。頑張れよ。ジェスター」
ジェスター
「キュピルはだめ!!キュピルは手伝って!!」
キュピル
「うわっ!煤だらけで来るな!!」
ジェスター
「あー!今酷い事言った!!逆襲のジェスター!」

そういってジェスターがキュピルの制服を掴むと顔や髪をこすった。

キュピル
「や、やめろ!」

なんとか引き離したが服が真っ黒になってしまった。

キュピル
「・・・・・・・・・・・」
ジェスター
「手伝ってくれるよね?ね?」
キュピル
「・・・・ゆ、ゆるせーん!!」
ジェスター
「わぁー!!キュピルが怒った!!」
鼻がでかい教授
「いい加減にせい!!!!!」
ジェスター
「はい・・・」



やっとの思いで掃除が終わった。

ジェスター
「やっと終わった〜・・・」
キュピル
「俺まで巻き込まれてしまってるのは飼い主の責任ということなのだろうか・・。1から教え直すか・・」
ジェスター
「何もきこえなーい」
キュピル
「だめだ、1から教えても変わる気配がない」

ぶつぶつ呟きながら教室に戻ると何やら教室がいつもより騒がしい。

キュピル
「ん?何があったんだ?」
ルイ
「おや、おかえりなさい。ピアさんが何か珍しいものを持ってきたそうですよ」

二人が輪の中に入るとピアが太くて長い物を持っていた。

キュピル
「なんだ、それは?」
ピア
「こいちゃすごかーなゴムなんじゃよ!!伸ばしゃ思えやいっくらでも伸びるっけな!」
ミーア
「・・・翻訳しよう。こいつは凄いゴムだ。伸ばそうと思えばいくらでも伸びる」
キュピル
「あ、ありがとう・・」

この二人はいつも一緒に動いているからなのかミーアは完全に何て言ってるのか分るそうだ。

ファン
「限界がないそうなんですが・・・。いささか疑問が残りますね」
ダイン
「力自慢な二人で引っ張りあってみようぜ!」
キュピル
「面白そうだな。」

10人ぐらいがそのゴムを持って校庭に出た。
何人かが補習で外を走り回っていたが自由に使えそうだ。

ダイン
「おーし、力自慢でやるぜって人手上げろー!!」

四人ぐらい手を挙げた。カジとダインとキュピルと後まだ名前の知らない人一人だ。

ダイン
「んー、なら俺とカジが組んでそっちはキュピルとハルララスとで組んでくれ。」
ハルララス
「やぁ、キュピル君。こうやって自己紹介するのは初めてだね?ハルララスって言うんだ。よろしくね」
キュピル
「こちらこそ、キュピルと申します。よろしく」

二人とも握手する。ハルララスは中々の好青年だ。緑色の髪をしていて眼鏡をかけている。
一見マッチョには見えないんだが・・。それ言っちゃ俺もダインもそうか。

ジェスター
「キュピルー、負けるな〜」
ファン
「競ってるんじゃないんです・・・。」

四人ともゴムをしっかり握る。

ダイン
「なぁピア?こいつ本当に切れたりしないよな?」
ピア
「わしゃ疑うけんな」
ダイン
「へーへーいっと」
カジ
「いくぞ、お前等。うおりゃああぁぁぁぁぁ!!」

全員力を入れて引っ張る。
始めはぐんぐんお互い距離を離していくがある距離に差し掛かると段々動きが鈍くなってきた。

キュピル
「ぐおぉぉぉ!!引っ張られる!!」

ゴム自体の反発力が中々大きい。
ハルララスもそう感じてるらしくしっかり引っ張られないように踏ん張っている。
ダインもカジも同じようだ。

ルイ
「おぉー、凄い伸びますね」
ファン
「もう20mぐらいは離れてますね。たった1mのゴムがここまで伸びるなんて凄いです」

ハルララス
「まだまだ!!」

ハルララスがぐいぐい引っ張っていく。見かけによらず本当に力持ちだ。
が、しかし

キュピル
「うわっ!!!」

砂で足を滑らせ後ろに転倒する。キュピルの引っ張っていた力が消えてなくなる。

ハルララス
「わっ!!」

ハルララス一人では抑えきることができなくなりハルララスも転び手を離す。
ゴムだけは離すまいと掴んでいたキュピルが物凄い速度でダインとカジの方に飛んでいく。

ダイン
「ん?何か急にゆるくなったぞ?」
カジ
「伏せろ!!」
ダイン
「お?」

ダインが正面向いた瞬間キュピルが吹っ飛んできた!!

ダイン
「いぃっ!!」

慌ててダインも伏せる。
そのままキュピルが遥か遠くまで吹っ飛んでしまった。


ルイ
「あ、ありゃりゃ・・・。」

地面にぶつかり激しく回転、転がり続ける。
しばらくすると止まった。全員キュピルの元に駆け寄る

キュピル
「手離せばよかった・・・・ぐふ・・・」
ダイン
「男だったぞ、ハハハ」
ハルララス
「ほんと、ゴムだけは離さないなんて色んな意味で凄いね。キュピル君」
キュピル
「褒めても嬉しくねー!あいってててて・・・」
ミーア
「・・・誰かヒール使ってやれ」
ルイ
「あ、はい!神よ彼に慈悲の心を!」

ルイが上級治療魔法を唱える。瞬く間に痛みが消えていく。ここで学んだ魔法の一つのようだ。

キュピル
「おぉ、治った。ありがとう、ルイ。」
ルイ
「どういたしまして」

にっこり笑う。
何故かジェスターが不服な顔してる。

キュピル
「ん?どうした、ジェスター」
ジェスター
「もうちょっとキュピルが吹っ飛んだら面白かったのになぁーって」
キュピル
「・・・コンニャロ、オレモウオコッタゾ!!」
ジェスター
「ぎゃぁ〜!!」

取っ組み合いが始まった。

ダイン
「またか」
ピア
「な?な?このゴムすごかなーい!?」
ダイン
「凄い凄い」


しばらくして全員自分の寮に戻って行った。



==特殊寮502号室


ルイ
「学校に馴染めてきましたね」
キュピル
「あぁ、ただ俺の場合学校とか一度しか行ったことないから感覚戻るまでちょっと大変だったな」
ファン
「僕なんて初めてですよ」
キュピル
「優等生すぎる・・」
ジェスター
「私も初めてだよ!!」
キュピル
「問題児すぎる・・」
ジェスター
「あー、今酷い事言った」
キュピル
「ジェスターはジェスターで頑張ってるのは分ってるよ」
ジェスター
「えっへん」

ルイが机に全員分のご飯を置く。

ルイ
「明後日クラス対抗勝負がまたありますね」
キュピル
「そうだな。今度の相手はどんな敵なんだろうなぁ・・」

前回は魔法に身をゆだねてひたすら突撃してくるタイプの敵だった。
魔術師を倒すことによって何とか活路を見出せたっけか。

ファン
「話によりますと次の試合は校庭ではないそうですよ」
キュピル
「なに?まさか校舎内か?」
ファン
「もちろんそんなわけありませんよ。校舎外にある森です。少し見通しが悪い戦いになりそうです」
キュピル
「ふーむ・・・・。」

しかし奇襲は得意分野だ。

ジェスター
「あ、ところでさー。ギーンって何気なくうちのクラスなんだね」

ジェスターがもぐもぐ食べながら言う。

キュピル
「ファンとか気に食わないかもしれんが一応頼りになる奴だ」

前回の一件や購買部で離した出来ごと。
単純に嫌な奴っていう感じはしない。

ルイ
「えー・・・そうですか?私はもう本当に嫌な感じなんですけど・・」
キュピル
「まぁ嫌味ばっかり言うのは認めるけどね」
ファン
「僕自身全く気にしてませんから大丈夫ですよ。まともにやりあっても良い事ありませんし」

少し嘘入ってる気がする。
ファンらしくない。

キュピル
「密かに闘志を燃やしてるな?ファン」
ファン
「どうしてですか?」
キュピル
「ギーンには負けないっていうライバル的なオーラーを感じる」
ファン
「・・・そうですね。やはり彼には負けたくない感じはあります。ライバルです。」
ジェスター
「私もファンには負けないー」
ファン
「何で僕なんですか!?」
ジェスター
「私が一番強い!」

えっへんと胸を突き出す。食事中でもやるか・・・。

ルイ
「ジェスターさん、ご飯冷めちゃいますよ」

ルイがポンとジェスターの頭に手を置く。
そして頷くジェスター。

キュピル
「お楽しみのコロッケ頂くとするかね。」

箸を伸ばそうとした時ノックが鳴った。

キュピル
「むむむ・・・。ちょっと席立つよ」

席を立ち扉を開ける。


キュピル
「ワシの幸せの時間を奪う奴は誰だー・・・」
ミーア
「・・・邪魔しては悪そうな時に来たな。また来る」
キュピル
「ま、ま、まってくれ!別に帰らんでいい!用件言っておくれ!」

まさかミーアが来るなんて微塵も思っていなかった上に冗談を本気で受け取ろうとしていたので
慌てて引きとめる。謎な男性・・いや女性?謎だからこそつい慌ててしまう。

ミーア
「明日クラス対抗勝負用の砦建設を行うとのことだ。正門前に全員集合ということを伝えに来た。」
キュピル
「最初からあるというわけではないのか」
ミーア
「そうだ。二回戦から少しずつ本格的になってくる。・・・罠を仕掛けることもできるしな」
キュピル
「なるほど・・。ありがとう」
ミーア
「確かに伝えておいたからな。」

ミーアが去る。全く、本当に不思議な人だ。
・・・・っと帰る姿を眺めてた瞬間。ミーアが隣の部屋に入って行った。


・・・・・え?
思わず固まった。


ミーア
「ん?どうした。何かあったのか?」
キュピル
「え!?ミーアお前隣の部屋だったのか!」
ミーア
「そうだが?それがどうした」
キュピル
「い、いやなんでもない。ただびっくりしただけだ」
ミーア
「そうか」

そういってミーアが自分の部屋に入って行った。
なんか最近驚いてばっかりだ。あの人と話すとどうも主導権を握られる。
とりあえず戻ってコロッケでも食おうっと。

席に戻る。

キュピル
「明日正門前に集合とのことだ。」
ルイ
「りょ、りょうかい・・です・・」
キュピル
「ん?」

なんか皆妙に固い。はっと思いコロッケに目をやる。ない!!!!

キュピル
「だ、だれだ!?俺のコロッケ食った奴は!!?」

ルイとファンがゆっくりジェスターの方を見る。
ジェスターだけ必死にルイの方を見る。

ジェスター
「私のを信じて!」
キュピル
「口を動かしながら言うんじゃねえええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
ジェスター
「ぎゃぁ〜!!」

ジェスターの髪の毛をボサボサにしたところで席に座る。
ボサボサにしたところでジェスターが力を入れてブルブルッと震えたら元通りになってしまうのだが。
小動物かって突っ込みたくなる。

ルイ
「ジェスターさんの髪って骨があるわけでもないですしどうやって動かしてるんですか?」
ジェスター
「んー?私にとって指を動かすのと同じ感覚だよ!何でルイとか髪動かせないの?」
キュピル
「ルイみたいなセミロングヘアーの人が髪を自由に動かせて攻撃できたらエイリアン認定だな」
ルイ
「もっと可愛い物で認定してください・・・」
キュピル
「コロッケで手を打とう」
ルイ
「ダメです」
ファン
「コロッケ人気ですね・・・」




==翌日



朝九時に全員正門前に集合した。
その集団の中にE-4組担当の先生もいた。

ナワン先生
「皆さん、おはようございます。よく眠れましたか?」
ダイン
「先生なに子供の修学旅行みたいな事言ってるんだよ」
カタリ
「ダイン君、よく眠れましたかー?」
ダイン
「俺は子供じゃねーぞ!」

ハハハと一部笑う。

ナワン先生
「お静かに。今日一日全ての時間を使ってここから少し歩いた森に拠点を建設してもらいます。
その際、罠や進軍妨害、土嚢などを置いても構いません。それでは行きましょう」

ナワン先生を先導に皆森の方に歩いていく。
ジェスターはうたたね状態でルイと手を繋ぎ歩いている。朝に弱いジェスター・・・。



==森


森に到着した後は全て生徒がやることになっているため先生は離脱した。
ここから先は全て皆でやらなくてはいけない。

カジ
「まずは本拠点から建てて行こう。その際攻撃よりか防御よりか決めねばならん。
ピア、相手側の情報は持っているか?」

ピアが立ちあがり前に出る。

ピア
「うーむむむーん・・・・。みーんなメイジだったがの」
ルイ
「メイジ・・・。上位魔術師ですか・・」
ピア
「前衛が一人もおらんとのぉ・・・。みな防衛に徹してワシらのスタミナを
空にする感じな・・・」

いつもハキハキ喋るピアが少し俯いて喋っている。早い話あんまり情報を掴めていないのだろう。

カジ
「敵がメイジだということがわかれば上等だ。ということは奴らは召喚術を使う可能性が高い」
ファン
「召喚術・・・。魔界や天界から異次元の魔物を呼び出し味方にして戦わせる魔法ですね」
カジ
「そうだ。状況に合わせて召喚する魔物を変えるだろう。前回以上に厄介な相手だ」
ダイン
「そうなればこっちの拠点は再び防衛寄りの拠点にして魔術師を暗殺していくパターンになるのか?」
ミーア
「・・・・そいつも難しいな。やつらは前回我々の戦いぶりを見ているはずだ・・・。
奴らの本拠点は隙間ひとつないだろう。制圧するには扉をこじ開ける必要がある」
カタリ
「そいつはピアだとお手上げだな?」
ピア
「あっしは強引なの嫌いださ!」

ぷいとそっぽを向く。

キュピル
「だが待ってくれ。敵がメイジで召喚術を多様して戦うとしても拠点内に召喚しても
その魔物は外に出ないと戦えないわけだろ?それなら出す時門を開くと思うんだが」
カジ
「破壊魔法も扱うメイジを忘れるな。破壊魔法は完全に隔離された場所からでも発動できる」
キュピル
「むぐ・・・」
ルイ
「ということは敵の破壊魔法を潜りぬけてやっとの思いで本拠点の扉をこじ開けても
敵の魔物が一斉に襲い掛かってくる・・・っていうことですよね?」
カタリ
「そうなっちまうなぁ・・・」

皆だるそうだ。
その時一人立ちあがった。ギーンだ。

ギーン
「ふん、何でそんなに考えてるのか知らないがもっと頭使えよ」
ダイン
「何だと!?」
ギーン
「完全に隔離されてるとかほざいてるが一つの面が残ってるぞ」
ファン
「・・・・・!!地面・・・ですね?」
ギーン
「少しは頭が回るようだな」

ファンが嫌そうに顔をそむける。

キュピル
「地面か・・・!確かに地面に出てくるとは敵も思わないだろう。
だがどうやって地面から行くんだ」
カタリ
「そうだそうだー」
ダイン
「空想論並べんなよー!」

野次を飛ばす

ギーン
「ちっ、馬鹿かこの集団は・・・。んなの決まってるだろ」
ダイン
「まさか本当に地面を掘って進めって言うのか?」
カタリ
「それこそ馬鹿がやることだな、ははは」
ギーン
「本気で言ってるのか?もしそうならお前等は正真正銘の馬鹿だな。死ねよ馬鹿が」
ダイン
「なんだって!?」
カタリ
「なんだと!!!」

ついにダインが立ちあがる。カタリも立ちあがってる。死ねっという言葉に過剰反応している

カジ
「おい、今ここで仲間割れしてどうする。ギーンもたぶらかさずにとっとと言うんだ。時間の無駄だ」
ギーン
「地面と相反する属性の魔法を放ち続けて続けて進めばいい。
相反した土は凝縮され空洞が出来る。ただそれを繰り返せばいい」
ダイン
「・・・・・・・・」
カタリ
「・・・・・・・・」

二人とも黙ってしまった。考えてみればこれはつい最近習ったばっかりの事だった・・・。

ルイ
「あの・・。地面って土属性だけじゃないと思うんですけど・・。水属性とか岩属性などが絡み合って
物凄く複雑な属性になってると思います・・。安易な事ではありません・・・」
カタリ
「そーだそーだ!」
ダイン
「ルイの言うとおりだ!」

ルイが口を押さえて笑いに堪えている。何でツボった・・・。

ギーン
「馬鹿には出来ないな」
ルイ
「な、なんですって!?」
ギーン
「これが出来るのは俺と・・・ファンぐらいだろう」
ファン
「え?」

全員固まってしまった。
自分だけだと言うと思ったのにファンも名指しにした。
これはファンのことをしっかり評価していてそれを買っているということだ。

ギーン
「お前ならこのぐらい出来るだろ?」
ファン
「・・・指名されたからにはしっかりやりますよ」
カジ
「作戦は決まりだ。今回の作戦は本拠点から敵の本拠点まで魔法で地面を掘り続け
奇襲する。この作戦が察知されないよう他の者は陽動してもらう。いいな?」
ダイン
「ちぃっとばかし気に食わねえが仕方ない・・・」
カタリ
「全くだ」

二人ともダルそうだが渋々承諾した。

キュピル
「それならこっちの本拠点は防衛寄りのがいいのかな」
ミーア
「・・・いや、攻撃よりにして攻めの姿勢を見せておけばまさか奇襲してくるとは思わないだろう」
ルイ
「でも持つでしょうか・・・?地面を掘った瞬間に攻撃しなければ意味がないですから
掘るお二人の他にも前衛10人ぐらい穴の中でスタンバイしないといけないんですよね?
守備しっかりしてないとあっという間に陥落するかもしれません・・・」
ミーア
「・・・・・ふむ」
カジ
「何にせよ奇襲作戦ということは決まった。魔法機銃を大量に設置しとにかく敵の猛攻を防いでおこう。
ハルララス。建設を開始してくれ」
ハルララス
「了解です」

ハルララスと他何十人かがその場から離れ建設を始めた。
その間に細かい作戦を練りやり方が固まった。


建設は深夜までもつれ込み建設が終わるや否何人かその場で寝てしまった・・・。



そして翌日。


ついに試合開始10分前となった。



カジ
「作戦の再確認をする!!今回の作戦はファンとギーン二人を中心として進んでいく!
二人はそれぞれ別のルートを通って敵本拠点まで掘り進めて貰う!
ファンには前衛五人、ギーンにも前衛五人ついてってもらう。
可能であれば二人同時に敵本拠点の地面を突き破り同時に敵本拠点を攻略してもらいたい。
その間我々は敵を陽動する!あまり守ってばかりいると敵も怪しいと思うだろう。
陽動とはいえそのまま本拠点を制圧する勢いでいくぞ!!!」

おぉぉ!!と声をあげる。

カジやダインにキュピルなど持久戦に優れる人たちは陽動作戦を担当し
カタリやミーア、ルイにピアやジェスターなど瞬発力のある人はファンかギーンのどちらかに付いていき
敵本拠点を奇襲してもらう。その他は本拠点防衛だ」


試合開始3分前となった。
ファン側にはルイ、ジェスター、ミーアと他2人。
ギーン側にはピア、カタリと他三人。

残りは陽動と防衛だ。
ファンからもギーンからもマナがあふれている。いつでも準備OKという感じだ。

刻々と時間が過ぎて行き・・・・そして


ガシャン!!


本拠点の扉が開き試合が始まった!!


カジ
「行くぞ!!一気に前衛を押し上げろ!!!」


全員雄たけびを上げながら突進していった。もちろんその中にダインやキュピル、ハルララスがいた。
ハルララスは棍一本だけ持っていた。中に鉄の芯が入っている棒だ。リーチは中々長い。

前衛が突進している間にファンとギーンが地面に魔法を放ち始めた。
たちまち地面が溶けはじめ穴があいていった。
みるみるうちに二人とも地面に沈んでいく。しばらく沈んでいくと今度は敵本拠点に向けて
進んでいった。方向は全て魔法で分る。
開いた穴に次々と人が入って行った。

ジェスター
「せまーい!もっと大きく作ってー!」
ファン
「無理言わないでください!」
ルイ
「ジェスターさん、邪魔しちゃだめですよ!」
ジェスター
「暗いの怖い!狭いの怖い!」
ルイ
「(何でジェスターさんこれ担当したんですか!?)」



ハルララス
「敵さんもやってきたみたいだね!やっぱり魔物だ!」

二足歩行で進軍してくる狼。
巨大蜘蛛だが顔の部分に人間の上半身がくっついている化け物。
鋼鉄のように固い黒い皮膚におおわれた悪魔など多種多様の魔物がいた。
これはかなりの高位術師だ・・・。

カジ
「化け物が、とっとと魔界に帰れい!!!」

カジが巨剣を振り下ろす。斬るのではなく叩き潰す。
それに狼が巻き込まれ霧のように消えた。魔界に帰って行った。

キュピル
「この化け物め!!」

キュピルが巨大蜘蛛と格闘する。剣を次々と振り回し敵を切り刻んでいく。
だが生命力の高い巨大蜘蛛はこの程度ではまだ死ななかった。
鋭利な脚でキュピル目がけて突き出した!!
慌てて回転を付けながら横に回避しそのまま敵の脚をいっぺんに四本も切り刻んだ!!
敵が奇声をあげる。そして敵の胴体目がけて剣を突き出した!!

ハルララス
「援護するよ、キュピル君!」

ハルララスが固い棍棒を敵の顔面を叩きつけた!
息の合った連携攻撃を食らい地面の上でもがき苦しむ。そのまま他の者が一斉に攻撃し
霧となって魔界へ帰って行った。まさにリンチ。

前衛は比較的押してる。もしかしたらこのまま本拠点まで攻める事ができるのでは?

カジ
「一点に集中しては脇道を通って本拠点まで向かう魔物に気づかない恐れがある。
なるべく分散しろ」

カジの指示により少しずつ全員散りはじめた。もちろん完全に孤立するものはいなかった。
しばらくすると大量の子蜘蛛が現れた。数で応戦するつもりのようだ。
確かにこれほどの大群ではいくら雑魚とはいえど進軍するのは困難だ。

キュピル
「くそ、この!」

横に思いっきり刀を振る。前列の子蜘蛛を一気に薙ぎ払う。しかし次から次へとやってきて
気がつくとじわじわ後ろに下がっている。

ハルララス
「キュピル君、ちょっと凌いで。呪文を唱える」
キュピル
「わかった」

キュピルが前衛を支えてる間にハルララスが呪文を唱え始めた。風が吹き荒れる。

ハルララス
「天よ、地よ、月よ、星よ。我と汝に炎の力を!」

唱え終わった瞬間強烈な衝撃波が走った。
キュピルの武器とハルララスの武器に炎の力が宿った。だがハルララスは
武器だけではなく常に熱気が体からあふれ始めていた。エンチャント魔法ではなさそうだが
何の魔法だろうか。

ハルララス
「ありがとう、キュピル君。ここは僕に任せて。道を開いたら先に進んで」

ハルララスが前に前進する。そして棒を大きく振り始め回転するようにグルグル棒を回し始めた。
一見ただの回転に見えるがその技はしっかり的確に攻撃しておりよく見ると切り刻んでるようにも見えた。
どんどん敵の中心に入っていく。開いた道をキュピルも進んでいく。
だが退路が塞がれていく。
ハルララスが大きく飛び上がり棒を下にして地面に着地した。
その瞬間耐えがたい熱風が吹き荒れ近くにいた子蜘蛛が解け魔界へ帰って行った。

キュピル
「あっつ・・・・」
ハルララス
「さぁ、次の敵が来る前に少しでも前に進もう」
キュピル
「ちょっと顔火傷したかもしれないけど行こう」




カジ
「・・・・おかしい」
ダイン
「どうした、カジ!」

ダインがやたら爪が伸びた悪魔と戦っている。ちょうど倒し終えたようだ。

カジ
「猛攻というよりは防御に見えないか?ダイン」
ダイン
「・・・言われてみたら・・・。ちょっと攻撃には見えない」
カジ
「・・・・まさか・・・。」

カジが慌てて無線を手に取る。


カジ
『カジだ。ファン、ギーン。そっちは今どうなっている』

返答を待つ。だが二人とも返答が返って来ない。

カジ
『カジだ。ファンとギーンについてってる者よ。今どうなっている』

・・・・返答が来ない。まさかやられたのか?
しばらくすると誰かが出た。

ルイ
『ルイです。現在交戦中・・・!予想外の不意打ちによりかなり混乱しています・・!
援軍を求めます!』
カジ
『ファンとギーン!早く二人とも合流しろ!分散は危険だ、一つの隊にまとめろ!
看破されてるとは予想もつかんかった!』
ルイ
『わ、わかりました・・・。』




ルイ
「何故土から魔物が飛び出してくるんですか・・・!!」

ルイが後退しつつ機銃を乱射する。拠点制圧用なため威力としては申し分ないが
拡散しやすく味方に当てる可能性が高いためかなり慎重な扱いが求められる。
とくに今いる狭い場所では絶対に味方に向けてはいけないため援護射撃ができない。

ファン
「バースト!!」

ファンが炎の弾を生み出し魔物にぶつける。しかし少し怯んだだけですぐに向かってきた!

ファン
「こ、これは主力級の魔物じゃないですか!!」
ジェスター
「えい!えい!えい!!!」

ジェスターが鉄の棍棒を使ってひたすら魔物を叩き潰してってる。意外に極悪。

ミーア
「・・・・くっ」

ミーアも短刀を振り回す。しかし狭すぎて満足に動けない。
完全に振りだ。

黒色の鎧を着た味方
「ちくしょう!ここじゃ俺の巨槍も振れない!!」
赤色の鎧を着た味方
「う、うわあぁぁ!!」

横から突然悪魔の手が伸び赤色の鎧を着た味方の胴体を貫いた。
致命的なダメージを受けたため緊急テレポート魔法が発動し医務室に運ばれた。

黒色の鎧を着た味方
「ア、アンディ!!くそー!!」

蹴ったり切ったり魔法をぶつけたり狭い場所で大混戦状態となっている。
その時ゴゴゴゴゴと地震のような音が聞こえた。

ジェスター
「な、なに!?」

しばらくすると右側の土が突然解け広い空洞が現れた。

ギーン
「おい、早くこっちに乗り移れ。そっちの空洞は潰すぞ」

増援が届いたようだ。慌ててギーンが作った空洞に全員逃げる。
全員移動したのを確認しファンが魔法を解く。相反された物質が全て元に戻り空洞は消えた。
中にいた魔物は全員潰され消えたようだ。

ファン
「助かりました」
ギーン
「この程度でへばったら勝利には導けんぞ。俺は穴を掘り続ける。ファン、お前は後方の穴を消せ。
魔物が通り過ぎ我が陣地まで走りぬけられたら厄介だ」
ファン
「分りました」
カタリ
「ジェスター!ルイ!ミーア!無事かー!?」
ジェスター
「私は無敵!えっへん」
カタリ
「へへっ、いまどき無敵って言葉なんて使ってら。子供だな」
ジェスター
「あー、子供じゃない!じゃぁ勝負!どっちが一杯倒すか勝負!!」
カタリ
「受けて立つぜ」
ルイ
「(子供・・・)」
ミーア
「(子供・・・)」
ピア
「ワシも混ざるだい!!」
ギーア
「・・・いくぞ」

ギーンが相反魔法を唱え穴を掘り続けた。最後尾にはファンが魔法解除を行い穴を消していく。
まるでモグラみたいだ。
時折魔物が地面から這い出てくるが数が増えたため何とか対処しやすくはなっていた。
全員でリンチし少しずつ、かつ的確に潰していく。






ハルララス
「もうすぐで敵本拠点だよ。このまま一気に攻め潰しちまおう!」
キュピル
「ああ!」

その時無線が入った

カジ
『カジだ。地上にいる前衛全員に告ぐ!!警戒進軍しろ!!罠が仕掛けられている!!』

罠という言葉を聞いた瞬間足元が爆発を起こした。

カジ
『ちっ、また別の場所で誰か罠を踏んだか』
キュピル
「ぐあ!!」
ハルララス
「うわっ!!!」

二人とも派手に吹っ飛ぶ。地雷が仕掛けられていたようだ・・・・。

キュピル
「ぐっ・・・・」

罠という言葉だけ聞こえたため慌てて後ろに下がったお陰で致命傷は避けれたようだ。
ハルララスも同じようだが二人とも歩けない事には変わりない。

ハルララス
「うっ・・・。」
キュピル
「まずいな・・・。ちょっと回復が必要だ・・・」

二人とも草陰に隠れ応急処置を施す。
少しだけ休むことにした。




ダイン
「はぁ、はぁ・・。後もう少しで本拠点だ!!」
カジ
「ダイン、突出するな」
ダイン
「分っているよ」
カジ
「・・・・!?」

今横からガサガサと草が動く音が聞こえた。
カジが気づきとっさに音のした方を見る。すると数人の敵のクラスの人が
慌ててカジ達の本拠点に向かって走り始めた。

カジ
「逃がすな!!奴らを放置していては拠点を壊される!」
ダイン
「カジ!今向こうからも音がしたぞ!」
カジ
「ダインはそっちいけ、俺はこっちいく!」

二人とも拠点防衛のために先程の敵を追いかけはじめた。しかしこれは前線を大きく
下げると言う意味でもある。




ダイン
「ちくしょう、待ちやがれ!」

敵の背を追いかける。距離はそんなに離れていない。

ダイン
「当たれえええええ!!!」

ダインがカトラスを投げつける。だが外れてしまう。カトラスを回収しながら敵を追う。
その時敵が突然足をとめた。

ダイン
「・・・・・?」

カトラスを構える。三対一と人数面では不利だが相手は魔術師なので詠唱さえ食い止めれば
何もさせずに倒すことはできる。
そのため風魔法などで移動速度を上げて絶対に追いつかれないようにする必要があるのに
自ら足を止めるとはどういうことだろうか・・・。

敵魔術師1
「くっくっく・・・。まんまと罠にはまったな」
ダイン
「なんだって?」

慌てて周りを見回す。気がつくと魔法の壁が作られていた。
これでは逃げる事が出来ない。

敵魔術師2
「もう逃げれない」
ダイン
「へっ、悪いけど魔術師ごときにやられる俺じゃないんでね・・・」
敵魔術師1
「それはどうかな?」

そしてまだ一言も喋ってない奴が喋った

敵魔術師3
「・・・俺を覚えているか?」

魔術師全員フードを外した。

ダイン
「・・・・!!」
赤い髪の毛をした人
「そう、俺だ」

いつしかキュピルやカタリと一緒に校長室に行こうとした時に交戦を仕掛けてきたオルランヌ人・・・!
今回の対戦相手はこいつだったのか・・!!

ダイン
「まてよ・・・。こいつが相手ってことは・・・」
敵魔術師1
「っそ、俺らは魔術師なんかじゃない」
敵魔術師2
「・・・接近職だ」

全員ローブを脱ぎ捨て鎧を露わにする。
・・・しまった、相手が接近職となると話は別だ。向こうが断然有利だ。

ダイン
「ちっ、だがいいのかよ。たった俺一人にこんな三人も割いてよ。
今頃本拠点落とされちまってんじゃねーのか?」
赤い髪の毛をした人
「別に落とされても構わない」
ダイン
「なんだと?」
赤い髪の毛をした人
「今回俺らは粛清するためにこの試合をしている」
ダイン
「・・・・粛清・・だと?」
赤い髪の毛をした人
「アノマラド人を殺す。」
ダイン
「そんな事は出来ないはずだ。試合中、命にかかわるダメージを受けた場合緊急テレポートが発動し・・」

ダインの言葉をさえぎり他の奴らが喋る

敵接近職1
「それがこの中にいたら発動できねーんだな、これが」
敵接近職2
「この壁に覆われた空間は一切魔法が発動できないエリア・・・。つまり緊急テレポートも出来ない」
ダイン
「なんだって・・・・」
赤い髪の毛をした人
「・・・本気なんだよ、こっちは」
ダイン
「何でそんなことをする!第一先生になんて言い訳するつもりだよ!!」
赤い髪の毛をした人
「君は知らないのか?緊急テレポート中の人を攻撃できるんだよ。
命にかかわる攻撃を受けた敵を追撃した時運が悪い奴はその時に死ぬ・・・。
今までそういう事故は何度もあった。だから今回も。事故が起きてしまったっと言えばいい」
ダイン
「・・・ちっ」

その後誰かが故意にやったと見抜いてくれるかどうかは今はどうでもいい。
とにかく今こいつらは本気で殺そうとしてきてる・・・!!

赤い髪の毛をした人
「オルランヌが・・・俺が味わった侮辱・・・苦痛・・・怨思・・・!全部ここで晴らしてやる」
ダイン
「何故今になってそんなことをする!オルランヌが盛り返したからってアノマラドに勝つという保証はないぞ!
盛り返したからって調子に乗って逆襲して人を殺すとはどういうことだ!」
赤い髪の毛をした人
「俺たちは別にそんなことはどうでもいい、『ただ』復讐したいだけだ」
敵接近職1
「そして今このタイミングでやる理由はクラス対抗勝負だからさ。唯一人を殺しても合法になる場所」
ダイン
「・・・っ!」
赤い髪の毛をした人
「そろそろおしゃべりはここまでにしよう。次に殺すアノマラド人も決まってるからな・・・」
ダイン
「次に・・だと?」
敵接近職2
「死ね!!」

敵が攻撃してきた!今ここで致命傷を食らう、それはすなわち死につながる・・・。
今まで味わったことのない恐怖がダインを襲う。
これまでは試合だった・・・。どんなダメージを受けても生きてるし人を攻撃しても死なない。

ここでは違う。

敵の刃を受けたら死ぬし攻撃して敵を倒しても奴は死ぬ。


今は試合をやってるのではない。戦争をやっている


その思考がダインの動きを鈍らせる。

赤い髪の毛をした人
「そこだ!!」
ダイン
「っ!!」

肩すれすれのところに敵の刃が通る。危なかった。
なんとか応戦しようとするが数の問題で押し返す事が出来ない。

気がつけばすぐ後ろに壁が迫っていた。

赤い髪の毛をした人
「ここまでだな、ダイン!」
ダイン
「ご丁寧に名前まで覚えていてくれて・・・。くそ・・」

最後の抵抗だ・・・。せめて一人は道連れに・・・。

ダイン
「・・・・・?」
赤い髪の毛をした人
「・・・?」

他の二人も何か微妙な違和感を覚えているようだ。
地面が・・揺れている。
その時突然地面に穴が開いた!


ギーン
「おい、貴様ら!何やっている!!」
赤い髪の毛をした人
「何故地面から穴が・・・!!」
ダイン
「てやぁっ!!!」
敵接近職1
「!」

間一髪のところで避けられた。

ギーン
「ダイン!早くこっちの穴に入って逃げろ!殺されるぞ!」

ギーンが脱出をを用意していた。しかしギーンの言う通りになるのは癪に障る

ダイン
「死ねとか言った奴はどこのどいつだ!お前の望み通りダインは死ぬかもしれないぜ!?」
ギーン
「この大馬鹿が!馬鹿はこんな状況でも馬鹿なのか!?ごちゃごちゃ言ってないで早く穴に入れ!
そこの二人外部の人間だ!!」
ダイン
「外部・・・だと?クラスの奴じゃないのか・・!?」
ギーン
「第一お前が死ぬことは俺は望んでいない!」
ダイン
「え?」
敵接近職1
「くっ、この!!」
ルイ
「拡散射撃!!」

穴から次々と前衛の者が現れその場を制圧し始めた。

赤い髪の毛をした人
「ど、どういうことだ・・!!魔法は使えないはずなのに・・・!!」
ギーン
「今度からは地面にも張っておくんだな。無能が」
赤い髪の毛をした人
「・・・ちっ!!」
ジェスター
「華麗なる攻撃ー!」
赤い髪の毛をした人
「逃げるぞ!」

敵前衛二人の肩を掴むと急いで魔法の壁を剥がし緊急テレポートを行った。
光の度合いから見ても戦場外だろう。試合放棄と見ていい。

ギーン
「ふん、逃げたか」
ファン
「さて、みなさん。このまま本拠地までいきますよ。もう少しです!」
ジェスター
「おぉ〜!」

他の者は次々と穴に入り再び敵本拠地に向けて進み始めた。

ダイン
「ギーン。何で助けに来た?」

穴に入るギーンに問いかける。ギーンが立ち止まった。

ギーン
「あのまま死ぬのが所望だったのか?」
ダイン
「そういうことを言ってるんじゃ・・・。だってお前はオルランヌ人なんだろ・・・?
普通、あの場を考えたら加勢するのはむしろこっちじゃなくて相手側のほうだろ」
ギーン
「無駄話してる暇はない。とっとといくぞ。」

ギーンが穴の中に入る。
ダインも入るか迷っていたが釣られて穴の中に入る
 


カジ
「甘い、甘いぞ!」
敵前衛
「ぐあっ!!」

先程通り抜けようとした敵全員を倒した。
無線を取り出し連絡しあう

カジ
『カジだ。本拠点は今どうなっている』

しばらくすると誰かが応答した

防衛者
『何人か奇襲してきましたが目立った損害はありません。』

するとハルララスの声が聞こえた。

ハルララス
『こちらハルララス。何人か工作兵を見かけた。罠と拠点破壊用の防具を身に着けていた。』
カジ
『始末しろ』
ハルララス
『すまない、俺とキュピル両方足を負傷しちまって走れない。誰か近くにいないか?場所はE-6だ』

地図上で記されてる記号を言う。
だが名乗り上げる物はいなかった。

キュピル
『くっ、ちょっと無茶してくる』
ハルララス
『どこにいく!?』

二人の動向も気になるがもう一つ気になる台詞が飛んできた。

防衛者
『まずいな・・・。拠点破壊用防具を身に着けていたということは爆発物を取り付けたりするはずだ。
外壁が崩れたら即拠点を落とされてしまう』
カジ
『今さら戻るにしても時間がかかりすぎる。おい、ファンとギーン。10分以内に敵本拠点制圧しろ』

しばらくするとギーンから無線が入った。珍しい

ギーン
『トラブルが発生したが問題ない。』
ダイン
『8分で制圧するぜ!』

カジ
『む、何故ダインが穴の中にいる』
ダイン
『悪い、カジ。話は後だ。もう敵拠点の真下に来た。』
ファン
『穴開けます!突入準備を!』

ファンが最後の相反魔法を放つ。ついに敵本拠点の真下に穴をあけた。

ルイ
『突撃します!』

無線から魔法の詠唱や機銃の放たれる音が聞こえる。
本拠点攻略が始まったようだ。
先にこっちの拠点が潰されるか先に相手の拠点を潰すか・・・!!

その時無線が再び入った

防衛者
『本拠点にダメージ!!攻撃されています!!』
カジ
『食い止めろ!』
ルイ
『敵本拠点に異常!殆ど人がいません!その代り有り得ない数の魔物です!!』
ミーア
『この様子だと殆どの敵は潜伏していると見える。・・・厳しい奇襲を受けることになるぞ』
防衛者
『奇襲です!!三十人ほどの術師が奇襲してきました!!』
カジ
「ちっ、わざわざ穴を掘らなくてもよかったってことか!!騙されたな!」

カジが思いっきり足踏みする。

カジ
「全力で敵の拠点を破壊しろ!!穴から出てきた奴も地上にいるやつもだ!!」


カタリ
「いっけええぇぇぇっ!!」

カタリがマナの礫を大量に飛ばしまくる。拠点破壊用の魔法だ。

ルイ
「えいっ!!!!」

ルイも負けじと魔法で強化された機銃を撃ちまくる。
どんどん敵の拠点が壊されていく。
制圧まで後5分程だろう

無線が入った

防衛者
『被害甚大!!拠点破壊装置確認!拠点陥落までもう三十秒も持ちません!!』
カジ
『装置を壊せ!』
防衛者
『無茶言わないでください!』

自軍本拠点の近くに拠点破壊用の機銃が設置されている。この装置を壊さねば
一瞬で陥落するだろう。設置にてこずっているらしくまだ発射はされていない。
だが発射されれば・・・。
その時誰かが後ろから無茶な態勢で走ってくる人が見えた。

キュピル
「当たれ!!バースト!!」

炎の弾を生み出し装置にぶつける。見事に命中して装置が倒れる。
すぐに工作兵も魔法を召喚しキュピルに攻撃を始める。

ハルララス
「エクスシールド!!」

ハルララスがキュピルと自分に魔法の壁を作る。
敵の魔法弾を防いだ。

ハルララス
「そしてシュート!!」

魔法の壁を敵に向けて飛ばす。思いっきり敵を弾き飛ばした。

キュピル
「こんなもんこうしてやる!!」

キュピルが拠点破壊装置を手に取り遥か遠くに見える敵本拠点に向けて発射した

ハルララス
「よ、よせ!それは地面に置いて使うものだ!!」
キュピル
「うおおぉぉぉぉぉぉ!!」
ハルララス
「・・・くっ!」

キュピルがスイッチをいれた。機銃から大量の強化グレネード弾が発射される。
ありえない弾幕が発射されそのうちの何発かが見事に拠点に命中した。

ルイ
「く、崩れる!!」
カタリ
「うわ!誰だよこんな強力な攻撃した奴!!」
ジェスター
「ぎゃー!」
ギーン
「おい、拠点が崩れるぞ。とっとと穴に逃げろ!」
ダイン
「分ってる!」

皆穴の中に入り退避する。辛うじて全員退避できた。
そして敵本拠点は見る影もなくなった。
無線が入った

審判
『E-4組の勝利!!』

敵が力なくうなだれる。
勝った!!!!

次々と無線から歓喜の声が上がる。



キュピル
「っ・・・・。・・・?」

あれほどの強烈な反動が来ていたのにしっかりと立っている。

ハルララス
「ほんと、君は凄い無茶なことをするね?」
キュピル
「手に持った方が命中精度が安定するかなって思って」

ハルララスが後ろでキュピルをしっかり支えていてくれてた。
彼が支えていなければ遥か後ろまで吹き飛んでいただろう。
・・・・なんて力持ちなんだ。

無線が入った

カジ
『キュピル、ハルララス。怪我は大丈夫か?』
キュピル
『大丈夫、応急処置はしてありますから』
ハルララス
『同じくっと』
カジ
『まさか敵の工作装置を逆に使うとはな。お手柄だ。さぁ帰るぞ』


かなり辛勝ではあったが何とか勝利に導けた。




==森のはずれ



赤い髪の毛をした人
「くそ・・・。誰ひとりとで復讐することはできず拠点も陥落・・!おい、お前等・・!!」

仲間二人の方を向きなおる

赤い髪の毛をした人
「何故果敢に攻めなかった!!俺の望み通りにしてくれると言っただろ!?
お前等二人がもっとしっかり攻撃してr・・・」

突然仲間二人が剣を引き抜いた。

赤い髪の毛をした人
「ど、どういうつもりd・・・。・・っ!!!!」

二人とも息の合った攻撃で赤い髪の毛の青年の心臓を突いた。

赤い髪の毛をした人
「ど・・いう・・こと・・だ・・・?」

刺し殺した仲間が鎧を脱いだ。その下にはトラバチェスの紋章が書かれた衣服があった。

トラバチェス兵1
「用済みだ。」
トラバチェス兵2
「もっと役に立てると思っていたのに残念だ」

そこで赤い髪の毛の青年は息絶えた。



続く



第六話


見事に二回戦を乗りきったE-4組。
しかし不穏な空気が学校全体を包んでいく・・・。


==学院内、会議室

校長
「今、様々なクラスから行方不明者が出ておる。
正式な手続きなしにこの学校外部へ出るのは禁じられている。
しかしそれでも毎年一人か二人はいなくなるから調査してはいるが・・・。
今学年度が始まって既に8人。8人も行方不明者が出ておる。いくらなんでも多すや思わないかね?」

それぞれの先生、教官、教授が意見を出し合っている。

ナワン先生
「確かに、つい前回のクラス対抗勝負が終わった時更に新たな行方不明者が現れました。
赤い髪の毛が特徴のウォン君・・・ですね。」
細目の先生
「うちの生徒だ。彼は最近いろんな問題ごとを起こしていたが突然ここから出ていくような人ではない」
鬼教官
「何人の生徒から不審人物を見かけたという報告も入っている。
部外者・・。正式な手続きを取っていなければ例え何十メートルのフェンスや壁を越えようが
特殊な魔法で入れんはずだ。」

全員少し考えてから一人喋った

老婆教授
「・・・考えられるのは誰かが裏で手引きしている・・。あるいは生徒側の間違い。
それしか考えられませんね」
ハゲ教授
「誰かが裏で手引きしているだと?ということは今この会議室にいる誰かが裏切ってるというのですか?」

経験豊富な先生達も流石に今回の事件には動揺を隠しきれない。

校長
「・・・魔法を看破された、という考えもあるんじゃないのかね?」
老婆教授
「魔法を看破?つまり魔法の効力を打ち消して中に入ってきている・・ということですか?」
校長
「可能性は皆無ではない。現在アノマラドとオルランヌは戦争状態に入っている。武力での闘いは
互いの疲労をいたずらに増やす。現在効率の良い制圧方法は強い魔法で一気に打ち破る作戦が主流となってる。
その影響かもあって近頃魔法技術の成長が早くなってきている。いわゆるインフレ状態だ」

ざわつきだす。

魔法学の教授
「しかし魔法が打ち破られた形跡・・警報・・・何も残っていませんが・・・。
一つの可能性と見て対処しておきましょう」
校長
「皆の者も不審人物を見かけたら放置せず質問するのだ。よいな?
これ以上行方不明者を増やしてはならん」

全員 はい と返事をし会議が終わった。




==購買部

キュピル
「・・・うーむ・・・」

新聞を立ち読みするキュピル


『オルランヌ、不穏な動き

先日、アノマラド偵察部隊からの報告によるとオルランヌがトラバチェスと連携し
大規模な兵の動きが見えたと報告。
数日かけてアノマラドへ一気に猛攻する恐れがあるとアノマラド司令部は正式発表した。
対策として前線から一旦退き様々な罠、策を用いて戦略的に撃退するとのこと。
付近の市街に対して非難するよう呼びかけている。』

キュピル
「(アノマラドが予測したオルランヌの猛攻路はナルビクからとは全く遠い場所だな・・・。
この進路なら俺が住んでいた近辺は全く問題なさそうだが・・。アノマラド魔法大立学校の
近いところを通って行くな・・・。嫌だなぁ・・・まさか攻めてこないだろうな・・・)」
店員
「掃除の邪魔邪魔」
キュピル
「うわ、すいません」

避けても箒がバシバシ足元に当ててくる。早い話立ち読みやめろってことだ。
さっきから睨んでる。

キュピル
「わかった、買います。買いますって」

そう言った瞬間店員は違う所を掃除し始めた。こっそり新聞を棚に戻し購買部から出ていった。





今日はクラス対抗勝負が開かれる。と、いっても他のクラスなんだが・・・。
ここ最近行方不明者続出の影響もあってか校舎外に出る事は禁じられているため
この対抗勝負も校内で行われることになった。

今回の勝負はお互いともかなりの爆発物の使い手とのことなので相当五月蠅い。


ルイ
「キュ(爆発音)ん、私の教科書見かした(爆発音)?ちょっと見つから(爆発音)
キュピル
「ん?今何て言った?」
ルイ
「で、ですから!(爆発音)教科書(爆発音)(爆発音)(爆発音)(爆発音)

ルイ
「あー、もう五月蠅いです!!!!」

キュピル
「・・・爆発音より出かい声を出したぞ。今」
ルイ
「今日の勝負はうるさくて本当に嫌です・・・・」



==試合会場



A組前衛
「どおりゃぁぁー!!」

巨大な弾道型ロケットランチャーを発射する。
強化魔法によって追尾力が上昇しており直撃した者はまず致命傷は負うだろう。
が、向こうも同じ攻撃方法を用いてるためさっきから爆発だらけである。
時々観客席にまで飛んでくるので今回観戦してる人はほとんどいない。

しかし互いに魔法の壁を作ったり倒れても蘇生魔法などで生き返らせたりと
挙句の果てに殆ど爆発物でしか攻撃できないためこの試合が本当に長期化している。

・・・三日間経ってもまだ続いてるため防音魔法が使えない人は寝不足になってるとか。

=特殊寮周辺

ジェスター
「忍法ー分身の術〜」
カタリ
「出来てないぜ。忍法影分身の術!」
ジェスター
「カタリだって出来てなーい!」
ミーア
「・・・入口で何やってるんだお前等」
カタリ
「お、ミーアじゃねーか。とある東の国では忍術っていう技があるらしいぜ。
影分身したり身の気配を完全に消したり水面を歩いたり壁を走ったり出来るらしいぜ」
ミーア
「・・・・こいつのことか」

そういうとミーアが勢いよく壁に向かって走りそのまま壁を走って登ってしまった。

ジェスター
「・・・・・」
カタリ
「・・・・・」

そのままミーアは何処かに行ってしまったようだ。




ジェスター
「・・・・追いかけるよー!!」
カタリ
「はぁっー!?ミーアについてけって言うのかよ!!」
ジェスター
「追いかけたらきっと忍術使える!」
カタリ
「ほんとかー・・?」
ジェスター
「わああ〜!!」





キュピル
「(やれやれ・・・結局店員に見つかっちまって新聞無理やり買わされちまった・・・・
・・・・ん、何か前方から高速接近してくるもn・・・・)」

ミーアがサッとキュピルの横を通り過ぎる。
しばらくして

ジェスター
「待って〜!!」
カタリ
「ぜってー追いつかねーって!!」


ガンッ!!



ジェスターの持っていた棒がキュピルの鼻にぶつかる。

キュピル
「い、いってえええぇぇぇぇ!!」
ジェスター
「ん、ごめん。今急いでる」

そのままどっかに去ってしまった。そのまま地面の上でもだえ苦しむ。

ピア
「あ、砂食おうとる。うまか?」
キュピル
「そぎゃなものはテラマズイとかいうだべざざあああああ(やけくそ」
ピア
「おー!今の言葉何ー!!?」
キュピル
「(普通に喋った・・・)」
ダイン
「ん、うお。キュピル。何か凄い鼻血出てるぞ。覗き見でもしたのか?それとも何かピアにされたか?
俺は引いたほうがいいか?」
キュピル
「してない!っつかニヤニヤすんな!さっきジェスターがぶつかってきて・・・いてて・・・」
ダイン
「ジェスター?あぁ、何かどっかに走っていったな・・・」
キュピル
「ちょ、ちょっとまじで鼻血止まらん。ガーゼ貰いに行ってくる」
ダイン
「医務室は向こうだな。ついていくよ」
ピア
「わしも!!」




ナワン先生
「ではルイさん。職員室に来たついでにこの物資を医務室にまで持って行ってください。
最近勤務を怠っていて物資が少ないそうです。」
ルイ
「え・・・あ、わかりました・・・」

滅茶苦茶多い・・・・。

ナワン先生
「魔法で軽くしてからいくといいですよ。それでは」



ルイ
「う〜ん!魔法使っても多すぎて重い・・!バ、バランス・・が・・・!」
ミーア
「悪い、急用だ」
ルイ
「わっ!!」

細い道の横でミーアが物凄いスピードで通り抜ける

ルイ
「うっ・・うっ・・・ふぅ・・・。なんとかバランスは保てた・・・」
ジェスター
「どいて〜!!」
ルイ
「ぎゃあぁぁぁ!!」

思いっきりドンとジェスターがぶつかる。
ルイの持っていた物が全部崩れ落ちていく。
そのまま急な坂を転がってく

ルイ
「わあああぁぁぁ!!ジ、ジェスターさん!!ひ、ひどい!!」




ギーン
「・・・・む?・・・!!」

突然急な坂から大量の包帯や医療箱が!!

ギーン
「何事だ・・!」

急いでバリアの呪文を唱えるがあまりにも急すぎて頭や手に次々とぶつかる
諦めてガードの体勢を作る。何とかガードした・・・っと思いきや

ルイ
「ごめんなさいー!!」
ギーン
「ぐおっ!!」

流石に人が振ってくるまでは想定出来ておらずルイと激突しそのまま地面に突っ伏す。

ギーン
「・・・・・・・・・・・」
ルイ
「あ、すいません。
(心の中:ざまーみろってなもんです!!)」


転がって行った物資が次々とミニアルターとぶつかりワープしていく

ルイ
「ぎゃああぁぁ!!もっと面倒なことに!!」




ファン
「さて、用事も済みましたしミニアルターに乗って帰るとしましょう」

ミニアルターに乗ろうとした瞬間いくつかの包帯がファンの足元にワープしてきた。
しかしそれに気づかず・・・・

ファン
「!?」

包帯を踏んだ事に気づかず突然足元が滑りそのまま後ろに転ぶ。
普通に頭をぶつけ痛がる

ファン
「・・・・・・・・」
ミーア
「・・・っ!」

ミーアがミニアルターの横を通り過ぎようとしたらファンが寝転がっているのに気付き
慌ててジャンプして避けようとするがそれと同時にファンが起き上がりミーアが転倒する

ファン
「はっ、すいません!」
ミーア
「・・・気にするな」

そのまますぐ起き上がって何処かに走って行ってしまった。

ジェスター
「あ、ファンー!ミーア何処に行った?」
ファン
「・・・向こうに行きましたけど・・・?」
カタリ
「なぁー、いい加減諦めようぜー・・・。俺疲れたよ・・・」
ジェスター
「諦めないー!!」

ファン
「・・・・?」



ハルララス
「やぁ、悪いね。手伝って貰っちゃって」
銀のサークレットをつけた少女
「い、いいんです。」

ハルララスがとても長いベンチを軽々と両手で持ち運ぶ後ろで小柄な少女が座布団とかを運んでいる。
医務室に持って行くもののようだ。

ハルララス
「ん?伏せて!!」
銀のサークレットをつけた少女
「わっ!」

二人とも伏せる。その上をミーアが軽々と飛び越えていく。

ジェスター
「まって〜!!絶対に追いついてみせる〜!!!」

ジェスターも段々と風に乗りスピードが乗ってきているらしい。
ハルララスにぶつかるもそのままミーアを追いかける。

ハルララス
「おぉっとっと!」
銀のサークレットをつけた少女
「あ、あぶないー!」
キュピル
「・・・・んあ?」




ガンッ!!





キュピル
「んぐああああああああぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!!」



巨大なベンチが思いっきりキュピルの顎にぶつかりもだえ苦しむ

ピア
「あ!砂食うとる!うまかー?」
キュピル
「どぅぁぁだからぁてらまずがぁぁっでびゅえばぁどれだけぎがずむどおもぼでぁでるんだぁあ!!
(訳:だからテラまずいってどれだけ言えば気が済むんだと思っているんだ!(滅茶苦茶」

ダイン
「やべ、歯折れてたりしてねーか?」
ハルララス
「うわうわうわ、キュピル君!ごめんよ!!早く医務室に!」




ギーン
「・・・・ったく!腹立たしい事この上ない!!」

ギーンがイライラしつつもミニアルターに乗って何処かにワープする。


ワープした矢先にいきなりミーアが目の前を通り過ぎる

ギーン
「おい、あぶねーぞ」
ミーア
「すまない、急用だ」
ギーン
「(アルターにも乗らずに急用だと・・・?・・・・まさか・・・!)」

ギーンもミーアを追いかけようとした瞬間後ろからジェスターがぶつかってきた

ギーン
「ぐあぁっ!!」
ジェスター
「白髪どいて!!」
カタリ
「ぷっ!白髪とか傑作だな!プハハハハハハハ!!!」
ギーン
「・・・・・・銀の髪だ、このクソバカどもがぁぁぁああああ!!!」
カタリ
「やべ!ギーンがマジで怒った!!」
ジェスター
「ミーア待ってー!!」




医務室で働いてる生徒
「困ったなぁ・・・。もうこっちに向かってるはずなんだけどまだガーゼとか包帯とか物資が届いてないんだ・・」
ダイン
「なんだって?でも据え置きとかあるだろ?」
医務室で働いてる生徒
「それがそれを担当してた奴が行方不明になっちまっててまだ届いてないんだ・・・」
ダイン
「まじかよ!んじゃ俺がパパッと持ってくるぜ!!」
医務室で働いてる生徒
「頼むよ!」
キュピル
「まあぁぁじぇでぇびゃぁぁぁやくどぼぇおぉxってきてぐぇれぇえええ
(訳:まじで早く持ってきてくれぇぇ!!」



ルイ
「は、はやく届けないと叱られる・・・・」

ルイがあちこちの場所にワープして散らばった物資を集める。
その時またミーアが通り過ぎて行った

ルイ
「・・・・バ、バリア!!」
ジェスター
「ぴょーん!!」

ルイがとっさにバリアを唱える。しかし風の乗ったジェスターはそのバリアを飛び越える。
カタリは横に回って走りギーンはバリアを壊して突き進んだ

ギーン
「邪魔だ!!!」
ルイ
「ひ、ひぃっ!!」

バリアどころか積み重ねてた物資を全部崩していった。

ルイ
「あああぁぁぁぁ!!!
・・・・許しません!!」

物資を放置してギーンを追いかけに行った




ミーア
「・・・ちっ、」

ミーアが突然何もない場所に向かって指先から針を飛ばした。
当然その針は何も当たらなかった。

その針は崖下の校庭に落ちていった

カジ
「む、何故上から針が!!」

巨剣を盾にし針から身を守る

カジ
「けしからん!一発文句いってやらねば」

カジのでかい身長をいかして崖を物凄いペースで登り30mあった崖をたったの10秒で登りきってしまった。

ジェスター
「カジじゃま〜!」

ジェスターがカジの膝にぶつかる。しかしびくともしない。

カジ
「邪魔とは何だ邪魔とは。それよりさっき針が落ちてきたんだが誰がやったか知らんか」
カタリ
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・。ミーア・・・だよ・・・ぜぇ・・・ぜぇ・・・・」
ジェスター
「そうだった。まって〜ミーア〜!」
カジ
「なに?ミーア?珍しい事もあるもんだな」
ギーン
「待ちやがれ馬鹿な小娘と馬鹿な小僧!!」
ジェスター
「あ、怖い。まってミーア!!」
カタリ
「やべ!」

二人とも慌ててミーアの後を追いはじめた。
カジも追いかける




ハルララス
「よし、医務室にベンチを設置しておいたよ」
銀のサークレットをつけた少女
「あの・・・。キュピルさんでしたっけ?さっきから凄くもだえ苦しんでるんですけど・・・」
キュピル
「しふぁshfはしgひあすgひうshぎhぐいあhぎうでぃ」

ピア
「わし飽きげなー。帰る」
ハルララス
「ちょっとダイン君がまだ帰って来ないか見てくるよ」



ダイン
「職員室に行ったらルイが既に物資持って行ったと言うし
ミニアルターのあちこちに物資が落ちてるしどういうことだよ、これ!!」
ミーア
「すまない、ダイン。ちょっとどいてくれ」
ダイン
「おわっ!」

ミーアがダインを乗り越えて進む。
その後ジェスターがダインを突き飛ばして進みカタリがダインを蹴って進み
ギーンが踏んで進みルイが軽く踏んで進みカジが踏みつぶして進んだ。

ダイン
「・・・・・・。うおぉぉぉ!ルイ!!お前何やってんだよ!!物資を医務室に運ぶの任されてたろ!?
逃げんな!くそっ!!」

ダインも落ちてる包帯とかを拾いながらルイを追いかけはじめた



ミーア
「(後ろが騒がしいな・・・。だが今は目的に集中せねば見失う・・・)」


ピア
「あ、ミーア!!どかいくかー?」
ミーア
「すまない」

そういってミーアが通り過ぎていく

ピア
「なんじゃい。急かしいやっちゃのぉ」
ジェスター
「どいて!」
ピア
「うわぁー!」
カタリ
「わりー」
ギーン
「どけっ!!」
ルイ
「どいてください!!」
カジ
「悪い、引け」
ダイン
「あ?何でピアがここにいんだ。どいてくれ!」

ピア
「・・・・楽しかー!!」

ピアも皆の後を追いはじめた。



ファン
「やれやれ、痛みが引くまでずっと隅で震えてましたよ・・・・。」

アルターに乗って移動する。

ファン
「おや?ここは中央校舎ですね。どうやら間違えたようです」

再びアルターに乗ろうとした時またドタバタと音が聞こえてきた

ファン
「ん?ヒ、ヒィィィィ!!」

ファンが慌てて壁に寄る

ジェスター
「ミーア待って〜!!」
カタリ
「も、もう俺ダメだあああ!」
ギーン
「くそっ!すばしっこい馬鹿どもだ!!」
ルイ
「待ちなさいギーン!」
カジ
「段々大所帯になってきたな・・・」
ダイン
「くっそぉぉぉ!ルイ待ちやがれー!!」
ピア
「どこんいくかー!?」

ファン
「・・・い、一体何があるっていうんでしょうか・・。ルイさんもジェスターさんも皆追いかけてる・・。
大変興味深いですね。ついてってみます」

自身に高速移動の魔法をかけ素早く追いかけはじめた。




ハルララス
「こない!!」
銀のサークレットをつけた少女
「な、何かトラブルがあったんでしょうか・・・」
キュピル
「ぢょっとだsだおどそぞぉdじゃおdにおでてでぇてさgぁgぁいあしてくぐるわぁぁさばぁ
(訳:ちょっと外に出て直接探してくるわ)」
ハルララス
「だ、大丈夫なのかい?キュピル君。一緒に行くよ」



キュピル
「んあ゙ーーー。・・・・・ん?」

医務室から出た瞬間ドタバタ色んな人が走ってきた。

キュピル
「ぎ、ぎえええぇぇぇ!!」

ハルララス

「わっ!!」


キュピルが皆に踏みつぶされていく。
ハルララスは間一髪避けた。

キュピル
「・・・・・(瀕死」
ハルララス
「あ、ルイ君、ファン君!確かあの二人はキュピル君の友達で回復魔法が使えたはず・・・。
追いかけないと!ユーファさんはここで待ってて!」

キュピルを抱えて皆の後を追いかけはじめる。

ユーファ
「あ、でも・・。私も行きます!」



気がつけば物凄い行列が出来ていた。


ミーア
「・・・校外・・・!?」

しかしすぐに校舎のフェンスをジャンプで乗り越え森に入っていく。

ジェスター
「わーん、まって〜!」
カタリ
「げぇっ!このフェンス登るのかよ!めんでぇー!!」
ギーン
「くそ、馬鹿はこんな物も上るのかよ!!」
ルイ
「む!ギーン!校外に逃げる気ですね!!」
カジ
「おいおい、どこまで行く気だミーア!」
ダイン
「こ、この!ルイー!!責任逃れするために校外にまで逃げる気か!!
ピア
「ひゃはー!!!」
ファン
「の、登れない!浮遊魔法!!」
ハルララス
「キュピル君、ごめんよ!」
キュピル
「ぐえぇっ!!」
ユーファ
「よいしょ、んしょ!」

ハルララスが思いっきりキュピルを頬り投げフェンスの外に落とす。

しかしミーアと違って皆直接登ったり魔法を唱えたりしているため
あっという間にミーアが見えないところまで移動してしまった・・・。





==森



ミーア
「・・・・?」

逃げてゆく気配を辿ってきたら小さな洞窟にたどり着いた。
しかしこの洞窟。かなり深そうだ。

ミーア
「・・・・」

短剣を抜いてその洞窟の中にゆっくり入っていく。
中は蝙蝠がいたり蜘蛛の巣があったり人がいるような気配は全くなかった。
一定のところまで進むと行き止まりになってしまった。
おかしい。さっきの逃げてゆく気配は確かにここに入って行った・・・・。

・・・・。

ミーア
「・・・これは・・?」

ミーアが行き止まりの壁に触れる。
少し感触が違う。

ミーア
「・・・・こうか」

ミーアが壁を思いっきり蹴飛ばす。蹴飛ばした場所は扉になっていて勢いよく開かれた。
壁の先は所々松明によってともされており間違いなく人がいる仕組みになっていた。
ドアを開けっ放しにして先に進んでいった。

慎重にゆっくり進んでいく。

ミーア
「・・・・罠か」

一見何もない地面だが後一歩進めば針が地面から突き出てくるだろう。
このタイプの罠は設置型なので慎重に魔法を唱え解除していった。
カチッという音が聞こえた。

ミーア
「・・・よし」

先に進む。
その先もまたいくつかの罠が置かれていたが全て看破し解除。
ここまで罠が設置されていては何か大切な物を守っているとしか思えない。
入口から1Kmぐらい下り坂を進む。広い場所に出た。

???
「動くな」
ミーア
「・・・!」

気配がなかった。不意打ちをくらう。
左右からライフル銃を持った何者かの兵にこめかみに突きつけられる。

???
「のこのことやってくるとはいい度胸している」
ミーア
「・・・・」
???2
「お陰で釣りやすかった。礼でも言おうか?」
ミーア
「・・・お前等は・・?」
???
「ククッ、どうでもいいことだr・・・」

二人が喋ってる隙をついて短刀を引き抜き二人を斬る。
ところが全く動じていない。

???
「そんなことだと思って防刃を施している」
???2
「・・・覚悟は出来てるな?」

どうせ撃たれるなら最後の抵抗だ。
しゃがんで二人の片足をバランスが崩れるように勢いよく引っ張る。
上手く成功し二人とも転倒する。その隙に急いでこの場から離れる。

???
「逃がすな!!」

後ろから銃弾が飛んでくる。
こんな狭い場所で乱射されては当たらないわけがない。
まもなく痛みが襲ってくるだろう。覚悟したその時魔法の音が響いた。

すぐ真後ろに魔法の壁が作られ銃弾をはじいた。

ジェスター
「ミーアみっけ〜!影分身教えて〜」
ミーア
「・・っ!い、今は抱きつくな!」
カタリ
「はぁ・・はぁ・・。ミーア!助けてくれ!ギーンが襲ってくる!!」
ミーア
「・・・??」
ギーン
「この馬鹿二人が!!今の状況すら分らないのか!!このクソのドアホが!!」
ルイ
「むぅ、ギーン・・・。一時休戦です・・」
ギーン
「・・・はぁ?」
カジ
「こんな狭い場所に敵と出会うとは厄介だ」
ダイン
「おい、ルイ!お前医務室に物資届ける役割だっただろ!」
ルイ
「あ、ああああー!!つ、つい!」
ピア
「なーなー!そんとなにはじまかん!?」
ファン
「何も始まりません・・・(翻訳魔法」
ハルララス
「ルイ君、ファン君!キュピル君の治療をお願いしてもいいかな!?」
キュピル
「・・・・・ァァァァァァァァァ」
ファン
「ひ、酷い傷ですね・・・」
ルイ
「撃たれたんですか・・・?」
ユーファ
「私が治療します・・!それより前!」

突然の援軍にびびったのがさっきの二人はいなくなっていた。
魔法の壁を張っているので外に出た可能性は少ないだろう。
そのままなだれ込むように洞窟の奥へ走ってく。

ジェスター
「影分身教えてー」
ミーア
「・・・ふぅ、わかった。ここを制圧したら教えてあげる」
ジェスター
「わーい!」
カタリ
「それにしてもミーアは何で逃げるんだって思ったら見えない敵を追っていたとはな。へへっ、
やっぱミーアはすげぇや」
カジ
「奴らは我が学校に侵入していた。一連の事件と関係があることが高い。絶対に逃がすな。」


最奥までやってきたようだ。
人が住んでいたような形跡があった。
さっき逃げた奴は・・・そこにいた。

だが銃殺されていた。

自殺だろう。


ジェスター
「うっ・・・」
カタリ
「うわ・・・」
ミーア
「・・・・・・・」
カジ
「・・・・自決したか」
ギーン
「ちっ、情報を得られない。」
ルイ
「・・・どんな時でも人の死体って・・見たくないです・・」

キュピル
「ちょっと通してくれ。通してくれー」

後ろで治療されたキュピルが走ってきた。

ユーファ
「キュ、キュピルさん!まだ完治してません!」
キュピル
「無茶なのはいつものことだ。」

キュピルが真っ先に死体に飛びついた。

ルイ
「何をしてるんですか?」
キュピル
「・・・・死後から相当経過している。これはさっきの奴じゃないと思うぞ」
ギーン
「何だと」

ギーンも続いて他の死体の脈に触れる。

ギーン
「・・・石のように冷たく関節も自由に動く。死後硬直ではない。
・・・・キュピル。よく気付いたな」
ダイン
「お前探偵になれ」
カタリ
「そいつはいいや!キュピル俺の失くし物探してくれや」
キュピル
「今そんな時かって」

とかいいつつ苦笑するキュピル。

ミーア
「・・・ということは我々が気付かなかった隠し道があるのかもしれない」
カジ
「だが見た感じそのような道はなかったぞ」
キュピル
「そうなれば残るはここの部屋の何処かに隠し道が・・」
ピア
「へっへーん。わしゃもう見つけたがな!!」

キュピル+カタリ+ダイン
「ΩΩΩ<<ナ、ナンダッテー!?」

ハルララス
「ははは、君たち仲いいんだね。ピア君。ここだろ?」

ハルララスが何もない壁を叩く。

ジェスター
「えー、ただの壁じゃんー」
ハルララス
「カジ君。一緒に叩くよ」
カジ
「うす」

カジが巨剣を持ちハルララスは拳を作る。

ハルララス
「どおりゃああぁぁぁぁ!!」
カジ
「でぇいいやああぁぁぁぁ!!」




二人が思いっきり壁をたたき壊す。
崩れた壁の先には新しい道が繋がっていた。

ミーア
「・・・なるほど」
ギーン
「すぐに進むぞ。奴ら応援を呼んだ可能性があるぞ」
キュピル
「おっしゃ、進むぞー!」

キュピルが抜刀し突撃していく。
続いてカタリとダイン。ハルララスにカジとドンドン突入していく。



入ってすぐにまた行き止まりになった。
色んな機械が置いてある。そしてそこにさっき逃げ込んだ敵がいた。
今は正面で向き合ってるから誰なのか分る。

・・・あの軍服はトラバチェスの・・・


トラバチェス兵
「くっ、ばれただと・・」
キュピル
「お前等なのか?俺らの学校に入って行方不明事件を引き起こしてる犯人は」
トラバチェス兵2
「さぁな。何人かやっちまったけど」

あっさり言ったが全員に衝撃が走った。

ミーア
「・・・さっき何しに学校に入った」
トラバチェス兵
「・・・今すぐにわかるぜ」

そういってじりじりとトラバチェス兵が動き出した。

ダイン
「・・・・!させるか!」

すぐにダインが動いた。だがもう一人のトラバチェス兵に止められる。
その隙に何かのスイッチングレバーを上に上げた。

しばらくして地震が襲ってきた。

ピア
「どか!?」
ミーア
「どうなってるの っと言っている」
ファン
「今翻訳は別にいいです!これは何の地震なんですか!?」
カタリ
「く、崩れちまうのか!?」

その時トラバチェス兵が笑った

トラバチェス兵
「くっくっく。爆発だよ・・・。俺達は学校のあちこちに爆弾をしかけてやったのさ」
キュピル
「何だって!?」
トラバチェス兵2
「時期に戦争が始まる。」

その時カジが前に出た。
ゆっくり。だがその巨体が迫る姿はかなり圧迫感があった。
カジがトラバチェス兵二人をまとめて掴みあげる。

トラバチェス兵
「殺せよ。おれたちの役目はもう終わった」
トラバチェス兵2
「時期にここも崩れる。もたもたしてていいのか?」
カジ
「・・・死で救われるがいい!!」

ギーン
「待て!!そいつは殺すな!!生け捕りにしろ!!」



カジが本気で怒っている姿を初めてみる。
そしてギーンも真面目な姿勢で意見を出すのも初めてみる。

ギーン
「殺すのは情報を絞り取ってからにしろ」
カジ
「・・・・早くここから逃げるぞ」
ファン
「ここの部屋にあった証拠品は全部持ちました。」
ジェスター
「早く逃げようよ・・。なんか嫌な予感がする・・」

カジが二人をぶん殴り気絶させる。
急いで皆この洞窟から逃げ出す。

幸いトラバチェス兵が言っていた洞窟が崩れるだとかどうたらは実現されなかった。
ハルララスが先に気付き導火線を切っていたようだ。

外に出ると景色が一辺していた。


ダイン
「っ・・・!」
カタリ
「な、なんだよこりゃ・・」

学校が燃えていた。
あちこちに火の手が上がり建物は崩れていた

ギーン
「ちっ、来るぞ」
キュピル
「何が!?」
ギーン
「オルランヌとトラバチェスの軍隊に決まってるだろ!
学校を爆破したってことはここはアノマラドの軍と繋がっていたってことだ!!
薄々前からおかしいなとは思っていた・・・!戦争まがいのクラス対抗勝負はする!
やたらと銃器物の使用を認める!!お前等はおかしいとは思わなかったのか!?」

誰も喋らなかった。

カジ
「今は揉める時ではない。もしギーンの言葉が事実であるとするならば
すぐに対策を取る必要があるぞ」
キュピル
「早くトラバチェス兵から情報を聞き出さないと。職員室にいこう」
ルイ
「残ってるといいんですけど・・・」
ミーア
「・・・途中で私が気付いたからいくつかは無事のはずだ。」



==学園内


中に入ると全員生徒の冷静さに驚いた。

それどころか何事もなかったかのように普通に歩いている。

キュピル
「ど、どういうことだ・・・?」
カタリ
「な、なぁ。アンディ。お前さっきの爆発何とも思わなかったのかよ!」
アンディ
「ん?いや、別に?っつか今日の試合してるクラスが誤射したんだろ?
全く、ちゃんと狙えよな・・・」
カタリ
「ち、ちげーよ!この爆発はトラバチェスが仕掛けた爆弾が爆発して・・」
アンディ
「悪い、今忙しいんだわ。またあとで」
カタリ
「ま、まてよ!」

そういうことだった。

この爆発は誤射によるものだと思われていた・・・。
また数日経てば学校は復活しいつも通りの生活になる・・・。
全員がそう思っていた・・・。

キュピル
「・・・ギーンとカジとファンは今職員室に向かってるんだよな?」
ハルララス
「そうだね・・・」
キュピル
「皆、早く自分の部屋に戻って武器を取ってきた方がいい。
俺の予測だと・・・あと三時間以内に攻めてくるぞ・・・」
ルイ
「ど、どういうことですか?キュピルさん」
キュピル
「奴らはここを攻撃した。ということは奴らはここを攻撃するメリットがあるっていうことだ。
今の爆発で防衛機能は完全に停止している。今攻めたら確実に学園内まで攻め込める。
中途半端に学校を残していてはいずれ今の爆発の仕業がばれる。
・・・・間違いなく来るぞ。跡形もなしに消してくる・・・」
ダイン
「じょ、冗談はよせよ。ここはただの魔法学校だろ?俺たちは魔法を学びにここにきたんだろ?」
キュピル
「なら何で戦争まがいなクラス対抗勝負なんてやってたんだよ・・・。
今の俺は分るぞ・・・。何でこんな事やっていたのか・・・」
カタリ
「・・・言ってくれよ」
キュピル
「・・・これは訓練だ。戦争に出るためのな」




==校長室


ギーン
「校長!!」
校長
「ん?何かね」
ファン
「な、何かねとかじゃありません!!」
カジ
「トラバチェス兵が我が学園内に侵入し爆発物を仕掛けていた。
今の爆発は誤射なんかではなく列記とした攻撃だ。」
ファン
「証拠はここに全てあります!」
校長
「ふーん、そうかそうか」
ギーン
「・・・・なんだと?今貴方は問題のある発言をした!それを理解していr・・」
校長
「ギーン君。・・・早く戦闘準備に出たほうがいいんじゃないかな?
すぐにオルランヌが攻めにくるよ。」
カジ
「・・・貴様・・・!貴様の目的は・・・!!」

カジが抑え込もうとした瞬間校長が校内放送のスイッチを入れた。

校長
『諸君。突然で申し訳ない。戦闘準備をしてくれたまえ。
とある軍が我が学校の試合を見て試合をしてほしいと申し込んできた。
相手はオルランヌ軍だ。彼らに負けないよう精いっぱい良い試合をしてくれ。
検討を祈る。』




ジェスター
「今の放送何?」
カタリ
「試合・・・?」
ダイン
「こんな状況で試合の訳ないだろ!!」
ルイ
「試合に見せかけて・・・本当に戦争をさせる気なんですか・・!?」
キュピル
「おい、見ろよ・・。周りの奴らを・・」

全員武器を手に取り戦闘準備を済ませていた。
友達同士で会話して笑っている

「オルランヌ軍と試合できるんだってよ」
「誤射で校舎ボロボロじゃねーか。恥ずかしいなー!おい」
「正々堂々と勝負すっかー」

キュピル
「勝負じゃない・・勝負じゃない!!」






ギーン
「校長・・・。貴方は・・・」
校長
「諸君。せいぜい頑張ってオルランヌを消耗させてくれ。私は期待してるからな」
ギーン
「逃がすな!撃て!!!」

ギーンの指示でとっさにファンが破壊魔法を唱え発射しカジは剣を投げ飛ばした。
だが校長が最高防衛魔法術を唱えそれを跳ね返してきた。とっさに避ける。
再び校長の方に向き直ったころには何処かにテレポートし消えていた。

ギーン
「ちっ!!まさか校長までがトラバチェスに関与していたとは!!」
カジ
「ギーン。お前はどこまで気付いていた?」
ギーン
「くそっ・・・・」





アノマラド魔法大立学校。
裏の顔が今現れた。


続く



7話



試合に見せかけた本物の戦争。
オルランヌが攻めてくるその意図とは?


ルイ
「戦争だなんて・・今までモンスターと戦う事はあっても人ってのは・・」
キュピル
「(記憶上ルイが殺す目的で人を撃った事はないな・・)」
カジ
「大変なことになった」

カジが校舎から出てきた。

ハルララス
「どうなったんだい?」
カジ
「校長がトラバチェスに関与していた」
ダイン
「何だって!?」
キュピル
「そいつは本当なのか!?」
カジ
「間違いない。あと五分にはオルランヌが攻めてくるはずだ」
キュピル
「何故オルランヌがここに攻めてくる?」
カジ
「まだ分らない。今ファンとギーンが校長室の中を調べている。
とにかくなるべく被害を抑えつつオルランヌ軍を撤退させる必要がある。
いつも通り俺が指揮を取る。いいな!?

全員が はい! と返事をする。
そして地響きが聞こえ始めた。

カジ
「E-4組!!集合しろ!!いいか!?作戦を説明するぞ!!」

周囲にいる自クラスを呼び寄せる。

ジェスター
「キュピル・・来たよ・・・」

ジェスターがキュピルとルイの間に隠れて外を眺めている。よく見ると震えてる。

キュピル
「(ジェスターの本当の親・・エユは確か戦争で行方不明になっちまってるからな・・・。
初めてみる戦争は怖いだろう)
カジ。ルイとジェスターと行動していいか?あまり二人から目を離したくない」
カジ
「構わん。とにかく今回は攻める必要性は全くない。防衛し続けるぞ」
カタリ
「俺、防衛苦手なんだよな・・・。」
ダイン
「おいおい、お前魔法少し使えるじゃんか。」
カタリ
「ダインよりは出来るな。へへっ」
ダイン
「・・・・頼りにしてるぜ」
カタリ
「おう、ダインもな」

二人が腕組する。


ドゴォォン!!


ミーア
「・・来たぞ」

壁が崩れる。崩れた壁からオルランヌ兵が勢いよく突撃してきた!!

カジ
「いくぞお前等!!一人たりとも校舎に入れるな!!」



うおぉぉぉぉ!!っと叫びながら前衛が一気に突撃する。
銃や鎧に包まれたオルランヌ兵を思いっきりぶった切る。

前衛生徒
「へへっ、ちょろいちょろい」
前衛生徒2
「怠けるな。数が多いから休む暇がないぞ」
前衛生徒
「分ってるよ。勝ったら名誉賞貰えるかもな。ハハッ」
キュピル
「(こいつは試合じゃないというのに・・・!)」

キュピルも前衛に立ちひたすら剣を振り回し敵を切り裂いていく。

ルイ
「側面は私が守ります。」
キュピル
「頼む」

キュピルの側面付近にルイが立ち横からやってくる敵を撃ちぬいていく。

オルランヌ兵
「っ!・・・まだまだ!!」
ルイ
「!!」

ルイ目がけてオルランヌ兵が剣を横に振る。慌ててしゃがんで回避するがキュピルに命中する。

キュピル
「ぐっ!!・・・やりやがったな!」

キュピルが思いっきりオルランヌ兵目がけて突撃する。大きく振りかぶって攻撃するが防がれる。
しかしすかさず脛を蹴りつける。あまりの痛みにオルランヌ兵がよろける。

キュピル
「そこだ!」
オルランヌ兵
「う、うわああ!!」

思わず目を瞑ってしまった。
とにかく今は考えるのをやめてひたすら防衛し続ける。機械になったつもりで・・・。

ルイ
「くっ・・・う・・・」

無傷のはずなのにさっきから苦しそうだ。

キュピル
「どうしたルイ。狙いが甘いようだが」
ルイ
「・・・どこを狙えば良いのか分りません・・・」
キュピル
「狙うって当然・・・」

言おうとしてやめた。頭だなんてとてもじゃないが可哀相すぎて言えない。
・・・だがあからさまに気遣ってもいけない。
そうなれば一つしかない。

キュピル
「足を狙え」
ルイ
「足・・ですか?」
キュピル
「そうだ。足を撃たれるということはすなわち機動力を失う。防衛にぴったしじゃないか!」
ルイ
「・・・わかりました!!」

ルイの目から一時的に動揺の色が消えていく。
大丈夫そうだ。

ジェスター
「キュピル!薬持ってきたよー!」

キュピルが傷付いたのを見てすかさず薬を持ってきた。

キュピル
「ありがとう・・・ってこれロシュP5号じゃないか・・。・・・懐かしいな」

得体のしれないポーションを一気飲みする。微妙にまずい。

ジェスター
「他の人にも配ってくる」
キュピル
「あまり前線に立つなよ」

今のところ他クラスの人たちも協力してくれてるお陰で一人たりとも逃がさず倒せている。
だがその時


ズドン!!!




カジ
「なんだ、今の鈍い音は」
カタリ
「グ、グレネードランチャーだ!!」
ハルララス
「しかも魔法で強化されているものだ!皆伏せて!!」

すかさず全員土嚢に伏せる。
着弾地点を中心に物凄い爆発が起きる。
周囲にあった壁が全て崩れていく。
またいくら土嚢に伏せていたとはいえ着弾地点に近かった者は重症を負った。

ピア
「い・・・たけっ・・・」
ミーア
「・・ピア!下がって治療してもらえ!」

ピアがさっきの爆発に巻き込まれたようだ。
すぐにユーファとジェスターが駆け寄り応急手当をする。



カジ
「どぉぉぉぉるあああ!!!」




巨剣を思いっきり横に振る。
横切りというよりは薙ぎ払いに近く範囲攻撃とも言える。
周囲にいたオルランヌ兵全てを薙ぎ払った。

オルランヌ兵
「で、でかい!!」
カジ
「くたばれ!!」

カジにとって小さい敵を蹴り飛ばしていく。

カジ
「くっ、壁がどんどん崩れていく。中に入ってくるオルランヌ兵の数も増えていくぞ」

まだ小規模の突撃が続いてるため大丈夫だが
壁が崩れるにつれ突入してくるオルランヌ兵が増えてってる。
これ以上増えると何人か突入を許してしまうかもしれない。

もし奴らを侵入させてしまい物資のある倉庫などを爆破されてしまっては
圧倒的に不利になってしまう。
他にもマナ動力室を攻撃されてはアルターが使えなくなり移動が大変時間かかるようになってしまう。
物資を運ぶのに30分もかかってはいけない。5分で届けねばならない。
特に魔法が使えなく銃器に頼っている者が弾切れになっては尚更致命傷だ。

何とかして外壁も守りたい。
だが外からの砲撃を止める事は不可能に近くカジの思惑に反比例してドンドン壁が崩れていく。


少しずつ劣勢を強いられてきた。



==職員室

ハゲ教授
「オルランヌ兵による突然の奇襲。そして校長の謎の失踪。
学校の地位は地に落ちたものだ!」
ナワン先生
「今はそんなことを話すべきではありません!
生徒は校長に騙されてはいるものの戦っています!
戦うことのできる先生や教官。教授は既に前線に向かっています。
戦うことのできない我々は援軍を呼んだり校長の行方を捜すべきなのではないのか!?」

その時職員室の扉が開いた

ギーン
「だめだ、校長の情報端末記録には何も残されていなかった」
ファン
「完全に証拠を消されていますね。その気になればこれはいつでも戻れるレベルです」
ナワン先生
「なんということを・・・」
ギーン
「証拠は完全に残されていない・・・。くそっ・・」

ギーンが近くにある机を蹴り飛ばす。

ナワン先生
「とにかく、今はこの状況をどうにかしましょう。
マナ増幅装置が破壊されては生徒が瀕死状態に陥った時医務室への自動ワープが
出来なくなります。また医務室を制圧されてもワープした所でトドメを刺されます。
・・・この二つだけは絶対に死守するように!!」






オルランヌエース兵
「総員!対迎撃呪文を唱えよ!
槍を構えろ!杖を向けろ!総員!突撃しろ!!」

突然敵の動きが変わった。

ダイン
「な、なんだ!?」
カタリ
「うわっ!!」

敵が突然前線を押し上げるかのように突撃してきた。
必ずしも見つけた敵を倒すのではなく何人かは無視して一気に前に走ってきた。
攻撃しても全く怯まない。魔法の力か!?

カジ
「流石魔法国家と言ったところか・・・。魔法をそつなく扱いこなしている
あの指示している男・・・ただものではないな?」

津波のように襲ってくる敵の前衛。
それに飲み込まれたものは中衛にいる敵に刺され殺され悲惨な目にあっていた。
しかしすぐに緊急ワープが働きその場から離脱していた。
だが前線が大きく下がっているのは事実だ。

前線が大きく崩れ気がつけば全員散り散りになっていた。

カジ
「いかん、全員バラバラになっては敵の思うつぼだぞ!!」




キュピル
「まずい、ルイ、ジェスター!囲まれてきてるぞ!!」
ルイ
「ジェスターさん!離れないでください!」
ジェスター
「う、うん」

前線が一気に押された結果三人はオルランヌの兵士に囲まれているような状態だった。
何人かが無視して通り過ぎていくが中衛と思われる奴らが短剣を抜き様々な角度から攻撃してきた。
一度に8人もの敵から同時に攻撃を繰り出しそれを防ぐのはかなり至難の業。
どうにかしてルイが魔法を唱えバリアを一時的にはって防いではくれてるが
敵の貫通魔法がやってくるとこればかしはどうにもならなかった。

ジェスター
「こ、このままだと・・刺されちゃう・・!!!」
ルイ
「退路も・・もうない・・!!」
キュピル
「くそっ、こうなったら昔俺の師匠がやっていた技を真似して打破してやる・・!
ルイ!俺に高速移動の魔法をかけてくれ!同時に重力解放の魔法も!!」
ルイ
「じゅ、重力解放!?そんなすぐには!?」
キュピル
「いいからやってくれ!それとジェスターはルイを守ってやってくれ!」
ジェスター
「うん!」

ルイが急いで荷物から上質のマナストーンを取り出し詠唱を始めた。
重力解放の魔法はかなり難易度の高い魔法だ。
高速詠唱したら失敗する可能性がある。慎重に唱えていく。

ジェスター
「むーん!!」
オルランヌ兵
「ぐあ!」

ジェスターが鉄の棍棒でガンガン敵を殴っていく。
入る学校間違えたんじゃないのか?ジェスター。




ダイン
「バースト!」

ダインが蹴りと剣技。そして中級魔法を駆使して何とか戦っている。

カタリ
「まずいぜ、ダイン!敵に飲み込まれちまってるぜ!」
ダイン
「後ろ頼むぞ、カタリ!」
カタリ
「おうよ!俺の背中守ってくれよ」

攻撃される時は複数の敵から同時に攻撃される。そのタイミングをきっちり読みとって
防御魔法を唱えれば上手く形勢を維持できる。
だが突然偏った攻撃をされるときもある。
流石にこの時はずっと防御魔法を唱えるしかなく攻撃することができない。

今まさにそんな状況で二人とも防御魔法を唱え続けてる。

カタリ
「もっと勉強しておけばよかった・・・」
ダイン
「!。カタリ!貫通魔法が来るぞ!伏せろ!!」
カタリ
「うへっ!」

慌ててしゃがむ。貫通魔法が敵に当たる。

カタリ
「ざまーみろ!」

カタリが起き上がる。が、起き上がった瞬間目の前に敵の短剣が迫っていた。

カタリ
「!!!」
ダイン
「伏せろって言ってただろ!」

ダインが無理やりカタリを引っ張って伏せさせる。ギリギリのところで回避できた。

カタリ
「た、助かったぜ」

だが敵と密着状態にある。もうここまで飲み込まれてしまっては
いくら防御魔法を唱えても完全に防ぎきることはできない。
あと5秒ぐらいしか持たない。一旦医務室に飛ばされるか・・・。
そう考えた瞬間のことだった。



キュピル
「うおりゃああああぁぁぁぁぁああああああっっっっっっっ!!!!」



ダイン
「なんだ!?」
カタリ
「お、キュピルじゃねーか!援軍か!?」
ダイン
「でもなんかカッコ悪いな。ハハハ」

キュピルが両手に刀を持ちながらグルグルと高速回転していた。
高速移動と重力解放が重ね合わさり小さく浮きながら無限に回転を続けていた。
そのまま敵に向かって突撃していってる。
いくら敵が剣や魔法で防ごうとしたところでもキュピルの攻撃によって一瞬で弾き飛ばされ
そのまま斬られていた。

キュピル
「(高速魔法が消えるのも後10秒くらいか・・!そろそろ撤退したほうがいいな)」

一旦地面に着地した。

カタリ
「助かったぜ」
キュピル
「一旦校舎に戻って体勢を立て直そう」

キュピルが再び高速回転し始める。敵を薙ぎ払いながら
校舎に向かって突撃していった。出来た道を全員通って行く。



ミーア
「ピア、囲まれているぞ。一旦離脱しよう」
ピア
「えー」
ミーア
「えーではない!」

ミーアがピアの襟首をつかむとそのまま高くジャンプし校舎の方に飛んで行った。

ピア
「いぎゃぁぁぁ!!」



ハルララス
「殴られたくなかったらどいてくれ!」
オルランヌ兵
「馬鹿かっ!死ねっ!」

前衛の兵がハルララスの腕を突き刺す。が、突き刺さるどころかまるで鋼を突いたかのように
弾き返されてしまった。

オルランヌ兵
「なんだと!?」
ハルララス
「おりゃぁ!!」
オルランヌ兵
「ぐわぁっ!!」

顔面を思いっきり殴る。兜が割れ他の兵士を巻き込みながら物凄く遠くまで吹っ飛んで行った。

ハルララス
「さすがユーファさん。支援魔法は完璧だね」
ユーファ
「早く校舎に戻りましょう・・・」
ハルララス
「そうだね。行こう!」





カジ
「む、お前等無事だったか」

全員同じタイミングで校舎の横にたどり着いた。
敵はマナ増幅装置を集中狙いしているらしくここには猛攻してきていなかった。
何人か遊撃部隊としてこっちに走ってきたがカジの強烈な攻撃によって吹っ飛ばされていた。

カタリ
「へへっ、キュピルのカッコ悪い援護のお陰でな」
キュピル
「か、カッコ悪い・・言うな・・・。ぉぇ・・・」
カジ
「ん、どうした。やられたのか?」
ジェスター
「キュピルが魔法の支援受けながらぐるぐる回転して敵を薙ぎ払ってた。
まるでベーゴマ!!」
キュピル
「ぐるぐる高速回転すれば直接攻撃は一切食らわないだろうと思ってやったんだよ・・。おぇ・・・」
カジ
「戦地でそういった発想が閃くとは大したもんだ。」
ルイ
「でも詠唱凄い緊張しましたよ・・」
ミーア
「皆そこにいたか」
ピア
「ミーア!わてそぎゃもうじげるとんでたんだ!!」
ミーア
「仕方がなかった」

通じてるようだ。よくわかる・・・・。

ハルララス
「よかった、皆無事だ」
ユーファ
「ほっ・・」

しばらくすると校舎の入り口から二人誰かがやってきた。

ギーン
「おい、状況はどうなっている」
ファン
「皆さん、無事ですか!?」
キュピル
「ギーン・・。もっと心配してくれてもいいだろうに」
ギーン
「今はそんなことどうでもいい。戦況は思っていた以上に悪そうだな」
ルイ
「ファンさん。証拠などはありました?」
ファン
「いえ・・・。全部隠滅されていました・・。情報端末記録などを検索してみたのですが全部ダメでした」
ハルララス
「校長はかなり前からこの事を計画していたんだろうね・・・」
ミーア
「・・・・」
カジ
「とにかく全員ここに集合してくれたのは都合がいい。
これから別の作戦を発表したい」
ダイン
「作戦?もうここまで来たら後は遊撃しかないようにも思える・・・」
カジ
「だめだ。防衛ラインが崩された今ただ闇雲に戦っていては全く効果がない。
戦略的に物事を進めていかなければ逆に奴らに殺されるぞ!」
ギーン
「同意する。明確な目標もなしに戦うのは愚の骨頂
それだけでなく闇雲に戦力を消費することにも繋がる」
キュピル
「だがしかしどうするんだ?」
カジ
「今奴らは勢いに乗っている。この状況はある事に非常に弱い。それはなんだかわかるか?」
ジェスター
「むーん、意地悪。早く言ってー」
カジ
「奇襲だ」

全員が 奇襲!? っと声をあげた。(ギーン除く

カジ
「そうだ。クラス対抗勝負を思い出せ。あの時勝利条件はなんだった?」
カタリ
「えーっと、敵を全員倒したら勝利だったっけな」
カジ
「もう一個あるだろうが。おれたちは全部それで勝利したぞ」
ダイン
「敵の本拠点制圧だな!?」
カジ
「そうだ。奴らは恐らく向こうの平地を超えた先に本拠点を設置しているはずだ。
そこを奇襲するんだ。奴らは今猛攻に必死になってる。防衛までは手が回っていないはずだ。」
ルイ
「でも質問させてください。これは試合じゃないんですよ?本拠点を制圧しても攻撃されるっていう
可能性はありますよね?」
カジ
「皆無とは言えん。だが本拠点を制圧されるというのは退路を失うということでもある。
つまり本拠点を制圧された時点で奴らは撤退を余儀なく行う必要がある。
それと同時に奴らは魔法国家だ。本拠点から支援魔法を受けている可能性が高い。
支援魔法が途切れ弱体化しては尚更撤退せねばならんだろう。
武器も支援もないのに戦地に残る奴はいないはずだ」
ルイ
「なるほど・・・・」
ギーン
「問題はどうやって奇襲するか、だ」
カジ
「とにかくスピード勝負だ。ここでモタモタして動きを察知されてしまってはいかん。
奴らは向こうから来た。幸い近くに森がある。そこを通って奇襲してくぞ。異議のあるものはあるか?」

誰も異議を唱えなかった。今ここで異議を唱えるということはこれよりもっと良い策があるということだ。

カジ
「よし、いくぞ!!」


カジが壁を乗り越える。全員それに続いて壁を越えていった。


オルランヌ兵
「む、誰かが校内から逃げてるぞ」
オルランヌ兵2
「殺されるのが怖くてたまらない連中等だ。どうせ散り散りに逃げる。放っておけ」



運にも恵まれていた。






==森


ダイン
「上手くここまでは移動できたな」
ファン
「しかし視界が非常に悪く下手しては進路すら見失ってしまいそうですね・・。
万が一敵と遭遇しては敵の本拠点の方にも連絡がいくでしょうし・・」
カタリ
「へへっ、こういう状況は俺に任せてくれよ!」
ミーア
「私にも任せてもらおう。偵察してくる」
カジ
「頼むぞ」

二人とも自身に高速魔法を唱え率先して前に出た。
確か二人は第一回戦の時のクラス対抗勝負の時も同じ役割を買って出てた記憶がある。
なるほど、二人なら上手くやってくれるだろう。

報告があるまでゆっくり慎重に移動を続ける一行。

ギーン
「敵本拠点の警備がどのくらいのものか調査が必要だ」
カジ
「ミーアならそこまで見てくれるはずだ。とにかくゆっくり進むぞ」
ジェスター
「怖い・・・」
キュピル
「離れるなよ」

しばらく進んでいくと突然地響きが襲った。

カジ
「全員伏せろ」

カジが小さな声で言う。皆その場で伏せる。
ギーンが少しだけ上体を起こし辺りを確かめる。

ギーン
「・・・っ!おい、第二陣が学校に向かってってるぞ」

第二陣は対人攻撃を主旨した装備ではなく対物攻撃を主旨した装備だった。
彼等にかかれば鋼鉄な建物でもあっという間に取り壊したりするだろう。
いわゆる破壊のスペシャリスト・・・。

カジ
「奴らが校舎にたどり着いたらマナ増幅装置はあっという間に破壊されるぞ。
何としても先に敵本拠点を先に制圧しなくては」
ファン
「しかし二人の偵察がまだ・・」

その時カタリが戻ってきた。

ダイン
「ははっ、ナイスタイミング。どうだった、カタリ!?」
カタリ
「敵本拠点の位置はつかめたぜ。ミーアは今敵本拠点の警備がどのくらいか偵察してるぜ。
それとさっき対物装備の部隊が校舎に向かって行ってたぜ・・・」
カジ
「さっきこっちからも確認した」
カタリ
「早く制圧しないとな。こっちだ、ついてきてくれ」

カタリが先導していく。
皆その後を追って走る。

道なき道を通って行く。時折足元の悪い場所や二メートル前後の段差を連続で登ったり
かなり困難な道が続いたが強硬進軍していく。

木々がなくなり崖の所にやってきた。
その崖の真下に敵の本拠点が存在した。下まで大体200mぐらいだろう。

カジ
「あれが敵の本拠点か?」
ユーファ
「お、大きい・・・。私達が使ってる拠点と比べ物にならないです・・」
キュピル
「上から見てるから実際はもうちょい違うかもしれないが・・
大体俺達の本拠点の三倍程度ってところかな・・・。」
ルイ
「それにしても随分と近いですね。ほぼ真下ですね。
高さは大体200mってところでしょうか?」

こっちに来る途中そんなにたいして勾配な上り坂はなかったのだが・・・

カジ
「不用意に顔を出さない方がいい。気付かれる可能性がある」

ここからだと内部の様子がよくわかる。
兵士の数は大分多い。まともにやりあっては逆に撃退される可能性のある人数だが・・
だが武器や防具を装着しておらずカジの目論見通り防御は薄かった。もしかしたら戦闘要員ではないのかもしれない。
しかし・・・。問題が残っている。

ジェスター
「制圧難しいの?」
キュピル
「ミーアの報告がないと分らないな。ここの位置は本拠点の裏にいるみたいだ。
もっとも奇襲しやすいんじゃないかな?」
ルイ
「でもどうやって門開ければいいんでしょうか・・・」

内部に侵入出来なければ制圧はできない。

ダイン
「壊そう。それしかない」
ギーン
「いや、生半可な攻撃ではびくともしないだろう。」
カタリ
「ハルララスの格闘攻撃に魔法を付加させてもダメなのか?」
ハルララス
「うーん、確かに僕の攻撃は対人攻撃よりは対物攻撃の方に向いてるけど
流石に拳じゃあの本拠点は壊せないなぁー・・。ははは・・・」
ジェスター
「二回戦の時のように地面を掘って進むってのはどう?」
ファン
「最初自分もそれを考えたのですが残念ながらここの地盤はあまりしっかりしてないようです。
地層が砂のような形になっていて掘り進んだところで地面が陥没し自分達も巻き込まれる可能性があります。」
ジェスター
「でもぱぱっとやったら行けるんじゃないー?」
ギーン
「やってみたければやってみろ。出来るならな、馬鹿が」
ジェスター
「あー、言ったね?」
キュピル
「今ここで揉めてどうする」
カジ
「ミーアの報告はまだなのか。」

あーだこーだ作戦を練りあうがどうにも上手い作戦が思いつかない。

カタリ
「ミーアが戻ってきた!」

全員がミーアの方に振り向く。

カジ
「どうだ?門を開ける方法が見つかったか?」
ミーア
「流石に壁が高すぎていくら私といえどジャンプで中に入るのは難しい。
ここから飛び降りるとも考えたが高すぎてそれも難しい。
単独侵入して門を開けさせるというのはあまり考えない方がいい。」
カジ
「くっ、どうやってあの中に入り込む・・・・」
ピア
「とらおり地面につく!」
ミーア
「・・・ここからの高さでは流石に足の骨を折りかねない。ピア」
ピア
「じゃーん!」

ピアが一メートルぐらいのゴムを取り出す。
皆一瞬キョトンとするがすぐに

ダイン
「そうか!!あの時のゴムか!!!」
ハルララス
「僕とキュピル君とダイン君とカジ君で引っ張り合いしたあのゴムだね!?」
ピア
「こりゃ持ってとらおり地面につく!!」
ミーア
「こいつを持って飛び降り地面に着地すると言っている。
なるほど、確かにこいつの伸縮性は優れている。だが200mも伸びるかどうかが問題だ。
100mの所で伸びとどまってはだめだ。」
ギーン
「・・・少し計算してみたがそいつのゴムは一メートル辺り最大で350mまで伸びるということが判明している。
この時ゴムに加えられた力は5450Kg。
ここから俺たちが飛び降りるわけだがこの時全員の総重量を1000Kgと過程する。
飛び降りる際勢いを付けて降りるときはπ*2√・・・」
カジ
「とっとと結果を言え」
ギーン
「ゴムを崖端に魔法で固定させこの中から数人がこのゴムを掴んで飛び下りる。
この時飛び降りる者の総重量を合わせて985Kgになれば249mのところで停止する。
だが249mになった時点ですぐに手を離さねば反発の力ですぐに220mの場所まで戻るぞ
同時に249mで止まるのは一瞬だ。判断が少しでも遅れればすぐに230m付近まで戻る」
キュピル
「武器の重さとかも計算しないといけないな・・。くそー、計算が凄く面倒だ」
ファン
「今全部計算しました。キュピルさん、カジさん、ダインさん、カタリさん、ハルララスさん、ギーンさん
ミーアさん、そしてルイさん。今呼んだ人たち全員がこのゴムを掴んで飛び下りれば985Kgになります。
ただルイさん。替えの弾薬は全部置いて行ってください。985Kgをオーバーします」
ルイ
「わかりました」
ダイン
「計算早いなー・・・。ってか、俺たちの体重どうやって調べたんだ?」
ファン
「全部魔法です」
カタリ
「プライバシーの侵害だぜ」

全員くすりと笑う。少し緊張がほどけた気がする。

キュピル
「ところで、このたった1mしかないゴムを全員掴んで飛び下りるのってかなりきつくないか?
鮨詰め状態じゃないか」
ファン
「我慢してください。」

ハルララス
「苦しそうだね・・・」
カジ
「時間がない。でかい物から下の方を掴め。下にいる奴は上に蹴られても文句を言うな」
カタリ
「ちぇー、チビが羨ましい」
ミーア
「早く行くぞ」

ユーファとファンが魔法を唱えゴムを崖の端に固定させる。
この時詠唱が途絶えると固定されなくなるため全員が下につくまで唱え続けなければいけない。持久勝負だ。

ゴムが崖端にぴったり固定され動かない事を確認したら少し伸ばして全員ゴムに捕まる。
鮨詰め状態・・・。

カジ
「いくぞ、飛び降りるぞ!!」
キュピル
「うおぉぉぉ!!」
カタリ
「いっけええぇぇ!!」
ダイン
「飛び降りろおおお!!!」
ミーア
「はぁぁっ!!」
ハルララス
「ていやあぁぁっ!!」
ルイ
「とぉっ!!」
ギーン
黙れ!!気付かれるぞ

全員がゴムをしっかり掴んだ状態で一気に崖から飛び降りる。
このゴムを離せば即死。
考えてみたらかなり無謀な案だっただろう。
全員死に物狂いでゴムをしっかりつかむ。
249mの場所まできたら手を離すということも忘れずにがっちりゴムを掴む。

ぐんぐん下まで伸びていく。このまま地面に激突するのでは?っという錯覚まで生まれる。
もちろんそんなことはなく徐々に落下速度が緩まってきた。
それでもスピードは速い。いや、いくらなんでも早すぎやしないか?

カジ
「おい、もう地面まで後50mだぞ。少し早すぎやしないか?」
ルイ
「あああぁぁぁ!!弾薬持ってきてしまいました!!!!!」
ギーン
「捨てろ!!」

ギーンがルイの荷物を蹴り飛ばす。なんとか減速がかかりだしたが蹴った荷物が敵の本拠点内に落ちる。
どさっという音が響いた。
何人か気付いたようだ。

カジ
「どちらにしろ気付かれる訳だ。構わん。」

残り30m。だが落下は早い。
全員冷や汗が流れる。
敵は自殺でもしてるのかと勘違いして詠唱を始めていない。

残り20m。まだ落下が早い!!

ダイン
「ぶつかるぞ!!」
カタリ
「計算間違えたか!?」

残り15mを切ったところで急激に減速がかかった。
ゴムの反発力が強くなってきている。5mを切った頃には人が全力で走る程度の早さになっていた。
残り3mぐらいの高さになった時カジが叫んだ

カジ
「もう降りても痛くないだろう!相当減速がかかった!!全員手を離せ!!」

全員手を離す。離した瞬間シュンとゴムが物凄い勢いで上に戻って行った。
手を離し遅れた者は戻ってきたゴムが手に当たり激痛を襲った。

キュピル
「いってぇぇぇ!デジャブ!!」
カジ
「剣を抜け!キュピル!!」
ルイ
「鞄回収!」



ジェスター
「成功したよー!!」
ファン
「ユーファさん。もう詠唱しなくて大丈夫ですよ」
ユーファ
「無事成功してよかったです」

ヒューーーーと音が聞こえる。

ジェスター
「んー?」

ゴムが勢いよく飛んできてジェスターの顔にあたった。

ジェスター
「いっ!!!!!!!!!!」





ジェスターの声が当たりに響いた。



オルランヌ防衛隊
「敵襲!!敵襲!!!総員戦闘態勢に入れ!!!」

敵が警報を鳴らす。

カタリ
「へっ、遅いぜ!!」
オルランヌ防衛隊
「うぐわぁっ!」

無防備の敵を切りつける。

ダイン
「よくも俺達の学校を滅茶苦茶にしてくれたな!これでもくらえ!!」

ダインも負けじと剣をもって暴れまくる。


ハルララス
「せいやっ!!!」

ハルララスが青く光る水晶の球体を拳で粉々に砕いた。
オルランヌ兵への強化魔法の支援が消えた。

カジ
「死ね!!」


カジが巨剣をぶんと縦に振り落した。拠点設備を壊しながら敵を叩き斬った。
一気に10人ぐらい叩き潰した。

オルランヌ兵
「な、なんてやつだ・・!」
オルランヌ兵2
「報告!!報告!!!・・・だめだ!マナの水晶が破壊されて前衛に報告ができない!!」

ちょうどさっき第三陣部隊がここ本拠点を出はらったようだ。
もう拠点内部には150人程度しか残されていない。
それでも人数としてはかなり多い。その時ギーンを中心に熱い風が渦巻いていたのがわかった。

キュピル
「なんだ、あの魔法は?」
オルランヌ兵
「あの魔法はまさか・・。オルランヌだけに伝わる最高位魔法・・!?
何でオルランヌ人が俺たちを襲っている・・・!?」
オルランヌ兵2
「奴を倒せ!!殺されるのは俺達だぞ!!」

全員血気に逸れギーンを殺そうとする。

ハルララス
「させない!」

ギーンのすぐそばにいたハルララスが飛びついた。

オルランヌ兵
「そこをどけっ!!」
ハルララス
「せいやっ!」
オルランヌ兵
「おぐっぁ!!」

力強いアッパーを決める。
つづいて他の兵士に向けて棍を力強くたたく。
膝の甲が割れる音が響いた。

オルランヌ兵
「い!ぐあぁぁ!!」
ハルララス
「対物攻撃って人間の骨を砕くにも適しているんだよ」

ハルララスが対物魔法によく効く魔法を唱え続けている。
それでも猛攻を続ける敵。

ルイ
「数が多すぎます!」

その時ギーンの声が響き渡った

ギーン
「不屈なる剛の魂を持つ炎双竜!
裁き、制裁、鉄槌をくだせ!!」

ギーンを中心に魔法で作られた龍が現れオルランヌ兵を燃やしながら
本拠点内を暴れまわった

キュピル
「うぐっ・・・む?熱くないぞ」

オルランヌ兵は火だるまになりながら必死に火を消そうと暴れている。

ルイ
「うっ・く・・・」
キュピル
「ルイには刺激が強すぎるだろう。見ないほうがいい」

キュピルがルイの壁になる
しばらくするとそこには消し炭しか残らなかった。
それでもごく一部の兵士が生き残っていた。
ギーンを倒すのではなく自らに呪文抵抗を施した者たちだ。

ギーン
「賢明だな。しかし少しの時間が延命されたにすぎない」
カジ
「皆の者!!いまだ、指揮官を倒せ!!!」
オルランヌ指揮官
「貴様ら・・・。」

カジと同じぐらいの大きさの巨剣を手に持ちゆっくりと立ちあがった。

オルランヌ指揮官
「学生だと思って甘く見ていたようだ。本気で行くぞ!!」
キュピル
「来たな、敵指揮官!タイマン勝負!!」

キュピルと敵指揮官の剣がまじりあった。
敵指揮官がそれを前に押し返す。

キュピル
「おわっ!!」
オルランヌ指揮官
「学生ふぜいが!!」
ルイ
「援護します!」

ルイがロケットランチャーを乱射する。
敵指揮官の持っていた剣を吹き飛ばした

オルランヌ指揮官
「なっ!!くそ!!ひきょう者め!!」
キュピル
「戦争に勝ってからほざけ!!チームプレイ!!」

タイマン勝負はどこに消えたっと自分で突っ込みながら攻撃する。

オルランヌ指揮官
「ちっ・・・」

五人の猛攻を何と素手で防いでる。
なんという猛将だ・・・。

オルランヌ指揮官
「ふんっ!!」
カタリ
「ぐあっ!」

一瞬の隙をついて敵指揮官がカタリを殴った。
殴っただけなのにかなり遠くまで吹き飛んだ。

ミーア
「はぁっ!!」

ミーアが針を飛ばした。それも素手で防いだ。だがしかし

オルランヌ指揮官
「・・・・っ!?」

腕が動かない。
すぐに足も動かなくなり体全身が動かなくなった。

ミーア
「その針には神経麻痺を起こす毒が塗られている・・・。勝負ありだな・・・」
カジ
「くたばるがいい」

カジが大きく剣を振り上げる。
そのまま容赦なく振りおろされた。





ドシン







==校舎


鬼教官
「おい、貴様ら!何闇雲に戦っている!戦略を考えぬか戦略を!!」
がたいの良い男
「そんな事言われても・・・こいつは・・厳しい!!」
老婆教授
「いいですか、防衛魔法の単位で4以上与えられた者は呪文抵抗の施された
バリアを張りなさい。いいですか?唱え続けるのですよ」

マナ増幅装置の手前でバリアが張られた。敵の侵入を防いだ。
何人か既に内部に侵入していたが数十人程度だ。

鬼教官
「中に取り残された奴を倒せ!いくぞ!!」

重装備の生徒が教官を先頭にオルランヌ兵、目がけて戦闘をしかけた。
圧倒的な人数差で敵をしとめる。

老婆教授
「呪文を解除しなさい」

解除された瞬間再びオルランヌ兵がどっと中になだれ込んだ。

老婆教授
「再び詠唱しなさい」

またバリアが張られた。先程と同じように数十人のオルランヌ兵が取り残された。
そしてそれをまた数の暴力と言わんばかりの攻撃でオルランヌ兵を倒す。

老婆教授
「呪文を解除しなさい」

バリアが解除されてもオルランヌ兵が中には入って来なかった。
同じことの繰り返しということに気付いた。
変わりにバーストなどといった遠距離魔法が飛んできた。

老婆教授
「対抗しなさい。いいですか?授業で学んだ事をしっかりと活用しなさい。
バーストを!」

魔法弾が飛び交う。
中にはメガバーストといった上級魔法を唱えている者も。
勝負は拮抗していた


鬼教官
「・・・なんだ、この地響きは」
足の速い生徒
「教官!!対物装備の兵士が迫ってきました!壁を突き破る気です!!」
鬼教官
「なんだと!?ええい、戦闘準備しろ!!」

すぐに後方の壁に大きな穴があいた。
そこから多数のオルランヌ兵が突撃してきた。
突然の奇襲に負傷者が続出する。




==医務室


医務室で働いてる生徒
「もうこれ以上は収容できません!」

医務室の中は負傷者でごって返していた。
新たな怪我人を廊下に寝かせたりしている。

医務室で働いてる生徒
「試合の割には怪我が深いぞ・・・!」






鬼教官
「ぐっ、四方全ての壁が取り壊されたか」
老婆教授
「これ以上は・・・持ちそうもありません。仕方ありません。生徒をつれて緊急テレポートで退避しましょう」
重装備の生徒
「これは試合ですよ!ここを放棄するということは試合に負けたも同然です!!」

その時別の生徒が話しかけた。

軽装備の生徒
「なぁ、だけどちょっとまってくれ。ここ制圧されたら負けなのか?俺話聞いてないけど・・・」
重装備の生徒
「・・・それは・・・こっちもだけど・・・」
老婆教授
「いいですか。逃げますよ」


魔法詠唱に優れた者が緊急テレポートの魔法を詠唱を唱えようとした瞬間だった。
突然ぴたりと敵の動きが止まった。

全員何が起きたのか理解できていない。

ただオルランヌ兵が顔をしかめながら撤退していった。
それも物凄くゆっくりと。
オルランヌ兵が本拠点から受けていた支援魔法が途切れたのだ。
装備を軽量化していたがその魔法が無くなり本来の重さに戻ってしまった。
こんな重さでは戦えない。


老婆教授
「一体何が起きたというのです?」
偵察が得意な生徒
「報告!!オルランヌの本拠点制圧確認!!何者かが奇襲を行い制圧した模様です!!」
鬼教官
「なんだと!?」

辺りに歓喜が響き渡った。

重装備の生徒
「勝った!!あのオルランヌ軍に勝っちまったぜ!!」
軽装備の生徒
「奇襲した奴ら帰ってきたら奴らを奇襲してやろうぜ!頭はたいてやる!」

全員がわーわー叫びながら歓喜の声をあげ続けた。




ダイン
「いよっしゃぁぁぁ!!奴らの本拠点落としてやったぜ!!」
カタリ
「ギーンお前強い魔法持ってんだなー!やるじゃねーかー!」
ギーン
「頭を叩くな!」
カタリ
「うるせーこと言うなよ。へへっ」

制圧した本拠点で騒ぐ彼等。

ファン
「降りてきたら丁度制圧し終わっていましたね。みなさん流石です!」
ジェスター
「顔がいたーい!わーん!!」
ユーファ
「あ、あの。ジェスターさん・・。もう回復魔法唱えまえしたよ・・・?」
ジェスター
「わがまま言うチャンスなの。痛いー!わーん!」
ユーファ
「・・・・・・」

しかしスルーされるジェスター


ルイ
「ほっ・・。無事生きてる事を喜ばないといけませんね。」
キュピル
「ああ、頑張ったな。ルイ」
ジェスター
「じぃー・・・・」
キュピル
「ジェスターも頑張った」
ジェスター
「えっへん!」
ピア
「ワシのゴムなきゃ負け!!」
キュピル
「今のは分った。まぁ、ゴムに感謝するとしよう」
ミーア
「・・・まて、あれは何だ」


ミーアが空を示す。
大きな飛行機が飛んでいた。

キュピル
「でかい飛行船だなぁ・・・。」
ファン
「ちょうど真上を通ろうとしてますね」
ギーン
「いや、あれは飛行船ではない。完全に鉄の塊で作られているぞ。
・・・・。トラバチェスの紋章・・・!?・・・爆撃機か!?」
カジ
「なんだと!?・・・お前等早くここから逃げろ!!!」

訳が分らなかったが全員急いでオルランヌの本拠点から逃げた。
その瞬間爆撃機から大量の爆弾が投下されオルランヌ本拠点を襲撃した。

ダイン
「どぅわぁ!!」
カタリ
「ひゃぁぁ!あぶねーなー!!!」

二人とも爆風に吹き飛ばされながら叫ぶ。

ミーア
「茂みに隠れろ」

ミーアが二人をとっ捕まえて茂みに連れていく。他の人は既に茂みに隠れていた。

ハルララス
「あの爆撃機。学校に向かってってるよ!」
ファン
「まさか学校を襲撃する気ですか!?」
ギーン
「十分に考えられる。校長はこう言った・・・。
『せいぜい頑張ってオルランヌを疲労させてくれ』っと・・・。
つまり校長にとって学校側が敗北し生徒職員全滅はシナリオの一つだったに違いない。
だが万が一学校側が勝利しオルランヌを撤退させたら?生徒や職員が生き残ったら?
間違いなく職員生徒が総動員で校長を探し告発するだろう。
・・・自分の後を追う者を完全に排除する気だ。間違いなく学校を襲撃するぞ!!」

既に爆撃機のハッチは開いてる。

ルイ
「くっ、このミサイルで・・・!」

ルイが鞄からRPG-7を取り出す。

カジ
「やめろ、そんな小さなミサイルでは撃ち落とす事はできない
仮に撃ち落とせたとしても残りの爆撃機も全部撃ち落とせる気か?
逆に居場所がばれ攻撃されかねない」
ルイ
「じゃぁこのまま見てって言うのですか!?」
カジ
「・・・どうしようも出来ないのだ」
ギーン
「考えてみればトラバチェスが待機していておかしくはなかった・・・。」
ダイン
「・・・ちっ!」
キュピル
「あぁぁ・・・。頼む。素通りしてくれ・・。おれ自分の部屋に荷物一杯置いてあるんだよ・・」
ピア
「買え!」
キュピル
「俺の貯金がああぁぁぁぁ!!!」
カタリ
「・・・使っておいてよかったぜ・・・」
ファン
「ヘソクリはしても良い事がありませんね」




学校上空に何機もの爆撃機がやってきた。
投下ハッチが開くとそこから無数物のクラスター爆弾が降り注いだ。

鬼教官
「なんだ!!爆弾だと!?」
重装備な生徒
「う、うわあぁあぁぁぁ!!!」




威力の高い爆弾が次々と投下され爆発。炎上する。
爆発する度に大地震がまるで襲ってきたかのように地が揺れ空気が震え辺りを赤い閃光に包む。

ジェスター
「怖い・・・!」
キュピル
「・・・・・・・・」

無言でジェスターを引きよせて学校への視線を逸らす。

永遠に続くかと思われた爆撃。
振動が止んだ。空気の震えが止まった。だが辺りは赤い。

ルイ
「止まっ・・・た・・?」
ハルララス
「学校は・・・どうなっているんだい・・・?」
ミーア
「・・・行こう」

全員立ち上がり急いで学校に向けて走って行った。





キュピル
「っ・・・!」
ユーファ
「そ・・・んな・・・」
カジ
「・・・敵ながら貫通力の高い爆弾を積んでいるな・・・・」

そこに学校あったとは到底思えない光景になっていた。
立派な校舎は全て崩れ広かった庭は焼け野原になっており
皆でクラス対抗勝負を行った校庭は瓦礫の山となっていた。
だが瓦礫というよりは粉々になっており少し大きい石と言うべきだろうか?
・・・もはや粉々になっていたっと表現すべきだろうか?

ダイン
「おいおい・・・まってくれよ。本当にここであってるのか?本当にここに学校があったのか!?」
キュピル
「もしあの時・・・。本拠点を奇襲しないで仮に勝利したとしても・・・。俺たちは死んでいたのか・・・」
ルイ
「そんな事言わないでください!絶対誰かは・・生きてますって!」

ルイが飛び出す。
が、ミーアに掴まれた。

ミーア
「やめろ。トラバチェス兵に気付かれてはまずい」
ルイ
「見殺しに何かに・・・!」
ユーファ
「ルイさんに同意です・・・!!生きている人がいたら助けないと・・・!」
ギーン
「現実を見ろ、馬鹿が!こんな木端微塵になってる状態で生きている奴がいるだと!?
この大馬鹿が!仮にまだ意識があったとしても腕や足は粉々に吹っ飛んでいる!!」

ギーンの一言はあまりにも強烈だった。それでいて的を得ていた。
全員この先どうすればいいのか。
ただ絶望だけが残っていた。








==トラバチェス本国

校長
「それで・・・。結果はどうなったのかね?」
幹部
「報告いたします。オルランヌは多大な被害を被り撤退。当分アノマラドには猛攻出来ないでしょう。
アノマラド魔法大立学校は予定通り最新鋭の爆撃機にて爆撃。取り壊しました」
校長
「全て予定通りに行っておるな。ではゴシップ記事の内容でも考えようか。
『アノマラド魔法大立学校。クラス同士の模擬戦中にマナ増幅装置が暴発
そのままマナと火薬が遊爆し学校崩壊。生存者は絶望的』どうだね?」
幹部
「よろしいかと」
校長
「マスメディアに垂れ流しておいてくれたまえ。細かいところはそっちに任せるとしよう」
幹部
「はっ」




トラバチェスの黒い思惑が進んでいく。


続く



第八話


爆撃機が学校を襲撃。完全に廃墟となってしまったが・・・。

ギーン
「おい、逃げるぞ。このままここにいては気付かれるのも時間の問題だ」
ファン
「もしかすると生命探知されるかもしれません・・・。もし使われ察知されたら
攻撃されるのも時間の問題です」
カジ
「手の施しようのない者が生きている可能性が高い。
もしそいつに生命探知が引っかかったら爆撃を即始めるだろう。
他にも何らかの魔法を察知したら爆撃機が再攻撃を始める可能性もある。
何にせよ早くここから逃げなければならない」
カタリ
「でもどこに逃げるんだよ!?」
ハルララス
「良い場所がある!ここからかなり遠いけどハイキング客などが来るから比較的安全だ。
僕が案内するからついてきて!」


学校から遠ざかるように逃げていく。
しかし・・ルイだけその場に座り込んでしまった。

ミーア
「・・・・?どうした、ルイ。怪我でもしたか?」
キュピル
「・・・いや、違うな。先に行っててくれ。すぐに行く」
ミーア
「・・・わかった」


キュピル
「ルイ。早く行こう。このままここに居たら見つかって殺されるかもしれない」
ルイ
「先・・行っててください。私ちょっと疲れてしまいました・・・。
さっきの爆撃が・・・あまりにもショックで・・・。
たくさんの人が死んで・・・。行けば助かる人がいるかもしれない・・・。
それなのに助けに行く事が出来ない・・・・。辛すぎて・・・・」

ルイが嗚咽する。

キュピル
「・・・確かに物凄く辛い事だ。赤の他人でも人が殺されていくのを見て喜ぶ奴はいないだろう。
だけどルイ。ここで立ち止まったらだめだ。」
ルイ
「聞こえ・・・るんです・・・。学校の方から助けてくれっていう・・・悲痛な叫びが・・・」

キュピルが顔をあげて耳を澄ます。
だがそのような声は全く聞こえない。

キュピル
「・・・何も聞こえないぞ」
ルイ
「この声を振りきる事が・・・できないんです・・・!早く戻って治療してあげないと・・・」
キュピル
「ルイ。いいか、酷な一言を言うぞ。」
ルイ
「・・・・・・・」
キュピル
「ルイがどれだけ頑張ったところで誰も救えないし下手したら余計に死者を増やすぞ」
ルイ
「・・っ!!」
キュピル
「・・・だけどルイを必要としている人がいる。」
ルイ
「・・・・誰ですか・・・?」
キュピル
「皆だ。」
ルイ
「皆・・・?」
キュピル
「さっきの爆撃で少なからず全員混乱している。まぁギーンやカジは例外だろうが・・・。
そんな中で親しい人が誰か一人でも欠けてみろ。さらなる混乱を招いてしまう。
ルイ。不思議な話だと思うが助けを求めてる人を助けても救われないんだ。
でも、助けを求める前に誰かを助けてあげるとその人は救われるんだ

今がその状況何だ。・・・・。居るだけで皆が救われる事だってあるんだ。
・・・・俺はルイを死なせないぞ」

そういってルイの腕を引っ張って逃げ始めた。

ルイ
「あっ・・!!」
キュピル
「もう振りかえるな!怖ければ目を瞑れ!!全部なんとかしてやる!」

昔誰かにそうしてもらった時と同じように。

キュピル
「(8年ぶりに見る戦争・・・。あの時、俺はルイと全く同じだった・・・。
・・・誰かに頼りきっていた・・・。目に入る物全てが絶望だった・・・。
でも今は違う。今度は俺が誰かを導いてあげないといけない。

アディール。君の言っていた事は覚えているよ。
誰かを守るなら命を惜しむな、それが大切な人なら尚更・・・だろ?

ジェスター、ファン、ルイ・・・。

もう俺は弱い人間じゃない。今度こそ、俺がきっちり導いてあげないといけない。
守りとおして見せる・・・・・)」





ルイに肩を貸しつつ皆の後を追う。
すると一人ポツンとハルララスがいた。
少し様子がおかしい。疲れているのだろうか・・・・。無理はない。
こちらに気付くと話しかけてきた。

ハルララス
「ルイ君の様子は大丈夫かい?」
キュピル
「あぁ、大丈夫だ」
ルイ
「・・・・・・はい」

凄く小さな声で喋る

ハルララス
「ルイさん。頑張って」







==湖





学校の敷地からかなり離れた場所にあるキャンプ地にやってきた。
湖の辺にあり登山客やハイキング客をマークしている。
まる一日かけてここまで歩いてきたのだ。

全員が疲労しきっていた。


カジ
「よし、拠点を作るぞ」
ジェスター
「えー・・・、あんなでかいの作るの・・・?もう動けないよー・・・」
カジ
「せいぜい教室程度の大きさで良い。床も土で構わん。適当な小屋を作る」

カジが思いっきり巨剣を振り回して近くにあった大木を一気に叩き斬った。
もはや巨剣というより巨斧である。
それをダインとカタリが余計な枝を叩き斬りギーンとファンが魔法で真っ二つにし
ハルララスが全て組み立て上げ残りの者は切った木材を運んでいった。
全員が横になって寝れる程度の大きさの小屋がたったの一時間で出来てしまった。


カタリ
「ひゃー、やっと休めそうだぜ。」
ハルララス
「木材余ってたから床にも敷いておいたよ。
半分ぐらいしか敷けなかったけど・・・」
カジ
「体力のある者は今後どう動くか決めるぞ。疲れた者は寝るといい」
ジェスター
「私寝る・・・・」
ファン
「自分もちょっと失礼します・・・」
ピア
「ぬああぁぁぁ〜・・・」
ミーア
「疲れたと言ってる」
キュピル
「今の言葉だったのか・・・。」

結局女性陣全員は眠り
カタリやダイン。ファンも眠りについた。
(ミーアは男なのか女のか判断できないのだが

ギーン
「結局起きてるのは4人か」
キュピル
「仕方ないといえば仕方ないだろう。むしろ全員寝なかっただけ上出来だと思う」
ハルララス
「そうだね・・。僕もポケットにあった眠気覚ましのガムがなかったら寝てたと思う」

ハルララスの口がもごもご動いている。ガム食べていたんだ・・・。

カジ
「今後の事を考えるぞ。まず一番最初に何をするべきだと思う?」
ギーン
「アノマラドの軍に密告すべきだ。オルランヌが攻めてきた事を。」
キュピル
「食料と水を確保したほうがいいんじゃないのか?」
ハルララス
「身の安全を確保した方がいいんじゃないかな?」
ミーア
「街にたどり着くべきだ」

全員バラバラだった。
だがそれと同時に全てやらねばならないことでもあった。

カジ
「・・・緊急性を考えてみよう。この中で一番最初にやらねばならんことはどれだ」
ハルララス
「やっぱり食料なんじゃないかな?僕達は何も食べ物も水も持っていない。
まる一日歩いてきてるしこのままだと誰か動けなくなっちゃうかもしれない」
キュピル
「食料に関しては三日ぐらい時間くれれば当分困らない量作れると思うが」
ギーン
「一言言うが魔法を使って水を召喚したり食べ物を召喚することはできんぞ。ついでに浄水もな。」
キュピル
「浄水出来ないのか・・・。水はちょっとてこずりそうだな・・・・。食べ物に関しては魔法使うまでもない」
ハルララス
「そんな方法があるの?全然思いつかないなぁー・・・」
ミーア
「適当に猟を行って干し肉を大量に作ればいい。・・・日持ちする。」
カジ
「干し肉か。なるほど、かなり長持ちするな。」
キュピル
「問題は水だ・・・。湖から水を汲んで蒸発させてそれを更に水に戻せばかなり安全な水が作れる・・。
・・・・。・・・・よし、やり方は決まった。」
ギーン
「・・・サバイバルには強いんだな」
キュピル
「勉強は全く出来ないけどこういう知識はね」
カジ
「よし、さっそく実行に移すぞ。疲れてないか?」
ミーア
「・・・大丈夫だ」
キュピル
「ここで疲れて倒れるわけにはいかない。頑張れる」
ハルララス
「僕もいけるよ」
ギーン
「ここで俺が倒れてはプライドに傷がつく。」
カジ
「ではさっそく行動に移るぞ。」


==外

キュピル
「二手に分かれて行動しよう。カジとギーンとミーアは猟を行ってくれないか?」
ギーン
「・・・・・・」
ミーア
「・・了解」
ハルララス
「キュピル君。ちょっといいかな?」
キュピル
「ん?」
ハルララス
「いくらカジ君がいるとはいえちょっと力不足だと思うんだ。
ここはギーン君をここに残して僕が行ったほうがいいんじゃないかな?
猟はこう見えても得意なんだ」
キュピル
「そっか、それならハルララスに任せた方がいいな」
ギーン
「そもそも何故俺が指名されたのか理解できん」
キュピル
「すまんすまん。そいじゃ頼んだ」


3人が森の中に入っていく。

キュピル
「よし、浄水器を作るぞ」
ギーン
「で、どうする気だ?」
キュピル
「これから考える」
ギーン
「・・・・・・」
キュピル
「とりあえず魔法で何が出来るか知りたいな。」
ギーン
「勉強してなかったのか?」
キュピル
「ギーンより詳しくない。そうだな、物を召喚するってのは?」
ギーン
「対価となる物質が必要だ。今はないから無理だな」
キュピル
「なら物を固めるってのは?例えば石と石をくっつけて壁にするとか」
ギーン
「それも無理だな。相反魔法で逆に溶かす事は出来るが溶かしてくっつけることはできん」
キュピル
「・・・くっそー、なら耐火を施す事はできるか?」
ギーン
「呪文抵抗の魔法を唱えればいけるな」
キュピル
「ならそれだ!木を切って箱を組み立てて上に穴をあけてそこに蒸気の通り道を作ろう。
ただ木材でつくるわけだから耐火はしっかりさせないといけない」
ギーン
「・・・効率は悪そうだが大きくしなければ持ち運びは出来そうだな」
キュピル
「さっそく作ろう。」

ギーンが魔法で木を真っ二つにし丁度いい大きさに加工する。
それをキュピルが組み立てていく。
くっつける事はできないので穴をあけてぴったりはまるように組み立てていく。
時折何回か失敗しまた組み立て直すという事態に何度も遭遇したが
二時間そこらで何とか作りあげることに成功した。

キュピル
「思ったより早く出来上がったな・・・」
ギーン
「不器用だな」
キュピル
「うるさい。とにかく中に水を入れて火で沸かして蒸気をつくる。
その蒸気が登って上についてある管を通って行く。
そこで外気に冷やされて水になる。・・・ただし、一杯の水作るのに時間がかかる。
衛生面では最近の水道水より全然安全だが・・・」
ギーン
「当分稼働させなければならないな」
キュピル
「よし、さっそくこいつを湖に運んで水を・・・・って、うわ、これかなり重いな・・・」

大体15Kgぐらいあるんじゃないのか?
この中に水を入れるとなるともっと重くなるだろう。
湖のすぐそばで火を付ける事はできない。

キュピル
「今度は水を運ぶ方法を探さないとな・・・。水を魔法で運ぶ事って出来ないのか?」
ギーン
「水には個体が存在しないから無理だ」
キュピル
「魔法って万能だと思っていたが実際そういうわけじゃないんだな・・・・」
ギーン
「頭が硬いな、キュピル。水は無理でもその浄水器を持ち上げる事はできる」
キュピル
「・・・・あぁ、なるほど。」

ギーンが魔法を唱える。
念動力で浄水器を持ち上げ湖の中に突っ込ませる。
タンクの中に全て水が入ったのを確認し再び持ち上げ平らな地面の上に置いた。

キュピル
「・・・管の中にまで水が入っちまったがまぁ仕方ないとしよう・・・・。
さっそく火をつけて沸かそう」
ギーン
「耐火はもう施してある。適当に枝を集めたらバーストをぶつけるぞ」
キュピル
「ちょっとまってくれ」

キュピルが余った木材や必要ない枝や葉などを下に敷く。

キュピル
「OK」
ギーン
「バースト」

指先から炎の弾が飛び出す。枝などにぶつかり引火した。

キュピル
「当分の間火の管理しないといけないな・・・・。」
ギーン
「魔法で長い間燃やし続けさせればいい。」
キュピル
「・・・何がダメで何がいいのか俺にはよくわからない・・・」

その時カジとミーアが帰ってきた

カジ
「鹿がいたから仕留めたぞ」
ミーア
「10匹だ。」

仕留めた獲物を10匹もまとめて運んでこれる彼等(?)の力って一体・・・。

キュピル
「いや、ちょうどいいぐらいだと思うよ。皆が起きる前にとっとと捌いて干し肉にしちゃおう」
カジ
「干物は時間を有する。その間に食料と水は全部確保するぞ」
キュピル
「・・・あれ、ハルララスは?」
ミーア
「10匹では足りないと言って更に狩ってもらっている」
キュピル
「一人で大丈夫なのか?」
カジ
「ハルララスなら問題ない。お手並みを拝見したが彼の腕前は一流だ。いや、それ以上と言うべきか」
キュピル
「ほぉー・・・。それはぜひ見てみたいな」
ミーア
「一瞬で獲物をしとめた。・・・見事だった」
ギーン
「一瞬か・・・・。・・・それよりも作業に戻った方がいいんじゃないのか?」
キュピル
「そうだった」


作業に戻る。


それからしばらくしてハルララスが一匹の鹿を連れて帰ってきた。


==夜


結局皆8時間くらい爆睡していた。
起きた時には夜になっていた。

全員強い空腹感と喉の渇きを覚えていた。

キュピル
「飯と水用意してあるぜー」
ファン
「いつの間に用意を・・・。何も手伝ってなくてすいません」
ジェスター
「ふあぁぁ〜・・・」

物凄く眠そうな顔でジェスターがやってきた
ルイの傍に立つとまた寄りかかって寝てしまった。

ジェスター
「zzz・・・zzz・・・・・・」
ルイ
「相当疲れてますね・・・」
キュピル
「まぁ、ジェスターは超小食だから大丈夫なんだろう・・・。」
ダイン
「お、飯は鹿肉か。いいな」
カジ
「ついでに干し肉も今作っている。携帯食料として活躍するだろう」
ハルララス
「今日のご飯は普通に焼いた物だから味気ないかもしれないけど我慢してね」
カタリ
「もう腹減って死にそうだぜ。いただきまーす」

がつがつ食う人からチビチビ食べる者。
・・・どちらにせよ予想以上に消費が多い。

鹿十頭では逆に後二日で消えそうな勢いだ。
水も結局夜のうちに全て飲みつくしてしまった。
また夜通し作り続けないとな・・・・。

ユーファ
「なんか、やっと落ち着いたって感じがします。
凄いドタバタしててこの先どうなるんだろうって感じはしましたけど・・・」
ピア
「キャンプ!!」
ミーア
「キャンプしてるみたいだと言っている」
キュピル
何かミーア勝手に付け足してたりしてないか?
ミーア
「いや、付け加えていない」
ダイン
「確かにまるでキャンプだな。このままいっそここに住み着くか?」
カジ
「毎日鹿の肉だが、それでもいいのか?」
ダイン
「・・・・そ、そいつはちょっと困るなぁ・・・。味ないし、これ・・・」
カタリ
「へへっ、次はスモーク焼きだな」
キュピル
「スモーク焼き・・・。本物のキャンプになっちまう」
ファン
「ちょうど今星座が見えますよ」

皆上を見る。

ダイン
「・・・俺にはどれが星座だか分らない・・・」
カタリ
「俺もだぜ」
ルイ
「あ、あれジェスター座・・・・」
キュピル
「そんな星座あるんか・・・!」
ジェスター
「zzz・・・zzz・・・」
キュピル
「ナルビクに居たら絶対見れないから起こしてやろう。ジェスター。起きろ」
ジェスター
「zzzz・・・・zzz・・」
キュピル
「・・・・起きないか。ならば・・・。
アイドル歌手。ジェスターのオンステージが今始まりますー」
ジェスター
「・・・えっへん」
キュピル
「・・・寝ながら答えやがった・・・」
ジェスター
「うーん・・・。何ー・・?私の出番ー?サインは後ー・・・」
ルイ
「微妙に寝ぼけてますね。ジェスターさん。ジェスター座が見えますよ」
ジェスター
「んー・・?・・・・あ、本当だ・・!」

スタッと立ちあがり空を見上げる。

キュピル
「分ったのか。凄いな」
ジェスター
「わぁー!わー!!」

何故か自分の星座を見て凄く喜ぶジェスター。

ギーン
「・・・昔読んだ本に自分の種族の星座が見えると
本能的に祀るってのを読んだ事があるが・・・・。
・・・実際に見るのは初めてだ。知らなければ馬鹿かと煽っていた。」
キュピル
「なんだって?」
ジェスター
「ん〜!」

謎の踊りを披露するジェスター。
何か笑える。

ダイン
「んじゃ、俺ら人間の星座見つけたら俺たちも勝手に踊りだすのか?」
カタリ
「あらよっとー」

カタリがタコ踊りを始める。

ハルララス
「その踊り久しぶりに見たよ。ハハハ」
カタリ
「へへへ。」
ファン
「自分の種族の星座を見て祀りたくなる種族は
ジェスター族、明月族だけらしいですよ。野生のペット達はこの星座を常に追い続けているので
発見が非常に難しいと書いてあった記憶があります」
ピア
「なば、ジェスターそげっとちこーかとるん?」
ミーア
「ってことは野生のジェスターが近くに来ている?と言っている」
ファン
「もしかしたら見つけられるかもしれませんね。」
ジェスター
「わぁぁ〜〜!」
キュピル
「ジェスター・・・。踊りながら飯食わなくていい」
ジェスター
「えー、キュピルもお祈りしたほうがいいよ。はい、お祈り!」
キュピル
「何で!?」

ジェスターが上に乗っかり強制的に土下座させられる。
全くもってよくわからない。流石人間じゃないだけは・・・

ジェスター
「心がこもってな〜い!」
キュピル
「ギェー」

そのままキュピルの背中の上に乗って崇めはじめ
解放されたのは二時間後だった・・・。





==深夜


カジ
「流石に疲れただろう?」
ハルララス
「そうだね、ちょっと寝かせてもらおうかな」
ミーア
「私もそうさせて貰う。何かあったらすぐに起きる」
カジ
「念には念を入れて見張りをつけたい。誰か見張りを志願する者はいるか?」

キュピル
「やれやれ・・・。見張りにはジェスターにやらせたらどうだ?この様子だと当分空見て崇めるぞ・・」
ジェスター
「いいけどキュピルも一緒に!」
キュピル
「何で!?もう十分崇めたからな!」
ジェスター
「あー、私に反抗した。」
キュピル
「今のは反抗ではなく突っ込みと言う。」
ルイ
「ジェスターさん。キュピルさんはかなり長い時間寝ていませんから身体的にそろそろ辛いと・・・」
ジェスター
「キュピルなら大丈夫」

そう言って えっへん とポーズを取る。

キュピル
「泣きたい・・・」
ハルララス
「ほら、キュピル君もそう行ってるんだから・・・。一日かけてここまで来たんだから
見張りつけなくてもいいんじゃないかな?」
キュピル
「今日のハルララスは優しすぎて心にしみる。」

そういって再びすすり泣く

ジェスター
「崇めば心落ち着くよー」
ギーン
「ふん、この魔法をかけてやるから頑張れ」

そういいギーンが淡いオレンジ色の魔法の球体をキュピルにぶつけた。
一瞬衝撃が走ったがすぐに疲れと眠気が吹っ飛んだ

キュピル
「おぉ、なんだこの魔法は?」
ギーン
「俺が作ったオリジナル回復魔法だ。・・・感謝しろよ」
ユーファ
「オレンジ色ってことは本当にオリジナル魔法なんですね」
ルイ
「どういうことなんですか?」
ユーファ
「オリジナル魔法って自分の生まれた場所に少し影響されるんです。
ギーンさんはオルランヌの方ですから少しだけ赤みがかかるんです。その結果オレンジ色になるんです」
ファン
「一般的な魔法でも少しだけ色が違いますよ。ルイさんはどこ生まれですか?」
ルイ
「私はヒネーです」
キュピル
「(ヒネー?どこの国だ?)」
ファン
「ヒネーってことは白が強く影響していますね。ルイさんのバーストは少し白いはずですよ」
カタリ
「へー!そうなのか!おもしれーな、へへっ」
ギーン
「ついでだがトラバチェスは茶色だ。濁った色をしている。いい勉強になったか?」
カタリ
「へへっ、ギーン。お前ツンデレだなー」
ダイン
「ちょっとお前が可愛く見えてきたぞ、おら」
ギーン
「おい!絡むなって言っただろ!クソが!!」
カタリ
「固い事言うなよ、ツンデレギーン君」
ギーン
「黙れ!」

二人がギーンに絡む。
何人か背を向けて笑いをこらえてる

キュピル
「笑いが堪え切れそうにないから外出て見張ってくるよ」
ハルララス
「大丈夫なのかい?キュピル君。無理しなくても・・・」
キュピル
「ギーンにかけてもらった魔法で元気出てきた。」
ギーン
「当たり前だ」
カタリ
「よっ、ツンデレギーンちゃん!」
ギーン
「ちゃんをつけるなクソが!!」
ダイン
「こえー」
カジ
「何かあったら遠慮なく叩き起こしてもらって構わん。気をつけろ」
キュピル
「わかってるよ」
ジェスター
「いってきまーす!」
ファン
「ジェスターさん元気ですね・・・」
ルイ
「ギーンさんとその二人も相当元気だと思いますけど・・・」


==小屋の外


しばらくして小屋の明かりも消えた。
森の中ということもあってか非常に暗い。
唯一の光源は月明かりだけだ。

ジェスター
「ん〜」

ジェスターが隣でずっと踊ってる。
・・・気が散る

キュピル
「ジェスター。祀るのは勝手だがこの辺を離れるなよ」
ジェスター
「大丈夫」

と、言って再び踊り始めた。
・・・・まぁ勝手にどこかに行ったりはしないだろう・・・。

たった数時間で作った小屋の壁に座ってよりかかる。

・・・・。

・・・・・・・・・。

キュピル
「(・・・このたった二日で随分と環境が変わったな・・・・)」

トラバチェス兵を見つけ・・・学校が襲撃にあい・・・
オルランヌが攻めてきて・・・そして爆撃された・・・。

命からがら何とかこっちまで来るがルイの精神も摩耗しきっている。
・・・皆表では何ともなさそうだが心の中では相当参っているはずだ。
はしゃいで何事もなかったかのようにふるまう。

・・・・でも今みたいにただ休むだけの時・・・。
嫌でも人は考え事をする。
そして今、無理やり隠していた傷付いた心が表に出る。

キュピル
「(・・・・自分だけの時間って本来とても気持ちのいい時間なんだが・・・。
こういう事が起きると今ほど嫌な時間ってのはないな・・・)」

月を見る。今日の月は・・・

キュピル
「(・・・少しだけ紅いな。紅月か・・・。懐かしいな、こんな色の月を見るのは)」

前のめりの姿勢になり考え事を始める。


キュピル
「(・・・・・)」

今から10年前だな・・・。
まだ俺がナルビクの世界にやってくる前の出来ごとだ。

二つの国が領土問題を原因に戦争を始めた。
始めは互いに消極的だった。
たまに突く程度。でもそれが次第にエスカレートしていき気が付いたら・・・。

その戦争の第一線に俺とその友達・・・、そして師匠がいた。

キュピル
「(初めて第一線に立った時。俺は震えたな・・・)」

一回の瞬きで死ぬ可能性のある場所。
一瞬の油断も許さない場所。
あちこちで爆発音が鳴り響く。

魔法弾と実弾が交差しあう。
時には核爆発に匹敵する攻撃もあった・・。

全てにおいて初めてでまともに立つことすら出来なかった俺は
師匠・・シルクに何度も助けられてきた。
仲間との頑張りで長い事第一線は守り続けてきた。

だけど少しずつ劣勢を強いられるようになってきた。

この環境に耐えられなくなった味方が徐々に逃走し始めたのだ。

守れる場所も守れなくなり余儀なく撤退をさせられる。


そして本拠地。ギルドを攻められた。


キュピル
「(自分の故郷を攻撃されたあの時。俺はもう死にたいとも思った)」


幼馴染の友達も殺された。
片思いだったあの娘も殺された。

・・・・。

・・・・・・・・・・・・。

キュピル
「(・・・怖いのか?俺は・・・・)」

一番嫌な記憶が蘇ろうとしている。

それが怖いのか思い出さないように心が踏ん張っている。

キュピル
「(・・・・・・・・・)」

もう一度紅月を見る。
嫌な記憶が嫌でも蘇った。


キュピル
「(紅月のある日・・・・。俺たちは最終防衛ラインを守ることになった。
残されたこちらの兵士は数十人程度しかいなかった。それに対し相手は数万人・・・。
絶対に勝てないのは分っていた。それでも俺たちは守らなければいけなかった。

この最終防衛ラインの向こう側は城下町。ここを突破され制圧された場合は・・・。
国の崩壊は勿論、たくさんの民家も襲撃される・・・・。
ここまでたくさんの友達、仲間を殺されてきた。

例えここで死のうと俺たちはここを絶対に守らなければならない。

生き残ったたった数十人の仲間と誓いをする。
そしてシルクは俺にこういった。



シルク
「キュピル。・・・・・数時間後。もし悔しかったら。
・・・強くなれ。誰かを守れる強さをな」
キュピル
「・・・誰かを守る?僕に出来るのかな・・・。」
シルク
「あぁ、できる。お前は優しいからな」
キュピル
「・・・・わかった。でも悔しくなかったら?」
シルク
「そんときまた話してやる。」



キュピル
「(・・・・・・)」

数時間後。
シルクの宣言通り俺は悔しい思いをすることになる。
最初の一時間は順調だった。一人たりとも防衛ラインを遠さなかった。

・・・だが、奴らが本格的に遠距離砲撃を始めてからは違った。

簡単にトーチカは破壊されバリケードも破壊され
そして防衛装置も破壊された。
残るは俺たち兵士だけだった。

だが大群の波を抑えることも出来ず最終防衛ラインを突破されてしまった。

その時俺は敵に殴られ気絶してしまった。


・・・・。

・・・・・・・・・・・。

キュピル
「(・・・心が思い出すなって叫んでる・・・)」

心臓を鷲掴みされるかのような鋭い痛み。
でも今は思い出してしまう。

目が覚めた時は民家は焼け野原になっていた。

慌てて集落にかけよるとそこは・・・。

キュピル
「(略奪・・・。強奪・・・。強姦・・・。)」

見るだけでも嫌だった。
ヤケクソになってあの時突撃すればどれほどその後楽だったか。
でも俺は怖くなって逃げ出した。
一目散に城下町ギルドから逃げた。

キュピル
「(そして疲れて俺は倒れた。
その時ふと見上げた月が紅月だった。・・・それが強く記憶に残っている)」

今でも紅月を見るたびにこの記憶がよみがえる。
・・・そして今もあの時と似たような事が起きている。
俺たちの学校は消えた。
・・・そしてたくさんの人が死んだ。


キュピル
「・・・・うっ・・・くっ・・・・。くそ・・・くそ・・・!」

気がつけば泣いていた。
思いっきり地面を殴る。
ドンッと鈍い音が響いた。

ジェスターがいつもと様子が違うキュピルに気付く。

ジェスター
「・・・どうしたの?」
キュピル
「・・・なんでもない・・・」

・・・・。俺は慣れたつもりでいた。

でも違った。

ただ感情を押し殺していただけだった。

本当は・・・・。


キュピル
「・・・ジェスター・・・。俺は・・・」
ジェスター
「キュピル・・」
キュピル
「・・・俺は・・。ジェスターやルイ・・。ファン。それに他の皆を・・・。
守れると思うか・・・?」
ジェスター
「・・・キュピル。覚えてる?私何回もキュピルに助けてもらってるよ」
キュピル
「・・・・帝都での出来ごとの事とかか?」
ジェスター
「それもあるよ。・・・ルイだってキュピルに助けてもらってたよ。
ファンは・・・ファンはいつも家にいるからトラブル起こさないけど・・・
・・・キュピル。笑って」
キュピル
「・・・・?」
ジェスター
「泣いてるキュピルなんて見たくない・・・。頼れる自慢の飼い主だもん」
キュピル
「・・・・はは、確かに心配かけさせてちゃ誰かを守れるわけないよな。
もう大丈夫だ、ジェスター」
ジェスター
「うん!」

ジェスターの髪が揺れる。
喜ぶといつも髪を少しだけ上下に揺らす。

その時不審な物音がした。


ガサッ


キュピル
「何だ?」
ジェスター
「じぃー・・・。・・・・あ、危ない!」

ジェスターが唐突にキュピルを引っ張って横に飛んだ。
そのまま横に引きずられるとさっきキュピルとジェスターが居た場所に小さく細い魔法弾が飛んだ。
草からたくさんの野生のジェスターが出てきた。
皆星座を追って走っている。何人か大きな荷物を持っている。

キュピル
「な、なんなんだ?ジェスターの攻撃か!?」
ジェスター
「・・・・まって、私達こんな魔法使えない」

壁に刺さってる魔法弾は茶色く濁っており細くて長く、鋭かった
野生のジェスターがこちらに気付くとすぐに散り散りとどっかに行ってしまった。
ってことはこっちに気付いていなかった・・・?


キュピル
「うわっ!」
ジェスター
「キュピル!」

ジェスターがキュピルを更に奥に引っ張ろうとする。しかし

キュピル
「まて、奴を追う」
ジェスター
「危ないよ!」
キュピル
「もしかするとトラバチェス兵かもしれない。気付かれているならここにいるのは危ない。
皆を叩き起こしてくれ。早く!」
ジェスター
「・・・う、うん・・。キュピル・・・。」
キュピル
「なんだ?」
ジェスター
「気を付けて・・。嫌な予感がする・・・」
キュピル
「大丈夫だ。俺は強い」


そういって壁にささった魔法弾を壁から引っこ抜き敵を追いはじめた。




==深い森

キュピル
「(・・・・何故敵はこの場所が分ったのか?推測しないといけない)」

得意の推測を行う。
だがどれだけ考えても何故敵にここの居場所がばれたのか理解できない。

もし襲撃が起きた時から追っているのであれば何故今襲撃したのだろうか。
爆撃機などといった大きな物を用意していたのだからわざわざ逃がさずあの時仕留めればよかった。
なら痕跡をたどってここまでやってきた・・・?

いや、それもおかしい。
地面は乾いており足跡は残らない。他にも24時間も歩いてここまでやってきたのだ。
常に痕跡を残していたとは考えにくい。
万が一痕跡が残っていて追ってきたと考えよう。
・・・それならなぜ暗殺まがいな行動に出た?
そして何故今?
ちゃんとした軍隊連れてきて反撃もさせずに殺しただろう。
それなのに今こうやって敵が逃げている。

ここで一つ、推測が立つのは相手は一人

一人なら状況的不利を強いられることはない。


次にどうして俺たちの居場所がばれたのか考えないといけない。
常に俺たちの後を追ってきたとは非常に考えにくい。
最初の爆撃で俺たちの存在に気付いていたのならさっき話した通りとっとと爆撃機で殺せばよかった。
リスクを負ってわざわざ密偵を出し暗殺させる必要はない。

一つ発想を変えてもし敵がオルランヌ兵だったら?と考えよう。
あの時撤退せず何人か残っていたら?

・・・・。

しかしそれも考えにくい。
本拠点を落とされた時奴らはすぐに撤退を始めた。
それは即ちこの後の爆撃機がやってくることをわかっていたのではないだろうか?
つまりあのままその場に残っていては自分達に危害が及ぶ可能性がある。

オルランヌとトラバチェスが手を組んでいるのは新聞で分った。
わざわざ互いに消耗しあう事はないはずだ。

ならオルランヌ軍がこの周辺にいるとしたら?

残念だがこの可能性も低い。

大軍であるならそれこそわざわざ一人で攻撃せず大量の兵士を連れて圧殺すればよかった。
それに普通あの場所で小屋を作って自炊して楽しんでいるのを見たらハイキング客だと思うのが普通だ。
それなのに迷いなく攻撃を仕掛けた。

これでもう一個分った事がある。

それは俺達がアノマラド魔法大立学校の生き残りだということを最初から知っていたということ。
どれだけ離れていようが俺達を見てすぐに生き残りだと認識できている。

・・・・普通そんなことは出来ない。友達のように親しくなければ



・・・・友達・・・・。



怪しかった友達はいたか?



記憶を手繰り寄せる。


襲撃を食らってからあからさまに様子がおかしかった奴が一人だけいた。




そいつは・・・・。






キュピル
「止まれ!・・・くそっ、これでも食らえ!!」

キュピルが思いっきり先程の魔法弾を投げ返した。
敵の肩に足に刺さった。


「いたっ・・!!」







キュピル
「捕まえたぞ!!ハルララス!!!」





ハルララス
「いたたた・・・。キュピル君。一体なんてことしてくれるんだ」
キュピル
「それはこっちの台詞だ、ハルララス!」
ハルララス
「何を言ってるんだい?キュピル君」
キュピル
「とぼけるな、もう全て理解している。」
ハルララス
「理解?一体何を理解したと言ってるんだい?」
キュピル
「ハルララス。君に少し不審な点が多かった。
一番最初に不審な点に気付いたのは俺がルイを連れて学校から逃げている時だった。
最後尾を走っていたルイの様子がおかしい事にどうして気付いた?」
ハルララス
「それは他の人から聞いたからだよ。」
キュピル
「常に最前列を走っていなかったか?ハルララス」
ハルララス
「後続がどうなってるか確認するために止まったよ。その時に聞いたんだ」
キュピル
「違う。ハルララス。君はあの時最前列にいなかった。」
ハルララス
「どうしてそう思ったんだい?」
キュピル
「君が突然最後列に現れた。これっておかしなことだと思わないか?
ここの湖に案内するといって何で君がトップを引かないで後ろでポツンと立っていたんだい?」
ハルララス
「あの時・・・ちょっと・・・」
キュピル
「ちょっとなんだ?」
ハルララス
「・・・不審な物を見つけて立ち止まったんだ・・・。
皆にはここを道なりまっすぐと伝えておいて先に走らせていた。」
キュピル
「不審な物って何だ?」
ハルララス
「それは・・・」
キュピル
「ハルララス。君がそこで立ち止まった本当の理由は合図を送っていたんじゃないのか?
トラバチェス兵にな」
ハルララス
「何でそう思ったんだい?」
キュピル
「君の見ていた方向だ。ハルララス。俺達がやってきた時お前はどこを向いていた?」
ハルララス
「・・・覚えていないなぁー・・・」
キュピル
「学校のあった方角だ。学校の方角は道なりで何もなかった。それなのに不審な物を見つけたのか?」
ハルララス
「爆撃機がこっちに気付いていないか確かめただけだよ」
キュピル
「確認していないか確かめるために態々止まったのか?違うだろう。
お前は態々止まったのは爆撃機に向かって魔法を発射したんだろ?」
ハルララス
「そんなことはしていない」

しかし無視する

キュピル
「だが魔法は届かなかった。そうだろ?」
ハルララス
「・・・・・・・」
キュピル
「ハルララス。お前、トラバチェス兵なのか?」
ハルララス
「証拠はあるのかい?」
キュピル
「証拠はこいつだ」

キュピルが先程ハルララスが投げつけた細くて鋭い魔法弾を見せた。

キュピル
「ハルララス。これは君がオリジナル魔法で召喚した凶器だろ?
この召喚魔法弾が共鳴している」

魔法は使用者の体内からマナを吸い取って発動している。
そのため使用者が近づくと力強く光り威力が高まる傾向がある。

キュピル
「ギーンとユーファが言っていた。オリジナル魔法は生まれた国によって色が変わると。
そしてハルララス。トラバチェスは茶色く濁った色をしている。君も聞いただろ?」
ハルララス
「・・・・・へぇ」

ハルララスの表情が少し変わる。

ハルララス
「僕がトラバチェス生まれだってのがばれたのが少し悔しいな。
でも僕がトラバチェス軍に入ってるとは限らないよ?僕だってただこっちに来て勉強しにきただけだよ」

ハルララスがトラバチェス軍に入隊している証拠。

残念だけどこの証拠はない。
・・・だが張ったり、カマをかけることはできる。
一番怪しい点を突く

キュピル
「ハルララス。ギーンとカジとファンが校長の部屋を捜査した時彼等は何て言ったか覚えているか?」
ハルララス
「情報は何も残っていなかった。でしょ?」
キュピル
「違う。校長に関する情報は何も残っていなかった だ。これがどういう意味か分るか?」
ハルララス
「・・・・まさか」
キュピル
「そうだ。ハルララス。君の身元のデーターが残っていた。ギーンが全てデーターをコピーしている。
これを全て公にするのはまずい。そう思ったギーンは極限られた人数にしか教えなかった。
奴には注意しろ・・・と。その話を切り出したのはハルララス。お前が一人で猟に行ってた時だ。」
ハルララス
「・・・・あの校長・・・自分のデーターだけを・・・・くっ・・・」

ハルララスが見事にひっかかった。

キュピル
「どうせあの時も粗方通信を取ろうと試みたんだろう?だが上手くいかなかった」
ハルララス
「・・・・・・・・・証拠は?」
キュピル
「お前が鹿を一匹しか連れて帰って来なかった事だ。カジもミーアも言ってたぞ。
お前の仕留め方は凄かったと。・・・それなのになぜ一匹しか仕留められなかった?それは通信を試みたからだろ?
だが手ぶらで帰ってはまずい。そう判断して鹿を一匹だけ狩り帰還した。そうだろ?」
ハルララス
「偶然鹿がいなかったんだ」
キュピル
「嘘を付け。カジとミーアが10匹も連れ帰ってきたんだぞ?ってことは集団を見つけはずだ。
何故その集団を追わなかった。・・・・いや、追って何故途中で追うのをやめた」
ハルララス
「ぐっ・・・・!!」

ハルララスが立ちあがる

キュピル
「おい、諦めろ。時期にジェスターが全員連れてくる。」
ハルララス
「だがキュピル!!お前はまだ重大な証拠が抜けている!!!」
キュピル
「重大な証拠だって?」
ハルララス
「そうだ!!俺はこう主張することもできる!!
キュピル、お前が誰かに気付いて慌ててどこかに走って行った。
それに気付いた僕がキュピル君の後を追ったけど見失った。
気が付いたらキュピル君に魔法弾を投げられていた!!」
キュピル
「何が言いたい」
ハルララス
「出入り口は一つしかなかった。そして君はドアの横にいた。窓はなく出入り口はドア一つだけだった。
だから外を出たら必ず君は気付く!!それなのにどうやって君に気付かれず茂みに隠れて
君を狙える!?」

確かにこれは大きい。
出入り口は一つだけだった。キュピルにばれずに外に出る方法を見つけない限り
ハルララスの言った通り後からハルララスが出てキュピルを追い抜かしてしまい敵だと勘違いされた と
主張することが出来る。

しかしキュピルは既に気付いていた。

キュピル
「ハルララス。ここの拠点・・いや、小屋を作ったのは誰だ?」
ハルララス
「皆」
キュピル
「ならもっと正確に言おうか。・・・組み立てたのは誰だ」
ハルララス
「っ・・・!」
キュピル
「・・・・ハルララス。お前だ。お前が全て組み立てた。
どうせ開く壁だとか回る壁だとか開く天井だとかそういう仕掛けを作ったんだろ?
何なら戻って確認してみるか?」
ハルララス
「ふふ、キュピル君。大当たりだよ。でもそれがどうしたんだい?」
キュピル
「え?」
ハルララス
「爪が甘いね。それでも僕はこう主張することが出来るんだよ?
不審な物音に気付いたから僕が作った非常口を使ってキュピル君を追いかけた。
どう?不審な所はないでしょ?」

確かに一見不審な点はない。万が一のために。そういう理由ででっちあげることは可能だ。
しかしそれと同時に一つの綻びがこぼれた

キュピル
「・・・・なら何で皆に言わなかった?」
ハルララス
「・・・・・」
キュピル
「どこからどうみてもただの壁。それなのになぜ皆に知らさなかった?
敵が万が一来たら欺くのに物凄く適している壁だ。・・・なぜ言わなかった?」
ハルララス
「・・・・・・・」
キュピル
「ハルララス。観念しろ。もう全部分っているんだ」


ハルララスの目をまっすぐ見つめる。
そのまま何十秒か経つ。
そしてハルララスは溜息をついた

ハルララス
「・・・・。あせったんだ」
キュピル
「あせった?」
ハルララス
「僕の目的。もう君は気付いているんだろ?生徒になりすまして中を調査することだったんだ。
校長が仕掛けを作り僕がそれを実行した。」
キュピル
「学校襲撃の計画はいつから決まっていたんだ?」
ハルララス
「校長が就任したその日から」
キュピル
「就任したその日から・・・。大体何カ月だ?」
ハルララス
「二年だよ。僕もその時に一緒に入学した。」
キュピル
「何で学校を襲撃したんだ?」
ハルララス
「ここの学校は何百年と続いてる学校だった・・・。
その技術力は全ての国においてトップだった。
戦争に使われたら脅威となるのは確実だった。だから阻止しようと襲撃を試みたんだ」
キュピル
「(だから購買部で新聞を見た時校長は支援を断ったのか・・・・。都合のいい言葉を並べて・・)」
ハルララス
「僕達の予測通りアノマラドは学校に支援を求めた。でもそれは断る事が出来た。
でもそれは長く持ちそうになかった。すぐにでもアノマラド軍がやってきて技術の徴収を行おうとしていた。
だからいつもより早めに襲撃が早まった。・・・だけど襲撃してあるトラブルが発生した」
キュピル
「トラブル?」
ハルララス
「君たちが生き残ってしまった。それも重要な秘密と情報を持って。
本来はオルランヌ軍が皆殺しにする予定だった。万が一制圧されてしまった時は爆撃機で一掃する・・と。
・・・ところが君たちは生き残った。」
キュピル
「重要な秘密と情報・・・。学校襲撃の真実を知っていた事か?」
ハルララス
「そう。これを事故と思わせるには生存者を残してはいけなかった。
予定では魔力増幅装置の誤作動によって大爆発が起き全滅した・・・っというシナリオだった。
そのためには学校を粉々にして生存者を誰一人とも残しちゃいけなかった。
だから外出禁止になるクラス対抗勝負の時期を狙った。」

キュピルが首をかしげる

キュピル
「ハルララス。まさかとは思うがクラス対抗勝負を企画したのは・・・校長か?」
ハルララス
「そうだよ。技術がどれほどのものか確認するために開かれていた」
キュピル
「そうだったのか・・・」

そんな秘密があったとは・・・。ただの勝負ではなくクラスの人を
学園内に閉じ込めさせ尚且つ技術力を図っていた・・・・。

ハルララス
「君達の賢明な行動によって生き残った時僕は焦りを覚えた。
本当は襲撃の時。校長と共に僕はここから脱出するはずだったんだ。」
キュピル
「・・・なら、なんで脱出しなかった?そして共に戦った?」
ハルララス
「・・・・僕には婚約者がいた。ここの学校に」
キュピル
「・・・婚約者だと?」
ハルララス
「ユーファさんだよ。・・・彼女とは幼馴染でね。彼女もトラバチェス人だよ」
キュピル
「・・・・・なんだって・・・?」

ハルララスが話を続ける

ハルララス
「彼女に僕がトラバチェスの軍に入ってることは知らせたくなかったんだ。
最近のトラバチェス軍のやることは行きすぎていて彼女は反感を抱いていた。
・・・僕は彼女の事が好きだったし彼女もまた僕の事を好きでいてくれた」
キュピル
「・・・・・・それで?」
ハルララス
「ミーアが一番最初にトラバチェス兵に気付き皆で穴に潜った時。もしあの時ユーファさんがいなければ
僕はトラバチェス兵の方に加勢していたよ。でも彼女の前だったから出来なかった。
そして襲撃の時。・・・・彼女はオルランヌ軍に襲われた。僕は脱出するチャンスを失ったんだ・・・。
彼女を守るためゆえに・・・・。」

ハルララスが一筋の涙をこぼす

キュピル
「ハルララス。どうしても聞きたい事がある。何でこの襲撃の計画に立ちあっていた?
ユーファという大切な婚約者がいるんだったら軍なんて抜けて幸せに生活できていただろ・・・!?」
ハルララス
「・・・・脅迫されていたんだ・・・」
キュピル
「脅迫・・・?」
ハルララス
「彼女の心臓に・・・小さな爆弾が仕掛けられているんだ」
キュピル
「爆弾だと・・・?」
ハルララス
「彼女を死なせたくなければ計画に立ち会え。・・・そう言われたんだ」
キュピル
「・・・・・分らないな・・・。何故ハルララスを選んだんだ・・・?そんな面倒な事しないで
もっと普通の兵士を使えばよかったと思うんだが・・・」
ハルララス
「・・・それじゃだめだったんだ。・・・絶対に裏切らない忠実な僕(しもべ)が必要だったんだ
さっき話した通り最近トラバチェス軍のやることは行きすぎているんだ。それゆえに兵士離れが起きている。
だから絶対に裏切らない忠実な僕が必要だった。・・・それが婚約者を持つ僕だったってわけだよ」
キュピル
「・・・・・・そうか・・・」

紅月が二人を照らす

ハルララス
「キュピル君・・・。君の推理通り、猟をしにいった時僕はカジ君とミーア君から離れてトラバチェス軍に
連絡を行ったんだ・・・。そしたら連絡がついたんだ」
キュピル
「なんだって?」
ハルララス
「事の事情を全て話した。そしたらまずはユーファさん以外の人を全て殺せって言ってきたんだ。
だから僕は君を殺そうとした。・・・正確なショットを打った。そしたらたくさんの野生のジェスターが現れて
僕を妨害したんだ。・・・あの妨害さえなければ僕は・・・」

その時後ろからドタバタ音が聞こえてきた。

ハルララス
「ついに・・・皆来ちゃったね」
キュピル
「ああ・・・・」
ハルララス
「・・・君は僕を突き出すのかい?」
キュピル
「・・・・・・・」

しばらくしてジェスターが飛びついてきた。

ジェスター
「キュピル!大丈夫!?」
キュピル
「大丈夫だ」
ギーン
「ハルララス!!貴様・・・・!!!」

ギーンが手を出そうとする。しかしユーファが止めにはいった。
ギーンも全部推測がついていたのだろう。

ユーファ
「ま、まってください・・・!!ハルララス・・・・。一体どうしたの・・・・」
ハルララス
「ごめん・・・。ユーファさん・・・。僕は・・・・」
キュピル
「皆聞いてくれ」

キュピルが皆の方を振り向く。

キュピル
「ハルララスと一緒に襲撃を仕掛けてきたトラバチェス兵を追いかけた。
ハルララスが敵に追いついたのだが反転攻勢され魔法弾を食らってしまった。治療してほしい」
ユーファ
「すぐ治療します・・・!」

すぐにルイもピアも治療に入った
ギーンがキュピルを引っ張って茂みに連れてった

ギーン
「(どういうつもりだ?貴様も全て推測がついたのだろ?)」
キュピル
「(ギーン。分ってくれ。彼はどうしてもこうしなければならない事情があったんだ)」
ギーン
「(事情?どういう事情だ)」
キュピル
「(お前には全部後で話してやるからここは黙っててくれ)」
ギーン
「(・・・・仕方ない、いいだろう)」



ユーファがハルララスを賢明に治療する。すぐに容体はよくなった。

キュピル
「・・・・・・・・」

二人の会話が何故だか心に響く

ハルララス
「ありがとう、もう大丈夫だよ」
ファン
「敵を取り逃してしまったのは致命傷ですね・・・。」
カジ
「すぐに奴らはここを攻めてくるに違いない。急いで戻って支度するぞお前等」

すぐに皆小屋に戻って行った。ハルララスとキュピルだけが残った。


ハルララス
「キュピル君・・・・」
キュピル
「ハルララス。君が羨ましい」
ハルララス
「え?」
キュピル
「俺はいつも戦ってきた。でも誰かのために戦うなんてしたことがなかった。
・・・でもハルララス。君は違った。・・・誰かのために戦ってた。
そんな君が凄く羨ましい」
ハルララス
「・・・・おせっかいかもしれないけど・・・。君、ルイさんと結婚してたんじゃなかったの?」
キュピル
「家族っていう言葉にピーンと来たか?残念だけど違う。偽物だ」
ハルララス
「偽物?」
キュピル
「そう。全く血は繋がってない」
ハルララス
「だったら尚更だよ。今は彼女を守ってあげて。・・・・君が彼女に肩を貸してあげた時と同じように。
・・・ジェスターさんもだよ。彼女はペットで子供だけど立派な人だよ。・・・一番守ってあげないと
ファン君だってペットという位置にいるけど戦闘が全くできない彼にとっては物凄く困惑しているはずだ・・・。」

家族・・・・・。

ハルララス
「・・・守ってあげたいという気持ちは一つの愛なんだと思うよ」
キュピル
「・・・・愛・・か。俺にそんな事が出来るのか・・・・」

しばらくして

キュピル
「・・・ハルララス。・・・一回戻ろう。」
ハルララス
「・・・僕はもう戻れないよ」
キュピル
「いや、戻れる。・・・戻らないでどうする気だ?」
ハルララス
「実は・・・僕の心臓にも・・・爆弾が取り付けられているんだ」
キュピル
「・・・・なんだって?」
ハルララス
「僕が通信を行った時からトラバチェスは再び僕達を監視し始めた。
・・・・キュピル君。」
キュピル
「ハルララス!!」



ハルララス
「僕の呪縛・・束縛を解いてくれてありが・・」



言葉の途中でハルララスが倒れた。

キュピル
「ハルララス!!!!!」



もう息をしていなかった。脈もなかった。
・・・・そんな・・・。こんな一瞬で・・・・。

・・・・まて・・・まさか・・・・まさか・・・・!!!!


急いで小屋に戻る。
キュピルの予想通り騒然としていた

ルイ
「キュ、キュピルさん!!ユーファさん・・が・・・」
ギーン
「ちっ!蘇生が通じない!!!」
カジ
「どういうことだ。外傷がないということは発作か?」
ファン
「それにしては急すぎます」


キュピル
「・・・彼女はもう死んでいるよ・・・」

ダイン
「どういうことだキュピル?」
キュピル
「皆・・・聞いてくれ・・・・」


さっき何があったのか。本当の事を全て話した。





真実をしった皆は驚愕した


まさかハルララスが・・・


そしてユーファさんも・・・・






真実を全て話した後。
心の中で思った


キュピル
「(ハルララス。君の意思はしっかり引き継いだ。
・・・もしも。もしも守る事が愛だと言うなら・・・・)」


全ての歯車が動き出した。
この歯車は止まる事はない。壊さない限り・・・・



続く




追伸


過去最長の長さとなってしまった。
どうだろうか・・・。



第九話



ハルララスが死んだ。
ユーファが死んだ。

そして二人の正体を知った。


ルイ
「まさか・・・二人にそんなことがあったなんて・・・」
ダイン
「ハルララスが入学してきた頃から仲良くしてきたが・・・。全然知らなかったぞ・・・」
カタリ
「こっちもだ・・・・。」

カジが立ちあがる

カジ
「今は感傷に浸る時ではない。ハルララスはこう言っていた。
トラバチェスに報告したと。時期にここを襲うに違いない。」
キュピル
「・・・・なんだ、この音は・・・?」

足音が聞こえる。それも人が多い。

ピア
「んー?」

ピアが扉をあける。

ミーア
「よせ!」

扉を開けた瞬間大量の銃弾が降り注いだ

ジェスター
「わっ!!」
カタリ
「やべっ、閉めろ!」
ギーン
「おい、バリアを張るぞ。壁の強度もあげておけ!」

ギーンが魔法を唱える。ファンやルイも魔法を唱え始めた。
どうやら敵は扉の正面にたくさんいるようだ。包囲されているかどうかは分らない。

ミーア
「どうする。このまま長くは続かないぞ」
キュピル
「・・・ハルララスが俺達に残してくれたあれを使おう・・・」
カジ
「・・・もう一個の出入口か?」
キュピル
「ああ。ハルララスは何処で寝ていた?」
カタリ
「ここで寝てたぜ」
キュピル
「・・・・・」

キュピルがその周囲を探る。
すると床に小さな切れ目があるのを見つけた

キュピル
「・・・ここか」

爪を立てて蓋をあける。床の下には掘られた地面があった。

ファン
「これは・・・相反魔法で作られた道ですね。」
ギーン
「・・・奴は自分の能力を隠していたのか」
キュピル
「能ある鷹は爪を隠す・・・か・・・」

その裏にある素性も全て隠されていた・・・。

ジェスター
「早く逃げようよ・・・」
キュピル
「そうだな。」
カジ
「とっとと入れ、お前等。ここを爆破するぞ」
ルイ
「ば、爆破って・・・。ハルララスさんと・・・ユーファさんの死体はどうするんですか・・・?」

二人の死体は今いる小屋で寝かせている。
二人とも外傷はなく昼寝しているようにも見える

ギーン
「奴はもう死んだ。気にする事はないだろ?」
ルイ
「し、しかし・・・」
ジェスター
「私もう怖いから先いくね・・・!」

ジェスターが穴の中に入る。ファンも続いて入る。

キュピル
「ルイ、行こう。」

キュピルが手を差し伸べる

ルイ
「・・・・これも戦争・・・だからですか?」
キュピル
「・・・・あぁ。」
ルイ
「・・・・わかりました」

キュピルの手を握り穴の中に入る。
最後に残ったのはカジだけになった。

カジ
「ハルララス、ユーファ。安からに眠れ。盛大な火葬になるが勘弁してほしい」


爆弾を設置し穴の中に入った。




穴は思っていたより長かった。五分間穴の中を這って進むと上り坂になった。
そのままどこかの森に出てきた。

ジェスター
「・・・皆大丈夫だよ。誰もいない」
ファン
「行きましょう。ジェスターさん」
カタリ
「でも今度は何処行けばいいんだよ?」
ダイン
「何処でもいいだろ。とにかく今は逃げるんだ!」

続いてミーア、ピアが現れ、最後にキュピルとルイとギーンが現れた。

ミーア
「カジはどうした」
ピア
「穴狭カー・・・」
ミーア
「・・・なるほど、確かに窮屈な穴ではあったからな」
ダイン
「・・・詰まってたらやばくないか?助けにいかないと!」
カジ
「その必要はない」

カジが穴から出てきた。

カジ
「確かに狭かった。早く行くぞ。扉が破られた瞬間爆発する」
ジェスター
「せっかく作った拠点。壊しちゃうんだね・・・」
カジ
「また作ればいい」


皆ひたすら走った。
どこの方角に向かって走っているのかすら分らない。

しばらくして何処かが大爆発を起こした。
カジの仕掛けた爆弾はとにかく大きかった。
あの爆発の大きさは先程たかっていたトラバチェス兵全員倒せる威力を持っていたのではないのだろうか。

でも捜索は続いているはずだ。休めない。


魔法使えるものが風魔法を使って皆の移動速度を速める。

・・・・。

・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


疲れても回復魔法でスタミナを回復し痛みを消しそして走り続けた。

こんなこといつまで続ければいい?

そして俺達は何処に向かって走っている・・・・?


小屋を出た時は昼にちょうど入るぐらいだったのに。

気がつけばまた夜になっていた。


森を抜けた。その時たくさんの光が飛び込んだ。

ルイ
「あれは・・・・?」
ダイン
「町か・・・!?」
カタリ
「やったぜ!助かった!」

カジが地図を開く

カジ
「・・・・・・。あれが街かどうかは怪しいものだ」
ジェスター
「どういうこと?」
カジ
「この周辺には街は存在しない」
キュピル
「・・・言われてみればあの光は・・街灯には見えない・・。」

キュピルが立ち止まる。

ジェスター
「・・・なんかゆらゆら動いてるね」
ルイ
「もしかして・・・幽霊!?」
キュピル
「・・・なわけないと思うが街灯の光にしてはおかしい」
ダイン
「・・・火か?」

確かに言われてみればそういう動きをしている。

・・・まさか

カジ
「!!。 おい、ここから離れるぞ」
ピア
「どげん?」
ミーア
「ピア。あれは何処かの軍の拠点かもしれない。」
ピア
「えー!」
ミーア
「もしあれがトラバチェス兵だとしたら大変なことになる。早く茂みに隠れるぞ」


森をやっと抜けたかと思ったが結局また森に入ってしまった






ギーン
「一旦ここに留まってどう動くか考えた方がいい」
カジ
「その通りだ。迂闊に動けば敵に見つかる恐れがある」

全員その場に座り込んだ。いくら魔法でスタミナを回復していたとはいえど精神的疲労は溜まっている。

カタリ
「でもまだどこの軍か分らないじゃんかよー。もしアノマラドの軍だったら助けてもらえるぜ」
ダイン
「ついでに真実を打ち明ける事も出来るしな」
キュピル
「・・・なるほど。確かにもしあの拠点がアノマラドの軍だったら助け舟に乗れるな」
カジ
「・・・偵察が必要だな。」
ミーア
「私が行こう」
ピア
「ワシも行く!!」
ミーア
「ピア。遊びじゃないぞ」
ピア
「わーってる」
ミーア
「だめだ。ピアは物ごとに興味を持ちすぎる」
キュピル
「・・・ピアの変わりに俺が行ってもいいだろうか?」
ミーア
「・・・・?」
キュピル
「こう見えても意外に潜入は得意だったりするんだ。若き頃の至りでね。
それに他にも色々調べたい事があるんだ。」
ルイ
「何を調べに行くんですか?逃げ道の事ならミーアさんに任せればきっと見つけてくれますよ」
ミーア
「忍びに自信はあるが見つけられるかどうかは別だ。・・・何か調べるならあと一人は欲しい。」
カタリ
「まぁいいんじゃない?へへっ。」
カジ
「まずはどこの軍なのか調べてこい。アノマラドじゃなければ戻れ」
ミーア
「すぐに戻る」
キュピル
「行ってくる」

二人が偵察しに行った。



ギーン
「・・・現在地を確認したいな」
ジェスター
「現在地確認してどうするの?」
ファン
「現在地が分れば何処に向かえば安全かある程度推測が出来ますよ」
ダイン
「一番近い街に逃げ込みたいな。・・・トラバチェスの勢力下でなければ・・。」
ファン
「僕達がいた学校はアノマラドの中心にありました。そして襲撃を貰い逃げる際
ちょうど正門の反対の場所から逃げたのを覚えています。そこは東の方角でした。」
ダイン
「そして俺達は湖に向かって行った・・・。道は比較的まっすぐだったな」
カジ
「多少曲がってはいたがな。だがほぼ東に向かって走っていたと考えていいだろう。」
ファン
「もしかすると僕達が小屋を作った場所の湖はヒューズ湖ではないでしょうか?」
カタリ
「ヒューズ湖?」
ファン
「はい。大昔ですがそこでトラバチェスは大規模な軍備を整えていた時期がありました。
主にマシンパーツを量産していてその中で一番量産されたのがヒューズだったのでそう呼ばれてます。
今はアノマラドの領土になってしまったので工場そのものも消えましたが・・・。
・・・・もしヒューズ湖に来ているのだればここはアノマラドとトラバチェスの領土の境目・・・。
そう予測することができると思います」
カタリ
「ちぇ、よりによってこっちに逃げ込んでたのかよー。どうせだったらナルビクとかその辺に向かって
逃げりゃよかったなぁー。一番安全だったぜ?」
ルイ
「・・・ナルビクにキュピルさんの家があるわけで・・・」
カタリ
「お!そうなのか!今度お邪魔しようっと。へへ」
ダイン
「俺も俺も」
カジ
「今はそのような話をする時ではない」
ファン
「もしもオルランヌまたはトラバチェス軍だった場合どうするか考えておきましょう」
カジ
「・・・オルランヌの可能性は極めて低いと思うぞ」
カタリ
「なんでだよ?」
カジ
「先程推測した通りここはアノマラドとトラバチェスの国境の境目付近にいる。
態々ここまで進軍しても兵士の疲労が貯まるだけで何のメリットもない」
ギーン
「奇襲するならば海を通って行けばいいだけの話だ」
ミーア
『聞こえるか?』

いきなりミーアの声が聞こえた。
しかし近くにミーアはいない。

ミーア
『魔法を使って問いかけている』
カジ
「聞こえるぞ。どこの軍だ」
ミーア
『残念ながらトラバチェスだ。』

全員溜息をつき落胆する

カジ
「トラバチェスだったか・・・。仕方あるまい。戻れ」
ミーア
『戻る前にいくつか報告しておきたいことがある』
ギーン
「何だ?」
ミーア
『・・・巨大なバリケードが作られている』
ギーン
「バリケードだと?どういうことだ?」
ミーア
『ピアの望遠鏡やダインの拡大鏡ゴーグルを使うなりして見てみろ』
ダイン
「どれどれ」
ピア
「んんんー?」

二人とも茂みから少しだけ顔を出しズームアップする。

ダイン
「・・・な、なんだこりゃ!?ありえないぞ!!!」
カタリ
「何だよ、俺にも見せろよ」
ピア
「すげー!!見て見て!あれ!!!」
ルイ
「(ピアさんが普通に喋った・・・)」

カタリ
「うへー!すげぇな、ありゃ・・・」
カジ
「一体どうなっている」
カタリ
「滅茶苦茶巨大な壁が無限に続いているぜ」
ギーン
「貸せっ!」
ピア
「んばっ!!」

ギーンが望遠鏡を奪い取る。後ろでピアがギーンの背中を殴ったりけったりしているが全く気にも留めていない。

ギーン
「・・・国境線の上にあの壁を立てているのか?」
ミーア
『そのようだ。その壁の上に今私はいるがアノマラドを囲うように敷かれている』
ギーン
「アノマラドを囲うように・・。どういうことだ・・」
ピア
「んばばばー!!!」

ピアがギーンの後ろ髪を思いっきり引っ張る

ギーン
「ぐあっ!・・・・・。返してやる」

望遠鏡を返してもらうと再び壁を見つめ始めた。

ピア
「ミーアだ!!」
ジェスター
「キュピルもいるよー」

いつのまにかダインのゴーグルを手に取って眺めているジェスター。
ミーアとキュピルが何か話している。
すると突然キュピルが立ち上がり階段を使って拠点の中に入り込んでいった

ミーア
『・・・。今からトラバチェスの拠点の中に忍び込む。
その中で気になる発言を聞いた。いよいよオルランヌ軍が動き出すらしい』
ファン
「オルランヌが動き出す?どういうことですか?」
ギーン
「待て、忍び込むとはどういうことだ。」
ミーア
『戻ろうとしたのだがキュピルが無謀にも乗り込んだ・・・・』
ギーン
「ちっ、あの大馬鹿の間抜けやろう!」
ミーア
『詳しい事は分っていない。だがここには情報が一杯つまっているようだ。キュピルと協力して
情報の捜索を行う』
カジ
「危険だ。万が一見つかれば我々にも被害が及ぶ。キュピルを連れてとっとと戻れ」
ミーア
『・・・ここで奴らの動向を掴んでおけば安全に逃げ切ることができる。
多少危険でも知る価値は十二分にある』
ジェスター
「キュピルはどこにいるの?」
ミーア
『彼は今拠点の正門近くに移動している。彼は絶対に見つからない秘策があると言ってるが・・・』
ダイン
「絶対に見つからない方法・・・か・・・」

そこでミーアの通信が途絶えた



==トラバチェス拠点内



トラバチェス兵
「警備御苦労」
キュピル
「あぁ」

トラバチェス兵に敬礼される。

キュピル
「(やはり誰か一人とっ捕まえて服を強奪するというのはどこの軍相手でも有効だな)」

しかしこの服を手に入れるのに多少苦労はあった。
門の近くまで近寄り不審な物音を敢えて立てることによって兵士が一人残るように調整した。
一人だけになった兵士を後ろから思いっきり峰打ちで攻撃させ気絶させた。
その後は服を盗み・・・目を覚まされると大変厄介なので・・申し訳ないが・・・

キュピル
「(・・・安らかに)」


ひとまずこれで自由に動けるはずだ。
さっそく部屋の中を自由に創作するとしよう


==会議室

キュピル
「(会議室か)」

さっそくこの部屋を見つける事が出来たのは幸運だ。
何かのファイルや図、書類がそのまま置かれている。

キュピル
「(どれどれ・・・・)」

机の上に置かれてる書類を手に取る。
そこには今後の作戦について書かれていた

『〜PEST−K65について

*映写機を通して図・画像を見ながら説明をする、あるいは受ける事』

キュピル
「PEST-K65・・?それに映写機・・・?・・・これか」

近くにあった映写機の再生ボタンを押す。何か絵が映し出された。
書類に目をやる

『PEST-K65は大変危険な兵器である
一歩扱いを間違えるとたちまちこちらにも被害を被ることになる
しかし扱いさえ間違えなければアノマラドから
反撃を受ける事もなく確実にダメージを与え尚且つ迅速に効果を発揮する。
このPEST-K65はペストを改良し兵器として改良させたものである。
そのため基本的なデータはペストと同様である。

ペストの基本的な症状・感染経路

・感染者の血痰などに含まれる菌を吸い込む事で感染する
・高い致死性を持っており罹患すると皮膚が黒くなる(別名、黒死病

*ペスト菌が血液によって全身にまわり敗血症を起こすと、皮膚のあちこちに出血斑ができて
 全身が黒いあざだらけになって死亡する

*腺ペストを発症している人が二次的に肺に菌が回って発病し、又はその患者の咳によって
 飛散したペスト菌を吸い込んで発病する。気管支炎や肺炎をおこして血痰を出し、
 呼吸困難となり2〜3日で死亡する。感染率は低いが死亡率は100パーセントに近い

*ペストに感染したネズミから吸血したノミに刺された場合、まず刺された付近のリンパ節が腫れ、
 ついで腋下や鼠頸部のリンパ節が腫れて痛む。リンパ節はしばしばこぶし大にまで腫れ上がる。
 ペスト菌が肝臓や脾臓でも繁殖して毒素を生産するので、その毒素によって意識が混濁し心臓が衰弱して
 多くは1週間くらいで死亡する。死亡率は50から70パーセントとされる


今回PEST-K65についての実験データをここにまとめる。

・数多くのペストの中から一番感染力の強いペストと致死率が一番高いペストを結合、融合させ
 全く新しいペストを開発。

*主に空気感染から始まり肺に菌が回って発病。肺から感染したペスト菌が敗血症を起こす。
 それと同時にリンパ節も腫れだす。このリンパ節は空洞になっているが中にペスト菌が大量に
 生産される。翌日までにはこのリンパ節が破裂し皮膚を突き破って外へ飛び出し更に他者へ感染させる。

*筋肉の痙攣と呼吸困難が同時に襲い感染から約二日後に死亡する。
 またはリンパ節が破裂することによって出血多量を起こし死亡する。

*ワクチンがなければ致死率は100%。しかしワクチンを接種しても必ずしも助かるという保証はない。


三日後にオルランヌがアノマラドへ猛攻を仕掛ける。
その際空からこのPEST-K65を空中散布する。
散布を開始する前から巨大な包囲網を築きアノマラドを孤立させる。
今回我々に与えられた任務はこの周辺に巨大な包囲網を築きあげバリケードを作る事。
なお作戦開始までにワクチンを接種する事。

なお・・・』


書類はここで途切れている。続きがまだありそうだ。
しかし恐ろしいものを見つけてしまった。

キュピル
「・・これは・・生物兵器か!?」

それもかなり強力の物のようだ・・・・。
このようなものをナルビクに投下されては・・・・。

だが書類によればワクチンが存在するらしい。
必ずしも助かるわけではないようだが・・・・。


しかし気になる部分がある。

キュピル
「(オルランヌが猛攻中にこの生物兵器を空中散布するのか・・・?
もしそうだとするならオルランヌにも多大な被害を被ることになる・・・。
そんなことをしたら同盟は・・・・)」

・・・・色々と考える事が多そうだ。
これは持ちかえる事にしよう。映写機からテープを取り出しポケットにいれる。
この書類の続きはないだろうか・・・。

キュピル
「(ここで会議したのであれば必ずあるはずだ・・・)」

しかし他に置いてあるものを調べても同じような書類しか見つからなかった。
・・・何故この1ページしか置かれていないのだろうか?


・・・・。

キュピル
「(出来る事なら隊長・・あるいは指揮官とか上級関係の部屋に忍び込んでファイルを探したいな。)」

今は深夜だ。確かに寝ているところを入れば上手くいくかもしれない。
しかし見つかった時の事を考えると・・・。いくら兵士に変装してるとはいえどただでは済まされないだろう。


その時であった。


いきなりけたたましい警報音が拠点内に鳴り響いた。

キュピル
「(何だ!?見つかったのか!?)」

突然トラバチェス兵が拠点のある場所に集まりだした。
そして武器を取り出し待機している。
その中に指揮官と思われる人物もいた。そして何か叫んだかと思えばそのまま外に飛び出し
他の兵士も外に飛び出していった
・・・拠点内には僅かしか人は残っていなかった。

キュピル
「(・・・?何が起きたのか分らないがこれはラッキーと見るべきだ。今なら忍び込めるかもしれない)」


なるべく人に見つからないように進んでい行き指揮官が出てきた部屋に入り込む。




==指揮官の部屋


キュピル
「(ほぉ・・・。流石隊長さんの部屋だけあって作りは豪華だ)」

あれだけのバリケードを築きあげているだけのことはある。
ここの拠点は恐らく壊されない限り使われ続けるのだろう。

キュピル
「(それより早く書類を探さないと)」

ぱっと部屋の中を見回す。部屋の中に異質な存在があるのにすぐ気付いた。

キュピル
「(金庫だ・・・)」

すぐに金庫に近寄り開けようとする。しかし案の定鍵がかかっていた。
金庫はダイヤル式になっておりそれと同時に小さな鍵も必要のようだ。

キュピル
「・・・・どこかにメモ用紙とかあるか・・?」

・・・とはいえどそれこそもっと人目につかない場所においてあるだろうし・・・。
無理やりこじ開けては流石にまずい。

どうしたものか・・・。そう考えてると後ろから声が聞こえた。

ミーア
「おい、キュピル。何をやっている」
キュピル
「ミーア・・!よく気付いたな」
ミーア
「私に変装は効かない。それより早く戻るぞ。カジ達がトラバチェス兵に見つかったようだ」
キュピル
「な、なんだって!?」
ミーア
「今逃げているようだ。捜索はこの辺にし撤退すべきだ」
キュピル
「・・・いや、まってくれ。どうしても知らなければいけない情報がある。」
ミーア
「何だ?」
キュピル
「敵はとんでもない兵器を持っている。生物兵器だ。これを使われてはアノマラドは三日も持たない」
ミーア
「・・・それでどうしたいんだ?」
キュピル
「重要な書類は一枚しか見つからなかった。この書類に続きがあるはずなんだが会議室に見当たらなかった。
考え付くのは一般兵士には見せられない事が乗っているのでは?っと思った。
だから隊長の部屋に入った。そしたらそこに金庫があったわけだが番号が分らない。
この中に書類の続きがあると思うんだが・・」
ミーア
「・・・そこをどいてほしい」

キュピルが横にずれる。
ミーアが座り込みダイヤルを回し始めた。

キュピル
「分るのか?」
ミーア
「静かに」

・・・・。

・・・・・・・・。

突然ミーアが立ち上がった。諦めたのだろうか。

ミーア
「ダイヤルの番号は解除出来た」
キュピル
「す、すごいな。。しかし鍵が・・・」
ミーア
「・・・・」

ミーアが針がねのような物を取り出し鍵穴の中に差し込んだ。

キュピル
「キーピックか?」
ミーア
「いや、購買部で買った魔法のキーピックだ。罠や魔法によるロックも解除してくれる」
キュピル
「・・・購買部便利な物売ってたんだな・・。買えばよかったな・・・」
ミーア
「50万Seedだったがそれでも買うのか?」
キュピル
「・・・・た、高い・・。やっぱ物理破壊で・・・」
ミーア
「・・・・ふっ、確かにそれも一つの手段だな・・・。
・・・開いたぞ。必要な書類を早く探すといい」

キュピルが金庫の前に座り込む。たくさん書類があると思ったがそんなに多くなかった。
その中で赤いファイルがあった。他は普通の色なのにこれだけ赤いのはいかにも怪しい。

キュピル
「・・・・これか?」


『〜PEST-K65について その2

なお、PESTについては今後の研究によっては他の国に負けない最高の兵器になりうる素質がある。
まだまだ研究の余地が残っているが被検体が足りなくなっている。
そのため反問する兵士、不審者、重要でない人質を捕まえた場合は実験体として使用するため
本土へ送るように。その際特別給付金を支給する。』

キュピル
「・・・他にもまだ何か書いてあるな」

『〜PEST-K65の突然変異

ペストを改良したことによって未確認の症状も発見されている。
感染したものはリンパ節が腫れだし呼吸困難、筋肉痙攣を同時に起こすのが一般的だが
極稀に異常な発熱を起こし体温が無限に上昇しそのまま発火する症状があった。
現在これについては研究中ではあるが自由自在に操作できるようになれば
新たな平気として使える可能性がある。

〜PEST-K65の突然変異 その2

極稀にペストに感染しても生存する実験体もいた。
最長でも二日で死ぬペスト。だが一部の被検体は死なず異常行動が見られた。

*突然訳のわからない奇声をあげる

*人物の認識が出来なくなり形振り構わず襲う

*全身の皮膚が膨らみだし耐物理攻撃に対する耐性を得る。

特に最後の特徴については今後の研究によっては新たな材料として使える可能性がある。』

ミーア
「・・・PEST-K65か。これについてはもっと詳しく調べた方がよさそうだ」
キュピル
「・・・他にも書類があるようだ」

ページをめくると何故かオルランヌに関する情報があった。


『〜同盟関係

三日後、オルランヌはアノマラドを襲撃。
オルランヌにはわが軍の最新技術を詰め込んだ戦車、武器を提供している。
その条件として二日以内にアノマラドの一つの都市であるフィー城下町を制圧してもらう。
そこにオルランヌ全軍集結したのを確認したらアノマラドを完全包囲するようにバリケードを展開せよ。
バリケードが完成し逃げ道を失くしたのを確認したら空からPEST-K65を散布。
そのまま両軍ともに壊滅させよ。

なお、PEST-K65を散布開始した瞬間からオルランヌとは同盟を破棄する。
その直後全軍用いてオルランヌを襲撃する』

キュピル
「なんて奴らだ!!」
ミーア
「オルランヌを囮、踏み台にするだけではなくそこから更に乗っ取るか・・・。」

この書類も重要だ。

キュピル
「・・・まだまだこの赤いフォルダには重要な書類が一杯つまっているな・・」
ミーア
「ここで全てを確認する暇はない。」
キュピル
「・・これごと持ち帰るか?」
ミーア
「・・・少なくとも指揮官が金庫を開けた瞬間に誰かが忍び込んだのがばれるな」
キュピル
「逃げれば問題ない。」

その時金庫の奥に何かもう一個あるのに気付いた。

キュピル
「・・・なんだ、これは?」

奥に小さな冷蔵庫のようなものがあった。
中をあけてみると何本かの試験管と注射器があった。

キュピル
「空洞の試験管と液体の試験管があるな・・・」

どれも試験管には蓋がされている。

ミーア
「・・・気をつけろ。空洞の試験管にはPEST-K65が含まれている可能性がある」
キュピル
「ってことはこの液体の試験管はワクチンなのか?」
ミーア
「分らない。もしかすると別の生物兵器かもしれない。迂闊に蓋をあけるものではない」
キュピル
「・・・しかしこれほど危険な兵器なのにこんな平然と置くだろうか・・・。一歩間違えばトラバチェスが壊滅するぞ」
ミーア
「・・・・一理ある。しかしPEST-K65ではないという証拠もない」
キュピル
「そうだな・・・。・・・これ持って行ってアノマラドに渡せないか?もしかしたら対策できるかもしれない」
ミーア
「・・・危険すぎる。万が一落として割ったらただじゃ済まないぞ」
キュピル
「・・・・確かに危険すぎるな・・・。今はやめておこう」

一旦冷蔵庫のふたを閉める。

ミーア
「・・・!誰か来るぞ」

ミーアがキュピルの腕を掴んで呪文を詠唱した。
すぐに二人とも透明化した

ミーア
「(動くな、動いたら透明が消える。)」
キュピル
「・・・・・」

部屋にやってきたのは指揮官だった。
・・・戻ってきたのか。
後ろに何人か兵士もいる。


一般兵士
「逃走者八名、確保しました」
指揮官
「ハルララスの報告では10人いたはずだ!二人がまだ逃げている。早く探せ!!」
一般兵士
「はっ!」

そしてそのままどこかに行ってしまった。

キュピル
「(・・・皆捕まったのか)」
ミーア
「(今後の事について考えなくてはならない)」

そしてすぐに指揮官が異常を察知した

指揮官
「・・・金庫があいてるだとぉ・・・?かっ!!!」

怒鳴り散らす。
そして武器をもって再び外に出た。
コソ泥か拠点内のどこかにまだいると思ったのだろうか?

ミーア
「・・・他の場所へ移動しよう」
キュピル
「他の皆はどうする?」
ミーア
「まずはここにとどまろう。今逃げても捕まるのが落ちだ」
キュピル
「そうだな・・・」


一旦指揮官の部屋から出る。
そして一番眺めの良い場所に上った。
本来なら監視兵がいるはずなんだろうが全員拠点の中央に集合していた。

よくみるとそこに捕まった皆がいた。



ジェスター
「ギーンー!魔法で全員倒してー!!」
ギーン
「ちっ・・・呪文封じか・・・。唱える事ができないか・・・」
カジ
「・・・仕方あるまい。まずは様子を見るべきだ」
ファン
「いくら僕が四足であるからって足全部縛る事ないでしょう!!
しかも逆さにして運ぶとか・・まるでこの後丸焼きにされるような感じじゃないですか!」
カタリ
「ファンの・・・」
ダイン
「丸焼き・・・・」

・・・・・・。

ファン
「・・・・それよりどうにかしないといけませんね・・・」
トラバチェス兵
「黙れ貴様等!」

そういってトラバチェス兵が剣を引き抜き一番前にいたギーンを剣で斬った
頬から血が流れる。

ギーン
「ぐっ!!・・貴様ぁぁぁ!!!」
ルイ
「(どっちが敵だか分りませんね・・・)」

トラバチェス
「喋った奴から剣で斬る!!首を斬られることも覚悟することだな!」

こう言われては迂闊に喋る事は出来ない。

ジェスター
「・・・キュピル・・・・」
トラバチェス兵
「何か言ったか!?」

誰も首を動かさなかった。




キュピルとミーアもどうすることもできずそのまま高い所から眺めているだけだった。
しばらくすると全員別の場所に移動させられた。かなり頑丈そうな建物の中に入れられている。

キュピル
「あの作りからして牢屋ではないだろうか?」
ミーア
「一時的に拘束か」
キュピル
「・・・ミーア。早く皆を助けないと大変なことになる」
ミーア
「何故だ?」
キュピル
「PEST-K65のことについてだ。
書類に色々書いてあっただろ?」
ミーア
「・・・本土へ送り飛ばす、か」
キュピル
「んむ・・・・。・・・このまま放置するのはかなりまずいぞ」
ミーア
「本土へ送り飛ばす所を狙えば救出できるかもしれない」
キュピル
「ワープだったらどうする?」
ミーア
「・・・まずはカジ達が閉じ込められている場所に行こう。そこから判断すればいい」
キュピル
「そうだな・・・しかしどうやって忍び込む?完全に警戒モードに入っているぞ」
ミーア
「キュピル。お前はトラバチェス兵の服装を着ている。それで普通に行けばいい。」
キュピル
「ミーアは?」
ミーア
「私なら問題ない。ソロならばな。連携して中に入り込むぞ」
キュピル
「・・・わかった。危険だけど行こう」


二人とも準備を整えて下に降りる。
キュピルはそのまま何事もなかったかのように拠点の中を歩いて行く。
既に下ではバラバラになって行動していたため何の問題もなく紛れる事が出来た。

ルイやジェスター、ファン達が連れて行かれた建物の前まで移動する。
目の前に見張りが二人いる。中に入ろうとしたが止められた。

トラバチェス兵
「待て、許可証を示せ」
キュピル
「(許可証か・・・そんなものはない・・・。残念だがこれ以上入る事は・・・)」

が、その時突然

トラバチェス兵
「・・・ぅぁ。・・・・入っても構わん」
キュピル
「・・・?」

とりあえず中に入る。何故か何の問題もなかった。
その時ミーアから通信が入った。魔法で送られているものだ。

ミーア
『入口の二人は秘術で人物操作した。これで中に入れるはずだ』

どうにかしてメッセージを送り返そうとしたが魔法で直接脳に呼びかけているらしく
魔法が上手に扱えないキュピルに取って送り返す方法が見つからなかった。
しばらくすると再びミーアから連絡が入った

ミーア
『・・・そういえば上手く魔法が扱えないのだったな・・・。そのまま奥に潜りこんで構わない。
私はお前の傍にいる』
キュピル
「そ、傍だって・・・!?」

思わず小さな声で喋ってしまった。
当たりを見回してもミーアは見つからない。

ミーア
『・・・忍びを学べばこのぐらいは誰でも出来る。』
キュピル
「(どこにいるのか分らない・・・・)」

とにかくミーアの指示に従ってこのまま奥に進むとする。
直角の狭い曲がり角を曲がると階段が下に伸びていた。

キュピル
「(・・・地下か・・・)」

思ったよりこの拠点は大きいのかもしれない。
確かにアノマラドを包囲するつもりでいるんだ・・・。
前線の拠点はすべてこのぐらい立派なはずだ。

地下に降りるが明りがない。
横に蝋燭を乗せた皿を見つけそれを持って下に降りて行った。
小さな火が辺りを照らす。それでも足元は暗くジメジメとしていた。

キュピル
「・・・・・」

しばらく階段をおり続けると目の前に鋼鉄の扉が現れた。
鋼鉄の扉は重く引っ張るとギギギという不快な音が響いた。
開いた隙間から光が漏れだす。

キュピル
「・・・・!」

扉の先はかなりしっかりとした作りになっていた。
かなり広く電気がついていた。
通路は無限に伸びており終わりが見えない。
そして目の前に M−5 と書かれた看板があった。

キュピル
「(これは一体どういうことなのだろうか・・・)」

通路の幅自体はそんなに広くないのだが奥行きが半端ない。
あの巨大なバリケードの下に通路がある形なのだろうか・・・

ミーア
「これはまた大層な作りの部屋に出たな」
キュピル
「うおっ!・・・どこだ・・・!?」

今度は直接ミーアの声が聞こえた。しかしどこにいるのか分らない。
が、よーくよーく見ると壁と同化しているミーアを見つけた。

キュピル
「そこにいたのか・・・。カメレオンみたいだな」
ミーア
「変色している。・・・よく気付いたな」

全身に巻いている包帯の色が通路と同じ色をしていた。
細かい色の違いもしっかり反映している。
その包帯はそういう効果があったのか・・・。

キュピル
「声が聞こえなければ分らなかった。しかしこれは一体どういうことなんだ・・・」
ミーア
「・・・情報を探すしかない」
キュピル
「しかしこれだけ通路が伸びていると移動の気力が削がれるな・・・。」
ミーア
「・・・通路の床を見てみろ。」
キュピル
「ん」

よくみると黒い線みたいなのが所々ある。
これは一体なんだ・・・?

ミーア
「・・・車輪を使った移動用の乗り物があるのだろう。
これはブレーキをかけた時に残った跡だろう」
キュピル
「・・・なるほど。確かにこれほど広いと乗り物の一つや二つはあるはずだよな」

すれ違いするほどの広さがあるかどうかの問題もあるが・・・。
ということは他の皆はそれに乗せられて移動させられた可能性が高い。
さて・・・左右のどちらにいこうか・・・。

ミーア
「私は右に行こう。・・・キュピル、左に行け」
キュピル
「わかった。」
ミーア
「何かあったら連絡を出そう。・・・そっちから連絡出せないのは少々困るが問題ないはずだ」
キュピル
「ところでギーンやルイ達にその魔法のメッセージを送ることはできないのか?」
ミーア
「呪文封じを受けている。残念ながら弾かれて届かない。」
キュピル
「そうか・・・。わかった。左に行く。右は頼んだ」
ミーア
「そっちも頼む」

そういってミーアは再び姿を消した。正確には同化したのだ。

キュピル
「(あれは絶対に見つからないな・・・)」

ひとまず左へ進もう。








ルイ
「・・・ここは・・・」

地下に連れて行かれる際催涙スプレーをかけられそのまま全員意識を失ってしまった。
目が覚めた時には全く光のないくらい場所にいた。

ルイ
「・・・誰かいますか?」
ギーン
「・・・その声はルイか」
ルイ
「あの、一体何が・・・」
カジ
「どうやら我々は何処かに連れて行かれたようだな。・・・地面は揺れていない。
正真正銘、檻に投獄されているようだ。意識が戻っている者は声をあげろ」
ファン
「はい」
ダイン
「起きてるぜ」
カタリ
「ちくしょー・・。目がいてぇや・・・。」
ピア
「ああああーーー。ぜー!!ぬさーん!!」
ダイン
「な、何て言ってるんだ。誰か翻訳してくれ」
ルイ
「ミーアさんがいませんから・・・」
ピア
「あ、げなジェスターは?」
ファン
「・・・ジェスターさん。起きていますか?」

返事がない。まだ気を失っているのだろうか?

ファン
「・・居ないのか気を失っているのか分りませんね・・・・」
ダイン
「明りは?明りはないのか?」
ギーン
「・・・魔法が使えん。これではライトを唱える事が出来ん」
カジ
「ギーン。全て魔法に頼ろうとするな。ふん!」

カジがポケットから紙屑を取り出した。どんな技術を使ったのか分らないが
紙屑が燃えだした。

カタリ
「すげー!!どうやったんだ、今の!?」
カジ
「無事に生きて帰ったら教えてやる。一筋縄じゃいかないぞ」
カタリ
「へへっ、刺しても死ななさそうな奴がよくいうぜ」

燃えてる紙屑の上に木屑やゴミなどを突っ込む。たちまち大きな火となった。

ファン
「・・・ジェスターさんがいません!!」
ピア
「あーげなー、ジェスターらてるん?」
ルイ
「・・い、言ってることが分りません・・・」
ピア
「んばー!!」
ルイ
「お、怒らないでください・・・」
ギーン
「それより何故あの白いチビがいない。別の部屋に連れて行かれたか?」
カジ
「・・・ジェスターは人間じゃないからか?」
ファン
「それを言ったら僕は人間ではありませんし・・・」
カタリ
「ピアもある意味人間じゃねーぜ」
ピア
「んばばー!!」
カタリ
「お、怒るなって」
ルイ
「ジェスターさん・・・。」
ファン
「・・・今はキュピルさんとミーアさんに託すしかありませんね・・・」





キュピル
「・・・なんだ、この部屋?」

今まで色んな鉄の扉を見つけたが
この扉だけ合成板材とレアメタルで作られている非常に強度の高い扉になっている。
・・・何かあるな。
しかしこの扉に取っ手が付いていない。・・・そもそも扉ではないとか?
では何故ここだけこんな強度の高い扉になっているんだ・・・。
試しに前に立って見る。自動ドアとかではなかった。

キュピル
「・・・・・ふーむ・・・」

その時目の前に扉が突然横にスライドされ開いた。
トラバチェス兵が現れた。だが普通の服装ではない。
かなり密閉性が高く気密性の服になっていた。まるで宇宙服のようだ。

トラバチェス兵
「・・・!そこで何をしている!!」
キュピル
「!!」

突然襲いかかってきた!
ここは一般兵が来ていい場所じゃなかったのか・・・!!
流石にこの自体は想定していなかったため油断していた。突然敵に取り押さえられてしまった。
振りほどこうとしたが敵の力が強い。

キュピル
「くそっ!離せ!!」
トラバチェス兵
「黙れ!!」

踵が尖っている靴で思いっきり敵の脛を蹴った。

トラバチェス兵
「うがっ・・!がっ!!」
キュピル
「くたばれ、このやろ!!」

敵の拘束が解けそのまま取っ組み合いが始まった。
敵を殴り飛ばしダウンさせるとそのまま敵の腹に剣を突き刺した。

キュピル
「(危なかった・・・。しかしこのまま死体を放置してはまずい)」

一旦開いた扉の中に入る。
入った部屋の角に適当に頬り込んでおいた

キュピル
「(さて、ここは・・・?)」

右の壁に精密機器がたくさん並んでおり真正面に二つの扉があった。
左の壁には本棚が置いてあり色々並んでいる。部屋自体はそんなに広くはない。
大体教室と同じぐらいの広さだろうか。

二つの扉は開くかどうか試してみるが二つとも鍵がかかっていた。
鍵穴は存在していなかった。

キュピル
「(これもか・・・)」

その時扉の向こうから聞きなれた声が聞こえた。

「・・・誰?」

キュピル
「ん・・・。その声はジェスターなのか!?」
ジェスター
「キュピル!?ここどこ?助けて!!」
キュピル
「助けるから落ちつけ。そっちの部屋はどうなっている」
ジェスター
「狭い部屋・・・!それしかわかんない!!」
キュピル
「なんとかしてここを開けるから待ってろ」

恐らくここの鍵を解除する方法はこの精密機器が関係しているはずだ・・・。
二つモニターがある席に座る。
右側にはジェスターが映し出されていた。
部屋の中の壁を手で触って出口がないか調べている。


・・・・しかしどうすればいい?
全く操作が分らない。

キュピル
「・・・ん、この書類は・・?」

精密機器の上に紙の束が置いてあった。
それを手に取り呼んでみる

『〜実験室の取り扱いについて

現地にPEST-K65を取り扱う事が出来る設備が整っており
尚且つそれを操作する資格、知識を持つ者がいる場合現地にて実験を行う許可が降りる。
その際の研究データーの保存することを怠らないように。
研究データーを本部へ送る事によって特別給付金が支給される。

また、特定の種族の研究データーが大変不足している。
このPEST-K65は全ての種族に対して有効でなければならない。
人間以外のデーターは大変貴重であるため支給される金額もいつもより倍に跳ね上がる。』


ここの部屋はPEST-K65に関する実験室のようだ。
・・・ということはジェスターは今被検体になっているということか・・・!?
既に実験済みなのかどうか早急に確認しないといけない

キュピル
「ジェスター!そこに連れてからどのくらいの時間が経ったかわかるか!?」
ジェスター
「ここの部屋に入れられたのは10分ぐらい前だよ!何か部屋から
機械の音が聞こえる・・・」


部屋から機械の音・・・?


その時アナウンスが鳴った


『Operation situation check

・・・・。

Abnormality none。
PEST-K65 will be jetted to the specimen material in Five minutes.
It is not possible to interrupt. 』


キュピル
「む、むむむ・・・・」

部分的な所しか分らなかった。
システムチェックした所異常はなかったので5分後にPEST-K65を、どうたらこうたら・・・。
そして中断することは出来ない・・・!!

何にせよここまで分れば言える事は一つ。

キュピル
「(ジェスターにペストを噴射する気だ・・・)」
ジェスター
「キュピル?さっきの何て言ってたの!?」

答えてる暇はない。どうにかしてジェスターを脱出させないと・・・!!
しかしどうやって操作すればいい・・・。
中断することは出来ないと言っていた・・・・。

・・・それならば扉を開けさせれば・・・・。

あの扉はかなり頑丈に出来ている。とても壊せるものではない。


扉をあけるには・・・・どうしたらいい・・・・・。


精密機器のモニターに触れてみる。画面が立ち上がりメインシステムの画面に入った。
扉開放の項目を見つけロックを解除できないか試してみたがパスワードを求められてしまった。

当然パスワードなぞ分るわけがない。


キュピル
「(くっ・・・。何か・・・何か扉を開ける方法・・・・!!)」



・・・・・。

『remainder Three minutes.』


残り3分・・・・。

・・・その時ある事を思った。


・・・ペストを噴射した後そこに漂っているペストはどうなるんだ・・・?
ここで既にジェスター以外の人物にも実験したことあるはずだ・・・。
モニターで映し出されてる部屋の床に血痕が残っている事が物語ってる

ということはペストを排気させる場所がどこかに存在する・・・
あるいは死体を何処かに移動させる装置がある・・・。
または大量の消毒液をばらまく噴射口がある・・・。

上記二つはジェスターを感染させる前に移動させることができる。
三つ目は・・・扉を開けるまでの時間稼ぎにすぎない。放置すれば間違いなく感染する。

メインシステムに戻り何かそういう類のものがないのか適当にタッチして探し始める。
その時「Exhaust」という文字があった。
・・・排気。

キュピル
「これだ・・!」

ボタンを押す。
するとどこの部屋を排気させるか選択肢を求められた。
とりあえずAllというボタンを押した。

「Execution」

キュピル
「実行できた・・・!!」


席から立ってジェスターのいる扉の前まで移動した


キュピル
「ジェスター!!今排気させた!どこか開いたはずだ!そこに移動するんだ!!」
ジェスター
「あ、開いてるけど・・・手が届かない!!!」
キュピル
「な、なんだって!!」

届かない・・・。ジェスターの身長ゆえの問題か・・・。

キュピル
「飛べないのか!?」
ジェスター
「天井だから無理!!高すぎるよ!!」
キュピル
「くそ・・・!!」


「remainder Two minute」


後2分・・・。くそ・・・!このまま引き下がれるか・・・!!

隣の扉の鍵が空いてるか確認する。
被検体がいないためなのか鍵が空いていた。
そして天井のハッチが空いてるのに気付いた。

もしかすると繋がっているかもしれない。

さっきの部屋に戻り机に椅子にパソコンに足場になるものをドンドン積み上げていく。
なんとか天井に手が届く程度の足場が出来た。
天井に登ろうとする。しかし排気口は樹脂で作られておりパイプ型で
そのまま真上に伸びており登る事はできそうにない。

キュピル
「ならば壊すまでだ!!」

樹脂で作られているパイプを剣で斬る。
パイプに切れ目が出きその穴を無理やり広げて通った。
すぐ目の前にもう一本のパイプがあった。このパイプを切れば
ジェスターのいる部屋に降りる事ができる・・・!!

根元からざっくり斬る。


キュピル
「ジェスター!!」
ジェスター
「キュピル!!」

ジェスターがジャンプする。しかし天井に届かない。

キュピル
「今そっちに降りる!」

キュピルがジェスターにいる部屋に天井から降りた。


「remainder one minute」


残り一分


キュピル
「ジェスター、俺の肩の上に立て」

キュピルがしゃがむ。キュピルの言う通りに動くジェスター。
ジェスターの足をしっかり掴んで転倒させないように立ち上がった。

キュピル
「ここから飛べば届くか?」
ジェスター
「ジャンプするよ!」

思いっきり蹴りあげてジャンプする。髪を上下にパタパタ動かして少しだけ浮力を得る。

ジェスター
「んーーー!!!」

少し失速した当たりで天井にとどいた!
そのまま天井裏に入った

ジェスター
「キュピル!上ったよ!」
キュピル
「ここは危険だ。すぐ隣にあるパイプの切れ目から隣の部屋に入って外に脱出してくれ。
そしてここの実験室から逃げてくれ。」
ジェスター
「キュピルはこの後どうするの!?天井に手届くの!?」
キュピル
「なーに、策がある。すぐに追いつく」
ジェスター
「・・・絶対だよ!!」
キュピル
「今まで裏切ったことないだろ。もう時間ない。早く行ってくれ!!」

ジェスターが頷く。
しばらくして隣の部屋に移動する音が聞こえた。

ジェスター
「早く来てよ!」
キュピル
「おう、今天井に手が届いたところだ」

・・・本当は届いていない。

ジェスター
「外で待ってるから!」

重たい扉が開く音が聞こえた。そしてガシャンという音も聞こえた。
・・・あの長い通路に無事出れたようだ。
もうここには戻れまい。


「Warning announcement
PEST-K65 is jetted to the・・・」




音が聞こえなくなった。

覚悟を決めて目を閉じる。
後悔はしていない。

アディールの言っていた事を俺は守っただけだ・・・・。






誰かを救うなら・・命を惜しむな!!!
大切な奴がいるなら・・
尚更だ!!!!












キュピル
「せめて研究データだけでも残させない・・・。
あの世で・・見守ってる」














30分経ってもキュピルはやってこなかった。


ジェスター
「キュピル・・・?キュピルー・・・。
・・・・ねーキュピルー・・・・」

扉の前でぼそぼそ呟くジェスター。
強い不安に押しつぶされそうだ。
その時誰かがやってきた。

ミーア
「・・・!ジェスター!!無事だったのか」
ジェスター
「ミーア・・・。この中にキュピルがいるんだけど・・・。すぐ来るって言ってたけど
来ないの・・・」
ミーア
「・・・・!しまった・・・。」

手に持ってる地図を広げる。
先程ここの拠点の地図を手に入れキュピルと合流して皆を救出しようと思っていたのだが・・・。

ミーア
「さっきからメッセージが届かなかったのはこの扉のせいだったのか・・・」

この扉に呪文抵抗が施されていた。
元々は破壊されないようにかけられていたのだろうが・・・。

地図には ペスト-研究所 と書かれていた。

ミーア
「・・・・・。」
ジェスター
「キュピルー・・・。ミーアも待ってるよ?まだ・・・?」

既に皆がどこにいるのかは地図と手に入れた情報で分っている。
ジェスターを連れてそこに移動しなければならない。
しかしこの様子では移動しようと言っても移動してくれそうにない・・・。
少し可哀相だが・・・

ミーア
「・・・・。ジェスター。どうやらキュピルは先に進んだようだ」
ジェスター
「先に進んでる・・・?」
ミーア
「そのようだ・・。本人曰くトラブルに巻き込まれてやむを得なく別の道を使わざるを得なかったと言っている。
合流ポイントを別にする」
ジェスター
「魔法でそう言ってきたの・・・?」
ミーア
「・・・そうだ。勉強熱心な飼い主さんだな。」
ジェスター
「なーんだ。変に心配しちゃった。早くいこー?」
ミーア
「・・・ああ」











「The testee's death was confirmed.
The cause of one's death is a large amount of hemorrhage. 」

(被験者の死亡が確認されました。死因は出血多量です




続く



第十話



キュピルは死んだ。ミーアはそれを察したがジェスターに言うには酷だった。


ミーア
「次の次の扉に入れば皆がいるだろう」
ジェスター
「そこにキュピルがいるの?」
ミーア
「・・恐らくは。しかしもしかしたら来ていないかもしれない。
その時はまた別の安全ポイントで合流するまでだ」
ジェスター
「わかった」

通路を走り抜ける。道中に敵に出会うことはなかった。
ここは滅多に使われない通路なのだろうか・・。
目的の扉まですんなり辿りついた。

ミーア
「・・・ここも鍵がかかっているのか」

重要な部屋ほど扉が謎の作りになっている。
鍵穴がなくドアの取っ手もない。ただ部屋の名前だけが扉にかかれている。
地図や目印がなければ扉だということすら分らないだろう。

ミーアが扉に触れる。

ミーア
「・・・なるほど、ここもこういう作りか」
ジェスター
「わかるの?」
ミーア
「さっき扉に関する情報を手に入れたからな」

ミーアがぼそぼそと何か呟いたかと思うと扉が左にスライドするように開いて行った。

ジェスター
「凄い!どうやったの?」
ミーア
「ここの扉は特定の魔法を感知すると開く仕組みになっていたようだ。
扉が求めているEMPの数値分だけ魔力を送れば開く仕組みだ。」
ジェスター
「へぇー」

扉の先は完全に真っ暗だった。廊下の光で少しだけ見えるが光が漏れていなければ
完全に暗闇で見えないだろう・・・。
ミーアが人差し指を上にあげる。指先から小さな球体が現れた。
その球体が強く光りだし辺りを照らしだした。

ギーン
「・・・この魔法はライト・・・!?」
ピア
「あ!!ミーア!!」

周りが明るくなって初めて部屋の作りがわかった。
複数ある牢獄の一つに皆閉じ込められていた。

ファン
「ミーアさん!」
ルイ
「ジェスターさんも無事だったんですね!」
ジェスター
「うんー。キュピルのお陰で助かった!」
ルイ
「キュピルさんは?」
ミーア
「彼は今訳ありで別行動している。合流する予定ではいるが・・・」
カタリ
「どうでもいいけど早く開けてくれー。ここ湿ってて不愉快だぜ」
ダイン
「ついでに言葉の通じない奴と巨体もいるわけで中々辛かった・・・」
ピア
「・・・?」
カジ
「巨体だと?ミジンコめ」
ダイン
「そんなに小さくない!」
ミーア
「今開ける」

ミーアが牢屋の鍵穴にキーピックを差し込む。
しばらくしてキーピックが勝手に変形し鍵の形となった。そのまま鍵穴を回し扉を開いた。


カタリ
「サンキュー!!」
ピア
「ミーアーー!!」
ミーア
「・・心配してくれた気持ちはありがたいがくっつくな」
ピア
「げにひんーとーしーあんだったのに」
ミーア
「それは私も同じだ」
ファン
「いつにまして分らないですね・・・」
カジ
「無駄話はここまでだ。脱出するとしよう。それでミーア。ここについて何か分った事はあるか?」
ミーア
「この地図を見て貰いたい」

ミーアがカジ達に地図を見せた。それはここの地下通路の地図だった。

ギーン
「・・・縮尺1:10Kmだと・・・。」
カタリ
「なんだよ、なんだよー!!敵の拠点はこんなに広いのか!?」
ファン
「・・・複数の拠点が使っている通路のようです。いわゆる連絡路って奴でしょうか・・・」
ミーア
「その通りだ。そしてこの通路はアノマラドの境界線の下を通るように作られている。
・・・話さなければならないことが沢山ある。だがここでは敵がくる可能性がある」
ルイ
「どうするんですか?」
ミーア
「この地図によると物資を保管している部屋がこの近くにある。
倉庫は滅多に人が訪れない。・・・ついでに腹を満たしたい」
カタリ
「かー、同意だぜ・・・。もうまる一日何も食ってねーし水も飲んでないから死にそうだぜ・・・」
カジ
「腹が減っては戦は出来ぬ。」
ダイン
「カジが言うと物凄く似合う一言だな」
ミーア
「さっそく向かおう」

ミーアを先頭に全員ぞろぞろと通路に出て言った。
倉庫に向かう途中トラバチェス兵三人と出くわしたが数の暴力で叩きのめした。
連絡される前に倒せば問題ない。



==倉庫前


ミーア
「この扉だ」
カジ
「・・・取っ手がないぞ、この扉」
ジェスター
「ひらけーゴマ!」
ルイ
「ジェスターさん・・違いますよ・・・」
ミーア
「・・・ギーン。ここの扉を開けるにはEMP146の魔法を使って扉に認識してもらわねばならない。
誤差なしにやってもらいたい」
ギーン
「問題ない」

ギーンがドアに触れる。が、その瞬間バチバチと火花が散った

ギーン
「んぐっ!!」
ミーア
「・・・やはりか・・・」
ギーン
「おい、貴様。今なんて言った」
ミーア
「気のせいだ」

カタリとダインとルイが顔をそむけさせ笑いをこらえていた。

ミーア
「扉には電気が通っているようだ。ゴムが必要だな」
ピア
「ゴーム!!」

ピアがオルランヌ戦の時に使ったゴムを取り出した。

ファン
「ゴムを通解させてドアにEMPを送るのはかなり難しいです。
ゴムの性質上魔法を変化させてしまいEMPを下げてしまいますから・・・」
ギーン
「ふん、問題ないと言っただろ」

ギーンが再びゴムを持って扉に魔法を発した。
見事に扉が開いた。
やれやれ、とでも言いたげなポーズをとるギーン。

カタリ
「飯ー!」
ダイン
「水よこせー!」
ギーン
「・・・・・・・・・・」
ミーア
「ギーン。めげるな」
ギーン
「めげていない・・・」
ジェスター
「何かギーンが可愛く見えてきた」
ギーン
「・・・いらん同情だ」


==倉庫


倉庫内は暗かったがライトという魔法で問題ない程度に明るくなった。
山積みのダンボール箱に鍵の掛かっているコンテナ・・・。

カタリ
「お、水の入ったペットボトル見つけたぜ!」
ダイン
「ナイス!」

何人か集まって水をごくごく飲み始めた。

ジェスター
「生き返るー」
ダイン
「・・・空きっぱらに水ってでもちょっと辛いな・・・」
ルイ
「こっちに軍用食見つけましたよー」
カジ
「・・・レーションか」

飲んだり食ったりする皆。
心に抱え込んでいた不安はこの時だけは消えてくれた。

ミーア
「・・・皆ちょっといいか?私とキュピルが見つけた情報を皆に教えたい」
カジ
「倉庫ならば滅多に人は来まい。」
ギーン
「何を見つけた」


まずはペストに関する情報を全て話した。
この書類はすべてキュピルが持っていたため何らかの方法を使って書類だけは回収しなければならないが・・。
ペストについて話した時皆の表情は硬くなっていた。



ダイン
「なんて兵器だ・・・」
ギーン
「・・・オルランヌがアノマラドに猛攻してる最中にオルランヌ兵ごとこのペストで倒そうというわけか・・」
ファン
「トラバチェス・・・。かなり恐ろしい国です。同盟結んでるように見せかけてオルランヌも乗っ取ろうとしています」
ジェスター
「・・・私、さっきこれにやられようとしてたんだ・・・。よかったー・・・」

ジェスターがホッと胸をなでおろす。

ミーア
「・・・ジェスター。少し話を聞いていいか?」
ジェスター
「ん?何の話?」
ミーア
「・・・向こうで聞いてもいいか?」
ジェスター
「うん」


二人が輪から一旦はずれる。
少し遠くまで移動し他の人に聞こえない場所まで移動した。


ミーア
「・・・ジェスターはあの実験室に閉じ込められていた。それは合っているな?」
ジェスター
「うん」
ミーア
「その時キュピルがやってきてジェスターを助けた。これも合っているな?」
ジェスター
「合ってるよ」
ミーア
「その時の話を詳しく聞かせてくれないか?」
ジェスター
「えーっと・・・。まず変なアナウンスが鳴って・・・。キュピルが今助けるって言って
しばらく待ってたら天井の排気口が開いたの。そこからキュピルが降りてきて・・」
ミーア
「・・・天井の排気口?」
ジェスター
「うん。隣の部屋から私のいた部屋に天井裏を通って来たみたい。
その後キュピルの肩の上に立って勢いよくジャンプしてちょっと飛んでやっと天井に届いた感じ。」
ミーア
「・・そして脱出した、と?」
ジェスター
「うん。でもキュピルはどうやって脱出したのかな?キュピルでも天井に届きそうもないのに。
隣の部屋に机とか椅子とか一杯置いてあって足場作ってたよ」
ミーア
「・・・・・」

再度キュピルに魔法のメッセージを送って見る。
もしあの部屋から本当に脱出しているなら・・・届くはずだ。

・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

頭に自分の発したメッセージが戻ってきてしまった。
・・・届かなかったようだ。
帰ってくる条件は二つ。

*距離が開きすぎている、または呪文抵抗が施されている部屋にいる
*対象が存在しない(または死亡している

ミーア
「・・・・」

ペストの餌食になったのか・・・?
・・・いや、もしかしたら呪文抵抗が施されている部屋にいるのか・・・・。

ミーア
「わかった、もういい」
ジェスター
「キュピルは今どこにいるの?」
ミーア
「通路のようだ。ある部屋で調べ物しているようだが・・・」

もちろん嘘である。

ミーア
「・・・戻ろう」
ジェスター
「うん」



カジ
「戻ったか。」
ファン
「この後どうするか考えないといけません・・・」
カタリ
「ペストの事を早くアノマラドに伝えようぜ!!なんとかして俺達の居場所を守らねーと!」
ギーン
「・・・馬鹿な国がまた勝手な事をしでかす・・。これ以上トラバチェスを放置させるわけにはいかない」
ダイン
「トラバチェスをぶっ潰す!」
カジ
「元気なのはいいことだが全て難しいぞ」
ギーン
「・・・アノマラドに戻るのはリスクが高すぎる。オルランヌの猛攻を避けつつアノマラドに行った所で何になるか。」
ファン
「話して仮に信用してくれたとしても対策立てるのに少なくとも三日では足りませんね。それに三日で
辿りつけるかどうかも怪しいところです」
ルイ
「トラバチェスを倒すってのも・・・難しいと思います・・・。私達だけで流石に国一つは・・倒せませんよ・・・」
ピア
「校長死ねー!」
ダイン
「ぶっ!!」
カタリ
「ピアお前それ最高だぜ」
ギーン
「・・・校長・・。あの時取り押さえていればな・・・」
カジ
「悔いても仕方がない。皆はどうしたい」
ルイ
「・・・ペストを散布するのを阻止したいです」
ファン
「同意です」
ジェスター
「私の家を守るー!」
ダイン
「そりゃおれもだ」
カタリ
「同じく。簡単にやられてたまるかよ、へへっ」
ギーン
「同意だ」
ピア
「ミーアは?」
ミーア
「同じだ。」
ピア
「ならわしもー!」
ギーン
「付和雷同してどうする・・・」
カジ
「・・・ではどうやってペスト散布を阻止する」
ミーア
「・・・キュピルがペストの書類について色々持っていたはずだ。
何とかしてキュピルと合流せねばならない」

確かまだ最後まで見ていない書類があったはずだ・・・。

カジ
「ふむ。それならばキュピルと合流しよう」
ミーア
「・・・ギーン」
ギーン
「何だ」
ミーア
「耐ウィルスを施すことはできるか?・・・もしかするとキュピルはペストに侵されているかもしれない」
ルイ
「え!?」

ファン
「どういうことですか!?」

ルイとファンは驚きの声を上げジェスターは唖然としていた。

ミーア
「・・・侵されていないかもしれない。どっちともいえない。」
ギーン
「・・・耐ウィルスか・・。・・ペストの性質が分らねば施すことはできない。
サンプルが必要だ」
ミーア
「・・・サンプルか」

・・・そういえば地上の隊長室の部屋にペストらしき物があったかもしれない。
しかしそこまで戻らなくてはいけないのか・・・。

ミーア
「・・・記憶上あった場所は覚えている。しかし時間がかかる。」
ダイン
「キュピルからこっちには来れないのか?」
ミーア
「・・・閉じ込められている可能性が高い。さっきから通信が届かない」
ジェスター
「ねぇ、さっきから私に言ってた事と違うよ!?」
ルイ
「ジェスターさん。落ち着いてください・・・」

ルイがジェスターを抱きかかえる。ルイの腕の中でジタバタするジェスター。

カジ
「ではミーアがサンプルを取りに行ってる間に我々はここで何か使えるものがないか探しておこう」
ミーア
「わかった」
カタリ
「頼んだぜ、ミーア。」
ミーア
「何かあったら通信を出す」
ピア
「ワシも行く!」
ミーア
「・・・ピア。二人だと見つかる可能性が高い。ここで探し物をしてほしい」
ピア
「んばー!」

そういってミーアは部屋から出ていった。


カジ
「では使える者を探そう。まだ腹一杯じゃない奴はそこから飯を食え」
カタリ
「この飯まずいぜ・・・」
ダイン
「粉っぽいな・・・」
カジ
「文句を言うな」

ピア
「んばばー!!」

ピアが何か怒りながら色々探し物をしている。

カタリ
「ピアは掘り出し物を見つけると真っ先に欲しがるからな。
あいつ今凄く楽しいんじゃないのか?へへっ」
ダイン
「お、見ろよ。剣があるぜ。・・・でも俺のカトラスに比べりゃ質が悪いな」
カタリ
「俺の武器は片手槍だからなぁ・・。ちょっと異質だから中々見つからないぜ」
ギーン
「・・・」

ギーンがカギのかかっていたコンテナを魔法で解錠する。
中にはたくさんの銃器が入っていた。

ルイ
「おぉ!銃器です!」
ギーン
「ぐわっ!」

ルイがギーンを突き飛ばしてコンテナの中に入った。

ルイ
「凄い!凄い!!ハンドガンに自動小銃にロケットランチャーにショットガン!
武器が凄い揃ってます!」
カタリ
「・・・・ルイってあんなに銃器マニアだったのか?」
ファン
「随分前からですね」
ルイ
「ちょうどショットガンが欲しかったんですよねー・・・。」

ルイが鞄を降ろして中身を取り出す。
必要な弾薬をそろえた。

ルイ
「これは・・・アンチマテリアライフルですね」
カジ
「そいつなら知ってる。対装甲車や戦車などに使われる銃器だな。生身の人間では真っ二つだ」
ルイ
「これは・・ちょっと私には扱えませんね・・。大きすぎます」
カジ
「RPG-7は取り扱っているのにか?」
ルイ
「というよりは・・少しアンチマテリアライフルは威力が強すぎて・・倒した跡が辛いんです」
カジ
「ふむ。なら我輩が使わせていただこう」
ダイン
「ん?カジ。いつから我輩って使うようになった」
カジ
「何を言っている。前から我輩と言っていたぞ。たまに俺とも言うがな」
カタリ
「我輩とも言ってたぜ。」
ピア
「んむ!」
ファン
「たまに言ってましたね」
ダイン
「・・・なんだよなんだよ・・。俺だけかよ!知らなかったの!」
ルイ
「(私も知らなかったです・・・)」

カジが背中にアンチマテリアライフルを背負った。
巨剣と交差するにように装着している。

ルイ
「まるで死神ですね・・・」
カジ
「死神は鎌だろう」
ファン
「銃は指かけるところが小さすぎて僕は扱えません・・・」
ジェスター
「・・・・じゃぁ何であんな精密な機械工作が出きるの?」
ファン
「あれは持てます」
ジェスター
「えー。わかんなーい・・」

ギーンが隣のコンテナを開けた。そこには治療道具が一杯あった。

ギーン
「・・・包帯にポーションに救急箱か」
カジ
「それは携帯したほうがいい」
ダイン
「だけど鞄もってるのルイだけだ。一個ぐらいしか運べないぞ・・・」
カジ
「これだけ倉庫が広いのだ。何か携帯袋とかはあるだろう」
ピア
「んんー」

ピアがいつのまに山積みとなっているダンボール箱の上にいた。さっきから
レーションとかぽいぽい投げている。

ジェスター
「いたっ!・・・こらー!」
ピア
「んばばー!!」
ジェスター
「んばばばばー!!」
ルイ
「・・・何語なんでしょうか・・」
ピア
「あーったー!」

ピアがポーチなどをポイポイ頬り投げてきた。

カジ
「バックパックか。銃器は入れられないだろうが回復道具や小道具を入れるには十分だ」
カタリ
「このデザインかっこいいな。へへっ」
ギーン
「・・・魔法があれば治癒は楽だがあるにこしたことはないな。
治癒魔法使える奴も少ないしな」
ルイ
「私は使えますよ」
ファン
「僕も一応」
ギーン
「・・・後は俺だけか」
ダイン
「ユーファがいればなぁ・・・」

皆小屋での出来事を思い出してしまった。
突然死んだハルララスとユーファ・・・。

カジ
「・・・振り返っても何も戻らん。」
ファン
「そうですね・・・」
ジェスター
「ねールイー・・。私これ付けると動きにくいー・・・」
ルイ
「ジェスターさんは身長があまり高くないですから確かにつけると動きにくいかもしれませんね・・・」
ジェスター
「リュックがいい!」
ルイ
「ハイキングじゃありませんから・・・」
ジェスター
「ルイは肩にかける鞄だけど動きにくくないの?」
ルイ
「私は慣れてますから。それにすぐ取り出せるという利点もありますし」
ジェスター
「おー・・」

大分必要な荷物がそろってきた。
銃器の殆どはルイが持っている。
当分弾薬は尽きないだろう。ルイの他にも何名か小さな銃器は所持している。
治療道具や食料、水は全員持っている。一応ミーアの分も用意しておいた。

カジ
「荷物をまとめたか?」
ダイン
「大丈夫だ」
カタリ
「いけるぜー」

全員準備がよさそうだった。
丁度その時ミーアが帰ってきた。

ミーア
「・・・気をつけろ。脱走しているのがばれている」
カジ
「早いな」
ギーン
「それでサンプルは持ってきたのか?」
ミーア
「こいつだ」

ミーアが二本試験管を持ってきた。
一つは何も入っていない試験管。もうひとつは液体が入ってる試験管。

ダイン
「・・・この空の試験管の中にペストがいるんだな・・・?」
ジェスター
「気持ち悪い・・・」

ジェスターが想像したらしい

ギーン
「・・・・」

ギーンの手が光っている。分析しているらしい。

ギーン
「・・・間違いなく生物兵器だ。少しでも人体に取り込んだらただではすまない。
・・・。バリアを張っても貫通するようだ。かなり強く・・そして凶暴に出来ている。
だがアルカリ性に弱いというのは普通のウィルスと同じだ。分析は完了した。」
ピア
「みとえきんは?」
ミーア
「右の液体は?と言っている」
ギーン
「・・・こいつは分らない。何かのベース・・・か?人体に害はないようだが・・・。」
カジ
「壊さないように保持しよう。だがそのペストが入っている試験管はどうする」
ギーン
「持って行く。」
ミーア
「・・・危険だ」
ギーン
「魔法で完全に密閉させる。衝撃を与えても壊れなければ問題ない。」
ミーア
「・・・それが出来るならばいいが上級魔法の一つだ」
ギーン
「ふん、馬鹿と一緒にするな」
カタリ
「おーおー、言ってくれるねツンデレギーンちゃん」
ギーン
「だからその名前で呼ぶなクソが!!!」
カジ
「・・・ではキュピルと合流しよう」


倉庫から出る。出た瞬間いきなりトラバチェス兵と遭遇してしまった。

トラバチェス兵
「!!そこにいたか!」
ジェスター
「えいっ!!」

ジェスターが先制攻撃を仕掛けた。鉄の棍棒が敵の腕に直撃した。
そのまま地面に倒れてもがき苦しんでる。

カジ
「哀れな」
ミーア
「キュピルはこっちにいる」

ミーアが皆を連れて先程の実験室の部屋まで移動した。
道中トラバチェス兵にあったのはあの兵士一人だけだった。




==ペスト研究室 入口


ギーン
「・・・合成板材にレアメタルで作られた扉か。これはかなり強度が高い。
呪文抵抗も施されている・・。かなり重要な部屋なんだな」
ジェスター
「・・・ここにまだキュピルがいるの・・・?」
ミーア
「・・・・・・・・・」
ジェスター
「さっきここからは脱出したって言ってたよね?」
ミーア
「・・・・・・・・・」
ジェスター
「ねぇ!!」
ルイ
「ジェスターさん・・。キュピルさんは簡単には死にませんよ・・・。信じましょう」
ジェスター
「・・・・・・・・・・・」
ミーア
「この扉を開けた瞬間ペストが漂っている可能性が高い。いや、確実と言っていいだろう。
バリアをここで張ったほうがいい」
カタリ
「だけどよぉ・・。ここの扉を開けた瞬間そのペストが通路にも漏れだすんだぜ?
そこからどんどん広がってたらどうすんのさ」
ギーン
「ここを境界線にして膜を張ればいい。アルカリ性の膜を張り続ければウィルスは通ってはこれない」
ダイン
「魔法で出来る事と出来ない事がよくわからないぜ・・・」
ギーン
「バリアも張っておく。だがバリア張れるのはせいぜい二人ぐらいまでだ。
…それ以上は魔力が持たない。それ以上は中に入るな。」
ルイ
「魔力が持たない・・・もしかしてギーンさん。MPが・・・」
ギーン
「・・・たび重なる魔法の発動で体に残っているEMPが少なくなってきている。
・・・ルイ。手伝え」
ルイ
「命令系で言わないでください・・・。手伝いますけど・・・」
カジ
「中には誰が入るんだ」
ミーア
「ジェスターの証言によると鍵のかかったドアがあるらしい。
キュピルは天井から侵入していったが帰れなくなった可能性がある。
精密機器があるらしいが・・・。機械に強い奴と力のある奴がいくといいだろう」
ジェスター
「・・・私も行く」
カジ
「いや、ジェスターでは力が非力だ。我輩が行く」
ジェスター
「私が行く!!」
ファン
「ジェスターさん。気持ちはわかります。ですがここは力のある人に任せましょう」
カジ
「もしも中にキュピルが居たら連れて来てやる。そのぐらい構わないだろ?ギーン」
ギーン
「・・・流石に人まるごと膜で消毒出来るとは思えないな・・。部屋の手前までなら構わない。
荷物は通しても大丈夫だ。」
ファン
「機械に関しては僕に任せてください」

二人にアルカリ性のバリアが張られる。
あまり長く続かないようなのでてきぱきと動く事にする。

中に入ると精密機器が並んでいた。
その奥に扉が二つ。ミーアがいっていたのはこれだろうか。

カジ
「・・・ファン、ここのロックを解除してほしい」
ファン
「えーっと・・。ここからメインシステムに入れるんですね」

ファンがカタカタとキーボードをタイプしていく。
途中パスワードを求められた。

ファン
「・・・なるほど、それならシングルユーザーモードから侵入していきましょう」
カジ
「・・・なんだ、そのシングルなんちゃらとは」
ファン
「この精密機器の基本はLinuxという者をベースに作られていますね。
その中にシングルユーザーモードというのがありまして・・・」
カジ
「・・・もういい。作業を続けろ」

一度再起動させた後ファンがまたカタカタとキーボードをタイプし始めた。
黒い画面に青い画面・・・。
するとさっきとは違う画面にたどり着いた。

ファン
「ここでパスワードを再設定できるんですよ。全部98765にしちゃいましょう」

ファンがパスワードの変更させる。

ファン
「これで行けるはずです。」

さっきの画面に戻る。扉の開放を選択する。パスワードを求められた

ファン
「98765・・っと」

解放という文字と共にガチャという音が聞こえた。

ファン
「開きました!」
カジ
「あけるぞ」

カジがバッと扉を開ける。だが何もなかった。
念のため確認として隣の扉も見たが同じく何もなかった。

カジ
「・・・・どういうことだ。」

キュピルとジェスターが居たと思われる部屋に血痕が残っている。
かなり新しく指で触れると血液が付着する。

カジ
「・・・何もなければ撤退だ。ファン、戻るぞ」
ファン
「はい」



二人とも廊下に戻った。キュピルの安否を気にしてかジェスターが一番初めに聞いてきた。

ジェスター
「どうだった・・・?」
ファン
「キュピルさんは居ませんでした。恐らく脱出してると思います」
ジェスター
「ほっ・・・」
ミーア
「・・・居なかった?・・・キュピルはどこに行ったんだ」
カジ
「天井裏も少しだけ見たが排気口の蓋が空いていた。・・・ジェスターの証言通りここの部屋で合っているはずだ。
・・・しかしキュピルはいない」
ダイン
「ってことはあいつまだ生きてるってことだよな?」
ルイ
「だといいんですけど・・・」
カタリ
「でもこれで振り出しってことなんだよなー・・・。ちぇー」
カジ
「いや、振り出しではない。奴を探せばいいだけのことだ」
ギーン
「・・・流石のあいつも単独で行動し続けようとは思っていないはずだ。
ルイやファンにジェスターを残しているわけだしな」
ミーア
「・・・もしかするとキュピルはここの入り口を通っていないかもしれない。」
カタリ
「どういうことだよ?」
ミーア
「ここでジェスターは30分待ち続けていた。しかしキュピルはここには現れなかった。
だが室内にはペストが蔓延していた・・・。・・・天井だ。もう一度天井裏を見よう」
ファン
「それとももしかすると他のルートがあったのかもしれません。
もう一度メインシステムを探ってみるのもありかもしれません」
ギーン
「・・・MPが本格的に底を付き始めている。てきぱきと調べてほしい。」
ルイ
「一応手伝います」


再びギーンとルイが魔法を詠唱する。扉の付近にアルカリ性の膜が現れミーアとファンにバリアを張った。
扉を開けるとそれぞれ自分の思った事を実行していった。



==天井裏


ミーアが天井裏に上がるとまず目についたのは破れた樹脂製のパイプと穴のあいたパイプだった。
ここはジェスターの証言通りではあるが・・・。

ただ一つ気になる事もあった。

それはもう一つ隣に樹脂製のパイプがあることだった。

ミーア
「(・・・実験室は二つだけじゃない・・ということか?)」

ここの樹脂製のパイプを切ればその部屋にいけそうだ。
・・・しかし通じていた部屋の扉が空いていた場合、ペストは間違いなく通路にも流出する。
そうなった場合手の施しようがなくなってしまう。

ミーア
「・・・ここは一旦下がろう」




ファン
「えーっと・・・えーっと・・・」

ファンがカタカタとキーボードをタイプし続ける。
他のパスワードをどんどん変更させて解除させているようだ。
その中で気になる項目を見つけた。

『ダストシュート』

ファン
「・・・ダストシュート?」

試しに押そうと思ったが丁度ミーアが降りてきても困るのでやってきてから押すことにする。
そう思っていたら丁度ミーアがやってきた。

ミーア
「どうだ」
ファン
「今ダストシュートっていう気になる項目を見つけました」
ミーア
「ダストシュート?」
ファン
「処理場みたいですね。どうやら死体はそのまま運ばずに直接床が開く等で
死体を動かしていたんでしょうね」
ミーア
「・・・それかもしれない。ファン。試しに押してもらえないだろうか」
ファン
「はい」

ダストシュートのボタンを押す。
その直後ガタンと大きな音が鳴った。
ミーアが確認しにいくと先程の実験室の床が無くなっていた。
そして床の下には大きなパイプが繋がっていた。斜めになっており
素足ならば上り下りできそうだ。

ミーアがそのままパイプの中に入りゆっくり降りて行くといきなり変な物を見つけた。
一瞬何かと思ったがどうやらパイプが詰まっているようだ。
詰まっている物はどうやらたくさんの夥しい死体のようだ・・・。

ミーア
「・・・・」

そのまま下に降りると見たことある物が置いてあった。
それはキュピルのコートと剣だった。

ミーア
「・・・これは」

ミーアがコートと剣を手に取る。
一体何故こんな場所に・・・。まさかここにキュピルの死体でもあるのか?
そう思って捜索するがそれらしきものは見つからない。比較的新しい死体のはずだが
ここにあるのは全て腐敗しきったものばかりだ。
・・・・一旦戻る事にする。



==通路


ギーン
「・・・っく!」
ルイ
「どうしました?」
ギーン
「本格的にMPがなくなってきた・・・。おい、早く出てこい。バリアが消えるっ・・・!!」

ファンとミーアが慌てて通路に飛び出し扉を閉めた。その瞬間バリアと膜が消えた。

ルイ
「危なかったですね・・・。何か見つかりました?」
ミーア
「興味深いものを見つけた。」

そういってキュピルのコートと剣をジェスターに手渡した。

ジェスター
「・・・あ!これキュピルが身につけてたもの・・・」

ちょっと汚れてるが確かにキュピルの物だった。
コートのポケットに何かファイルみたいなのが入っている・・・

ミーア
「・・・それだ。ペストに関する書類は」

カジがファイルを手に持った。

カジ
「こいつにペストの散布を止めさせる方法が乗っていればいいんだがな・・・」

ダインとカタリがカジの近くに寄って一緒に読み始めた。
最初のページはミーアから聞かされた物と一致した。
途中から読んでみる。


『ペストの配合

ペストは人工的に作られたウィルスである。
そのため配合を間違えると新たな生物兵器に変化、あるいはウィルスが破壊される恐れがある。
しかしこの配合によって新たな生物兵器が作られてるのもまた事実だ。
安易な配合は基本厳禁とする。しかし有力な情報と研究データーがあるときに限り配合を許可する。
ここに式を記入する。

・・・・




・・・読めない。
細胞やら遺伝子やらそれっぽそうな絵が並んでおり
その下に化学式がズラッと並んでいた。

カジ
「ファン。分るか?」
ファン
「見せてください」

ファンが手に取り見始める。
二分ぐらいしてからファンが喋った

ファン
「・・・難しいです。今はこの式は解き明かさなくてもいいかもしれません。」
カジ
「そうか。では別のところを読むとしよう」

カジがページをめくろうとした瞬間だった。
物が転がる音が聞こえた。

ルイ
「・・・グレネードです!!」

とっさに皆音のしなかった方に飛び込んだ。そして次の瞬間盛大な爆発が起きた。

ダイン
「敵か!?」

煙が立ち込める通路の奥から大量のトラバチェス兵がなだれ込んできた。

ミーア
「まずい、逃げるぞ」
ルイ
「くっ!!」

ルイがスモークグレネードを敵に投げつけた。催涙効果のある煙が辺りを覆う
その隙に全員反対方向へ逃げ込んだ。
が、反対側からも敵がやってきた!

ダイン
「挟み撃ちか!!」
ギーン
「同時突入させるためにあえてすぐに攻撃してこなかったのか・・・!」
カタリ
「やべぇって!数が多い!!」
カジ
「応戦してる暇はない!強行突破だ!!血路を開け!!


全員武器を構え突撃していった。
カジを先頭に次々と飛び込んでいった。

カジ
「邪魔だ」


広い薙ぎ払い攻撃で敵を吹っ飛ばす。
接近してくる敵には出の早い蹴り技で悶絶させる
すると突然敵が後ろに下がり始めた。

カタリ
「よっしゃー!早くも撤退していくぜ!追撃だ!」
カジ
「調子に乗るな、防御しろ」
カタリ
「え?」

カジの読み通り敵は銃を取り出し後退しながら弾幕を張ってきた。
この狭い通路で回避するのは不可能だ。

ミーア
「ふんっ」

ミーアが前に出る。
そして大量の針を投げ続けた。針と銃弾がぶつかり威力を相殺しあっている。
・・・究極の動体視力。

ルイ
「目には目、銃には銃です!!」

ルイがさっきの倉庫で拾った新しいマシンガンを構え乱射し始めた。
が、こちらが攻撃を始めると向こうは攻撃を止め盾を構えて防御し始めた。
そしてルイが銃弾を打ち切りリロードする瞬間に再び敵が大量の弾幕を張ってきた!

カジ
「邪魔だ、吹き飛べ!!」

カジが背中に背負っているアンチマテリアライフルを一発発射する。
盾ごと敵を吹き飛ばした。
敵の陣が崩れ始めた。

ギーン
「ちっ・・・」

ギーンが不器用な手つきでハンドガンを持って応戦している。MPを完全に切らしていて
魔法で攻撃することが出来ないようだ。
全く関係ない方向に飛んで行ってる。

ルイ
「貸してください!」
ギーン
「なっ!」

ルイがギーンからハンドガンを奪い取ると両手にハンドガンを持って的確に敵を打ちぬき始めた。

ルイ
「斬りこんでください!!」
ダイン
「切り込み隊長の俺に任せろー!!」
カタリ
「ひゃっほーい!!」

ダインがカトラスを持って突撃しにいった!敵に弾かれる事なく次々と敵を切り倒し
敵陣深く攻め込みに行った。カタリも細い槍で次々と敵を突き刺しに行った。

ピア
「んんんんーーー!!!」

ピアが大きな魔法を詠唱している。
蒼く長い髪がバタバタと上に舞い上がる。
そして手に持っている望遠鏡を前に突き出した

ピア
「たぁっー!!」



望遠鏡から巨大な稲妻が飛んで行った。
あまりにも大きく、そして威力のでかい稲妻。
空気が振動を起こしている。

ダイン
「なっ!俺らごと撃ちぬく気か!?」
カジ
「伏せろ!!」

全員伏せる。カジが邪魔だったのか後ろでピアが詠唱していたとは知らず
伏せ遅れたトラバチェス兵が次々と巻き込まれていった。

カタリ
「ばかやろー!!俺ごと撃ちぬく気かー!!」
ピア
「えっへへー」
ミーア
「ピア、気をつけろ」
ピア
「んばー!」

しかしピアの放った攻撃のおかげで敵は今度こそ後退モードに入った。
追撃しつつ逃走ルートを確認する。

ファン
「脱出ルート調べておきますので書類と地図を渡してください
ミーア
「承知」
カジ
「頼む」

カジが書類をバサッと地面に落とした。
ミーアは投げてきた。
二つとも受け取りペラペラとページをめくりながら脱出ルートを調べ始めた。

ジェスター
「う、後ろからも敵が来たよー!!」
ルイ
「もう一度スモークグレネードを・・・!」

ルイがスモークグレネードを投げた。
が、敵にキャッチされてしまい投げ返されてしまった!!

ルイ
「!!!」
ジェスター
「えいっ!!」

ジェスターがキュピルの刀をバットの代わりにして跳ね返した。
煙をまきちらしながら再び敵の方に飛んで行った。

ジェスター
「遊び心満載!えっへん」
ルイ
「(刀の本当の使い方・・・)」

その時ファンが叫んだ。

ファン
「脱出ルート見つかりました!」
カジ
「何処だ」
ファン
「・・・ここをもう一個下に降りると線路があるようです。
線路があるということは機関車等があるということだと思います。
それに乗ればこの状況から脱出できると思います!」
ギーン
「おい、その線路の先には何がある」
ファン
「・・・乗って見なければ分りません。地図が途中で区切れてます」
ダイン
「一か八かの作戦って奴か、好きだぜそういうの」
カジ
「このままここに居てもやられてしまう。ただやられるのならばその希望にすがろう」
ルイ
「物資的にも圧倒的に不利ですしね・・・。」

ファン
「こっちです!」

ファンが行き先を示す。それに皆従って行った。
ある扉に入ると地下へ続く階段があった。階段へ下りる途中再びルイがスモークグレネードを投げつけ
敵の足どめをした。

階段を50段ぐらい降りると再びドアが見えた。
が、その時扉にある物が見えた。

ギーン
「・・・パスワード付きのドアだと!?」

ドアノブを回すには先にパスワードを入力してロックを解除しなければ開閉することができないタイプだ。
・・・もちろんパスワードなぞ知らない。

ミーア
「鍵穴がない・・か」
ギーン
「更にこいつは合成板材とレアメタルを使われた屈折の耐久力を持つ扉だ。
簡単に壊す事はできないぞ」
ダイン
「書類にパスワードはないのか!?」
ファン
「今調べてます!!」

ファンが必死に書類をペラペラをめくる。
しかしそれらしき記事は一向に見つからない。

カジ
「調べる必要はない」
ファン
「え?何ででs・・」

ファンが言おうとした瞬間カジが思いっきり電子ロックされてる扉を殴った。


ガンッ!!





扉が少し崩れた
それを見て何人か震えあがった。

カジ
「ふんっ!!!」


ガンッ!!




どんどん扉が削れていく。
少しずつだが確かに削れている。
そうこうしてるうちにとうとう敵兵士がなだれ込んできた!!

カジ
「ぶち壊れろ!!!」

そういってカジが背中に背負ってるアンチマテリアライフルを連射した。
ついに扉に大きな穴が空いた!!


カジ
「早く逃げろ!!」

小柄な人間なら何とか潜り抜けれそうな穴。
先にカタリが入り続いてダイン、ミーア、ピアと次々とその穴を潜って行った。

ジェスター
「カジー!後はカジだけだよー!」
カジ
「先にこいつらを始末してから行く」
ジェスター
「無理だよ!早く穴通って来て!」
カジ
「我輩にはその穴は小さすぎる。早く行け、すぐに向かう。」
ジェスター
「そう言ってキュピルが私の前から居なくなった!」
カジ
「キュピルはまだ死んでないと思ってるはずだ。ならば我輩も生きて帰るだろう。早く行け」
ジェスター
「・・・・来てよー!!」

そういってジェスターが先に進んだ。

ダイン
「カジはどうした?」
ジェスター
「・・・食い止めるって」
カタリ
「なんだって!?無茶だぜ!!」
ギーン
「・・・行こう」
カタリ
「おいおい!カジを見捨てる気かよ!!」
ギーン
「・・いずれこうなることは見えていた。デイドラ族は人一倍仲間思いの種族だ。
・・・奴の期待に添いたければここは進むぞ。ペストを止めたいんじゃなかったか?」
ジェスター
「カジは死なないよ!絶対。私が言うからにはね!えっへん」
ダイン
「その言葉信じてるぜ」
ファン
「こっちです!」

ファンが場所を示し皆その後に続いて行った。
少し空気がひんやりしている。
足音が通路内に響く。

ファン
「ここの扉を開けて更に進むと線路があります!」
ミーア
「鍵がかかってるが任せろ。鍵穴がある」

ミーアが魔法のキーピックを鍵穴に通す。
カチッと音が鳴り扉が開いた。

ミーア
「・・・行くぞ」

扉の先は曲がり角の多い通路だったが三分ぐらい走り続けると
目の前にモノレールのようなものが見えた。

ファン
「あれです!」
カタリ
「誰があれ操作するんだよ?」
ファン
「ちょっとあれは・・僕には動かせないです・・。説明書がないと・・・」
ダイン
「俺に任せろー!乗り物関係は強いんだ」
カタリ
「まじかよー。なんか怖いんだけど」
ダイン
「うっさい」
ファン
「お願いします」

全員乗りこむ。

ダイン
「なるほど、これがブレーキレバーでこれがアクセルか。」

ダインがピッピと色々操作する。

ダイン
「発進するのに15分ぐらいかかりそうだぜ・・・。カジがそれまで凌いでくれてれば・・・。」
ルイ
「カジさんとキュピルさんを待ちましょう・・・。」
ギーン
「もし敵が来たらどうする」
ミーア
「・・・その時は発進する。間に合っていればな」
ジェスター
「・・・キュピル・・」

ジェスターがコートと剣を強く握りしめる。

ルイ
「ジェスターさん。そのコートと剣、つけてあげましょうか・・?」
ジェスター
「うん」

ルイがジェスターにコートを着させ剣を腰に結びつけてあげた。

ジェスター
「前にもこの剣、腰に結びつけたね」
ルイ
「そうですね・・・。」
ファン
「無事だといいんですが・・・」





==階段


カジ
「ふん!」

巨剣を振り回す。これ以上進めないと判断した敵は後ろに再び引いた。

カジ
「む」

カジがアンチマテリアルライフルを構える。
案の定敵がグレネードをいくつも投げつけてきた。
それも数え切れないほどだ。完全に潰す気だ。
これで終わり・・・そう敵は思った。しかし

カジ
「かかってこい!!」

カジがアンチマテリアルライフルをグレネードごと撃ちいた!!
物凄い爆風が襲いかかった。

カジ
「んぐがっ!!」

強烈な熱風で扉に叩きつけられた。それは敵も同じく通路の方まで爆炎が届いたようだ。

カジ
「っく・・・。・・・む・・」

今の爆炎でドアの穴が更に広がっている。
これなら通れるかもしれない。

・・・まだ生きれるということは・・彼等をまだ守れるということだ・・。

ここでくたばってたまるか。

そう自分に言い聞かせ力を振り絞って立ち上がる。

カジ
「お土産付きになるな・・・」





20分ほど経過した。
一向に二人とも現れない。
その間にファンが書類を眺めていた。

ファン
「・・・やはりこの先の道に何があるのか分りませんね・・・」
ギーン
「他の事を調べたほうがいいのではないのか?」
ファン
「そうですね。今僕達が一番知りたいのは
ペストを積んでる航空機は何処にあるのか、っていうことですね。
それさえ見つけれれば魔法で殺菌なり何なり色々出来るんですが・・・」
ミーア
「だが我々に残されてる時間は後二日半だ。
・・・一カ所に集まってなければ難しい」
ギーン
「逆にペストの培養が難しかったらどうなる。一つの研究所で培養できるペストが限られていると。
そうなれば一つに集中している可能性もあるだろう。
一カ所に集中すればその分管理のリスクも減る。」
ダイン
「難しい話だな・・・。俺達が向かう先に研究所があればいいんだけどな」
ルイ
「散らばってたら・・・どうしましょう・・」

その時足音が聞こえた。
全員音の聞こえた方に振り向いた。

ルイ
「・・・あ・・・!!カジさんです!!

巨剣を杖にボロボロになりながらも必死にこっちに向かって走ってきている。

カジ
「我輩が乗ったら・・早く出発しろ!」
ジェスター
「でもキュピルが・・」

そう言おうとした瞬間後ろから大量のトラバチェス兵が迫ってきたのが分った。

カタリ
「げぇっ!!カジの奴いらないお土産もってきたぜ!!」
カジ
「ふんっ!!」

カジが最後の一発を敵に向けて発射した。
敵が吹き飛ばされ時間を稼いだ。
その間にカジが電車に乗る。

ダイン
「発射するぞ!」

ダインがアクセルレバーをググッと引く。扉をあけたままそのまま発進していった。

ピア
「こわか!こわか!!」
カタリ
「扉閉めろって!」
ダイン
「わかってる」

ダインが扉を閉めた。


カジ
「くっ・・・少し火傷の傷が大きいか・・・」
ルイ
「カジさん、治療します・・・」

ルイがヒールを唱える。
治りは遅いがMP効率に優れる。

カジ
「・・・!キュピルか!?・・・・っと思ったらジェスターか・・」
ジェスター
「うん、私。」
カジ
「その黒いコートはやはり目立つな」
ルイ
「ちょっと渋いですよね」
カタリ
「黒のコートと対照的な赤い剣を身につけてるけどな。へへっ」
ミーア
「・・・あいつは何処に行った・・・」
ダイン
「スピードマックスで行くぞー」


彼等を乗せたモノレールははたしてどこへ行く・・・。









==???





繰り返される記憶。
そう、あの時と似ている・・・・。

あの時も気を失った時、今みたいに過去の記憶が繰り返された。
ビデオテープを見ているかのように何度も再生し見続け見終わったら巻き戻してまた再生する・・。

今日も外は紅月か?それとも普通の月か?それとも別の属性を宿った月か?


・・・紅月だ。


今こそあの時の契約を交わさん。



続く



第十一話




タイムリミットは残り二日



==アノマラド フィー城下町



偵察兵
「報告します!!オルランヌ全軍がトラバチェスの最新兵器を持ってこちらに向かっています!!
あと二時間で到着との見込みです!」
指揮官
「なんだと・・・。数はどのくらいだ!!」
偵察兵
「およそ50万・・・・!!」
参謀官
「ご、50万!?ば、ばかげた数だ!!そんな大軍で攻められては我々が張った罠なぞ関係ないじゃないか!!」
偵察兵
「更に長距離砲撃弾や爆撃機も確認・・・また支援兵に強化魔法を扱う魔術師なども確認したという報告も・・」
指揮官
「・・・くっ・・。なんていうことだ・・・。我々に託されている兵士は10万・・・。
しかしここはアノマラド防衛の要・・・。ここが落とされてはアノマラドの被害は急速拡大する・・!
至急増援の通達を送れ!」
偵察兵
「はっ!!」
指揮官
「増援が来るまで耐え凌げ!奴らが近づいてくるまで罠とバリケードを作るのだ!!」






オルランヌ兵
「目標補足。RG-15発射!!」

長距離砲弾がフィー城下町に向けて発射された。
その3分後に城壁に刺さり大爆発を起こした
しかしバリアを張っていたお陰で大きな損傷はない

指揮官
「報告がなければ危なかったな・・・。
全軍北口の門前で待機せよ!ギリギリまで引き付けてから突撃するのだ!!
城下町にネズミ一匹通すな!!」
アノマラド兵士大勢
「オォッー!!」

槍や剣、騎馬隊から狙撃隊と全員が門前に待機する。
一部は櫓の上に待機している。

指揮官
「(勝負は援軍が来るまで・・・。援軍は明日までには来るだろう・・・。
・・・それまでは絶対にここを守りとおす・・・!!)」
偵察兵
「報告!!報告!!!」
指揮官
「どうした、そんなに慌てて。」
偵察兵
「トラバチェス国内にて不穏な動きを察知しました!
いくつもの航空機が発射準備を整えているとのこと・・・」
指揮官
「・・・爆撃か!?・・・いや、それならばなぜタイミングをずらして発進する・・・。
・・・何か裏があるな・・・・」
偵察兵
「更にトラバチェスに侵入者が忍び込んでおり破壊工作を行っているという情報も・・・」
指揮官
「・・・破壊工作だと?・・・一体誰がやっている。そのような指示は聞いてないぞ」
参謀官
「そのような指示はこちらも出しておりませんぞ・・・」
指揮官
「・・・ということは第三者の国が・・?・・・しかし可能性は低い・・・」
偵察兵
「引き続き調査を続けます・・・」


いよいよ戦いが始まろうとしている。






==トラバチェス地下基地 車内



ダインが操縦するモノレールはまだ目的地に到着していなかった。


ダイン
「時速120Kmでもう三時間も経過してる・・・。一体どこまで続いてるんだ・・」
ルイ
「ですけど久しぶりの休息ですよね・・。」
カジ
「んむ・・・」

カジが包帯などを使って自分の傷を治療している。
自分で治療できない者はカジやミーアなどに手伝ってもらっている。

カタリ
「通路での闘いの時俺無傷だと思ってたのに少し経って自分の体見ると
結構撃たれてるんだな・・・。あいっててて・・」

ギーン
「かすり傷だ。我慢しろ」
カタリ
「ちぇー」
ルイ
「私もかすり傷程度はしてますね。ちょっとひりひりします・・」
ファン
「無傷です」
ジェスター
「私も。・・・でも前に出てないからなんだよねー・・」
ピア
「ぬははー」

ピアがポーズをとっている。

ミーア
「私も無傷だと言っている」
ダイン
「・・・本当にそう言ったのか怪しいもんだ」
ミーア
「事実だ」
ダイン
「つーか、俺も腕をちと斬られちまってな・・・。まぁ浅い傷だけど」
カジ
「皆しっかり回避の心得はあるということか。ここまで深手を負った者がいないことに驚愕している」
ギーン
「おい、深手負ってる奴いるぞ。お前だ」
カジ
「この程度傷のうちに入らん」
ギーン
「・・そんな大火傷と深い傷を受けていてよくそんな言葉が言えるな。無理するな」
カタリ
「お?ギーンが人の事心配してるぜ。へへへ」
ギーン
「少なくともお前等と違ってカジは優秀な戦闘員だからな。くたばってもらっては困る」
カタリ
「おいおいおい!俺だって優秀な戦闘員にちげーねーぜ!」
ダイン
「俺もだあああー!」
ルイ
「元気ですね。今のうちに装備の点検でも・・」

ルイが銃器をカチャカチャ弄り始めた。
標準装備を決めてカスタマイズしているらしい。

銃をカスタマイズさせながらルイが呟く

ルイ
「・・・私本当に人を殺してしまったんですね・・・」
カジ
「銃の扱いに長けているというのに銃を持つのが嫌か」
ルイ
「私が銃を持ったのはあくまでも遊びでしたから・・・。」
カジ
「悔むのは全て終わってからにしておいた方がいい。今ここで悩むと
お前は間違いなく心が折れるぞ。」
ルイ
「・・・・はい・・」

ジェスター
「・・・ねぇ、キュピルは大丈夫だと思う?」
カジ
「奴の荷物と剣だけが残っていた。・・・だがキュピルの姿はなかった。
何故荷物と剣を残したのか?それとも落としたのか?
謎が残っている。」
ジェスター
「・・ねぇ、ミーア!キュピルに魔法でメッセージって送れる?」
ミーア
「・・・繋がらん」

ジェスターがしゅんと落ち込み髪が下がる。
が、その時急ブレーキがかかった。

ダイン
「うわっ!!あぶね!!!!」
ジェスター
「ぎゃぁー!!」

終着点に近づいてると気付いていなかったらしく目の前に壁が見えてから初めてブレーキをかけた。
当然止まることはできず、そのまま壁に激突した。

ギーン
「ぐおっ!?」
ピア
「んばばばばー!!!」

壁を突き抜けてそのままモノレールが進み脱線しつつもようやく止まった。

カタリ
「あいってててて・・・。ダインー!くそやろー!!」
ダイン
「悪かった!」

それと同時にアラームが鳴った。

カジ
「おい、壁を突き抜けた先に敵が居るぞ。通路にモノレールがめり込んでやがる」
ファン
「これ以上ない襲撃ですね」
ルイ
「いててて・・・。頭を打ちました・・・。」

すぐに敵の攻撃が始まった。
こちらも応戦する。モノレールの壁がトーチカの代わりになっている。

ギーン
「ちっ・・数が多いな・・・」
ダイン
「ルイ、しっかりしてくれ。一番銃の扱いが上手いのはお前なんだからさ」
ルイ
「ちょ、ちょっと・・頭が・・・。武器貸します・・・」

ルイが頭を押さえダインにマシンガンを渡した

ルイ
「AKL-47です・・。かなりスタンダードな武器なので扱いやすいはずです・・」
カタリ
「俺にも貸してくれよ!」
カジ
「馬鹿もの。お前等には接近武器があるだろ!来い!!」

カジがモノレールから降りて通路に飛び降りた。
すぐに銃弾が飛んできた。

カジ
「うおおおおおぉぉぉぉぉぉっっっっっっっ!!!!!!!」



カジが雄たけびを上げる。一瞬地鳴りのようなものが響くぐらいだった。
敵が一瞬怯んだ瞬間カジが物凄いスピードで敵ひとりに接近し巨剣で斬り裂いた。

カタリ
「ひゃっほー!俺も続くぜー!!」

カタリもモノレールから飛び降りすぐ目の前に居た敵兵を三人まとめて槍で突き刺した。

ダイン
「なんだよ、俺だけ銃じゃカッコ悪いじゃないかよ。でも借りるぜ」

ダインが銃を乱射しながらモノレールから降り弾幕を張ってカジとカタリを援護する。

ジェスター
「私も戦う!!」
ファン
「怪我したらいつでもモノレールに戻ってください!治療します!」

ジェスターがキュピルのコートを着つつキュピルの剣を引き抜いて外に出た。
コートをはためかせながら敵に接近した。

ジェスター
「えいっ!」
トラバチェス兵
「クク、甘い」
ジェスター
「!?」

普通に攻撃したが簡単に弾き返されてしまった。
後ろにジェスターが転がる。

ミーア
「無理するな」

ミーアがすぐに目の前に現れ助けに来てくれた。

ジェスター
「・・・でも戦わないと・・・!」

ジェスターがすぐに起き上がる。

ジェスター
「えいっ、えいっ、えいっえいっ!!!」

右手に棍棒、左手に剣を持ち振り回しながら突撃した。
棍棒はジェスター用に作られているため素早く振り回せるが剣は重く上手く振り回せない。
それでも乱暴に振り回していれば敵も迂闊には接近できなかった。

ギーン
「Wicked magic where anger and the deep-seated grudge stay defeats you.・・・」

ギーンの周りに禍々しい魔法陣が現れギーンを中心に妖々しく渦巻いている。

ギーン
「10分持たせろ。そうすれば危機を脱せる」
カジ
「こっちの通路は我々が抑える。残りの者は片方の通路を抑えろ」

カジとダインとカタリの三人で片方の通路を抑えている。

カタリ
「風の守り神シルフよ、我に風を与えたまえ!!」

カタリがシルフウィンドの上級魔法を唱える。
蒼く光り周りに白い渦がまき始めた。
機動力が大きく上昇している。

カタリ
「ダインー!伏せろーーー!!」
ダイン
「おっしゃ」

ダインが伏せた瞬間にカタリの槍が敵を突いた。
そのままダインが屈んだまま前衛に突進して敵の足をズバズバ斬った。
敵が床に倒れるとそれをカジが掴み敵へ投げつけた。

カジ
「ふんっ!!」
トラバチェス兵
「ぐぇっ!!」
カタリ
「あらよっと!」

カタリがカジの投げたトラバチェス兵を槍で更に突き刺し
空中で縦に一回転回って遠心力をつけて更に敵に向けて投げた。


トラバチェス兵
「なんだ、あいつら・・・。コンビネーションが半端じゃないぞ!!」
トラバチェス小隊長
「奴らのペースに巻き込まれるな。盾を構えろ。攻撃を凌げ!」

急に敵が縦を構え攻撃を中断した。しかしじわりじわりと接近してきている。

カタリ
「げげ、これじゃ俺の槍が刺さらないぜ・・」
カジ
「問題ない」

カジが盾ごと敵を蹴り飛ばした。後ろに敵が吹き飛んだ。

ダイン
「流石カジだ!!」




ミーア
「・・・くっ、数が多いな」

ミーアはあくまでも潜入や魔法を専門としているためタイマンはともかく集団戦はあまり得意ではない。
徐々に数に押されてきている。

ミーア
「・・・ピア!!・・頼む」
ピア
「んんー!!雷鳴轟嵐ーー!!!」

ピアが望遠鏡を伸ばして杖のようにくるくる回し始めた。
髪がふわふわを舞い上がりピリピリと電流が走り始めた。

ピア
「はああぁっー!!」

望遠鏡から巨大な稲妻が飛び出し通路を一直線に飛んだ!
敵を貫通しつつあちこちで爆発を起こした。

ピア
「MP切れー」
ミーア
「上出来だ。」

ピアがポケットからハンドガンを取り出し適当にパンパン撃ち始めた。



ルイ
「そろそろ戦わないと・・」
ファン
「無茶してはだめですよ」
ルイ
「大丈夫です、辛くなったら戻ります」


ルイがモノレールの外に出る。すぐ近くにジェスターがいた。

ジェスター
「あ、ルイ」
ルイ
「ジェスターさん、大丈夫でしたか?あと五分程度でギーンさんの詠唱が終わりますから頑張りましょう」
ジェスター
「うん」

ルイが銃器を構え押されてる方を援護しはじめた。
ジェスターは左右の通路を行ったり来たりして物資を運んだり時々敵の妨害を行った。


戦いはかなり順調だった。
敵の銃弾の殆どは防御することに成功しこちらの攻撃も防がれるものの
相手を進軍させなかった。ギーンの魔法炸裂まで残りわずかまで迫っていた。

が、その時だった。

ギーン
「・・・・っ!?」

突然ギーンの魔法の詠唱が止まった。
・・・詠唱ミスか?いや、そんなことはしていない。
そしてピリピリするようなこの感覚・・・。

ギーン
「・・・呪文抵抗を張りやがったな・・・!!」

周囲一帯に広げていた魔法が急速に収縮していく。
一体誰が・・・。

この異常を感じたのはカタリやルイなど魔法を使っている者もだった

カタリ
「・・・!?なんだよ、急にシルフの力がなくなったぞ!?」
カジ
「・・・む」

カジが通路の奥からボス格の敵を発見した。
今までの兵士と比べて圧倒的に装備の差がでかい。
しっかりとした装備をしており体格もでかかった。

ボス格っぽいトラバチェス兵
「いつまで手こずらせている!我輩に任せろ!!!」

他の兵士たちがボスに道を譲る。
・・・でかい!

カジ
「・・・こいつ・・・我輩と同じデイドラ族か・・・!?」
カタリ
「どっひゃー!カジを敵に回したようなものか!」
ダイン
「こっちくるぞ」

3mはあろう巨剣をぶんぶん振り回し始めた!
この攻撃を防げるのはカジぐらいだろう。
だが他の一般兵士の妨害もありこの敵に集中するのは難しい

カジ
「・・・分が悪い・・・!ギーン!まだか!!?」
ギーン
「魔法の詠唱が止まった!!恐らくそいつが魔法詠唱を止めてる原因だ!!」
カジ
「なんだと・・」

確かにただならぬオーラーは感じるが・・・。
その時ファンが叫んだ

ファン
「皆さん!モノレールの後ろのドアが開きました!先程の線路に戻れますよ!
こっちなら広いですし逃げ道があるかもしれません!」
ルイ
「そこに行きましょう!」
カジ
「それが賢明だ」

すぐに皆脱線したモノレールに戻り後ろの車両に移動する。
一番後ろはさっきまで瓦礫が邪魔で通れなかった道がファンが魔法でどかして道が出来ていた。

ファン
「こっちです、早く」


全員ボスのいた通路から遠ざかった。
ミーアが時間稼ぎとして車内に爆弾をいくつも転がした。
しばらくして爆発が起き追撃の道を塞いだ。
外に出ると駅のホームみたいな場所に出た。
線路からホームへよじ登ると目の前に広い階段があった。
その階段を上るとドアがありドアを開けたらまた広い通路に出た。

ミーア
「・・・また通路か」
ジェスター
「また何処かに隠れようよ!」
カジ
「・・・・情報も不足している。ここが何処なのか早く分れば行動も早いのだが・・・。」
ダイン
「適当に扉に入ればいいんじゃないのか?」
カタリ
「そのうち何か見つけるかもしれないぜ。へへ」
ギーン
「・・・それで兵舎部屋に入ったらどうするつもりだ」
カタリ
「・・・それも困ったなー」
ルイ
「ここに止まってたらすぐに敵が来ます。とにかく移動しましょう」


ルイの意見通り止まらず走ることにした。
が、ミーアが止まった。

ミーア
「・・・ちょっといいか」
カジ
「何だ?」
ミーア
「・・・何かおかしくないか?」
ギーン
「・・・・言われてみればそうだな」
ジェスター
「どういうこと?」
ミーア
「今まで私達は通路で戦っていた。そこにボス格らしき人物が現れ
慌ててこっちに逃げてきた。
・・・だがこっちに来てみたら敵兵も誰もいない・・・。」
カタリ
「そりゃ全軍向こうに集まってたんじゃないのかよー?」
ギーン
「それにしては効率が悪い。我々がこっちに逃げる事も向こうは想定できたろうし
あるいは向こうから奇襲を仕掛けることもできたはずだ。
・・・何よりも敵が追ってこないぞ」
ダイン
「敵が馬鹿だったとか?」
ギーン
「そうだったらいいんだがな・・・。だがもしこれが意図的に仕組まれたものだったと考えてみろ。この先何かあるぞ

皆足が止まった。
・・・確かにもしそうだとしたらこの先に進むのはかなり勇気がいる。

ミーア
「・・・私が先行しよう。安全を確認してからメッセージを送る」
カジ
「頼む。」

ミーアが先に先行していった。
通路の途中にある扉は殆ど鍵がしまっているようだ。

ジェスター
「・・・・じぃー・・・」
ファン
「な、何僕をじろじろ見てるんですか。何もありませんよ」
ジェスター
「違うよ。ファンの後ろにある扉」
ファン
「・・・?これですか?」
ジェスター
「うん。これ本当に鍵かかってるのかなー・・・?」

ファンが扉を開けてみる。しかし空かない。

ファン
「鍵がかかってますよ」
ダイン
「鍵穴はないけどな」
カタリ
「へへっ」
ファン
「べ、別にそう表現してもいいじゃないですか!」
ジェスター
「じぃーー・・・・・・・・・」

ジェスターがその扉の前に歩く。しばらく眺めた後

ジェスター
「・・・あ!鍵入れる場所!」
ファン
「え?」

鍵穴はなかったはずだ。

ジェスター
「ほら、みてここ」

ジェスターがドアの目の前にある床を示した。
そこには確かに鍵穴があった。

ルイ
「床に鍵穴が・・・!確かにドアから少し離れた場所にありますから・・
これは分りませんね・・・」
ジェスター
「えっへん!」
ギーン
「確かに背の高い者は気付きにくい。チビだから気付いたか」
ジェスター
「あー!私をけなした!わあああああぁぁぁぁぁぁーーーー!!」

ジェスターがギーンに向かって突進し頭突きする
が、片手で頭を押さえられる

ジェスター
「わあああぁぁぁぁーーー」

両腕をぐるぐる振り回す。もちろん当たらない。
ジェスターを無視しつつ

ギーン
「この鍵穴誰か開けれるか?俺は先程の魔法詠唱を保存していて唱えられない」
カタリ
「魔法詠唱を保存?なんだよ、それ」
ギーン
「・・・・。」
カタリ
「どうせ勉強不足って言うんだろ?へへっ、わかってるよ。教えてくれや」
ギーン
「詠唱を途中で止めてもまたその続きから唱える技術がある。
これを使えば事前に魔法を唱えてチャージしておくことによって敵に遭遇した時すぐに発動する事が出来る。」
ダイン
「そいつは便利だなー・・・」
ギーン
「だが欠点が多い。チャージを解放するまで複雑な魔法の詠唱が出来ない。
そしてチャージ中はスタミナを多く消費する。つまり疲れやすいということだな」
カジ
「大丈夫なのか?」
ギーン
「ふん、あの鬼教官に鍛えられた効果が来てるようだな・・・」

・・・懐かしい。あの教官も死んでしまったのだろうか・・
刺しても死なさそうな人なのに

ギーン
「走る分には問題ない。それで、解錠魔法使える奴はいるか?」
カタリ
「解錠魔法は複雑なんだな。へへっ」
ルイ
「メッセージを飛ばしたり小さなバーストとかその辺りは出来るんですけどね」
ファン
「僕がやります」

ファンが接近し鍵穴をチェックする。
そして魔法を唱えると鍵穴が光った。しかし回らない

ファン
「・・・ちょっと難しい鍵穴です。時間をください」

ファンが色々試行錯誤する。
・・・10分程経過し鍵穴が再び光り回った

ファン
「複雑な鍵穴だったみたいです。解錠できましたよ」
カジ
「開けるぞ。万が一の事に備え武器を構えろ」

全員武器を構える。
カジが扉を開ける。
扉の先は資料室のようだ。

ギーン
「・・・資料室か。」
カジ
「もしかするとこの部屋にペストに関する情報があるかもしれん」
ピア
「お宝!!!」
カタリ
「あるかもしれねーな、へへっ」

ピアとカタリが真っ先に部屋の中に入った。

ファン
「僕達も何か情報がないか探しましょう」
ルイ
「そうですね」
カジ
「ミーアからメッセージが来たら伝えてくれ」
ファン
「はい」





ルイ
「でもこんなにファイルとか資料があるとどれを見ればいいのか分らなくなっちゃいますね」
ジェスター
「全部持って帰ったら?」
ルイ
「無理ですよ・・・。それに一部読めない文字使われてますし・・・」
ファン
「読めない文字は僕が解読しますよ」
ジェスター
「流石ファンー。ラクダ型翻訳機ー」
ファン
「・・・だからラクダじゃありません!!」
ジェスター
「疲れたから乗せてー」

ジェスターがファンの上に乗る。

ファン
「やめてくださいー!!」
ルイ
「ジェスターさん・・。疲れたならおんぶしますから・・」
ジェスター
「うんー」

ルイがジェスターを背負う。
ジェスター自体軽いのかそんなに苦ではないらしい。

ルイ
「・・・この書類も違うみたいですね・・。経費についてかかれてます」
ファン
「・・・これは誰かの日記みたいです・・・。『今日は賭博に負けた、死ね』ですって・・。
口が悪いです」

ジェスターもルイに背負ってもらってるため高い所に手が届くらしく何か書類を手に取って呼んでいる。

ジェスター
「えーっと・・」
ルイ
「ジ、ジェスターさん。私の顔の前で書類広げないでください!見えないです!」
ジェスター
「・・・読んでー」
ピア
「子供!」

ピアが棚の上から言った

ジェスター
「子供じゃない!大人!」

そういってジェスターがルイの背中から降りてどこかに走って行った。

ルイ
「やっと軽くなりました」
ファン
「お疲れ様です。キュピルさんがいれば多少楽なんですけどね」





ギーン
「・・・・・・・」

ギーンが何かの書類をずっと眺めている。

ギーン
「おい、カジ。こいつは使えるかもしれん」
カジ
「見せろ」

ギーンがカジにファイルを投げた。
それを片手で受け取ると中身を確認した。

カジ
「・・・暗証番号一覧か」
ギーン
「全ての暗証番号は書かれていないが持っていても損はない」
カジ
「そうだな」


その時メッセージが入った。ミーアからだ

ギーン
「・・ミーアか?」
ミーア
『気をつけろ、予測通り罠だ』
ギーン
「罠だと。何があった」
ミーア
『通路を突き当りまで移動すると鍵のかかっていない扉があった。
その扉に入った瞬間閉じ込められた。』

他に魔法を使える者がミーアに問いかけた

ルイ
「今すぐ助けに行きます!」
ミーア
『待て、ここに来るだけではだめだ。扉は合成板材にレアメタルで強化されたものだ。
アンチマテリアライフルでも持っているなら破壊できるかもしれんがもう弾切れのはずだ。
罠は釣り天井だ』
ルイ
「釣り天井・・・!?」
ミーア
『徐々に天井が下がってきている。このままでは押しつぶされるだろう。』
ピア
「ミーア!ミーアー!!」
ミーア
『ピア、騒ぐな』
ギーン
「どこかで操作を解除する方法があるはずだ。そこが通り道ならば!」
ミーア
『この先に扉がもう一つある。恐らくここは通り道のはずだ。
可能な限り時間を稼いでおく、頼む』

すぐに皆資料室から飛び出した。



==通路


ダイン
「でも制御室なんてどこにあるんだよ!」
カジ
「・・・もしその制御室がその通り道の先にあるとするならば終わりだ」
ルイ
「ミーアさんを絶対に助けます!!手分けして探しましょう!」
ファン
「・・・機械の制御・・・。もしかすると・・・」

ファンが何か思い当たる節があるらしい

ファン
「恐らく制御装置はミーアさんのいる部屋の先にあるはずです。探しても見つからないと思います」
ルイ
「ではどうすれば・・・」
ファン
「早い話回線をショートさせてしまえばいいです。停電させたりコードを切ったりと」
カジ
「出来るか?」
ファン
「装置の破壊は簡単です。パーツ盗めばいいだけですしコードは切ればいいです。カジさん、手伝ってください」
カジ
「わかった。他の者はどうする」
ファン
「念のため他の部屋を捜索してください」
ピア
「ミーア守る!!!」

ピアが真っ先に動いた。続いてカジとファン以外の皆も動いた。

ファン
「行きましょう」
カジ
「んむ」


二人とも全速力で通路の突き当たりまで移動した。
大体5分で辿りついた。しかしこの5分の消費はでかい。

ファン
「ここみたいです。天井に穴をあけてください」
カジ
「ふんっ」

カジが巨剣で思いっきり天井を突き刺した。鉄の天井なのに貫通した。
それを何度か繰り返し綺麗に正方形の形で天井をくくり抜いた
そしてカジがファンを持ち上げ天井裏に連れて言った


ファン
「・・・配線がありません」
カジ
「なんてことだ・・・」
ファン
「ですが石の壁があります!」
カジ
「・・・石の壁か。任せろ」

カジが大きくジャンプして天井裏に掴まる。そしてそのままよじ登り
ホフクしながら進んできた。

カジ
「ふんっ!!!」

思いっきりグーで壁をなぐる。壁が削れた。

カジ
「壊れろ!!」

どんどん壁が削れていく。しばらくすると壁が崩れた。
崩れた壁の先には合成板材とレアメタルで補強された壁が出てきた。

カジ
「・・・こいつは削ることはできない」
ファン
「でも見てください。配線があります!」

配線が確かにそこにはあった。太いコードが五本と細いコードが三本。
・・・これは一体何のコードだろうか。
そもそもこれは何処かの時限爆弾と同じように間違ったコードを切ったら即落下などといった
仕組みが施されているのか・・・?

ファン
「・・・ですがこれは切っていいものか分りません・・・」

その時メッセージが入った

ミーア
『もう目前まで迫っている。いつまで持つか分らない。恐らく五分か八分が限界だ。』
ファン
「わかりました・・・」

その時他の人からメッセージも入った

ギーン
『おい、ファン。聞こえるか。もう一度資料室に戻って何処に何があるか調べたら有益な情報を手に入れたぞ』
ファン
「何ですか?」
ギーン
『どうやらお前の読み通り制御装置のコードを切れば活動は止まるようだ』
ファン
「分りました。実はもう目の前にコードがあるのでいつでも切れます」
ギーン
『だが待て!全てのコードを切るのだが切るタイミングがある』
ファン
「タイミング・・ですか?」
ギーン
『そうだ。停電を起こしてる時に切れ。しばらくすると補助電源が入って再び作動する。
補助電源は地上にあるらしくここからではどうあがいても辿りつくことはできん。
停電を起こしてる最中にコードを切れば命令の伝達が途絶え止まる!
言っとくが通電してる状態で切るな。異常事態とみなして即落下するぞ。』
ファン
「ですがこの近くに電源供給してる物が・・みつかりません!」
ギーン
『ということはまた別の部屋か?くそっ!』

その時別の人からまたメッセージが入った

カタリ
『俺の目の前に変電室らしい部屋見つけたぜ」
ファン
「その部屋に入れますか!?」
カタリ
『それがよ・・・鍵がかかってるんだ。俺解錠魔法知らないからな・・』

その時ルイの声が聞こえた

ルイ
『カタリさん、どいてください。破壊します!!』
カタリ
『うわっ!?』

盛大な爆発音が聞こえた。恐らくRPG-7でも発射したのだろうか

ルイ
『強度の弱い扉で助かりました』
カタリ
『よし、扉が壊れたぜ!それで何をどうすればいいんだ?』
ギーン
『壊せ』
カタリ
『おうよ!』
ルイ
『RPG-7!!』
カタリ
『どうわっ!?』

再び盛大な爆発音が起きた。
通路が真っ暗になった。

ギーン
『いまだファン!切れ!』

ファンが全てのコードを切った。

ファン
『切りました。・・・・どうなったのでしょうか・・・ミーアさん。聞こえますか?』
ミーア
『・・聞こえる、命拾いした。』

全員安堵のため息をつく。本当に危なかった・・・

カジ
「何にせよ全員で進んでいたら全員お陀仏だったな。ミーアには重い責任を乗せてしまったな」
ファン
「ひとまず合流しましょう」

カジとファンが天井裏から降りる。
が、新たな問題に当たった

カジ
「・・・通路が真っ暗だな。何も見えん」
ファン
「ライト使います」

ファンが魔法を唱える。少し明るくなった。だが10m先までは見えない。

ファン
「扉は開きますか?」

カジが開くかどうか確かめた。しかし開かなかった

カジ
「ミーア、聞こえるか」

カジがノックする。するとノックが返ってきた

ミーア
「聞こえる。どうやら鍵はかかったままのようだな」
カジ
「んむ・・・」
ミーア
「だが電源が落ちた事によってこっちで何か変化が起きているようだ。
もしかすると脱出できるかもしれない。
・・・独自に動いていいか?」
カジ
「構わないが無理するな」
ファン
「そうですよ。いざとなれば僕達が動いてそこの鍵をはずします」
ミーア
「・・問題ない。さっそく脱出の糸口がつかめた。」

そういって動く音が聞こえた。
多分移動したのだろう。

カジ
「では皆と合流しよう」

ファンがメッセージで資料室に再び集まるように送った。









キュピル
「資料室に集まれ・・・?ファン、どういうことだ?何を言っている?」

目覚めてから五分後。突然ファンからのメッセージが届いた。
しかし送り返す術はなく訳のわからないまま通信が途絶えた。

・・・どうやら気を失っていてから相当時間が経過しているようだ。

眼が覚めたら見覚えのある通路に立たされていた。
・・・確かここはペストの研究室の前・・・。
何でここに立っている?

よくみるとコートも剣も持っていない。武器もなければアイテムもない。
今敵に見つかったら完全に危険だ・・・。

しかしペストに感染するぐらいなら自殺してやると思って死んだはずだったんだが・・。
どうして生きているんだろうか。それどころか気が付いたら何故通路に立っている?
訳のわからない事が続く・・・・。

とにかくファン達と合流しよう。それが一番最初にやらねばならないことだ。
考えるのは後だ。

キュピル
「だけど資料室って・・・どこなんだ?」

この通路のどこかにあるのだろうか・・・。もしそうだとすれば手当たり次第部屋をあたるしかない。
片っ端からドアを開けてみる。
しかし取っ手のないドアが多くどうやって開けるのか分らない物ばっかりだ。

しばらく通路を進んでいくと半開きになってるドアがあった。
横にスライドさせるタイプのドアが何で半開きになっている・・?普通重さで勝手に閉まるはずなのに・・。
そう思っていたらドアの間に何か挟まっていた。なるほど、これが挟まってて閉まらなかったのか。

ドアを開けて挟まっていたものを取る。これは銃のマガジンだ・・・。空になっていてまだ使われてから新しい。
この辺で戦闘があったのだろうか?
ひとまず部屋の中に入る。ドアが空かなくなる事を想定してマガジンでストッパーの役割をさせる。

キュピル
「どうやらここは倉庫のようだ・・・。何か散乱としてるなぁ・・・。」

銃とかカスタムされた際に取れたパーツ等が一杯落ちてる。
腰につけるバックアップ等も何故か一杯落ちてる。これを装着して荷物入れにしよう。
扉の開いたコンテナからたくさんの銃が見える。

キュピル
「よし、あの銃を武器にするか。どんな武器にするかよく考えないと・・」

荷物は最小限にしなければならない。バックアップもあまりたくさんの荷物は入らないからな・・・。
ひとまず肩とかに下げられる銃がいい。

キュピル
「これは・・・懐かしい。狙撃銃・・通称SVDだ。ルイから借りて使わせてもらったなぁ。」

しかし狙撃するわけではないのでこの銃は必要ないだろう。

キュピル
「・・・いや、スコープだけ貰おう」

そういって力任せにスコープを取る。部品が壊れたが問題ない。
双眼鏡の代わりとして使おう。
他に何か良いのがないか探す。

キュピル
「・・・これはライフルか。確かAKL-47とかルイが言っていたような・・・」

物凄くスタンダードな武器で扱いやすいと言っていた。肩に下げるベルトもあるしこれがいいかもしれない。
コンテナの中にあるAKL-47の弾丸を持てるだけ持つ事にする。
弾丸を探してる最中に救急マークの入った箱を見つけた。
この中に治療道具が沢山入っているようだ。
ポーションに包帯にモルヒネ・・・。・・・モルヒネって・・・。

キュピル
「さすが軍の治療道具だけあってこういうのは一杯あるなぁ」

でも荷物的にそろそろ限界だ。包帯とポーションにモルヒネの入った瓶いくつかと注射器を一つ頂戴する。

キュピル
「よし、こんなもんだろう。・・・でももうちょっと倉庫の中調べてみるか」

コンテナの中に置いてあるハンドガンを手に取る。
それを使って鍵のかかっている別のコンテナを破壊した。
扉を開けると色んな装備が置いてあった。軍用メットに弾丸やナイフを入れる事の出来る防弾チョッキ・・・。
更に盾にナイフに大型兵器に・・・。

キュピル
「これ一個ずつ持って行ったら流石に移動できなくなっちまうな」

必要そうな物だけ持って行くことにする。
ひとまず軍用メットに携行に優れる防弾チョッキを装着する。その防弾チョッキにマガジンとナイフを差し込む。

キュピル
「せっかくだから盾も持って行こう」

大型の鉄の盾を手に取る。どうやらこの盾に更にハンドガンやマガジンを入れる事が出来るようだ。
・・・・せっかくなのでさっきのコンテナからハンドガンとそのマガジンを頂戴しよう。

そんな感じで色々装備を整えていたら最終的に物凄く荷物が重くなってしまった。
20Kgぐらいあるのではないだろうか・・・。

キュピル
「お、重い・・・・」

普通こんな大荷物持って移動する人いないか・・・。
しかし孤立していて尚且つ装備もない。ある意味仕方がないと言えば仕方がない。

キュピル
「よし、いこう。」

ガシャガシャ音を鳴らしながら通路を走っていく。



しばらく通路を走っているとあちこちに戦闘のあった形跡のある壁が見つかった。

キュピル
「弾丸に魔法に・・・。剣がぶつかったような跡・・・。
ここで大規模な戦闘があったのか」

もしかするとルイ達がここを通ったのかもしれない。
落ちてる薬莢や傷などを形跡として辿って見る。
曲がり角を曲がり階段を降り(途中ドアが滅茶苦茶に壊れていたが・・・)また曲がり角を曲がっていくと
まるで駅のホームのような所にきた。線路はしっかりあるのだが・・・肝心の乗り物がない。

・・・。線路をずっと辿っていこうかとも思ったが狭くもし乗り物が戻ってきたら完全に轢かれる。
あまりにも危険なのでやめることにした。



キュピル
「うーむ・・。さて、どうしたものか」

一番最初の通路に戻った。手当たりしだいまた入れるドアを探すしかない。
別のドアを開けようとした瞬間再び敵兵士が先にドアを開け鉢合わせになった。

キュピル
「!!」
トラバチェス兵
「!!」

二人ともすぐに銃を構え発砲する。
間一髪早かったのはキュピルだった。

キュピル
「危なかった・・・・」

と、思ったら他のトラバチェス兵が何人もいた。
すぐに発砲してきた!!

キュピル
「うおっ!?」

慌てて壁に身を隠す。
通路の壁に弾丸の当たる音が響く。
・・・数は大体7〜8人か?とても倒せる数じゃない・・・。

キュピル
「ええい、こうなればこいつでも食らえ」

壁に隠れつつグレネードを部屋の中に転がす。グレネードを見た瞬間何人か通路に飛び出て逃げ出してきた。
しかし飛び出してきた兵士を全員銃で撃ち倒す。

取り残された者はグレネードの餌食となった。

キュピル
「グレネードはやっぱり強いな。大切に使わないと」

残りあと四つ・・・。
なくなったらまた倉庫に戻るのもありだが距離がある。

さっきトラバチェス兵がいた部屋に入る。どうやらここはシステムを管理する部屋のようだ。
・・・この部屋を見つけられたのは幸運だ。

キュピル
「ここから扉のロック解除できそうだな・・・」

モニターのある席に座る。
操作しようとしたがパスワードを求められてしまった。

キュピル
「・・・ん、これLinuxか?」

ファンから教えてもらった記憶がある。
確かF12キー押してBIOSから入ってシングルユーザーモードに入っていけば・・・。

キュピル
「よし、パスワード変更が出きる」

パスワードを全部 kutabare に設定する。

キュピル
「我ながら傑作だ。」

扉のロックを操作できないか試してみる。

・・・・。

どうやら通路のドアはある一定の数値のEMPを感知すると開く仕組みのようだ。
・・・体内にあるEMPを自由自在に動かす事が出来ないのだが・・・どうすればいいのだろうか。

キュピル
「ん、そのEMP・・・操作することが出来るのか」

かなり複雑な数値なものもあれば範囲内なら開くなど多種多様だ。
とりあえず全部0〜9999にしてみる。これなら何やっても開く仕組みだ。
その設定を保存し試しにこの部屋のドアでテストしてみる。
ドアに触れた瞬間、自動的にドアが開いていった

キュピル
「よし、これで全ての部屋に入れる。」

もう一度モニターの前に座る。ここで何処にどんな部屋があるのかわかる。
全体図からカーソルを合わせてどんな部屋なのか一つ一つ確認していく。
すると気になる部屋を見つけた。

キュピル
「ん、何だ・・・これは?大型兵器保管庫・・・?」

ここだけ圧倒的に部屋が広い。
詳細で見てみるとどうやら爆撃機やカタパルトなど様々な兵器が置いてあるらしい。
・・・進撃準備されているらしい。これはこのまま放置するわけにはいかない。

更に色々調べてみると驚愕的な事が書かれていた。

キュピル
「・・・!!!PEST-K65搭載爆撃機!!!見つけた!!こいつを全部まとめて処理すれば・・・!!!」

動かないわけにはいかない。
ルイやファン、ジェスター達も動いてくれてるはずだ。俺は俺で今出来る事をやる。
道中敵に合わないために関係ない部屋を全てロックさせた。(EMPを9999と無茶な設定に

キュピル
「これで部屋にいるトラバチェス兵は閉じ込められたも同然だ。」

通路にいるトラバチェス兵は・・・倒すしかない。
すぐに行動を開始した。


ガシャガシャ音を鳴らしながら全速力で通路を走っていく。時間は少ない。
扉のロックが効いてるのかたまに部屋からトラバチェス兵の叫び声が聞こえる。

「どういうことだ!?開かないぞ!!」
「壊せ!!」

キュピル
「(ふははは、悪いな。)」

あっさり目的地に着いた。
ここまで上手くいくとは思っていなかった。
意識が戻ってから滅茶苦茶上手く行ってる気がする。



==大型兵器保管庫


キュピル
「・・・・ここか」
トラバチェス兵
「誰だ!!」
キュピル
「げぇっ!!」

入った瞬間鉢合わせした。鉢合わせ多いな!!
積み込み作業やメンテナンスに警備していた敵兵士全てがこちらに気付いたようだ。
すぐに有り得ない弾幕がやってきた。
慌てて物陰に隠れる。

キュピル
「ちくしょう、これでも食らえ!」

グレネードを壁に隠れながら投げる。
盛大な爆発が起き何人か巻き込んだ。
しかしこのまま壁に隠れていたらそのうち数の暴力にあう・・・。

キュピル
「・・・・お。」

壁の方に目をやると梯子がある。登るしかない!梯子を登る。
登った瞬間すぐ目の前からも兵士が来ていた。

キュピル
「うおおおおぉぉぉぉぉぉっっっ!!」

ライフルを連射する。
弾丸に当たって敵がのぞけりそのまま撃たれ後ろに倒れた。
倒れた兵士の後ろから更にトラバチェス兵が続々とやってきている。

キュピル
「くたばれええぇぇっ!!!」

胴体を狙うのは効率が悪すぎる!全員ヘッドショットするつもりで狙ってやる・・・!!
しかし狙いが上手く定まらず向こうも銃で反撃してきてる。
狭いこの通路では避けようがない。盾で全て防ぐ。
盾で身を隠しながらグレネードを再び投げつけた。
足場が激しく揺れたが何とか敵を倒したようだ。
・・・が!今度は梯子の方から兵士が何人も上ってきた!!
接近戦になり敵が剣を引き抜き突き刺してきた!

キュピル
「バッシュ!」

盾で敵の剣をはじく。剣が遠くに吹っ飛んだ。
そしてナイフを引き抜き相手の腕を突き刺した。痛みで梯子から転がり落ちた。
その下にいた兵士を巻き込むことに成功した。
だがすぐに別の兵士が梯子を上ってくるだろう。銃をリロードしながら通路の奥を進んでいく。

リロードが完了した瞬間奥の梯子から兵士が何人か登ってきた!
このままでは挟み撃ちだ。

しかしすぐ右の壁にまた上へ続く梯子を見つけ急いでそこを登って行く。
途中発砲され身体に銃弾を受けたが防弾チョッキのお陰で全く痛くなかった。
足に当たってたら危なかったかもしれない・・・。

上った瞬間目の前に兵士がいた!既に発砲してきている!
急いで盾で攻撃を防ぐ。危なかった・・・。
梯子を登り終わり敵に向かって突進する。

キュピル
「こんの!!」

敵がマシンガンで迎撃しようとするがお構いなしに突撃して敵を盾で殴り飛ばした!
体制がよろけそのまま一階に落ちていった。

このまままっすぐ進むとちょうど爆撃機のコクピット前に来るようだ。コクピットのフロントガラスを
銃で割れば中に入れるかもしれない。
だが足場に柵はなくちょっとした衝撃を受けてよろけたらそのまま転落してしまうかもしれない。
しかし止まるわけにはいかない。
無謀だと分りつつ一気に走り前に大きくジャンプする。ジャンプしながらコクピットに向けて銃を乱射する

キュピル
「割れろおおおぉぉぉぉぉっっっっ!!!」

強化ガラスで割るのは非常に難しかったが何十発も撃っていると大きなヒビが出来た。
そのヒビの上に着地するとガラスが割れて中に入ることができた。
コクピットの中に敵兵士がいることに今初めて気付いた。
向こうは突然の出来事で驚いてるようだ。怯んでる隙に銃で倒そうと思ったが弾切れを起こしてる。
リロードしてる余裕はないので急いでナイフで敵を突き刺す。
一人はそのまま倒すことが出来たがもう一人は戦闘態勢に入りナイフの攻撃を防いだ。
反撃が来る・・・・!

その前に敵の脛を思いっきり蹴る。あまりの激痛に敵が床の上に崩れる。そして思いっきり背中をナイフで刺した。
一息つく間もなくさっき走っていた足場から敵が続々と現れた。こっちに向けて発砲してきている。
コクピットの操縦席に隠れる。銃をリロードする。

キュピル
「これはかなり不利だな・・・。敵まだ何百人と残ってるんじゃないのか・・・?」

そこまで弾が持つとは全然思えない。あぁ、愛用の剣があれば・・・。
リロードが完了した瞬間コクピットから機内へ続く扉から敵が銃を連射しながら現れた!

キュピル
「うぐっ!!!」

肩や胴体、足に銃弾を浴びるが横に転がって銃で応戦する。
一発でヘッドショットが決まり敵が後ろに倒れた。
しかし立て続けにフロントガラスがあった場所から敵兵士が飛び込んできた!

キュピル
「ようこそ、いらっしゃい!!!」

銃を連射する。着地すると同時に次々と敵が倒れていく。何人かは飛んでる最中に撃たれてそのまま落ちた。
また弾切れを起こした。
だがまだコクピットへ飛び込もうとする奴がいる!
これでは対処しきれないのでリロードしながら機内へ逃げ込んだ。
機内へ続く扉を開けた瞬間目の前に敵がいた!
銃で撃つよりもとっさに拳が出た。
マガジンを持った手で敵の顔を思いっきり殴った。
よろけた所を今度はひざ蹴りで攻撃し最後は敵の顔面を思いっきり蹴り飛ばした。

機内の中は荷物でいっぱいだった。旅客機とかと違って荷物や兵器しかない。

この機内の中にもたくさんの敵兵士が!!
しかもかなり多い!蜂の巣にされる前に盾で敵の攻撃を防ぐ。盾が少しへこみだしてきた。
荷物の影に身をひそめる。盾にセットされてるハンドガンを手に取り盾で身を隠しながら
ハンドガンだけを外に出して連射する。下手な鉄砲も数撃てば当たる。
敵がこちらが安全に攻撃しているということに気付き敵も隠れ始めた。

キュピル
「これじゃだめだ・・・」

その時目の前の荷物が木製で出来てる事に気付いた。
・・・もしや。

荷物越しに銃を乱射した。荷物が崩れ箱越しに敵を撃ちぬく事に成功した。
が、敵も同じことを思っていたらしく弾丸が沢山飛んできた!

キュピル
「(まずい・・・。逃げ場完全にない・・・)」

残り二個しかないグレネードを投げる。
敵が慌ててグレネードから逃げる。逃げてるところを身を乗り出して撃ちぬく。
よし、大体蹴散らしたぞ。・・・っと、思ったらコクピットからたくさんの兵士が現れた!
盾を構えハンドガンで迎撃しつつ機内の奥へと後退していく。
ある程度下がり続けていくと壁にぶつかった。ドアのようだ。
ドアを後ろ向きで開け中に入る。その後大きい荷物を持ち上げてドアの前に置いた。
これで簡単には入ってこれないだろう。

キュピル
「ここに敵はいないみたいだな」

しかし他の場所からやってくる可能性は十二分あるので警戒しなければいけない。

キュピル
「・・・っ・・」

今やっと初めて痛みが分った。よくみると大けがしてる。あちこち撃たれている。

キュピル
「止血だけしておこう・・・」

包帯で出血してるところを強く押さえつける。
とにかく今ここでゆっくりしてるわけにはいかない。
応急処置だけ済ませるとすぐに立ち上がった。

改めて今居る場所を見渡すと様々な兵器があることに初めて気付いた。
流石は軍用機だけはある・・・。この機内のどこかにペストを積んでる場所がある・・らしいが・・。

キュピル
「・・・・あいったたたた・・・」

動こうとしたが足にも撃たれているため動きにくい。
・・・やっぱり止血だけじゃなくて可能な限り治療しておくか・・・?
しかしそろそろ敵が来る頃だ・・・。

辺りを見回すと今初めて気付いたがここは行き止まりのようだ。
まずい、この状態で敵が来たら・・・。

・・・ってちょっとまてよ。
なんかさっきから静かじゃないか?
ドアを叩く音もしなければ無理やり強行突破もしてこない。
・・・・これは一体・・・。

キュピル
「・・・・」

恐る恐る荷物をどかして外に出ようとする。
そしてドアノブを回そうとした瞬間!

キュピル
「うお!!」

突然ドアが光った。何かの魔法だ!!
盾を構えて後ろに下がる。爆発するかと思ったが何も起こらなかった。

キュピル
「・・・・?」

一見何も起こってないように見えた。
しかしドアを凝視してやっと気付いた。

キュピル
「・・・・うわっ!!ドアノブが消えてる!!」

それも魔法でドア自体をかなり強化している。これは簡単にはぶち破れない・・・。
・・・・つまり閉じ込められたってことか!!

キュピル
「グレネードも一個しかないし壊せるとも思えない・・・」

・・・やられた。
しかしこれは逆に言うと今攻めてくる事はないということでもある。
治療して装備を整え万全な体制になったら動くとしよう。

・・・・。

・・・・・・・・・・。

皆・・・どこにいる・・・。俺は今一人で戦っている・・・・・。




続く



第十二話


==資料室

ダイン
「いやぁ、ミーアが助かってよかったぜ」
ピア
「ミーアー・・・」
カタリ
「でも合流は出来なかったみたいだな。なーに、ミーアは死なないぜ。へへっ」
ルイ
「私もそんな気がします」
ジェスター
「でもいきなり停電してびっくりしたー。最初から資料室にいなかったらきっと迷子になってた」
ギーン
「お前等がここに戻ってくるまでに重要そうな資料は粗方ここに集めた。恐らくはこれ以上探しても
いいものは出ない。その中で重要そうな物をここに並べるぞ」

ギーンが色んな書類を地面に置く。

ギーン
「こいつは今必要だろう」

ギーンがファンに地図を渡した。

ファン
「おぉ、これがあればここの基地内部の構造が分ります」
ギーン
「そしてだがここがどこだか分ったぞ」
カジ
「どこだ」
ギーン
「トラバチェス本国だ」
カジ
「何だと!?」
ダイン
「まじかよ!俺ら本国に来てたのかよ!」
ギーン
「それも首都の方だ。
一番手ごわい場所に来たわけだが。それとこの書類も目を通した方がいい」

今度はルイが受け取った。
それは一枚の書類だった




『 〜作戦指示紙


オルランヌが三日で城下町フィーを陥落させる。それまでにペストを搭載させた
艦載機を発進させアノマラド本国に近づいておく事。
城下町フィーが陥落しオルランヌが更に進軍を確認したところで生物兵器を投下させ
当たり一面に撒き散らし全て散布させてから帰還すること。

なお想定外の出来事、トラブルが発生した場合指示があるまでその場で待機すること
ただし戦地にいる場合それに限らず。
また本国から届いた指示は絶対だ。そむいた者は即裏切り者とみなす』


ルイ
「これは・・・・」
ギーン
「・・・何か気付いたことはあるはずだ」
ルイ
「・・・万が一ペストを搭載した爆撃機が出撃してしまったとしてもここ本国から連絡すれば
呼び戻すことができる・・・?」
ギーン
「そうだ。そうすればいくらでもチャンスは現れる」
カジ
「待て。いくらでもチャンスがあるわけではない。我々だけでトラバチェスは到底制圧できない」
ギーン
「当然だ」
カタリ
「おいおい、俺達ならいけるぜ」
ギーン
「馬鹿も休み休み言え」
ファン
「では今から管制塔や連絡塔を制圧すればいいってことでしょうか?」
ダイン
「いや・・・ペストのある爆撃機も探さないとだめだよな。でも二手に別れるのは危険だよな・・・」
ジェスター
「管制塔から場所分らないの?」
ファン
「そこにメインコンピューターがあれば場所が分りますね。大抵はあります」
カジ
「よし、ではそこに向かおう。ギーン、地図に管制塔、あるいは連絡等の場所は記されていたか?」
ギーン
「記されている。ミーアの掴まっていた部屋を超えた先にある。ここからは大分離れている」
ピア
「ミーア!ミーアーー!!」
ギーン
「おい、俺の腕に掴むな!」
カタリ
「ちょ、ちょっとまってくれよ。ミーアの掴まっていた部屋を超えた先だって?
確かそっち扉開かなかったんじゃなかったのかよー!?」
ギーン
「・・・開かない」
ルイ
「・・・ではどうすれば・・・。もう時間もありません・・・!!」
ファン
「一つだけ・・・まだ残されてるルートがあります・・・」
カジ
「何だ」
ファン
「・・・最初の駅のホームに戻って壊れた壁の先にある通路です。しかし・・敵が待ち伏せしてる可能性が・・」
カジ
「・・・だがそこしか道がないのだろう?」
ファン
「はい。あの部屋は開くとは到底思えません。恐らく敵の計画はそこで僕達全員倒すつもりだったのでしょう。
被害を少なく出来ますから」
ジェスター
「また戦うの・・・?」
ルイ
「大丈夫ですよジェスターさん。見つからなければいいんですから」
ギーン
「見つからなければ・・・か。・・・・ちっ、MPさえ残ってればインヴィジブルを使うんだがな・・・」
ダイン
「何だ、それは?」
ギーン
「いい加減分る魔法来いよ!!透明化する魔法だ!!!」
ダイン
「う、うるせぇーなぁー・・・」
カジ
「ミーアに連絡しなければ」
ファン
「今連絡しましたよ。本人も管制塔に向かうと言ってます」
カジ
「わかった。ミーアは隠密行動の達人だ。心配はないはずだ。・・・罠がなければな」
ダイン
「おっしゃ!いくぜー!!」
カタリ
「おうよー!!」

二人が真っ先に立ちあがって通路を出た

カタリ
「どわー!!真っ暗で見えない!!」
ダイン
「お前ライト使えよ馬鹿!!」
カタリ
「うっせー!」

ルイ
「あの二人が元気でいると何だか安心しちゃいますね」
ギーン
「ふん・・・。俺には五月蠅いガキにしか見えんがな」
ピア
「ミーアミーアー!!」
ギーン
「お前も五月蠅い!!」
ジェスター
「なんか私も元気出てきたかも。頑張る!えっへん!」
ルイ
「そうです、その意気ですよジェスターさん」
ジェスター
「でも歩くの疲れたからファンの上に乗るー」
ファン
「や、やめてください!!」


最初は騒がしかったが問題の駅のホームに近づくにつれて皆静かになっていった。


==駅のホーム

ファン
「ここですね。壁は・・・崩れたままです」
カジ
「この程度の岩なら簡単に破壊できる」
カタリ
「流石だぜ、へへっ」
ギーン
「問題はこの先に敵がいるかどうかってことだな。」
ファン
「・・・ですが道はここしか残されていません。行きましょう」
カジ
「壊すぞ。はああぁぁぁっっっ!!!


カジが拳で岩を崩した。
綺麗に割れ道が出来た。見覚えのある通路に出た。
敵はいなかった。

ルイ
「幸運です・・・。いなかったみたいです」
カジ
「行くぞ」

ギーンが見つけた地図を頼りに管制塔へ向かう。
その他に必要なファイルもしっかり持っている事を確認しなるべく早めに進んでいく。

ファン
「・・・トラバチェスはペストをまきちらした後どうするんでしょうか・・・」
カタリ
「制圧するんじゃねーの?」
ファン
「・・・しかしウィルスが死滅するにはかなり時間がかかると思います・・。
下手すると人間が一切近寄れない場所に・・・。そんな状態にさせて制圧なんで出来るんでしょうか・・・」
カタリ
「・・・確かに言われてみればそうだよなぁ・・・・」
ダイン
「シッ、誰かいるぞ」

全員壁に張り付く。ダインが少し覗く。

ダイン
「・・・敵兵士が二名。管制塔へ続く道を守っている」
カジ
「構わん、数の力で倒せ」
カタリ
「おっしゃー!!」

全員通路から飛び出して管制塔へ続く道へ突き進む。
敵が驚いて行動が遅れる。慌てて銃を構えるが時すでに遅し。ダインのカトラスが敵の銃を真っ二つに斬り
カジの拳が敵の顔面を殴り飛ばした。
そしてもう一人の敵兵はルイが先に射撃し足に命中。体勢が崩れると今度はカタリが槍を前に突き出し敵を刺した。
二人とも地面に倒れた。

カジ
「行こう」
ファン
「連携取れてますね」



通路を進んでいくと電子ロックされた扉が現れた。

カタリ
「うわ、ちくしょう。電子ロックかよー!」
ギーン
「電子ロックか・・。流石に魔法ではどうしようもできないな」

その時扉が急に開いた!反対側から人が・・・
が、見覚えのある人間だった。

ミーア
「私だ」
ピア
「ミーーーアーーー!!!」

ピアがミーアに飛びつく。ミーアが受け止める。

ミーア
「心配させたな」
ピア
「そぎゃもんどーーーんとふんに!!!」
ダイン
「・・・何て言ってるんだ?」
ミーア
「秘密だ」
カタリ
「えー」
カジ
「どうやって先に進んだ」
ミーア
「停電を起こして天井が止まった時手で押したらあっさり押し戻す事が出来てな。
そのまま押し戻したら排気口が見つかった。そのまま天井裏を通ってここまで来た。
・・・ちょうどお前達が近づいてきてるのが分って裏から開けた」
ファン
「ナイスです。ミーアさん」
ミーア
「・・・行こう。目的地が近い」
ルイ
「・・・何だかラスボスに近づいてるって感じがします」
ジェスター
「ゲーム?」
ルイ
「他の物で例えればケンプファーがアレックスにチェーンマイン巻きつけた辺りでしょうか」
カタリ
「なんだよそれ。ケンプファー?戦士か?」
ジェスター
「ポケットの中の戦争!!」
ファン
「・・・そういえばルイさんがキュピルさんの家に来て一週間ぐらいの時に見てましたね・・・」
カジ
「どうでもいいが行くぞ」

管制塔へ皆進んでいく。
通路は暗い。

ルイ
「まだ停電を起こしているんでしょうか?」
ダイン
「通路が暗いってことはそうなんじゃないのか?」
ジェスター
「・・・じぃー・・・」

突然ジェスターがピタッと止まった。

ファン
「ジェスターさん、何を見ているんですか?」
ジェスター
「・・・何か赤い光が見える」
ファン
「赤い・・光ですか?」

皆通路の奥を見るが何も見えないらしい。

ジェスター
「何だろう、あれ?」
ギーン
「視力がいいんだな」
ジェスター
「えっへん」
カジ
「待て、呑気にしてる場合じゃないかもしれんぞ。我輩にも見えた。あれは・・・まさか!?」
ギーン
「何・・・」
ミーア
「・・・!!」

いくつもの赤い光がゆらゆらと揺れながらたくさんこっちにやってくる。

ジェスター
「蛍?」
ファン
「違いますよ。何でしょうね」
カジ
「伏せろおおおおぉぉぉぉぉっっっっ!!!」


突然カジが叫んだ。全員すぐに伏せた。その瞬間発砲音と銃弾が飛び交う音が聞こえた。

カタリ
「何だ!?一体何が起きてるって言うんだよ!!」
カジ
「前方の攻撃をカバーしろ!!」
ルイ
「くっ!」

ルイが慌ててバリアを前面に張り出す。

カジ
「もっとライトの出力をあげろ!!あれは暗視スコープだ!」
ジェスター
「暗視スコープって何!?」
ファン
「暗いところでもはっきりと見えるようになる特殊カメラです!」
ジェスター
「ず、ずるい!!」

ファンがライトの出力をあげる。どんどん明るくなっていく。ついに敵の姿が見えるようになった。
今までの敵と違って物凄く重装備である。銃弾も通るかどうか分らないぐらいの重装甲。
ヘルメットも今までのと違って首までしっかりカバーしている鉄製のヘルメット。
そして目のところにスコープのようなものがついていた。赤い光はここから出ていた。
全員銃を構えてこちらに向けて射撃している。

ミーア
「光を小さくすれば敵に見つかる確率は低くなる・・・。それを上手く敵に取られたな・・・
カジ
「反撃するぞ!」
ファン
「しかしどうやって!?この弾幕はありえないです!!」

敵はサブマシンガンを所持しており正確にこちらをショットしてきている。ルイのバリアがなければ
間違いなく致命傷だ。・・・ここの敵は全員エリートだ・・・。

カジ
「ファン!一瞬だけでいい。目が眩むぐらい強くしてくれ!その瞬間バリアを解除して前に飛び出て襲うぞ」
ファン
「はい!」

ファンが一瞬だけ光を物凄く強くした。目をつむっていても物凄く眩しく感じる。
それを暗視スコープつけてファン達を直視していた敵はその光を見て完全に前が見えなくなってしまった。

エリート兵
「ぐわっ!なんだ・・・この光は!!」
エリート兵2
「くそっ!前が・・・!!」
カジ
「いまだ、行け!!!!」

全員武器を手に取って声を上げながら突撃していった。

カタリ
「あらよっと・・・ってありゃりゃ!?」

カタリが槍で突き刺そうとしたが硬い装甲に弾かれてしまった。
敵がナイフを振り回し始めた。前が見えなくても適当に振り回して防衛を図っている。

カジ
「打撃攻撃で攻めろ!ふんっ!!」
エリート兵
「あぐわぁっ!!」

カジの巨剣が敵に直撃する。生々しい音を立てて敵が崩れていく。

ジェスター
「んんんーー!!えいっ!!!!」

鉄の棍棒を思いっきり上にあげて全重量を敵の膝の上に落とした。

エリート兵
「うぼええええあぁぁぁぁっっっっ!!」
ダイン
「ありゃ痛いな・・・」
ルイ
「皆さん伏せてください!!」

ルイがRPG-7を構え敵に向けて発射した!
見事敵に命中し激しい爆発を起こした。流石の重装甲も鉄鋼弾まで防げるはずもなく衝撃死した。
何とか全員敵を片付けることに成功した。
しかしその瞬間けたたましいアラート音が鳴り響いた。

カジ
「これだけドンパチやれば気付かれない方がおかしい。早く管制塔へ行くぞ」

敵の屍を乗り越え先に進んでいく。途中から上へ続く螺旋階段へと変わり
ぐるぐる回りながらどんどん管制塔を登っていく。

カタリ
「敵だぁっ!!」
ギーン
「落ちろ!!」

ギーンが敵に向かって飛びかかり足を持ち上げて螺旋階段から突き落とした

エリート兵
「うわああぁぁぁっっっっっ!!!」
ダイン
「ひゅー、やるなー。ギーン!お前接近戦無理だと思ってたぜ!」
ギーン
「舐めるな」
カジ
「どんどん来るぞ」
ルイ
「私に任せてください」

ルイがRPG-7を敵に構える。その瞬間敵が後ろに下がり始めた。
武器を構えるだけでどんどん敵が後ろに下がってく。その隙にドンドン、ルイ達は階段を上っていく。
ある程度敵が後ろに下がると腹を決めたのか降りてきて銃弾を放ってきた!

ルイ
「発射ー!!」
エリート兵
「ぐわっ!!」

爆風に煽られそのまま敵が階段から落ちていった。

ルイ
「やりました・・・。・・・!!?」

爆炎の中から敵兵が一人突撃してきた!
後続の兵のようだ!突然の出来事にルイは対処することが出来ず敵のナイフの攻撃を貰ってしまう。

ルイ
「っ!!!」
ジェスター
「ルイを守るー!!」

ジェスターが鉄球を敵の肘にぶつける。あまりの痛さに敵がもだえ始めた。
その隙にカジが敵を持ち上げ階段から投げた。

ファン
「ルイさん大丈夫ですか!?」
ルイ
「お、お腹に・・・」

腹から出血している。すぐにファンがヒールを唱え応急処置を施す。

ファン
「大丈夫です」
ルイ
「助かりました・・・」
カジ
「我輩が先頭を仕切る。」

ルイを後ろに回してカジが先陣を切る。
次々と現れていくエリート兵を階段からなぎ倒していく。というか銃弾を受けてもお構いなしに敵を突き飛ばす。

ダイン
「お、おいおい。カジ。無理しないでくれよ。お前が後ろに倒れたら俺等全員巻き添えになっちまうからな」
カジ
「この程度の傷なんともない」
ギーン
「(・・・流石戦闘民族・・いやデイドラ族と言ったところか・・)」

ついに目的地、管制塔へたどり着いた。


==管制塔

カジ
「ここか!!」

ここ本国から様々な場所に指示を送っているようだ。重要なだけあってかなり敵が居る。
その中に通路で見た敵のデイドラ族もいた。

カタリ
「あ、あいつは!!」
敵デイドラ指揮官
「また会ったな。小僧ども・・・ついでにデカブツもだ」
カジ
「ふん、同じデイドラだというのに貴様は地に落ちたものだ」
敵デイドラ指揮官
「何・・・?」

ダイン
「地に落ちたってどういうことだ?」
カタリ
「さぁ・・・?」

敵デイドラ指揮官
「洒落はいらん。ここは絶対に守らねばならない場所なのでな。全力で潰す!!!

管制塔に待機していた敵兵士いきなり銃を抜き発砲してきた!
ルイがいつも通りバリアで防ごうとした。しかし

ルイ
「ば、バリアが出ない!!」
ギーン
「またあの呪文封じか・・・!!」
カジ
「くっ!!」

カジが慌てて巨剣で敵の銃弾をガードする。しかし前面全てガード出来ているわけではなく一部の人が
銃弾を浴びている。

ジェスター
「こ、怖い・・・・!!!」

ジェスターがキュピルのコートで完全に体を覆い隠す。コートに銃弾が当たる。
そのまま突き抜けてジェスターに当たるかと思いきやコートで銃弾が弾かれていく。
・・・キュピルのコートはやたらと重かった。何が入っているのかと思えばこのコートに鉄板が入っているようだ。
この鉄板のお陰でジェスターは怪我をせずに済んだ。
しかし他の人はそうもいかなかった。腕や足に次々と被弾していく。

ピア
「ひ、ひぐぅぅ!!」
ミーア
「ちっ・・・!!」

ミーアが針をドンドン投げつけていく。銃弾と相殺していくが完全に防ぎきれていない。

ファン
「ひ、ひぃぃ!」

ファンが階段の下に降りて銃弾を交わす。被弾は0のようだ。
一番多く被弾していたのがルイだった。バリアを張るために一番前に出たが結局出なかったため
格好の的となっていた。十数弾以上も被弾しそのまま後ろに倒れる。
後ろへ下がろうとするが容赦なくルイに銃弾が飛び交う。

カジ
「ルイ!」

カジがルイの腕を引っ張って階段の方へ引き寄せる。あちこちに被弾していて出血がかなり激しい。
先程のナイフの傷もまた開いてしまっている。

カジ
「このままだと我々全員この銃弾の餌食になる。一度降りるぞ」

カジがルイを抱えて全員階段下に降りる。ちょっと降りると銃弾は一切飛んでこなくなった。
しかし代わりにやってきたのはグレネードの嵐だった。

ミーア
「くっ・・・!!防ぎきれないっ・・・・!!」
ダイン
「俺に任せてくれ!!」

ダインが一人飛び出た。

ギーン
「馬鹿!死ぬ気か!」
ダイン
「ちげぇっ!!」

ダインがグレネードを全て掴み全部投げ返し始めた。

ダイン
「俺はこう見えても小さい頃ドッヂボールが得意でな・・・!!」
カタリ
「そういやダイン強かったなぁ・・・。ばっかみたいだったぜ」
ダイン
「うっせー」

キャッチできないと思われるグレネードも手に取った瞬間投げ返していく。
敵側の方に激しい爆発が起きる。

敵デイドラ指揮官
「ぬぅっ・・!やりおる・・・。起爆寸前にグレネードを投げろ!!」


ギーン
「おい、時間差で攻撃してくるつもりだぞ。いくらお前でもキャッチしたところで爆発しちまう!!」
ピア
「ルイ守る!ミーア守る!!」

今度はピアが前に出る。よくみると宙に浮いている。

ピア
「嵐ーーーー!!!」


ピアを中心に空気の渦が出来る。
敵が一斉にグレネードを投げつけた!
しかし空気の渦に弾き返された。敵が防ごうとした瞬間グレネードが爆発した。
かなり被害が大きい。

敵デイドラ指揮官
「ばかな・・・!魔法は・・封じているはずだっ!」
ミーア
「・・どういうわけか昔からピアは呪文抵抗の影響を受けない」
ギーン
「何だと・・・・」
ピア
「えっへん!!」
ジェスター
「あ!!それ私の特許!!」
ファン
「まだ言ってたんですね・・・その特許・・・。それよりルイさんの応急処置は済みました。
しかしもう戦闘には出せません」
ルイ
「すい・・ません・・・。油断しま・・した・・」
カジ
「後は我々に任せろ。敵の攻撃は止んだ!!反撃の時だ!!
うおおおおぉぉぉぉぉぉっっっっっっ!!!!!

ダイン
「うりゃあああああぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!」



カタリ
「突撃だああああぁぁぁぁっっっっ!!」




三人が武器を持って真っ先に飛び出した。敵陣の奥深くへ切り込んだおかげで
乱戦状態へもつれ込んだ。こうなれば相手は連携は取れない。
すぐにミーアとピアも前に出る。遅れてジェスターとファンも出る。

ギーン
「・・・ちっ・・。魔法を封じられた俺はこうも無能か・・!!何もできないと言うのか・・・!!
・・・いや、考えろ。魔法に頼らなくても何か俺に出来る事を・・・・!!」
ルイ
「・・ギーン・・さん」
ギーン
「何だ」
ルイ
「・・銃・・貸します」」

ルイが銃器のたくさん詰まったバックをギーンに渡す。

ギーン
「・・・借りるぞ」
ルイ
「頑張って・・くだ・・さ・・い・・」

ギーンがルイの愛用の銃を肩にかけ敵に向けて乱射を始めた。

ギーン
「さっきはよくもやってくれたな!!これは仇打ちだ!!」


ギーンの射撃が的確に敵に命中する。
しかし敵も負けずに正確なショットで応戦する。

ギーン
「ぐあっ・・・!!・・・だが負けん!!!」

再び銃器を握りしめ乱射を始める。


エリート兵
「後ろががら空きだ!!」
ミーア
「っ!」

エリート兵がナイフを持って後ろからミーアを攻撃してきた!しかし後ろ向きで敵の利き手を抑え
すぐに振り返って足をひっかけながら前に投げ飛ばした!

エリート兵
「ぐわっ!!」
ミーア
「はっ!!」

更に追撃としてそのエリート兵の腕を踏みつけ他の敵を掴む。そしてそのまま更にひじ打ちで
敵の顎を強打する。とどめに回し蹴りで敵の後頭部を蹴りつけ踏みつけていた敵兵の上に落とす。
最後にとどめとして敵二人を落ちていた剣で突き刺す。

エリート兵
「貴様CQBは達者のようだな、しかし銃器相手には関係ない!!」

敵が再び銃で発砲してきた。

ミーア
「ふっ・・・」

突然ミーアの姿が消えた!

エリート兵
「!?」
ミーア
「後ろだ」

敵の足と足の間に自分の足を入れてひっかける。そして敵の上半身を思いっきり後ろへ反らせる。
痛みとバランスが崩れ後ろへ倒れる。そして思いっきり敵の腹に踵落としをする。
硬い装甲を貫いて敵の腹部に直接ダメージが入る。

エリート兵
「な、何て奴だ・・・!」

他の兵が恐れを抱きはじめる。
ミーアを警戒するあまり後ろへ注意がいってなかった

ジェスター
「隙ありー!!」
エリート兵
「ぐばっ!!」

頭に鉄の棍棒を落とされる。致命傷だ。

ファン
「ジェスターさん!敵の攻撃ですよ!」

ファンがジェスターに知らせる。
すぐにジェスターがファンの背中に乗る。そしてそのまま柱の影へと逃げていく。

ファン
「背中に乗せるのは今だけですよ」
ジェスター
「えー・・・・」
ファン
「ま、前です!!」

すぐにファンとジェスターがそれぞれ別の方向に逃げる。

エリート兵
「先にその恐竜みたいな奴を殺してやるよ!」
ファン
「ひ、ひぃぃぃ!」
ジェスター
「私を狙わなかったのが最後ー!!」
エリート兵
「上!?」

ジェスターが髪をパタパタ動かして浮遊していた。そして一気に鉄の棍棒を持って急降下しだした!
見事に敵の頭に命中しそのまま敵は倒れた。

ファン
「た、助かりました・・・」
ジェスター
「ちょっと奥深くまで来てるみたい。ピアとミーアを援護するように動かない?」
ファン
「賢明です」


ダイン
「カタリ!!後ろに敵さんがいるぜ!」
カタリ
「あらよっと!」

カタリが前を向いたまま後ろにいる敵を槍で突き刺す。槍ならではの技だ。

カタリ
「おらっ!」

突き刺した敵を前に投げ飛ばす。そして横にいる敵を斬り前方にいる敵を叩きつける。
しかし一部の敵は攻撃を防ぎ接近してくる者がいた。接近すると槍では間合いが近すぎて攻撃しづらい。
そこをダインがカトラスで応戦しカタリをカバーする。

カタリ
「前々から思ってたけどさ!俺等ってコンビ組めば誰と戦っても勝てそうな気がするぜ!!」
ダイン
「俺もだぜ!」

敵が離れて一斉に銃で発砲してきた!!

カタリ
「ほいさっ!!」

カタリが槍を思いっきり地面に突き刺して上へ飛び上がる。その際同時にダインの腕を引っ張って
空中へ頬り投げる。お互いそれぞれ別々の方向へ飛び上がる。そして敵の肩の上に乗り
それぞれ自分の武器で攻撃を始めた。攻撃をするとすぐに肩から飛び降りた。銃弾を上手く交わしていく。

ダイン
「いくぜ、カタリ!!」

ダインが近くにいた敵兵を掴み思いっきりカタリに投げつけた!

カタリ
「そらっ!!」

それをカタリが槍で受け止める。そしてぐるぐる回って遠心力で敵を頬り投げた!
頬り投げた先に複数の敵が固まっていてそのままドミノ倒しに倒れていく。そこをダインがすぐに
トドメを刺しに行く。かなり連携の取れた行動をしていた。



カジ
「ぐうぅぅっっ!!!」
敵デイドラ指揮官
「ぎぃぃっっっ!!!」

お互いの巨剣と巨剣がぶつかり合う。
両者互いに巨人ということもあって今まで小柄な敵と戦ってきたこの二人にとって
遥かに相手が強敵に感じられた。この巨剣はほぼ斬るための道具ではなく叩き潰す道具だ。
しかしこの相手では叩き潰せない。それは敵も同じだ。
気がつけば両者剣を投げて素手で戦いはじめた。

カジが敵に向かってキックをお見舞いする。しかし迂闊に攻撃したカジが甘かった。
右の脇でカジの足を挟み込むとそのまま持ち上げて転倒させた。

カジ
「ぐおっ!」
敵デイドラ指揮官
「ふんっ!!」

敵デイドラ指揮官が倒れたカジの頭を踏みつぶそうとした。しかし横に転がって回避される。
カジが足を大きく動かしてアクロバティックに起き上がる。周囲にいた敵を巻き込んでいる。
かなり重量のある攻撃だ・・・・。

カジ
「今度は我輩の番だ」

カジが左腕で敵に重いパンチで攻撃しにいった。が、またしても敵がカジの腕を抑え込んだ。
だがこれは計算通りだった。

カジ
「かかったな」
敵デイドラ指揮官
「なにっ!?」

カジが余った右腕で敵の顔面を思いっきり殴りつけた。敵はカジの腕を抑え込んだ瞬間に
転倒させようと思っていたが先にカジのパンチの方が早かった。
敵がカジの腕を離す。

カジ
「くたばれ」

カジが全体重を乗っけて右肘で敵の顔を攻撃した。
敵が大きく吹っ飛ばされた。壁に激突し壁にひびが入る。


ダイン
「お、恐ろしいぜ・・・。あの二人の対決・・・」
カタリ
「やっぱ俺達の三倍あるデカサの勝負ってこえぇー・・・・」


カジ
「とどめだ!!」

カジが敵の腹に再び重いパンチを放とうとした。が、それを両手で受け止められた。
そして敵がカジの右腕を掴んだままカジを背負いそのまま投げた。

ジェスター
「一本ー!」
ファン
「ジェスターさんそんなこと言ってる場合じゃありません!!」

敵デイドラ指揮官が細かい蹴り技をカジの頭に蹴りつける。何発かヒットするが
突然敵の顔面にカジの足が飛んできた。後ろへバック転しながら起き上がった。

敵デイドラ指揮官
「くっ・・・やりおるわ・・・」
カジ
「我々はただでさえ生き残りの少ない種族なのだ。このような形で同士を倒さなくてはいけないとは」
敵デイドラ指揮官
「どうでもいい。かかってこい」

二人とも構えのポーズをとる。先にどっちが動くか。
一部のエリート兵はあまりの激闘に戦う事を忘れて眺めてしまっていた。
もちろんその隙に他の誰かに攻撃され餌食となってしまった。

二人とも一歩も動かない。
互いに様子を見ている。だがその時二人の間に一つのグレネードが転がった。

カジ
「!」
敵デイドラ指揮官
「!」

それは爆発せず煙を噴射した。スモークグレネードだ!
だがこれは好機だった。目くらまししている間にカジが前に出た!
が、敵も同じことを考えていたらしくちょっと前に出ただけで敵がすぐ目の前に現れた!
お互いに拳で敵の顔を殴りつける!お互いその攻撃を受ける。
少し後ろによろけた後、敵デイドラ指揮官がすぐに行動に入った。
がカジはそのまま後ろに下がって煙の中へと消えた。

敵デイドラ指揮官
「どこへ消えた・・・!!」
カジ
「ふんっ!!」

カジの肘打ちが敵の後頭部へ入る。いつのまにか後ろへ回り込んでいた。
敵が前に倒れる。

カジ
「よくも我が仲間を殺したな・・・!!これは同士の仇だ!!」

カジが敵デイドラ指揮官の上の馬乗りになるように乗り敵の顔面をどんどん殴りつける。

カジ
「我が学校を爆破した報いを受けろ!!」

これでもかってぐらい敵を殴りつける。なんとかカジを撥ね退けようとしているが
全体重を乗っけたカジは簡単に動かせない。




ギーン
「粗方片付けた。残りはあのデカブツだ」
カタリ
「おいおい、俺まだ戦ってるぜ!」

敵の攻撃を避けながらカタリが攻撃する。

ギーン
「ちっ、援護する!」
ダイン
「おい、今舌うちしなかったか!?」
ピア
「しょうはいんしょう!!」
ミーア
「あと少しだと言っている」
ファン
「はい!」



カジが容赦なく敵を殴り飛ばす。このまま決着がつくと思った。
しかし突然横から大量の弾幕が飛んできた!

カジ
「うっ・・ぐっ!何・・!?」

敵の増援だった。
カジ達がやってきた場所と違うところから敵の増援が続々と現れた。

ダイン
「な、なんだよ・・・。せっかく敵を全員倒せたと思ったら・・・増援かよ・・・!!」
カジ
「くそっ!」

最後にカジが思いっきり敵デイドラ指揮官の頭を殴って一旦影に隠れる。その時何か折れた音が聞こえた。
骨を折ったか?いや、この程度じゃ・・・
すぐにギーンとファンがその変化を感じた。

ギーン
「・・・!魔法の詠唱が出来る・・・!」
ファン
「今カジさんが折ったものは呪文封じの装置だったのかもしれません・・・!!」
カジ
「頭についていたとはな」

ギーン
「後は俺に任せろ・・・。今までの恨みを全部晴らしてやる・・・!!」

ギーンがチャージしていた魔法を再び詠唱しだした!!
この魔法が通れば・・・敵は全滅する。

カジ
「ギーンをカバーしろ!それと階段に誰も人を通すな!ルイがいる!」
カタリ
「おーけいー!!」
ジェスター
「ルイを守るー!!」

だが先程のスモークグレネードがまだ残っていて視界が悪い。今は主に銃撃戦がメインとなっている。
しかし柱の陰に隠れいるギーンを射抜くことはできない。すぐに敵は接近戦を持ちこんできた!
が、カジとダインとカタリの三人の連携技にすぐに撥ね退けられる。

ギーン
「75%完了だ。もう少しだ」
カジ
「わかった」

このままいけばここはすぐに制圧できる・・・!
そう思った瞬間ギーンが隠れていた柱が壊れた。

ギーン
「なっ・・・!!」

柱から腕が伸びていた。敵デイドラ指揮官が柱を素手で壊していた!!敵デイドラ指揮官がギーンを掴むと
そのまま部屋の一番奥まで投げつけた。

ギーン
「うぐぁっ!!!」

壁に思いっきり叩きつけられ色んなところで骨が折れた。
立つことができない。だが立たなくてもいい。魔法を詠唱すれば・・・・。
だが敵の追撃がやってきた。最後の最後まで詠唱を続ける・・・!!

ミーア
「任せろ」

ミーアがギーンのすぐ前に現れ敵の銃弾を針で防ぎ始めた。相殺して落ちた針を再び拾ってまた投げつける。
無限コンボだ。

ギーン
「90%・・・完了だ・・・!!」
敵デイドラ指揮官
「なんとしてでもあの銀髪の小僧を殺せ!!」
ファン
「バリア!!」

ファンがギーンの近くによってバリアを張った。
敵の攻撃を防ぐ。

ファン
「ギーンさん。僕は貴方みたいに強力な破壊魔法を唱える事が出来ません。
戦地に立って分りました。僕は貴方より劣っています。今出来る精いっぱいのこと。
それはギーンさんを守る事です」
ギーン
「・・・・ふっ・・。・・・天才は自分の劣っているところを見つける事が出来る・・・。
・・・俺は何も劣っているものはない。だから俺はここでこの詠唱を通す!!後95%!!!」

地面が揺れ始めた。ギーンの魔法の詠唱の効果だ。
ここまで来ると敵も死に物狂いで魔法の詠唱を阻止しようと足掻く。
だがミーアとファンのガードは固く突破できなかった。

敵デイドラ指揮官
「全てぶち壊す!!」

敵デイドラ指揮官が巨剣で思いっきりバリアを叩きつけた!
いとも簡単にバリアが崩れた

ファン
「さ、最高防衛魔法が・・・!!」
ミーア
「間に合え・・・・!!」
敵デイドラ指揮官
「チェックメイトだ」

再び敵が巨剣を振り下ろしてきた!避ける事は出来ても二人にはこの巨剣を止めることが出きない!!
だが巨剣は止まった。カジが自ら飛び出して自分の体で巨剣を受け止めた!!

カジ
「ぐ・・・ぐぐ・・・。ギーン・・・。やれ・・・!!!」
ギーン
「・・・All of this world are destroyed!!!」

邪悪な色をした渦がギーンを中心に渦巻きそして巨大な爆発が起きた。
その邪悪な光に振れた者は一瞬で灰となり何処かへ吹き飛んでいく。
一瞬の出来事だった。さっきまでわんさか敵が大量にいたのに一気にいなくなった。

カジ
「・・・終わった・・・。我々の勝利だ・・・」
カタリ
「おい!!あいつ消えてないぞ!!」
ギーン
「なっ・・・!!」

敵デイドラ指揮官が立っていた。笑っている。

敵デイドラ指揮官
「すまないな、小僧。吾輩には魔法は効かない」
ギーン
「・・ばかなっ・・・!!!」
敵デイドラ指揮官
「まとめて潰す!!!」

再び敵デイドラ指揮官が巨剣を振り上げた。
カジはさっきの攻撃で動く事が出来ずギーンも動く事が出来ない。
そして他の者ではこの攻撃を止める事ができない。

終わった。




だが次の瞬間銃声が鳴り響いた。

そして敵デイドラ指揮官が剣を振り上げたまま硬直し、そして後ろへ倒れた。

ジェスター
「い、一体何が起きたの・・・・?」

ルイ
「・・・ヘッドショットです」

ルイが狙撃銃を構えていた。
・・・ルイの存在を敵はすっかり忘れていた。

カタリ
「・・・勝った・・勝ったぜ!!!俺達管制塔を制圧したぜ!!」
ダイン
「やったな!!ルイ最後美味しい所貰いやがってよ!こんちくしょう!」
ルイ
「い、痛い!叩かないでください・・・!!」
カジ
「あの傷からよく持ち直したものだ・・・」
ルイ
「突然魔法が使えるようになったので自身にヒールを・・・」
ギーン
「ゴキブリ並の耐久力だな」
ルイ
「・・・せっかく銃器貸したのに何ですかその言い方!!酷すぎm・・・」
ギーン
「銃器貸してくれた助かった。これが無ければ俺は死んでいただろう。・・・感謝する」
ルイ
「・・・・ど、どういたしまして・・・」

ルイの猛抗議が止んだ。しばらくして何故か勝ち誇った顔をしていた。

カジ
「ギーン。お前も変わったな」
ギーン
「ふん・・・・。それより早く爆撃機の居場所を突き止めたらどうだ」
ファン
「探します」

ファンが管制塔に繋がれているメインコンピューターを操作しデータを探し始めた。
ここのパソコンにパスワードは仕掛けられていなかった。

ジェスター
「何でここにパスワードついてなかったの?」
ミーア
「限られた人間しかここには立ち入ることができない。
だからそもそもパスワードかける必要がなかったのかもしれない」
ジェスター
「へぇー・・・」
ピア
「んー・・・んんんん・・・・」
ミーア
「どうした?」
ピア
「・・・げんなーな・・・」
ミーア
「・・・嫌な予感だと?」

皆瞬時に武器を構えた。警戒態勢に入った。

ミーア
「ピアの直感力は時々恐ろしいものがある。・・・警戒したほうがいい」
ファン
「・・・・!!!!た、大変です!!!!」
カジ
「どうした!」
ファン
「ペ、ペストを搭載した爆撃機が・・・た・・たったいま・・出撃しました!!!」
ダイン
「なんだって!?」
ギーン
「慌てるな!ここで呼び戻すように言えば奴はすぐに戻ってくる!その隙に我々が破壊、そして処理すればいい!」
ファン
「そ、それが・・・。爆撃機のあった場所は・・・・。
・・・僕達が・・・モノレールに・・・乗る前の・・場所です・・・」
ギーン
「・・・何だと?」
ルイ
「そ、それって!!仮に私達が呼び戻して今から戻っても・・・時間がかかりすぎて・・・!!」
ファン
「嘘だと気付きすぐにまた出港するでしょう・・・。」
カタリ
「ならここに何人か人を置いてずっと引きとめるってのはどうだ?」
ダイン
「おいばか。ずっと俺達がここを占拠し続けられるはずがないだろ。もう誰か一人でも欠けたら
ここを維持し続けるのはきついぜ・・・・」
カタリ
「・・・そ、そうだがよぉー・・・」
ギーン
「ちっ・・・!モノレールは壊れているから徒歩で戻らねば・・・。
だが徒歩では・・・三日以上は確実にかかる・・・・・。下手すれば一週間・・・。」

もはやここまでか。全員落胆する。

ファン
「・・・?ちょっとまってください・・・。爆撃機を収容している部屋で戦闘が起きているみたいです」
カジ
「・・戦闘だと?」
ファン
「まだ戦闘中のようです。被害はそれなりに広がっているみたいです。」
カタリ
「呼び戻そうぜ!もしかするとそいつが何とかしてくれるかもしれないぜ!!」
ミーア
「待て。状況的に考えて呼び戻せるのは一回だけだ。二回目は通じないはずだ。
・・・不確定要素にかけるかどうか検討したほうがいい」
カタリ
「でも俺達は今どうしようもできないんだぜ!?このまま時間だけ経過させて
やらないで終わらせるのは・・・いくらなんでも嫌だぜ・・・。そんなのは!」
ルイ
「・・・かけてみましょうよ。」







==爆撃機・機内



この部屋に閉じ込められてからかなりの時間が経過している。大体2時間ぐらいか。
完全にこのまま放置させて飢え死にさせたいらしい。
だがこの2時間。ただ諦めていたわけじゃない。ちゃんと工作をしていた。


キュピル
「・・・これでいい」

床に大量の爆弾を仕掛ける。
正確には銃の薬莢からくくり抜いた火薬を部屋にあった箱に詰め込んだ簡易爆弾だ。
しかし威力は十分ある。

一番装甲の薄い床にこれでもかってぐらい仕掛ける。
物陰に隠れながら爆弾目がけてハンドガンを一発発射した。
爆弾にぶつかり爆発が起きた。

キュピル
「ぐっ!」

熱風が襲う。
影に隠れていてもかなり熱い。火傷したかもしれない。
しばらくすると火が消えた。物陰から様子を窺う。

キュピル
「よし!穴があいたぞ」

爆撃機の装甲は厚いが室内の装甲は思ったより貧弱だ。
空いた穴から下に飛び降りる。

トラバチェス兵
「なんだ!?」
トラバチェス兵2
「爆発だ!!」
キュピル
「うおおおぉぉぉぉぉお!!!」

着地した瞬間手に持っていたライフル銃を連射する。
綺麗に敵にヒットしそのまま後ろに倒れた。

キュピル
「もしかすると俺はまだあの部屋に閉じ込められたままだと思われているかもしれない・・・。
だとすればまた見つかっていない状況に戻ったはずだ。・・・慎重に動くか。」

音をたてないように慎重に行動していく。するとすぐ目の前に外に出るハッチがあった。
ここを開けばすぐ外に出れるだろう。・・・だが外に出る前に少し装備をチェックしておこう。

キュピル
「(・・・弾薬が圧倒的に少ない)」

さっきの爆弾を作るのに大量の弾薬を消費してしまったため思いのほか弾薬が少ない。
このままではまずい。

キュピル
「(・・・・ん)」

さっき倒したトラバチェス兵の手持ちを調べてみる。敵はショットガンとその弾薬を持っている。
・・・しかしこれ以上銃器を増やすのは・・・・。
それにショットガンだなんて扱った事がない。だめだ、やめよう。

キュピル
「他に何か使えそうなもの・・・・」

・・・そういえば・・・。
俺・・・トラバチェス兵に変装していなかったか・・・?
気がつけばいつもの兵装に戻っていたが・・・。どうして普通の服装に戻っていた?
・・・記憶が抜けてる。けどそれは今考えないって自分で約束したはずだ。

キュピル
「よし、もう一度変装させてもらおう」

横たわっているトラバチェス兵の服を全部脱がす。
・・・・いい筋肉してるな・・・・。
兵装を奪い付着した血を拭き取る。撃たれて空いた穴は武器で隠せばいい。

キュピル
「よし、これでいい」

これですぐに俺だとは分らないはずだ。
武器に関しては仕方ない。なるべく節約して戦おう。
死体を隠し、ハッチを開けて外に出る





外に出た瞬間轟音が鳴り響いていた

キュピル
「・・・ま、まずい!!」

今まさにここにある爆撃機全てが出撃しようとしていた。
今ここで食い止めなければアノマラドに未来はない。

キュピル
「くそ・・・そうはさせるか・・・!!」

一目散に部屋の隅にあった固定機銃を手に取る

トラバチェス兵
「おい貴様。何をやっている。」
キュピル
「堕ちろおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
トラバチェス兵
「ぐ、ぐわっ!!」

近くの敵兵士を巻き込みながら今まさに飛びだった爆撃機に向けて連射する
硬い装甲を貫く鉄鋼弾が爆撃機を襲う。


機関士
「エ、エンジンに異常発生!!爆発するかもしれません!!」
操縦士
「ペストを積んでる!!ここで爆発しては我が国が甚大な被害を被る!!
直ちに着陸したら攻撃者を始末しろ!!」

被弾した爆撃機だけが再びその場に着陸した。ダメージのなかった爆撃機は結局飛びだってしまった・・・。
だが数を減らせばそれだけアノマラドに余裕を与える。このまま引きとめてペストを処分する!!

キュピル
「食らえ!!」
トラバチェス兵2
「うっ!!」

毎秒60発の弾を発射するこの機銃はもはやガトリングに近い性能を持っている。
この弾幕には誰も近づけない。が、

エリート兵
「ふんっ!!」
キュピル
「うわっ!!」

突然他とは武装もオーラーも違う兵士が上から襲いかかってきた!
まさか二階から飛び降りて奇襲したというのか!?

エリート兵
「死ね!!」
キュピル
「ぐっ!!!」

エリート兵がキュピルの肩に乗りピアノ線のようなもので首を斬ろうとしている。
既に線が首に食い込んでいる。

キュピル
「逆にお前が死ねよ!!」
エリート兵
「!!!」

トラバチェスの兵装についていたナイフを腰から取り出しエリート兵の頭に刺す。
・・・残酷だがこっちも生きるために必死だ。
幸い大動脈までは切られずに済んだ。出血も少ない。・・・ただ痕は残ってしまうかもしれないな・・・。

次々とエリート兵が上から降ってきた。この敵は・・・まともにやりあったら負ける・・・!
一旦身を引くことにした。

だが後ろから正確なショットが襲いかかる。
今までの兵士と違って明らかにAIM能力(射撃能力)が違いすぎる!!
エリート兵が一斉にショットガンを構え同時に射撃してきた。そのショットは正確であり
かつ銃弾爆撃かのようにばら撒いた。どこへ移動してもあたる・・・。

キュピル
「くっ・・・っぅ・・!!」

背中に激痛が走る。まずい・・・死ぬ・・・。

エリート兵
「とどめだ!」

一人のエリート兵がキュピルの背中にショットガンの銃口を突きつける。
そして発砲した。

キュピル
「アガァァッッッ!!!?」

酷い痛みだ。
・・・・。
痛い。即死だ

・・・・・。

・・・いや、まて。

・・・生きてる・・・。俺はまだ生きてる・・・・!!だんだん痛みが引いてきた。

キュピル
「・・・し・・死ねない・・!ここで終われない・・・!!」
エリート兵
「・・・!!?な、なぜ生きている!!」
エリート兵2
「粉々になるまで撃て!!」

徹底的に潰そうとする。
・・・だが・・・。
痛いだけで・・・生きている・・・・・!!!!

キュピル
「うぐっ・・・ぐぐ・・・がああああ!!!」
エリート兵
「ひ、ひぃぃっ!!?」

ナイフを持ってエリート兵に襲いかかる。ショットガンをまともに食らいながら
前進していく。しかし怯まず前に突き進む。そしてエリート兵の胴体にナイフを突き刺した。一発だ。

キュピル
「はぁ・・はぁ・・。まだだ・・まだだ!!」





カジ
「ペストを搭載した全爆撃機に命ずる。異常事態発生、全機帰還せよっ!
繰り返す。異常事態発生、全期機関せよっ!!!オーバー」

次々と ラジャー という通信が入る。

カジ
「これで全期帰還する。・・・後は不確定要素にゆだねよう・・・」
ファン
「・・・?へ、変な通信が・・・入っています・・・」
ギーン
「変な通信だと?」
ファン
「誰かと誰かが無線でやり取りしてる会話をキャッチしたようです・・・。通信を開きます」

ファンがボタンをくるくる回す。最初はノイズしか聞こえなかったが段々とハッキリと聞こえるようになった。


「・・・これがペストの真の能力です」
「ハッハッハ、上出来じゃないか、君。
これこそ私が望んでいた出来だよ。それに・・・全て計画通りに動いてきている。
私は幸せだよ。ハッハッハッハッハ・・・」

ルイ
「この声・・・どっかで聞いた事が・・あります・・!!」
ピア
「・・・校長!!」
ジェスター
「あ!!そ、そうだ!このさっき笑ってた人・・・学校の校長だ!!!」
ギーン
「なにっ!!・・・奴の言う事に耳を傾けろ・・・!」


「・・・首相。それで、あの男をどうします?」
「まだまだ研究に余地がありそうじゃないか。殺さずに適当に生かせておいたほうがよかろう。
フフフ・・・。それにしても・・・。何度見ても出来のいい被検体だ・・・。惚れ惚れする。
後は・・・この男がいつまで理性を保てるか・・・」
「・・・理性?・・・ペストに知能低下という副作用は存在しないはずですが・・・」
「その通り。確かにペストに知能低下の効力はない。しかしだ君。この世のものとは思えない
非情とも言える痛みをずっと味わい続けてみたまえ。・・・・それこそ知能低下の副作用がなくても
勝手に気が狂ってしまうだろう。」
「・・・なるほど。仰る通りです」
「さて・・・では最終段階に向けてそろそろ動くとしよう。」
「わかりました・・」

そこで無線が途切れた

カジ
「・・・聞いたか?」
ジェスター
「聞いた!!あの男ってもしかして!!」
ギーン
「ああ、聞いた。校長が首相だったなんてな」
カタリ
「聞いたぜ!最終段階に向けて動くみたいだな!!」
ミーア
「・・・聞いた。・・・ペスト・・・。まさか・・・な・・・」

全員バラバラの反応を示した

カジ
「・・・仕方ない。一人ずつ聞こう。ジェスター」
ジェスター
「うん。もしかしてあの男って・・・キュピル・・・?」
ファン
「ジェスターさん・・・もしキュピルさんだったら大変なことになりますよ」
ジェスター
「大変なこと?何で?」
ファン
「・・・校長は言ってました。・・その男は今耐えがたい痛みを負っている・・と。
ってことは誰かから激しい攻撃を受け続けてるってことになります。・・・下手すると・・
もはや人間とは思えない・・・その・・・」

ファンの言葉が詰まってしまった。ジェスターも黙ってしまった。

カジ
「・・・ギーン」
ギーン
「校長がトラバチェスの首相だったとはな。ということは・・
校長を倒せばこの戦争は終わりだ。首謀者がいなくなるからな」
ミーア
「首謀者を倒してもまた新たな首謀者が生まれる」
ギーン
「いや、違う」
カジ
「・・・・なんだ?」
ギーン
「・・・まぁいい。俺に一つ策が残っている。その時が来たら言おう」
カジ
「・・・ふむ。ではカタリ」
カタリ
「ああ、最終段階だってさ!ぜってーなんかヤバイ兵器動かしてくるぜ・・・?!
ここで情報はつかめないか?」
ファン
「探って見てるんですが・・・何故かさっきの無線が終わってからこっちでの操作を受け付けなくなって・・・。
一体何ででしょうか」
カタリ
「ちぇー・・・。」
カジ
「最後にミーア」
ミーア
「ペストの真の能力と奴は言っていた。・・・ということは我々が今知っているペストは情報が古いことになる。
ペストの真の能力とは何なのか知る必要がある。・・・知らなければ今後の行動に行き詰る可能性がある」
カジ
「ギーン。ペストの真の能力について何か書類はあったか?」
ギーン
「・・・流石にそのような書類は挟まれていないな・・・・。・・・恐らく今発覚したのではないだろうか。
・・・その男によってな」
ルイ
「その男・・・・。一体・・・誰なんでしょうか・・・。」

全員の話を聞いた後カジが深いため息をついた

カジ
「・・・校長の無線を聞いてからまた一気に謎が増えた。」
ファン
「今僕達に出来る事からやりましょう・・・。何をすべきだと思いますか?」
ギーン
「・・・校長・・いや、トラバチェスの首相をぶっつぶすべきだ!」
カタリ
「おう、俺も同意だぜ!」
ダイン
「ああ。校長にはたっぷり恨みを返さないとな!!」

二人が武器を振り回す。

ルイ
「私もあの人は嫌いです。今すぐにやっつけたいぐらいです」
ピア
「校長んばー!!」
ミーア
「・・・決まりのようだ。確かに校長を倒せば知りえなかった情報が入るほか
上手く行けば戦争も集結する。」
カジ
「確かに上手く行けば終わる。・・・だがいいか。これはトラバチェスという国一つをまるまる相手することになる。
はたして我々にそれだけの戦力・・余力が残っているか」
ダイン
「おいおいカジ。お前らしくないなー!今まで俺達困難な戦いにあたっても乗り越えてきたじゃないか!」
カジ
「ダイン。・・・勇気と無謀は違う。紙一重だがな」
ダイン
「・・・だけどさ・・・」
カジ
「・・分ってる。・・・我々がやらねばならない。
場所は分るか?」
ギーン
「・・・流石に校長の居場所までは分らない。だがいそうな場所はある程度推測できる」
カジ
「どこだ」
ギーン
「この基地中央にあり尚且つ最上階にある・・・王室だ」
ジェスター
「偉い人っていっつもそこだよねー・・。座りたーい」
ルイ
「やっつけたら座って見ましょうか」
ジェスター
「うん。」
カジ
「・・・ではいくぞ。我々はもう後戻りできない場所まで来ている。このまま突き進むぞ!」

全員 おおっー!! と声をあげ管制塔から降りて行った。



二つの激しい戦いが始まっている。


続く


追伸

グロいなぁ




第十三話


少数vs超大人数の闘いを強いられている。
ダメかと思った時もあったが何とかここまでやってこれた一同。
いよいよトラバチェスの核となる場所へ向かう。


ミーア
「・・・・!待て」

ミーアが止まるよう指示した。
全員息を殺す。

ミーア
「敵が来ても動くな」

ミーアがポケットから何か道具を取り出すとそれを皆に向かって投げつけた。
全員ミーアの言う通り動かずじっとしていた。
変な粉を掛けられた瞬間敵が通路の角を曲がって大量にやってきた。
一瞬動きそうになったがミーアの指示通り全員動かなかった。
すると何故か敵はそのまま管制塔の方へ走って行った。

ミーア
「もう大丈夫だろう」
カタリ
「ひゅー、怖かったぜ。今のは」
ジェスター
「動きそうになった・・・」
ピア
「ミーアー、なうん?」
ルイ
「・・何て言ってるんですか?」
ミーア
「『ミーア、今の何?』っと言っている。今のは・・・ちょっと秘密だ。
だが早い話敵に気付かれなくなる秘粉だ」
ギーン
「そんな粉があるとはな。一体どういう成分が混ざっているのか・・・」
ミーア
「・・・秘密だ」
ダイン
「んなこと言わないで教えてくれよ。気になるぜ」
ミーア
「・・・ルイに話そう。そしてその後ルイの反応を見てそれでも知りたいか考えると言い」

そういうとミーアがこっそりルイに何かを話す

ルイ
「・・・最悪です・・・・。知りたくありませんでした・・・。」
ジェスター
「えー・・・」
カタリ
「ますます気になるぜ・・・。」
カジ
「雑談してる暇ないぞ。早く行け」

カジがカタリとダインを押す。二人とも愚痴をこぼしながら先に進むことにした。
しかし事あるたびに大軍の兵士と遭遇しそのたびに謎の粉を振りかけてやり過ごしている。

カジ
「敵の警戒が厳重になっている。これは王室に近づくのはかなり困難だろう」
ミーア
「・・・粉も無限に使えるわけではない。何か別のルートを探った方がいい」
カタリ
「でもよぉー。ギーンの持ってた地図見ると道は一本だけみたいだぜ?」
ダイン
「天井裏とかは完全に通れないみたいだな・・・」
ギーン
「・・・気になるルートがある」
カジ
「気になるルートだと?」
ギーン
「ああ。・・・ここに多数の兵器が保管されているようだ。」

そういうとギーンが地図の上に指を乗せる。

ルイ
「戦車にカタパルトに装甲車に・・・。それがどうかしたんですか?」
ギーン
「・・・もう一個読め馬鹿が・・。ヘリコプターと書いてあるだろ!」
ルイ
「むっ・・・」
ギーン
「ヘリコプターに乗れば王室のある塔にすぐ行けるだろう。」
ジェスター
「でもそれって絶対ばれるよね?」
カジ
「・・・いや、どの既に我々の存在は向こうに知れている。
どの道このまま突き進んでも敵に見つかるのは必然だ。それならば少しでも戦闘の少ないルートを
通って行こう。ヘリコプターを操縦し王室にある窓を叩き割ってそこから乗り込もう。」
ファン
「確かにどうせ戦闘するならなるべく少ない回数に抑えておきたいですよね・・・。」
ルイ
「ところで・・・。誰がヘリコプターを操縦するんですか?」

・・・・・。

誰も名乗り上げなかった。

ルイ
「・・・全員・・・出来ない・・感じですか?」
ダイン
「俺モノレール操縦できるがヘリは流石に無理だ・・・」
カタリ
「乗り物なんて自転車しか操縦できねーぜ」
ルイ
「そもそも自転車を操縦するってあんまり言いませんけど・・・」
ジェスター
「ファンは出来ないのー?」
ファン
「流石に乗り物の運転は・・・・」
ピア
「ギーン!」
ギーン
「・・・悪いが俺にも無理だ」
カジ
「・・・ヘリコプターの操縦の基本は我輩は知っている。だが問題がある」
ジェスター
「問題?」
カジ
「・・・我輩がでかすぎてヘリコプターに乗れない。だから今までいつもヘリの足に乗っかっていた」
ダイン
「・・・プッ」
カジ
「・・・・・・・。ダイン。お前が操縦しろ。」
ダイン
「はっ!?今俺が笑ったからか!?」
カジ
「違う。お前はモノレールを運転できた。それならばヘリコプターも操縦できる。」
ダイン
「いや、関係ないだろ!?」
カジ
「操作方法は簡単だ。今回は難しい操作は特に必要ない。着陸する必要ないからな。」
ミーア
「・・・また敵が来たぞ。最後の粉だ。」

ミーアが再び粉を振り撒く。粉を振り撒くたびにルイが物凄く嫌そうな顔をする。
今回もなんとか敵をやり過ごすことに成功した。
だが次から隠れる事は出来ない。

ミーア
「・・・・行った。素早く行動を移そう」
ダイン
「ああ」

地図に示されている道を迅速に行動していく。
急がなくてはならない。今、不確定要素に頼っている。
管制塔からペストを搭載した爆撃機を呼び戻しそこにいる正体も分らない男がどうにかしてくれる・・・。

これほどの博打はない。

誰も止めてくれるとは思っていない。ただ時間稼ぎにはなると思っている。

しかし全員が気になっていることもあった。
新種のペスト・・・・。

これを知らないではたして進んでいいものだろうか・・・。




==大型兵器格納庫




キュピル
「ぬうううぅぅぅぅぅっっっっ!!!」
エリート兵
「ひ、ひぃぃっ!!!」

渾身の力を込めて敵を殴り飛ばす。さっきと比べると圧倒的に敵の数が減った。
敵を倒したから減ったのではなく恐れ慄いて逃げ出した物が大半だ。

エリート兵2
「だめだ・・・!!こいつ死なねぇっ・・・!!撤退だ、撤退しろーーー!!!」
トラバチェス兵
「馬鹿!逃げたら上司に殺されるぞ!!」
エリート兵3
「ここにいてもあいつに殺される!!!」
キュピル
「くうぅっ・・・」

片膝つくように座り込む。

トラバチェス兵
「あいつだっていい加減くたばるはずだ・・・!死ねよ!!」

そういって小型ロケットランチャーを手に取りキュピルに向けて発射した。
命中し大きく吹っ飛んだ。

トラバチェス兵
「やったかっ・・・!?」
キュピル
「・・・・」
トラバチェス兵
「は、早い!?」

さっき吹っ飛ばされて横になったかと思いきやすぐに起き上がって攻撃してきた!
避ける間もなくナイフで刺された。

エリート兵2
「も、もうだめだ!!俺は逃げる!!!」

殆どの兵士が逃げ出した。残っているのは怪我して動けない人ぐらいだ。
ここは制圧した。


キュピル
「(痛い・・・体中が痛い・・・。けど動ける・・・。そして死んでない・・・。)」

血が止まらない。止まることなく血が流れる。しかし血が尽きる事もない。

キュピル
「治療・・・治療だ・・・」

バックパックから治療道具を取り出す。
とにかくこの狂いそうな痛みから解放されたい・・。すぐにモルヒネを取り出し注射器にセットして腕に刺した。
五分ぐらいが経過しやっと痛みから少しずつ開放されていった。
やっとまともな思考回路に戻ってきた。

キュピル
「(けどこれはただの痛み止めにすぎない・・・。ちゃんと治療しないと本当に狂っちまうな・・・)」

とにかく被弾した弾を体内から取り除く。モルヒネのお陰で痛くないし出血を気にする必要もない。
弾を取り除き消毒して簡単に傷口を縫う。最後に包帯で止血する。
体中被弾していたため治療はかなり長引いた。治療道具も足りるかどうか心配だったが
胴体は防弾チョッキのお陰で殆ど被弾していなかったので何とか足りた。


ゴォォォォォ・・・・・


キュピル
「ん・・・。何だ、この音は・・・・?」

ジェットエンジンの音が聞こえる。
しばらくして格納庫の天井が開き曇った空が見えた。久々に空を見たが・・・あいにくの天気だ。
それよりここの天井は開く仕掛けだったのか・・・!

しばらくするとさっきここに居たペストを搭載した爆撃機が格納庫に戻ってきた!

キュピル
「な、何で戻ってきた・・・?まさかもうアノマラドにペストをばら撒いた後か・・・?」

いや、それはどう考えもない。早すぎる。
・・・何かトラブルでもあったとしか考えられない。どんなトラブルがあったのかは知らないが
これはかなりの好都合だ。

今俺は死ねない(らしい
・・・歩兵戦で全て敵を倒し・・ペストを排除する・・・・!!!


一機目の爆撃機が着陸した。敵の死体から機銃を奪い取る。
すぐに爆撃機の出入口の扉が開き敵兵がぞろぞろ現れた。
読めていたので扉が空いた瞬間機銃を連射した。
不意打ちを食らった敵はなすすべもなくそのまま機銃の餌食となった。

すぐに爆撃機の中に乗り込んだ。
乗り込んだ瞬間横から弾幕が飛んできた。
慌てて荷物の影に隠れる。いくら死なない身とはいえ『痛い』のは勘弁だ。
さっきよく正気を保てたなっと我ながら思う。


キュピル
「くっ!」

荷物の影から素早く身を乗り出し機銃を連射する。
敵兵が何人か倒れる。そしてすぐにまた身を隠した。

その時足元に何か落ちた。
・・・・グレネード。

蜂の巣になる覚悟で飛びだした。案の定激しい弾幕が待っていた。しかしグレネードで木端微塵にされるよりかはマシだ。
負けじと機銃で応戦する。

キュピル
「くたばれええええっっっ!!!」

腕や足に体・・・次々と被弾する。だがそれでも前に突き進みながら機銃を乱射した。
すぐ後ろで大爆発が起きた。気がつけば目の前にいた兵士全員が倒れていた。
敵は不思議に思っただろう・・・。何発も撃たれているのにどうして立っていられるのか と。

それ以上敵兵士はこなかった。あくまでも爆撃だけをこなす予定だったのだろう。戦闘は配慮してなかったらしい。
すぐに投下ハッチのある場所へ移動した。


投下ハッチはかなり薄暗かった。電気をつけて明るくする。
明るくなって辺りが見渡せるようになった時初めて異変に気付いた。

キュピル
「・・・・ない・・・?」

ない。何もない。

ペストがないんじゃない。


本当に何もない



爆弾もペストも投下するはずのものが何もない。

まさかここではない場所に保管している・・・?
念のため爆撃機の中をくまなく探したがペストはおろか爆弾も武器も防具も何も見つからなかった。

キュピル
「何故だ・・・何故ない・・・!?」

実は全ての爆撃機にある・・というわけではない?
他の爆撃機の中も調べてみよう。


一度外に出る。多数の兵士が外で待ち構えていたが
機銃で対抗する。撃たれても今はどうでもいい!

キュピル
「くっ・・!!・・・む・・・」

カチッという音と共に機銃が動かなくなった。弾切れか。

キュピル
「くそっ!」

機銃をぶん投げる。敵にぶつかり一人後ろに倒れる。
しかしこのまま撃たれ続けるのも・・・問題がある。
すぐに他の爆撃機に乗り込み一旦隠れる。
そしてすぐにハッチを閉めレバーを回して鍵を閉める。
これで簡単には突破されないはずだ。
・・・敵が中にいなければ・・・。

キュピル
「(・・・まだライフル銃持っているが・・・こいつの弾が本当になくなる寸前だ・・・)」

しかしさっきの戦闘でまたずいぶんと撃たれてしまった。まだモルヒネの効果が続いているおかげで
痛み自体は全く感じない。
しかし効果が切れたら・・・・

キュピル
「迅速に行動しよう・・」

ここの爆撃機にペストが搭載されてるか調べよう。
爆弾投下ハッチまで降り扉を開けて格納されてる部屋に入る。
しかしここにもなかった。

キュピル
「・・・よくよく考えてみると・・・。これは異常だな・・・」

何故何も搭載していない爆撃機まで出撃していた?
いや、それどころかまだペストすら見つけていない・・・・。
・・・・何か怪しい・・・。

キュピル
「・・・しかし偶然この二機だけペストを積まれていなかっただけかもしれない・・。
もっと調べてみないと・・・」

時間はかかるしダメージもかさむ。しかし調べないわけにはいかない。
外に出ようとした瞬間、たくさんの兵士の気配がした。・・・外で待ち構えてる。

キュピル
「・・・別の出口から出るか」

正反対にあるハッチを開けて外に出た。無能にも誰もいなかった。







==大型兵器格納庫2


カジ
「ここだな?」
ギーン
「間違いない」
ジェスター
「敵いる?」

ミーアがゆっくり顔を覗きこませる。

ミーア
「・・・・敵は少ない。」
カジ
「我々を探そうと出向いてるのだろう。動いてる分固定の部屋にいる兵士の数が少なくなっているのだろう」
ルイ
「この程度の数なら何とかなりそうですけど・・・。見つかったら呼ばれますよね?」
ギーン
「その通りだ。だが俺に任せてもらおう」

ギーンが何かの魔法を唱える。すぐに詠唱が終わり蒼い粉を手の上に召喚した。
手の上に乗ってる砂を吐いた息で吹き飛ばす。砂が武器庫の方へ飛んでいく。

ピア
「あー・・・・」
ミーア
「知ってるのか、ピア」

ピアが頷く。
しばらくすると部屋の中にいた敵兵全員の動きがのろくなり更に暫くまつとついに倒れてしまった。

ジェスター
「倒れた!」
ギーン
「眠っただけだ」
カタリ
「なんだよー、こんな強い魔法持ってたんだったら戦闘中に使ってくれよな」
ギーン
「貴様が眠ってもいいと言うなら構わんが?」
カタリ
「・・・やっぱいいぜ」
カジ
「あのヘリを使わせてもらおう」

カジが一番大きい戦闘用ヘリコプターに駆け寄る。これなら全員乗れそうだ。
しかしその分操作が難しそうだが・・・・。

カジ
「ダイン、この席に座れ」
ダイン
「おいおい、まじで俺が運転すんのかよ!カジ出来るんだろ?やってくれって!」
カジ
「見ての通り我輩の身長は3mもある。普通の席に座ることすら難しい。」
ファン
「先程の通路通る時も頭ぶつかるスレスレでしたしね・・・・」
カジ
「幸いにもこのヘリには両サイドに主翼がついている。そこに捕まるとしよう。
そこで指示を出す。その通りにレバーとペダルを動かせばいい」
ギーン
「相変わらず無茶な事をする。」
ダイン
「・・・ちくしょう、やるしかねーーー!!!」
カタリ
「おうー!ダインやったれー!!」

ダインが運転席に座る。

カジ
「基本操作は簡単だ。
右足のペダルを踏めばプロペラの回転数が上がる。それを踏み続ければ高度が上昇していく。」
ダイン
「わかった」
カジ
「そこにあるレバーを前に倒せば機体が前に傾く。すなわち前に移動だ。
後ろに傾ければ機体が後ろに傾く。後退だな。前に進んでる時に後ろにレバーを倒せばブレーキになる。
レバーを左に傾けると左に平行移動する。逆も同じだ。
旋回だけしたければ左足のペダルを踏みながらレバーを左右に傾けろ。
間違ってもペダルを踏んだ状態で前後には傾けるな。」
ダイン
「了解」
カジ
「ギーン。お前は副操縦席に座ってダインをサポートしてやれ。主に機械の操作な」
ギーン
「いいだろう」

全員ヘリコプターに乗り込む。カジだけ主翼に捕まる。

ルイ
「な、なんか凄く怖いんですけど」
ファン
「全員怖いと思いますよ・・・」
ギーン
「ダイン。準備出来てるか?出来てるなら格納庫のハッチを開けるぞ」

ギーンが後ろの席で機械を動かす。ある程度の知識はあるようだ。

ダイン
「いつでもいける」
カタリ
「ダイン、まじで落ちるなよ!」
ダイン
「縁起でもないこと言うなって!」
ルイ
「ま、ま、全くです!!!」
ジェスター
「・・・・ガクガク」
ファン
「・・・そういえばジェスターさん高い所苦手でしたね」
ジェスター
「怖い!」
ミーア
「・・・普通考えて一番怖いのはカジじゃないのか・・・?」

ダインが右のペダルを踏む。ローターが動き出しプロペラが回り始めた。

カジ
「そのまま踏み続けろ!レバーは動かすな!」
ダイン
「お、おう・・・」

しばらくするとついにヘリコプターが飛んだ!

ダイン
「と、飛んだぜ!!」
ジェスター
「ぎゃああぁぁぁ!!」
ピア
「ジェスター・・ぷぷ。」
ジェスター
「・・・・・こ、怖くない!」

離陸は成功した感じだ。
格納庫の天井を抜け外に出る。

ダイン
「うおっ!?」

外に出た瞬間機体の安定が損なわれ始めた。

カジ
「風が吹いただけだ。下手にレバーは動かすな」
ダイン
「ああ・・・」

そのままペダルを踏み続け十分な高度を得る。

ミーア
「見ろ、あの塔だ」
ファン
「大きいですね・・あの塔・・・」
カタリ
「まるで魔物が居そうな感じだぜ・・・。」

その塔は明らかに他の建物よりも圧倒的に高くまるで他の人を見下しているかのようにも見える。

ルイ
「塔は横にありますね・・」
カジ
「ダイン。左のペダルを踏みながらレバーを右に傾けろ」
ダイン
「おう」
ミーア
「カジ、落ちるな」

機体が右へ旋回し始めた。カジはしっかり主翼へ掴まっている。
しっかり塔の方向へ向いてからレバーを元の位置に戻す。ところがすぐには止まれず真正面どころか
180℃回ってまた真横に来てしまった。

カジ
「ダイン。ヘリコプターは慣性の力が非常に強い。ちょっと倒しただけで90℃ぐらいなら回る」
ダイン
「わ、わかった・・・」

再び左足のペダルを踏みながらゆっくりレバーを左に傾ける。回転が始まった瞬間すぐにレバーを元の位置に戻した。
今度は少し回転が足りなかったが先程と同じ操作で微調整し何とか塔を真正面の位置に持ってくることに成功した。

ダイン
「出来たぞー!」
カタリ
「さっすがだぜ、ダイン!」
ギーン
「騒ぐな」
カジ
「そのままレバーを前に傾けて塔へ直進しろ。いいか、ぶつかるなよ!」
ダイン
「おう・・・」
ギーン
「ダイン。気持ちはやめにレバーを戻すつもりで操作しろ。それと深く倒すな」

レバーを浅めに前に倒す。ゆっくり前へ傾き前方へ進み始めた。

ジェスター
「落ちるーーー!!」
ルイ
「違います!きっと違います!」
ミーア
「一体何を否定している・・・」

そのまま塔へ向かって高速移動する。

ダイン
「ちょ、ちょっと早くないか?」
カジ
「気にするな。我輩がレバーを戻せと言ったら戻せ。いいな」
ダイン
「ああ」

どんどん塔へ近づいていく。が、その時重大な事が発覚した。

ギーン
「・・・・カジ!!窓がないぞ!!」
カジ
「なに!?」

今回の作戦の予定では塔へ近づき窓を割って中に入る予定だった。
しかしベランダはもちろん窓も何もなかった。様々な鉱石と最高の強度を持つオリハルコンを混ぜ合わせた
合成鉄材で固められていた。

ルイ
「アンチマテリアルライフルやRPG7を無限に打てたとしてもこれは壊せません!!」
カジ
「構わん、突っ込め」
ダイン
「おい、正気か!?」
カジ
「忘れたか?こいつは戦闘用ヘリコプターだぞ。この程度の強度なんぞミサイルで貫ける!」
カタリ
「・・・まじかよ!」
カジ
「ダイン!レバーを戻せ!そしてそのレバーにある赤いトリガーを引け!」
ダイン
「おらぁっ!」

ダインが赤いトリガーを引く。ヘリに搭載されていたミサイルが塔に向かって飛んで行った。

カジ
「ぐおぉっ!」

カジに強烈な熱風が襲いかかる。
飛ばされそうになったが何とかしがみついていた。
熱い。しかしすぐに冷えた感覚がした。何事かと思ったがギーンが冷却魔法を唱えていた。

カジ
「助かる」
ギーン
「・・・チームワークは重要だ」
カタリ
「お前からそんな言葉が聞けるとはなー、おーいおいおい」

カタリが泣き真似する。戦闘前だというのに雰囲気は和んでいる。

ファン
「ミサイルが塔に命中します!」

四発のミサイル全てが塔に命中した。強烈な爆風が発生した。
爆風でヘリが押し戻されそうになる。

カジ
「レバーを前に倒せ!!」
ダイン
「ぐ、ぐおぉぉ!」

なんとかバランスを維持することができた。

ファン
「塔は・・・どうなりました!?」
ピア
「・・・・」
ミーア
「無傷・・ではないな。壁が一部削れている。」
カジ
「積んでいるミサイル全て発射しろ!」
ダイン
「いっけえええ!!」
カタリ
「やっちまえー!!!」

ダインがトリガーを連射する。
ヘリコプターが搭載していた28発のミサイルを全て発射した!!
全てのミサイルが塔に命中し強烈な爆発が起きた。
上手い事ダインがバランスを取っていく。

カジ
「上手いぞ!」
ルイ
「見てください。塔に穴が空きました!!」

崩れはしながったが塔に穴が空いている。ここから王室へもぐりこめる!!

カジ
「あの穴から侵入するぞ。」
ダイン
「ま、待ってくれよ。俺はどうすればいいんだ!?」
カジ
「我々が乗り込んだ後はそのまま上空でヘリを待機させろ。すぐ脱出できるようにな」
ダイン
「カジがいないと俺運転できねえよ!」
カジ
「どうしても不安なら超高高度で待機してればいい。」
ファン
「あの穴への移動は魔法を使って一時的に浮遊して入りますので接近する必要はありません。逆も同じです」
カタリ
「ダイン、頑張ってくれよ!」
ルイ
「ダインさん・・・!」

ダインが少し黙った後

ダイン
「・・・わかった、やってみせる」
カジ
「・・・頼んだぞ」
ファン
「準備はいいですか?」

全員頷く。ファンが魔法を詠唱する。魔法陣が作りあげられその辺りに天使の羽のようなものが舞い降りた。
突然ダイン以外の全員の体が軽くなりふわふわと宙に浮きだした。

ファン
「30秒しか持ちません。行きますよ」

すぐにファンがヘリコプターから飛び降りた。もちろん落下せずそのまま流れるように塔へ入って行った。
次にカジ、カタリ、ルイが入って行き最後にピアが入って行った。

ダイン
「俺は上空で待ってるぜ!!」
ルイ
「お願いしますーーー!!」

ダインがペダルをベタ踏みし超高高度まで飛んで行った。




==王室



部屋はかなり暗かった。
明りは今壊した穴から漏れた光しかない。

カタリ
「なんだよぉ、ここは。暗すぎるぜ。」
ギーン
「校長は・・・どこだ!?」
校長
「おやおやおや・・・。随分と手洗い真似してくれたね」
ギーン
「・・・校長、いや反逆者め!!」

ギーンがいつになく燃えている。

カジ
「落ちつけ」
校長
「ハッハッハ、元気があって結構結構。」

かなり余裕の表情をしている。何か策でも持っているのか?

ギーン
「・・・はっ!」

ギーンがいつのまにかチャージしていた魔法を解放した。
下の階へと続く道を魔法で塞いだ。

ギーン
「これで逃げ場はないぞ。増援もない。残念だったな」
カジ
「でかしたぞ」
ジェスター
「援軍いないならあんなお爺さんすぐやっつけちゃうよー?」
校長
「おやおや・・。増援が出せないとは。」

校長がわざと困ったようなそぶりを見せる。果てしなくウザい。

ギーン
「投降しろ。このふざけた戦争を止めろ」
校長
「止めろだと?何を言い出すんだ。あともうちょっとでペストが完成するというのに?」
ファン
「ペストが完成・・・?ペストはもう完成していたのではなかったのですか・・・?」
校長
「君達が手にしているペストはダミーだ。・・・真っ赤な嘘。」
ギーン
「・・・・やはりか」

無線で聞いた時から怪しいと思っていた。
ということは・・・ペストに感染した場合他の症状が現れると言う事・・・・


ルイ
「ペストの本当の症状は一体・・・何なんですか!?」
カタリ
「どうぜロクでもない大量虐殺兵器さ。悪趣味だぜ・・・」
ギーン
「爆撃機にペストは搭載していたはずだ。アノマラドに投下する予定だったはずだから人体に悪影響を及ぼすはずだ」
校長
「・・・ウィルスというのは何も人体に全て害を引き起こすわけではない・・・。時には
ウィルスが人体に対して手助けを行うこともある・・・。この意味が分るかね?」
ジェスター
「わかんなーい!」
校長
「低学歴の君にはわかるまい。」
ジェスター
「・・・・・」

ジェスターの髪がピクッと動いてる。怒っているみたいだ。
しかし事の深刻さを理解しているらしく我慢しているようだ。

校長
「君達にヒントを与えよう。・・・爆撃機にはペストは搭載されていない」
ルイ
「えっ!?」
ミーア
「・・・・空か?」
校長
「流石はミーア君。君は学校にいた時も優秀だったかな?」
ミーア
「・・・・ふん」
カジ
「空・・・ではなぜアノマラドへ飛ばした」
校長
「それもダミーだ」
カジ
「ダミーだと?」
校長
「御存知の通り・・・・君達の知っている人物が一人。ペストに感染している。
・・・誰だかわかるかね?」
ジェスター
「・・・・キュ、キュピル・・・!!!!」
校長
「あの男は実に優秀だった。おかげで実験のデーターを多く得る事ができた。」
ルイ
「キュピルさんは・・・今どうなっているんですか!?」
校長
「ククク・・・本当は知っているはずだろう?・・・無線を聞いたのだからな」
カジ
「・・・非情とも言える痛みを味わっている・・・。」
ミーア
「そして気が狂ってしまった・・か。・・・死より恐ろしい」

一気に場の空気が変わった。

カタリ
「だけどそれと爆撃機に何の関係があるって言うんだよ!?」
校長
「まだ気付かないとは。君は成績が低かったな?」
カタリ
「うるせーなー!」
校長
「実験データーの収集のためにだよ。いくらペストの恩恵が乗っかっていても
兵士全員で攻撃しては体の一部が吹き飛んでしまって実質死んだのと同然だ。
だから最低限・・・体が保つように第一波、第二波と別けた。
そして頃合いの頃に・・・君達が呼び戻してくれる。」
ギーン
「俺達が司令塔を占拠して呼び戻すのは計算のうちだと言うのか・・・!?」
ルイ
「それよりも自軍の兵士を実験データー収集のためにいとも簡単に捨てるなんて・・・許せない・・・!」
校長
「質問は終わりかね?では君達にペストの最後のデーター収集を手伝ってもらおう・・・」

そういって校長が試験管のようなものを取り出した。

カジ
「止めろ!!」

全員校長に向かって突進した。ただ一人を除いて・・・。
校長が試験管を投げた。くるくると回りそれを受け取った人がいた。
・・・突進したとき一人動かなかった人だ。

ミーア
「・・・ピア!?」
校長
「よく働いてくれた。ピア。ハルララスなんかより正確な情報だったよ」
ピア
「彼はユーファがついていた。それが一番問題だったはずよ・・・」
カジ
「ピア!?どういうことだ!?」
ピア
「ふふふ・・・。さぁね?どういうことかしら?」
ルイ
「ピアさん・・・?・・・ま、まさか・・ピアさん・・・!!?」
ファン
「スパイ・・・!?」
ジェスター
「い、いつもみたいにンバーとか言って!」
ピア
「はぁ?何言ってるの?チビ。あんな恥ずかしい演技もうしたくないわ」
カジ
「・・・なんということだ・・・」
カタリ
「し、しかしよぉ・・!!ピアは・・俺達と一緒に戦ってたぜ!?敵のはずないだろ!?」
ピア
「真のスパイってのは完全に敵軍の役を演じる事・・・。あたかも私の敵がトラバチェスだったかのようにね。
まさかトラバチェスの人がトラバチェスを殺すなんて誰も考えもしないわ」
校長
「ハッハッハ。ではピア君。君の活躍。期待しておるからな」

そういって校長が指でパチンと音を鳴らしどこかに消えていった。・・・ワープか?

ミーア
「・・・ピア!!ふざけたことはやめろ!!」
ピア
「ミーア。学校ではよくしてくれてありがとう。でもうざかったわ」
ミーア
「ピア!!!!」
ピア
「さぁ、始めましょ」

そういってピアが試験管の蓋を開けた。

ミーア
「・・・あの金庫の中に入っていた試験管・・・あれはワクチンではなくペストだったのか・・・!」
カジ
「ピアを止めろ!!」

カジとカタリが前に飛びだしルイとミーアも前に飛び出た。
が、ピアから謎のオーラが溢れ近づこうとするが足が痺れて動けない。

ルイ
「こ、これは・・・何・・・!?」
カタリ
「魔法なのか・・・!?見たことないっ・・・!!」
ギーン
「こんな魔法は知らん!!」

足どめを食らってるうちにピアが試験管の中に入っていたペストの液体を全て飲み干した。
そしてその試験管をミーアに投げつけた。

ミーア
「・・・・」

キャッチして何処かに捨てた。

ファン
「あんなにミーアさんを守ろうとしていたピアさんが・・・信じられません・・・」
ルイ
「誰が・・味方なのか分らなくなります・・・」
カジ
「効能が現れる前に潰せ!ふんっ!」

カジが巨剣を投げ飛ばした。足は動かなくても上半身が動く。
目にもとまらぬ速さでピアに向かって巨剣が飛んでいく。
突然巨剣を投げつけられたピアは避ける事が出来ず
そのまま肩に突き刺さり後ろへ吹き飛んで壁に叩きつけられた。

カタリ
「こいつは致命傷だぜ!」
ミーア
「ピア・・・!」

足のしびれがなくなった。ミーアがとっさにピアの元へ行く。

ギーン
「よせっ!」
ピア
「はぁっ!!」
ミーア
「っ!?」

ピアが空いた手で魔法の剣を召喚しミーアへ向けて突き出した!
辛うじて小さな針で受け止める。

ミーア
「頼む、ピア。投降するんだ・・・!」
ピア
「じゃ、あんたが投降すれば?」

ピアがミーアを押しだす。そしてすぐに立ちあがり続けざまに突きを繰り出した。早い!

カタリ
「援護するぜ!」

空中から槍をもったカタリがピアを突き刺そうと急降下しはじめた!
すると突然ピアがカタリに向かって指を向ける。指から細い電撃のようなものが飛んできた。

カタリ
「あぐあ!」

空中で痺れそのまま真下へ落ちていった。

カタリ
「あいったたた・・。」
カジ
「ピアには悪いが数の暴力で倒せ。ルイ、隙を見て強烈な一撃を叩きこんでやれ。・・・意味は分るな?」
ルイ
「はい・・・」

ルイがしゃがんでSVDを構えた。・・・いつでもヘッドショットできるように待機している。

ピア
「はっ!たあぁっ!!」
ミーア
「くっ!」

かなり機敏でその上に手数がある。しかも剣が重たく防ぐたびに針が折れ後ろへ後退していく。

カジ
「我輩も混ぜて貰おうか」
ピア
「!」

いつのまにか後ろに回り込まれていた。カジが後ろからピアの後頭部を思いっきり殴る。
・・・・かと思ったらしゃがんで避けられカジの後ろへと回っていた。
しかし後ろへ蹴りを繰り出すカジ。ところが足を脇で受け止められた。

カジ
「なにっ・・・」
ピア
「遅いよ!」

そういってカジの足を持ち上げバランスを崩しカジの足を剣で突き刺した!

カジ
「っっ!!!!」

ガクンと崩れる。

ルイ
「狙いが・・・定まらない・・・!!」

援護しようと必死に照準を合わせるが動きが機敏すぎて正確な狙いがつけられない。
下手に発砲すると味方に誤射する可能性がある。

ファン
「カジさんを撤退させます!」

ファンが念動力(魔法)を使ってカジを引き寄せた。
次にピアが目をつけたのはギーンだった。
ピアが魔法の剣を投げる。バリアで防ぐ事ができた。だが再びピアに目を合わせた時
すぐ目の前まで接近していた!

ギーン
「早いっ・・!?」

直接拳や肘でギーンを攻撃していく。小柄なのに一撃が非常に重たい。
そして殴られるたびに火傷のような痛みが走る。・・・エンチャント魔法か・・・!?
律儀に学校で習った事を活用している・・・・。

カタリ
「ギーン、今助けるぜ!」

再びカタリが空高く舞い上がって槍でピアを突き刺そうとした。
しかしまた指先から細い電撃を飛ばしてきてそれにぶつかり痺れて地面に落ちた。
だが今この瞬間に隙があったのを見逃さなかった。

ルイ
「ファイア!!!」

ルイが狙撃銃を発砲した。

ピア
「いぎあっ!!」

足に命中しピアがその場に倒れた。

カジ
「ルイ・・・!いくぞ・・・!!!」

偶然近くにいたカジが気力を振り絞ってピアの元まで根性で走っていく。
カジがピアの首根っこを掴みルイに向かって投げつけた!

ルイ
「ピアさん・・・ごめんなさい・・・!!」

ルイがピアの額に照準を合わせ発砲、ヘッドショットを決めた。
ヘッドショットを貰ったピアは今度は後ろへ吹き飛び転がって倒れた。

ギーン
「終わったか?」

治療しながら言う。
カタリが恐る恐る近づきピアを軽く槍でつつく。
しかし反応がない。腕を掴み脈を測る

カタリ
「こりゃ死んだぜ・・・止まってる・・・。・・・ピア・・・。なんでこんな見える裏切りをしたんだ・・・」
カジ
「悲しむ暇はない。校長を探すぞ。ギーン。校長の場所は分るか?」
ギーン
「魔法を使うとその痕跡のようなものが宙に残る。既に何処へ逃げたか解析済みだ」
カジ
「流石だな。ダインを呼んでさっそく向かうぞ」
ジェスター
「カジ避けて!!」

ジェスターのとっさの一言ですぐにカジが横へ転がった。あと一秒遅れてたら背中に剣が突き刺さってただろう。
全員ピアの方へ目をやる。

ピア
「・・・・・」
ルイ
「ヘッドショットを貰ったのに生きている・・・!?」
ギーン
「機能不全に陥っているはずだ!何故だ・・・!?」
ピア
「ひひっ・・・ひひひ・・・」

壊れたおもちゃのように不気味な笑い声を出しながらゆっくり立ちあがった。

ピア
「たああああああぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!」

ピアが宙に浮き上がり巨大な魔法陣を紹介した。

ギーン
「!!。最高位魔法が飛んでくるぞ!避けろ!!」
カタリ
「何の魔法だよ!?」
ファン
「メテオです!!」
カタリ
「げぇっ!?」

塔の外壁を突き破って炎を纏った隕石が襲いかかってきた!

ジェスター
「わああぁぁぁ!!」
ルイ
「ジェスターさんこっちです!」

ルイが隕石に向かってRPG-7を発射する。隕石とぶつかり粉々に割れた。

カジ
「ふんっ!!!」

巨剣を投げつけて隕石を破壊する。力技だ。
何人かはカジの元に集まり何人かはルイの元に集まった。

カタリ
「た、助かったぜ・・」
ルイ
「あの強度の壁をいとも簡単に破壊するなんて・・・。当たったら即死ですよ・・・」
ピア
「キキ・・キキキッ・・・・」
ギーン
「釣り糸の切れた人形のようだな」
ルイ
「くうっ!!」

ルイがRPG-7を続けてピアに向けて発射した。
ヒラリと空中で避けられたがもう一発連続で撃っていたことに気付かなかったのか二発目の攻撃は命中し
そのまま下へと落下した。

カジ
「とどめを刺す」

カジが巨剣を持って再び前に飛び出た。カタリも前に出て武器を振り回しながらピアにとどめをさそうとした。

ピア
「えいいっ!!!」
カジ
「ぬぐっ!」
カタリ
「うわっ!?」
ピア
「はぁっ!たぁっ!!ていやぁああ!!!」

酷い怪我を負っているはずなのに突然動きが再び機敏になりカジの持っている
巨剣程の長さの魔法の剣を召喚し恐ろしい速度で振り回し始めた!

ファン
「回復したのですか!?」
ミーア
「いや・・・怪我は回復していない。意志で動いているのかもしれない。・・・恐ろしい精神力だ」

何とかピアの攻撃をかわし続ける二人。しかし攻撃することができない。

ルイ
「援護します!」

ルイがSVDで再び狙撃しはじめた。

ファン
「狙いやすいように支援します」

ファンがピアに向かって痺れ作用のある雷魔法を発した。
しかしピアが指をクイッと動かしファンに跳ね返した。

ファン
「ヒィエエエーーー」
ジェスター
「ファンが痺れてる・・・」

カタリとカジの隙をついた接近攻撃。時々遠距離から飛んでくる銃弾と針と魔法弾。
いくらペストの恩恵を受けているとはいえ、まともに相手にダメージを与える事ができず
ピアはそのままジリ貧を強いられていた。

しかしギーンがある事に気がついた。

ギーン
「・・・・!ピアが魔法を詠唱している・・・!」

攻撃を避けつつたまに攻撃しているがよくみると魔法を詠唱している。
何の魔法を唱えているのかは分らない。

ファン
「阻止してください!・・・ヒッィェェー」
ジェスター
「まだ痺れてる・・・」

ルイ
「二人とも離れてください!」

ルイがAKL-47を手に持ちピアに向けて掃射を始めた。
広範囲に発射していく。何発か避けているが避けた先に弾丸が飛んできて何発か当たっている。
だがそれでも動きが止まる事なく詠唱を続けている。

ギーン
「恐ろしい集中力だ・・・唱え切る前に意識を失わせろ!!!」

ギーンも対抗して魔法を詠唱する。

ギーン
「メガバースト!!」

巨大な炎の弾を召喚しピアに向けて発射する。更に立て続けに詠唱し合計五発ものメガバーストを放った。
これほどの魔法を連続で唱える事が出来る人物はそうそういない。

ピアがメガバーストを避ける。しかし

ギーン
「悪いがホーミング性能をつけている」
ピア
「・・・・!!」

避けたと思ったら再びメガバーストが迫ってきた!
もう一回避けようとするが別のメガバーストにぶつかり更にもう一発のメガバーストにぶつかり更に・・・っと
連鎖していき結局全てのメガバーストが命中した。

全身炎に包まれ皮膚が焼けていく。

ピア
「・・・・・・・・」
カタリ
「黙ったか!?」
ギーン
「・・・いや、詠唱を続けている!!小さな声で・・・」
カジ
「くっ!メガバーストが熱すぎて近づけん・・・!!」

ピア
「闇術・隔離された世界・・・!!!」

ピアが呪文を発動しピアを除く全員をバリアで囲い閉じ込めた。

カタリ
「なんだ、何が始まるんだ!?」
カジ
「ふんっ!!・・・くっ、びくともしない」

バリアに向かって巨剣を振り回すが傷一つつかない。

ピア
「じわじわと苦しんで死ね・・・!!」

バリアの中に突然水が勢いよく流れ出した。水かさが上がっていく。

ミーア
「・・・溺死させる気か・・・!?」
ジェスター
「ルイー!私泳げない!助けて!」
ルイ
「掴まっててください・・・!」

全員一カ所に集まり泳げない者をカバーしていく。カジは当分大丈夫そうだが・・・。

ピア
「10分経ったらバリアの中に水が全部入るよ。・・・パニックを起こして溺死しろ・・・」

ピアが傷つきながらも言う。

カタリ
「くそっ!これ壊せねーのか!?」
ルイ
「RPG-7!!」

ルイがミサイルを発射する。しかし爆発しただけでびくともしなかった。

カジ
「ギーン!何か手はないか!?」
ギーン
「この魔法は見た事がない・・・。ファン。分るか?」
ファン
「これは・・・魔法とは少し違った物です。呪文です」
カタリ
「呪文?」
ファン
「はい。魔法と呪文は少々違います。呪文は魔法と比べて発動のコストと詠唱時間が長い分
効果がかなり強い物が多いです。・・・このバリアは相当硬いと思います。ですが完璧ではありません。
幸いにも・・呪文に大変有効な魔法を持っています。」
カジ
「発動しろ!」
ファン
「はい。」

ファンが魔法を詠唱する。小さな白い魔法の弾を生み出しバリアに向けて投げつけた。
ゆっくりと不規則な動きをしながらバリアにぶつかった。ぶつかった瞬間爆音が鳴った。

ジェスター
「うるさい・・・!」
ルイ
「鼓膜が・・・!」
カタリ
「み、見ろ!ヒビが入ったぜ!?」
ファン
「持ってるMPを全て使い果たしました・・・。しかしヒビは入りました・・・!!」
カジ
「ヒビ一点を攻撃しつづけろ!!」

全員でファンがヒビを入れた場所目がけて攻撃する。
カジが巨剣でガンガン叩きつけカタリも槍で突きまくりミーアも体術で力の限り殴りつづけ
ジェスターも鉄の棍棒を持ってガンガンたたきつけた。
後ろではギーンが打撃力の強い魔法をぶつけまくり、ルイは狙撃銃を使ってひたすら撃ち続けた。

バリアの破片が飛び散っていく。だが水が腰の辺りまで上がってきた。
水の抵抗が増え段々威力が下がって行った。

カジ
「水が邪魔するまえに壊せ!!」

全員死に物狂いで叩きまくった。
叩けば叩くほどヒビは広がっていく。・・・壊れるかもしれない・・・!!
時間との勝負だった。



しかし。



ピア
「気に食わない・・・。」

ピアが腕を振った。注入されている水が劇的に増えた。
さっきまで腰辺りまで登っていた水がたったの五秒で肩の所まで上がった。更にその五秒後に
水深が2m程まで達した。ここまで水が上がってしまうとヒビを殴る事は出来てもまともな威力はない。

カタリ
「どうするんだよ!!これじゃ溺死しちまう!!」
ギーン
「くっ・・・ここまでなのか・・・?」
ファン
「マナは・・もうつきました・・・」
ジェスター
「ルイ・・・!死にたくない・・・!」

ジェスターがルイの背中にしがみ付く。
しかし返答できなかった。

ピア
「死んでいくあんた達が可哀相だから最後にペストのことについて教えてあげる・・・」

ボロボロながらもピアが語りかけてきた。

ピア
「ペストはもう見ての通り・・感染したら死ななくなるわ・・・。」
ミーア
「不老不死だと言うのか」
ピア
「そうね。体がバラバラになっても生き続けるわ。痛い思いをし続けるだけで・・・」

ぞっとする話しだ。体がバラバラになっても生き続けている・・・!?

ピア
「ウィルスに感染すると脳と心臓・・様々な器官を侵食していく・・・。
そして人間の遺伝子を変異させる・・・。」
ギーン
「遺伝子の変異だと・・。」
カジ
「・・・・ピア。我々はもう死ぬ運命にある。せめて水の流れを緩めて
そのペストの話を聞かせてくれないか?」

カジがらしくない一言を発した。ピアも最初怪訝な顔をしたが

ピア
「・・・ふふ・・いいよ」

と、言い水力が弱まった。恐らくあと10分ぐらいは持つだろう。

カジ
「遺伝子を変異させた後どうなるんだ。答えろ」
ピア
「なんか問い詰められてる感じがするけどいいわ。答えてあげる。
遺伝子を組み替えることによって心臓と脳の働きをちょっと変える。」
ギーン
「・・・働きを変えるだと?ふん、ばかな・・。遺伝子を変えただけでそのような事が・・・」
ピア
「バカがっ、出来るのよ。・・・どう?悔しい?」

ギーンがいつも言ってる台詞を言われる。ギーンの眉がピクッと動く。

ピア
「遺伝子を組み替えられた心臓と脳はちょっとやそっとの事じゃ活動を停止しないわ・・・。
送る血液がなくなっても心臓は活動しつづける。脳がつぶれても脳は活動を続ける。
例え水の中にずっと居て窒息しようが心臓と脳はそんなのお構いなしに活動を続ける・・。
つまり溺死しないわ。」
ルイ
「だけど・・・!心臓と脳を攻撃されたら・・普通は・・・!」
ピア
「そうね、普通はダメになるわ。・・・でもここがペストの重要ポイントよ・・・。
・・・生命力が劇的に飛躍する・・・。脳や心臓を例え直接攻撃されてバラバラになっても・・
すぐ再生するわ。・・・新しい心臓と脳を作り出してね。」
ルイ
「再生する・・・!?」
ジェスター
「化け物・・・」
ピア
「だからルイ。あんたに頭を撃たれた時流石に痛かった。
・・・ちょっとの間死んだよ?」
カタリ
「あの時・・・死んでて・・だけどペストの力で・・再び蘇ったっていうのか・・・!?」
ピア
「その通り。・・・これがペストの本当の効果」
カジ
「そのペストをどうする気だ」
ピア
「さぁ?どうするんだろうね?無敵の軍隊でも作るんじゃないの?」

無敵の軍隊。確かにペストに感染した兵士が襲いかかってくれば・・・。
どれほどの戦力を整えていようがたった少数の兵士に国一つ乗っ取られるかもしれない・・・。

ピア
「もっと話そうかと思ったけど・・・飽きた。そろそろ戻らなきゃいけないし・・・。さっさと死んでもらうわ」

ピアが腕をひと振りする。注入される水の量が上がった。

カタリ
「だ・・だめだ!もう一分も持ちもしねぇ・・よ!!」
カジ
「・・・大丈夫だ。来たぞ」
カタリ
「あ・・・?」

水の音が邪魔で何も聞こえない。だが視界には移っていた。




ダイン
「ピアアアアアアアァァァァァァァッッッッッッ!!!!!!!!」
ピア
「!!!?」

ダインがヘリコプターを急降下させながら搭載されていたバルカンを放った。
耐兵器用バルカンが人体であるピアに直撃する。

ピア
「イギギィィァァァッッ!!!」

悲痛な叫びをあげ・・・・・生々しい姿へと変わっていく。

カジ
「ダイン!!そのバルカンでヒビの入ってる部分を攻撃してくれ!!!時間がない!」
ダイン
「分った!!!」

バルカンを掃射する。ヒビのある場所に命中していないが何度も掃射していくとついにヒビの入った場所に
命中し・・・ついにバリアが割れた!!
穴が空いたのではなくバリア全体が壊れていった。どこか一カ所破壊されると全て壊される仕組みに
なっていたようだ。水が塔の外へと流れ出す。

ジェスター
「はぁ・・はぁ・・こ、怖かった・・・!!」
カジ
「ダイン・・。よくやった。お前に託して正解だった」
ダイン
「魔法のメッセージでいきなり言われた時びっくりしたぜ・・・」
ルイ
「なるほど・・そういうことだったんですか・・」・

ミーア
「・・・ピア・・。」

先の戦闘ではミーアはあまり戦っていなかった。戸惑いがあったのだろう。

ギーン
「ピアを再起不能になるまで叩き潰す。・・・見たくない者は離れてろ」

ギーンがナイフを手に持っている。何をやるのかは明白だ。
全員目をそらした・・・



数分が経った。血まみれになったギーンが戻ってきた。

カジ
「死んだか?」
ギーン
「・・・・生命探知の魔法を発動したが反応がない。今度こそ死んだようだ」
ジェスター
「・・・こんなにもやらなきゃいけなかったの・・・?」
ファン
「・・むごすぎます」

誰も見たくなかった。バラバラにされている・・・。

カジ
「校長を追うぞ。奴を倒し思惑を阻止しなければアノマラドに未来はない」
ルイ
「死を拒絶した部隊・・。こんなものを作りあげてはいけません・・・!」
カジ
「ギーン。校長が今何処にいるか分るか?」
ギーン
「奴はテレポートして何処かに移動した。余裕で痕跡を残していっている。
その痕跡を辿れば到着する。ルートは既に分析済みだ」
カジ
「流石だ。さっそくヘリコプターに乗り込んで向かうぞ」
ダイン
「ダインヘリコプター運送タクシーへようこそ!」

すっかり調子に乗っている。

ファン
「ダインさん。さっきの急降下射撃凄かったです!たったあの短期間で凄い上達しましたね」
ダイン
「だろー?俺は万能だからさー」
カジ
「嘘をつけ。我輩が魔法のメッセージで指示してやったというのに」
ダイン
「・・・言わないでくれよ・・・」
ファン
「・・・そういう事だったんですか」




ピア
「キグ・・グガガ・・・アギギギッ」




全員驚きながら後ろを向いた。
バラバラにされたはずのピアが・・・生きている・・・!!

ピア
「グル・・ジ・・・イィギギガガァァガガガ」
ギーン
「・・・安心していい。ピアはもう我々に攻撃はできない。
・・・頭だけで何が出来る」
ジェスター
「・・・ぅ・・・ぅぅぅ!!!」

ジェスターが急に口を押さえてその場で嘔吐した。
強いショックを受けすぎたらしい。

ルイ
「ジェスターさん・・・。先にヘリコプターに戻ります。」

ルイがジェスターを抱えて先にヘリコプターに乗り込んだ。

カジ
「・・・ペストは絶対に人体に使ってはならん・・・。死ぬことが出来ず・・・永遠に苦しむというのは・・
・・・。想像を絶するな」
ピア
「ダ・・ズゲ・・・アアアァガグギギギギ・・・」

助けを求めている・・・。だが・・・助けることはできない・・・。

ピア
「ミ゙・・・ミ゙−ア・・・ア・・・ア・・・」
ミーア
「・・・ピア・・・・」
カタリ
「行こうぜ・・・」

後ろめたい気持ちを置いて全員ヘリコプターに乗り込んだ。
そして校長の後を追っていく・・・・。



ピア
「・・・・・・・・」




続く


追伸

あと2〜4話ぐらい。



第十四話


ピアはスパイだった。
ペストの本当の効力を知り校長の後を追う。

ダイン
「いっくぜ!スピード出すぞー!!」

レバーを全開に倒して校長がワープした場所まで高速移動する。

カジ
「ダイン!随分と操作が手なれたのはいいが・・早い!我輩が吹き飛ばされてしまう!ガハハ」
カタリ
「おいおい、カジ。お前撃っても絶対離さなそうなのによくいうぜ!」
ルイ
「ほんとあの数十分間の間でよくここまで成長しましたね・・・」
ジェスター
「ダインが何かカッコイイ?」
ダイン
「ハーハハ」
ギーン
「調子に乗るな」

ギーンがダインの頭を叩く

ダイン
「いてっ!俺操縦してっからな!してっからな!!!」
カタリ
「お、ギーンもしかして嫉妬かー?女子陣に褒められてヤキモチやいてるのかー?」
ダイン
「おー、そうだったかー。わりぃーな。」
ギーン
「・・・・」
カタリ
「・・・やべ、ギーンが震えてるぜ・・・」
ギーン
「ここで死にたくなければとっとと武器の手入れでもやってろ!!!!」

何故か逆に全員笑ってしまった。
かなりバツの悪そうな顔をするギーン。

ルイ
「でも女性は私とジェスターさんだけになってしまいましたね・・・」
ジェスター
「むさいー」
カタリ
「いや、わかんないぜ。もしかしたらミーアは・・・」
ミーア
「・・・どっちでもいい。」
カタリ
「・・・両方とか嫌だぜ・・・」

その時ギーンが突然大声をあげた。

ギーン
「この反応は・・・!ダイン!校長の奴またワープしたぞ!」
ダイン
「なんだって!?今度はどこにいったんだ!?」
ギーン
「・・・なんだ、ここは・・・。」

ヘリコプターに搭載されているレーダーを見ると何にもないごく普通の森へ飛んでいた。

ファン
「何かの策・・・?」
ダイン
「それともとち狂ったか?」
ギーン
「遠いぞ。我々がモノレールに乗る前に居たエリアだ」
カジ
「とにかく追え!魔法でも何でも速度を上げろ!我輩に構わず全速力で追え!」
ダイン
「おう」

ファンやルイ。ギーンにカタリ。速度アップの魔法を使えるものが全員で一斉に唱えた。
ヘリコプターが青く輝き、そしてシルフの光にも包まれた。レバーをグイッと倒し超高速で進んでいく。



しかし・・・。一体何故そこへワープしたのか・・・。誰も見当がつかなかった。






==大型兵器格納庫

キュピル
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

全ての爆撃機を見て回った。しかしペストは何も積まれていなかった。
一体どういうことなんだ・・・。

キュピル
「まさか・・俺の見当違いだったのか・・・?」

このまま・・このまま終わらせてたまるか・・・。
きっと他のところに搭載しているに違いない・・・・!!!

エリート兵
「おい、あいつ何時の間に外に出ていたぞ!」
エリート兵2
「撃て!」
キュピル
「死にたくなければ逃げろ!!!」

敵の放つ銃弾を真正面から受け止める。しかし怯まずに突進しナイフで敵を突き刺した。

エリート兵
「ひ、ひぃぃ!!」
キュピル
「うおらぁっ!!」

二人の兵士を倒す。三人目の兵士を突き刺そうとしたところでショットガンを食らう。
大きく吹き飛ぶ。・・・痛みは感じない。

キュピル
「まだまだ!!」
エリート兵3
「な、なんだよこいつ!!死なないぞ!!!」
トラバチェス兵
「む、無線の報告通りだ・・・死なねぇ・・!!」
キュピル
「死ねえええ!!!」
トラバチェス兵
「く、来る!!うわああぁぁぁぁ!!」

トラバチェス兵を一人倒す。
もう敵は完全にパニックを起こし逃走を始めた。
こうなればもう襲ってこないだろう。
・・・・全身血だらけだ・・・。

キュピル
「とにかく他に兵器がないか見ないと・・・」



ビィィィィィィーーーーーーー





キュピル
「何だ?」


Warning announcement.
Warning announcement.

Ultimate weapon. [Jerosu] starts. Board it at once.
Ultimate weapon. [Jerosu] starts. Board it at once.

It will make a sortie in five another minutes.


キュピル
「・・・究極兵器・・・ジェロスが始動する・・?」

五分以内にただちに乗り込めと言ってきている。

大型兵器格納庫内にあった巨大な扉が開いた。

キュピル
「・・・よくわからないが怪しい臭いがする。・・・しかし・・、もう俺には情報が無い・・・。
仲間もいない・・・。・・・だけど突き進むのみだ・・・!!!」

開いた巨大な扉をくぐる。
大きな梯子がありそれをひたすら登っていく。
辺りは暗く何があるのか全く見えなかった。

・・・登り終えるとパルプ式のハッチがあった。
時計回しに回転させ扉を開ける。・・・大型兵器に乗り込むぞ・・・。





==???




校長
「御苦労。準備は全て整った」
???
「いよいよ始動する時が来ました。・・・この日を待ち望んでおりました」
校長
「この兵器。そしてペストが!我々を完全勝利を導きこの大陸全てを制圧できる!
・・・長い戦争に終止符を打つ時が来た。これが終われば二度と戦争は起きない・・・」
???
「そのためにも今ここを・・・乗りきりましょう」

校長と話していた人が機械のパネルを操作した。
突然地面に大きな穴が開き中から巨大な兵器が登ってきた。




ダイン
「お、おい!!なんだよあれ!!」
カジ
「むっ」

突然地面から戦艦のようなものが現れた。
オリハルコンとレアメタルを合成してつくられた超剛鉄の装甲。
直径1800mmの副砲。そして何よりも目立つ超巨大な一つしかない主砲。
これでもかと言うぐらい武装が搭載されている。

巨大なレーダー装置に高出力のエンジン。
何よりも戦艦の大きさが半端じゃない。直径2Kmはあると思われる。

ファン
「な、なんですか!!あの巨大な戦艦は・・・!?」
ジェスター
「鉄で出来た船・・・?でもここ陸だよ・・・?」

数十秒後。地に接していた戦艦が宙に浮き始めた。
全てジェットエンジンで動かしているらしい。・・・なんて力だ・・・!
戦艦の近くにあった森林が暴風でなぎ倒されていく。

ダイン
「無理だ!あれは倒せない!!」
カジ
「あの兵器と相手したらいくつ命があっても足りないな・・・」
ギーン
「・・・!敵がこっちに気付いたようだぞ!」

副砲が狙いを定めている。次の瞬間副砲が機銃のように掃射を始めた。
巨大な魔法弾がマシンガンのように飛んでくる!

ダイン
「う、うわぁぁっっ!!」
カジ
「射角外へ逃げろ!!」

レバーを横に倒し副砲の射各外へ逃げる。
何とか生きている・・・。

ミーア
「・・・恐ろしい戦艦だ。我々が乗っているヘリコプターも十分大きいがあの戦艦と比べたら蟻のような大きさだ・・・」
ダイン
「どうするんだよ!?」
カジ
「・・・我々には最強の武器がある」
カタリ
「・・・白兵戦だな!?」
カジ
「その通りだ。白兵戦となれば兵器の性能は関係ない」
ルイ
「で、ですけど!流石にあの規模の戦艦となれば・・敵はそれなりの兵力を・・・!」
ギーン
「もう遅い。今から逃げれば再びあの副砲の射撃エリアに入る。・・・・進むしかない。」
ミーア
「・・・ピアの仇は取る」
ジェスター
「・・・キュピルの仇も取る・・!」
ファン
「キュピルさんは・・ペストのおかげで生きてるとは思いますが・・・」
ダイン
「カジ、どうすればいいんだ?」
カジ
「あの場所に広い甲板がある。そこに飛び移るぞ。ヘリは捨てる」
ダイン
「あの甲板に近づけばいいんだな?」
カジ
「そうだ」

ダインが丁寧に操作し戦艦の甲板へと近づく。
ダイン以外の人はヘリコプターの扉を開けいつでも外に出れるよう準備する。
甲板の真上に来たその時だった。
突然甲板から巨大な鎖のようなものが飛んできてヘリコプターに衝突した。

カジ
「ぐおっ!」
ギーン
「くっ!!」

衝撃で全員ヘリの外へ降り落とされる。
だが甲板の真上にいたため辛うじて外に落ちずに済んだ。

ルイ
「痛い・・・。大丈夫ですか・・・?」
ファン
「何とか・・・」
ジェスター
「パタパタ・・・」

ジェスター髪と腕を上下に動かしながらゆっくり降りてきた。

カジ
「まさか巨大な鎖が飛んでくるとはな・・・。全員無事か?」
カタリ
「・・・お、おい!まだヘリにダインが残ってるぞ!!」
ギーン
「なに!?」

鎖が突き刺さったヘリにダインがまた残っていた。
シートベルトをまだ着用していたらしくとっさの回避が間に合わなかったようだ。
ヘリコプターはペチャンコに潰れており扉も開かず脱出できないようだ。

ダイン
「やっちまった・・・・」
カジ
「ダイン!!!」

その時鎖が勢いよく甲板へと戻ってきた。・・・・収納だ・・!!
ヘリコプターごと回収しようと落ちてきている!

ギーン
「バリアを張れ!!」
カタリ
「ダインー!!!!」

慌ててギーンとファンがバリアを張る。
ヘリコプターが甲板へ激突し大爆発を起こした。爆風と衝撃が襲ってきたが
バリアのお陰で何ともなかった。

・・・・だが目の前に広がっている光景は残酷だった。

ルイ
「ダイン・・さん・・・!!!」
カジ
「・・・くそっ!ダイン・・・・」

ギーンがバリアを解除する。
・・・・。これは・・・助からないだろう・・・・。即死だ

カタリ
「そんな・・・!!嘘だろ・・!!ダイン!ダイン!!!」
カジ
「よせ、カタリ。」

カジがカタリを抑える。
その裏でギーンが船内へと続くハッチを開けていた。

ギーン
「・・・カタリ。早く船内へ入れ。進むぞ」
カタリ
「嫌だ!!ダ、ダインはぜってーまだ・・・生きてるって!この程度じゃ死なねーよ!!!」
カジ
「現実を見ろ!」
カタリ
「仮に死んでたとしても・・!あと一目・・一目見させてくれよ!!」
ギーン
「カタリ!!・・・見たらお前の中にいるダインが変わるぞ。
・・・綺麗な形をしたダインを覚え続きたいなら見るな。」
カタリ
「・・・!」

ルイとファンがジェスターを落ち着かせようと先に船内の中に入っていた。
ジェスターも泣きじゃくってる。さっきから立て続けに人が死んで耐えられないらしい。

カタリ
「・・・ダインよぉ・・・」

・・・・。返事はない。

カジ
「・・・時間がない。カタリ。悪いが行くぞ」
ミーア
「・・・ダイン・・・」

無理やり引っ張って船内の中へ入っていく。
こんなところで・・思いもよらない犠牲を払ってしまった・・・・。

でも止まれない・・・。進まなければ・・今度は自分があんな目に会う。




ダイン
「・・・カ・・・タリ・・・・。・・・す・・・ま・・ない・・・」

志半ばで尽きた



==ジェロス・船内


通路に入った。
入った瞬間ミーアが何かに気付いた。

ミーア
「・・・人が来る。確認しに来たのかもしれん」
ファン
「隠れる場所は・・・ありませんよ!」
カジ
「目の前の扉に入るぞ」

何があるのか分らないが目の前の扉を開け全員中に入る。
扉を閉めた瞬間通路の角から大量の兵士がぞろぞろとやってきた。


==階段


ファン
「階段でしたか・・」
ミーア
「・・・下から重装備した奴が来るぞ。」
カジ
「上へ行くぞ」

足音を立てないように上へ登っていく。指令室は基本的に上にあるはずだ。都合がいい。




キュピル
「はぁ・・!はぁ・・!」

長い階段をひたすら登っていく。銃器が重たい。

キュピル
「だめだ・・・。休憩だ・・・」

怪我しているせいなのか体力があまり続かない。
何故か生きていて体も一応動くが負担はやはりあるらしい。

キュピル
「究極兵器に今俺は乗っているんだ・・・。せめて治療は少ししておこう・・」

治療しようと救急箱を開ける。だが中身は殆ど入っていない。

キュピル
「・・・あぁ、くそ・・・」

せめて体内に残っている弾丸だけ取り除こう。放置してる限り永遠に体内の中に残る。
ピンセットで弾丸を取り除いていく。モルヒネのお陰で全く痛くない。
弾丸を取り除いた後は僅かに残っている包帯を使って止血する。だが全ての部分に巻く事は出来なかった。
救急箱にはモルヒネ一本が残った。それを手に取り救急箱を捨てた。

キュピル
「よし、いくぞ・・・」

階段を上り続けていくと扉が現れた。
ずっと長い間登っていたから指令室ぐらいまで来たような気がする。扉を開ける。

エリート兵
「!!」
キュピル
「!!」

開けた瞬間敵兵士が目の前に居た。
先手必勝、ナイフで敵をまず突きさす。
腕を抑えて敵が持っているショットガンを奪い取る。

キュピル
「吹っ飛べ!!」
エリート兵
「あがぁっ!!」

ショットガンを放って敵をまとめて吹き飛ばす。
しかし敵兵士がわんさかといる。
一旦階段の方に戻り扉を閉める。
だが閉めた瞬間扉が開き敵が入ってきた。

キュピル
「待っていたぜ・・・」

入ってきた敵兵士をショットガンで撃ちぬく。吹き飛ばされて壁にぶつかりそのまま動かなくなった。
今のを見た敵兵士は中に突入するのをためらいだした。
・・だがしばらくして足元に何か転がってきた。

キュピル
「・・・!グレネード!!」

ここだとどこ投げても爆発に巻き込まれる・・・!せめて防炎を・・!
さっき撃ち抜いた敵兵士を掴み盾にする。そして爆発し
強烈な爆炎に包みこまれる。

キュピル
「っっっっっ!!!!!」

燃える。熱い。
頭だけは守らないと・・・。
ついでにハゲは嫌だ。

・・・爆発はおさまったようだ。
盾にした敵兵士をどこかに頬り投げる。

キュピル
「さっきはよくもやってくれたな!うおらぁっ!」

再びショットガンを構えて通路の外に出る。
出た瞬間射撃し複数の敵兵士を巻き込む。

キュピル
「もう一発!!」

・・・カシャ

た、弾切れだ!!

その音を聞いて敵が物凄い弾幕で応戦してきた。全部ショットガンだ!
当たる前に階段の方に逃げて扉をまた閉める。
が、閉めた瞬間扉が勢いよく開いた!だが

キュピル
「食らえ!」
エリート兵
「あがっ!」

開いた扉をまた蹴り飛ばしてドアを勢いよく閉める。鼻にぶつかり地味に痛がっている。

キュピル
「その武器よこせ!!」

腕にナイフを突き刺して持っていたショットガンを奪う。
幸い狭い階段にいるため敵は射撃したくても味方が邪魔で射撃できないようだ。

キュピル
「死ね!」

悪者としか思えない台詞を吐く。ショットガンを連射しまた複数人のエリート兵をなぎ倒す。
なんとか一個小隊撃破できたようだ。

キュピル
「やっぱ狭い空間でのショットガンは最強だな・・・」

敵の死体からショットガンの弾を漁る。・・・結構出てくるなぁ。
このぐらいあれば当分困らないぞ。
・・・もうマシンガンは使わないだろう・・・。持っていたAKL-47を捨て手持ちの武器をショットガンとその弾だけにした。

キュピル
「よし、移動だ」

階段は登らずこの階を探索することにする。
目の前の扉を開ける。
そこは甲板だった。ヘリコプターが墜落していて炎上している。

キュピル
「な、なんだ?何でヘリコプターが墜落しているんだ?」

・・・よくわからないけど・・ついさっき起きたようだ・・・。
しかしそんなことよりももっと目を見張るものがあった。

キュピル
「と、飛んでる・・・!!」

この巨大な鉄の戦艦が・・・空を飛んでいる!
相当高度があるぞ・・!

キュピル
「これが究極兵器・・・ジェロスなのか・・?!」

ジェロスについては全く知らない。そもそもトラバチェスの奥の手はずっとペストだと思っていた。
・・・いや、まてよ・・・?

キュピル
「・・・そうか・・・!!こいつにペストを搭載していたのか・・・!!」

これなら合点行く。確かにあの小さな爆撃機でペストをばら撒きに行っても
何機か撃墜されてしまうだろう。意図せぬ場所で撃破された日には自国にも被害が及ぶ事になる。
これほどの大きさと兵器なら爆撃機を何機も飛ばす必要はなくそして簡単には落ちない。

キュピル
「そうときまればもう一回下に降りよう!そこにペストが積んでいるはずだ!」

再び階段を通り下の階へと移動しようとした。
だがその時

エリート兵
「ググ・・グガアァァ!!」
キュピル
「!!!」

突然ナイフを持ったエリート兵が後ろから襲いかかってきた!
ま、まて!さっき俺はこいつをショットガンで心臓を・・・。
慌てて腕を抑えて足を蹴り飛ばし転ばせる。そしてもう一度ショットガンを放つ。
大きく吹き飛んで今度こそ死に絶えた・・・。

エリート兵
「・・・ギギギギ・・・グガガガ・・・」
キュピル
「し、死んでない・・・!!!」

まるで・・まるで今の自分みたいな状態じゃないか!!
何でこいつ死なないんだ!?
あまりにも恐ろしくなって戦闘を放棄した。扉を閉めて階段を降りた。
その10秒後。さっきやられた兵士全員が起き上がり血だらけになりながらキュピルの後を追いはじめた。




ルイ
「この戦艦にはペストは・・積まれていると思いますか・・?」
カジ
「ペストは自ら強化する物だった。はっきり言おう。搭載してるわけがない。
既に使用済みか使用していないか。そのどちらかだろう」
ギーン
「・・・使用されていたら・・厄介だぞ・・・」
ミーア
「・・・死なぬ兵か。見つかったら戦わずに逃げるのが得だ」
ジェスター
「でもまだ使ってるとは限らない・・よね?」
カジ
「そうだな」

階段を上り続ける。大体5分ぐらいしてようやく一番上まできたようだ。

ミーアが先頭に立ち人の気配がするかどうか探る。

ミーア
「・・・気配はない」
カジ
「入るぞ」

重たい扉を開け通路に入る。ミーアの言う通り人はいなかった。
通路には窓が取り付けられており外には先程の甲板と副砲が見える。

カタリ
「・・・ダイン・・」
ファン
「それにしても・・この副砲・・本当に大きいですね・・・」
カジ
「この副砲だけで城壁は簡単に壊せるな」
ルイ
「主砲は・・・一体どんな砲撃を・・・」
ギーン
「撃たせる前にこの戦艦を停止させるぞ」

全員移動し始める。
その時船内が大きく横に傾いた。

カタリ
「うわっ、なんだ!?」
ファン
「せ、旋回のようです」
ギーン
「この戦艦はでかい。静止して旋回を行うと多くのエネルギーを使う。
だが移動しながらなら翼を向きを変えるだけでいい。少しのエネルギーで旋回が出来る。その代り小回りはきかん」
カジ
「詳しいな」
ギーン
「・・・常識のはずだが・・」
カタリ
「へーへーっと・・・」
カジ
「大丈夫か?カタリ。少し疲れてないか?」
カタリ
「大丈夫だよ。・・・ついでにそれ言っちゃ俺以外の皆疲れてるはずだしよ・・・」

まさにその通りだった。もし今ベッドの上で横になったらすぐに寝るだろう。
・・・もう殆ど睡眠はとってないし休憩もしていない。過酷な戦いとなっている。

ミーア
「・・・動こう。止まったら疲れが出る」
ファン
「そうですね・・・」
ジェスター
「うん・・・」




==1F


キュピル
「ば、化け物が追ってきている・・・!」

移動速度はこっちのが断然上だが死なない敵と相手するのは非常に怖い。こっちも死なないけど。
階段を全部降りて扉を開ける。


ゴオオオオオオオオオオオオオ





キュピル
「うわっ!?五月蠅い!!!!」

どうやら機関室のようだ。巨大なエンジンが稼働している。

キュピル
「機関室・・・ええい壊してやる!」

とは言ったもののこれほど大きいとちょっとやそっとのことじゃ何も起きないだろう・・・。
操作するパネルがあるはずだ。しかし流石に重要な場所だけあって何人か兵士がいた。こっちに気付いたようだ。
すぐにアサルトライフルで射撃してきた。
近くの機械の傍に隠れる。射撃が止んだ。やはり精密機器だけあって迂闊に壊したくないらしい。
こっちとしては壊れた方が好都合なのでド派手にやらせてもらおう。

キュピル
「いくぞ」

物影から飛び出て10m先にいる兵士に向かって全速力で接近する。
アサルトライフルで迎撃してきているがテンプシーを繰り返し運に頼りつつも敵の攻撃を回避する。

キュピル
「気をつけろ、この距離はショットガンの距離だ」

ショットガンを構え敵兵士を吹き飛ばす。ぐったり横たわっている。

キュピル
「死んだか?」

物影に隠れて暫く様子を見る。・・・全く動かない。死んだようだ。
どうやら死ぬ兵と死なない兵が混ざっているらしい。

キュピル
「(見分けは全くつかないな・・・。)」

念のため脈でも計ってみるか・・・・。・・・・。止まってる。

キュピル
「大丈夫そうだな・・・。」
エリート兵
「ク・・キカカ・・・」
キュピル
「!!!!!」

脈が止まっているのに敵が動き出している・・・!!!
いや、動き出した!!こいつも死なないのか!?

キュピル
「う、うわぁっ!!」

敵の顔面むけてショットガンを放つ。・・・とんでもないことになった。
しかしそれでも敵はこっちを襲おうとしている!!

キュピル
「に、逃げろ・・・!!」

怖くなってその場から逃げる。
特徴は分った。こいつら一度死ぬ。だがその後生き返っている!
その時訳のわからない奇声を発しているが・・・これは特に関係ない?
何にせよ一度死んだ後は蘇生不可能と思われるほどの攻撃を与えても生き続けてる

・・・そういえば・・俺も・・似たような間隔がある・・・。
ジェスターを助けた時ペストにかかるぐらいなら死んだほうがいいっと思って自殺したが・・。
・・・ところが意識が戻った時にはなんともない状態で通路に立っていた・・・。
もしかして・・・。

続きを考えようとしたら突然船体が斜めに傾いた。

キュピル
「うわっ!?」

なんだこれは、急速旋回でもしているのか!?

キュピル
「くっ・・・!」

斜めになった足場。しかし高い壁がきつい上り坂の道になっている。これなら登れる。
すぐに壁を登り壁の向こう側へと移動する。
そこには巨大な歯車が回転し続けていた。

キュピル
「ぐぐっ!」

さっきより傾きがきつい。・・・は、歯車に巻き込まれる・・・!!
ショットガンを適当な所に投げ飛ばし手の皮膚を直接地面に当て滑り止めする。・・・踏ん張って何とか止まる。
しばらくすると旋回が終わったのか元の角度に戻った。

キュピル
「はぁ・・・。・・・!!」

気をゆるんだ瞬間弾丸が横をかすめた。あ、危ねぇ・・。
すぐ横に敵兵士がいた。
ナイフを抜くより先に拳が出た。敵の顔面を思いっきり殴り追いうちとして鼻に肘をぶつける。
よろけたところを敵の足を蹴り飛ばし転倒を試みる。ところがジャンプして避けられた。

エリート兵
「やりやがったな・・!!」

敵も格闘で応戦してきた。素早いパンチが襲ってくる。腕で受け止めてるが痛い。

キュピル
「悪い、俺格闘戦少し苦手なんだ。」

そういってナイフを抜き取り敵の腕を斬る。深い所まで斬った。痛みで敵がまた怯んだ。

キュピル
「悪いがくたばれ!」

床に落ちていた自分のショットガンを拾い発砲した。直撃し敵が吹き飛ぶ。
・・・死んだ。
だがこいつも生き返る・・はずだ。

キュピル
「そうなる前に・・・」

グルグル回っている歯車に敵の死体を頬り投げる。(もちろん弾薬は頂く
・・・歯車は全く止まらずそのまま死体を木端微塵にして回転を続けた。
あそこまでバラバラになっちまったら流石に生き返らないだろう・・・。

キュピル
「こりゃ鉄の棒突っ込んでも止まりそうにない」

諦めて別の方法でエンジンを止めよう。
・・・物理的破壊が一番手っとり早いのだが・・・。

エリート兵士
「いたぞ!」
エリート兵士2
「撃て!!」
キュピル
「まずい・・」

角から敵兵士が8人ぐらいやってきた。さっきの階段での戦いなら狭いから自然にタイマンになるがここは・・厳しい。
一旦逃げるとしよう。しかし敵に背中を見せた瞬間、ショットガンの弾が背中に被弾する。
幸い距離は離れていたので転倒はしなかったがかなり痛い。痛みをこらえて一直線に逃げる。
どんどん被弾していく・・・。

キュピル
「ええい、こんちくしょうめ!」

真上にあった連絡橋の細い支えをショットガンで何発も撃ちこみ無理やり破壊する。
支えがなくなり下に落下・・・しなかった。他にも支えがあった。無駄遣いをしてしまった。
諦めて再び逃走を始める。

キュピル
「くそ、くそ!」

横に道がある。一直線の道は危険なので横へ逃げ複雑な場所へと入っていく。
パイプが何本も通っている。乗り越えたり潜ったり敵の目から逃れるように逃げていく。
・・・敵も近くまで追ってきてはいたがここまでは追って来なかった。

キュピル
「はぁ・・はぁ・・・」

背中から結構出血してる・・・。だけど治療道具はない。進もう。
パイプが交差する狭い道を通っていく。




==8F


ギーン
「マナの痕跡を辿ると校長はこの部屋にいるはずだ」

ギーンが小声で話す。
ついに校長がいると思われる部屋までたどり着いた。ここまで敵に見つからずに来れたため
追っては誰一人来ていない。


ルイ
「いよいよです・・・」
カジ
「いくら巨大戦艦に乗っていても白兵戦となれば奴もお手上げのはずだ」
カタリ
「・・・突入の準備は出来てるぜ。・・・全員の仇を取ってやるぜ・・・」
カジ
「・・・犠牲は多かった。ハルララス・・ユーファ・・キュピル・・ピア・・ダイン・・・」
ジェスター
「キュピルは生きてるもん」
カジ
「その心意気だ。・・・行くぞ!」

カジが扉を勢いよく開く。かなり豪華な部屋に入った。
校長がいた

校長
「・・・まだ生きていたか。さっきの甲板での爆発・・・もしやとは思ったが・・・。貴様たちもしぶとい」
カタリ
「もう終わりだ!観念して降参しろよ!」
校長
「降参?何寝ぼけたことを言っている。むしろ君達こそ降参したらどうかね?」
ルイ
「貴方こそ何寝ぼけた事言ってるんですか!悪いですけど私は今激怒してますからね!!」

ルイが銃を構えながら言う

校長
「ックク・・。激怒か。幼稚・・」

パァッン



校長
「!?」

校長が話してる最中にルイが持っていた狙撃銃で発砲した。校長の足に命中した。
続けてもう片方の足を狙い撃つ。それも命中し校長が膝をついて倒れた。

ギーン
「ルイ、お前!」
ルイ
「当然の報いです!」
カジ
「分るが・・情報が引き出せなくなる恐れがある。下手をすると収集がつかなくなるぞ」
ルイ
「ですが・・・」
校長
「野蛮な女め・・・。手を出したからには覚悟は出来ているな・・・?」

そういって校長が右手を前に突き出し茶色く濁った魔法弾を作りあげた。

ファン
「何の魔法が来るか分りません・・!バリア!」

ファンがバリアを張り全員防御態勢を取る。
しかし予想とは違った行動を取られた。茶色く濁った魔法弾はファン達の方にはいかず
校長のすぐ目の前でバラバラに散って行った。

そして戦艦全体が一瞬だけ茶色く濁ったような気がした。

カジ
「・・・・・?」

身構えるが何が起きているのか理解できない。

校長
「せいぜい楽しみたまえ・・・」
ギーン
「!!。逃げるな!!!」

校長が再びワープを唱え何処かに移動してしまった。

カジ
「何処へ逃げた!」
ギーン
「・・・ちっ、戦艦3Fか。遠くに移動したな」
ルイ
「追いましょう!足を怪我してますから移動はワープしかできないはずです!」
ファン
「連続ワープはかなりのMPを消費しMPの回復が遅くなります。いつか追い詰めれるはずです」
カタリ
「校長が戦艦の外へ逃げるって選択肢はないのかよー?」
カジ
「奴がわざわざこの戦艦に乗ってるのだ。何か目的があるはずだ。一度降りたら再び乗るには時間がかかる。」
カタリ
「なるほど、つまり降りないってことか」
ミーア
「行こう」

全員部屋から出て階段へと向かった。
だが異変はおきていた。





==機関室


キュピル
「・・・・!!!!!!???」

急に・・・頭痛が・・・うわ、痛い・・・!!!!!

キュピル
「なんだ・・!これ・・!!!ただの・・頭痛じゃない・・!!!!」

自分だけじゃない。他の兵士達のうめき声も聞こえる。
金槌で本気で頭を殴られているような痛みだ。頭が割れそう。
しまいには意識までもが朦朧としてきた。

キュピル
「ここで・・意識を失っては・・・」

しかしそれとは反対にどんどん意識が遠ざかっていく。そしてとうとう気を失ってしまった。





==階段



ミーア
「・・・まて」
カジ
「どうした」
ミーア
「・・・聞こえないか?・・・うめき声が・・」

全員立ち止まり耳を澄ます。
・・・不気味なうめき声が・・・聞こえる。

カタリ
「なんだよ・・これ・・。すっげぇ悲痛な叫びだぜ・・・」
ジェスター
「怖い・・・」
カジ
「一体何が起きているんだ。」
ミーア
「必要であれば偵察するぞ」
カジ
「ギーン、どう思う」
ギーン
「・・・危険だ。ここは施設と違って天井裏に潜りこめるわけでもなければ誤魔化しの効かない場所にいる。」
ファン
「・・・この声・・。相当苦しんでます。まさか味方が来たということは・・?」
カジ
「だといいんだがな」

3Fまで降りた。

カタリ
「あけるぜ」

武器を構えながらカタリが扉を開ける。


エリート兵
「ウギギギ・・ガガガガ」


カタリ
「う、うわあぁっ!?」

扉を開けた瞬間不気味な声を上げながらエリート兵が襲いかかってきた。
慌ててカタリが槍を敵の心臓目がけて突き出した。ところがこんな狭い所だと言うのに物凄い機敏な動きで
攻撃を回避した。

カタリ
「こ、これでもくらえよ!」

今度は斬りつけるように槍を上下に振った。ところが今度はダメージ覚悟で突進しカタリを下り階段へと
突き飛ばした。が、辛うじてカジがカタリを片手で掴み落ちずに済んだ。

カジ
「おい、どうした。ただの兵一人にてこずるとは」
カタリ
「こいつ・・なんか機敏だぜ!?」

今度はカジが前に出て敵兵士を思いっきり蹴り飛ばした。
が、巨大な足を体全体で受け止めた。

カジ
「!?」

そのままあろうことかカジを奥へと突き飛ばしてきた!
バランスを崩しその場に転倒する。しかし

カジ
「本気で行くぞ!」

カジがすぐに立ち上がり素早くかつ重たい拳を敵に向けて正確にはなった。
敵が何発か体全体で受け止めるが防御を貫く強力なパンチにバランスを崩し転倒した。
すかさずカジがトドメに巨剣を敵の腹に突き刺した。

カジ
「・・・妙に強かったな・・・。」
ギーン
「階段での戦闘はタイマンになって危険だな」
ファン
「ま、また来てますよ!!」
カジ
「!」

通路の奥から兵士がわらわらとゆっくり歩いてきている。
反対側の通路からもだ。

ギーン
「なんだ、こいつ等・・・。壊れてやがる」
ジェスター
「怖い・・・!」
ルイ
「私が道を切り開きます!ファイア!」

RPG-7を構え片方の通路目がけて発射した。
強烈な爆発が起き殆どの兵士が吹っ飛んだ。

カジ
「進むぞ」

全員手早くルイが切り開いた道を通る。ところが

カタリ
「うわっ!?」

やられたはずの敵兵士一人がカタリの足を掴む。
すぐにカタリがもう片方の足で手を踏みつぶす。しかし離さない。
カタリだけじゃなく他の人何人かも足を掴まれていた。

ジェスター
「離して!わああああああ!!」

ジェスターが半分パニックに陥りながら鉄の棍棒で乱打する。ところがそれでも離そうとしない。

カジ
「痛みの神経がやられている可能性が強い。腕ごと斬れ」

そういってカジが巨剣で敵の腕を切断した。

ファン
「ぼ、僕にはできません!」
カジ
「なら我輩がやろう」

カジが巨剣でファンの足を掴んでる敵兵士の腕を斬り落とした。
全員なんとか脱出できたようだ。ジェスターはひたすら腕を殴り続けてたら流石に離した。
すぐさまジェスターがルイの所へ逃げた。

ルイ
「行きましょう」
ジェスター
「怖い・・・」

その時後ろから銃の構える音が聞こえた。

カジ
「いかん、ショットガンが来るぞ!」

全員通路の角へと逃げる。
隠れた瞬間にショットガンの弾が無数に飛んできた。

カジ
「あと少し遅れていたらあの餌食になっていたな」
ギーン
「校長はこっちだ」

ギーンの後へ皆続く。途中で少し大きめの扉を開け中に入る。
中に入ると広い間に出た。部屋の中心に校長がいた。

ギーン
「仕留めろ!」
ルイ
「狙撃!」
校長
「せいぜい楽しむがいい・・・。まさかあの男がここで使えるとはな。」

校長がニヤリと笑いまた何処かへワープした。
消えた瞬間に弾丸が通った

ギーン
「くそっ!」
カジ
「いい加減マナが尽きる頃だ。」
カジ
「奴をさっさと追うぞ」

この部屋から抜けようとした瞬間出口の扉が光りだし幻影の壁が現れた。

ジェスター
「なに、これ?」
ルイ
「これは・・・マナ生産装置から通して作られた人工的な物に近いバリアです。
特徴としては安定していて効力が物凄く強いです。そのかわりその装置がなければ発動できませんが・・」
カタリ
「おい、出られねーぜ!」

カタリが壁に向かって槍を突き出すが弾かれてる。
その時マナの強烈な動きを感じた

ギーン
「・・・・!?なんだ、このマナの動きは・・・」
ファン
「・・・凄く・・強い力です!」
カタリ
「なんだよ!ここにきてまさか『BOSS』とか言う気じゃねーよな!?ラスボスで十分だぜ!!」

マナが激しく光りだし可視化していく。
そして中央に誰かが現れた。全員が武器を構える。しかし

ジェスター
「・・・あ・・!!キュ、キュピル!!!」
ルイ
「え!?」

口にこそ出さなかったが死んだと思われていたキュピルだった。
真っ先にジェスターが武器を捨てて前に飛び出た。
しかし怪我だらけの上に棒立ちのキュピルにルイとファンが一番違和感を覚えていた。

ルイ
「・・・ジ、ジェスターさん!下がってください!」

ルイの言葉を無視してキュピルの方へ走って行った。そして目の前に立ち

ジェスター
「キュピル!生きてたんだね!!」
キュピル
「・・・ウギギギ・・ギアガアッガ・・・」

ジェスター
「!!!!」

素早い動きでキュピルがジェスターにひざ蹴りを食らわそうとした。しかし超反応でジェスターが避けた。

カジ
「今のよく避けれたな・・・」
ギーン
「それよりキュピル・・・。あいつ、今までの兵士と同じ雰囲気を醸し出しているぞ!」
ファン
「・・・そういえば・・キュピルさん・・ペストにかかっていた・・とか・・」
カジ
「・・・考えてみれば我々がこの戦艦に乗ってから合った兵士は全てペストに感染した時の症状とどれも似ている。
・・・校長め、兵士全員にペストを感染させていたな!!」
ギーン
「今更な感じもするが・・・何よりも問題なのはキュピルだ。あいつ死なないぞ。どうやって殺す」
ルイ
「ちょ、ちょっとまってください!殺すんですか!?」
ギーン
「馬鹿が、殴った所で目覚ますかどうか分るだろ」

キュピルがショットガンを構える。全員武器を構えて防衛態勢に入る。
素早い動きでキュピルが前に突進した。前にいたジェスターを回し蹴りで遠くに吹き飛ばした。

ジェスター
「痛い!」
ルイ
「ジェスターさんに手を出した・・・。と、とにかく何とかして無力化だけさせましょう!」
ファン
「でもキュピルさん既に満身創痍じゃないですか!遠くにいたのでよく見えませんでしたが
かなり怪我負っていますよ!」
ミーア
「・・・なのにこの動きか。何か裏がある。無力化なら任せろ」

ミーアが素手でキュピルの前に立った。
キュピルがショットガンを構えミーアに向けて発砲した。しかしミーアがショットガンを蹴り飛ばし銃口をずらした。
すぐにミーアが飛びひざ蹴りでキュピルの顎を攻撃した。キュピルが後ろに転倒した。
が、後ろに転倒する際ミーアの腕を掴み巻き込む。後ろに背がついた瞬間すぐにミーアを地面にたたきつけ
馬乗りに乗る。

ミーア
「どけ」

ミーアがキュピルの腹を思いっきり蹴り飛ばした。
思わず後ろへキュピルが下がる。よろけた隙を狙ってすぐにミーアが足り上がりキュピルの肩に
素早いパンチを繰り出す。何発かキュピルが体で受け止めると腕を受け止める。そのままミーアを背負い投げで
奥に投げ飛ばした。だが空中で受け身を取りノーダメージで切り抜ける。

ミーア
「・・・」
キュピル
「・・・・」

二人とも一定の距離を置いて様子を窺う。

カジ
「まどろっこしい。とっとと力で抑えつけろ」

カジが戦闘に加わる。真っ先にカジが動いてキュピルの頭目がけて強烈なげんこつを繰り出した。
ところが片手でそれを受け止めるとカジの足を思いっきり蹴り飛ばし転倒させる。

カジ
「ぐおっ!?」

すぐにミーアが動き出しキュピル目がけて目にもとまらぬ速さで飛びひざ蹴りを繰り出した。
キュピルの頭にぶつかり転倒させる。

ギーン
「奴を抑える!パララシス!!」
ファン
「援護します!」

二人がキュピルにパララシスをかける。一瞬体が痺れ動きが止まったかのように見えたが
あまり効果がなくすぐに起き上がった。

カジ
「呪文が効かないぞ」
ファン
「・・・キュピルさんの体質は昔からある程度の呪文抵抗を持っていたので・・・」
ギーン
「馬鹿が・・先に言え。MPを無駄にしたぞ」
ファン
「すいません・・」
カタリ
「とにかくキュピルを動けなくさせればいいんだろ?任せてくれや!」

カタリが槍を構えてキュピルの足目がけて猛突進した。
それと同時にミーアも再びキュピルの胴体目がけて飛び蹴りを繰り出した。
そしてカジも強烈なキックを繰り出した!

まず一番最初にカジのキックがキュピルのわき腹に当たった。しかし受け止められている。
そのままカジの足を掴み振り回しジャイアントスィングに発展させる。
その回転にカタリが巻き込まれ遠くに吹き飛んだ。
ミーアにも当たるかと思われたが華麗な動きでカジの上に一旦着地しそのまま後ろへ下がった。
そして最後にカジをルイやギーン達がいる場所へ投げ飛ばした。

ルイ
「わっ!」
ファン
「ヒィィ!」

あわてて横へ退避する。壁にカジが激突する。
すぐにカジが起き上がった。

カジ
「・・・我輩を持ち上げるとはやるな。本気を出すぞ」
ルイ
「あ、あの!!殺さないでくださいよ!」

カジの目がギラギラと燃えている。ルイの言葉が耳に入らなかったらしい。

ギーン
「諦めろ、デイドラ族はピンチに陥れば陥るほど周りを守ろうと周りの声が聞こえなくなる」
ルイ
「し、しかし・・・!」

カジが巨体に似合わぬ速度でキュピル向けてタックルを繰り出した。
それを体全身で受け止めようとしていたが流石に無理があったらしく遠くへ吹き飛んだ。
床に倒れたキュピル目がけてカジが巨剣を思いっきり振り落した!

ジェスター
「殺さないで!!!」

しかし巨剣が振り下ろされた。ところがキュピルが持っていたナイフでカジの巨剣を受け止めた!

ジェスター
「頑張ってキュピル!」
ミーア
「・・・気持ちは分るが・・ジェスター・・・」
カタリ
「おいおい!キュピルってあんなに力強かったか!?」
ルイ
「い、いくらなんでもカジさんの力を受け止めるほどの筋力は・・・」
ギーン
「ペストの効果かもしれん。・・・ルイが校長の足を狙撃したとき奴は何か呪文を放っていた。
その時からペストに感染した奴の戦闘能力が上がっていた。恐らくその呪文が影響しているはずだ。」
ファン
「・・・そ、それならその呪文を打ち消したらどうですか!?」
ギーン
「・・・なるほど、それはいけるかもしれんな。強烈なキュアを浴びせてやろう」

ギーンが周りからマナを吸収しはじめた。

ギーン
「発動に時間がかかる。しばらく持ちこたえろ」
ミーア
「承知」

ミーアが一時的に戦闘を離脱しギーンを守る態勢に入る。


カジ
「ふんぬっ・・!!」

既に起き上がったキュピルと強烈な死闘を繰り広げている。
巨剣で戦うカジと小さなナイフで戦うキュピル。あたかもナイフを剣のように扱い
その軽さをいかして素早い攻撃を繰り出す。
カジが防戦一方となっている。

ジェスター
「キュピル!目覚まして!お願い!」

ジェスターが後ろからキュピルの背中に飛びつき抑え込むようにしがみ付く。
振り落そうとするが全く落ちない。

カジ
「よくやった、ジェスター!」

カジがキュピルの腹目がけて強烈なキックを繰り出した!
ジェスターと一緒にそのまま後ろへ吹き飛んだ!

ジェスター
「わあああああああ!!」
ルイ
「ジェスターさん危ない!」

ルイがとっさに狙撃銃を構えキュピルを横から打ちぬいた。
後ろから横へと吹き飛ぶ方向を変え地面に転がった。すぐにジェスターが逃げた。

ルイ
「あ・・・つい・・撃ってしまいました・・・」
ミーア
「気にするな」


カタリ
「キュピルー!いい加減にしてくれー!!」

カタリが地面を思いっきり蹴り飛ばし上からキュピルを槍の柄の部分で叩きつけようとした。
しかしサッと避けられ槍を握りカタリを思いっきり蹴り飛ばした。

カタリ
「ぐえっ!」

しかし槍だけは放さないようにしっかり握るカタリ。しかしもう一度キュピルが槍を引っ張ってカタリを引き寄せ
今度はジャンプして強烈なアッパーを浴びせその勢いのまま回転しカタリの顔面に回し蹴りを食らわせた。
強烈な攻撃に流石のカタリも槍を離し遠くに吹き飛んだ。
キュピルが槍を奪い武器を構えた。

ルイ
「き、気をつけてください!キュピルさん刀だけじゃなくて槍の技術もかなりあります!」
カジ
「お手並み拝見といこうか」

カジが巨剣を再び構え様子を窺う。
先に飛び出したのはキュピルだった。槍を構えカジ目がけて突進した!
カジが巨剣を縦に構え防御態勢に入る。ところが槍を支点にして高く飛び上がった。

カタリ
「棒高跳びかよ!」

そのまま斜めに回転しながら重力と遠心力を利用した強烈な一撃を放った。
ギリギリのところをカジが巨剣で防いだ。しかし後ろへ少しずり下がった。
キュピルが地面に着地した瞬間すぐに前へ飛び出し槍を横へ振った。
カジが後ろへステップしてよける。しかし立て続けにキュピルが槍を逆袈裟切り、袈裟切りを繰り出し
そして最後にくるっとまわって強烈な縦切りを繰り出した。予測のできない動きでカジを翻弄し
ついにカジに攻撃が通ってしまった。ここぞとばかりにキュピルがもう一度槍を構え
カジの心臓目がけ強烈な突きを繰り出した!

ファン
「念動力!」

ファンがギリギリのところで魔法を唱えキュピルの槍を魔法で奪い取った。
事実上攻撃が届かないパンチになってしまった。

カジ
「今度は我輩の番だな」

カジが不気味な笑みを浮かべ巨体とは思えない動きで空中回転回し蹴りを繰り出した。
思いっきりキュピルの頭を蹴り飛ばし部屋の端から端まで吹き飛ばした。
思いっきり壁に叩きつけられ地面に倒れる。
すぐにカジがキュピルの方へ走り思いっきりジャンプしキュピルを踏みつけた。

キュピル
「っっ!!」
カジ
「死で救われろ!」
ジェスター
「殺さないで!!!」

カジがキュピルの背中に思いっきり巨剣を突き刺した。
何人か目をそらした。
見事に心臓を貫きついにキュピルが力尽きた。

カジ
「・・・強かった」

ジェスターが戸惑いで硬直状態に陥る。
ルイとファンもどうすればいいのかわからないらしい。

ギーン
「あれでくたばるとは思えんな」

ギーンが詠唱を続けている。予測通りキュピルの腕が再び動き出した。

ジェスター
「い、生きてる!!」

すぐにジェスターがキュピルの傍に駆け寄り腕を掴んだ。

ルイ
「ジ、ジェスターさん!危ないですよ!」
カジ
「ピアと同じようにしなくてはならないのか・・・・」
ジェスター
「そ、それだけはやめて!!」

ジェスターが懇願する。

ギーン
「待て、カジ。俺の魔法を試してからでも悪くないだろ?」
カジ
「ふむ」

カジが一歩後ろに引く。そしてキュピルに背を見せてギーンの所へ戻って行った。
カジが背を見せた瞬間突然キュピルが起き上がりジェスターを突き飛ばしてカジの背中にナイフを突き刺した。

カジ
「ぐおっ!!」

キュピルが物凄く険しい表情でナイフをぐりぐりと動かす。

ジェスター
「キュピルもいい加減にして!!」

ジェスターがキュピルの背中を掴むと思いっきり後ろに引いた。
キュピルの体勢が崩れジェスターを巻き込んで後ろに倒れた。

ジェスター
「ぎゃ!」
ギーン
「魔法の詠唱が終わった!発動する!」

ギーンが白く輝くマナの塊をキュピルに投げ飛ばしぶつけた。
反動でキュピルが横に少し吹き飛ぶ。その後キュピルが白く輝きだし5秒ぐらいして元に戻った。

カジ
「ペストを治療する魔法か?」
ギーン
「材料と情報がないから違う。魔法解除の呪文だ。攻撃魔法だから詠唱に時間がかかったがな」
ファン
「おぉ、確かに魔法解除の呪文なら・・・ペストに以前感染したままですが理性は戻るかもしれませんね!」
ギーン
「様子を見てきたらどうだ」

ルイとファンがキュピルの傍に寄る。

ルイ
「キュピルさん!大丈夫ですか!?私の事分りますか!?」
キュピル
「・・・・・!!」

キュピルが激しくびっくりした表情を見せ後ろに飛びのいた。
そしてナイフを取り出そうとしたがカジの背中にささったままだった。

キュピル
「ナイフが・・ナイフがない!銃器もない・・!素手か・・・!」
ルイ
「キュ、キュピルさん!落ちついて!私です!敵じゃありませんよ!」
キュピル
「うおおぉぉぉ!!」

キュピルが素手でルイに殴りかかりに行った。
ルイが後ろに避ける。

ミーア
「どういうことだ?人語で喋ってるが以前我々の事を敵だと思っているようだが」
ギーン
「・・・様子を見なければわからん。どっちかというと我々の言葉が通じていないようだが。」
カタリ
「耳が聞こえないのか?」

ファン
「キュピルさん、今戦ってる相手はルイさんですよ!気付いてください!」
キュピル
「その銃器をよこせ・・・!!」

ルイの持っている銃器のつまった鞄を奪おうとしている。流石にこれが奪われるとかなり危険なので
やむを得ずルイが皆の所まで戻った。

ミーア
「次こそ私が無力化しよう」

ミーアが針を構えてキュピルの所まで移動した。

キュピル
「タイマンか、いい度胸だ」

キュピルも拳で構える。しばらく様子を窺った後先に動き出したのはキュピルだった。
姿勢を低くして足蹴りを繰り出した。その攻撃をジャンプして回避し半回転してさかさまになり
キュピルの頭を掴むとそのままもう半回転回ってキュピルを投げ飛ばし着地した。
壁に叩きつけられ地面に倒れる。
さっきと比べるとキュピルの動きが圧倒的に鈍っていた。やはり魔法が解けたせいなのか。

ミーア
「痺れろ」

ミーアが針をキュピルの足に投げた。二本とも足に刺さった。
キュピルが起き上がろうとしたが足が動かないらしい。

キュピル
「・・・?!」
ミーア
「動きは封じた。」

ルイ
「ファンさん!何とか私達だということが分るような魔法できませんか!?」
ファン
「そんな無茶な!」

その時突然キュピルの怪我してる部分から大量の血が流れた。さっきまで止まっていたのに突然のことだった。

キュピル
「ぐぁっ・・!・・・い、痛い・・・く・・そ・・・。」

ジェスターがキュピルの傍に近寄る

ジェスター
「痛いの・・!?ルイー!治療してー!」
ルイ
「はい!」
ギーン
「治療してどうする。今治療すれば奴は復活してもう一度襲いに来るぞ」
カタリ
「おい、でもなんか様子が変だぜ・・・。さっきと・・明らかに勢いが違う・・」

キュピルの体が震えだし汗も噴き出してる。

キュピル
「・・・な・・・なん・・・で・だ・・・・?俺・・・死にそう・・・・な・・・のか・?
俺は・・・死なな・・・かった・・んじゃ・・」
ジェスター
「キュピル・・?キュピル!」
キュピル
「・・・夢・・か・・・?今・・・ジェスターの声が・・・・。
・・・・・。・・・・寒い・・・・・」

ギーン
「前言撤回だ。明らかに様子がおかしい。早く治療しろ」
ルイ
「は、はい!」

ルイが詠唱を始めた。しかし

キュピル
「・・・ごめん・・・ジェス・・ター・・・ファ・・ン・・・・ル・・・・イ・・・」

そこでキュピルの目蓋が閉じた。
その五秒後にルイがヒールを放った。傷はふさがった。
すぐにルイがキュピルの脈を測った。しかし

ルイ
「・・・止まってる・・・!?なんで!?」
ジェスター
「キュピル!キュピル!!」
ファン
「キュピルさん!」
カタリ
「おいおい!これただ寝てるだけだよな!?キュピルはペストにかかってたんだろ!?
死ななかったんじゃないのかよ!?」
ギーン
「調べてみなければ分らん。・・・だがもしかすると・・・ペストは完璧じゃなかった。ということか?
あるいは一時的なものだった・・と。」
ルイ
「そんな・・・!」

その時突然扉を塞いでいた魔法の壁が消えた。
そして扉が開き通路から大量の兵士がやってきた。
すぐにカジとミーアが反応し針と剣で応戦。広い部屋に入ってくる前に迎撃し
通路への道を確保した。

カジ
「急げ!大量の敵兵士が来ているぞ!ここを再び奴らが封じたらお終いだ!」
ジェスター
「私動かない!今度こそもう動かない!」
ギーン
「来ないなら引き寄せよう」

ギーンが念動力を唱え三人を扉の所まで高速で引き寄せた。

ジェスター
「やめて!!」
ミーア
「辛いと思うが行くぞ。これ以上死者を増やしても何の意味もないぞ」
ジェスター
「キュピルは死んでない!」

しかしジェスターの言い分を無視し無理やり通路の外へと引っ張った。
カジとカタリが通路で戦っており既に片方の道は確保していた。

カジ
「敵のいない場所へ行け!」
カタリ
「ここは食い止めるぜ・・・・」

ルイとファンがどうするか悩んだがこのままここに居てもどうしようもならないのは分っていたため
やむを得ず部屋を後にした。全員言ったのを確認したらカジが最後に敵を薙ぎ払い
敵が全員後ろに倒れたのを確認したらカジと一緒に皆が逃げた通路へと向かった。

今度こそ校長を倒さねばならない。これ以上犠牲を増やす前に。






校長
「ど、どういうことだ・・・・!!あの男が・・・死んだ・・だと!!?」

ペストに感染していたあの男。絶対に死なぬ兵だと思っていた。だが違った。奴は死んだ。
今まで死なないと思っていただけに計算が大きく狂い始めた。
死なぬ兵では意味がない!

すぐに奴らは追ってくるだろう。
MPも殆ど残っていない。



校長は焦っていた



続く


追伸

次かその次で終了



第十五話


校長
「最終手段だ。甲板で迎え撃つ」
???
「・・・わかりました。」



カタリ
「ぜぇ・・・。敵を撒いたか?」
ギーン
「そのようだ。」
ファン
「・・・・!マナの反応です!また校長がワープしました!」
カジ
「だがいい加減MPも尽きただろう。で、どこへ逃げた」
ファン
「・・・甲板のようです」
ルイ
「甲板・・・ですか?」
ファン
「ヘリコプターが・・墜落した場所ではないみたいです。別の甲板・・・。」
ギーン
「・・・態々甲板へ移動したか。何か策があるな?」
カジ
「だが行かねばならない。奴も腹をくくって戦う気になったのだろう。一気に潰すぞ」
ジェスター
「・・・・・」
ルイ
「ジェスターさん・・・」

とにかく移動しないとまたいつ敵がきてもおかしくないのでルイがジェスターを背負って移動を始めた。

甲板は今いるフロアにあった。




==甲板

カタリ
「甲板に来たぜ」
ギーン
「居たぞ!」

甲板に校長と・・・あと見たことない人が一人立っている。
魔術服を着ていて小さな眼鏡をかけてる男の人だ。

カジ
「迎え撃つ気になったか。面白い」
校長
「ジェロスは最強の兵器だ。どんな巨大都市でも一発の主砲の攻撃で壊滅する力を持っている。
・・・だが、小回りは効かずそして白兵戦には無用の長物となる。それは認めよう。」
ルイ
「何を言ってるんです?」
校長
「しかし・・・次元技術を使って自由自在に。いかなる場所に巨大砲撃がワープしてきたら?
・・・ククク。次元の君(じげんのきみ)よ。後は任せた」

そういって校長が再びワープして何処かに消えた。

カタリ
「待ちやがれ!」
次元の君
「待ちたまえ」

次元の君が持っていた杖が光った。目をつぶっても背を向けても強力なライトを直接目にあててるかのような
眩しさが全員を襲う。

ジェスター
「眩しい!!!」
ファン
「何ですかこれは!?」

強烈な風も吹いてる。

・・・・。


・・・・・・・・。

しばらくするとおさまってきた。
再び目をあけると・・・

カジ
「・・・!?なんだ、ここは!?」

さっきの甲板の上にはいるが甲板を覆っていたバリアが不気味な色に変っていた。
油で濁ってるような色。当然出口はない。

次元の君
「君達は今次元の狭間にいる。ここに入ったらもう二度と出れない。次元に振り回されて死ぬがいい」

再び次元の君が何か魔法を詠唱し始めた。


カジ
「何を詠唱してくるかわからん!攻撃するぞ!」

カジが抜刀し突撃した。カタリもそれに続きミーアも前に出た。

ルイ
「先制攻撃!」

ルイが狙撃銃を構えて次元の君が持っていた杖を撃った。
すると突然撃った弾が消えた。

ルイ
「え?」

そして突然脇腹に激痛が走った

ルイ
「うっ・・!!」

被弾していた。

ルイ
「これは・・・私が今撃った弾・・・!?」
ジェスター
「突然バリアから飛んできたよ!」
ファン
「まさか・・次元を・・・?」

カジ
「うおぉぉおっっ!!」

カジが思いっきり巨剣を振り落した。次元の君はその場から一歩も動こうとしない。
そのまま叩き潰せたかと思ったら突然、刃が消え自分の真横に現れた!
慌てて攻撃を止めた。すると真横に現れた巨剣の刃が止まった。軽く動かしたらそれも軽く動いた。

カジ
「・・・これは我輩の剣か!?」
次元の君
「はぁっ!」

次元の君が何か詠唱を終えたらしい。
巨大なメガバーストを生み出しルイ達目がけて投げつけてきた!

ルイ
「こっちです!」

ルイがジェスターとファンを安全な方に誘導する。
無事避ける事に成功した。
外れたメガバーストはそのまま不気味な壁に吸いこまれていった。

ギーン
「気をつけろ!マナの反応がまだ残っている・・メガバーストがもう一度来るぞ!」

突然空気が揺れたかと思えば目の前から巨大なメガバーストが現れた!

ルイ
「うぐっ!!」
ファン
「ヒェェェェ!」
ジェスター
「わっ!」

メガバーストが直撃した。
服などの火が燃え移ったがすぐにファンが水魔法を唱え消化した。しかし火傷を負った。

ギーン
「奴は名前の通り次元を自由自在に操る能力がある!一度避けたと思っても油断するな!」
ミーア
「これならどうだ」

ミーアが直線状に針を何本も投げつけた!次元の君に当たるかと思われたがその直前で針が消えた。

カタリ
「針がこっちに飛んでくるぜ!?」
ミーア
「わかっている」

突然ミーアが目にもとまらぬ速さで次元の君めがけてダッシュした。
その最中ミーアの真後ろから針が再び飛んできた。だがすぐにそれを察知しミーアが横へ避けた。
再び針が次元の君目がけて飛んだ!

ルイ
「なるほど・・・誘導したってことですね・・?」

ところが再び針はまた吸いこまれ何処かへ消えた。
そしてまた横から飛んできた!!

ミーア
「ふんっ」

力を極限まで発揮しまるでワープしたかのような速度で次元の君の元へ移動した。
そして次元の君の腕を掴んで地面にたたきつけた!

・・・ところが倒れたのはミーアだった。

ミーア
「!?」

確かに次元の君の腕を掴んだ。・・・今もしっかり掴んでいる。・・・だがよくみると
すぐ真横から自分の腕が伸びていた。・・・腕も次元をずらしたか!?
針が飛んできた。手を放して自分の腕を解放する。そして素手で全部針をキャッチし回収した。

カタリ
「一体どうすればあいつにダメージを与える事ができるんだよ!?」
ギーン
「空間自体を切り張りしている。・・・どうすればいい」
カジ
「自分の攻撃が自分の元へ帰ってくるのであればそもそも体全身を使った攻撃をすればいい。

そういってカジが地響きを鳴らしながらダッシュし飛びこむように次元の君にタックルした。
ぶつかった!

ジェスター
「痛い!!!」
カジ
「むっ」

突然景色が変わりぶつかった相手はジェスターだった。ジェスターがゴロゴロ転がりながら遠くまで吹き飛んだ。

カジ
「・・すまない」
ジェスター
「むぅー!」
カタリ
「おいおい、まじで攻撃する手段がないぜ!?」

再び次元の君が魔法を唱えた。今度は複数のメガバーストを召喚してきた!
三つのメガバーストが不規則な動きで飛びまわった。
全員その攻撃を避けるが避けた先にメガバーストが現れた。
これまでの経験から来る事は予測できていたのでそれも回避することに成功した。
だがメガバーストはまた突然消えそして別の方向から再び飛んできた。

ファン
「バリア!」

ファンが作ったバリアにぶつかりようやくメガバーストは消えた。

ジェスター
「本当に・・・どうすればいいの・・・!」
カジ
「こんな敵今までに戦った事がない」
次元の君
「君達はもう助からない。不毛に死ぬだけだ」

再び次元の君が詠唱を始めた。

カタリ
「ちっくしょー!させるかよ!!」
ミーア
「よせ、カタリ!攻撃しても自分に戻るだけだぞ!」
カタリ
「だったらこれでも食らえよ!跳ね返せるもんなら跳ね返してみろよ!」

そういってカタリがさっき敵兵士と戦闘したときにくすねたグレネード弾を投げつけた。
吸いこまれる前に爆発し爆炎が広がった。

ルイ
「くっ・・・」

壁がなく爆炎に何人かのまれた。
だが一番被害が大きかったのは次元の君だった。

次元の君
「爆炎・・か」

ジェスター
「ダメージ食らってるよ・・・!」
ギーン
「・・・!これならどうだ」

ギーンが魔法を速攻詠唱し次元の君目がけて小さな赤い弾を放った!
吸いこまれる直前にその赤い弾は爆発しさっきよりも大きな爆炎が広がった。
さっきと同じく次元の君はダメージを受けていた。

ギーン
「わかったぞ!奴は物理的な物なら次元操作することができる!だが
空気や風に光などといった物として存在しないものは動かせない!」
ジェスター
「・・・どういうこと?」
ファン
「次元移動っていうのは物質として存在する物を移動させる技術です。
これに近い技術を持つのが『ワープ』です。あれも人という物を移動させる魔法です。
ですが空気や光りなどといった物質として確立していないものは動かす事ができません。」
ジェスター
「・・できないの?」
ファン
「ジェスターさんは空気を素手で捕まえる事はできますか?」
ジェスター
「出来ないけど・・・魔法でもできないの?」
ファン
「・・・できません」
ジェスター
「わかんなーい!」
ギーン
「馬鹿が・・・」
ジェスター
「あー!」
カタリ
「おいおい、喧嘩してる暇あったらあいつ見てみろよ・・・」

次元の君が光っていた。何かしようとしている。

ギーン
「物質として存在しない物で攻撃しろ!」
カタリ
「グレネードを投げるぜ!」

カタリがグレネードを投げた。ところが爆発する前に吸いこまれカタリの足元に戻ってきた。

カタリ
「げっ!」

慌ててカタリがグレネードを蹴り飛ばした。
全く関係ない所で爆発した。

カタリ
「危なかったぜ・・・」
次元の君
「遊びは終わり」

そういった瞬間突然次元の君が消えた。

ギーン
「・・・何処へ消えた」

しばらくして現れたのは巨大な砲台だった。

ジェスター
「わっ!!あれってジェロスについていた副砲じゃないの!?」
ルイ
「ほ、ほんとです!!」
ギーン
「次元を操作してもってきたのか・・・!?」

轟音が鳴りだした。今まさに発射しようとしている。

カジ
「いかん、こんな狭い所で発射されては何処へいようが壊滅的被害を受ける。
発射される前に破壊しろ!!」

カジが真っ先に飛びだし砲台へ攻撃を始めた。

ファン
「外側の装甲を狙うのではなく直接砲台の中へ攻撃を通してください!恐らく装甲は堅牢です!」
ルイ
「RPG-7!!」

ルイがロケットランチャーを発射し発射口の中に入る。そして内部で大爆発が起きた。
そのまま副砲は消えてなくなった。

カジ
「やったか?」
ギーン
「・・・!」

壊したかと思えば再び副砲が現れた。今度は三つだ!

ルイ
「こっちは私が壊します!」
ファン
「援護しますよルイさん!」
ギーン
「俺は向こうを行く!」
カタリ
「援護するぜ!」

カジ
「ならば我輩達は向こうだ」
ジェスター
「どうすればいいの?」
カジ
「ジェスター。お前は小さい。直接砲台の中へ入れ」
ジェスター
「無理!絶対無理!死んじゃう!!」
カジ
「つべこべ言わずにいけ!」

そういってカジがジェスターの首根っこを掴み発射口へとぶん投げた

ジェスター
「わあああああ!!!」

叫びながら中へ入っていく。そして一番奥まで到達した。
中には弾と思われるカプセルがあった

ジェスター
「えい!えい!えい!!!」

死に物狂いで中にあった弾を破壊する。
そして弾が壊れ中にあった液体化したマナが漏れだした。
しばらくすると強烈な衝撃が走った。砲台が発射した!!

ジェスター
「ぎゃああああ!!」

しかしジェスターがマナの詰まった弾を破壊したおかげでただの空砲になった。
中に漏れたマナが甲板へと飛び散る。
他二つの砲台も今壊したようだ。

ルイ
「これは・・マナです!」
ギーン
「吸収するぞ」

ギーンが特殊な魔法を詠唱し周囲にあるマナを全て体内に取り込む。

ギーン
「ふん、回復完了だ。ここからは反撃だな」
カタリ
「よっ!やっちまえ!」

すると次元の君が現れた。

次元の君
「副砲を壊すなんてやるね。君達は本当にただの生徒なのかい?」
カタリ
「よく訓練された生徒だぜ!!」
ギーン
「はああぁぁっっ!!」

ギーンが強烈な魔法を速攻詠唱し次元の君へと放った。
しかし次元の君がそれを跳ね返す・・・。っと思いきや跳ね返らずそのまま貫通し命中した!!

ルイ
「一体どうやったんですか!?」
ギーン
「魔法弾に見せかけた空気弾だ。だが奴がひるんだ。もう一発いかせてもらうぞ」

今度こそ正真正銘の魔法弾を放ち高速で飛ばす。次元の君が態勢を立て直す前に命中した。
命中した瞬間赤い魔法の鎖が次元の君に巻きつきギーンの左腕と繋がった。

ギーン
「俺が魔力を送り続けている限り奴は動けない!いまだ、やれ!!」
カジ
「遠慮なくやらせてもらうぞ」

カジが巨剣を投げ飛ばし次元の君に命中した。
もうそれだけで致命傷だと言うのに続けて強烈なハイキックを繰り出し顎を蹴り飛ばす。
後ろにのぞ蹴った所を相手の顔の上にジャンプしそのまま思いっきり踏みつけた。
そのまま追い打ちをかけるかのように顔面をひたすら踏みつけ続けた。かなり痛い。

ジェスター
「混ざる!」

ジェスターも鉄の棍棒で次元の君を乱打した。
すると突然次元の君が消えた。

ギーン
「・・・!鎖が切れただと・・・!?気をつけろ!来るぞ!」
カジ
「むっ」

突然目の前にオーラーを変えて次元の君が現れた。

次元の君
「・・・俺の・・名前は翻弄の・・君・・・。」
ルイ
「さっきと・・様子が違いますね。痛いんでしょうか?」
ファン
「多分違うと思いますが・・」
翻弄の君
「ふんっ!!」

翻弄の君が腕を振った。

カタリ
「うぐあっ!?」
カジ
「どうした」

カタリが槍を持ちカジ目がけて攻撃を開始した。

カジ
「ふざけてるのか!?」
カタリ
「違う・・!体が勝手に・・・!」

翻弄の君が更にもう片方の腕を振った。

ルイ
「あうっ!!」
ファン
「ヒィィィ!」

ファンが急いでルイから離れる。案の定ルイがマシンガンを持ってファン目がけて乱射を始めた。

ミーア
「安心しろ」

ミーアがファンを守る。

ファン
「助かりました」
ミーア
「あれは厄介だな。単純に味方が二人消え敵が二人増えたぞ」
ギーン
「奴の指をよく見ろ」

細かく指が動いている。
指を動かすと特定の部分が動くようだ。

ギーン
「あの指をちぎれ!」
ジェスター
「グロいこと言わないで!」
カジ
「任せてもらおう」
カタリ
「カジ!俺を気絶させてくれよ!そうすりゃきっと止まる!」
カジ
「では遠慮せずに」
カタリ
「な、なるべく痛くないようにしてくれよな!」

カタリの大ぶりの攻撃を避けた後思いっきりカジがカタリの後頭部を殴った。
そのまま転がり気を失ったかのように思われた。しかし再び起き上がりカジ目がけて襲い始めた。

ジェスター
「気絶しなかったの!?」
ミーア
「いや、気絶してるな。気絶すれば治るわけではないようだ」
ジェスター
「意味ないことしたね・・・」
ギーン
「だが厄介なことになったぞ。主力二人も取られた」
ジェスター
「ルイは私が止める!」
ギーン
「危険だ」
ジェスター
「カタリと何とかの時は任せるからね!」

そういってジェスターがルイ目がけて突進した。

カジ
「我輩はカタリをどうにかしよう。三人に任せるぞ」
ギーン
「任せろ」
ミーア
「承知」
ファン
「後ろで皆さんをフォローします」



ルイ
「ジェスターさん!近寄らないでください!」
ジェスター
「んんんーー!!」

ルイが威力の高い拳銃を撃った。ジェスターの髪に命中し毛が吹き飛んだが構わずルイ目がけて突進を続けた。
そして目の前まで来ると思いっきりルイに頭突きした。

ルイ
「うっ・・・!」
ジェスター
「ルイ止まってー!!」

そういってジェスターがルイの後ろから抱きつき抑え込む。
強い力でジェスターをどかそうとするが負けずと抑え続ける。


ギーン
「向こうが何とかしてくれてる間にやるぞ」
ミーア
「まずは私が行こう」

ミーアが勢いよくジャンプし翻弄の君の真上へと移動する。
そして上から大量の針をばら撒いた。
しかし針は消えそしてミーア目がけて飛んできた!

ミーア
「くっ」
ファン
「次元操作は健在のようです!」
ギーン
「これは少し厄介だな。だが問題ない」

ギーンが再び空気玉を作り投げ飛ばした。
だが次元操作して回避するのではなくヒラリと横に避けて回避した。
ところが避けた先にミーアが着地し翻弄の君の頭を踏ん付けた。

翻弄の君
「っ!?」
ミーア
「覚悟しろ」

翻弄の時の首に直接針を刺した。強烈な毒が体内に侵入する。そして
そのまま首を引っ張って後ろへ投げ倒した。

翻弄の君
「ちっ・・・キュア・・・!」

翻弄の君が自分へキュアを施し始めた。

ルイ
「あ・・・」
カタリ
「・・・・」

二人の動きが急に止まった。

ルイ
「体が自由に動きます!解除されたみたいです!」
カジ
「遅いぞ。カタリをボコボコにしてしまった」

見るに無残な姿になっていた・・・。

ミーア
「隙を見せたのがお前の失態だ」
翻弄の君
「!」

ミーアがすぐさま翻弄の君の目の前に現れひざ蹴り、エルボー、そして空中で回りながら三段蹴りを繰り返した。
翻弄の君が遠くへ吹き飛んだ。
吹き飛んだ先にルイがいた

ルイ
「さっきはよくもやってくれましたね!!覚悟!!」

ルイがマシンガンを持ち翻弄の君へ連射した。
弾切れを起こすまで撃ち尽くしてやっと我に返る。

ルイ
「あ・・・」
ミーア
「安心しろ、人殺しではない。まだ生きている」
ギーン
「回復を許すな!」

ギーンが稲妻を召喚し翻弄の君へと落とした。が、着弾する瞬間に消えた。

ギーン
「くそっ!」

そしてまた宙に現れた。

翻弄の君
「・・お・・・おれ・・・れ・・は・・・。は・・・破滅・・・の時・・・・時・・・」

そういって破滅の時が消えそして現れたのは巨大な砲台だった。

ギーン
「こいつは・・!!ジェロスの主砲じゃないか!!!」
ルイ
「こんな大きさでは直接攻撃したとしても壊せそうにありません・・!!」
カジ
「発射口が高すぎてそもそも中へ攻撃する事ができんぞ!」
ファン
「皆さん!このままでは間違いなく僕達即死です!ですが一つだけ考えが・・!
これが外から来ているのであれば直接中に入ってそこから外の世界へ脱出できるのでは・・・!?」
カジ
「保障は?」
ファン
「もちろんありません!しかし可能性としては高いですし仮に外に出れなくても砲撃を避ける事が
できるかもしれません!!」
ギーン
「ファンに同意しよう。確かにこの巨大な主砲を破壊するのは無理だ。」
ジェスター
「どうやって中に入るの!?」
ファン
「浮遊魔法を唱えます。みなさんその間に入ってください!」
破滅の時
「・・・さっさ・・さささ・・・せない・・・」

破滅の時が現れ妨害を始めた!
突然周囲からマナが消えた

ファン
「マナが・・・!」
ギーン
「くそ!これでは魔法を唱えられんぞ!」
カジ
「魔法を唱えられなくても問題ない!」

カジがジェスターの首根っこを掴む。

ジェスター
「あ!嫌だ嫌だ嫌だ!!!」

しかし無視して再び発射口の中へ放り投げた。
次にルイとギーンの首根っこを掴み次々へと発射口の中へ頬り投げた。
ミーアだけは持ち前のジャンプ力で自力で中に入って行った。
そして全員が発射口の中に入る。

ルイ
「い、いたたたた・・・。でも何とか中に入れましたよ!」
カタリ
「うっ・・・頭がガンガン鳴り響くぜ・・・。」
ミーア
「起きたか。向こうへ走れ」
カタリ
「向こうへ走ればいいのか・・・?わかったぜ・・」

カタリが走り出した。何人かもカタリの後を追っている。

破滅の時
「にが・・にがにが・・・ささ・・ない・・・」

破滅の時が砲台の中にいる人を一網打尽にしようと強烈な魔法を詠唱し始めた。
マナがないのに一体どうやって詠唱しているんだ!!
その時下からカジの巨剣が飛んできた。見事突き刺さり詠唱が止まった。

カジ
「我輩に構わず先に行け!ここは抑える!!」
ギーン
「カジ!貴様はどうする気だ!」
カジ
「聞こえんのか!早く行け!お前なら何をしようとしているのかもう分っているだろう!!」
ギーン
「カジ!貴様が死ねば大きな戦力を失う!それはやめろ!」
カジ
「ならここで全員一緒にくたばるか!?」

破滅の時がカジの元へ降りてきた。そして乱闘が始まった。
砲台から轟音が鳴りだした。あと数分で発射される。

ギーン
「・・くそっ!」




カタリ
「おいおい、行き止まりだぜ・・・。どうすりゃいいんだよー?」

後ろからギーンがやってきた

ギーン
「これは砲台の弾か・・!?なんというデカさだ。」
カタリ
「これ弾かよ!?学校の建物と同じぐらいの高さだぜ!?」
ファン
「都市一つ簡単に壊滅できる威力を持っています。この大きさは・・破壊するのは難しいです」
ジェスター
「通れる隙間が何処にもないよ!」
ミーア
「穴を開けて弾丸の中を通るぞ」
ルイ
「しょ、正気ですか!?」
ミーア
「中はマナの塊だ。・・・美味しいはずだろ?」
ルイ
「・・・ま、まぁ・・そうなんですけど・・だけど一つ問題が・・・」
ミーア
「分ってる。だが死ぬよりは遥かに賢明だ」

ミーアがナイフを使って主砲の弾丸に小さな穴を開けた。中からマナがこぼれ始めた。
このまま待てばきっと空砲に変わるのだろうが全てのマナが抜けるのに数十分かかりそうだ。
ミーアが弾丸の中へ入る。そして液体化したマナの中を泳ぎ奥へと進んでいく。

ギーン
「ゆくぞ。息は魔法でなんとかしろ」
ジェスター
「えー!」
ルイ
「ジェスターさん、私が何とかしますから大丈夫ですよ」
ジェスター
「うん」
カタリ
「俺呼吸魔法ないぜ!」
ファン
「僕がフォローします」
カタリ
「助かるぜ」

全員主砲の弾丸の中へ入る。液体化したマナはかなりドロドロしてて正直気色悪い。
泳ぐというよりはかき分けるかのように進んでいく。
すると突然振動が走った。

ギーン
「まずい、あと一分で発射するぞ!」
ファン
「このままでは弾と一緒に飛ばされて即死ですね・・・」
ジェスター
「早く進んでー!!」

急いで泳ぐがいつまで立っても奥へとたどり着けない。大分進んでいるはずなのだが・・・。

アナウンスが聞こえる。

10・・・9・・・

カタリ
「いそげいそげ!!!!」
ミーア
「・・!弾丸の底へと来たぞ!」

ミーアが急いでナイフで穴をあける。すぐに穴が空き外へ出た。
外へ出るとハンドル式のハッチがあった。
皆が穴を通って出てる間にミーアが急いでハッチを回して開けた。

5・・・4・・・・

ジェスター
「わああああ!!」

全員扉を通って外へと出る。

2・・・1・・・

ギリギリの所でハッチを閉める。
そして主砲は発射された。




カジ
「死をもって償うがいい!!!!!
 そして死で救われろ!!!」



破滅の時を片手で押えこみながら叫んだ。

そして発射口から強烈なレーザービームが発射されその中へと呑まれていった・・・・。




エリート兵士
「報告!主砲に異常事態発生!マナ漏れが発生しそのまま暴発を起こして主砲ごと消え去りました!!」
校長
「なんだと!!主砲のないジェロスなぞただの巨大な棺桶じゃないか!!」
エリート兵士
「い、一度帰還なさいますか?」
校長
「・・・これではアノマラドとオルランヌに壊滅的ダメージを与える事ができん。
帰還だ。直ちに帰還して状況を立て直せ!
くそ・・学生風情に・・このジェロスを・・・!!!」

だが奴らも確実に戦力が失われつつある。
・・・大きな被害を被ったが勝たねばならない。勝たねばトラバチェスは終わりだ。



==ジェロス・船内



ルイ
「・・・大丈夫・・ですか・・?」
ジェスター
「・・・うん・・・」
ファン
「危なかったですね・・・」
ギーン
「・・・全くだ」

脱出した後すぐに全員でバリアを張って衝撃に備えた。
案の定ミーアが弾丸に穴を開けた事によって異常な爆発を起こし主砲ごと爆発してしまった。
強烈な爆炎が襲いかかったが主砲のビームと比べればはるかに小さなものだった。
・・・何とか生きている。


カタリ
「・・・ところでカジは・・・?」
ギーン
「・・・戦死した」
カタリ
「なんだって!!?あのカジが・・かよ!?」
ミーア
「・・・我々を助けるためにか」
ジェスター
「何で・・・皆最後にどんどん死んでいっちゃうの・・・。キュピルも・・・ダインもカジも・・・」
ルイ
「キュピルさん・・・」
ギーン
「・・・これが奴の切り札だったのか?・・・思いのほか・・・あっさりしていたような気もするな・・・」
カタリ
「まだあるというのか?・・・それは嫌だぜ・・・。もう・・・」
ギーン
「今度こそ・・・・校長だ。校長を倒す。それで終わる・・・」

全員の疲労も限界まで来ている。
先程の闘いでのダメージと疲れで動けない。

ミーア
「・・・来てるぞ。敵が・・・!」
カタリ
「接近戦が出来るのは・・・俺とミーアだけなのか・・!?」
ミーア
「いくぞ・・!」

ミーアが立ち上がり通路に出る。カタリも前に出る。
通路に出た瞬間たくさんの兵士達が来ていた。

カタリ
「カジの仇だ!!!」
ミーア
「はぁっ!!」


ジェスター
「もう動けないよ・・・ルイー・・・ファンー・・・」
ルイ
「戦いましょう・・ジェスターさん・・。」
ジェスター
「死ぬの怖いよ・・・・。死にたくない・・・」
ルイ
「・・・それは私も同じですよ・・・。・・・ですけど・・・」
ギーン
「おい。早く二人を援護しないとやられるぞ」

流石にミーアも疲れとダメージは蓄積していて敵を抑えるので一杯のようだ。
カタリはミーア以上にダメージが蓄積していて敵にやられている。

カタリ
「まずい・・まずいぜ・・・!数に・・数に押されてる・・・!!」
ルイ
「援護します!」

ルイがマシンガンの引き金を引いた。
ところが弾が出ない。

ルイ
「あれ・・・そんな・・・!こんなところで弾切れ・・・!」

他の拳銃を取り出す。しかし全て弾切れを起こしている。
・・・マナは先程のバリアで全て使い果たしてしまった。
ギーンも同じようで魔法が出せず援護が出来ない。

エリート兵士
「貰ったぞ!!」
カタリ
「ぐあっ!!!!」

敵の剣がカタリの肩に突き刺さる。
怯んだ隙に次々と敵の攻撃が飛んできた。

ミーア
「!。邪魔だ!」

ミーアが針を飛ばしカタリを攻撃していた敵を全員倒す。そしてすぐにカタリを後ろへ引きずった。
だが前線を支える者がいなくなった今後ろへ行くということは前線のラインが下がるということだった。
追い詰められた。

ルイ
「くっ・・・」

ルイがナイフを構える。だが殆ど使った事のない武器なので構えが悪い。
敵がやってきた。でたらめにナイフを振る。だがすぐに弾かれナイフが何処かに飛んだ

ルイ
「あ!!」
ジェスター
「助ける!」

ジェスターが鉄の棍棒を持ってルイを援護する。ルイと同じくでたらめに振り回してるが
こっちの方が危なくて敵も少し進めないでいる。

ミーア
「早くカタリを治療せねば死ぬぞ」
ギーン
「マナがない!」
カタリ
「やべぇ・・・まさか・・ここで終わるなんてな・・・」
ミーア
「終わって何かいない・・・!」
ファン
「ミーアさん!前線に戻ってください!」
ジェスター
「うううううーー!!」

奇跡的にジェスター一人で前線を守っている。剣と違って棍棒は重みがあるので
下手に弾こうとすれば逆にこっちが弾かれるため迂闊に攻撃できないようだ。

ミーア
「わかった」

ミーアが前線に入る。

ジェスター
「お願い・・。疲れた・・・」
ミーア
「任せろ」


カタリ
「俺はもうダメだぜ・・・。カジとダインの後を追う・・・。」
ルイ
「・・・・」

大丈夫ですと声をかけたいが声が出ない。

ギーン
「少しだけマナが回復した。今治療を・・・」
ミーア
「!!、そっちに敵が行ったぞ!」

敵を抑えきることが出来ず何人か兵士がやってきた。
ギーンの背中に剣が突き刺さる。

ギーン
「ぐっ!!」
ジェスター
「わあああ!!」

ジェスターが叫びながら棍棒を振り回す。だが今度は避けられジェスターに剣が振り下ろされた。

ルイ
「ジェスターさん危ない!!」

ルイがジェスターを庇う。肩から腹にかけて深い切り傷を追う。

ジェスター
「ル、ルイ!!!」
ルイ
「ジェスターさん・・!ごめんなさい・・・・」
ギーン
「くそっ・・・!!ぐっ!!」

ギーンの背中に二発目の攻撃が入る。背中から腹にかけて剣が貫通した。

ギーン
「がっ・・・ぎっ・・・!!!」

ギーンが最後の力を振り絞って魔法を放った。
まだ行き残っている者たちに最後のバリアを張った。

ギーン
「ここはもう・・無理だ・・!逃げろ・・・!」
ルイ
「ジェスターさん・・ファンさん・・逃げて・・ください・・」
ファン
「ジェスターさん!・・・最後の・・最後の頼みの綱に頼りに行きますよ!!」
ジェスター
「ルイ!ルイーー!!」

ファンがジェスターを背中に乗せて敵陣へと突っ込んだ。ギーンの張ってくれたバリアのおかげで
攻撃を防いでくれてる。ファンの強烈な突進で敵を次々と踏み倒していく。
ファンがこんな攻撃的なことをするのは初めてみる。

何とか血路を開く。敵陣を抜けだし階段へとやってきた。
それと同時にバリアが消えた。

後ろから剣が飛んできた!!

ミーア
「ここは私が抑える!ファン、頼みの綱とやらの所へ行け!」
ファン
「正直可能性は低いので頼みの綱とは言えないかもしれませんが・・・お願いします!
ですが危なくなったら退いてください!」

ミーアが敵を抑えてくれてる間にファンが階段を駆け降りる。そして3Fまで移動する。

ジェスター
「何処いくの!?」
ファン
「キュピルさんの所です!正直あれは死んだとは思えません!まだペストが・・ペストの力が残っていると思います!」
ジェスター
「キュピルは生きてるの!?」
ファン
「分りません!」



エリート兵士
「とどめだ!」

横たわっている三人にとどめをかけた。

エリート兵士2
「後三人が逃げた。追うぞ」

兵士達が一斉に移動しだしそして誰もいなくなった。



ギーン
「・・・・くっ・・・こ・・こまで・・か・・・」
ルイ
「皆・・・ありが・・とう・・・。」
カタリ
「・・・・・・・・・」


さっき戦った部屋の所まで来た。
中央にキュピルが横たわっていた。

ファン
「キュピルさん!」
ジェスター
「キュピル!!!」

ジェスターがファンの背中から降りてキュピルの元へ駆け寄る。

ジェスター
「キュピル!起きて!!!」
ファン
「キュピルさん!!起きてください!!」
キュピル
「・・・・・・・。」
ジェスター
「キュピル!お願い起きて!ルイが・・皆が・・・死んじゃったよ・・・!
ねぇキュピル!!聞いてる!?キュピル!!!!」

泣きながらキュピルをゆする。

ジェスター
「キュピル起きて!戦って!お願い・・・!!」

ジェスターがずっと大事に持っていたキュピルの剣を持たせる。コートも着させる。

ファン
「・・・ヒール・・・!!」

ファンがダメ元でヒールをかける。
傷は癒されてるが意識が戻っていない。

ファン
「キュピルさん!今は貴方だけが頼りなんです!!お願いします!!起きてください!!」

その時足音が聞こえた。
敵兵士だ!!

エリート兵
「いたぞ!」
ファン
「て、敵です!!」
ジェスター
「キュピル!!!」
ファン
「ミーアさんは・・ミーアさんは・・・!?」
エリート兵2
「貴様等が最後だ!死ね!」

最初にファンに剣が飛んできた。
辛うじて避けるが次の攻撃は避けれなかった。
初めて襲いかかる激痛には叫ばずにはいられなかった。

ジェスター
「ファンー!!!」
ファン
「ジェスターさん・・ごめんなさい・・。頼みの綱は・・・浅はかでした・・・」
エリート兵
「そっちは任せるぞ。・・・おい、そこの白いチビ。遺言はあるか?」
ジェスター
「殺さないで!」
エリート兵
「それが遺言か。」
エリート兵2
「おい、あんまり時間かけてるぞ叱られるぞ」
エリート兵
「だな。・・・覚悟はいいか」

ジェスターの背が壁にぶつかる。もう後ろに下がれない。

エリート兵
「死ね!」























キュピル
「ジェスターとファンにだけは手を出させん。例え神が相手だとしてもだ」




強烈な斬撃が走った。






最終回へ続く







ギーン
「・・・・」
ルイ
「・・・・?」
ギーン
「おい、動くな。・・・魔法が解ける」
ルイ
「・・・・・・あれ????」
ギーン
「・・・馬鹿が・・・。生きてる事に感謝しろ



最終話


ルイ
「どうして私生きてるんだろう?え?」
ギーン
「いいから動くな、くそがっ!」




キュピル
「うおおおぉぉぉっっ!!」
エリート兵士
「ぎぇぁ!!」

最後の一人を倒した。


キュピル
「ファン!大丈夫か!?」
ファン
「ふぅ・・痛かったですが忘れてませんか?僕はダメージの大小に関わらず三回攻撃を受けると死にますが
逆に言いますと二回までならどんな攻撃を受けても生きますよ」
キュピル
「そうか、それはよかった。でも早めに治療したほうがいい」
ジェスター
「キュピル!」

ジェスターが飛びついて来た。しっかり受け止める。

ジェスター
「キュピルが生き返った!」
キュピル
「もう大丈夫だ。安心してくれ。全部理解している。全部分っている。全部だ・・全部・・・」
ジェスター
「全部?」
キュピル
「ああ・・。俺がジェスターと戦ってしまった事も皆が何とかの君とかという奴と戦った事も
カジが死んでしまったことも・・・」
ジェスター
「何で知ってるの?」
キュピル
「ジェスター。この刀。よく知ってるよな?」

キュピルが赤い刀をジェスターに突き出す。
いつもの愛剣かと思ったら形が大幅に変わっている。更に鋭利な刃に代わり
刀身も少し長くなった気がする。何よりも凶暴な見た目をしている。


ジェスター
「あれ・・?それキュピルの愛剣だよね・・・?」
キュピル
「正確には一度ボロボロになってしまった剣をジェスターが放浪して直してくれた『魔法』の剣だ」
ファン
「・・・魔法かかってましたっけ?」
キュピル
「正確には今ついた」
ジェスター
「・・私の記憶だと・・・」


〜〜シーズン7・放浪〜〜

ジェスター
「あれ?こんな剣だっけ?」

赤い色の剣ではあるが少し刃の形や長さ。それに形状も少し・・・

クローク
「お前が上質な鉱石を持ってきたから改造してやったんだよ。
普通の修理じゃ釣りが来ちまうぐらいだったしな。うかつに刃に触れるなよ。」
ジェスター
「おぉー・・・」

まじまじと見る。

クローク
「だがコイツは未完成だ」
ジェスター
「え?何で?直したんじゃないの?」
クローク
「こいつは未完成の姿。完成した姿はもっと恐ろしい武器に変わるぞ。」

一瞬悪魔みたいな物を想像してしまった。

クローク
「ただし、俺が出来るのはここまでだ。これ以上はうちの工房じゃ作れん。」
ジェスター
「中途半端な所でやられるのが一番困るんだけど・・」
クローク
「言い直そう。そいつは殆ど完成に近い未完成だ。
だが一言付け加えておこう。こいつはどんな窯でも続きを作る事は出来んぞ。
ここから先は魔法の領域だ。どうすれば完成できるかは知らん。」






キュピル
「ジェスター。お前さんが砲台のマナの中を泳いだ時にこの剣に魔法効果が付加された。
・・・剣を受け取った時ジェスターの記憶が全て流れ込んできた。
苦労したな・・、後は俺に任せてくれ。・・・このどうしようもない戦争を終わらせる。」
ジェスター
「うん・・!やっつけて!」
キュピル
「細かい話とかは全部終わってからだな。まずはルイ達を助けに行くぞ!」

キュピルが廊下へ出た。二人もその後に続く。



エリート兵士
「居たぞ!仕留めろ!!」
エリート兵士2
「死ねえええ!!」

完全に数で押し切ろうとしてきている。
精鋭達が襲いかかってくる。

キュピル
「見きった・・・!」

敵一人が刃を振りおろしてきた!
まずはそれを剣で受け止めすぐに肩で敵を突き飛ばした。
後ろへ吹き飛び敵数人が巻き込まれた。

斜めに倒れた敵を踏んづけ敵陣の中へと飛びこむ。


キュピル
「はああぁぁっっ!!!」


剣を地面に突き刺す。激震と共に電流を撒き散らし周囲に居た敵を感電させた。
そして剣を引き抜き回転切りして一気に敵を蹴散らす。

キュピル
「行こう!」
ジェスター
「キュピルが魔法使ってる・・・」
キュピル
「学校で習った技術が今ここで活かされてきた」
ファン
「本当に流石ですね」


階段を登っていくと途中ミーアが居た。
なんと敵を食いとめていた!

ジェスター
「ミーア!」
ミーア
「ジェスターか!?頼みの綱はどうなった!?」
キュピル
「頼みの綱は成功だ」
ミーア
「キュピルか・・・!?とにかくバックアップを頼む・・!」
キュピル
「任せろ!ミーア、しゃがめ!」

キュピルが剣を投げた。とっさにミーアがしゃがんで回避する。
電流を撒き散らしながら次々と敵を貫通していく。剣自体をよけても電流に巻き込まれ倒れる人もいた。
最後に壁に刺さって止まった。しかし通路に敵は一人も残っていなかった。

ミーア
「・・・いつそんな力を」
キュピル
「細かい事は後だ。校長を倒すなら今が一番のチャンスだ。
だけどその前にギーンやルイ。カタリを助けに行こう」
ミーア
「承知」

ミーアが列に加わる。
剣を引き抜き角を曲がると問題の所へやってきた。

キュピル
「ルイ!!」
ミーア
「・・・・」

悲惨だった。三人とも見るに無残な姿になっていた。

キュピル
「手遅れだったか・・・!?」
ミーア
「ギーン。私に気配隠しは通用しない。もうここは安全だ。」
ギーン
「そうか」

突如死んだと思われたギーンが起きた。それに続いてルイも起き上がった。

ルイ
「キュピルさん!!」
キュピル
「ルイ、もう大丈夫だ。後は全て俺に任せろ。」
ルイ
「怪我は!?ペストは!?大丈夫なんですか!?」
キュピル
「と、とにかく大丈夫だ。むしろルイこそ大丈夫か?満身創痍のはずだ」
ギーン
「・・・・禁断の魔法を発動した。その為我々はこの通り傷も回復して無事生き延びる事が出来た。
銃も確認してみろ。弾薬が回復しているはずだ。」
ルイ
「え?・・・あ、本当です!」
ギーン
「・・・失った代償は大きいがな」
ルイ
「代償・・・ですか?」
ミーア
「・・・カタリは死んだか」
ファン
「・・・ギーンさん。もしかして・・?」
ギーン
「・・・その通りだ。触媒として味方の命が必要だった。」
ルイ
「えっ!?それは一体どういうことですか!?」
ギーン
「文句あるなら貴様の命でも使えばよかったか?」

キュピルがルイの肩を叩く

キュピル
「頼む、ルイ。細かい事は全て後にしてもらいたい。校長が逃げようとしている。」
ルイ
「校長の動きが分るんですか?」
キュピル
「ああ・・。急がないと」
ギーン
「追うぞ!」

残り少ないメンバーで校長のいる部屋へ向かう。

階段を上り最上階へと登る。
そして通路に出て角を曲がりそして司令室へと入る。



==司令室


校長
「そこまでだ」

部屋に入った瞬間今までとは違う兵士に見た事ない銃を突きつけられた。
全員動きを止める。

校長
「君等はとんでもない事をしてくれた。・・・死をもってしてもぬるいぐらいだ」
キュピル
「それはお前にも言えるはずだ。・・・こんな私利私欲のために引き起こした戦争・・・!」
校長
「私利私欲だと?分ってないな!!この三つ巴とも言える戦争は何年前に始まったと思っている!?」
ギーン
「・・・三つ巴だと?オルランヌとアノマラドの二国との戦争に勝手にトラバチェスが介入しただけの間違いだ」
校長
「戦争が始まった時からオルランヌとトラバチェスは非公式に裏で繋がっていた。
裏での手助けがアノマラドのスパイによってばれ各地のマスメディアに騒がれた結果だ」
ギーン
「ふん、どっちにしろ戦争に参加したのならば自国が滅びる覚悟ぐらい出来ているだろ?」
校長
「トラバチェスは滅びん・・・。ジェロスがまだある限り・・な」
ルイ
「まだジェロスに頼るんですか?もう主砲も吹き飛び一部の副砲も壊れましたよ?」
ファン
「エンジンにも被害が及んでいるようですね。」
キュピル
「校長・・いや、トラバチェス首相。・・・降参しろ。もう逃げ場はないぞ」

キュピルが剣を校長に向ける。剣から電流が少し溢れている。
そして剣が赤く光りだしている。

校長
「ぐっ・・・」

流石の校長もあまりのプレッシャーに少したじろいだ。

校長
「最後まで徹底抗戦しろ!!」

校長が腕を振り近くにいた兵士が一斉に射撃を始めた!

ファン
「バr・・」
キュピル
「任せろ」

キュピルが剣を一振りする。剣から電磁パルスを発し飛んできた銃弾を弾いた。

ギーン
「おい、なんだこの技は!?」
ルイ
「魔法・・・ではないです。完全に見たことありません・・・!」
校長
「ちっ、いつあんな技を身につけたというのだ・・!」
精鋭兵士
「はぁっ!!」

兵士三人が同時にキュピルへ接近した!
キュピルが剣を構える。敵兵士三人が息の合った連携攻撃を繰り出してきた!

キュピル
「見える!」

一瞬キュピルの残像があちこちに現れ次の瞬間、兵士三人が地面に倒れていた。

ギーン
「・・・・。この現象・・・行動・・。読んだ本に似ている・・。」
ルイ
「どういうことですか・・・?」
ギーン
「モナ怒りの剣と持ち主の怒りが共鳴した時、剣の潜在能力が引き出され
そして持ち主の力を数百倍に増幅させる・・・。しかし通常剣自身に意思が宿ることはないと言われている。
・・・剣に他の人物の意思が宿る事はあると言うが・・・。まさか」
ジェスター
「いけー!キュピルー!ガンガンやっちゃえー!」
ギーン
「・・・・気のせいか。・・・しかしあの力は何だと言うんだ・・・」

気がつけば周りにた精鋭兵士は全て倒れていた。
校長が腰につけていた長剣を抜刀した。

校長
「最後の一兵になろうと決して屈しはせん!!」
キュピル
「ならば首相、諦めて倒れろ!!」

キュピルが思いっきり校長目がけて剣を振り下ろした!ところがそれを校長が受け止めた!
それどころか剣を押しのけキュピルをのぞけらせ、即剣で攻撃してきた!

ミーア
「キュピル。味方を忘れるな」

すぐにミーアが前に飛び出し校長の長剣を蹴り飛ばした。
それと同時に校長の頭も蹴り飛ばし遠くへ吹き飛ばした。

ギーン
「ああ、そうだ。お前だけが活躍していると惨めな思いになる」

ギーンが魔法を詠唱しキュピルに強化魔法をかけさせた。
力が湧き今なら風より早く走ることが出来る気がする。

ルイ
「さぁ、キュピルさん!とっておきのトドメを!!」

ルイが口径の大きい拳銃で校長の足に打つ。身動きを封じ込める。






キュピル
「はああああぁぁぁぁっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!」









強烈な一振りで校長を薙ぎ払った。即死だろう。

しばらく周りが静かになった後ジェスターが一番最初に口を切った

ジェスター
「ばんざーい!校長倒したーー!!!!」
ルイ
「終わった・・・ついに終わったんですね・・・長かったです・・・」
ギーン
「・・・こうもあっさり行くと何か怖いな」
ルイ
「・・・そうですか?だって今のキュピルさんは最強ですよ?ふふ」
ファン
「何でルイさんが誇ってるんですか・・・」

ミーア
「キュピル。よくやった。これで戦争は終わりだ」
キュピル
「・・・そうだろうか・・・」
ミーア
「・・・どういうことだ?」
キュピル
「・・・何か・・・何かを感じないか?この違和感・・・。
確かに校長は死んだ・・だが校長が死んだ瞬間・・・。


まるで俺達がジェロスという生き物の体内に入った瞬間がするんだ・・・」




ミーア
「・・・・!!」


急に船内が激しく揺れだした。

ギーン
「何だ!?」
ファン
「く、崩れる・・・!?」
ミーア
「いや、崩れているのではない・・・・。こいつは・・・なんだ!?」
ルイ
「け、景色が変わっていく・・・!?」

外の景色が変わっていく。破滅の君と戦った時のような多次元世界へと入っていく。

キュピル
「校長で終わりじゃない。まだ最強の敵が最後に残っている」
ルイ
「最強の敵・・?一体誰ですか!?」
キュピル
「ジェロスだ・・・。」



辺りが暗闇に包まれた。


ギーン
「おい、ライトが発動しないぞ」
ファン
「バーストを発動してみましたが火の明るさがありません!」


しばらくして


キュピル
「はぁっ!」

キュピルが剣を一振りした。辺りに包まれていた闇が消える。



そして電脳世界のような場所へ飛ばされた。
突然目の前に0と1しか書かれていない文字列が目の前を走りそして消えていく。

ジェスター
「ここは・・どこ・・?」
キュピル
「・・・ジェロスの中だ。」
ジェスター
「ジェロスの中・・?」

中央に銀色の形をした丸い球体があった。
その球体を中心にたくさんの文字が流れた。
 






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キュピルが身構える。

そしてまた文字が流れた。





I am '[Jerosu]. ' Person who causes ruin




ルイ
「私はジェロス、滅ぼす者・・・」

全員武器を構えた。もう何をすればいいのか全員わかっているようだ。



ミーア
「あのコアを壊す必要がある」
ファン
「まるで電脳都市の世界に入った感じがします・・。コアはコンピューター用語でカーネルと言います。」
ギーン
「どうでもいい。奴がどう動くか・・・。気をつけろ」


キュピル
「俺が前に出る!」
ジェスター
「あ、キュピル!」

二人が前に出る。一番最初に剣を振るって攻撃した。
だがカーネルにぶつかる前にバリアのような物に防がれた。

キュピル
「・・・!」

カーネルの中心から一本のビームが飛び出て来た。至近距離ではあったが回避した。

ルイ
「わっ!」

後ろも何とか回避したようだ。そのまま何処か遠くへ飛んで行った。
どこか適当な場所にぶつかるとそこからデーターの破片のようなものが飛んできた。
またその破片から先程のレーザーのようなものが飛んできた。

ミーア
「・・・ふんっ」

ミーアが沢山の針を投げつける。周囲に飛んでいたデーターの破片を全て落とす。
落ちたデーターが割れそこから更に複数のデーターが飛んできた。
その複数のデーターが他のデーターと混ざりあい別のデーターになった。

ルイ
「撃ち落とします!」

ルイが飛んでる複数のデーターを撃ち落とす。今度はその場で消えてなくなった。

ギーン
「よくわからない敵だ」


前衛ではキュピルとジェスターが必死にカーネルに攻撃しようとしている。
しかし謎のバリアに弾かれてしまっている。

キュピル
「くそっ、攻撃が通らない!」
ジェスター
「えいっ!えいっ!」


その時カーネルを中心に文字が再び流れた。


Elevation of level


カーネルの形が変わった。細かく分裂しデーターの破片を撒き散らしながら兵士の姿へと変わっていった。
そのデーターの破片からまた破片がこぼれ兵士へ変わっていきそのこぼれた破片までもが兵士へと変わる。

ざっとみて数十人か。
いや、まだ分裂を続けている。

ミーア
「はっ!」

一番最初にミーアが攻撃した。一人の兵士の顔面を殴り次に足を蹴って後ろへ倒させ
倒れる前に敵の顎を思いっきり蹴りあげ宙に浮いた所をすかさず三段蹴りを浴びせる。
最後に強烈な一撃を与え他の兵士を巻き込みながら吹っ飛んで行った。
床に倒れた兵士がバラバラになりデーターの破片となった。
ところがそのデーターの破片が変形し兵士の姿へと変わっていった。さっきよりも増えている。

ミーア
「・・・・・・」
ファン
「のれんに腕押しって所でしょうか・・」
キュピル
「こんな弱い兵士に手間取ってるわけにはいかない!あの技をやってやる!!」
ジェスター
「あの技?」

キュピルがルイに向き直る

キュピル
「ルイ!俺に高速移動の魔法をかけてくれ!同時に重力解放の奴もだ!」
ルイ
「・・・!あの技ですか!わかりました!」

ルイが魔法を詠唱しキュピルに高速移動と重力解放の魔法をかける。
キュピルが青く光る。


キュピル
「うおおおおぉぉぉぉぉっっっっっっ!!!!」



学校でオルランヌと戦闘が始まった時に使った技だ。
高速移動と重力解放が重ね合わさり小さく浮きながら無限に回転を続けそのまま敵に向かって突撃。
あの時と同じく敵が防ごうと武器を構えても遠心力に任せた攻撃を防げるはずがなくそのまま弾かれて
斬られていく。

斬られた兵士からデーターの破片が飛び散り再び兵士の形へと変わるが変わった瞬間に再びキュピルに斬られた。

しばらくすると敵兵士が自ら消えていった。

キュピル
「やったか!?」

たくさんのデーターの破片が再びカーネルへと吸い込まれていく。
そして再び文字が流れた

Elevation of level




再びカーネルから三つのデーターが飛んできた。
三つのデーターは見知った人物に変身した。

ハルララス、ユーファ、ピア だ。

ギーン
「ふんっ、トラバチェスの野郎どもか」
ルイ
「相手はただのデータです。・・・私は撃ちます」
ファン
「ためらいません」

ユーファがさっそく強化魔法を詠唱しハルララスとピアにかける。
力を増したハルララスがキュピル目がけて突進してきた!

キュピル
「ハルララス・・・!」

キュピルの持っていた剣の形が変わった。長い剣から小さなナイフへと変わった。
長い剣では至近距離では戦いづらい。それを剣が読みとったのか・・・?
ナイフで反撃する。素手とナイフならこちらの方が圧倒的に有利だ。
だが怯む事なく攻撃してくる。

キュピル
「速い・・・!」

ユーファの強化魔法のせいか力が強く何よりも早い。反撃しようとするが次の攻撃がすぐに来て
それを防がなければこっちがやられる。

ジェスター
「んーー!!!」

ジェスターが唸りながら鉄の棍棒でハルララスの背中に攻撃した。
しかし気付いたのかすぐに振り返って鉄の棍棒を片手で受け止めジェスターを蹴り飛ばした。

ジェスター
「痛い!」
キュピル
「いまだ!」

背を見せたハルララスにキュピルがナイフで素早い攻撃をしかける。
残像を見せながらあちこちに強烈な突きを繰り出していく。

キュピル
「(剣の力に・・振り回される・・・!?なんとしてでも扱いこなさないと・・・)」

最後にハルララスの胸にナイフを突き立てる。やったか!?
だがユーファがすぐに回復魔法を唱えハルララスを回復させる。
ユーファを先になんとかしないと!

ピアがミーアに電気を帯びた槍を召喚し投げつけてきた。
しかしそんなことはお構いなしに槍を蹴り返す。一瞬電気が体を通り痺れたがすぐに回復した。

ミーア
「ピア。・・・私は悩まない」
ピア
「・・・・・」

ミーアがナイフと針を持ってピアに投げつけた。
ピアがバリアでそれを弾くが次の瞬間にはもうミーアが目前まで来ていた。
バリアを叩き壊し直接ピアに攻撃を仕掛ける。
三発の攻撃が頭に入り二発の攻撃が腹に入る。そしてとどめに足を蹴って転ばせ
倒れる前に思いっきり蹴りあげて空中で三段蹴りを浴びせる。さっきの兵士にやったのと同じ技だ。
正確に攻撃しユーファに向けて蹴り飛ばした。

そのままユーファにぶつかり魔法の詠唱が止まった。

キュピル
「・・・!いまだ、もう一度!!!」

ハルララスにさっきと同じ技をしかける。
その最中ユーファが起き上がって回復魔法を唱えようとした。しかし


ルイ
「させません!!!」

ルイが狙撃銃でユーファの肩を撃ちぬく。詠唱が止まった。
更に発射し心臓に命中した。
その瞬間ユーファが崩れデーターの破片となってカーネルへと吸い込まれていった。

ルイ
「・・・ごめんなさい」


キュピル
「とどめだ!!」

再びハルララスの胸にナイフを突き立てる。突き立てた瞬間ハルララスが崩れデーターの破片となって
カーネルへと吸い込まれていった。

キュピル
「ピアは?」
ミーア
「既に私が倒した」
キュピル
「そうか」

ミーアの顔に迷いはなかった。



その時カーネルが変な音が聞こえた。



ガガ・・ガガガガガ・・・





しばらくして再び文字が流れた。



Elevation of level





カーネルから再び二つのデーターが飛んできた。

キュピル
「くそ、きりがない!」

キュピルが直接カーネルに攻撃する。だがやはりバリアによって防がれている。

ギーン
「キュピル。奴は事あるごとにElevation of level(レベル上昇)している。
これは恐らくセキュリティーレベルか何かだろう。最後にカーネル直々動くはずだ。それまで凌げ」
キュピル
「・・・わかった」


二つのデーターが再び変化した。


・・・カジと司令塔で戦った敵デイドラ指揮官だ。

ファン
「あの二人と戦わなくてはいけないのですか!!」
ギーン
「ふんっ、デイドラ族は魔法に弱い。我々の出番だ」
ルイ
「キュピルさん、ジェスターさん。ここは私達に任せてください」
キュピル
「頼む。流石にこの身長差では抑えられる自身がない」

キュピルとジェスターとミーアが後ろに下がりファンとギーンとルイが前に出た。
さっそく巨剣を構えてカジが突撃してきた!

ファン
「ダイナミックオーラー!」

ファンが緑色のオーラーを発した。カジがファンに近づいた瞬間そのオーラーが一瞬で広がりカジを吹き飛ばした。

ファン
「メガバースト!」

巨大な炎の弾を生み出しカジ目がけて飛ばした。しかし敵デイドラ指揮官が巨剣で跳ね返してきた!

ファン
「再び跳ね返します」

ダイナミックオーラーでメガバーストを跳ね返す。
敵デイドラ指揮官もまた跳ね返そうとした。しかし

ルイ
「二度はさせませんよ!」

ルイがRPG-7を構えて発射した。
メガバーストが着弾する前にRPG-7が着弾し結果的にRPG-7を跳ね返してしまった。
当然魔法と違って弾力があるわけなく剣で弾いた瞬間に爆発し立て続けにメガバーストもぶつかった。


キュピル
「気をつけろ!カジが後ろに居る!」
ルイ
「え?」

敵デイドラ指揮官だけに気を取られ気が付いたら誰もカジをマークしていなかった。
カジが巨剣を振り落しルイを叩きつぶした。

ルイ
「っっっっ!!!!!」
キュピル
「くそっ、もう黙ってみてられるか!」

キュピルがカジに飛びかかる。
持っていたナイフが再び変化し青い球体が埋め込まれた剣に変わった。

キュピル
「なんだ・・これは?」

どうやって扱えばいい。ためしに振ってみると様々な属性の魔法の弾が高速で飛んで行った。なるほど!
槍を持つかのように構えてグルグル回りながら魔法弾を飛ばしていく。
硬く、高速で飛んでいく魔法弾は確実にカジにダメージを与えていた。
カジに接近すると直接剣で攻撃した。剣がカジにぶつかった瞬間強烈な爆発が起きカジを遠くに吹き飛ばした。

キュピル
「ルイ!大丈夫か!」
ルイ
「・・・・・・・」

気絶しているようだ。
出血が酷く複雑骨折している。

キュピル
「ファン!俺が前に出るからルイの治療を頼む!」
ファン
「わかりました」

ファンが後ろに下がりキュピルが前に出る。
ミーアがルイを後ろに運ぶ。


ギーン
「魔法の剣か。・・・キュピル、お前の魔法はあまり見た事がない。楽しみにしていいか?」
キュピル
「楽しみにしてくれ」
ギーン
「期待してるぞ。」

カジと敵デイドラ指揮官が突撃してきた!

ギーン
「ダークボム!」

闇の塊を投げつける。敵にぶつかる直前に暗黒の魔法陣が広がり敵二人の足を拘束した!

キュピル
「・・・!これならいける!」

キュピルが剣を両手で構えて思いっきり地面をたたく。
叩いた地面から電気の衝撃波が走り二人を痺れさせた。

ギーン
「このまま一気にたたみかける!メテオ!!」

ギーンがメテオを発動した。天空から隕石を召喚し二人を叩きつぶした。
魔法に耐性のない二人にとってまさに一撃必殺とも言えるダメージを受けた。
データーの破片となりカーネルへと吸い込まれていった。


ガガ・・ガガガガ・・・・





Elevation of level






カーネルの姿が変わっていく。
この変化が一体どうなるのか誰にも分らない。

データーが一つ飛んできた。
そして形が変わり次元の君になった。

ギーン
「ちっ・・こいつか・・・」
ジェスター
「むぅー・・」
ファン
「キュピルさん。この敵はありとあらゆる物体として存在する攻撃を跳ね返してきます。気をつけてください」
キュピル
「物体として存在するものか・・・。」

次元の君が宙に上がり細かい魔法弾をたくさん散ばしてきた。小さくても当たると物凄く痛い。

ギーン
「今からこのエリアの温度を急上昇させる!バリアを張っておけ!」
ファン
「はい!」

ギーン以外の全員をバリアで包み込む。
そしてギーンが魔法を発動した。その瞬間周囲の温度が急上昇し2000℃近くまであがった。
当然空気を次元移動させたところで温度は変わらないため瞬く間に次元の君が燃え始めた。
温度が元に戻ったところで次元の君が次の形態に移った。確か翻弄の君だったか。

翻弄の君が四つの銀色の弾を放ってきた。避けたと思ったらまた誘導してくる!

ファン
「バリア!」

が、貫通しファン、ジェスター、ミーア、ギーンに命中した。

キュピル
「何だ!?」
ルイ
「・・気をつけてください・・・。一時的に・・・操られます・・」
キュピル
「ルイ、危ない。下がった方がいい」

当たった四人は完全に意識を失っているようだ。
一瞬脱力したかと思えば立ち上がりキュピル目がけて襲い始めた!

キュピル
「くそっ、相手が味方じゃ斬れない・・・!」

翻弄の君がほくそ笑む。指が動いている。
あの指さえ止めれば・・・

ジェスターがいつのまにか後ろに接近していた。頭突きしてきたが受け止める。
次にミーアが襲いかかってきたが足をひっかけ転ばす。

キュピル
「すまん、ジェスター、ミーア。許してくれ」

そういってジェスターとミーアの腕を掴むと翻弄の君目がけて思いっきり投げ飛ばした。
が、次元を操作して別の空間へつなげ真横からジェスターとミーアが飛んできた。

キュピル
「うおっ」

何とか避けるが投げられた二人は頭から地面にぶつかった。痛そうだ・・・。
だが仕組みはわかった。

ギーンとファンが大技の魔法をドンドン放ってくるが隙が大きいため避けるのは安易だった。
すぐに接近しギーンの腕を掴むとまた翻弄の君へと投げつけた。
さっきと同じようにまた次元操作をした。空間に穴が空き横にも穴があいた。

キュピル
「いくぞっ!」

横の空いた穴にキュピルが飛び込んだ!飛び込んだ瞬間空間移動し目の前に自分が投げつけたギーンが来た。
そのギーンを踏みつけて後ろへ飛び翻弄の君目がけて斬りつけた!
突然の奇襲に対応することが出来ずそのまま斬られる翻弄の君。

キュピル
「はああぁぁぁっっっっ!!!」

もう一度大きくジャンプして空中で五段切りを繰り出す。そしてトドメに相手の頭を剣で叩き斬った!

キュピル
「やったか!?」

一瞬光ったかと思えばまた別の姿に変身していた。

ギーン
「ぐっ・・なんか・・あちこち痛む・・・。キュピル。どうなっている」
キュピル
「奴を倒したと思ったらまた変身した」
ギーン
「破滅の時か・・・。そいつの情報は少ない。」
キュピル
「ふむ・・・」
ジェスター
「頭痛ーい・・・!」
ミーア
「・・・私もだ・・」
ファン
「無傷、五体満足です」
ルイ
「・・・全部見ていました・・」
ファン
「あ、ルイさん。意識が戻ったんですね。でも動かないでください!」

破滅の時が青く光り分身し二人に増えた。
そして魔法の剣を持って高速で飛んできた!

キュピル
「ぐっ!」

何とか剣で受け止めるがあまりの速さに後ろにのぞける。
すぐに反撃したがすり抜けた。

ファン
「片方は完全に魔法で作られた影のようです!本体を攻撃しないと・・・!」
キュピル
「くそ、こっちは偽物か!」
ミーア
「はっ!」

ミーアが一本の紐を投げつけた。それが本物の破滅の時に巻きつき動きを止めた。

ミーア
「やれ!キュピル!」
キュピル
「いくぞ!目には目、残像には残像だ!」

剣の力を借りて一時的にスピードをあげる。
そして高速で破滅の時を切り刻んだ!あまりの速さに残像が見え始めた。

紐ごと切り刻んでしまったがかなりのダメージが入ったはずだ。
しかしまだ倒れる事なく抵抗を続けてきた。
二人の破滅の時が宙に飛びあがると次元操作を行った。
そして空間からジェロスの主砲を召喚してきた!

ギーン
「なに!主砲だと!?」
ジェスター
「あれを撃たせたら私達即死しちゃう!」
キュピル
「くそ、止める!!」
ファン
「キュピルさん、お願いします!破滅の時は僕達が食い止めます!」

ファンが魔法でキュピルを浮かせ主砲の中へ突っ込ませる。
中に入ると主砲用の巨大な弾が装填されていた。この弾を破壊すればいい。
力を溜め大技の準備をする。


破滅の時が主砲に入ったキュピルを追おうとしていた。

ギーン
「させん!コーリング!!」

ギーンが破滅の時を自分の目の前に引き寄せた!

ジェスター
「私の一撃!!」

ジェスターが鉄の棍棒で思いっきり破滅の時の頭を殴った。
一発命中し地面に倒れる破滅の時。追い打ちをかけるようにガンガン殴り続ける。
だが破滅の時が一瞬だけ巨大なオーラーを発しジェスターを吹き飛ばす。
ゴロゴロ転がりルイの元まで転がった。

ジェスター
「痛い・・・」
ギーン
「俺が大技をかけて破滅の時を倒す・・!それまで守ってくれ!」

ギーンが魔法の詠唱を始めた。

ファン
「バリア!」

ファンがバリアをかけて自分とギーンを守る。実質前に出て戦っているのはミーアだけになった。

ミーア
「はっ!」

素早いパンチを繰り出し破滅の時のスタミナを奪っていく。
ロウキック、サイドキック、リボルトキックの順に繰り出していき
上段、中段、下段の三つの蹴りを繰り出した後にジャンプして回し蹴りを放った!
顔面にぶつかり遠くに吹き飛んだが空中で体勢を整えすぐにミーアに目がけて突進してきた!
たった一秒の出来事で反応することができずそのまま体当たりを食らう。

地面に転がるミーアに追撃をかけるかのように破滅の時が巨大な重石を召喚しミーアの上に落とした!

ミーア
「うぐっ!!」

トドメと言わんばかりの鋭利な剣でミーアを斬り倒した!

ジェスター
「ミーア危ない!」

ジェスターが捨て身のタックルで破滅の時を転ばす。
転んだ隙にジェスターがミーアをルイの所まで引っ張った。

ジェスター
「ここは安全地帯!」
ファン
「僕がバリア張ってる限りそこは安全です」

しかし誰も前衛で戦う者がいなくなってしまった。
破滅の時が主砲の中に入ったキュピルを追いはじめた。

ギーン
「ちっ!奴が中に入ってしまったか!!」
ファン
「キュピルさんなら・・・今のキュピルさんなら・・大丈夫です」


キュピル
「はああぁぁっっっっっぁああああ!!!!」

お得意の一閃に魔力を込め鋼鉄をも斬る強烈な斬撃を放った!
主砲の弾が崩れ中に入っていたマナがこぼれ始めた。
しばらくするとデーターの破片となって消えて言った。

キュピル
「これは・・カーネルが作りだした主砲だったのか。・・・・!!」

すぐ後ろに殺気を感じた。あわててしゃがみ間一髪のところで破滅の時の攻撃を避ける事に成功した。
慌てて蹴り返し主砲から飛び出る。

ファン
「戻ってきました!」
ギーン
「詠唱が完了した!」

キュピルが地面に着地した瞬間に破滅の時が主砲から飛び出て来た。
そしてギーンが魔法を発動した。


ギーン
「Both collapses(お互いの崩壊」
ファン
「え!?」

ギーンの手から一本のレーザーが走り破滅の時に命中した。
その三秒後、お互い同時に倒れた。

キュピル
「何が起きた・・?!」
ファン
「あの技は自分を犠牲にして相手を確実に倒す技です・・・。」
キュピル
「・・・ギーンは・・死んだのか?」
ファン
「正確に言うと・・自分を気絶させて相手も気絶させる技です。」
ジェスター
「なーんだ」
ファン
「なーんだって!」
キュピル
「だがギーンは良い仕事した。とどめだ!!」

気絶している破滅の時の背中に剣を刺す。刺した瞬間にデーターの破片となってカーネルに吸い込まれていった。



ギギ・・ガガガガ・・・ガーガー・・・




さっきよりも音が大きくなっている。



そしてカーネルを中心に文字が流れた。






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不良セクタ多発、処理落ち発生、ウィルスの脅威レベル・・MAX・・・。
データ・・デ・・デ・・−−−タ・・・デタ・・・
排除・・・・・除・・バック・・ア・・


カーネルを取り囲んでいたバリアが消えた!

キュピル
「攻撃するなら今だ・・・!!」

キュピルがカーネルに突進した!だが攻撃する前にカーネル自身が宙に飛びあがった!

キュピル
「なに!?」




Elevation of MAX level






DELETE       DELETE 
   DELETE                          DELETE           DELETE 
         DELETE           DELETE 
DELETE                       DELETE 
            DELETE                               DELETE 
                      DELETE 
     DELETE                             DELETE 



カーネル回転しながら無数のレーザーが高速に放たれた!!
一度に数十本のレーザーが放たれ続け徐々に数が多くなってきている。

キュピル
「なんという弾幕だ・・!!これでは近づけない!!」
ファン
「バ、バリア!」

ファンがバリアを再び張った。だがバリアにレーザーが着弾すると一瞬で壊れた。

ファン
「ヒェェ!」

ミーア
「くっ・・・」

何とか倒れているギーンを担いで避けているがミーアでもかなり苦しいようだ。

ジェスター
「あっ・・・!!!」

倒れてるルイにレーザーが着弾した。
ルイが崩れデーターの破片となりそのまま何処か消えていった。

ジェスター
「ル、ルイーーー!!!!」
ファン
「ひぃぃ!!」

ファンにもレーザーが命中した。

ファン
「ジェスターさん・・キュピルさん・・。後はお任せします・・」

そういってファンも崩れデーターの破片となって消えていった。

ギーン
「くっ・・。一体どうなっている・・」
ミーア
「ギーン、避けろ」

ミーアがギーンを放り投げる。
が、放り投げた瞬間レーザーに命中しデーターの破片となって消えてしまった。

ミーア
「・・・すまない・・・」

奇跡的にジェスターとミーアは避け続けていた。
だが当たるのも時間の問題だった。

キュピル
「デリート・・・あれに当たると・・即死・・・!!!」

だが近づこうにもカーネルからレーザーが発射されている。止まる気配もない。

ジェスター
「わっ!!!」
キュピル
「!?」

ジェスターがレーザーにぶつかったようだ。

キュピル
「ジェスター!!!」
ジェスター
「キュピル・・・・・キュピル・・・・!!」

その数秒後、データーの破片となり消えていった。

キュピル
「ミーア・・・どうすればいい・・・!?」
ミーア
「私は機械に弱い!」
キュピル
「くそ・・・!・・・・・!いや、まてよ・・・!!」
ミーア
「何か閃いたか!?」
キュピル
「捨て身の戦法だ。」
ミーア
「言ってくれ」
キュピル
「デリートされるまで数秒かかっている。その数秒の間にカーネルに接近して一撃必殺の技を放つ!」
ミーア
「・・・だが死亡は確定・・・確かに捨て身だ」
キュピル
「・・・本当に死亡するかどうかわからない。あくまでもデーターの破片となって散ってる。
・・・。修復・・バックアップがあるかもしれない・・」




更にレーザーの弾幕が激しくなった。これ以上はもちそうにない。

ミーア
「キュピル!私が盾になる!カーネルを叩き斬れ!」
キュピル
「・・・ミーア、俺も覚悟はついてる。・・・行くぞ!」

ミーアが先に前に飛び出た。可能な限り避け続けそして二人とも一緒にジャンプした。
先にミーアがレーザーに命中した。データーの破片となって散るまであと数秒。
だが散るまではしっかりレーザーを受け止めている。

ミーア
「行け・・キュピル!!!」

ミーアがデーターの破片となって消えていった。
最後に残ったのはキュピルだけになった。
盾がなくなりキュピルも被弾した。だがもうカーネルは目の前だ。






キュピル
「うおおおおぉおぉぉぉぉぉぉっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!」











Collapse of  jerosu









I ruined.....






By the virus










Collapse of  jerosu.....































キュピル
「うっ・・・・」

体が滅茶苦茶重い。



どうなっているんだ・・・?


ジェスター
「zzz・・・zzz・・・・」
キュピル
「・・・ジェスター、俺の上で寝るな。」

ジェスターを横にどかす。
起き上がると皆居た。

ルイ・・・ファン・・ジェスター・・ミーア・・・ギーン・・・。

・・・しかしハルララス、ユーファ、ピア、ダイン、カジ、カタリの姿は当然なかった。


キュピル
「・・・ここはどこだ?」

どこかの森林のようだが・・・。

ギーン
「・・・ちっ、今起きた。何があった・・・」
キュピル
「・・・ジェロスは崩壊した。」
ギーン
「崩壊?・・・やったのか。・・後半の記憶があいまいだ。」
キュピル
「ギーンはそうだろうな・・・。」

ふと、思い出して自分の剣を見る。
・・・・元の形に戻っている。
体も重くなっているし力も出ない。
・・・あの力は消えてしまったのだろうか?

ギーン
「ここはトラバチェスとアノマラドの国境線のようだな」
キュピル
「よくわかったな」
ギーン
「ふん、馬鹿と一緒にされては困る」
キュピル
「・・・・ハハハ」
ギーン
「・・・ふふっ」
キュピル
「お、初めて笑ったな。」
ギーン
「・・・見なかった事にしろ」
キュピル
「それは無理というものだ。・・・ダインもカタリもカジも居ないんだ。
もうお前さんのことをからかう相手もいない・・・」
ギーン
「・・・いまだに信じられん。あの三馬鹿トリオが死んだことがな・・・」
キュピル
「・・・馬鹿ではないと思うが・・。特にカジに限っては・・」
ルイ
「うぅぅ・・・」

ルイも起きたらしい。

ルイ
「ここ・・は・・?」
キュピル
「アノマラドとトラバチェスの国境線」
ルイ
「か、体のあちこちが痛みます・・・」
キュピル
「・・・骨折れてるから無理しないほうがいい」
ルイ
「バーチャルだったのか・・・現実だったのか・・私にはよくわかりませんでした・・・」
ミーア
「意思を持った機械。恐らく校長もこれは分らなかっただろう。あのまま野放しにしていた所で
良い事は何一つなかったはずだ」
ギーン
「ミーア、起きていたのか。」

仰向けになっていたからてっきり寝ているかと思った。

ミーア
「一番最初に起きた。・・・だがたまにはこうするのも悪くない・・。懐かしい気持ちになる」
ルイ
「・・・確かにそうですね・・。やっと平和が訪れた・・って感じがします」
ギーン
「平和か。・・・アノマラドとオルランヌで戦いが起きていたはずだ。あれはどうなっている」
ファン
「恐らくオルランヌは撤退したはずですよ。裏から秘密裏に支援を受けさせて貰ったトラバチェスが崩壊した今
撤退させるを得ないはずです。消耗戦になれば確実に負けるのはオルランヌですから・・・」
ギーン
「・・・そうだな」
キュピル
「・・・トラバチェスの首相が死んだ今・・・。これからトラバチェスはどうなるんだ?」
ギーン
「・・・元々トラバチェスは軍事国家だ。このまま放置させてもまた力を蓄えるだろう」
キュピル
「どうすればいいんだ?完膚なきまでたたきのめさなければいけないのか・・・?」
ギーン
「・・・ふふっ、俺に良い考えがある」
ファン
「ギーンさんが笑っています」
キュピル
「色々怪しいな・・・。だが妙策何だろう。」
ルイ
「あの・・・確認したいんですけど・・・。もう戦争は終わったって見て良いんですか・・・?」
ファン
「終わったとは言い切れませんが・・・少なくとも当分もう戦争はおきないはずですよ」
ルイ
「よかったー・・・」
ジェスター
「んん〜〜!!」

ジェスターが背伸びしながら起きてきた。

ジェスター
「あれ?キュピルの上で寝てたのに・・・」
キュピル
「おい、意図的だったのか。覚悟はできてるか!」
ジェスター
「だって汚れるんだもんー。」

またいつもの会話が始まった。

ミーア
「・・・この後どうする」
キュピル
「・・・・もう俺達が戦う理由もなくなった。ここにいる必要もない。
・・・そして学校へ戻る必要もない・・・」
ギーン
「・・・ではここで解散するか」
ルイ
「皆さんは解散した後どうするんですか?」
ミーア
「私は・・・元々修行のために学校へ入った。だが学校がなくなった今。再び修行に戻ろうと思う。
キュピル達はどうするんだ?」
キュピル
「俺達は帰れる家があるから家に帰るよ」
ジェスター
「何カ月ぶりかな?」
ファン
「半年ぐらいだと思いますよ」
キュピル
「ギーンはこの後どうするんだ?」
ギーン
「妙策を実行する。」

























あれから一カ月が過ぎた。



==キュピルの家


ルイ
「ジェロスを倒してからちょうど一カ月になりますね」
キュピル
「そうだな」

キュピルが薬を飲む。

ルイ
「どうです?具合の方は?」
キュピル
「問題ない。ファンのおかげでペストも治療できそうだ」
ファン
「分析には大分時間がかかりましたが永続性はやはりないようです。
校長もここの誤算は大きかったことでしょう」
ジェスター
「不老不死はルイの夢じゃないのー?」
ルイ
「私の夢は幽霊と仲良くなる事ですよ」
ジェスター
「えー・・・」
キュピル
「ま、なんだ。後始末は全部ギーンにやらせればいい。上手くやってくれてるみたいだしな」

キュピルがテレビの方に目をやった。テレビにギーンが映っていた。





「新、トラバチェス国王。ギーン・アルカデルの演説が始まります」



キュピル
「あいつの声聞くのも久々だ」
ルイ
「・・あの、演説なのに平気で馬鹿とか言ってましたけど・・・」
キュピル
「変わらないな。それにしてもオルランヌ人なのにトラバチェスの国王になっちゃうってどういうことだ」
ファン
「混乱に乗じて名乗り上げたって形でしたね。
圧倒的な弁舌に誰も反論できなかったとか・・・」
キュピル
「そうか」
ジェスター
「わぁ〜〜」

ジェスターがまた一人で勝手にはしゃぎ始めた。テレビとぶつかり床に落ち壊れた。

キュピル
「うわっ!!!」
ジェスター
「あ、逃げる」
キュピル
「逃げるな!謝れ!!」

また追いかけっこが始まった。

ファン
「・・・直しておきます」










キュピル
「・・・どうした?

・・・・・・。

・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・。

おいおい・・・。それは本当なのか・・・?

・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・。

もしそうだとしたら・・・また厄介なことになるな。
それでお前さんはどうするんだ?

・・・・・・。

ふむ・・・・。
わかった。こっちも少しバックアップできるよう努力するよ。
でもあんまり期待しないでくれよ。国が違うんだ。

・・・・・。

・・・・・・・・・・・・。

ハハハ、相変わらずだな。
わかったわかった。困ったらいつでも読んでくれ。護衛ぐらいならいつでもしてやるぞ?

・・・・・・。

お前さんがどうにかしなければ変わらないはずだ。
もうこんなこと二度と起こさないためにも俺も惜しみなく協力する。

・・・・・・。

・・・・・・・・・・・。

ああ。・・・気をつけろよ。密かにお前の命が狙われてるのは事実だ。
・・・じゃあな、ギーン





シーズン13 END




追伸

若干続きますが基本シナリオは終了。