This war of mine DAY10 (夜)



「ボリスだ。今日も探索は俺が行う。

別に苦じゃない。むしろ一週間前の状況と比べれば随分マシなほうだ。
俺はそんじょそこらの奴らよりも力持ちだと思っているし物資回収役にされるのは至極当然の話だ。
第一俺もこのぐらいのことじゃないと役に立てないからな。

今日は教会に向かうことにした。
夜になってもあちこちで紛争が勃発するようになったが神聖なる教会まで戦地にしようとは思わなかったようだ。
戦時中の教会は病院を兼ねる事もあるという。戦争の協定やら法律やら俺は何一つしらねーしそういう条約がこの内戦で守られてるとも思っていないが
せめて病院と教会だけは戦地として巻き込んでほしくない。



正直ここにはあまり来たくなかった。
幸せだった頃の記憶ばかりが蘇る。どうしても今という現実を比較してしまい結果、一人で勝手に落ち込むことになる。
あの頃は楽しかった。あの頃は幸せだったってな。
既に両親も亡くし、倉庫番なんかやってる今の俺にとっては過酷な現実だ。


※神父とは物資を物々交換することができる。

教会に入ると神父が今にも崩れ落ちてしまいそうな椅子に座っていた。
この神父はよく覚えている。子供の頃よく話した事がある。だが俺が少し大きくなってからは教会というつまらない場所にはいかなくなったからな。
神父もあの時の俺だとは覚えていないようだし俺も態々「あのときの俺だ」なんて言うつもりは毛頭ない。

話によると神父は今でも誰かの人助けを続けているらしくここで物資の物々交換に応じているらしい。
流石に無償で引き渡すわけにはいかないようだが、木材やガラクタといった資材でも量さえあれば包帯と物々交換に応じてくれる。
その器の広さと奉仕の精神は神父という役職に恥じない行動だ。
しかし今はガラクタや木材でも惜しい資材だ。包帯は枯渇しているが早急に必要というわけではない。

神父には資材を集めているとだけ伝えると、教会の中や外に転がっているガラクタの山から必要なものがあれば好きなだけ持ってってくれといわれた。
ただし、信徒の部屋には入らないようにとだけ釘は刺された。ここは素直に従う。


※探索中、中には入っただけで盗賊行為と見做される場所がある。例えば他人の家や私室などだ。盗賊行為を目撃されれば撃たれても文句は言えない。

梯子を降り、通路の先にある梯子を今度は上る。
教会裏に家屋があることを俺は覚えていた。
だがこの家屋、迫撃砲によってボロボロになっていてさっき神父が座っていた椅子なんかよりも脆そうだ。
柱一つ折ったら今にも全壊しそうだ・・・。

この家屋の持ち主は既にいなくなっているようだ。物自体は自由に持っていっても大丈夫そうだ。
俺は家屋に入って瓦礫の山を漁るが目ぼしい物が何一つ見つからない。既に持ち去られた後のようだ。


※日数が進むとそこにあった資材や物資は他の探索者が持ち去ってしまうこともある。良いものは早い者勝ちだ。

ラジオで救援物資が届かず混迷極めていると言っていたな。その影響が早くも現れているようだ。

一生懸命瓦礫をどかしてはその中にあった使えそうな木材やガラクタを何とか探し出す。
少しでも役に立つものがあれば持ち帰りたい。
医療物資や食料があれば最高なんだがこの状況を見る限りそれは望めそうにないな。

俺がこの家屋の中を探し回っていると一人の男が背中から近づいてきた。


※音を立てた時、誰かが確認しに近づいてくることがある。

幸い、夜盗とかではなくこの辺を見て回っているだけらしい。
話をすると、男も小さい頃からこの教会に通っていたらしい。あの頃は楽しかった、あの頃は幸せだったと男は呟く。
俺は深い溜息をついた後一言ぼやいた。

「よせ。そんな事を呟けば生きる活力が失われる。」

それだけ言い残して俺は再び瓦礫の山から使える資材がないか探索を再開した。

・・・・遠くから男のひとり言が聞こえた。

「なぜ・・・なぜ自分ばかりがこんな目に・・・。」

俺の忠告を無視し、幸せだった過去を思い出しては現実と比較し悲観に暮れてしまったのか。
それとも俺の冷たい態度に心を痛めたのか。
俺にはわからないが関わる気もない。

俺も辛いんだ。これ以上ないくらいに。


※プレイヤーが離れているにしか呟かない台詞がある。

・・・もう午前4時だ。
夜にも戦闘が行われるようになったとはいえ、朝や昼と比べれば優しいもんだ。
日の出を迎えれば全域でまた戦闘が繰り広げられる。そうなるまえに隠れ家に戻らなければ。

この探索地から見つけた残り少ない資材を脇に抱えて隠れ屋に走って戻っていった。

会話を交わしたあの男の台詞が脳裏の中で繰り返される。

俺はある事を少しずつ感じていた。
俺達の死期は近いんじゃないのかと。

もう一度一度だけで良い。俺にも幸運が訪れてくれないだろうか。この隠れ家を見つけたこと以上の幸運。

たとえを挙げると・・・停戦とかな。



(続く)


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