ラブ・マッサージ(前編)


アノマラド大陸南部に位置する、ここナルビク。
大陸外との貿易を繋げる主要都市の一つ。それ故に何でも揃っているが、大抵売り切れているため何にも揃っていない。
そんな中途半端かつ残念な都市に、ジェスターのクエストショップという残念な名のクエストショップが一軒存在している。

そんなクエストショップに二人の女性が何やら怪しげな話をしていた。

輝月
「琶月!」
琶月
「は、はい!」

いつものように琶月を呼びつける輝月。
今日も今日とて何やら機嫌が悪い。

輝月
「・・・・・・・・・。」
琶月
「呼びつけておいて何で黙っているんですかーー!!」
輝月
「うるさい、黙れ!」
琶月
「ああああ!!理不尽理不尽!!」


琶月が頭抱えながらギャーギャー騒いでいる中、輝月はただひたすら自室の窓から外を覗き続けている。

琶月
「さっきから何をずっと覗いているんですか?」

琶月がひょこっと覗きだす。輝月が琶月の頭を押して引込めさせようとしたが、引込められる前に琶月は輝月が見ていた先を確認した。
どうやら輝月はずっとキュピルの部屋を覗いていたようだ。
今キュピルの部屋でキュピル本人とジェスター、キュー、ファンとトランプ遊びをしていた。何故かキュピルは頭を抱えており、ファンは呆れた表情をしている。
そして頻繁に他人の手札を覗き見ているキューと遠目で見ても反則っぽそうな動きを取り続けているジェスター。

琶月
「あ、もしかして師匠。四人の遊びに混ざりたいんですか?」
輝月
「そうではない。」
琶月
「またまたご冗談を。でも安心してください、師匠!」
輝月
「ほぉ?」
琶月
「私が遊び相手になってあげます!えっへん。」

琶月が自分の胸をトンと叩き自信気に胸を張る。が、その胸を拳で殴られ、胸元を抑えながら床の上で悶絶する琶月。

琶月
「ああああああーーーーーーー!!!」
輝月
「五月蠅い。苦しんでいる時ぐらい黙れ。」

琶月
「殴っておいて酷い酷い!・・・あ!もしかして師匠。」

苦しんでいたはずの琶月がすぐに起き上がり、輝月の傍に寄って小さな声で話しかけた。

琶月
「遊びに混ざりたいと思ったのではなく、キュピルさんをずっと見ていたのですか?」

輝月が一瞬目を見開き、再び琶月を叩こうとしたがその前に琶月が後ろに下がって避けてしまった。

琶月
「あ、あ、やっぱりそうなんですね?いいなぁ・・・。キュピルさん絶対にモテ期到来していますよね。私はキュピルさん悪魔にしか見えませんけど。」
輝月
「弱者には分らぬだろうて。」
琶月
「ああああああああーーーーーーーーー!!!」

琶月が再び頭を抱えて騒いでいるが、輝月は何も言わずにまた窓からキュピルの部屋を覗いているだけだった。
いつもと輝月の様子が違うことに琶月は気づき、再びゆっくり輝月に近づいて話しかけた。

琶月
「師匠、キュピルさんを本当に婿として引き入れ子供を作り、その子供に紅の道場を引き継がせようと考えているのですか?」

なるべく声のトーンを低くして真剣っぽさをアピールする琶月。
しばらく黙っていた輝月だったが、数十秒ほど経過して

輝月
「・・・・考えておる。」

とだけ答えた。
それを聞いた琶月が腕を組み考える仕草をとる。

琶月
「うーん・・・。しかし師匠。キュピルさんにはルイさんが・・・・。」
輝月
「そんなことは分っておる!」

なるべく冷静に言おうとしたかったのだろうが、声は大きい。
近くに誰も人が居なかったのは幸いだ。

琶月
「キュピルさんとルイさんは一応付き合っているみたいですし・・・。そうなると・・・・。・・・・うーん・・・でもキュピルさん、ルイさんと付き合っていると
言っている割には結構淡々とした関係を続けていますし・・・もしかすると本当は・・・・。・・・・だとすると師匠にもチャンスはありますけど・・・。」
輝月
「何をぶつぶつ呟いておる。」
琶月
「・・・・・ところで、師匠。」
輝月
「何じゃ。」
琶月
「キュピルさんを引き込む策とかって思いついているのですか?」
輝月
「特に思いついてはおらぬ。」
琶月
「(実るのは絶望的、あるいはすごく遠そうだなぁ・・・・。)」

ガクリと項垂れる琶月。
輝月が振り返ると、部屋の壁にかけてある刀を手に持ち琶月に語りかけた。

輝月
「この事はもう良い。それよりそろそろ修行を始めるぞ。」
琶月
「師匠、言い方に少し怒気が含まれています。」
輝月
「今日はみっちり扱いてやろう。」
琶月
「お、お手柔らかにお願いします・・・・。」

琶月も一旦自分の部屋に戻り、全く手入れされていない刀を手に持ってキュピルが勢いで作り上げた道場へ二人は向かった。



・・・・。


・・・・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



その夜。輝月にみっちり扱かれクタクタとなって部屋へ戻る琶月・・・と輝月。

琶月
「つ、疲れたぁ~・・・。」
輝月
「琶月、全然腕が上がっておらぬ。お主に修行させても無駄と思えるぐらいじゃ。」
琶月
「ええええええーーーーーーーー!!!そんなーーーーー!!!」
輝月
「いっその事お主にはもう修行させるのは止め、家事等の身の回りのことをさせるべきか・・・。」
琶月
「あ、師匠と一緒に居られるなら私はそれでも良いですよ。」
輝月
「・・・・・・何のためにお主にこれまで技を教えてきたのか改めて考えさせられる一言じゃな。怒るぞ。」
琶月
「わああああああ!!!!ごめんなさいごめんなさい!!!」

琶月が輝月に何度も頭を下げ続け謝るが、早いペースで何度も頭を上げ下げしているので謝っているようには到底思えない。
輝月が一度深く溜息をつき、夜空に浮かぶ欠けた月を眺めながら琶月に語りかけた。

輝月
「もう良い。・・・今日はワシも疲れた。部屋に戻って風呂に入り終えたらマッサージをしてもらおう。」
琶月
「あ、はい!お任せください!」

輝月が無断でキュピルの家へ上がり風呂場へと直行する。

ファン
「おや、輝月さん。今日も修行あがりですか?」
輝月
「うむ。」
キュー
「おーおー、輝月~。今からアタシも風呂入ろうとしてた所、一緒に入ろうぜ!」
輝月
「狭い。」
キュー
「拒否権はないぜ。」

キューが服を脱ぎながら風呂場へと移動する。

ジェスター
「あ~!先に私がお風呂に入る~!」
キュー
「髪の毛長い人が三人も同時に風呂入ると毛風呂になっちまう!」
ファン
「そもそもお風呂小さいので頑張っても二人同時しか入れませんよ。」
キュー
「あたしは絶対入るぜ。ジェスターか輝月が待ってるべき。」
ジェスター
「いーーやーーだーー!今すぐお風呂に入るー!」
琶月
「すいませ~ん、お風呂に入らさせていただきm・・・あれ?並んでいます?」

二人が言い争っている間に先に輝月は風呂場へ入り道着を脱ぎ始めた。

ジェスター
「あー!抜け駆けはずるい!」
キュー
「おーおー、待て~!」
琶月
「私は待ちます・・・。」
ファン
「(クエストショップにもお風呂を作った方がいいかもしれませんね・・・・。)」

その後、三人同時にお風呂へ入り湯が風呂から溢れ、更にキューとジェスターが水をかけあったせいで三人が風呂場から同時に上がった後には風呂の水は殆ど残っていなかった。

琶月
「ぜ、全然お湯残っていないーーー!!!」



・・・・。

・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





輝月が自分の部屋に戻ると既に布団が引かれていた。既に琶月が用意していてくれたようだ。

輝月
「(こういう所は琶月も気が利くな。)」

布団の上でうつ伏せになり、枕に顔をうずめて考え事をする輝月。

・・・・・。

脳裏に浮かぶのはやはりキュピル。
何故、最近になってキュピルの事ばかり気にしているのか。

輝月
「・・・・・・・・・。」

・・・・・・・。

今日は本当に疲れているようだ。
目を閉じて、しばらくそのままでいると眠気が襲い掛かりウトウトしているとそのまま眠ってしまった。

・・・・・。

・・・・・・・・・・。

琶月
「師匠~。師匠~?」
輝月
「む・・・・・。」
琶月
「師匠、お待たせしました。マッサージ出来ますよ。あ、それとも起こしてしまいました?」
輝月
「別に気にしなくとも良い・・・・。・・・・それよりマッサージを頼む。」
琶月
「はーい。」

琶月は輝月の横につくと、寝巻の上から輝月の背中を指圧で押していきマッサージを開始した。

琶月
「指圧の加減はどうですか?」
輝月
「もう少し強くても良い。」
琶月
「はい。・・・・・あ、そうだ。師匠。」
輝月
「ぬ?」

琶月がマッサージを続けながら輝月に語りかけた。

琶月
「今度師匠がキュピルさんにマッサージでもしてあげてみたらどうですか?中々キュピルさんに近づく切っ掛けを持てていないようですから、良いかもしれませんよ。
キュピルさんもキューさんやジェスターさんのお相手で疲れている事が多いみたいですので。」
輝月
「確かに良いかもしれぬが、いきなりワシがキュピルに『マッサージをしてやろう』などと言ったら怪しまれるじゃろう・・・。」
琶月
「・・・・言われてみたらそうですね。むしろ、どちらかというと『マッサージをしろ』って注文する方ですもんね・・・。」

意外とそういう所は輝月も自覚していたようだ。

輝月
「第一、仮に奴がワシにマッサージしてくれと頼んだとしても、その前にルイが割り込んで奴がマッサージを行うぞ?」
琶月
「う、う~ん・・・・。」

琶月が口をもごもごさせながら何か色々考える。
・・・数分の沈黙が流れる。

輝月
「・・・・・・・・・・。」
琶月
「・・・・・・う、うぉっほん・・・師匠。・・・えっとですね。」
輝月
「何じゃ?」
琶月
「その・・・冗談だと思ってほしいのですけど性感マッサージっていう物が・・・ありますけど・・・・。」
輝月
「・・・・夜伽でもさせれば良いと言いたいのか?」
琶月
「・・・こ、これはあくまでも極論なので本気の意見として捉えないで欲しいのですが・・・キュピルさんと・・・えっと・・・。一度その、そういう関係持ってしまえば・・・
キュピルさんも輝月さんの事無視はできないのは事実ですけど・・・。」

輝月が一度大きく溜息をつく。

輝月
「言いたい事は分るが、それも無理じゃろう。キュピルがそのような関係を簡単に許すとは思えぬ。あやつは理由は分らぬが、あのルイとでさえ関係を拒むのだぞ?」
琶月
「そもそもの話ですが、えっと・・・師匠は性行為とか抵抗は持たないのですか?」

輝月が鼻で笑う。

輝月
「そんな事は気にしておらん。元々我が一族は武を極めし家系じゃ。女の私が一族の主となったのは初ではあるが、子孫を残し一族を繁栄させる目的はこれまでと変わらぬ。
そのためには婿、男の場合は嫁を作り、子を残さねばならぬのじゃから性行為に抵抗を持ってしまっては本末転倒。」
琶月
「うーん・・・それが好きな人となら良いのかもしれませんけど私はちょっと・・・あれですね。」

琶月がやや照れながら答える。
そのまま一度無言になり、琶月は黙ってマッサージを続けていたが輝月が沈黙を破った。

輝月
「・・・・・一つだけ心配なことがある。」
琶月
「どうかしましたか?」
輝月
「もし、キュピルと性行為をした時。私は奴を満足させる事が出来るじゃろうか?」

琶月が思わず咳き込み、マッサージを中断する。

琶月
「し、師匠。突然何を言い出すんですか!」
輝月
「言葉の通りだ。男は・・・む、胸が大きい方が好きなのじゃろう?勿論戦いでは無い方が有利なのは事実で無かったことは私にとってはありがたいのじゃが・・・。
琶月、どう思う?」
琶月
「ど、どう・・・って・・・。そ、それは難しいお話ですね・・・。
う、うーん・・・・えーっと・・・・。キュピルさんは・・・多分胸の大きさは気にしないと思います・・・よ?」」

琶月の顔が今にも火を噴きだしそうなほど紅潮している。話を切り出した輝月も少し紅潮しているがそれ以上に琶月の方が赤い。

輝月
「ふむ。」
琶月
「わ、私が思うに、相手より先に果てなければ大丈夫だと思いますよ。」
輝月
「果てる?疲れるという事か?」
琶月
「そ、そういう意味で良いと思います。」

琶月がマッサージを再開すると同時に再び輝月が口を開いた。

輝月
「琶月、お主影に隠れて性行為に興味を持っておるだろ?」
琶月
「うぇっ!!?」

突然の輝月の指摘に琶月が腕を振って全力で否定する。

琶月
「そ、そ、そ、そ、そんな事ある訳ないですよ!!!」
輝月
「ワシの質問に答えられた奴が何を言う。」
琶月
「べ、別にただ地面に落ちてた如何わしい雑誌を偶然見ちゃっただけで!あ、でも別に保管している訳でもありませんから!!!」

どんどん墓穴を掘っていく琶月に心配を覚えたのか、輝月が呆れた表情をしながら言葉を付け足していく。

輝月
「・・・・それ以上喋らなくてよい。お主の事じゃから墓穴を掘りそうで心配だ。」
琶月
「す、すみません・・・・。」

先程の無言とはまた違う気まずい空気が流れている。
今度もまた輝月が先に口を開いた。

輝月
「・・・という事は琶月。お主は性行為の知識はあると思って良いのだな?」
琶月
「・・・う・・・。」
輝月
「正直に申せ。」

師匠にそう言われると嘘をつくことは出来ない。

琶月
「は、はい・・・・。」

真っ赤な髪の毛と同じぐらい顔を真っ赤をする琶月。

輝月
「なら話は早い。たまにはお主が私に修行させてみろ。」
琶月
「え?どういう事ですか?」
輝月
「性行為は疲れるのじゃろう?私を果てさせようとしてみろ。それを耐えれば本番も自信がつく。」
琶月
「師匠、自信がどうこうの問題ではないと思いますが。」
輝月
「ほぉ、ワシに逆らう気か?」
琶月
「ち、違います違います!!むしろ大好きな師匠にあんなことやこんなことさせて貰っても良いのであれば、色んな事しちゃいますけど!!!あ!これは別に決してやましいことで・・あ、やましいことですけど・・・・。」

だんだんと声が小さくなっていく琶月。
輝月が一旦起き上がり正座で琶月と向き合う。

輝月
「出来るのじゃな?」

面と向かって言われ、琶月は顔を赤くして黙って頷いた。

輝月
「ならば善は急げだ。早速やってもらおう。」
琶月
「うぇえ!!?今からですか!!?」
輝月
「準備が必要なのか?」
琶月
「えっと・・・。準備というかなんというか・・・。本当に性行為での体力をつけるという意味で言うなら確かに準備が・・・。
後ここ壁薄いので大きな声出ちゃったら声漏れちゃいますよ・・・・?それがキュピルさんとかに聞かれたら大変なことに・・・。」
輝月
「・・・・・・確かに、それは少々困る。」

輝月も少し想像したのか、琶月ほどではないにしろ顔を紅潮させて俯いた。
性行為に関しては、あくまでも通過事例として扱いたかったのだろうが何だかんだで輝月にも性行為に関して恥じらいが見え隠れしている。

琶月
「師匠、幸いにもここナルビクにはそういう如何わしい事をするための場所は結構あるらしいので本当にやるのであれば、そこに行けば問題はないと思いますが・・・。」
輝月
「ほぉ、ナルビクは便利な場所じゃな。では行くぞ。」
琶月
「うええぇぇっ!!?今から行くんですかっ!!!?」

輝月が寝巻を脱ぎ、和服に着替えなおそうとする。
琶月も立ち上がり、振袖を持って着替えを手伝う。

輝月
「さっきも言ったじゃろう。善は急げと。」
琶月
「はたしてこれは善なのでしょうか・・・。」
輝月
「琶月!」
琶月
「は、はい!」

琶月に命令するとき、輝月は声を大きくして琶月の名を呼ぶ。そして。

輝月
「その場所まで案内しろ。」

そう言われると琶月は顔を真っ赤にして一度倒れてしまった。




・・・・・。

・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。




それから数時間後。
如何わしい事をするための場所があるっという事を知ってはいたものの、場所までは琶月は知らなかった。
紆余曲折の末、琶月が道端で拾った怪しい雑誌の広告一覧に如何わしいことをするための場所の住所が書かれていたのを発見し輝月をその場に案内する事になった。
この時、輝月は寝巻から着物へ着替えていたが琶月は寝巻から何故か上はパーカー、下は普通のズボンに着替えていた。

琶月
「こ、ここです・・・。」
輝月
「ラブ・マッサージ?」

琶月が輝月に案内した場所は俗に言う性感マッサージを施してくれる所だ。お店の場所は表通りにあるのではなく街の裏通りを進んだ先に存在した。
このお店の他にも性に関係するお店が何軒か存在しているが汚い印象はなく、むしろ下手すればゴミの落ちている表通りなんかより綺麗かもしれない。
店は木材建築で建てられており、入り口にはラブ・マッサージと書かれた黒板がかけられている。店の入り口周辺には熱帯雨林で繁殖する木々の植木鉢が並べられており、不思議な香りが漂ってきている。
輝月がすぐに建物へ入ろうとしたが、すぐに引きとめた。

輝月
「なぜ引き止める?」
琶月
「ほ、本当に恥ずかしさを感じないのですか!?」
輝月
「全く恥ずかしくない訳ではない。じゃが、これも紅の道場のためと思えば。」
琶月
「・・・・う、うー・・・。私は恥ずかしいのでフードをかぶります・・・。」

琶月がパーカーについているフードを被り、顔を隠しながら一緒にラブ・マッサージへ入っていった。

輝月
「そのためにそんな俗っぽい服を着ておったのか。」
琶月
「私は恥ずかしいので。」
輝月
「未熟じゃな。」
琶月
「師匠、物凄く間違った言い方になっているので訂正した方が良いです。」

琶月の指摘を無視して、一人先に店の中へ入っていく輝月。慌ててその後を琶月は追った。
扉を開けると内側に取り付けられていたベルが鳴り、受付に寝そべっていた髪の長い金髪の女性が顔を上げた。

髪の長い金髪の女性
「あら、珍しいお客様ね。ようこそ、ラブ・マッサージへ。和の着物を着た方がうちのお店へ訪れたのは初めてだわ。」
輝月
「ここで性感マッサージを行ってくれると聞いたが。」
髪の長い金髪の女性
「ええ、そうよ。男性の方も、女性の方も。心の底から気持ちよくなれる場所。それがここ、ラブ・マッサージ。
・・・・ところで、後ろにいるパーカーを着てフードをを被った方は?」

琶月が指でフードの裾を引っ張って顔を隠し続けている。
面倒に思ったのか、輝月は勢いよくフードを引っ張り顔を露出させた。

琶月
「ひーん!」
輝月
「何を照れておる。」
琶月
「だ、だってー・・・・。」

髪の長い金髪の女性が受付から出てくると、足を交差させながらゆっくりと二人に近づいてきた。
思っていた以上に背が高く、もしかすると身長175cmぐらいあるのかもしれない。
緑色のローブに、大きく膨らんでいる胸元。一歩歩くたびに大きな胸が上下に揺れる。

髪の長い金髪の女性
「ふふ、こんばんは。お二人方、とてもお若いね。興味がある事は悪い事じゃないわ。でも、ここはちょっと、刺激的すぎるかもしれないよ?」
琶月
「わ、私は師匠の付人なだけなので・・・。」
髪の長い金髪の女性
「あら、そう・・・。・・じゃ、興味持ったら教えてちょうだいね?」

そういうと髪の長い金髪の女性は琶月の胸元を指でちょんと触ると、再びカウンターへと戻っていった。

髪の長い金髪の女性
「あぁ、紹介が遅れちゃったわね。私の名前はナイトメア。」
琶月
「・・・悪夢・・・なんですか?」
ナイトメア
「ふふっ、ここで体験することが悪夢なのか。それとも良い夢なのかはすべてお客様が決める事。
それで、施術を受けるのはそこの髪の長い女性の方だけかしら?」
輝月
「私だけだ。」
ナイトメア
「そう。そっちの髪の短い子もなかなか素質がありそうだったからちょっと期待してたのに。」

また琶月がフードを深くかぶって顔を隠す。

琶月
「い、良いです。結構です・・・。」

照れて部屋の隅にある椅子に座って縮こまる琶月を無視して歩を進める輝月。

輝月
「要求がある。」
ナイトメア
「要求?あぁ、施術内容の事かしら?」
輝月
「うむ。・・・・琶月!」
琶月
「は、はいぃ!!」

その場で背筋をピンと伸ばして起立する琶月。

輝月
「説明。」
琶月
「わ、私がですか!!?」

目を泳がせながら琶月が小さな声で一言だけ呟いた。

琶月
「えぇ・・・えぇーっと・・・・そのぉ・・・。・・・は、激しくお願いします・・・・。」

それだけ言うと再びフードを被り椅子の上に座って縮こまってしまった。

ナイトメア
「そう、激しく、ね?かしこまりました。
でも、今回初めてうちのお店に来たから貴方がどこが敏感か、どこが感じやすいのか。どのくらいでイッちゃうのか見てみないと分らないわね。
時間かかるけどいいかしら?」
輝月
「私には良く分らぬが、構わん。」
ナイトメア
「それじゃ、さっそく施術の準備に移りましょう。お名前伺ってもよろしいかしら?」

ナイトメアが一度受付に戻ると、ボードを紙を持って再び輝月に近づいた。
輝月がボードと紙を受け取ると、記入欄に自分の名前を書いていく。

輝月
「輝月。」
ナイトメア
「まぁ。アノマラド大陸じゃ珍しい名前ね。そちらの子は?」
輝月
「琶月。」
ナイトメア
「ふふっ、覚えました。それじゃ輝月さん、琶月ちゃん。こちらへいらっしゃい。」
琶月
「え、私もですか!?わ、わ、私は結構です!」

琶月が顔を真っ赤にしながら腕を振る。
するとナイトメアはお腹に手を当てて小さく笑った。

ナイトメア
「違うわ。そこはお店の入り口よ?ちゃんとマッサージするお部屋があるから。そっちにはふかふかのソファーもあるし良い匂いのする香料もあるしリラックスできる物がたくさんあるから
そこでゆっくりして頂戴。」
琶月
「あ、そういう事でしたか・・・。」

琶月が立ち上がり、木製の床の上を歩いていく。
お店の奥に一つだけ扉があり、ナイトメアが扉を開け二人を部屋の中へと誘導させていく。

ナイトメア
「まずはリラックスしていってね。」



続く


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