シーズン9 それぞれの理想


第一話

あらすじ

ファンが新しい機械を開発したらしい。


ファン
「特殊ワープポイント機です」
ジェスター
「特殊?どういう特殊なの?」
キュピル
「んむ、気になる」
ファン
「今から全部説明します。と、いってもそんなに特殊ではないんですけどね。
自分が行きたいと願ってる場所を思いながら乗るとその場所にワープする事が出来るだけです」
キュピル
「十分特殊だと思う。それは街限定ではなくあらゆる場所を含め?」
ファン
「一応含めますが、ワープして目的地に到着すると魔法の反動で
一分間自身が動けなくなる副作用があるのでダンジョンの中核へ飛ぶのは
あまりオススメしませんよ。」
キュピル
「なるほど、それさえ気をつければかなり便利な機械だ・・」
ルイ
「私の故郷にもすぐ帰れますね」
ジェスター
「なるほどー・・。・・・・・。にやり」

ルイ
「他にも何か機能とかついてます?」
ファン
「特には。あらゆる場所へワープするという機能をつけたら他のものはあまり装着できなくなったので」
キュピル
「と、いいますと?」
ファン
「複数の人が同時にワープしたり短時間の間にワープしたり。
・・・一応短時間ワープも可能ですがやり過ぎると壊れるのでやめてください。
あと一番気をつけないといけないのは片道専用なので注意してください」
ルイ
「片道?」
ファン
「帰る手段を用意しないで不用意にワープしたら戻れなくなる可能性がありますよってことです。
例えば既に入り口が閉鎖されている洞窟とか。戻れなくなります」
キュピル
「なんかいろいろ怖いなぁ・・・。ジェスター。変な気は起こさない方がいいぞ。
ルイも霊界へ行くだとかそんな事思わない方がいいぞ」
ルイ
「キュピルさん、行きます?霊界」
キュピル
「重度なオカルトマニアは解消されてるがオカルトマニアなのは変わらないのな・・。」


ブオォン



キュピル
「うお、何の音だ?」
ファン
「・・・ジェスターさんが何処かにワープしたみたいですけど」
キュピル
「ファン、どこにワープしたのか分かる?」
ファン
「一応分かります。えーっと・・・。・・・キュピルの部屋・・・?」
キュピル
「俺は今通常の三倍で行動している。」



ガチャ


キュピル
「クラアァァ!!勝手に人の部屋を物色するな!!」
ジェスター
「ぎゃ!もうばれた!!このお菓子頂戴!!」
キュピル
「断る!」

ファン
「自分てっきりもう事故起きたかと思いましたよ」
ジェスター
「もう事故起きてるって!ぎゃー!」
キュピル
「ジェスターに武器をもたせなければどうということはない。これほど弱いとは」



=数時間後


ファン
「ジェスターさんみたいに誰かが悪さに使うと困るので唯一この家で鍵がついてる
キュピルさんの部屋に置かせてもらいました」
キュピル
「きっちり管理するよ」
ジェスター
「むー・・・」

ルイ
「キュピルさん、少し気になる事が・・」
キュピル
「ん?」
ルイ
「知ってますか?おとぎ話の『鋼管の霊簪』という道具を・・」
キュピル
「いや、知らない。ってまた霊に関する話か。それで?」
ルイ
「そのおとぎ話の内容を大雑把に説明すると
普段は髪を止める簪ですけどある人がその簪を凶器に使い
その簪で殺された霊が今でもまだ宿り続けているという話です。」
キュピル
「ふむ・・。まさかあの機械を使って探しに行くとか言わないでおくれよ。
おとぎ話なんだから存在しない・・」
ルイ
「所がそれは実話なんです」
キュピル
「なんという急展開。何故?」
ルイ
「この新聞をどうぞ」


『オトギ話は実話。強奪は事実

シェイディンロール地方に纏わるあのオトギ話『鋼管の霊簪』
遠い遠いアノマラド大陸で実際に簪を使っていたと思われる死体を発見。
国の調査によるとオトギ話に書かれている内容の殆どが一致しているという報告を受けている。
極めつけは髪に『鋼管の霊簪』をつけていたという事だ。
しかし調査隊員が『鋼管の霊簪』を国に納めようとしたその瞬間。
突然何者かが強奪。調査隊員は追跡を行ったが驚異的な足の速度に加え
透明化の魔法を掛けられていたため追跡不能になり断念。
現在も調査を続けているが以前盗人は見つかっていない。』

キュピル
「ほぉ・・・こんな事件があったとは。・・・ってこれアノマラド大陸の新聞じゃないな」
ルイ
「私が前の屋敷にいた時の新聞です」
キュピル
「あぁ、なるほど。・・・本題どうぞ」
ルイ
「あの装置を使って犯人のいる場所へ行きましょう!」
キュピル
「ふざけるなー(´゚д゚`)」
ルイ
「え、えぇー!」

キュピル
「ま、まぁ手に入れる自体は全然構わない。むしろそれはルイの自由だ。」
ルイ
「それなら行きましょうよ」
キュピル
「そこに俺も行くって事は絶対その簪を俺に使わせる気だな?」
ルイ
「うっ・・」
キュピル
「断るぞー・・断るぞー・・・これ以上霊感強くするのは断るぞー・・」
ルイ
「うーん・・・。仕方ありませんね。少し間を置きます」
キュピル
「この件に関してでの機械の使用は認めんよ」



=夜


キュピル
「ふぅー・・・やれやれ。今日は大変だったよ」
ファン
「お疲れ様です」
キュピル
「ジェスターはあの機械を使って異次元行きたいだとか世界へ旅するとか行ってるし
ルイは鋼管の霊簪を手に入れるために使わせて欲しいと言うし・・・」
ファン
「暫らくはキュピルさんに任せたほうがよさそうですね。ここ最近皆の面倒を見てますし統率も高いです」
キュピル
「ルイはまだ引き下がってくれるからいいが・・・」

ジェスター
「キュピルー!使わせてよー、いいじゃんー減るものじゃないし」

キュピル
「ほら、またきた」
ファン
「食い下がりませんね。ジェスターさんは」
ジェスター
「ほら、お金あげるから!You like gold、Gold!!」
キュピル
「下手な英語使うと恥書くぞ。」
ジェスター
「別にいい!使わせて一生のお願い!」
キュピル
「何回一生のお願い使ってるんだ!」
ファン
「(やっぱりあしらい方が上手くなっている・・・)」



=深夜 2時 



全員熟睡中。・・・・が?



ジェスター
「ふふふ・・・私がこのまま引き下がると思ったら大間違いだよ・・キュピル。
この開錠用ピッキングで鍵を無理やりこじあける・・!」

こっそりこっそり進むジェスター

ジェスター
「・・・ん?」
ルイ
「あ・・・」
ジェスター
「・・・な、何やってるの?」
ルイ
「・・・ピッキングです」
ジェスター
「・・・・手組まない?」
ルイ
「・・・もちろんです」
ジェスター
「そ、それにしても結構荷物背負ってるね」
ルイ
「ちょっと暫らく帰れないかもしれませんからね。
目的のアイテムを手に入れたらすぐ帰る予定ですけど・・・」


カチ・・カチ・・・

カチャ

ルイ
「開きましたよ」
ジェスター
「こっそり行こう・・」



==キュピルの部屋

キュピル
「zzz、、、zzz、、、」
ルイ
「寝てます、大丈夫です」
ジェスター
「あった、あそこに機械があった」
ルイ
「ゆっくり・・ゆっくり・・・」

カチャ

ルイ&ジェスター
「ん?」


トラップ作動!『霊術・魂縛り』


ジェスター
「ぎゃぁー!」
ルイ
「うわぁっ!!」
ジェスター
「う、動けない・・!」
ルイ
「これが霊術・・!凄い!

キュピル
「う、うわぁ!何事だ!!・・・・ってお前等ーー!!」
ジェスター
「大怪盗ジェスターが捕まる!」
ルイ
「欲に負けました」
キュピル
「・・・なんか2人の発言を聞いたら急にやる気が・・・。
仕方ない・・・。一回霊術解くか・・・。どっちにしろこのままじゃ寝れない」


霊術を解除するキュピル


ジェスター
「隙あり!!」
キュピル
「うぐあっ!な、ナニヲスル!」
ジェスター
「ここ最近大人しい私だったけど今日は強い私だよ!ルイ!今だよ!」
ルイ
「はい!」
キュピル
「何連携しあってるんだ!ルイ、助けてくれ!ぎえええぇぇ」

ルイ
「えーっと、この機械の使い方は・・・。
・・・なるほど、こうですね。」

ピッ



ブォォォン



ジェスター
「よし!次は私の番!」
キュピル
「ま、待て!!」


ブオォォォン



ファン
「何事です!?」
キュピル
「くそっ、やられた!ルイとジェスターがあの機械を使ってどこかにワープしちまった」
ファン
「帰る手段を用意させていましたか?」
キュピル
「不明。が、ジェスターは後先考えないたちだから多分ない。
ルイは分からない。ピッキングする技術があるから結構賢いはずだが・・」
ファン
「万が一2人とも持っていませんでしたら厄介ですね・・。」
キュピル
「・・・まてよ、ちょっと俺の棚を調べる」
ファン
「何か気づいたことあるんですか?」

ガラッ

キュピル
「・・・どこまでジェスターは後先考えないんだ・・・。
ここにジェスターの武器隠してるんだが持って行ってない・・・。」
ファン
「ジェスターさんは武器がないと全然戦えなかったはず・・。」
キュピル
「優先順位が決まったな。今すぐジェスターの元へ連れ戻さないと」
ファン
「待ってください。昼注意した通り短時間で連続ワープすると故障の元や
思わぬ場所へワープする原因になります。せめて朝になるまで待ってから行ってください」
キュピル
「むぅ・・。ジェスターは異次元へ連れて行くと本当に何をするか分からないから
連れていかない っていう選択肢を取ってたがこうなるのならせめて
しっかり準備させて行かせればよかったか・・・?ルイは全身全霊で今でも行かせたくないが。」
ファン
「荷物は僕が用意してあげますから今は寝たらどうです?
どの道僕はここに残りますから」
キュピル
「わかった、んじゃ荷物頼む。今のうちにゆっくり寝てスタミナ回復させておく・・」
ファン
「おやすみなさい」



==翌日


キュピル
「何だかんだで結局心配であんまり寝れなかったな・・・。
死体で発見されるのはモンスターだけでいい」
ファン
「荷物用意してあります。とりあえず食料と帰還アイテムのウィング」
キュピル
「ウィングの使い方が分からないんだが・・」・
ファン
「説明書も入れておきましたので時間かけてでもいいのでそれで帰ってください。
どちらにせよジェスターさんの場合異次元なのでウィングじゃないと戻れませんし」
キュピル
「それもそうだな。武器確認するか・・・。
ロマベy(略)の剣・・・。修理キット・・・、幽霊刀・・は・・一応持っていくか。
そいじゃ行って来る」
ファン
「行ってらっしゃい。ワープ先は前回ジェスターさんが飛んだ場所に設定してあります。
残念ながらジェスターさんの元へのワープではありません」
キュピル
「了解、後日また会おう」



ブォォォン





==異次元


キュピル
「到着・・・。さーて、ここは一体何処なんだか・・・」


続く


第二話


キュピル
「さて、まずは周りを見渡すとしよう・・・。
・・・今回は随分と霧の深い場所に来たな・・・。地面もぬかるんでる。おかげで
ジェスターの足跡はすぐに発見できた。・・・が、ェスターは止まる時以外
ずっと飛んでるから足跡が・・。けど足跡が最後に右の方向を向いてるな。右へ進めばいいのか?
やれやれ、ひとり言のオンパレードだぜ」


一個だけあった足跡を頼りに進むキュピル。


キュピル
「ワシより強い敵とか出てこないだろうな・・。最近戦ってないから腕鈍ってるぞー・・。
索敵、索敵・・・。右よし!左よし!!前よし!!!後ろダメ!!」


キュピル
「は?」



真後ろに謎の魚人。やたらと重装備


キュピル
「自分で言っておいて突っ込みしちまったがな。いざ、勝負!」

剣を抜刀し勢いよく斬りかかりにいく。・・・が
地面がぬかるんでいたため滑って転ぶ。

魚人
「ウガアァァ」
キュピル
「あぶなっ・・」

魚人が剣をもって刺しに来た。が、転がってなんとか回避。

キュピル
「おのれ、喰らえ!アタック!」

剣で思いっきり魚人を斬る!


ガキンッ!


魚人
「・・・・」
キュピル
「・・・・・。逃げよう。奴の鎧は化け物か」
魚人
「グオオォッ」
キュピル
「ふははは、逃げるのだけは得意だぜ」



==10分後


キュピル
「上手く撒いたかな?しかしやたらと強い敵だった・・・。こんなのが
一杯いるのは・・勘弁だな。
・・・・って、しまった!足跡!!今ので見失ってしまった!」

今更戻ることも無理。忘れてしまった。

キュピル
「むぅ・・。霧があるから目印もつけづらい・・」
魚人
「ギアアアッ!」
キュピル
「また出たよ!魚人野郎!くそ、これならどうだ!」

体重を乗せた重い蹴りを浴びせた!
勢いに負けて倒れる魚人

キュピル
「こなくそ!タコ殴りにしてやる!」


ボコボコボコボコ



=数分後


キュピル
「武器落とさせてバランス崩させれば結構いけるもんだな。
特に重い鎧を着けてるわけだから倒れると致命傷ってことか・・・。
ふむ、何にせよこの鎧は本当に硬いな。この篭手(腕につける防具の事)は貰ってしまおう。
上半身につけるキュライスとかは重すぎて要らないな・・・。さぁ行こう」



==歩くこと数時間


キュピル
「ん、門・・・?」
衛兵
「む、見ない顔。どこから参った?」
キュピル
「アノマラド大陸からやってきた者だ。ここは?」
衛兵
「アノマラド大陸?聞かんな・・・。ここはケデン帝都だ。
申し訳ないが帝都に住んでいない者はここで荷物検査させてもらっている。」
キュピル
「何故?」
衛兵
「今帝都は少し問題が起きていてな・・」
キュピル
「ややこしい事になってきたが・・。一体何が?」
衛兵
「帝都にはギルドという物が存在する。一種の集まりだな。分かるか?」
キュピル
「ギルドならアノマラド大陸にもあった。それで?」
衛兵
「今帝都には盗賊ギルドと暗殺ギルドという物が秘密裏に存在している。
このような犯罪の塊であるギルドを見過ごすわけにはいかん。
我々衛兵達は戦士ギルドや魔術師ギルドの協力を得て少しずつそれらのギルドの
縮小化、消滅を図っている。しかしやつ等もずる賢くてな・・。中々ねたやしにできない状況だ」
キュピル
「それで気休め程度かもしれないけどこういった検査を?」
衛兵
「そういった所だ。さぁ、この帝都に用があるなら検査を受けてもらおう」
キュピル
「どうぞどうぞ。ワシは後ろ難い事はしていないから」

荷物検査、職務質問などを受ける


衛兵
「この篭手以外全て我々の知らない者を使ってるな・・。不思議な者だな」
キュピル
「まぁ・・・どうも」
衛兵
「用心しろよ、お前みたいな珍しいものを持っていると盗賊ギルドや暗殺ギルドに狙われやすい。
裏路地や人通りの少ない道は絶対に通るなよ。安宿にも止まらないほうが見のためだ。
さぁ、通るがいい」
キュピル
「失礼。この帝都に白髪をしていて白い服を着ていて人間じゃない不思議な生物を見なかった?」
衛兵
「・・見てない。少なくとも帝都への入り口はここだけじゃない。人探しなら魔術師ギルドか
情報屋に行ったほうがいい。」
キュピル
「案内どうも。」
衛兵
「この地図をやる。それでは気をつけたまえ」
キュピル
「わざわざご丁寧に」


=ケデン帝都 南口


キュピル
「うーむ、帝都なんだがあまり美しさだとか綺麗さが感じられんな・・。
治安が悪そうな印象をうける場所だ・・・。
さて、とりあえず引き続きジェスター捜索にでも当たるとしようかな・・・。
まずは魔術師ギルドに立ち寄るとしよう。えーっと・・。東口にあるのか」


=魔術師ギルド


受付
「何用だ?」
キュピル
「(接客を全然感じさせない・・・)
人探しの用件で来ました」
受付
「あぁ、今うちは忙しいんだ。そういうのは情報屋にでも行ってくれ」
キュピル
「ぬ・・・。失礼な。こっちはわざわざ命がけで人を探しにきてるんだ。
いや、人じゃないか。かなり特徴もあるんだ。頼むよ」
受付
「ダメダメ、人じゃないなら尚更だよ。魔法の対象に引っかからん。帰った帰った」
キュピル
「くそ、もう来ねぇ!」



キュピル
「なんてギルドだ!見損なった!
仕方ない。情報屋にでも行くとしよう。情報屋は・・・。
・・・あったあった。西口か。ここから正反対の場所じゃないか・・・。しかも小さい」


==情報屋


受付
「よく来た。どんな情報を求めている?」
キュピル
「人探しの用件で来ました」
受付
「人探しか。特徴や名前に種族は?」
キュピル
「種族はジェスター種で特徴は髪と服が白く身長はあんまり大きくない。
名前は種族と同じでジェスターと呼んでる」
受付
「ジェスター種?全然聞かない種族だな」
キュピル
「アノマラド大陸にいけばよく見かけますよ」
受付
「ふむ。・・・そのような人物情報はまだここには入っていない。
むしろそんな珍しい種族を発見したらここには逆に入ってこないな」
キュピル
「逆に入ってこない?どういうことで?」
受付
「む・・。知らない奴だったか・・。聞かなかった事にしろ」
キュピル
「そこを何とか教えてくれないだろうか?本当に大切な人物なわけだから
何とかしてでも見つけないと困るんだ。」
受付
「悪いな、ここでは教えられない。運が向いてくることを祈るべきだ」
キュピル
「・・・仕方ない、一旦外へ出よう・・」



==外


キュピル
「逆に情報が入ってこない・・?それは一体どういう事なのだろうか・・。
うーむむむ・・・。」
見知らぬ男
「兄ちゃん、兄ちゃん。盗み聞きしてたけど、あの情報屋の言葉の裏を知りたいようだね」
キュピル
「ん?勿論知りたいね。」
見知らぬ男
「それなら30ゴールドばかし金を用意してくれれば教えてやるぜ。」
キュピル
「さ、30ゴールド?30Seedじゃダメ?」
見知らぬ男
「そんな金ここじゃ使えないよ。ささ、用意すれば教える。出来ないならここまでだ」
キュピル
「ところでこの帝都は日給で働くとしたら大体いくらぐらいもらえるんだ?」
見知らぬ男
「1ゴールドだね」
キュピル
「・・・一ヶ月待てる?」
見知らぬ男
「一ヶ月経っちまったら情報流れる所かお前さんの探してる人物はいなくなるかもしれないね。
別の場所に移動しちまうかもしれないし適応力ないなら死んでしまうかもしれないし」
キュピル
「むむむ・・・どうすればいいんだ・・・」
見知らぬ男
「簡単な話しだ。ちゃちゃっと他人から財布をスっちまえばいいんだよ」
キュピル
「・・・スリか?」
見知らぬ男
「そうだよ、今ならやり方も教えてやるぜ?」
キュピル
「むむ・・だが俺はそういう犯罪は・・・」
見知らぬ男
「肝決めないとジェスターが死んじまうかもしれないぞ?」
キュピル
「・・・だぁー!分かった!やればいいんだろう!」
見知らぬ男
「そうこなくっちゃ。よし、コツを教えてやろう。」



==数十分後


見知らぬ男
「っということだ。」
キュピル
「なるほど・・。こういうのは謙遜してるがいざ聞いてみると奥深いんだな・・」
見知らぬ男
「あんたの集中率は凄まじいものだな。ただし気をつけろ。失敗すれば刑務所行きだからな」
キュピル
「むぅ・・。まさかジェスターのために犯罪することになるとは・・・。」
見知らぬ男
「んじゃ俺はさっきの情報屋の角にいるぜ。・・・そうだ。今後とも長い付き合いになるかもしれねぇからな。
名前教えておくぜ。俺の名前はトミだ。」
キュピル
「キュピルだ。」
トミ
「そいじゃ検討祈るぜ」
キュピル
「むむん・・・。」




==北口

(いいか、スリで狙うとしたら北口だ。北口は最も人が多く行き来して揉みくちゃに押されることが
多いんだ。そこで慎重に、かつ大胆に獲物を取るんだ。財布なんかは狙うなよ。一番警戒してる
部分だからな。ダガーやアクセサリーなど小物を狙え。)


キュピル
「確かに凄い人の数だ・・。入ってきた南口とは比較にならん・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


気が付いたら手元に銀のダガーとパールで作られたネックレス。
そしてポケットに入っていたゴールドを盗み取っていた・・・

キュピル
「・・・ようこそ、闇の世界へって所か・・。これを売ればいいんだな・・。
とにかく何事もなかったかのように去り、何事もなかったかのように売ろう。」


かくして、手元になんとか35ゴールド集まり気が付いたら夜を迎えていた。
闇の夜が始まる。



続く

追伸

ついにキュピルは犯罪者になりました(苦笑


第3話


トミ
「あんた中々やるな。才能あるぜ」
キュピル
「(あまり嬉しくないんだが・・・)
約束の30ゴールドだ。あの情報屋の裏とやらを教えてくれ」
トミ
「はいよ。あの情報屋の前でこう言いな。『金盗みに来た』とな」
キュピル
「・・・今度は俺に強盗させる気か!!」
トミ
「俺の情報はここまでだぜ。しっかり情報教えたからな。じゃーなー」
キュピル
「お、おい。待て!早!!」


・・・・・・。


キュピル
「あの情報が本当だったら・・・。しかし・・・。
万が一嘘だったことを考えると早くもこの帝都にいられなくなる・・・。・・・・・。」



受付
「ん?なんだ。またお前か。今度はなんのようだ」
キュピル
「金盗みに来た」
受付
「正気か?」
キュピル
「(う、嘘の情報だったか・・?)」
受付
「困惑してるようだな。強い精神を持っておけ。この鍵をもってそこの扉通りな。

それと金は持っておいたほうがいいかもな」
キュピル
「わかった。」

鍵を受け取る。


キュピル
「・・・5ゴールドしかないが・・。大丈夫だろうか。

扉の鍵を開けて中に入ると暗い通路が続いていた。

キュピル
「いつ何が起きてもいいように警戒しないと・・・」


途中長い下り階段を下り、通路を歩き続けること三分。
物凄く広いホールにたどり着いた。

キュピル
「・・・広い。そして何よりも結構人が思ったよりいる・・」
受付
「よくきた。何のようだ?」
キュピル
「白い生物を探している。特徴は白い髪をしていて白い服を着ていて
一応喋ることの出来る奴。名前はジェスターだ」
受付
「ジェスター・・ジェスター・・・。
・・・・あるぞ」
キュピル
「本当か」
受付
「そいつの何の情報が欲しいんだ?」
キュピル
「出来れば全部」
受付
「1000ゴールドだな」
キュピル
「高い!そこをなんとか値下げ出来ないだろうか・・・」
受付
「難しいな。なんせ新種の生物だからな。見つけて捕獲すれば数千万ゴールドが手に入る。
本来ならもっと高い情報になってもおかしくない。」
キュピル
「しかし、だからといってそんな大金は・・・」
受付
「ぼったくりではないぞ。どこの情報屋も今こんな値段だ。」
キュピル
「・・・・これほど今盗めればどれだけ楽か思い知ったな・・」
受付
「盗みだと?」
キュピル
「失礼、一種のジョークだよ。真に受けないでくれ」
受付
「・・そうか。」
キュピル
「それじゃ失礼するよ」
受付
「万が一1000ゴールド溜まったらまたきな」



キュピル
「1000ゴールドなんて溜まるわけがないじゃないか・・・。
仮にスリをして稼ぐにしても1000に達成する前に必ず感づかれて
牢屋送りにされるはずだ・・・。」

・・・・。

キュピル
「ぎゃ、逆の発想をするんだ・・。俺・・・。
何もそんな危険を冒さずしてジェスターを助けなくてもいいんじゃ っと。
本人はまだ捕まってないし・・・・」

キュピル
「・・・。いや、やっぱそれは邪道か。エユの件もあるし・・。
何にせよ放置してたら捕まるのは一目瞭然。武器も装備も何もないわけだからな」



=帝都・西口


キュピル
「やれやれ、このあと、どうしたものか・・・」

なすすべ無し。
明確な目標はあっても達成が出来ない。

キュピル
「むぅ・・・。一体どうすればいいのだろうか」

時間はそろそろ深夜にさしかかろうとしている。
いかなる状況でもいい。一瞬でもいいから
ジェスターの手を掴んでウィングを使えば・・・。

キュピル
「・・・そうだ!」



==翌日  帝都、中央区にある役所


衛兵
「ほぉ、衛兵に加入したいとな?」
キュピル
「はい」
衛兵
「しかしなぁ・・。この紙を見るといかに君が正直者かわかるよ。
加入理由は新種の生物である「ジェスター」を一目みたいため、か。
一言いうと実際に我々が捕まえても賞金は下りないぞ。辛い職業だな」
キュピル
「それでも構わないんです。どちらにせよ何処まで捕まえることが出来れば
見る事はできるでしょう?」
衛兵
「まぁ、確かにな。だが、階級が低いうちは恐らく無理だと思うぞ。
が、お前がしっかり街の平和を守り盗賊や暗殺ギルドの者をしっかり捕まえる事が出来れば
いずれ階級があがって一目見る事が出来るかもしれないな。
しかし本当にいいのか?衛兵に加入したら最低でも三年は脱退できない法則だぞ。
ただ、ジェスターを見たい一心だけでこれは割にあわんと思うんだが・・・」
キュピル
「決心が揺らぐような事言わないで下さいよ。
それに元々悪人は許せない達なんです。この国の忠義に尽くします」
衛兵
「そうかそうか。元々衛兵に加入するものの殆どは給料が高いからという理由で
入る奴が多いからな。お前みたいな奴は珍しい。いいだろう。申請を許可する。」
キュピル
「ありがとうございます」
衛兵
「こちらで残りの手続きを済ませる。夜もう一度ここに来たまえ」
キュピル
「分かりました」



==帝都 役所前


キュピル
「今いった言葉の殆どは嘘です。
何にせよ我ながらいい作戦だ。さーて、後は待つだけだが・・。
時間帯は朝なんだよな。その間少しでもジェスターを探すとしよう。」

しかしジェスターはちゃんと食べたりしているだろうか?
帝都の中にいればあっという間に捕まってしまうだろうから外にいるとは思うが・・。
かといって外に何か食べるものがなければ餓死してしまう。そのためないのであれば
帝都の中にこっそり入って盗みをして食いつないでるはずだ・・・。
今の状態なら捕まってもらっても構わない。死ななければどうとでもなる。

キュピル
「帝都の外を軽く見て回るとしよう。例の魚人に合うのはもういやだが。」



==外


今日は霧が晴れていた。
霧が晴れたこの辺りは非常に地形が険しいことに気づく。
ある場所は深い崖があり、ある場所は険しい坂道。その逆もまたあり。
ここをグルっと一周回るのは大変だ・・・。

しかし、隠れる場所は多い。グルっと一周すればもしかしたらジェスターを見つけれるかもしれない。

キュピル
「険しすぎる道だが頑張ってグルっと一周しよう。
しかし整備しろよな〜・・。岩だらけだ。」

慎重に岩を登っては降り、ゆっくり進んで隠れそうな岩穴があったらその中を探し
一つ一つ確実に探索していく。・・・が。


キュピル
「ぜぇ・・。見つからん・・・。しかし岩山すぎる・・。
今更だがこんな険しい場所にジェスターがいるわけなかったよな・・。」

とはいいつつ念のため更に進んで探す。
途中大きな洞窟を見つけた。

キュピル
「ここは・・。人が住むのに最適すぎるな」

いるかもしれない。そんな期待を胸に中に入る。
明かりがついてる。・・・焚き火の火だ。
人影がある。

キュピル
「ジェスター?いるのか?」
魚人
「ウグア?」
キュピル
「・・・・サーセン!!」

急いで逃げようとしたが逃げた先は足場が悪い。
ここで迎え撃つのが最適だろう。
激戦を繰り広げ何とか勝利するが・・・。
魚人をジェスターと間違えたのが少し精神的ショック。

更に探し続けること1時間。
なんとか半周する。

キュピル
「ふぅー・・・。半周したぞー。無駄に頑張ったな。
もう探すの諦めるべきか・・・。
・・・・いや!ここは探そう。」

そのまま進み残り半周を全て調べる予定。
ここもまた岩や崖があり足を滑らせたら間違いなく転落死する。
しっかり足場を確認して慎重に進む。
足場が結構広く岩の屋根もあって野宿するのに最適な場所は何個も見つかっているのだが
ジェスター自身は見つからず。やはりいないのだろうか。

そして歩き続けること10分。

キュピル
「・・・・!気配がする・・・」

何かカチッ  カチッ  と音がする。
先ほどモンスターに襲われたこともあり念のため剣を抜いて警戒する。
音の出てるすぐ近くまで来る。
こっそり顔を出す。黒い生物がいた。

キュピル
「・・・?」

魚人ではないが・・・。

黒い生物
「火がつかないよ・・・」
キュピル
「聞きなれた声・・。もしや!ジェスター!」
ジェスター
「ん・・?あ、キュピル!!」
キュピル
「まさかの発見!!物凄い汚れてるから一瞬モンスターかと思ったぞ」
ジェスター
「わーい!!やった!!これでこの世界から脱出できる〜!!」

その場でピョンピョン跳ねて喜ぶジェスター。

ジェスター
「もうね、聞いてよ!!私がこの世界に来るなりイキナリ『新種の生物だ!!』と言って
網抱えて捕まえに来るんだよ!もう最悪!しかも武器忘れちゃうし!」
キュピル
「ジェスター、お前少しやせたな?」
ジェスター
「痩せるよ・・・。だって殆ど何も口にしてないし水も飲んでないから・・。
何か食べるものと飲み物ない?」
キュピル
「ここにパンと水がある。口に含んでおいたほうがいい」
ジェスター
「ありがとう・・。本当にもうキュピルの家がどれだけ居心地いいか思いしったよ・・・。」

そういってパンを勢いよく食べ、水もがぶ飲みする。

ジェスター
「それで、帰る手段持ってきてるよね?」
キュピル
「あるにはあるんだが・・・。手荷物は今衛兵に預けている」
ジェスター
「え?何で?」
キュピル
「お主が捕まったことを想定して衛兵になれば捕まってもすぐ接触できて
この世界から脱出できると思ったんだが・・。まさか逆効果になっちまうとは。
帝都で生まれた身じゃないから武器以外の全ては今衛兵に検査されてる。
夜に終わるから夜になったら早くこの世界から抜け出そう。ルイの件もある」
ジェスター
「うん!」


夜になるまでここに居ることにした。


ジェスター
「結構お気に入りだったこの服かなり汚れちゃったなぁ〜・・」
キュピル
「同じような服、ニ、三着持ってるじゃないか」
ジェスター
「微妙に模様が違うの」
キュピル
「(微妙すぎる気がする)
しかし、泥だらけなら分かるけど何で煤汚れみたいな真っ黒な状態になってる?
臭いも酷いぞ・・・」
ジェスター
「悪かったね・・。私なりに頑張って工夫した結果なんだよ・・。あんまり聞かないで・・」
キュピル
「そういえば火をおこそうとしてたな。・・・ほぉ」

近くに灰と異臭のする肉があった。

ジェスター
「だ、だから私なりに頑張った結果なの!」
キュピル
「・・・まさか魚人の肉か・・?」
ジェスター
「・・・・う、うん」
キュピル
「・・・上手かった?」
ジェスター
「少し」

・・・何故か沈黙が続いた。



==夜


キュピル
「よし、衛兵の下に行って来る。ここで待っててくれ」
ジェスター
「分かった」

立ち上がり帝都中央区にある役所へと向かった。




==帝都中央区 役所

衛兵
「それでは衛兵の制服を渡しておく」

そういうと鎧一式を差し出した。

キュピル
「・・・こ、これ制服なんですか」
衛兵
「そうだ。衛兵は常に鎧を身につけどのような自体に陥っても
柔軟に対処しなければならない。特に今みたいに盗賊・暗殺が出回ってる今
一瞬の油断は死に繋がるのだ」
キュピル
「鎧あまり着たことないが・・。とりあえず着ます」
衛兵
「うむ。それとさっそくだが仕事だ。ここ最近君が知っての通りジェスターという新種の
生物を狙ってる人が多い。それをきっかけに揉め事を起す連中が後を絶たない。
夜に酒の勢いも借りて暴れてる奴がいる。町をパトロールするんだ。」
キュピル
「帝都の外を見ても大丈夫ですか?」
衛兵
「・・・・ほんの少しの外ならいいとしよう」
キュピル
「分かりました」
衛兵
「あまり遠い場所は帝都の治安とあまり関係がない。
程ほどの遠さにしておけ。以上だ。さっそく仕事にかかれ。
それとお前の荷物は返しておく。手荷物検査に手間取らせて悪かったな」
キュピル
「別に構いません。それでは」


鎧を着こんでそのまま外に出た。



==ジェスターのいた岩場


キュピル
「ジェスター。今戻った」

・・・・・・・。

キュピル
「ジェスター?寝てるのか?」

衛兵の標準装備の一つでもある松明を掲げる。
そこにはジェスターはいなかった。
変わりに血痕がその場に残っていた。

キュピル
「・・・・まずいことになってきたぞ・・・」

慌てて血痕の後を辿る。
まさか・・。盗賊か?それともジェスターを狙うハンターか?
何にせよ今俺は衛兵だ。盗賊ならこの姿を見ればすぐさま逃げるはずだ。
全速力で血痕の後を辿り、その先には・・。

人の死体があった。


キュピル
「・・・・どういうことだ・・?ジェスターに武器は持たせていなかったし・・・。
だがここに死体が・・。」

身なりを調べる。
武装、装備は共に街でよく見かける一般のタイプだ。
斬られた傷の跡もある。・・もしかしたらジェスターを発見した所を
他の人に見つかって揉み合いになったのかもしれない・・・。

あの場所にジェスターが居なかったこと即ち捕まった・・?
それとも暫らくしたら戻るか?
あの場所で一夜あけることにする。


・・・・


・・・・・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


そして結論は 捕まった と判断。
すぐさま中央区の役所に駆け込み今回の一件を話すことにした。


第4話


衛兵
「何?ジェスターの取り合いになり殺人事件がおきただと!?くそ、もしや・・・」
キュピル
「何か心当たりがあるのですか?」
衛兵
「暗殺ギルドか盗賊ギルドの関係が否めん。いきなり大物を見つけたな。お前。
今から調査隊を派遣する。お前はその調査隊に入り隊長を案内しろ」
キュピル
「分かりました」


キュピル含め計4人のチームが集まった。

衛兵隊長
「お前が現場まで案内してくれるんだな」
キュピル
「はい。途中道はかなり険しいのでお覚悟を」
衛兵隊長
「とにかくその場所まで連れてってくれ」



==最後にジェスターがいた場所


衛兵1
「むっ・・。こいつは酷い臭いだ・・・」
衛兵隊長
「死体の皮膚が変色していないか調べろ」
キュピル
「変色?」
衛兵隊長
「暗殺ギルドや盗賊ギルドは人を殺す手立てが大抵毒を用いることが多い。
血痕が長く続いていて暫らく生きていた所を見ると毒を喰らって慌てて街へ戻ったって所だろう。
毒が塗られた剣で斬られた。こんなところだろう。」
衛兵2
「隊長。皮膚が黒く変色しています。細胞が死んでいますね」
衛兵隊長
「思ったとおりだ。これは盗賊ギルドか暗殺ギルド。どちらかの仕事振りに違いない。」
キュピル
「ジェスターが中央市役所に届けられる可能性は?」
衛兵隊長
「現時点でジェスターが届けられた報告がない。
もしかしたら賞金よりも高い値段で何処かに売るルートでもあるのかもしれないな」
キュピル
「う、売る・・・。そうなってしまってはお目にかかることすら難しくなるな。
なんとかして阻止しないと・・・」
衛兵1
「隊長、どうします?」
衛兵隊長
「今まで盗賊、暗殺ギルドを野放しにしてきた。やつ等は既に死罪に値している。
が、転々と街を移動しその存在が隠れていたが今度こそ捕まえる。帝都の出入り口を全て閉鎖しろ」
キュピル
「ダメです!レインボーブリッジは閉鎖デキマセン!」

衛兵2
「はぁ?」
キュピル
「すいません。昔の口癖です。キニシナイでください」



==帝都 中央区 役所


衛兵隊長
「出入り口は全て閉鎖した。やつ等がこの壁を乗り越えない限りは
確実に出て行くことはできないはずだ。」
キュピル
「既に出ているという可能性は?」
衛兵隊長
「十分ある。しかし今回強奪したものは生き物だ。
他人を殺すことや物を盗り逃げる事はやつ等にとって造作もない行動だが
生き物となると檻に入れたり大規模な移動が必要になるはずだ。すぐに行動が出来るとは思えん。
数日したら街を一斉に検挙する。今度こそ盗賊・暗殺ギルドを根絶やしにしてやる」
キュピル
「協力します。」
衛兵隊長
「それまでお前は街をパトロールしてほしい。とにかくやつ等を外に出さないことが重要だ。
怪しい奴がいたら誰であろうと職務質問しろ。それでは行って来い」



==帝都 中央区 外


キュピル
「むぅ・・。少し状況をまとめてみるか・・。
ジェスターを崖の下で一回発見して感動の再会するもウィングが手持ちになかったから
取りに戻って再び行くとそこにはジェスターはいなく人の死体があった・・。
その人の死体は盗賊ギルドか暗殺ギルドによる犯行でその際ジェスターは連れ去られたと判断できる・・・。
更に帝都の市役所に届けられていない所を見ると賞金より高値で売る事の出来るツテがあると思われる・・。
早くしないと再びジェスターと大きく離れてしまうな・・。それどころか下手したら命の危険だってある・・。」

もし既にジェスターを連れさらったやつ等が帝都の外にいるといたら
再び発見することは至難の技である。

キュピル
「・・・そうだ。こんな時こそあれ頼みだ」





==情報屋

トム
「おや、お兄さん。またやってきましたね」
キュピル
「やぁ、トム。ジェスターに関する新しい情報は何かあるか?」
トム
「へへ、あるぜあるぜ。ジェスターが捕まったっていう情報。聞いたか?」
キュピル
「暗殺ギルドか盗賊ギルドに捕まったっていう話か?」
トム
「よく知ってるな。一番のビッグニュースだってのによ。商売上がったりだぜ・・・。」
キュピル
「ジェスターが今どこの建物にいるか分かるか?」
トム
「俺は超能力者じゃないぞ」
キュピル
「なら、盗賊ギルドや暗殺ギルドが今どこに立て篭もってるか分かるか?」
トム
「何故そんな事を聞く?」
キュピル
「理由はどうでもいいじゃないか」
トム
「・・・ところでお前さんいつの間にか衛兵になったんだな。
ってことはあれかい?突き止めて検挙でもする気かい?」
キュピル
「近いかもしれないな」
トム
「・・なるほど。そういった情報はここじゃなくて
鍵のかかってる裏の情報屋の場所に行ったほうがいいぜ。
あの受付。俺とちょっとしたツテがあってな。俺が頼めば無料で情報もらえるかもしれないぜ。
手伝ってやろうか?」
キュピル
「おぉ、それは助かるよ。何にせよやつ等の居場所が分かればこっちのものなんだ」
トム
「おーけい。ついてきな」


そういうとトムは裏の情報屋の扉を開け中に入ってった。
すかさず後を追う。


薄暗い通路を歩いてる最中突然トムが立ち止まった。

トム
「おっと、そうだ。衛兵さん。知ってるかい?」
キュピル
「何を?」
トム
「裏の情報屋は衛兵を物凄く嫌うんだぜ」
キュピル
「そうなのか?」

そう答えると突然頭に衝撃が走る

キュピル
「・・!!?」

誰かが後ろから近づいて鈍器で頭を殴ったらしい。
足音どころか気配すら全くしなかった・・。
・・・まさか暗殺ギルド・・。
不意打ちのダメージは非常に大きい。そのまま倒れて気を失うほかなかった。




・・・・・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



「いい加減起きろ」


いきなり頭を殴られる。痛い。
ぼやけてた視界がはっきりする。物凄い頭がズキズキする。生きてる?なんとか生きてるみたいだ。
辺りを見回すと数人誰かがいることに気づく。


「起きたな。右を見てみろ」


野太い声をした爺さんに言われ右を見ようとする。
が、体が椅子に縛り付けられている。とりあえず顔を右に向ける。


キュピル
「・・・ジェスター!?」
ジェスター
「・・・・・」

首吊り台にジェスターがいる。首に縄が引っかかってるようだが足はついている・・。
だが本人からの返事がない。


「さっきまでキュピルキュピル叫んでたが今は静かだな。」

キュピル
「死んでないだろうな?」

「当然だ。これは取引材料なのだ。死なすはずがない」


それを聞いて少し安心する。
だけどこんな状況だ。油断できない。

キュピル
「取引材料と言ったな。どういうことだ?」

「お前に一つ仕事をやろう。
この仕事をこなせば報酬としてこのジェスターを返してやる」


その一言を聞いて思わず首を上げる。

キュピル
「その仕事内容は?」

「ロラク・スクエを殺し、その部屋にある衛兵の名簿を盗め。
ロラク・スクエはお前の所属している衛兵隊長の事だ」

キュピル
「暗殺・・と・・盗賊・・・」

完全に悪に染まることになる。
自分の手を汚すことになるのか・・・・。究極の選択肢だ。

「ロラク・スクエは帝都の全ての門を閉じ勝ち誇った気でいるが
我々にそんな障害は通じない。むしろこれは我々の作戦の一つだ。
奴は完全に油断している。そこでお前の出番だ。奴の部屋にある衛兵の名簿を盗みロラク・スクエを殺せ」


思わず後ろに倒れそうなほどの威厳。
声を発している者は只者じゃない・・・。

だが何にしろ実行、不実行に関わらず今ここで拒否するのは得策ではない。
目の前でジェスターが殺されるかもしれない。それだけはなんとしても避けなければいけない。

キュピル
「・・・・・」

しかしどうしても やってやる の一言が口から出ない。
今まで戦いで人を斬った事はあるがどれも合法だった・・。
しかし今回のは完全に犯罪である。
罪を犯す・・・。重い荷がのしかかる。

いつまで経っても返事が出ない事に苛立ちを覚えたのか首吊り台の側に立っていた奴が

「そろそろ決めねぇと吊るぞ?」

と脅しかけてきた。
慌てて

キュピル
「分かった、やってやる」

と、答える。

「縄を解いてやれ。それと変な気は起こすな。ジェスターの命に関わるぞ」

縄が解かれるが忠告通り座ったままでいた。

「どのような手段を講じてもいい。奴を殺し名簿をここまで持ってきてくれたらジェスターを開放する。
ロラク・スクエを殺したらその証拠として奴の勲章をもってこい。」

キュピル
「分かった」

立ち上がり外に出ようとする。

「最後に言っておく。我々を出し抜こうという考えは捨てろ。
お前の行動は全て誰かに見られてるということを忘れるな
密告なんかしてみろ。一瞬でこいつの首が跳ねるからな。
たとえ周りに誰もいなくても我等は常にお前を監視している・・。」


それだけ聞いて外に出た。


==帝都 南口


キュピル
「やつ等のアジトは南口だったのか・・・」

時間は恐らく真夜中だろう。行動するなら一番いい時間だが・・。
とりあえず場所は確認した。衛兵に密告しようと思えば密告出来るが・・。
やつ等の言った通り俺は誰かに監視されているらしい。
監視している者は少なくともあの広場にいた者達ではないだろう。

・・さて、どうしようか・・・。

とりあえず密告するにしろ目的達成するにしても場所は同じ市役所だ。
まずは市役所にいくか・・。


==帝都 中央区 役所


とりあえず役所の中に入った。
俺が中に入った後俺以外の人がこの役所に入った者はいなかった。
・・監視を打ち切った?それとも・・・。

考えていると誰かが話しかけてきた。
・・・午前の時共にいた衛兵の人だ。

衛兵2
「ようやくパトロールから帰ってきたか。
隊長がお前のことを探していたぞ。部屋で待ってるから行って来い」
キュピル
「・・・わかりました」


もしかして二つの意味で絶好のチャンスかもしれない・・。


==ロラク・スクエの部屋


ロラク・スクエ
「来たか。随分と遅かったな」
キュピル
「・・・・・・ッ」
ロラク・スクエ
「どうした?パトロールで何かあったのか?」


心臓の鼓動が早くなる。
これほどのチャンスがイキナリ舞い込んで来るとは思わなかった。
いきなり俺が斬りかかってくるとは向こうも思っていないはずだ・・。
やろうと思えば一瞬で・・・。

ロラク・スクエ
「まぁ、とにかくそこに座れ」

ロラク・スクエが自分の席に座ろうと背中を見せた。
・・・しかし斬ることは出来なかった。
とりあえず椅子に座ることにした。

ロラク・スクエ
「まずはお前に報告しておきたい事がある。
午前お前が案内したあの場所を色々調査してみたが・・」

緊張とプレッシャーで段々何言ってるのか聞こえなくなってきた。
・・・・密告したい。犯罪行動は・・。あいつ・・・シルクとの約束に反する・・・。
暗殺・盗賊ギルドの者は言っていた。何処に居ても俺は監視されていると・・。
何処かで聞き耳でも立てているのだろう・・。

・・・・。

・・・・・・・・!!そうだ!


俺は近くに置いてあったペンと紙を取り出し文字を書き始めた。

ロラク・スクエ
「おい?何をしている?」

急いで文字を書く。そしてそれを見せ付ける

『口にすることに出来ない重要な報告があります。
フェイントのために喋り続けてください』

それを見たロラク・スクエの顔色が変わった。
意味をすぐに理解したのか先ほどの調査報告を色々と喋り出した。
すぐに俺は再び文字を書き出した。

・・・・よし、書けた。
ロラク・スクエは喋りながら内容を読んだ。


『パトロールの最中、盗賊・暗殺ギルドの者と思われる者に襲われました。
その後やつらのアジトに連行されジェスターを発見しました。
奴はジェスターを取引材料にある物を要求してきました。貴方の首と衛兵名簿です
そして貴方を殺した証拠として勲章も持ってくるように命じられました。』

ロラク・スクエ
「以上だ。お前から何か報告することはなにかあるか?」

この返答はつまり今度は俺が喋ればいいんだな。

キュピル
「あります。パトロールで色々なところを探り情報を探してみました」

勿論嘘だが。
俺が喋り続けてる間ロラク・スクエは紙に文章を書き始めた。
しばらくして書き終えた紙を俺に渡してきた。


『今からお前にある物を渡す。衛兵の名簿と俺の勲章だ。
俺の勲章には今それが何処にあるか分かる特殊な魔法がかかっている。
これを持って奴らのアジトへ行け。すぐに我等が魔法を頼りに
後を追う。そのためには今俺はここで少し死んだふりをする。行くぞ』

俺が読み終えたのを確認するとロラク・スクエはダガーを取り出し
自分の腕を少し斬り勲章を血に染めた。
その後わざと大きな声で衝撃を喰らったような声を出した
やつ等が聞き耳を立てているのであればあたかもこれは攻撃したかのように聞こえるだろう。
ロラク・スクエはそのままダガーで絨毯を切りつけ人を斬ってるような音を出した。

俺はその間衛兵の名簿が置いてある棚を開けファイルを持ち出し
勲章を持ってすぐに盗賊・暗殺ギルドのアジトへ向かった。
密告という形を取ったがやつ等は恐らく気づいていないはずだ。
決戦だ・・・。


続く


追伸

なんかグロイねぇ・・。


第5話


やつ等のアジト入り口まで来た。
見た目はどうみてもただの一軒家だ。
入り口の玄関を通る。ここもまだ見た目は普通の家。

しかし、この地下の扉を通るともうそこからは普通じゃない・・。


地下への扉のドアノブに手を触れる。
ゆっくり回し地下へ続く扉を開ける。
・・・罠とかないよな?

よく観察して何もないと判断した後はそのまま降りていった。


しばらく降りつづけ途中の扉を全て無視して真っ直ぐ進むと
あの時捕まった場所にたどり着く。
何人かの人とジェスターが・・・・いない。

「持ってきたか?」

問い出してきたので

キュピル
「勿論だ。」

と、答え勲章と名簿を机に上に置く。

キュピル
「約束は守った。条件通りジェスターを渡してもらうぞ。何処にいる?」


「ここに入る場所、一個手前にいる。鍵を渡せ」

フードの被った男が腰にある鍵をこっちに手渡す。
しっかり鍵を貰う。

フードを被った男
「・・・You dai」
キュピル
「!」

いきなりフードを被った男がダガーで攻撃してきた!
とっさに衛兵に入隊した時に貰ったショートソードで攻撃を受け止める。
受け止めると同時にショートソードが吹っ飛ぶ。
慌てて別の剣で対応しようと思ったその時後ろに衝撃が走る。

しまった、後ろに回りこまれていたか・・!!気配が全くしない連中って奴は・・。

しかし、幸運な事に背中につけていた幽霊刀に当たって剣の刃に当たらずに澄んだ。
敵が驚いてる隙に後ろにいる敵に向かってタックルを喰らわせる。
体勢が崩れて後ろに転んだ敵の上を通って一旦通路に撤退する。
ジェスターがいると言われた扉は貰った鍵で開くが開けてる時間はないので
別の扉を開けて中に逃げ込む。
急いで愛剣、ロマベy(略)を抜刀する。

フードを被った男
「Daaaaaai!!」
キュピル
「喰らえい!!」

敵が扉を開けようとする瞬間に扉ごと剣で突く。
突然扉から刃が出てくるわけだから当然敵も驚いてる。
そこで何度も突きを繰り出しとにかく中に入れさせないように・・。

が、調子に乗っていたら突然剣がヒビを立てて崩れ出した!
今度はこっちが驚かされている。何かの魔法か?魔術ギルドがあるぐらいの世界だ。おかしくない。


「あっという間に追い詰められたな」

キュピル
「何故いきなり攻撃した?約束は守ったはずだ・・・」

今まで暗い場所で黒い服を着ていて黒いフードも被ってたからよく見えなかったが
今明るい場所で見るとかなりの老人だ・・。

「密告しておいて約束を守ったとは。ぬるいな」

ばれてる。・・・ってことは隊長達の援軍は・・。

「我等は様々な場所に目や耳がある。紙に書いても無駄だ。甘く見たな。」

遠くで戦闘している音が聞こえる。
恐らく隊長達だ。援軍しに来てるが向こうも戦っている所を見ると救援が今すぐ来るとは考えにくい。


「我等は証拠を残さない。早急な退路確保にも即死してもらおう」

老人の気迫が一気に上がった。これは・・。
背中に巻きつけてある幽霊刀を抜刀する。剣を抜刀した瞬間から
自分の霊能力が一気に向上してるのが分かる。体も物凄く軽い。
霊能・・今は利用させてもらおう。

キュピル
「こんちくしょう!」

高速で斬りつける。斬った!!
・・・・しかし何も起きない。・・・いや、よく見ると色が薄い・・・。
まーた後ろだ!!

慌てて前に緊急回避する。予測通り後ろに回っていてちょうどダガーを突き刺していた所だった。
・・・危ない・・・。

「残像を見破ったか・・・。さては・・・」

キュピル
「もうその手は効かん。」

再び斬りかかる。だが恐らく残像だ。
そのまま斬ると見せかけて横に大きく薙ぎ払う。
手ごたえがある!
・・・しかし手ごたえがあるだけで剣が止まってる・・。
剣先を見ると老人がダガーで受け止めていた。物凄い力だ。
気が付いたら瞬間とも言える速度で老人が接近し蹴りつけて来た。
そのまま蹴りを貰い吹っ飛ぶ。

慌てて起き上がるとそこには老人の姿がいない。

キュピル
「この、どこへ消えた・・・。」

その時一瞬部屋が光った。突然上から雷を落ちてきた!

キュピル
「こんな技見たことがない!」

そのまま直撃・・・かと思いきや軌道が逸れる。
天井にぶら下がっていた老人が喋る

「お主の事だから避けるだろうと思って先読みしたが・・。まさか動かなかったとは。」

老人が天井から降りてくる。降りてきた瞬間を狙って攻撃する
が、よく見ると老人の靴のカカトに小さな剣があることに気づいた。
そのまま老人が後ろへバック宙返りをし鋭利な刃が髪を斬る

キュピル
「うわっ!」

攻撃して少しでも軌道を逸らしていなければ首直結だったかもしれない・・。
強すぎる。この老人。ハイパーじいちゃんかよ。
休む暇を与えずに老人が次々とダガーで攻撃を繰り出してくる。
それをひたすら幽霊刀で受け止め弾く。
何合か受け止めると老人が魔法で雷を放ちながら後ろへバックする。
この霊術・・使えるか!?

キュピル
「霊術・吸収!」

霊能の力を剣先に集中させ敵の雷を吸収する。なんとか吸収できた!
だが今度はナイフを何本も飛ばしてきた!!物理攻撃は霊術じゃなんとも出来ない。
慌てて近くの机の下に避難する。

ガツンと音を立てて何十本ものナイフが机に刺さる。
そのまま隠れていると突然上から剣が貫通してきた!
まだ老人がナイフを投げてると思っていたばかりに今のは予想外だった。
背中に思いっきり刃が刺さる。

キュピル
「うぐあぁっ!」

老人が剣を引き抜く。もう一度刺してくる前に急いで机の外に転がる。
転がった先には老人がダガーを構えて立っていた。
終わった・・・・。転がるのをやめる。

「手ごたえのカケラも感じられんかt・・・」
キュピル
「喋ってる暇があればとっとと攻撃すればいいものを」

余興に浸ってる老人の足に向けて思いっきり蹴り飛ばす。
思いっきり直撃し今度は老人が転ぶ。急いで立ち上がり幽霊刀で追撃をかける。
が、老人がバック転しながら避ける。狙うなら今だ!

キュピル
「霊術・魂縛り!!」

いつしか前にルイとジェスターが部屋をピッキングして入って来た時に
罠として仕掛けていた霊術をそっくりそのまま老人に向けて放つ。

「ふん」

が、老人の持っていたダガーで振り払われてしまった。
・・・あのダガーは何か特殊な奴なのか?まだ霊術を全然使いこなしていないから分からないが・・。
しかし背中の出血が少し酷い。モタモタしてるとスタミナがドンドン削られていく。
少し体勢が崩れる。その瞬間を老人はしっかり逃さず攻めてきた。
幽霊刀で受け止める。しかしそのまま突き飛ばされる。
今度こそ一巻の終わりだ!

衛兵1
「ケデン帝都のために!!」
衛兵2
「ケデン帝都のために!!」
ロラク・スクエ
「我等市民の平和を守るために!!」

扉から隊長達が突撃してくる。希望が見えてきた。
もう一度襲い掛かってくる老人の猛攻を頑張って受け止める。
ロラク・スクエの剣が老人に向けて振り下ろされる!
剣の攻撃は回避されたが俺に対する猛攻は止まった。助かった

ロラク・スクエ
「新入り!急いでジェスターを確保しろ!確保したらそのまま役所でメディックの治療を受けろ!」

そい言うとロラク・スクエと衛兵たちは老人と激闘を繰り広げ始めた。
俺は言われたままに行動する。

まずは廊下に出てジェスターがいると思われる扉の鍵を開ける。
そのまま中に入る。

キュピル
「ジェスター!」
ジェスター
「きゅ・・キュピル・・・早く・・・」
キュピル
「!」

首吊り台で宙吊りになってる。
慌てて縄を斬る

ジェスター
「げほっ!っげほっ!!」

凄い咳き込む。しばらく咳き込みが納まるのを待つ。

ジェスター
「ありがとう・・死ぬかと思った・・・」
キュピル
「俺もびっくりしたよ・・・」
ジェスター
「キュピル、早くウィングを・・。」

そうだった。ここでジェスターを手を繋いでウィングを使えば全て円満に解決する・・。

・・・・・・。

・・・いや、本当に全て円満に解決するだろうか?
ロラク・スクエはどうなる?他の衛兵はどうなる?本当に老人に勝てるか?
・・・・・ほんのわずかな。本当に僅かな時間しか共に過ごしていないが
見捨てるわけにはいかないと思った。何よりも・・。

俺も衛兵だ。責務は真っ当しよう。
全てを投げ出して逃げるのは子供がやることだ。

キュピル
「ジェスター。俺はまだどうしてもやり残してしまった事がある・・。
ウィングを持たせておく。危険だと思ったらこれですぐに逃げろ」
ジェスター
「キュピルは!?」
キュピル
「ケデン帝都のために!!!」

大声で激戦地へ突撃していく。
ちょっと自分でも笑ってしまいそう。



激戦地へ行くと二人の衛兵が死亡していた。
ロラク・スクエと老人が激戦を繰り広げているがどう見てもロラク・スクエのほうが劣勢だ。
老人はまだこっちに気づいていない。

キュピル
「・・・霊術・気配隠し」


幽霊刀から伝わる霊能力をフルに稼動させ全身に取り込む。
今自分の気配はあの老人にも負けない程気配を隠しているはずだ・・。
霊術の通り完全に幽霊になっているほどなくらいだ。

そのままゆっくりと老人に接近してく。


「ロラク・スクエ!!お前の運命もここまでだな!」

ロラク・スクエ
「お前を逮捕することをどれだけ願っていたか!15年も探し続けていたんだ!
死ぬわけには・・!!」

キュピル
「You Daaaai!!」


一番最初に言われた言葉をそっくりそのまま言い返してやった。
見事に老人の背中に幽霊刀が直撃する

「・・・・まさか・・!?」

まるで時が止まったかのように辺りが静かになる。
三人の荒い息遣いだけが聞こえる。

ロラク・スクエ
「レク・ノルド!逮捕する!」
レク・ノルド
「ハッ、甘い」

そういうと老人・・レク・ノルドはすぐに消えた。
一瞬透明化にでもなったかと思ったが違う。凄い速度で逃げたんだ。
・・・完勝とまではいかないが勝利なのは間違いない。
どちらにせよあの攻撃は相当深手なはずだ。

しばし沈黙が流れる。




ロラク・スクエ
「役所に戻っていなかったのか。ジェスターは?」
キュピル
「ちゃんと確保しています」
ロラク・スクエ
「そうか。それはよかった。お前のお陰で奴の足取りを掴むことも出来
更に多大な損害を与えることにも成功した。礼を言う」
キュピル
「だけど逃げてしまいましたが大丈夫なんですか?」
ロラク・スクエ
「奴はここに何もかも残して退却していった。探すのに時間はかかるだろうが
足取りはつかめるだろう。さぁ、ジェスターを連れて役所に戻るぞ」

・・・さて、何にせよロラク・スクエ隊長に恩返しは出来たかな・・。

キュピル
「隊長。この通路を出て右に曲がったところに隊長の勲章と衛兵の名簿が置いてあります。
それだけ回収しましょう」
ロラク・スクエ
「おぉ、そうだったな。よし。回収しよう」

そういうとロラク・スクエは勲章と名簿を回収しにいった。
俺はその間ジェスターのいる部屋に入った。


ジェスター
「・・無事に戻ってきたね」
キュピル
「時間がない。ウィングを急いで使うぞ」

ジェスターと手を繋ぎウィングを使用する。
アノマラド大陸の最後に訪れた街に移動する・・・。














==アノマラド大陸 ナルビク


キュピル
「帰ってきた・・・。」
ジェスター
「・・・キュピル。怒ってる?」
キュピル
「結構。危うく俺もジェスターも死ぬ所だったじゃないか」
ジェスター
「ごめん・・・・・・じゃなくて・・。ごめんなさい・・・
こんな事になるなんて全然思っていなかった・・・。」

珍しい発言。

キュピル
「本当にそう思ってる?」
ジェスター
「私今までの出来事で今回初めて死の直前まで見えて・・・。
その死の一歩手前が見えた瞬間急に怖くなって・・・。
もう軽はずみな行動はしない・・。ごめんなさい・・。」

本人はかなり反省しているし信じても大丈夫かな。

キュピル
「うむ、お主もかなり成長したな」

シミジミと思いつつも・・・背中の傷が・・・痛い・・・。
未だに手に持っていた幽霊刀を収納する。・・・霊能力は抜け落ちなかった。



==キュピルの家


キュピル
「ファン!!」
ファン
「キュピルさん!戻りましたか!ジェスターさんも無事で何よりです。」
キュピル
「無事なもんか!背中の傷の手当て頼む!出血多量になってノタレ死ぬ!
ファン
「うわ、酷い傷ですね。一体何が・・・。とにかく治療箱とってきます」
ジェスター
「私も手伝う!」











==ケデン帝都 中央区 会議所



衛兵
「隊長。レク・ノルドの足取りはつかめました。
それと・・・。キュピルを指名手配しますか?」
ロラク・スクエ
「指名手配にする必要はないし彼は犯罪を犯していない。
新種の生物を巡る争い。これは一種の戦争とも呼べるものだった。
彼はその種を摘み取り解決しただけだ。今後とも世に再び出る事はないだろう
隊長命令だ。キュピルを小隊長に昇格させる。そして新しい部隊を編成させる。
・・キュピルとジェスターだ」





第五話終了。そしてジェスター編終了

第六話からルイ編に続く


第六話


前書き

ルイ編は少々複雑なストーリーになっておりその影響を受けて
長くなっています。一話一話長いので休憩挟みながらどうぞ。


増量キャンペーンだと思えば(ry




ファン
「背中の傷大丈夫なんですか?もう行くって・・」
キュピル
「まだルイが一回も帰ってきてないんだろ?俺がジェスターを探してる間に
一度でも帰ってきていたのであれば一日休んだかもしれんがそれがないとすれば
流石に少し心配だ。今すぐ探しに行って来る」
ファン
「でも武器も全部壊れてるじゃないですか。自分鍛冶覚えてますから修理が終わるまで
待っててくれれば・・・」
キュピル
「幽霊刀がある。ただ、この愛剣は直してくれ。流石にこのままボロボロの状態だと
あの人に顔が立たん」
ジェスター
「あの人って誰?」
キュピル
「ロベリア殿」
ジェスター
「へぇー・・」
キュピル
「何にせよ行って来る。」
ファン
「無理しないでくださいよ。危ないと思ったらウィングを使って一旦戻るのも手です。」
ジェスター
「キュピル。私も行く。そんな状態で行ったら絶対良くないよ!」
キュピル
「平気だ。それにルイのことだから案外余裕だったりするかもしれない」
ジェスター
「うーん・・・」
キュピル
「危険だったら一旦戻って援軍要請するよ。その時来てくれ」
ジェスター
「分かった・・」
ファン
「装備しっかり確認してから行ってくださいね」
キュピル
「勿論。食料と水に幽霊刀と異次元で拾った魚人の篭手。
そして肝心のウィング。万全だ。行って来る」
ファン
「・・万全?・・・あぁ!キュピルさん!このヒーリングポーション忘れてます!」


ブォォォオン

ファン
「・・・\(^o^)/」

ジェスター
「ファンが珍しいポーズしてる・・・」





==どこかの洞窟


キュピル
「・・到着。・・む、洞窟・・?洞窟関係に来たのは随分と久しぶりだ・・・」

辺りは湿っていて明かりも乏しい。
足を滑らせそうで怖い。

キュピル
「・・・・ん・・?」

前の方から小石の転がった音が聞こえた。
・・・が、

ルイ
「動かないで!」
キュピル
「うお!!」

後ろから銃を突きつけられるキュピル
さっきの小石はもしかしてルイが注意を逸らすために投げた物か!?

キュピル
「ルイ!何寝ぼけた事してる!俺だ、キュピルだ!」
ルイ
「知ってます・・!私の要求はウィングを全て私に渡し
幽霊刀を差し出してください!」
キュピル
「・・むぅ・・・」

幽霊刀・・。ウィングなら分かるが幽霊刀?確か扱えなかったんじゃ・・。
大人しくポケットにあるウィングを取り出す。
ルイの方に向く。凄い真剣な顔だ・・。

ルイ
「そのウィングと幽霊刀を地面に置いて後ろに下がって・・」・
キュピル
「悪人かい」
ルイ
「いいから早く」
キュピル
「・・・・」

ウィングを地面に置く。
幽霊刀も置く

ルイ
「そのままゆっくり後ろに・・」
キュピル
「うおらぁ!!」
ルイ
「!!」

地面に幽霊刀を置いた瞬間ルイに素手で抑えかかる。
まずはルイの持っている銃を肘で叩き落す。見事に銃を叩き落とす。
続いてルイの襟首を掴んで転ばそうとする・・・が

ルイ
「くっ!!」
キュピル
「!?」

先に足を思いっきり蹴られ転倒する。
このままだと一気に劣勢になるのは目に見えてる。
しっかりルイの襟首を掴んで道連れにする。

ルイ
「!?」
キュピル
「こんのっ!」

倒れたルイに頭突きしようとする。
しかし蹴飛ばされて坂道を転げ落ちる。2人の間に距離が出来る。


キュピル
「ふざけるのも大概にしておけよ!ルイらしくないな!」
ルイ
「大真面目です!!キュピルさんも私の邪魔をしないでください!!」
キュピル
「おい、心配して駆けつけてきたと思えば随分と酷いな。」
ルイ
「キュピルさんは単純すぎるんです!私はジェスターさんと違って頭もあります!」
キュピル
「おい、他人の悪口言うとはいい度胸してるな。
こんな酷い奴暫らく見なかったぐらいだ。お前幽霊幽霊って五月蝿かったんだよ!!
いつも俺に悪質なクレーマーみたいに霊品押し付けてよ!
自分に霊感のセンスがないからって俺を巻き込むのも大概にしておけよ!
お前は子供か!?餓鬼か!?園児か!?」

昔よく使っていた毒舌を発揮する。

ルイ
「・・・私を怒らせましたね」

ルイが予備の銃を抜く。急いで床に置いてある幽霊刀を手に取る。
その後すぐに銃を発砲し魔法の弾が目にも止まらぬ速さで飛んでいく。
しかし発砲してくる事は予測していたため、すぐに近くの岩に隠れた。
隠れてる間に幽霊刀を抜刀する。霊能力が強くなってきた。

ルイ
「・・・・・・・」

ルイが何か呟いてるが聞き取れない。
暫らく立つと突然岩の陰から凄まじい光が溢れ出した。

キュピル
「!?」

慌てて岩から離れ体勢を立て直す。
ルイに向き直る

キュピル
「な、なんだよあれ・・・」

ルイの周りに凄まじいマナの流れを感じる。
体から凄まじいオーラーを発しており炎や氷に電気の塊が近くに浮かんでいる。
目も赤い上に浮いてる・・・。

ルイ
「・・・・・・」

また何か呟いてる。魔法か!?
近くに浮遊していた炎や電気がこちらに放たれた!

キュピル
「霊術・吸収!!」
ルイ
「無駄です」
キュピル
「え?ぐわ!!」

幽霊刀に謎の負荷が掛かって吹っ飛ばされる。
これも魔法だというのか?なんて奴だ。ふざけてやがる。

キュピル
「く、くっそ。何で我が家の女子陣はこんなに強いんだ・・。ジェスターといいルイといい・・。」
ルイ
「負け犬の遠吠えですか?もう何も出来ませんね」

ルイが銃を構える。冷や汗が流れる。
何か対抗策・・・。
・・・・え?
気が付くと幽霊刀を握っている。・・吹っ飛んだはずじゃ・・。

ルイ
「・・・新しい霊術?」

怯んでる。今しかない!!

キュピル
「うおおおぉぉぉ!!」

全力で斬りかかる。
ルイが急いで何か呪文を唱えている。間に合え!!
しかし魔法の盾で防がれる。

キュピル
「くっ・・こんの・・・」
ルイ
「甘いですね。私はまだ実力の50%しか本気を出していませんよ」
キュピル
「・・・・ぐぐぐ・・」

魔法の盾の力で吹っ飛ばされそうだ。

ルイ
「けど、キュピルの霊術の力は私にとっても必要。
それなら吸収してしまえいばいいだけの話・・・」

まてよ・・。ルイの奴。本当に何かおかしいぞ・・・。
温厚なイメージがあったのに今日はやたらと性格も行動も凶暴だ。
しかも吸収・・・?
それって確か霊術の一つの技だったはずだ・・。
過去にルイから渡された本に何か書いてあったはず・・。

怖いがルイの目を直視する。・・・よく見ると目の焦点が合っていない・・・。
それにキョロキョロと挙動不審だ。
・・・人物操作の魔法かもしれない。

ルイ
「吹き飛べ!」
キュピル
「うわ!!」

思いっきり魔法の力で吹き飛ばされる。
だめだ!!このままじゃ解決する前に死ぬ!!
すぐに次の一手を唱えられてる!

ルイ
「炎術!」

炎がこっちに飛んでくる。横に転がって回避する。

ルイ
「氷術!!」

今度は氷が飛んでくる。再び横に転がって回避する。

ルイ
「雷術!!!」

更に雷が飛んできた。横は・・もう岩があって転がれない。
ここまでか・・!

キュピル
「うぐっ!!」

強烈な電流が襲い掛かる。痺れて次の行動が上手く取れない。
それどころか凶悪な電流が身体に負担をかけ呼吸すらままならない。

ルイ
「霊術・能力吸収・・・」

指先から闇の一線がこっちに向かって飛んでくる。
かなりゆっくりだが確実に飛んできてる。終わる・・!








・・・・終わった。素直にジェスター連れてくればよかった・・・。








闇の線に触れた瞬間まるで体が溶けたかのように意識も徐々に薄れてなくなっていった。










しかし体が重い。まるで錘をつけてるみたいだ。
だけどそれでいて無重力の空間に浮かんでるような不思議な感覚もする。
が、突然高熱を出した時みたいに急に苦しくなったり突然治って元気な状態になったりもする。
そんな事を何度も繰り返していくうちに段々考えが元に戻ってきた。

キュピル
「うぐっ・・・。目を覚ませ。とりあえずここは・・・」

辺りを見回す。そこは暗い壁に覆われた場所だった。だけど通路もある。
その通路に沿って歩いていくと分かれ道が現れた。
適当に進んでいくとドンドン複雑に分かれ道が分岐してく。
・・・ここは迷宮か・・・?
それでもドンドン進んでいくと一つの扉が現れた。
その扉を開けて中に入る。

・・・ルイがいた。
慌てて戦闘体勢を取る。


ルイ
「・・・キュピル・・さん?」
キュピル
「・・・む・・・」

さっきのルイとはまた少し様子が違うみたいだ。
緊張が解れて普通に立つ。

ルイ
「あぁ、よかった。キュピルさんだ。助けてください・・・」
キュピル
「どういうことだ?」
ルイ
「本当にごめんなさい・・。許してください・・。」
キュピル
「いいから状況を話してくれ。」
ルイ
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」

そういいながら声がフェードアウトしていき徐々に消えて言った。
ここは一体どういう空間なんだ・・・。
すると突然また目の前に扉が現れた。
その扉を開けるとまたルイがいた。
・・・だけど何人もいる。何十人も何百人も。全員泣いてる。気が狂いそうだ。
誰かの涙を見るのは一番嫌いだ。どう接すればいいのか分からないからだ。

キュピル
「泣くな・・。何があったんだ?言ってくれ・・。力になる」

一人一人全員に問いかけるかのように答える。
全員が口を揃えて答える


『貴方は迷宮に入った。精神の狭間に入った。
ぐるぐる回る。さ迷う迷宮。抜け出せる?抜け出せない?』

キュピル
「精神の狭間?ここはルイの心の中なのか?」


一人が泣くのをやめて此方に接近する。


ルイ
「私は謝っている」

別のルイが泣くのをやめて接近してきた。

ルイ
「私は泣いてる」

次々と別のルイが泣くのをやめてドンドン喋り出した

「私は困っている」
「私は助けを求めている」
「私は罪を償いたい」

そんなことがエンドレスに続く。

キュピル
「あぁ、助けるにはどうすればいいんだ!?」

すると突然何十人、何百人もいたルイが消え扉が現れる。
俺は急いでその扉を開け中に入った。

そこにはまたルイが一人だけいた。


キュピル
「どうすれば助けられる?」
ルイ
「これは私の記憶・・・。私の記憶が鍵・・・」

ルイが光っている玉を渡す。
それに触れると他人の記憶が頭の中に入ってくる。
・・・・これは・・ルイの記憶だ。
ジェスターや俺とかファンとか。出合った事の記憶とか
様々な記憶が詰まっている・・。

俺が一番知りたいのはルイがワープしてからの事だ。










ルイ
「到着・・!ここは・・洞窟?」

辺りを見回すとそこは照明の乏しい暗い洞窟で
少しジメジメと湿気を帯びてる。

ルイ
「こんな所に鋼管の霊簪があるのでしょうか・・・」

あの新聞が書いてある通りだとすれば今は泥棒が持っているはず・・。
私はワープ機に入る時そのまま飛んだのではなく少し操作して特殊なワープをした。
それは 鋼管の霊簪がある場所の近く と指示してワープした。
直接その物がある場所にワープすることも可能だったみたいだけど直に行くと危険もある。

ルイ
「探さないとね」

重装備してきた荷物から懐中電灯を取り出し前に進む。
足を滑らせないように慎重に・・・。

足元をしっかり照らし進んでいく。
すると何かピアノ線みたいな細い糸が通ってるのに気づいた。

ルイ
「これって・・・。罠・・?」

よく見ると足元だけではなく結構いろんな位置にある。
ためしに軽く触れてみる

ルイ
「痛っ・・!」

指から血が流れる。
これは・・・凄い切れ味を持ってる線だ・・。
気づかずうっかり進んでいたら・・・。
あまりのおぞましさにぞっとする。

ルイ
「こ、怖いですね・・・。」

カバンからハサミを取り出しピアノ線を切る。
全てしっかり切ったことを確認する。切り残しがあったら悲惨だ。
念入りに調べないことを確認して前進する。
しばらく進んでいくと通路が水に陥没している。どうやら泳がないとだめらしい。

ルイ
「うーん・・。どれくらい長いんでしょうか・・・。それに危険とかも・・」

もし毒をもった生物がいたら溺死しかねない。

ルイ
「こういう時こそ魔法ですね。」

生命探知と水中呼吸の魔法を唱える。
危険な生命がいる場合音で知らせてくれる。


・・・・・・。何の音もしない。どうやらいないようだ。
安心して潜る。

道は暗いが魔法の光で照らしてく。
しかし泳いでも泳いでもずっと道は下り坂で陸地に上がる気配がない。
暗い場所で水に浸かるというのは恐怖を巻き起こす。
魔法のお陰で水中呼吸は出来ても恐怖は少し隠せない。
段々焦りが出てくる。

しかしその時突然道が真上になりようやく陸地に上がれた。

ルイ
「ちょ、ちょっと怖かったかな・・・」

今日はそこでテントを張って一泊した。




翌日。

テントを畳み再び前に進んでいく。
二時間ぐらい歩くと行き止まりについた。

・・・祭壇がある・・・。

ルイ
「この祭壇・・。蓋が取れますね。」

重い蓋を動かして中身を確認する。
そこには死体と簪があった。しかしこの死体。顔は全然痩せこけておらず白骨化もしていない。
装備も全然古くなくつい最近の物だ。

ルイ
「これって・・・もしかして・・・。新聞に書いてあった盗賊の死体・・・?
だとするとこの簪・・。鋼管の霊簪!」

あまりの嬉しさに飛び上がる

ルイ
「やった!大きなコレクションが手に入った!」

鋼管の霊簪に触れる。
・・・突然体が動かなくなった。

ルイ
「・・・!?」

何かと干渉している。
・・・しばらく動けない状態が続く。次の瞬間頭に何か電流が走る。
強い電気ショックを受けそのまま気を失う。









キュピル
「ここから先ルイの記憶は途切れている・・・」

気が付くと近くに居たルイはいなくなっていた。
変わりに扉があった。その扉を開けると謎の女性が立っていた・・・。
その女性に側に倒れているルイの姿もあった。



続く



追伸

ホラーっす。
けど物凄く真剣にストーリーを考えてみる。どうなるか分からんけど


第七話


倒れてるルイの側に一人の女性が立っていた。
手には簪を持っていてその先端には長い針が一本突き出していた。
・・・もしやこれは鋼管の霊簪・・・?
だとすると・・この人は・・。

しばらくすると謎の女性がこちらに気づいた。
一歩ずつ確実にこっちに歩み寄ってくる・・・。
幽霊刀を抜刀し警戒する。

謎の女性
「・・・その剣を渡しなさい。」
キュピル
「断る」
謎の女性
「死ね」

謎の女性が手に持ってる長い針のついた簪で攻撃してきた

キュピル
「うぐっ!いきなりか・・!!」

針が肩を貫通する。
こんなイキナリ攻撃してくる奴は久々に見た。
もがいて針を引き抜こうとするが針はびくともしない。
謎の女性はひたすらこっちを睨み続けている。

謎の女性
「・・・吸い取れない・・・?」
キュピル
「こんちくしょう!!」

思いっきり剣を振り回す。剣が女性の横っ腹を切り裂く

謎の女性
「当たった・・・!?」

どういうことだ?かなり戸惑ってるようだが・・。
本来こっちが戸惑う側なのに。
だけど大チャンスなのは変わりない。そのまま蹴りを浴びせる。

・・・が、まるで空を蹴ったかのように蹴りが女性を通り抜ける。
絶対に当たると思っていただけに驚く。女性が針を抜く。
一気に間合いを離す。今は一旦距離を置こう。

謎の女性
「どうして魂が吸い取れない・・・。」

あの簪がルイの言ってた通りだとすると自分は完全に今ので魂を吸い取られ
完全の死を迎えていたはずだ・・。だけど何故か吸い取られなかった。
本当に何故だか知らないがラッキーと見よう。結果よければ全てよし。
足元にルイが倒れてる。近くには銃が落ちている。

謎の女性
「・・・・・」

戸惑っている。今なら拾えるだろう。それに運動神経はあまり良くないようだ。
急いでルイの手から銃を奪い取る。使い方は全く分からないが引き金を引けばいいのだろう。
女性に向けて銃口を向け引き金を引きまくる。無属性の弾が女性に向かって乱射される。

しかし、弾は全て女性を通り抜けていく。まるで幽霊みたいだ・・・。
・・・いや、まて。本当に幽霊なのかもしれない。
だとすれば蹴りが通り抜けたのも納得いく。相手はまだ混乱いている。一気に接近して
この幽霊刀で切りつけてやろう。

地面を思いっきり蹴って急接近する。女性は針をもう一度こちらに向けて刺してきた!
が、それを横にステップすることによって回避する。

キュピル
「・・・・!?」

剣が急に凄い重くなった。剣を見ると剣に針が刺さっていた。

謎の女性
「剣の能力は頂いたわ・・・」

急いで相手との距離を離し針を引き抜く。
・・・剣から全く霊能力が感じられない・・・。もしや本当に吸い取られたのか?
とにかく攻撃あるのみだ。当たるか当たらないかも確認する必要もある。

キュピル
「うおりゃぁ!!」

思いっきり斬る。だが、通り抜ける。確かに女性のいる位置を斬っている・・。
まずい、幽霊刀の力を吸われた!

謎の女性
「幽霊刀の力は頂いた・・・。もう用はない」

まずい、敵の猛撃が始まるぞ・・。
とにかく防ぐ準備しないと!

・・・ところが敵はその場から立ち去った。徐々に消えていく感じで
しばらくすると完全に消えていった。

キュピル
「逃げた・・・のか?」


こんな圧倒的有利な状態で逃げるっていうことは何か目的があるはずだ。
謎の女性が居なくなった瞬間突然世界が歪み出した。
歪んだ空間から白い光があふれ出す。光に包まれる前にルイが起き上がるのが少し確認できた。
一瞬こっちに気づいたようだが喋る間もなく白い光に包まれた。










ルイ
「起きてください、キュピルさん!」
キュピル
「・・・ぬぬ・・・。」

腰が痛い。何かあれば必ず腰が痛い・・。
起き上がると側にルイがいた。

キュピル
「ここは・・・。さっきの洞窟に戻ってきたみたいだ・・」

この洞窟はしっかり覚えてる。ルイと激闘したあの場所だ。
ってことは元の世界に戻ったことになるな。さっきの世界は何だったんだ?

ルイ
「大丈夫ですか・・・?魔法の傷がありますけど・・何が・・・?」
キュピル
「ルイ、君にやられた傷跡なんだが・・・」
ルイ
「え!?」

ルイも記憶を頼りに思い出そうとしてるみたいだが思い出せないらしい。
あの世界に居た時見せてもらったルイの記憶が確かなら簪触れた所で記憶がないはずだ。

キュピル
「簪触れた所で記憶がなくなってるよな?」
ルイ
「え?どうしてそれを・・。新しい霊術ですか?」
キュピル
「ルイの能力吸収っていう技に当たって気が付いたら予測に過ぎないけどルイの精神の世界に入った」
ルイ
「能力吸収・・?それって霊術の技・・。私霊術扱ったんですか?」
キュピル
「霊術の使える人物に操られていたからね。」


ルイに自分がここに来てから何があったかを全て話した。
ワープした瞬間いきなりルイにホールドアップされた事。
能力吸収の事。
ルイの精神世界の事。
知る限りを全て。


ルイ
「そうだったんですか・・・。ごめんなさい・・。どこか致命傷とか負っていませんか?」
キュピル
「多分大丈夫だ。少し腰が痛いけど」
ルイ
「致命傷は負っていないようでよかった・・。ところでキュピルさん。幽霊刀は?」
キュピル
「おかしいな・・・。確かに手に握っていた状態で気を失ったはずだ・・」

もしかしたら奪われたかもしれない。

キュピル
「とにかく今は一旦脱出したほうがよさそうだ」
ルイ
「えー」
キュピル
「えーじゃない」

ルイ
「でも確かにお互いの容態を考えると一旦戻った方が得策みたいですね」
キュピル
「失ったものも多いがなぁ。剣といい能力といい・・・。さぁ、ウィング使って帰ろう」

ウィングは確か床に置いていたはずだ。
ところがいくら探しても見当たらない。

キュピル
「ない・・・ない・・・ない!!」
ルイ
「確かにここにウィングを置いたんですか?」
キュピル
「ルイに脅迫されて、ここにウィング置けって言われて・・」
ルイ
「・・・なんかごめんなさい」
キュピル
「操られていたからしょうがない。しかし・・・ないってのは困る・・・」
ルイ
「予備のウィングは?」
キュピル
「予備含め全て置いていたからなぁ・・。」
ルイ
「なら一旦この洞窟から出ましょう。一応アノマラド大陸なので大変ですけど
歩いて自宅に戻る事も一応可能なはずです」
キュピル
「最寄の街に行って準備とか整える必要ありそうだけどな。
よし、一旦出よう。この洞窟から」
ルイ
「了解です。出口はすぐそこです」


==歩いて五分後



ルイ
「あああああぁぁぁぁぁ!!!」
キュピル
「ぎええ。びっくりした。何事?」
ルイ
「で、出口がふさがれてる!!」
キュピル
ナ、ナンダッテー。ここ出口だったのか・・・。てっきり行き止まりかと思った・・」
ルイ
「土砂で崩れてますね・・・。ここを掘って進むのは難しいと思います。」
キュピル
「他に出口ってあった?」
ルイ
「出口は・・・。分かりません・・・。でも簪があった場所まで移動した時
まだ奥に道があったような気もします。もしかしたらそこから出口に繋がってるかも。」
キュピル
「よし、そこに行こう」
ルイ
「了解です、私が前を先導します」

ルイが前を歩いていく。その後を付いて行く。


歩いて再び五分経った所でルイが何かを感じ取ったらしい。

ルイ
「ん?」
キュピル
「どうした?」
ルイ
「何か音がします・・」
キュピル
「音?」

耳を澄ませる。
・・・・確かに何か音が聞こえる・・。
キーーーンっと耳障りなノイズ音が聞こえる・・・。

お互い用心しながら前に進む。
細い通路を通り抜け少し広い部屋に出た瞬間白いモヤモヤみたいなのがあるのに気づいた。

ルイ
「あれは・・・」

ルイが白いモヤモヤに接近する。

キュピル
「待て、危険かもしれないぞ」
ルイ
「でも確認しないと何だか分かりませんから。」

ルイが白いモヤモヤに一定距離近づいた瞬間突然白いモヤモヤから人の声を発した。
恐怖の声。聞くだけでこっちも不安になってしまうような精神を不安定にさせる声。
白いモヤモヤが段々人の姿になってきた・・・。これは・・・。幽霊か!?
突然白いモヤモヤがルイに向かって突進してきた!
ルイが銃を抜き取り発砲しようとするが先に腕を掴まれて取っ組み合いになっている。
すぐさま幽霊の後ろに回って背中を殴る。久々の格闘だ。
敵の横っ腹にパンチが入る。すぐに頭に蹴りをいれる。

幽霊がルイから離れる。その瞬間ルイが銃を乱射する。
弾が全て幽霊に辺り霧状になって消えた。

ルイ
「危なかった・・・。助かりました」
キュピル
「何だったんだ今の・・。」
ルイ
「分かりません・・・。だけどこんな敵は前通った時いなかった・・・」
キュピル
「今は事情が違うようだ。あの謎の女性の仕業かもしれん・・」
ルイ
「幽霊刀の力を吸い取ったんですよね?あの剣は鋼管の霊簪と同じく
斬りつけた人の魂を・・・」
キュピル
「聞いた。あの女性から」
ルイ
「なら話は早いですね。もしかしたらその魂が今放出されているのかも・・」
キュピル
「何のためにか知らないがとにかく進まないといけないのは変わりない。行こう」
ルイ
「あ、キュピルさん。これを」

ルイが長くて重たい銃を渡してきた。

キュピル
「ん?何だこれは?」
ルイ
「ショットガンです。知ってますか?」
キュピル
「俺こういう銃系は全く・・・引き金引けばいいのか?」
ルイ
「わわわ、ちょっとまって!私に向けて引き金引かないで下さいよ!!」
キュピル
「あぁ、そうだった。気をつける」
ルイ
「ちょっと怖い・・・」
キュピル
「今度は俺が先導しよう」
ルイ
「了解です」

慎重にゆっくり確認しながら前に進んでいく。
しばらく進んでいくと突然ルイから静止された。

ルイ
「います・・」
キュピル
「よく見えるな・・・」

言われてから初めて気づいた。確かにいる。視力は悪くないんだが・・・。

ルイ
「お屋敷にいた頃訓練を受けましたからね・・・」
キュピル
「それメイドの職業じゃないだろ・・・」
ルイ
「言わないでください。どうします?」
キュピル
「三体か・・・。よし、たまには俺も活躍しないと」
ルイ
「十分活躍してますから無茶しないでください。・・・って、あぁ!もう突撃してる!!」
キュピル
「うおおおおぉぉぉ!!」

幽霊に向かって吶喊(とっかん)する。             (吶喊=叫びながら突撃すること
幽霊が此方に気づき何体か指先から魔法を飛ばしてきた。
それを簡単に回避すると手にもっているショットガンで敵を思いっきり殴り飛ばした。
幽霊が吹っ飛ぶ。すぐに別の幽霊が接近してきた。そして思いっきりハンマーみたいな物で
攻撃してきた!が、それを簡単に回避し蹴りを浴びせる。怯んだ所を一気にショットガンで
殴り飛ばした。

ルイ
「キュピルさん!使い方違います!引き金を引いて撃ってください!」
キュピル
「忘れていた。すっかり刀の癖が・・・。」

もう一体の敵はルイと戦ってるようだ。
最初に吹っ飛ばした幽霊がまた魔法を飛ばしてきた。回避するがもう一体の幽霊も魔法を飛ばしてきた。
少し避けるのが難しい。弾幕が厚くなってきた。

キュピル
「こんちくしょう、弾幕には弾幕で対抗するぞ」

ショットガンの引き金を引く。弾が散弾して飛んでいく。
七発撃った所で引き金を引いても弾が出なくなった。

キュピル
「ルイ!何か別の銃を!リロードの仕方がわからん!」
ルイ
「今度ちょっと一緒に銃の特訓しましょう!M60E4渡します!!」
キュピル
「わからん!とにかく借りるぞ!」

ルイが何かでかい銃を投げてきた。よく荷物に入ったな。
急いで受け取る。まずいまずい。この弾幕はマジでやばい。
敵の飛ばしてる弾に当たったら火傷じゃ済まされないな。
とにかく引き金を引く。この銃はマシンガンタイプか。

キュピル
「こんの!!」

横に避けながら銃を乱射する。
幽霊も横にゆらゆらと動きながら避けていたが此方の方が命中率は上のようだ。
二体ともすぐに倒れた。

ルイのほうはまだ終わっていないようだ。
こいつは他の幽霊と比べると少し大きい・・・。
横からさっきのマシンガンで援護射撃をする。

何発かHITしているのだが全く怯んでいない。ダメージ入っているのだろうか?
どうやらルイを倒すことに躍起になってるようだ。これはチャンスだ。
一気に接近し重たい銃で思いっきりぶん殴る。
ようやく怯んだ。

キュピル
「ルイ!この銃俺には無理だ!何か接近武器貸してくれ!」
ルイ
「ナイフがあります!」

ルイがナイフを上に投げる。すかさずこっちも銃を上に投げる。
お互い同時にキャッチし同時に攻撃を開始した。
前でルイがM60E4を乱射し俺は後ろでナイフで滅多切りしていた。
この連続攻撃には耐え切れなかったようでそのまま宙に消えていった。
勝った・・・。そう実感が沸く瞬間に突然体に痛みが。

キュピル
「うぐあぁあ!!」
ルイ
「あ、ごめん!!」

突然幽霊が倒れて消えたわけだからいくつかの弾が自分に当たったようだ・・。
両肩と腹と左の太ももを撃たれた。

キュピル
「こ、これは・・。」

最近怪我が多いなぁ・・・。

ルイ
「と、とりあえず治療を・・・」

銃って滅茶苦茶強いな・・。
その後弾を抜く作業に何度か絶叫した。
ただ・・・・。

もう戦うことは無理かもしれん。怪我が重傷すぎる。



続く


第8話


ルイ
「これで大丈夫です。」
キュピル
「包帯だらけ。気分はCCO様ー」
ルイ
「C、CCO様?誰ですか?」
キュピル
「気にしてはいけない。とりあえず行かないと」

立ち上がる。が、しかし

キュピル
「っぐ」

左足に力が入らない。それだけじゃなく歩くと体の彼方此方が痛い。
すぐにまた転んだ。

ルイ
「無理しないでください!残りの先導と戦闘は私に任せてください」
キュピル
少しダジャレっぽいな。しかし、さっきの戦闘を見る限りだと一人はきついぞ」
ルイ
「私は全然大丈夫です。むしろキュピルさんが少し危なそうですね・・。
この銃を使ってください。今のキュピルさんには絶対もってこいです」

そういうとカバンからいくつかのパーツを取り出し組み立てを行っている。
しばらくすると物凄く銃口の長い銃にスコープがついている何かが完成した。

ルイ
「SVDです。狙撃銃ですよ」
キュピル
「狙撃銃?何にせよその銃はマツバ杖にもってこいだな」
ルイ
「発想が凄いですね・・。使い方はスコープを覗いて引き金を引くだけです。弾も持たせておきます」

弾が入ってる箱を貰うとルイが先導しに先に進んだ。
ワシはとにかくその後をついていこう・・。
なんか本当に爺さんっぽくなってきたなぁ。


==歩いて十分ほど

キュピル
「もうルイの姿が見えない・・」

張り切って先導してもらってるのはいいんだけど少し待ってほしいなぁ。
先に進んで敵を殲滅しようとしてるのだろうか・・・。ワシはまだまだ戦えるぞ。


むぅ、しかしルイ本当に先に行ってしまったな。
追いつくまで暫らく何か推測しよう・・。・・・そうだ、あの謎の女性について推測してみよう。

あの女性は鋼管の霊簪を持っていてその簪で敵を仕留めると魂を捕縛するんだっけか・・。
その話はオトギ話だと思われていたんだけど実話ってことになってるが・・。
ってことはあの女性は過去に何度も誰かの魂を捕縛していることになるな。
何のために魂を捕縛しているんだ・・・?ルイみたいにただの趣味?
いや、しかしそうなるといくつか疑問が・・。
今この洞窟は幽霊や亡霊が大量に溢れていて行く先を邪魔している。
ルイの証言によると一番最初にこの洞窟を通った時は幽霊等は居なかったらしい。
現にルイの精神世界で見たあのルイの記憶にも幽霊は確かにいなかった・・。
ルイとワシが合流するまでの間はおよそ大体二日ぐらいのはずだ。いや、もっと短いか?
その短い間に幽霊や亡霊が急に湧き出たってのは少しおかしい。
と、なるとやはり意図的に誰かがあの亡霊を放出したことになる・・。

そして一番放出してる可能性が高いのはあの謎の女性だ。
また最初に逆戻りになるけど何で魂を集めているんだろうか・・・。
しかもその魂を放出してわし等の行く先を邪魔している・・。
・・・・、そういえば幽霊刀の能力をあいつは吸い取ったな・・・。
ルイの精神世界で遭遇した時一番最初に幽霊刀を手渡すように言ったな・・。
それはまたなんでだ?最終的には鋼管の霊簪の能力のせいで殆ど剣を渡したのと
同じ結果になってしまったが・・・。

分からない所が多いな。今のところ一番知りたいのは
何故魂を集めてるのか。そしてどうして今をそれを開放しているのか?
そして、何故幽霊刀の事を知っていて刀を手渡すように要求したのか?
後者の方はルイに聞けばもしかしたら分かるかもしれないな・・・。

あぁー、なんか久々に推測した。
気が付いたら大分前に歩いてる。

するとその時水のある場所までやってきた。
確かここを物凄く長く泳いでいけばある広い場所にたどり着くんだっけか・・。
・・・・。

まて、俺水中呼吸の魔法知らないぞ。


ルイー!何故俺を置いてったー!!
思わず心の叫び

記憶が確かならここは物凄く深かったな・・・。
ルイがそれに気づいて戻ってくるのを待つしかない・・・。


・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


一体いつまで待てばいいんだ?
・・・もしルイが先に行って場所で力尽きていたら・・・。
そう考えるとゾッとするな・・。必然的に俺も力尽きることになる・・。

・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

こない・・。これは何か知恵を振り絞って行ったほうがいいな。
何か方法・・・。






==その頃ルイは・・



ルイ
「はぁ・・・はぁ・・。よし・・・ここまで制圧した・・」

鋼管の霊簪が置いてあった場所までやってきた。
何体もの亡霊と戦いついにここまできた。部屋を見渡すと
記憶の通り奥に小さな空洞があった。ここから脱出路がないか調べないと。
キュピルさんにはかなりの迷惑をかけてしまった・・・。ここは私が率先して前に出て
少しでも罪滅ぼしをしないと。
自分専用の銃器を構え走って中に入っていく。

長い道を走ると今までの中で一番広い空間に出た。

ルイ
「ここは・・・」

物凄く広い。天井に小さな穴が空いていてそこから光が漏れてきてる。
光の先には一つの墓が立っていた。光に照らされて不気味に輝いてる・・。
だが、しかし幻想的ともいえる。

ルイ
「この墓は一体誰のなんだろう・・・」

接近する。が、一歩踏み出す前に気が付いた。
墓の近くに何か薄い膜みたいなものが・・・。

ルイ
「これは・・・」

軽く触れてみる。もしかしてまた切れ味のいい糸みたいなものなのだろうか?
が、触れた瞬間一気に意識が薄れた。

ルイ
「こ・・・れは・・・。」

指を引っ込める。これは一体・・・。眠いだとかそういった物ではなく
ただただ疲れが溜まって意識が抜け落ちていくような感覚・・・。
後ろに下がる。墓の近くに誰か立ってる。さっきまでいなかったのに・・。
女性だ。・・・もしかしてこれキュピルさんが言っていた・・・・謎の女性・・?。

銃を構える。ゆっくり前進してくる。手には鋼管の霊簪が・・。
鋭く長い針をこちらに向けている。敵意を感じる。
謎の女性が突然刺しに来た!それを避け銃の引き金を引く。
魔法の弾が射出され見切りにくい弾道で飛んでいく。しかし突然消えたかのように瞬間移動し
避けられる。今まで見たどんな敵よりも強い・・・!

引き金を引くたびに魔法と唱え弾を予測不可能な軌道で飛んでいくように命じているが
あらゆる手段を試しても全て避けられる。

ルイ
「リロード・・!」

打ちつくす度に腰のポケットから予備のマガジンを取り出し装着させる。
そしてまた狙いを定め発砲する。後ろに走りながら必死に距離を離す。
突然後ろに衝撃が走った。壁だ!謎の女性が隙を見計らい一気に突撃してきた!
突き出してくる針をしゃがんで避け前に前転する。

前方に転がった後途中で仰向けになり何発か発砲し奇襲する。

謎の女性
「・・・・」

当たった・・・。・・・っと、思ったら玉がすり抜けてる・・!!
攻撃が効かないってこと・・!?

ルイ
「どうすれば・・・」

また後ろに下がりながら発砲する。どこか弱点・・。
あらゆる場所を打ちつくしてみる。しかし大抵は回避されるかすり抜けるかのどちらかだ。

ルイ
「もうこれしか・・!!」

背中に背負ってたカバンから素早くグレネードランチャーを取り出す。
素早く武器をチェンジさせ引き金を引く。銃口からグレネードが射出される。
弾が謎の女性の近くに転がる。爆発して!

・・・・!?

爆発しない・・。不発・・?

ルイ
「ちょっと待って・・・」

何度も発射するが弾が爆発しない。どうして・・。
なすすべもなく後ろに後退していく。その時体の力が一気に抜けていく感覚に襲われた。

ルイ
「しまった・・・!」

墓の近くにある膜を通り抜け中に入ったようだ。一気に意識が滑り落ちてゆく。
この感覚・・。今思えば初めて鋼管の霊簪を手に取った時と似ている・・・。
もしかしてまた操られてしまうのでは・・・。

謎の女性がルイ目掛けて針を突き出してきた!
ここまでなのか・・・。

針が体を貫通する。心臓に近い・・。

謎の女性
「霊術・魂吸収・・」

そのまま意識を失った。





ダンッ



謎の女性
「!?」

手に持っていた鋼管の霊簪が吹っ飛ぶ。
音のした方向に目をやる


びしょ濡れのキュピルがいた。

キュピル
「ちくしょう、頭狙ったつもりだったのに。うおおおおぉぉぉぉ!!」

全力で走り謎の女性目掛けてとび蹴りを仕掛けた!

謎の女性
「うぐっ!」

とび蹴りが炸裂し謎の女性が倒れる。今のうちにルイを安全な場所まで運ばないと。
墓の近くに足を踏み入れる。よりによって墓の近くで倒れるなんて、縁起悪いな。

背中に背負うとそのまま通ってきた洞窟を戻って空洞の角に寝かせた。

キュピル
「(出血は酷くないようだな・・・)」

針が細いお陰で出血事態は酷くない。しかし内出血が不安だ。
体の機能に何か影響を及ぼさないだろうか・・・。

キュピル
「苦労して泳いだと思ったら今度はあいつとまた戦わないといけないのか。前途多難」

とにかく止血バンドだけ張って再び墓のあった場所に移動する。

キュピル
「おっとと・・。ルイの荷物。借りるぜ」

銃器が一杯入ってる荷物を背負い今度こそ移動した。





先ほどの場所に戻ると謎の女性が墓の近くに立っていた。

謎の女性
「・・・また会った」
キュピル
「野望は一体何だ。何が目的だ」

狙撃銃をつきつける。

謎の女性
「今まで足りなかった・・・。」
キュピル
「何が」
謎の女性
「でも今必要な魂の数と道具が揃った・・・。見てろ」

謎の女性が鋼管の霊簪と幽霊刀を振りかざす。俺の幽霊刀があんな所に!
鋼管の霊簪から出てる長い針が墓に目掛けて・・・



ダンッ!




謎の女性
「はっ!?」
キュピル
「やらせてたまるか!どうせ俺にとってろくでもない事だろう!」

正確なショットで鋼管の霊簪を打ちぬき吹き飛ばした

謎の女性
「・・・邪魔をするなああ!!」
キュピル
「!」

凄い形相で襲い掛かってきた!持っていた銃でぶん殴る。
が、すり抜けた!

キュピル
「うおっ!」

幽霊刀の一撃を辛うじて避ける。
そうか、こいつも幽霊の類か。それならば・・・!

床に落ちていた鋼管の霊簪を手に取る。フェンシングみたいな感じに使えば大丈夫だろう。

謎の女性
「持っても何にもない・・!?」
キュピル
「ワシはどうやら特別体質のようだな。原因は知らんがいい事聞いた。今度はこっちの番だ」

軽快なステップで謎の女性に向けて突きを繰り出す。
左肩に命中する。

キュピル
「うおぉぉぉお!!」
謎の女性
「うあっ・・ぐっ!!」

謎の女性が肩に刺さってる針を力づくで引き抜く。なんて怪力だ!
が、次の瞬間信じられない事が起きた。

キュピル
「え!?」

自らの心臓に向けて針を突き通した!
だが、その後ろには墓もあり墓事貫通させていた・・・。

謎の女性
「・・・これで・・役目は・・」


フェードアウトしていくように謎の女性が消えていった。
手から幽霊刀が滑り落ちてゆく。


キュピル
「一体どういうことなんだ・・。何が起きてるか分からんぞ・・」

しばらくすると突然墓から凄まじい光があふれ出した!
目も開けられないほどの強さだ。
少し経つと強い光も収まってきた。目を開ける。

謎の男性
「・・・・」

墓の近くにローブを着た謎の男性が経っていた。

キュピル
「誰なんだ?」
謎の男性
「魂は満ち、時は流れ、世界と次元は繋がれた」
キュピル
「この人も人の話聞かないな・・・。誰なんだ?どういうことなんだ?」
謎の男性
「・・・・・」

謎の男性が辺りを見回す。

謎の男性
「そうか・・・。あの子は自らを見失いそして消えたのか・・。
申し遅れた。私の名はアーリン・アネレル。霊術師だ」
キュピル
「霊術師・・?」
アーリン・アネレル
「私は今の時代年数で数えるとおよそ3000年ほど前に死んだ」
キュピル
「3000年!?」

凄まじい年数だ・・。

アーリン・アネレル
「君達が今まで何度も戦ってきたあの女性は私の助手だった・・。」
キュピル
「助手『だった』?今は違うってことになるが・・」
アーリン・アネレル
「反乱があったのだ。1から説明する。
私は先ほど申した通り霊術師だ。霊と魔法に関係する物を研究していた。
あの子もまた霊術師の一人であり私の頼れる助手だった・・・。」
キュピル
「しかし、あるとき突然反乱が起きた・・・。とか?」
アーリン・アネレル
「いや、私はそのまま寿命を迎えて死んだ。」
キュピル
「む・・・」

少し予想とは違う展開かもしれん。

アーリン・アネレル
「霊術師が一世一代の大仕事。それは自らの死を利用してまでも霊術を研究する事。
それは死してなお生き続けることだ。
そして私は始めて死してなお行き続ける事に成功した・・。肉体は滅びても
魂は生き続けている。」
キュピル
「そいつは凄いな・・」

現にこうして再び生きて現れている。魂でだが。

アーリン・アネレル
「私が死ぬ前にあの子にある事を二つ頼みごとをした。
一つは霊術師の長を継いでもらいたいこと。
そしてもう一つは霊術の錬金を引き継いでもらう事」
キュピル
「霊術の錬金・・?」
アーリン・アネレル
「私が生涯研究し続けてた事・・。それは魂を実体化させ可視化し
生きていた頃と全く変わらず世の中を生活すること。
それを可能とする方法を私は見つけた。それが霊術の錬金・・。
だが、しかしあと少しって所で私は不死の病にかかり寿命を迎える事になった。
残りの実験は全てあの子に託し私は最後の霊術を唱え死んだ。そしてあの子は
見事に霊術の錬金を完成させ鋼管の霊簪と幽霊刀を作り上げ
そして私を復活させた・・。」

壮絶だ・・。想像すらできない。

アーリン・アネレル
「あの子に申し訳ないと思っている。だがそれと同時に怒りも覚えている」
キュピル
「怒り?」
アーリン・アネレル
「そうだ。死霊術だ。私が霊術師の長を務めていた時。死霊術に関しては
例外なく全て禁止した。死霊術は人を幸せにしない・・。私利私欲のためにしか動かない。
人の能力を奪い人の魂を無理やり引き剥がし人の精神を崩壊させ人を殺す!
あの子が3000年もの間生き続けたのは自らの魂を鋼管の霊簪に納め
そしてそれに触れた物を操り肉体を乗っ取りそして自らの魂を生き返らせた・・。私よりも早く」

あの謎の女性が使っていた殆どの技だ・・。

アーリン・アネレル
「私はあの子よりも力がありまたそれと同時に強大な死霊術を扱う事も出来る。
それゆえに死霊術の危険さは誰よりも知っている・・・。」

しばらく沈黙が続く

アーリン・アネレル
「しかしあの子は知っていたはずだ・・。そのような死霊術を扱って私を生き返らせても
天と地がひっくり返るような怒りに触れ自らが危機に追い込まれることを・・・」

確かに・・。それは一体・・・。




その時、突然アーリン・アネレルの左胸から針が突き出た!


続く


第九話


キュピル
「!?」
アーリン・アネレル
「なっ・・!?」

アーリン・アネレルの後ろを確認する。
そこには鋼管の霊簪が浮かんでいた。
自分の手元を確認する。さっきまで握っていたはずの鋼管の霊簪がない・・。

キュピル
「何故浮いてる・・!?」
アーリン・アネレル
「ぐうあぁ!くそ、貴様がそこまで死霊術を扱えるようになっていたとは・・!!」

うっすらとだが謎の女性の姿が見える。
魂・・?それとも・・復活したのか?俺には全然わからない。
だが次に何をしでかすのかは分かる。能力吸収だ。

キュピル
「くそ、これでも喰らえ!」

持っていた狙撃銃で謎の女性に連射する。
しかし全ての弾が通り抜け手ごたえが全く無かった。

謎の女性
「死霊術・存在吸収
アーリン・アネレル
「レベッカ!!やめろ!」

アーリン・アネレルが叫ぶ。針を抜こうと奮闘してるが取れない。
だが、あと少しで取れそうだ!
針から引き抜くのを手伝おうとする。

アーリン・アネレル
「触れるな!お前も吸収されることになる!うぐあ!」

アーリン・アネレルが徐々に消えかかってきている。どうすれば・・。

て突然アーリン・アネレルが謎の光に包まれて消えていった。
そして謎の女性・・・いや、レベッカの姿もなかった。カランと鋼管の霊簪が落ちる。
存在吸収・・・。能力どころか存在すら吸収する・・。何て恐ろしい技なんだ・・。
だが呪いって・・・?

ひとまず奴の武器となるこの鋼管の霊簪と近くに落ちてある幽霊刀は回収しよう。
幽霊刀を手に取る。・・・力が沸き起こらない。少し愛用していただけに悲しい。

キュピル
「(そうだ・・。レベッカは今どこに・・・)」

姿が見えない。今向こうは俺を急襲しようと狙っているのか?
それともただ準備しているのか?または逃げたか・・?
全てが分からない。狙撃銃を色んな方向に向けていつでも
迎撃できるように態勢を整える。

キュピル
「・・・・・」


一旦戻ろう。ルイのいる場所に。すぐには襲ってこなさそうだ。





ルイ
「・・・・・・・・」

倒れてるルイの側にしゃがむ。

キュピル
「いつも肝心な時に頼りになる人は皆倒れていたり捕まっていたり・・・。」

流石に俺一人で奮闘するのはもう難しい。怪我だってある。疲れだってある。
だけどここで倒れるわけにもいかない。

キュピル
「・・・・む?」

鋼管の霊簪が震えている。・・・・そうだ。

キュピル
「この簪見て思い出した・・。そういえばこの簪に挿されてルイは魂を吸い取られた・・。
それなら逆に注入するのは・・?」

鋼管の霊簪の針を出す。鋭い針をゆっくりとルイに近づける。

キュピル
「失敗したら即、死に繋がるな・・。」

慎重に針を刺す。まるで注射だな。身体の機能に影響を及ぼさない場所に刺す。
意識を集中させる。霊能力の流れが激しくなってきている。
数ある吸い取られた魂の中から一つだけ魂を取り出す。・・・俺の探している物はこれだ。

キュピル
「霊術・蘇生・・・!」

上級霊術を唱える。
・・・。突然鋼管の霊簪が光り出した!

キュピル
「っ!」

思わず目をつぶる。
・・・・しばらくすると光も収まり目をあける。針を抜く。

ルイ
「・・・・っ・・。ここは・・?
キュピル
「幽霊体験はどうだった」

皮肉をぶつける

ルイ
「幽霊は好きですよ」
キュピル
「懲りないな。立てるか?」
ルイ
「大丈b・・・」

経った瞬間前に倒れる。

ルイ
「だ、大丈夫です。今のは滑っただけで・・」

そういいつつも立つたびに倒れる。
互いに怪我の被害は甚大だ・・。

キュピル
「ルイ。例の奴が再び襲ってくる前にここを抜け出そう。肩貸してやる」
ルイ
「キュピルさんだって私の誤射の痛みが・・」
キュピル
「ワシの得意技は根性だ」

別名・やせ我慢だが。
その時大きな音がした。

キュピル
「!?」

突然墓が大きな音を立てて崩れた。墓だけじゃない。
地面にも亀裂が走っている。崩れる・・!?
墓を中心にドンドン床が崩れていく。
驚きつつも後ろに下がってルイが寝ていた空洞まで下がる。
通路まで逃げると亀裂はそこで止まりなんとか落ちずにはすんだ。通路から下を覗く

キュピル
「なんだあれは・・・」

人間とも化け物ともつかない人が一人立っている。だが面影はある。レベッカだ。
不気味な笑いを浮かべている。まるで最強の力を手に入れたとでも言ってるようだ。
しかし狂っている。何言ってるのか少し分からない。だが一言はっきりと聞き取れた。

レベッカ
「野望は果たせる!今までの、今までの恨みを全部晴らしてやる!!貴様にもだ!」

そういって高笑いしだした。むむむ・・。一見ふざけてるように見えるが
マナの流れがドンドン強くなってきている・・・。全部レベッカの周りから出てる。これはまずいんじゃ・・。

崩れる前は墓を通り過ぎた場所に通路がもう一つあった。
まだそこから先は探索していない。出口はそこにあるかもしれない。
だが、床は崩れそこには最後の敵がいる。無視して通り抜けるのは無理だ。
・・・・それならば・・!

ルイ
「キュピルさん。私に任せてください。・・・って!」

キュピルに話しかけたと思ったら既に下に下りて飛び降りていた。
隣には銃とか入ってる荷物が置いてあった。・・・これ私のだ。




キュピル
「うぐっ!」

流石に高い場所から降りたら足が痛い。
頑張れ俺・・。この戦いが終わったら暫らく老後生活を送ろう・・。

足の痛みを堪えていたらすぐにレベッカが襲い掛かってきた!
長く伸びた鋭い爪で引っ掻いてきた!

キュピル
「!!」

思わず腕でガードする。やばい、腕が・・。

レベッカ
「!?」

爪を腕で防いだ瞬間鉄の弾く音と共にレベッカが後ろに弾かれた。・・・そうだった!

ジェスターを探してた時に魚人と戦いその篭手を貰い装備していたんだった!
あぁ、先にあの時持っていってよかった。まさかここで役に立つなんて。

相手が怯んでる今がチャンス!幽霊刀を抜刀し斬りにいく。霊術の力こそ発揮できないが
普通の刀剣としては扱うことはできる!
思いっきり踏み込み斬りかかる。手ごたえあり!
そのまま追撃をかけようとしたが向こうが立ち直り攻撃してきたので
追撃を中断して回避する。

レベッカ
「3000年前にもお前みたいな奴がいた。
霊術のない奴だと思って油断してたら霊能力が備わっていて私の計画を見事に破壊してくれた!」
キュピル
「・・・・・・」

もう一度斬りかかる。
だが今度は長い爪で阻止された。

レベッカ
「アーリンが死ぬ前に私は鋼管の霊簪を作り上げた。
儀式でアーリンが死ぬ時この鋼管の霊簪でアーリンを仕留め儀式を終わらせたと思わせて
こっそり吸収してやるつもりだった!計画が通っていれば今こんなことに!」

長い爪で剣を押し返す。爪の追撃をかわす。
・・・!徐々に幽霊刀に霊能力が復活してきてる・・・。
レベッカが急接近し目と鼻の先まで近づいてきた!篭手でタックルを防ぐ。

キュピル
「っ・・・」
レベッカ
「・・・・・」

ほぼ密着状態。剣を振りかざすことは出来ない。

レベッカ
「返してもらう」

ポケットに入れていた鋼管の霊簪を取られる。すられた!

ルイ
「キュピルさん!援護します!」

上からルイが拳銃で何発か発砲した!
が、レベッカが物凄い力で俺を引寄せ盾にした!

レベッカ
「仲間を撃ってしまいな」
キュピル
「離せ!」

腕を固定されている!まずい、篭手で防げない!

ルイ
「私の弾は魔法の弾ですよ」

そういうと弾の軌道が曲がりレベッカの方に飛んでいった!さすが魔法使い!

レベッカ
「ぐっ!」
キュピル
「こんちくしょう、よくもやってくれたな」

肘で思いっきり顔面を殴る。レベッカが怯んだ。剣で追撃!!
見事に斬撃が入る。後ろによろける。更に突き攻撃を繰り出す。

レベッカ
「なめるな!!」
キュピル
「ぐおっ!」

鋼管の霊簪から物凄いオーラーが流れる。凄いプレッシャーだ・・。
思わず後ろに下がってしまった。
レベッカが簪の針で攻撃してきた!だが、幽霊刀の力を借りて回避し
針を思いっきり叩き切ってやった!

レベッカ
「くそ、あの時も・・あの時もこの小ざかしい幽霊刀のせいで計画が狂わされた!
アーリン・アネレルの死の前日。私の計画に察知したある者が私に襲撃をかけた。
その襲撃者は幽霊刀を作り上げた者。隠れた霊能力者・・!」
キュピル
「その時みたいにくたばっちまえよ!」

幽霊刀の力がドンドン強まる。痛みが消えていく。流れに乗ってドンドン攻撃してやろう。
だが、調子にのって攻めていたら長い爪で引掻かれた。痛い。

キュピル
「ぐっ!」

後ろに下がる。


ルイ
「いっけぇー!RPG-7!!」

ルイがロケットランチャーを発射する。凄まじいものを撃ってきたな。
ロケット弾が一直線にレベッカの方に進む。

レベッカ
「霊術・停止!」

鋼管の霊簪から再び針が現れロケット弾を貫く。爆発するかと思いきや
そのままスパッと真っ二つに分裂し何事もなく地面に落ちた。
だが、今のお陰で攻撃するチャンスが出来た。一気に接近し横に回りながら回転攻撃を繰り出す。
勢いのあるパワーアタック!!

レベッカ
「うあっ!」

レベッカが吹っ飛ぶ。いまだ!!」

キュピル
「とどめだ!!」

レベッカの心臓に思いっきり幽霊刀を刺す。決まった!!

レベッカ
「うああああぁぁぁっ!!」
キュピル
「消えろ、消えろ!」

・・・・・。だけど終わった。
厄介な奴ではあったが総合的に見れば少し楽なほうだっただろう・・。


ルイ
「キュピルさん!さすがですね!」
キュピル
「幽霊刀の力が強まったおかげだ。おかげで今全く痛みを感じない」
ルイ
「とりあえず今そっちに降りますね。次の通路に行くにしてもまずは降りないといけないので。」


ルイの降りた場所からちょうど反対側にもう一つ通路がある。
そこはまだお互い調べていない。もしかしたら出口かもしれない。

ルイがゆっくり岩をつたって降りていく。
五分ぐらいしてようやく地面に降りてきた。

ルイ
「ふぅ・・。・・・!!キュピルさん!!後ろ!!」
キュピル
「!?」

突然ルイが叫び後ろを振り返る。そこにはレベッカがいて再び鋼管の霊簪で攻撃してきた!
あまりの不意打ちに意表をつかれ腹を刺される。

レベッカ
「死霊術・存在吸収!」
キュピル
「くそっ・・!!」

このままじゃアーリンと同じ道を辿る・・・。
体の力が抜けていく。

ルイ
「そこ!」

ルイが何発か拳銃を発砲する。鋼管の霊簪に当たり針が簪から取れた。
すぐに針を体から引き抜いた。

キュピル
「危なかった・・。助かった」
ルイ
「まだです!前!」

レベッカが長い爪で攻撃してきた!
それを篭手でガードする

レベッカ
「3000年前。私は幽霊刀の創設者に殺された。
だが、儀式の日。幽霊刀の創設者は死に私は生きた。何故だか分かるか?
強力な死霊術のおかげで何度でも生き返ることができるんだよ!!」

体重を乗せて勢いよく爪で攻撃してきた。このままじゃまずい!

ルイ
「RPG-7!!」
レベッカ
「無駄!!」

再びレベッカが霊術・停止を唱え真っ二つにする。

ルイ
「甘いですね、今のはフェイクです!」
レベッカ
「!?」

レベッカの真後ろにもう一つのミサイルが飛んでいた。

ルイ
「ニキータミサイル。通称リモコンミサイルです」
キュピル
「そんな馬鹿でかいミサイルよくカバンに入れられたな。謎すぎる」

物理の法則が・・・。
だが、ニキータミサイルがレベッカに見事に命中。跡形もなく吹き飛んだ。

キュピル
「ちょっとグロイな・・・」
ルイ
「ミサイルに当たって死ぬ人はみんなこうです」
キュピル
「まるで何人も見てきたかのようだな・・・」
レベッカ
「貴様も吹き飛びな」
キュピル
「っ!?」
ルイ
「!?」

突然レベッカが後ろに現れ鋼管の霊簪でルイに攻撃した!
ルイは避けきれず足に刺さる。次々と引き抜いては再び別の場所を刺し高速で何度も刺している。

キュピル
「くそっ!!」

幽霊刀で思いっきり突く。心臓に一突きする。再びレベッカが倒れる。

キュピル
「ルイ!」
ルイ
「うぐっ・・・こ、これは・・。ちょっとやばいですね・・」

一突きならともかくこんなにも刺されていると・・。急いで止血バンドを取り出す貼る。

ルイ
「私はいいです・・。とにかく敵の攻撃を避けて・・・」

その瞬間いきなり背中に痛みが走る。しまっ・・・。

レベッカ
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!!!」

レベッカが狂い出す。慌てて篭手でガードするが五箇所ぐらい突かれた。
だめだ・・。幽霊刀の力でももう立ち上がることは・・・。

最後の力を振り絞り思いっきり心臓をまた狙った。
今度もまた命中しレベッカが倒れる。

キュピル
「はぁ・・・・ぐっ!!」

力が入らなくなり地面に倒れる。
ルイも倒れ俺も倒れた・・・。
足音がする。

レベッカ
「無残ね。3000年前も皆こうだったわ。誰一人私を殺す事なんてできなかった・・・」
キュピル
「じゃぁ・・なぜこの3000年間の間・・・。天下を統一できなかった・・・。
野望果たせただろ・・・」
レベッカ
「おしゃべりも終わり。

推測だ。推測しろ。
5秒あれば推測してやる。何故奴はこの3000年間の間野望を果たす事ができなかったのか?
それは・・・・。

脳裏にルイが見せた新聞が蘇る。



『オトギ話は実話。強奪は事実

シェイディンロール地方に纏わるあのオトギ話『鋼管の霊簪』
遠い遠いアノマラド大陸で実際に簪を使っていたと思われる死体を発見。
国の調査によるとオトギ話に書かれている内容の殆どが一致しているという報告を受けている。
極めつけは髪に『鋼管の霊簪』をつけていたという事だ。



アノマラド大陸で国が調査していた所要するにレベッカの死体を発見したというわけだ・・。
しかしレベッカは死んでいた・・・。・・・いや、違う。死んでいたんじゃなくて
発掘されたとしたら?例えば岩に埋もれていて・・・。または川に沈んでいた・・。
いや、死体となっているわけだからレベッカ自身の肉体がどうなろうと平気なはず・・。

・・・もしや、鋼管の霊簪・・。この簪に何らかの異常がきたした場合は・・・?
それこそ落石等で破損してしまったり川の中で錆び付いたり・・・。
そして盗人は現れこの簪を奪取した。当然高く売るならリペアするだろう。

わからない。だけど可能性としてはある。あの鋼管の霊簪がキートリガーなのか・・?

レベッカ
「死ね!!」

針が落ちてくる。
今度こそ体中の力を振り絞って横に転がり立ち上がる。

レベッカ
「しぶとい・・・。だが、いつまで持つか」

レベッカが再び攻撃してきた。
だめだ・・。防戦一方だ・・。キートリガーが分かったとしてもどうしようもできないのか・・。
もはやここまでか。諦めようとした瞬間銃声が鳴り響いた。

ルイ
「キュピル・・・さん・・!!」

ルイが何発もレベッカに撃っている。レベッカが怯んだ!

キュピル
「うおぉぉぉぉ!!!」

思いっきり頭突きをし距離を少し離す。

キュピル
「喰らえ・・!!」

心臓に一突きする。再びレベッカがうめき声を上げて倒れる。
レベッカの握っていた鋼管の霊簪を蹴飛ばし離す。

ルイ
「何を・・・するんですか・・?」
キュピル
「これが最後の切り札だ!!
霊術・粉砕!!」


幽霊刀がこれ以上ないってぐらい光り出す。
ゴォォォっと大きな音を出しながら鋼管の霊簪に刺さる。
互いに共鳴しあってる。

キーーーンと耳障りな音が響き出す。

キュピル
「ぐっ・・!!」

壊れない。


ルイ
「手伝い・・・ます・・!!」

ルイが頑張って立ち上がり簪に向けて何発も撃つ。

キュピル
「うおおおぉぉぉ!!」

















アーリン・アネレル
「3000年の時を経て今ここに死が訪れん」















パキン








体中のエネルギーを使った気がする。
割れた。鋼管の霊簪がついに割れた。

洞窟に声が響き渡る






レベッカ
「があああああああああぁぁぁぁぁあ!!!!」








推測の読みはあたった・・・・。


恐らく復活してこないだろう・・・。
だけど、それと同時に俺等も復活できるかどうか・・。
もうこの崖を上って別の通路にいく力なんて互いに残ってなんかない。

ルイ
「キュピルさん・・・やりましたね・・・」

ルイが倒れる。まだ息はしてるみたいだが・・。

キュピル
「全く・・・。鋼管の霊簪手に入れるのが目的だったんだろ・・。損しただけじゃないか・・・。」

俺も倒れる。

ルイ
「・・・・・」
キュピル
「・・・・・・」

互いに無言になる。でも生きてるのはわかる。死にそうだけど。


ルイ
「・・・・ごめんなさい」
キュピル
「次からは・・・きをつけろ・・・よ・・」
ルイ
「次・・ですね」




そこで意識が途切れた。




でも最後に聞きなれた声が・・・。







「キュピルからの援護要請。直感で感じ取ったよ。」




・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


キュピル
「・・・・・ん・・・」

目覚めるとそこは一番見たかった景色があった。


自分の部屋。懐かしい臭い。懐かしい光景。懐かしいベッド。


キュピル
「・・・AM8:00・・・。起きないと」

そろそろ朝食作らないと皆腹空かすな・・。
体を起す。








キュピル
「痛!!!」





激痛。すぐに寝た。


ジェスター
「びっくりした!起きた?」
キュピル
「激痛、死んだ」
ジェスター
「ばいばいー」
キュピル
「・・・ひでぇ・・・。」

しばらく沈黙が続いた。

キュピル
「・・・俺あの空間で倒れた後・・・どうなったんだ・・・・?」
ジェスター
「私が助けた。偉いでしょ?」
キュピル
「確かに最高のタイミングだったけど、どうやって?」
ジェスター
「ふふふ・・。私は世界で一番凄い人ー。2人を助けるなんてお茶の子さいさい〜」
ファン
「やれやれ、よく言いますね。あんなにパニック起してたのに」
ジェスター
「・・・・攻撃するよ?」
ファン
「やめてください。暴力反対です」

ちょっと懐かしい会話のやり取りだ。


ファン
「簡単に説明しますとあの機械にのってキュピルさんがワープした場所まで向かい
長い長い水を泳ぎその先で倒れてる二人を発見したんです。
すぐにウィングで自宅まで戻り治療したしだいです」
キュピル
「ルイは?」
ファン
「無事です。ですけどしばらくは2人とも無茶できませんよ。ってか、寝ててください。ずっと」
キュピル
「むむむ・・・。とりあえず眠くなってきた。」
ファン
「今は寝ていてください。寝るのが一番早い治療法ですから。特にキュピルさんの場合」
キュピル
「なら少し寝かせてもらうよ・・・」
ジェスター
「待って、寝る前に私にありがとうって言って。命の恩人だよ」
キュピル
「zzzz・・・」
ジェスター
「・・・・・・」




寝る直前に一つ思い出した。
・・・あの通路の先って一体何があったのか・・。




続く



追伸

無事自宅に戻る事が出来たキュピルとルイ。
けどあと一話だけ続きます。


最終話


いつもの日常が戻ってきた。
今回ワシにとって黄金時代を思い出させてくれる凄い冒険をした・・・。
そりゃもう若い頃は今のに匹敵するぐらいの冒険は日常だったものだ。
今回はそれを少し思い出させてくれたものだった。

ルイ
「18歳の癖によく言いますね!」
キュピル
「そこに食いついたか・・。ってか、よくワシの思ってる事あてたな」
ジェスター
「ひとり言になってたよ。普通に喋ってた」
キュピル
「え?本当に?」
ファン
「はい、喋ってましたよ」
キュピル
「・・・・ぐふ。次からはひとり言しないよう気をつける」
ジェスター
「無理だねー。キュピルはひとり言の達人だから」
ファン
「ひとり言は誰かに聞いてもらいたいからひとり言するらしいですよ」
キュピル
「さすがファン。よく知ってる」

そういえば、一昔前。大体5年ぐらい前。
シルクとかティルとかの食卓に混ぜてこんな会話が昔にもあったような・・・。


キュピル
「さて、ご馳走様。久々に自宅のご飯を食べた」

ファンが作ってくれた料理。ルイは現在松葉杖がないと歩けないので
家事全般は無理だ。

ルイ
「ファンさんって万能ですよね。何でも出来るイメージがあります」
ファン
「それを言うならキュピルさんのほうが万能です。」
キュピル
「しかし機械は作れんし開発力はない。」
ファン
「僕は戦えませんし戦いはキュピルさんが一番上手ですよね」
ジェスター
「何言ってるの。私が一番だよ」
キュピル
「ひねくれた性格も一番だ」

三人笑う。ジェスターだけムスッとしてる。

ジェスター
「私は笑えなーい!」
キュピル
「おー、よしよし。まだまだ子供だねー」
ジェスター
「まだ怪我で動きにくい今がチャンス!復讐ー!」
キュピル
「甘い、もう走れる」

うむ、これもなんというか懐かしい光景だ。
・・・!物投げるな!!


ジェスター
「皿投げ!!」
キュピル
「ゴルァ!!それだけはやるな!キャッチ!」
ジェスター
「えーい、いまだー!」
キュピル
「ぐふっ!」


ルイ
「キュピルさんもかなりの怪我負ってたのにどうしてあんなに回復早いんですか?」
ファン
「結構昔からあんな感じです。キュピルさん曰く超人的な回復力を持ってると自称してますし
それにしても今回はやたらと回復が早かったですね。こんなに早い回復力は新記録ですね。」
ルイ
「まねできませんね・・・」





==深夜



大体1時頃。多分全員もう眠りについてる。


キュピル
「さーって・・・。」

自分の部屋に置いてある特殊ワープポイント機を操作する。
場所を指定し細かい座標も決める。場所は最後に戦ったあの部屋だ。
あの通路の先を少し見に行くだけだ。多分出口に繋がってるんだろうけど

キュピル
「興味心はいつまでも失わずにっと」

設定完了。万が一の事を考えて軽い装備は整え装置の乗ってワープする。
勿論幽霊刀は装備している。


ブォォォオオン








あの激闘から二日。床には鋼管の霊簪の破片が散らばってる。
拾ってみるがもう何にも感じない。

レベッカは完全に死んだ。


キュピル
「この黒い石はアーリンの墓石の後だろうな・・・」

あの怒涛の展開は今まで生きた中でも殆どなかった。
あくまでも殆どでなかったわけではないが・・・。

キュピル
「さぁて、この崖を上って通路を通りますか。」

しっかり足場とつかめる場所を確認して上る。たったの10mだ。たいしたことない。




==通路


ここから先はワシもルイも行ったことのない道。
少し上り坂になってる。

キュピル
「・・・・・・」

黙々とひたすら前に歩き続ける。
別にそこに何かがあってそれを手に入れるために歩いてるわけじゃない。
もしかしたらいい場所があるかもしれないというただの興味で歩いてる。



キュピル
「(・・・・そういえば)」

ひたすら上っていても何も考えずに上っているわけではない。

キュピル
「(今ケデン帝都はどうなっているんだろう・・・)」

あの機械の装置があればいつでも戻れる。
・・・しかし、なんだろう。戻れないような気もする。
何かに例えるとすれば一種の夢。

キュピル
「(まるでケデン帝都で奮闘してたあれがはるか数年前のように感じる。)」

ジェスターが勝手に異次元空間へワープしたことから始まったこの事件。
今よくよく思い出せば犯罪起したのは考えてみればあれが初めてだったような気もした。
とはいえど、たかがスリ。あのスリがあったからこそジェスターを発見できたかもしれない。

そして衛兵に就職しケデン帝都を駆け回った・・・。


キュピル
「(・・・・・・)」

腰にある銀のダガーに手をやる。
これはケデン帝都で支給された装備。

その事を思い出したらあのケデン帝都で起きた出来事は少ないものじゃないと気づく。
魚人との戦闘もあの時は不運だと思ったが逆に幸運だった。あれで命が助かったし
いい装備も手に入れた。

キュピル
「(・・・・・)」

背中の傷も思い出した。今は既に完治してる。
この異常に早い回復能力はワシの自慢の一つ。

キュピル
「(・・・ロラク・スクエ・・。隊長の名前が懐かしい)」

あの謎の老人との激闘も今は少し良い思い出。
あの時隊長を見捨ててジェスターとすぐに帰っていたらどうなっていただろうか?
どちらにせよなんだか後ろめたい事が出来てしまうのは確かだ。

キュピル
「(ワシのやった事は何も間違っていないさ・・)」


少しずつ急になってくる上り坂をしっかり歩いていく。
道も砂利が多くなってきて滑る。どこまで上ればいいんだろう?かなり長い道だ。









キュピル
「(・・・・そういえば)」

ジェスターを救ってすぐにルイの救援に駆けつけた・・。
けど、ワープしてすぐにルイにホールドアップされたな・・。
その時の喧嘩は鮮明に今でも覚えている。
ルイのあの覚醒は非常に怖かった・・・。

キュピル
「(しかし、あれはルイの実力なのだろうか?それとも操られていたから
操り主の技の一つだったのだろうか?)」

今度ルイに聞いてみるとしよう。

キュピル
「(そういえばルイの精神の中も歩いたな・・・)」

ルイの件に関してはかなり距離を歩いていることになるな・・・。
精神の世界から抜け出しても歩くことになったし・・。
・・・・そういえば亡霊が現れて戦闘した時初めて銃を扱ったな・・・。

キュピル
「・・・・。」

SVD。背中に今背負っている。ルイからプレゼントされた。
考えてみれば初めてだ。ルイから様々なプレゼントは受け取っていたが幽霊グッズじゃなかったのは。
少なくともこのSVDのプレゼントはワシも嬉しかったな。
松葉杖にもなって射撃以外も多数の用途のある汎用性の高い武器。
使い方が違うと何回もルイに言われつつこの汎用性の高いSVDのおかげで助かった。



・・・・・・。


キュピル
「(・・・・・・)」

そういえばルイが先導を仕切るといって前に張り切って出て置いてかれたりしたな・・。
途中深い水も通ったな・・・。
水中呼吸の魔法はなかったがしっかり泳ぎきる方法はあった。
少し軽く潜ってみると思ったより泡が一杯出てる事に気づいた。

その泡が天井の顔を出す程度の出来るすき間に泡が溜まって酸素の塊が出来ていた。
その気泡が奥深くまで続いていたため安心して進むことができた。

キュピル
「(しかし、一回分しか呼吸できなかったからある意味そこも辛かったな・・)」

一応自分の吐いた息でもう一度呼吸は出来るが吸収率は悪い。
けどもう過ぎた事はいいか。



・・・・・・・・・。

キュピル
「(レベッカ・・・)」

そういえば3000年前にもワシと似たような奴がいたとか言っていたな・・。
一度でいいからちょっと会って見たいな。


・・・・・・・・・・。







長い道上り坂も終止符が打たれようとしていた。
進むべき道から小さな光が溢れた。

小走りで道を駆け上がる。



外に出た。やはり外に通じていた。

夜の月明かりが一気に広がる。









キュピル
「おぉ・・ここは・・・」

穴から這い出るとそこは広い広い草原が続いていた。
出てきた場所も高い所であり周りを一望できる場所。
綺麗な草原だ。初々しい草が当たり一面に広がり地面も乾燥していて寝心地がいい。

近くの芝生に寝転がる。
そよ風がたまに吹く。

キュピル
「ちょっと寒いかな」

昼だったら昼寝してしまいそうだ。
目を閉じる。

・・・・。

夜だから少し眠たくなってきた。

・・・・・・・・・。






キュピル
「はっ・・・」

しまった。一時間ぐらい寝てしまったかもしれない。
慌てて起き上がる。
周りの景色は寝たときと同じだ。しっかり月が回りを照らして草木がそよ風に揺れる
見るだけで眠たくなる光景。

腕時計に目をやる。四時だ。思ってたより寝ていたな。



キュピル
「・・・もう少しここに居たいな・・」

他の人と一緒にいるのは苦手だ。
ジェスターやファン。ルイとかも今は物凄く仲も良くなり居てて楽しい時はあるんだが
やはり疲れるときは疲れる。今回みたいな事件とかは特に。


キュピル
「だから、疲れた時はこうやって黄昏るのさ・・・」

ひとり言を言いながらもう一回芝生に寝転がる。月明かりが眩しい。

キュピル
「・・・・・・」

月を凝視する。
・・・・・・・・、眠くなってきた。寝ようかな。








・・・・・・・・・・。

キュピル
「む・・・・」

気を緩めると一瞬で寝てしまう。
今何時だ?回りは大分明るくなってきた。地平線から眩いオレンジ色の光が見える。

六時。


キュピル
「日の出はまだ出ていないみたいだな」

もう一度辺りを見回す。
それにしても何ていい場所なのだろうか。
ジェスターとかルイとかもワープした場所がこういった平和な場所だったら
どれだけよかったことか。

キュピル
「いつも黄昏る時は自宅の近くにあるナルビクの海辺だか今回はこっちのほうが遥かにいいな・・」

ぼーっと明るい方向を見つめる。
明かり方からはそろそろ日の出が出てきそうだ。
暗いほうはまだ少し星と月が見える。


キュピル
「・・・・・?」

何だろう?何故か知らないがあの林が気になる。
別に何か見つけたわけでもなくただ単純に気になる。
立ち上がって斜面を走って下りる。


走って五分。
林の入り口に到着した。

キュピル
「中々険しいな・・・。」

道なき道を突き進んでいく。
草や小枝を掻き分けて進む。昔こういった野蛮な道はよく通った。


キュピル
「広い空間に出たな・・・」


木々が別れ何もない場所に出た。
正確にはそこだけ草木が生えておらずその場所を木が取り囲んでるといった形。
よくみると結構広い穴がある。

キュピル
「なんだ、この穴は・・?」

覗くと見慣れた光景があった。

キュピル
「ここは・・・。アーリンの墓があった場所か。
よくよ〜〜〜くみると鋼管の霊簪の破片もある・・」

ってことはここは光が漏れてる場所の上か。
ここの穴を閉じたらきっとこの洞窟は暗闇になるだろうなぁ。
体全部使っても覆いきれる大きさじゃないが。


キュピル
「・・・・あ」

穴を覗くのをやめて回りを見ると墓が一つ立っていた。
これはなんだ?


キュピル
「幽霊刀の創作者・・・。ルーピュキ、ここに眠る。
・・・・ルーピュキ・・・。
ん・・・?・・・・反対から読むと「キュピール」!!」

偶然か偶然じゃないのか・・・。恐ろしいものだ。まぁ、どう考えても偶然だな。
幽霊刀の創作者・・。ってことはこの人がレベッカの言っていた3000年前にもいた
俺みたいな奴 と言っていた人か。

キュピル
「3000年前にもあの時のような激闘があったんだろうな・・・。」

歴史は繰り返すか。どこかでそのような言葉を誰かが使っていたな。

キュピル
「・・・・そうだ」

この幽霊刀。本人に返したほうがいいかな。
一体ルイがどこでこの刀をアノマラド大陸で見つけたかは知らんがやはり返すのがベターだろう。
背中に結び付けてる幽霊刀の紐を解き墓の前に置く。


キュピル
「・・・・・・!?」

突然幽霊刀が光り消える。そして墓に何か文字が刻まれていく。
何て書いてあるんだ・・・?

キュピル
「『ありがとう、これがあると力が使える。』・・・。ほぉ・・・」

まるで生きてるみたいだ。
無駄だと知りつつも問いかけてみる。

キュピル
「君とは会話は出来るのかい?」

・・・・しばらくすると墓に刻まれた文字が消え新たな文字が現れた。
生きてる・・・。魂が・・・。


『出来る。何か聞きたい事があるのだろう。答えよう。』

読み終えた瞬間刻まれた文字が消え再び現れた。

『私の生まれ変わりは君ではない。こうして魂は残っている。』

キュピル
「それ聞いて少し安心したような気はする」

『しかし限りなく近い者だ。やや特殊な道。幽霊刀を扱えた君は特殊な道を歩んでいる。』

特殊な道・・・。それは一体・・。

キュピル
「それはどういう意味だ?」

『幽霊刀はただ霊能力の力が強いだけでは扱う事は出来ない。
では、どういう人だけが触れる事が出来るのか。それは教えられない。
だが時期に分かるだろう。この幽霊刀を扱った瞬間から。もう前の君ではなくなっているはずだ。
それはいい意味でも悪い意味でも』

キュピル
「・・・?」

『難しいか。何年も先の話。どうしても気になるなら、未来を見せてやる。
幽霊刀を帰してくれたお礼だ』

キュピル
「それは見たい。自分の事だ。前の自分とどう違ってしまったのか。」


そう言うと墓のすぐ目の前に黄色いポータルが現れた。これに乗れってことなのだろう。
迷わずそのポータルに入る。白い光に包まれる。








キュピル
「・・・・・・・?」

周りを見渡す。ここは・・・。自宅か?
でも自宅だけど少し雰囲気が違う。

ワシの部屋から誰か出てくる。自分だ。
今寝起きなんだろう。少し眠そうな顔している。
しばらくしてルイの扉も開いた。

キュピル
「・・・・!?」

ルイの顔が老けている。見た目で判断すると50ぐらいだ。
会話してる。



ルイ
「お誕生日おめでとうございます。これで何歳でしたっけ?」
キュピル
「51だ。」
ルイ
「若いですね・・。これも霊能力の力かー・・。羨ましい限りです。
私はもうドンドン歳を取る一方で・・。そろそろ腰も痛くなってきました」
キュピル
「何年生きれるのかな。ワシは」

ジェスターの扉が開く。


ジェスター
「おっはよー」
キュピル
「おう、おはよう」
ジェスター
「誕生日おめでとうー!私は覚えてるからね?」

ジェスターも心なしか老けて見える。ルイ程の差は見当たらないが・・。
ちょっとだけシワが見える。






キュピル
「もしや・・・。ルーピュキが言っていた事って・・・。
俺は歳を取らなくなるってことなのか・・・?」


鼓動が早くなる。まて、それは少し・・・。嫌だ。
共に同じ道を歩めなくなる・・・。



再び眩い光に包まれる。






また自宅だ。前よりも更にぼろくなった気がする。
新しい家具もいくつか置いてある。
・・・・だが、一番見たくない家具も置いてある・・・。

キュピル
「仏壇・・・・」


一瞬泣きたくなった。
写真が飾られてる。ルイとジェスターだ・・・・。
ファンの扉が開く。ファンだ。・・・見た目は・・・。おや、俺と変わらんな。

ファン
「今日も清清しい朝ですね。誕生日おめでとうございます」

誰もいない場所に声をかけてる。
・・・っと思った瞬間目の前に俺が現れた。見た目は相変わらず変わっていない。

キュピル
「よく分かったな。完全に幽霊化できる歳まで来たのに」
ファン
「何百年いると思っているんですか。」
キュピル
「えーっと・・・。・・・・数えてみると151年か!!凄まじいな!!
ここまで生きるなんて生まれた時は絶対に信じられなかっただろう・・・。
2人がもしまだ生きていたらルイは153歳か。ヨボヨボだな」
ファン
「言ってはいけませんよ」




また眩い光に包まれる。






ん・・・。
今度は自宅じゃないな。どこだ?
扉が一つ開く。俺だ。



キュピル
「ん〜・・・。新居なれないなぁ・・・。」


ここは新居か。
相変わらず仏壇は置かれてる。・・・ファンもいる・・・。
一体どのくらいの年数だ?

キュピル
「今日で俺は・・・祝1000年か。ジェスターやルイ・・・。ファン・・・。
・・・・。引きずってはだめだな。新しい仲間もいるんだ。迷惑かかる」

新しい仲間?


???
「キュピルー!ちょっとこれ手伝って!!大変!ぎゃー!!」
キュピル
「朝から一体何事だ・・・。」


声質が誰かにちょっと似照る。誰だろうと確認しようとした時眩い光に包まれた。
あたりは再び草木の生えてる林に戻った。


ルーピュキの墓の前か・・。
何か刻まれている・・・。


『今見せた奴はお主のほんの一握りの運命。
だが運命は簡単に変えられる。その気になれば。
もしかしたら3000年まで生きるかもしれない。もしかしたら従来の人間通りの寿命まで生きる
かもしれない。そう、これは一つの可能性の道。いつでも運命は変えられる・・・。
3000年前のあの時と同じように。幽霊刀とお主は切っても切れない関係だ・・・。』


そういうと突然墓が消えた。
・・・言いたいこと言って消えた。言い逃げめ。

キュピル
「・・・・・ふぅ・・・。気を取り直さないとな」

ルーピュキの言ってる事が正しいとすれば俺はまだまだ人間として生きれる可能性があるってことだ。
とりあえずこの事は皆に言ったほうがよさそうだ。

キュピル
「・・・・そうだ、この幽霊刀。どうしよう」

ルーピュキの墓はなくなって今ただ地面に落ちてる。
・・・・・・。
・・・・・・・・・・・。持っておくか。

取っ手も何も起きなかった。もし返したくなかったら何かしらの干渉があったはずだ。

キュピル
「さぁ、帰ろう。
・・・・っと、その前にちょっと草原だけ見てこうっと。いい景色は頭に残したい」






洞窟の通路から這い出た場所の近くまで来た。
夜思わず寝てしまった場所だ。そこに立ち尽くす。

時間は10時。もう早朝ではない。
昼の草原はもっと綺麗だった。


・・・・・。

これ以上ここにいると心配かけるかもしれない。戻ろう。

ウィングを使って街に戻る。







==キュピルの自宅

ジェスター
「よし、キュピル捜索の準備大丈夫だよ!」
ルイ
「今度は私達が救いに行く番ですね」
ファン
「僕はまたここで残ってサポートしておきます」
キュピル
「ただいま」

三人
「・・・・・・・あれ?」
キュピル
「ん?何?」
ジェスター
「あ、あれ?あれ?ワープの装置気に乗ってウィングなくて帰れなかったじゃなかったの・・?」
キュピル
「そんなアホな事はすまい。ジェスターじゃないし」
ジェスター
「言ったね!!」
ルイ
「びっくりした・・・。私達2人に続いて今度はキュピルさんが事故に巻き込まれたかと思いましたよ」
ファン
「この勘違いはジェスターさんからですよね。ウィング持ってないって決め付けたのは誰ですか」
ルイ
「ジェスターさんです。『私の直感で分かる!キュピルは絶対ウィング持ってない!』って言ってましたよ」
キュピル
「まぁまぁ。ただ散歩していただけだ。改めてただいま」


やはり心配かけてしまったようだ。


さぁ、ルーピュキの言っていた事を話して人間に戻る方法でも
探すとしようか。幽霊は嫌だぜ。



シーズン9・完


追伸 最終話はぶっちゃけオマケなんですが
    オマケだけではちょっとあまりにも暇するので次シーズンの予告みたいなのを入れてみる。
    とはいっても、基本普通の日常に戻す予定です。そこに小さなストーリーが絡むみたいな。
    それと今回はキュピルが主人公でしたが、次回は正真正銘ジェスターが主人公です


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