よくわからない日常・4


オープニング : 第一話 : 第二話 : 第三話 + 第3.5話 : 第四話 : 第五話 : 第六話

第七話 : 第八話 : 第九話 : 第十話 : 最終話


オープニング




「神に忘れられ、全ての者がその世界を忘れた時。その世界は無に帰る・・・」

「永遠というものは存在しない。いつかは忘れられ世界は無に帰ってしまう」

・・・。

・・・・・・・・・・・・・。


「それは神と戦うと言っているようなものだ」


・・・・・。



「この世界は・・何処へゆくというのだろうな?」


・・・・。

・・・・・・・・・・・・・。



「過去の出来事がどんどん小さなものに見えて行くな」

「・・・・今度の敵は目に見えない。原因も追求できない。
・・・・・残された選択肢は限られている」



・・・・・






「今を楽しむ。それでも十分な選択肢じゃないのか?」



「お前らしい」






第一話

黒い渦がアノマラド大陸を包み込もうとしたあの事件から一カ月ほど経過した。
ギーンの協力も受けてキュピルの家は再建され、それと同時にクエストショップも再建された。

そして更に二カ月後。行方不明となっていたキュピルだったが突如幽霊刀を持って帰って来た。
キュピルから異様なオーラーを感じつつもキュピル本人からは何も言わずにただ「何もないよ。」
っと言うだけなので普段通りの生活に戻った彼等。


・・・・しかしあの頃と比べて何処か変わってしまったキュピル。
普段はいつもと変わらないが時々暗い表情を見せる時もある。
何かがあったのは明白。しかし本人は一向に語り出そうとしない。


・・・・。


三ヶ月経過したアノマラドの世界に戻ってきたキュピル。
その三カ月の間に面倒な事は全て片付けておいてもらったようだ。
家もクエストショップもナルビクにしっかり再建されており構造も全く変わって居なかった。
ただ唯一。一部の家具などは当然変わっておりファンの発明した機械の殆どは無くなっていた。
流石にそこまでは復旧できなかったようだ。

始め、キュピルがジェスターに会った時キュピルはおどいた表情を見せた。
キュピルの中ではてっきりエユの元へと帰ったと思っていたようだ。

現在エユはアノマラド連合軍の指揮官を務めているらしくこのアノマラド大陸を平和な大陸にしようと
懸命に活動しているようだ。その際、エユはジェスターに「楽しい事は何一つないからまたキュピルの元へ行きな」
っと命令しジェスターはその命令に従ってキュピルの元にいるようだ。

・・・っということはいつかはジェスターが居なくなってしまう日が来るのだろうか?



・・・それからまた数週間が経過した。






==クエストショップ

ブデンヌ
「っというわけだ。お前等も出せ。」
キュピル
「依頼っていう形で受理していいか?」
ブデンヌ
「ええい、何でも良い。今回はアノマラド大陸一活気ある街にしたいからな!!
認定されればこの街にも人が来る!そうなればファイトクラブだって活気付く!!」
キュピル
「その方程式は微妙に間違っていると思うが・・・まぁ、いいか。よし、出そう」
ブデンヌ
「流石はキュピルだ。物分りが良い」
キュピル
「その代りちょっと条件っと」

そういってキュピルが書類にペンで殴り書きする。

キュピル
「ほい」
ブデンヌ
「・・・・場所代無料だと」
キュピル
「当然」
ブデンヌ
「こちとら場所代で儲けr・・・」
キュピル
「儲け?おや?」
ブデンヌ
「・・・くそったれ!まけてやる!!その代りちゃんと出せよ!!」
キュピル
「まかせておくれ」

そういうとブデンヌが外に出て行った。
今の話を聞いて何人か人が集まって来た。

ジェスター
「出すって何やるのー?」
キュピル
「お祭り。」

全員顔を見合わせた。

キュピル
「好きな場所に屋台を置くと良い」







==ナルビク

ヘル
「おい、俺の隣に出すとはいい度胸してるな。」
輝月
「ふっ、お主こそ良い覚悟しておるな?まぁお主ではなくワシの方へ客が来るのは明白じゃがな」
ヘル
「へっ、言ってくれるぜ。後で泣きを見るのは輝月、お前だからな」
ファン
「何で隣に、しかも同種の出し物を出すんですか」

キュピル
「・・・何か知らないが重なってしまった。しかもよりによってあの二人だ。まぁ、なんだ。
全部自分一人で出し物建てて営業すると言ってるんだから別に大丈夫だろう」
ファン
「だといいんですけど・・・」

ヘルが自慢の馬鹿力でドンドン機材などを運んで行く。
それに対し輝月は若干スローペースだ。まぁ仕方ないと言えば仕方ない。

ファン
「ところで二人は何出すんですか?」
キュピル
「ヘルはタコ焼き、輝月はお好み焼き」

ファン
「・・・・・・・」
テルミット
「(ヘルさんが作ったたこ焼き・・・)」
琶月
「(師匠が作ったお好み焼き・・・)」
キュピル
「・・・・・・・」

ファン
「とりあえず僕はブデンヌさんの所にいって使用するスペースをまとめた書類を渡してきます。」
キュピル
「わかった。・・・そういやファンは出し物何かやらないのか?」
ファン
「やりますよ。後でA-5ブロックに来てください」
キュピル
「了解」

そういうとファンは何処かに行ってしまった。


ジェスター
「わぁ〜〜」

ジェスターが団扇を両手に持って走り回っている。

ルイ
「あぁ、ジェスターさん。手伝ってください」
ジェスター
「んー?扇いであげるから頑張ってー」
ルイ
「荷物を運んでほしかったです」

キュピル
「ルイは何を出すんだ?」
ルイ
「ふふふ、聞いてびっくり。お化け屋敷です!」
キュピル
「屋台の域を越す気か・・・」

ルイ
「キュピルさんは勿論来てくれますよね?」
キュピル
「い、一応行こうか」
ルイ
「楽しみにしててください。ふふふ・・・・」

その後ろをジェスターと琶月が歩いて行く。

キュピル
「恐ろしいな・・・。で、ジェスターと琶月は?」
ジェスター
「ルイのお手伝いー」
琶月
「ジェスターさんと同じく」
キュピル
「そうか。まぁ頑張ってくれ」
琶月
「でも幽霊苦手なんですよね・・・」
ジェスター
「私も・・・」
キュピル
「ルイは人選間違えている」


二人はそのままルイの後を追って行った。
・・・すると今度はテルミットが沢山の弓を担いで歩いて来た。

キュピル
「ん、そんな沢山の弓を持って何をするんだ?」
テルミット
「射的をやります。景品用意するのが大変ですけど・・」
キュピル
「なるほど。テルミットらしいと言えばテルミットらしい」
テルミット
「でも景品は助っ人が用意してくれると言っていたので凄い助かります」
キュピル
「助っ人?」
テルミット
「友人Aって名前だったと思います」
キュピル
「景品全部ジェスター関係になるぞ」

テルミット
「・・・ま、まぁ・・・。とりあえずよかったらキュピルさんも来てください」
キュピル
「おう」

そういってテルミットが再び何処かに歩き始めた。
すると今度はディバンがコンパスやら懐中電灯やらトレジャーハンターに必要な道具を運んでいた。

キュピル
「何をやるんだ?」
ディバン
「ルイのお化け屋敷を手伝うことにした。ま、本格的な物を作ってやる」
キュピル
「ディバンがお化け屋敷を手伝うならこれは本気で怖い事になりそうだな・・・」
ディバン
「コンパスもって歩かせるからな、覚悟した方が良い」
キュピル
「う、うーむ」
ディバン
「で、キュピル。お前は何を出すんだ?」
キュピル
「うーん、既にヘル、輝月、ルイ、テルミット、ファン・・・っと5つも屋台出しているんだよな・・・。流石に5つも出すと
管轄がかなり面倒だから俺は全ての屋台を手伝う形を取るよ」
ディバン
「良いとこ取りって奴か」
キュピル
「まぁそう言わないでくれ。とにかく人が必要な時は言ってくれ」
ディバン
「わかった」

そういうとディバンは去って行った。



キュピル
「さて、誰から手伝おうか・・・」

思わず頭の中で選択肢が浮かんでくる。
・・・とりあえず一番心配な輝月とヘルの様子を見るとしよう・・・。



二人はクエストショップの近くで出すことになっている。
食材関係は自分の部屋に置いてある冷蔵庫に置けばいいので近い方が取り出す時楽だ。
見るとさっそくヘルは屋台の骨組みを完成させたようだ。輝月はどうも上手く組み立てる事が出来ていないようだ。

輝月
「ぬぅ・・」
キュピル
「輝月。手伝おう」
輝月
「む、お主の力を借りるまででもない」
キュピル
「の割には全く組み立てられていないようだが・・・」
輝月
「ええい、うるさい!」

隣でヘルがニタニタ笑っている。それが輝月の癪に触るのだろう。より一層イライラし始めている。
輝月にばれないように手信号で「今だけやめてくれ」っと伝える。ヘルが頷き作業に集中し始めた。

キュピル
「こういうのはまず土台からしっかり作って行く事が大事だ。
それと一個ずつつなぎ合わせていくと面倒な事も起きやすい。まず土台は土台で組み立てて
次は屋根は屋根で一気に組み立てた後二つを結合させる。全て限界まで差し込んでボルトで締めれば
しっかりはまるはずだ。骨組みは作っておくから、他の機材とか布とか持ってきてくれ」
輝月
「ふっ、ならば特別に任せよう」
キュピル
「(プライド高いな・・・)」

一番最初に来てよかった・・・。心の底からそう思う。
実際に組み立てると意外にボルトの締りが悪くキュピルも若干苦戦し始める。

キュピル
「ん、これ思ったより締り悪いな・・・。よいしょっと」
ヘル
「キュピルさん、ここはこうやってこうやる方が上手くはまります」

ヘルが棒を差し込み土台ごと持ち上げてガンッと大きな音を立てて無理やり叩きつける。
一応はまったようだ。

キュピル
「壊すなよ」
ヘル
「壊れた時は・・・弁償しておきます」
キュピル
「当然だが頼むよ

しかしヘル。輝月と勝負するのはいいがたまには手伝ってやってくれ。仮にもお前のが歳上な訳だからな・・・」
ヘル
「・・・気が向いたら」
キュピル
「やれやれ・・。ところで調理の方は自信あるのか?」
ヘル
「任せてくれ。たこ焼きはよく部屋で作って食ってるので」
キュピル
「なに、作ってるのか!?」
ヘル
「もしやたこ焼きお好きで?」
キュピル
「大好物だ」
ヘル
「祭りは確か明後日なのでぜひ来てくれ。旨いたこ焼き用意しますんで」
キュピル
「楽しみにしてる」

するとちょうど輝月が屋台にかける布や鉄板などを運んできた。
輝月が来るなりヘルは自分の作業に戻ってしまった。

輝月
「ん、建ててくれたようじゃな」
キュピル
「一応。ところで輝月。お好み焼きを作るみたいだが普段調理するのか?」
輝月
「普段は琶月にやらせておるが私かて料理ぐらいは出来る」
キュピル
「お好み焼きはどのくらい作った事がある?」
輝月
「・・・・・・」
キュピル
「・・・・・まさか数えるほど?」
輝月
「・・・」

輝月が紙に数字を書く。そしてキュピルに手渡す。
・・・紙には「1000回以上」と書かれてあった。それを見てキュピルが目を丸くする。

キュピル
「何でこんな!?」

輝月が顔を背けながら小さな声で喋った。

輝月
「・・・私が小さかった頃。我が師匠と共に初めて街に降りた時。そこで食べたお好み焼きが美味くてな・・。
それ以来、自分で作ってその味を楽しんでおってな・・・。」
キュピル
「なるほど・・・。・・・・で、そんな小さい声で言う理由は?」
輝月
「に、似合わぬと思ってな」

キュピルとヘルが吹きだす。
ヘルにも聞かれていた事が分かり輝月が刀を抜刀してヘルを追いかけまわし始めた。
ヘルが大笑いし周りに暴露しながら走って行く。

輝月
「おのれっ!!私を愚弄する者は許さぬぞ!!」
ヘル
「おい、聞いてくれよ!!こいつと来たら変なプライド持ってるんだぜ!!!
お好み焼き作るのが恥ずかしいんだってよ!!」
輝月
「ええい!!!」
ヘル
「っ!本気になることねーだろ!くそ、やってやる!」
輝月
「望む所じゃ!!」

そういうと二人とも武器を抜刀し決闘しはじめた。
周囲に人だかりが出来、どちらかを応援しはじめた。




キュピル
「だめだこりゃ・・・」

・・・当分二人は戻って来ないだろう。
他の手伝いをしよう。

キュピル
「次は何処へ行くか・・・・」

また選択肢が浮かんできそうな台詞を言う。
・・・そうだ、テルミットの方はどうなっているのだろうか。
確か友人Aが協力すると言っていた訳だから・・・。一応一言ぐらい挨拶しておこう。





テルミットの屋台はナルビクのワープポイント付近に出すことになっている。
結構良い場所を取れてるなっと思いつつ移動する。


屋台まで移動するとちょうど友人Aが大量の商品を抱えながらやってきていた。

友人A
「ん、おいすー」
キュピル
「・・・・その背負ってる巨大な風呂敷包みには何が入ってるんだ?」
友人A
「聞いて驚け見て驚け!これぞ友人A様が用意した最高の景品だ!」
テルミット
「楽しみです」

友人Aがテーブルの上に起き風呂敷包みを開く。
中から沢山のジェスターグッズが出てきた。

キュピル
「やっぱり・・・」
テルミット
「・・・・これ景品にするんですか?」
友人A
「ライン生産してもらったジェスター人形。ジェスター最高!!!」
キュピル
「テルミット、助っ人間違えたな」
友人A
「言ってくれるな。だが人形は序の口!真の景品はこいつだ!!」

友人Aがもう一つの大きな風呂敷包みを開く。・・・中から本物のジェスターが出てきた。

キュピル
「ジ、ジェスター!!」
ジェスター?
「・・・?」
友人A
「キュピルのジェスター風に仕上げたジェスターだ!どうだ、似てるだろ?な?な?」
キュピル
「つーか、ペットを景品にするな。人身売買!!」

友人A
「ペットは人じゃねーし」


キュピルが友人Aを外道!と馬頭しながら追いかけまわし始める。

キュピル
「つーか、矢で景品射るんだろ!?サクッと頭に矢が刺さったらお笑いにしかならないぞ
友人A
「馬鹿め。景品番号が書かれた的を用意するんだよ。低能乙!!」

そういうと更に追いかけっこがデッドヒートし二人とも何処かに言ってしまった。

テルミット
「・・・自分で景品用意したほうがよさそうですね・・」

偶然友人Aが連れてきたジェスターと目が合う。首をかしげて「ここはどこ?」っと言いたげな目でテルミットを見る。
しばらくしてジェスターが首をかしげた。

テルミット
「(・・・あ、可愛いかも)」









キュピル
「逃げられた・・・」

見失ってしまった。・・・まぁ、いいか。

ルイ
「あ、キュピルさん」
キュピル
「お、ルイ」

ちょうどルイの出すお化け屋敷の所まで走ってきていたようだ。
ルイの出すお化け屋敷はナルビクのワープポイントの反対の位置にあり
その中でも隅にあるため場所としては若干悪い。その代り場所を広く取っているため
ポイントとしては五分五分だろう。

ルイ
「ちょうど良い所に来てくれました!今から強力な魔法を詠唱するのでぜひ見てほしいなーって思ってました」
キュピル
「ほぉ、強力な魔法・・・一体どんな魔法を詠唱するのだろうか・・」
ルイ
「ふふふ・・・見ててください。」
ディバン
「実は俺達も知らない。少し楽しみにしているが・・」
ジェスター
「何が出るのかな?」
琶月
「鬼が出るか蛇が出るか・・・うぅ・・」
キュピル
「何で落ち込んでいる」


しばらくして目の前に巨大な魔法陣が現れた。
魔法陣の上にはたくさんの機材や木材が置かれておりしばらくすると魔法陣が高速回転し始めた。

ルイ
「せいやっ!」

ルイが気合を入れて叫ぶと凄まじい地響きと共に物凄い勢いで木材や機材が組み立てあげられていく!!
そしてたったの数分で大きなお化け屋敷が完成してしまった。

ジェスター
「ルイすごーい!!」
キュピル
「おぉ!これは凄い!!」
ディバン
「こいつは魂消たな・・・。こんなことも魔法で出来ちまうのか」
琶月
「びっくりしました・・・凄いですね」
ルイ
「ふふふ・・・」

ルイが優越感に浸っている。

キュピル
「これは建物の中はどうなっている?」
ルイ
「あくまでも建築したばっかりですので内装は殆ど出来あがって居ません。
これから魔法を使ってドンドン飾る予定です」
キュピル
「ほぉ・・・」
ルイ
「・・・あ、でもキュピルさんにはとびっきり驚いて貰いたいので内装は手伝わなくて結構ですよ」
キュピル
「ん。・・・嫌な予感しかしないが・・・まぁ楽しむ側として回っていいのならありがたく回らせてもらうよ」
ジェスター
「えー!キュピルだけ遊ぶなんでずるーい!」
ルイ
「・・・あ、でもほら!ジェスターさん!驚かす側って楽しいですよ!」
ジェスター
「んー・・・」

ジェスターが少し考えた後

ジェスター
「やっぱり驚かす側に入るー。驚きたくなーい!」
ディバン
「懸命だな」
琶月
「私もそうします・・・」

・・・ルイは人選間違えていなかった?

ルイ
「ささ、では私達は内装に入りましょう」
ジェスター
「はーい!」
ルイ
「ではキュピルさん。また後ほど」
キュピル
「おう、期待してるよ」
ルイ
「ふふっ・・。」

ルイが怪しげな笑みを浮かべて完成したばっかりの建物へと入って行った。
・・・・さて、最後にファンの屋台を確認してみるとしよう。一体何をやるのだろうか。




キュピル
「えーっと、ここがA-5?」

キュピルがA-5ブロックまで移動する。ここはナルビク中央エリアなので最も人が集まる場所である。
なのでファンは相当良い場所取ったっというのがわかる。

ファン
「あ、キュピルさん。こっちです」
キュピル
「お」

大分こじんまりしているが確かにファンの屋台があった。
屋台には沢山の機械が並べられていた。

キュピル
「これは?」
ファン
「僕が作った便利グッズです。五種類ありますよ」

そういうとファンが箱から一つの機械を取り出した。
大きさは手のひらサイズで四角い箱に煙突のような物が一つくっついている。

ファン
「これはマナを自動的に溜めてくれる機械です。
大気にある環境マナを集めて一定量蓄積し、この煙突に口をつけて吸いこむと
集めたマナを体内に取り込む事が出来、MPが回復する機械です」
キュピル
「これは売れる!・・・俺も魔法が使えればなぁー・・・」

ファンが目でキュピルの腰につけている刀を示した。

キュピル
「あ、霊術はMP使わないよ。むしろスタミナ消耗する」
ファン
「そうでしたか」
キュピル
「他は?」
ファン
「スタミナを消耗するならこれ何か如何でしょうか」

ファンがさっきの機械と似たような物を取り出した。

キュピル
「これは?」
ファン
「さっきの機械をスタミナ回復剤へと変換したものです。
これも持ち歩いているだけで大気中のマナを吸い取り使用者のスタミナを回復させるものです」
キュピル
「買った!」
ファン
「問題点としてはMPと違って非常に不味いことです」
キュピル
「・・・・」
ファン
「訳のわからない液体を作る訳ですから」
キュピル
「それ言わない方がいい。
他は?」
ファン
「そういえばキュピルさんは魔法を扱う事ができませんよね」
キュピル
「不服だけどまぁそうだな・・・。」
ファン
「そんなキュピルさんにこの機械をお勧めします」

ファンが今度は直径30cm程のハンドガンを置いた。さっきのと比べると大分大きい。

キュピル
「これはルイの持っているハンドガンと似ているようだが・・・・」
ファン
「これも先程の機械と同じ仕組みで待機中の環境マナを吸い取り蓄積したマナを
破壊魔法へと変換して魔法弾を射出する機械です。横のツマミを変えることで三種類の魔法弾が放てます」
キュピル
「買った!!」
ファン
「2万Seedですがキュピルさんなら無料で渡しますよ。」
キュピル
「価格が屋台ってレベルじゃない件について」

ファン
「やはり製作費だけはかかってしまったので・・・」
キュピル
「・・・まぁ冒険者には売れると思う。」

そういってキュピルが2万Seedを財布から取り出しファンに渡す。そしてファン特製のハンドガンを取る

キュピル
「とりあえずその2万Seedは投資だと思ってくれ。」
ファン
「助かります」
キュピル
「ところで自動的にチャージしてくれる訳だがチャージ時間と威力について教えてもらっていいか?」
ファン
「そのハンドガンはMP150まで蓄える事が出来ます。一時間で30程蓄えます。」
キュピル
「ということは一晩寝ればフルチャージされる所か・・・」
ファン
「そうなりますね。一番左にツマミを動かしますと通常の魔法弾を発射します。属性は無です。
一発放つたびにMPを3消費します」
キュピル
「っということはフルチャージから連射して50発・・・あんまり長持ちはしないんだな」
ファン
「あくまでも価格に見合った性能なので・・・。威力もそんなに高くありません。
それでも人に向けて100発全て放つと恐らく死ぬと思うので気をつけてください。」
キュピル
「本物の銃弾は一撃で絶命させることもあるからそれと比べると威力は低い・・・。
けれど実際に人を殺せてしまう道具・・か。そんなものを屋台で販売していいのだろうか
ファン
「その点は安心して大丈夫です。街中では放てないように設定していますから。
それに100発も撃てませんし当たりませんから」
キュピル
「まぁ、それもそうだな」
ファン
「ツマミを真ん中にしますとMPを10消費してバーストを放ちます。よく僕達が使う魔法ですね。」
キュピル
「マイナーバーストなら詠唱できるんだがなぁ・・・。」
ファン
「問題点としては三秒に一発しか撃てないので連射は効きませんね」
キュピル
「ふむ」
ファン
「威力は先程の魔法弾と比べますと両方とも全段フルヒットさせても魔法弾の方が威力は高いと思います。
瞬間火力を重視した設定ですので・・・」
キュピル
「なるほど・・・。確かに一回の戦闘を長引かせると大変だからな・・・。」
ファン
「最後に一番右にツマミを動かしますと現在チャージされているMPを全て消費して強力なビームを発射します。
威力は当然MPに比例しますのでここぞと言う時に使うのを勧めしますね」
キュピル
「了解。・・・・おっと、すっかり話しこんじまった。ちょっと周りを見てくるよ。
後で残り二つの機械も見せてくれ」
ファン
「分かりました」


意外と凄い物を売っていた・・・そう思うキュピルであった。






==夜


すっかり辺りは暗くなり所々で前夜祭を見かける。
・・・正確には明日やるものなのだが・・・言うとしたら前々夜祭?

一旦クエストショップに戻る。ちょうど輝月とヘルの屋台の前を通っだが輝月しか居なかった。

キュピル
「ん、ヘルは?」
輝月
「食材の買いだしに行ったぞ」
キュピル
「輝月は行かなくていいのか?」
輝月
「食材というのは新鮮な物を持ってくるべきだ・・・。今は買う時ではない」
キュピル
「何だか・・・輝月が言うと少し違和感を感じる・・・」

・・・もしかすると調理名人かもしれない・・・。
もちろん今の発言は輝月にとって少し癪に障ったらしく少し目を細めている。

キュピル
「冗談冗談!それより他に手伝う事はないか?」
輝月
「今日はない。明日、買いだしを手伝ってくれぬか?」
キュピル
「了解」
輝月
「では私は今日の作業を終わりとする。さらばじゃ」

そういうと輝月はクエストショップに戻って行った。
・・・テルミットの方はどうなっただろうか。





キュピル
「・・・・・」
テルミット
「あ、キュピルさん。他の方の屋台はどうでしたか?」
キュピル
「特に問題はないが・・・唯一あるとしたらテルミットの屋台だな」
テルミット
「え?僕ですか?」

景品が並べられているが全部ジェスター関係のグッズだ。
・・・洗脳されたか?

キュピル
「・・・洗脳された?」
テルミット
「い、いえ!・・・でも少しジェスターも可愛いかなって思ったので・・」
キュピル
「・・・まぁ、友人Aみたいに変態趣向に走らなけr・・・」
友人A
「流石はテルミット!キュピルよりよく理解している!!」
キュピル
「出たな!友人A!!」

再び友人Aを追い掛ける。

友人A
「久々にガチ逃げ。こういう事が起きても逃げなかったのが昔の俺なんだよな。今の俺は逃げてばっかりだから困る」
キュピル
「久々にガチ追い。追い掛けても途中で諦めるのが昔の俺なんだよな。今の俺は最後まで起きかけるから困る」
友人A
「困るんだったら追いかけるな!」
キュピル
「困るんだったら逃げるな!!」
テルミット
「(矛盾・・・)」




・・・・結局一時間ほど追いかけっこが続き二人とも疲れた挙句、外で寝てしまった。



==翌日

・・・・。

・・・・・・・・・・・・。

キュピル
「・・・・はっ・・・」

すぐに起き上がり時刻を確認する。
・・・・午前六時。しまった・・・・完全に外で寝てしまった・・・。

キュピル
「むぅー・・・。やられた・・・。・・・帰るか」

朝の濃霧に包まれたナルビクを歩く。
そして玄関について初めてある事に気がついた。

キュピル
「・・・・!!ぶ、武器が無い!!」







ディバン
「なに?武器が盗まれただと?」
ファン
「盗まれた物は一体?」
キュピル
「俺の愛用の剣だ。幽霊刀は無事だが・・・」
輝月
「ふっ、幽霊刀は盗られるはずないじゃろう?お主以外の者が触ればすぐに刀が反撃してくるからな」

そういいつつ輝月が幽霊刀に触れ抜刀しようとする。
が、すぐに反撃を貰い苦い顔をする。

輝月
「・・・・やはり私には扱えぬか」
琶月
「師匠・・・」
キュピル
「試したいなら試したいって言えばいいものを・・・」
ヘル
「・・・犯人はまだナルビクにいると思うか?」
テルミット
「僕の予測では犯人は後二日はいるはずです」
ヘル
「二日?何故?」
テルミット
「こういったお祭り時は荷物管理が怠りやすくなります。結果的に盗みやすい状況が続きますから犯人は今が
稼ぎ時のはずですから・・・。
スリをした瞬間を見つけ犯人を追えば盗んだ物を保管する場所に辿りつくはずです」
ルイ
「何だか・・・少し面倒ですね・・・。スリっていうのは本来見つからないように行うものですから・・・。
見つけるのはかなり骨がいりそうですね・・・」
ジェスター
「キュピル盗まれちゃうなんてださーい」
キュピル
「今回は本当にダサイ。やっちまった・・・。」
ヘル
「このまま話しあっても仕方ねーよ。テルミット。俺達でナルビクの出入口を監視するぞ」
テルミット
「はい」
ディバン
「屋台はどうする気だ」
ヘル
「俺はもう完成してる。テルミット、お前は?」
テルミット
「僕はまだですが残りは友人Aさんがやってくれるはずです」
ヘル
「なら大丈夫だな。よし、見張るぞ」
キュピル
「すまない。迷惑かける」
ヘル
「気にしないでください。」

そういうと二人は出て行った。

ルイ
「とりあえず・・・どうしましょうか?」
キュピル
「皆はいつも通り作業に戻ってくれ。俺は俺で少し調査する。もし俺の剣を持ってる者を見かけたら
取り押さえてくれ。・・・流石に盗んだ物を持ち歩く奴はいないだろうけど・・・」
ジェスター
「わかったー」
琶月
「わかりました!」
輝月
「うむ」
キュピル
「よし、作業開始だ。」


全員それぞれの持ち場に戻り作業し始めた。
ただ、輝月だけが残った。

キュピル
「ん?どうした?」
輝月
「買いだしだ。・・・どうする」
キュピル
「あぁ・・・。手伝おう。どっちにしろ犯人が真昼間からやるとは思えないだろうから」
輝月
「んむ。同意じゃ。では行こうか?」
キュピル
「ところで買いだしってどこで買うんだ?」
輝月
「んむ。場所は厳選したぞ。まずナルビクは魚介類以外は当てにならぬな」
キュピル
「まぁ、そうだよな・・・せこい食材が蔓延しているし・・」
輝月
「私が厳選した結果、ライディアならば信頼できると判断できた」
キュピル
「また随分遠いな・・・。まぁ、でもワープポイント使えb・・」
輝月
「ダメじゃ。・・・ワープポイントを使用すると食材に悪影響を与える。ワープポイントは使うな」
キュピル
「なんという上から目線。しかも無理難題おしつけてきた。もうだめだ」

輝月
「ふっ、お主が先に言いだしたからな?安心せい、行きはワープポイントを使えるぞ」
キュピル
「そういう問題じゃない・・・」




==ライディア


ライディアに到着すると沢山の人が溢れかえっていた。

キュピル
「ん?珍しいな。ライディアがこんなにも人がいるなんて」
輝月
「キュピルよ、はぐれるなよ?」
キュピル
「俺は子供か。安心しろ、お前さん程目立つ髪は中々居ない」
輝月
「ふっ・・・」
キュピル
「・・・」


輝月が満足そうに髪を靡かせる。

ファン
「おや、キュピルさんと輝月さん」

その時ファンに話しかけられた。

キュピル
「おや、ファンか。どうしてここに?」
ファン
「もっとこの機械を量産しようと思ったのですがコストが高いのでライディアの発明家、ラディックスさんと
相談しに来ました。」
キュピル
「なるほど、確かにあの機械を量産化出来たらある種商売できちまうからな・・・。いや、今の段階でも十分出来る」
輝月
「商売?ファンは何を発明したのだ?」
ファン
「今度ゆっくりお見せします。」
輝月
「うむ、期待しておるぞ」
ファン
「上から目線ですね」

キュピル
「とりあえず早い所食材買おう、輝月」
輝月
「そうじゃな」
キュピル
「そいじゃファン。また後で」
ファン
「はい」

ファンが高い所に作られた小屋へと歩いて行く。

キュピル
「さて、ライディアのどこの店で買うんだ?」
輝月
「『緑の樹の魔法商店』と『赤い実雑貨店』と『香草のかおり』という店三つだ。ちと忙しいぞ」
キュピル
「・・・ドンドン回ろう」
輝月
「んむ。」

まずは一番近い緑の樹の魔法商店に入る。


ピニャー
「いらっしゃいませー!・・・・あ!いつかの赤い人!」
輝月
「・・・赤い人とは失礼な」
アイゾウム
「おや、輝月さんにキュピルさん。お久しぶりですね」
キュピル
「あの説はどうも。お陰でルイも元の姿に戻れた」
アイゾウム
「私は大したことはしていません。それより今日はどうかなされましたか?」
輝月
「ナルビクで店を出す事になっての。そのための食材をちとな?」
アイゾウム
「なるほど。でしたらピニャーにどうぞ。お料理は私よりピニャーの方が詳しいので」
輝月
「んむ」
キュピル
「俺は食材についてはあまり詳しくないからなぁ・・・。荷物運びか・・・」

しばらくアイゾウムと雑談することにした。

キュピル
「それにしても今日は人が多いですね。何かあるんですか?」
アイゾウム
「何もありませんよ。ナルビクの宿が一杯ですのでライディアで泊まるという方が殆どです。」
キュピル
「あー・・。なるほど。それは確かに納得だ。」

ブデンヌの宣言通りこれは本当にアノマラド大陸一賑やかなお祭りになるかもしれない。

アイゾウム
「私もナルビクに行きますよ。キュピルさんは何か出し物を出すのですか?」
キュピル
「自分は何も。仲間が五つ程出してるのでよかったらそっちに顔を出してやってください」

そういうとナルビクのお祭り用の地図を渡す。出店する所に丸をつけてある

アイゾウム
「わかりました。楽しみにしていますよ」

輝月
「キュピルよ、出番じゃ」
キュピル
「わかった」

・・・ドサッと袋を8つ置く。

キュピル
「こんなに買ってどうするんだ!?」
輝月
「これは調味料じゃ。」

中身を確認する。
何かの薬草や果実を沢山買ったようだが・・・。

キュピル
「・・・これお好み焼きの何に使うんだ?」
輝月
「秘密じゃ」
キュピル
「ふむ・・・・。」

しかし量が量だ。この時点でキュピル一人で持てる量の限界を超えていた。

キュピル
「・・・先にこれナルビクに運ぶか・・・一度に運べるとは思えない・・・」
輝月
「そうか?・・・お主ならもっと怪力を発揮すると思っておったが」
キュピル
「それはヘルに言え!」

愚痴をこぼしながら袋を六つ持ち輝月に二つ持たせた。

輝月
「女子に持たせるとはお主。男じゃないのぉ」
キュピル
「鬼が何か言ってる・・」
輝月
「ほぉ、鬼か。では心も鬼にしてお主に袋を更に二つ持たせよう」
キュピル
「勘弁してくれ!」

キュピルが走ってペナインの森へ向けて走った。
輝月もあーだこーだ言いながらキュピルの後を追う。




ヘル
「・・・・ん、あれはキュピルさんか。・・・それと輝月か」

キュピルが物凄い大量の荷物を輝月に運ばされていた。
そのまま別の出入口からナルビクへと入って行った。

ヘル
「・・・パシらせるとはな」




・・・数時間かけてやっとナルビクに到着した。




キュピル
「ぜぇ・・・・」
輝月
「後二往復じゃな」
キュピル
「流石に時間が間に合わない。誰か助っ人を呼ぼう」
輝月
「・・・確かに時間が惜しいな。今から調味料の作成にかからねば間に合わなくなるかもしれぬな。
キュピルよ。必要な食材は紙に書いておくから買ってきておくれ」
キュピル
「・・・」

言いだしっぺだから仕方ない・・・そう割り切って紙を受け取る。

キュピル
「・・・・・・・」

必要な食材の量を見て肩を落とす。
・・・・さっきよりもっとたくさんの食材を買わなければいけないようだ。

輝月
「では頼んだぞ」


・・・・。

今琶月の気持ちがよくわかった気がする。







==ルイのお化け屋敷


ルイ
「え?手が空いてる人ですか?」
キュピル
「そう。誰か来てほしいんだが・・・」
ルイ
「うーん。思ったより内装に時間がかかってるので・・・・。申し訳ないですけど
誰も出せそうにありません・・・」
キュピル
「そうか・・・。まぁ仕方ない」
ルイ
「あ・・・でもやっぱり私行きましょうか?」
ディバン
「おい、指導者ナシにどうやって内装させる気だ」
ルイ
「うっ・・・それもそうですよね・・・」
キュピル
「無理に来なくてもいいよ。他を当たる」
ルイ
「すいません・・・」




==テルミットの射的屋


友人A
「ん、キュピルじゃないか。話は聞いたぞ。災難だったな」
キュピル
「本当に災難だ。お前が潔く捕まれば!!」
友人A
「俺に言うな。疲れて寝る奴が悪い」
キュピル
「正論すぎて反撃できない・・・。で、店の準備は完了したのか?」
友人A
「見て驚け聞いて驚け!!」
キュピル
「逆な」

友人A
「うるせぇ。最強の射的が出来あがった。明日見にこいよ」
キュピル
「言われなくても。・・・で、つまり作業は終わったんだな?」
友人A
「おう、終わったが?」











==ライディア

友人A
「こんな荷物運び聞いてねーしwwwwwwwwwwwwwww」
キュピル
「草生やすな!草むしりする人の身になれ」
友人A
「お、俺が笑うたびに草生えんのか。おもしれぇwwwwwww」
キュピル
「てめーこれ以上俺になおいsぢおあhそあjfどあ」
友人A
「うっせあdさでゃhふぃあshふぃあ」








輝月
「・・・・で、一体お主等に何があった?」
キュピル
「あー、もうこんな奴と付き合ってる事自体が馬鹿らしい!!」
友人A
「だがそれがいい!」
キュピル
「全くだ、このドテカボチャめ・・・」

輝月
「・・・??まぁ、買ってきてはくれたようじゃな。礼として明日はお好み焼きを試食する権利をやろう。」
友人A
「褒美としてオプーナを購入する権(ry」
キュピル
「消えろ」

輝月
「・・・・???」

輝月が目を細めて一体何をやっているんだかっという表情で二人を眺める。





キュピル
「あー、しまった・・・。買いだしやっていたらもう夕方になっちまった。」

友人Aとようやく離れ自由行動が始まったと思ったら既に午後六時を迎えようとしていた。

キュピル
「・・・そうだ、ヘルとテルミットに尋ねてみるか」

クライデン平原1へ続くナルビクの出入口へ移動する。



==クライデン平原1

テルミット
「・・・おや、キュピルさん」
キュピル
「一日中見張らせて申し訳ない」
テルミット
「これも一つの仕事ですから問題ありませんよ。」
キュピル
「それで、怪しい人は見かけたか?」
テルミット
「残念ですがこっちには・・・。ヘルさんの方を訪ねてみてください」
キュピル
「わかった。」


少し南西へ進んだ所にヘルが立っていた。

ヘル
「む、キュピルさん」
キュピル
「どうだった?ヘル」
ヘル
「残念ですが怪しい人は見かけませんでした。」
キュピル
「うーむ・・・」
ヘル
「ワープポイントの方を見てきたらどうですか?」
キュピル
「ワープポイント?」
ヘル
「もう一つ、街間への移動ルートがあることを思いだしたので。琶月がいるはずです」
キュピル
「わかった」



==ワープポイント


琶月
「・・・・あ」
キュピル
「琶月。どうだった?怪しい奴は居たか?」
琶月
「うーん・・・。皆お祭りに必要な機材等を運んでいるようにしか見えませんでした・・・」
キュピル
「・・・ようにしか見えなかった・・・か」
琶月
「べ、別に決して手を抜いていた訳で、で、で、は、は、は!!」
キュピル
「焦りすぎだ。今新たな可能性が浮上した」
琶月
「え?」






==夜・クエストショップ



キュピル
「皆お疲れ様。出し物は完成したかい?」
ルイ
「そりゃもうばっちりです!!絶叫間違いなしですね!!」
キュピル
「・・・怖いな・・」
ジェスター
「私だって嫌だ・・・あんなの・・・」
ディバン
「色んな意味で最悪なお化け屋敷だな・・・」
ヘル
「(一体何があるって言うんだ・・・ゾンビとかは嫌だぞ)」
輝月
「ふ、ワシの方も完璧じゃ。明日はヘルより数倍美味い物を出そうじゃないか?」
ヘル
「言ってくれるな。覚悟しておけよ」
キュピル
「(意気込みは明白なんだが・・・なぁ・・・)
テルミットの方もOKらしいし、ファンは?」
ファン
「ばっちりです。無事量産できたので」
キュピル
「出来たのか・・・」

ファン
「凄い大変でしたけど何とか」

しばらく間を置いてからキュピルが別の話をきりだした。

キュピル
「・・・さて、盗まれた剣についてだが」

周りのムードが一気に変わった。全員真剣だ。

キュピル
「さっき琶月と話をして一つ可能性が浮上した」
ファン
「可能性ですか?」
キュピル
「そうだ。・・・『祭りの機材の運搬に見せかけて実は盗品を運搬している』っという可能性」
ルイ
「・・・・確かに、木箱等に盗品を入れれば外からにはお祭り関係の運搬にしか見えませんね」
輝月
「だがどうする気だ?一々、一人一人中身を見ねばならんのか?」
キュピル
「流石にそれは面倒だ。そこでだ。ブデンヌに頼んで明日、あることをしてもらった」
ジェスター
「ある事?なにそれ?」
キュピル
「検問だ。」
ファン
「検問・・・ですか。よく聞いてくれましたね」
キュピル
「大分嘘を交えたけど・・・。明日万が一この祭りを妨害する者が現れては大変だから
出入り口にはしっかり検問張っておいた方がいいって言っておいた。
ついでに俺の剣見かけたら教えてくれって」
琶月
「なるほど・・・」
キュピル
「・・・まぁラストチャンスは明日だよな。最後まで諦めずに探してそれと同時にお祭りも楽しもう」
ジェスター
「はーい!」
キュピル
「よし、そいじゃ解散。お疲れ様」

全員お疲れ様ですっと答えると各自自由行動を始めた。

キュピル
「(・・・あれがないとかなり困るなぁ・・・。・・・普段幽霊刀で戦う訳にもいかないし・・・うーむ・・・)」
ルイ
「キュピルさん。・・・こういう作戦ってどうですか?」
キュピル
「作戦?」
ルイ
「はい。・・・ごにょごにょ」




==翌日



午前六時。


ブデンヌ
「ナルビクの野郎共!!今日は待ちに待った祭りの日だ!!騒げ騒げ!!アノマラド大陸一活気ある
街だと証明すんぞ!!気合入れてけ!!」

『オッー!!』







キュピル
「・・・・怒声で目が覚めた」
琶月
「同じく・・・。・・・そういえば師匠がいなかったのですが・・」
テルミット
「ヘルさんもいませんでした」
キュピル
「・・・?」

別に朝早く起きてやるような事は何も・・・。
そう思いきや外から何かを焼く音が聞こえた。
窓から覗くとさっそく輝月とヘルが屋台で何か焼いているようだ。
何人か外に出る。

キュピル
「こんな朝早くからご苦労様・・・っと、言いたいが一体何故?」
輝月
「昨日試食するのを忘れていてな。今こうやってテストしている」
ヘル
「こいつと同じだ。」
琶月
「師匠に『こいつ』だなんて言わない!!!」
ヘル
「なら貴様と呼ぼうか?」
輝月
「・・・お主。私を貴様呼ばわりとはいい度胸しておるな?」
キュピル
「貴様って実は褒め言葉だったりする」
ヘル
「なにぃ!?それはマジなのか!?」
キュピル
「貴公って言葉があるだろ?元々は貴族の方を敬意ある呼び方が貴様だった。
今では何故か知らないが殴り言葉言う時に貴様って使われているけど・・・。」
輝月
「ふっ、そういうことならば受け取っておこうではないか?」
ヘル
「ちっ!」
キュピル
「(調子のいい二人だ・・・)」

その時ジェスターが凄い眠そうな顔をしながら外に出てきた。
・・・寝ぼけているのか羊の人形を抱きかかえている。

ジェスター
「お腹減った〜・・・。良い匂いがする〜・・・。」
ディバン
「朝起きてすぐ腹が空くとは若いな。」
ジェスター
「何か頂戴〜・・・」
輝月
「では、口を開くのじゃ。ジェスター」
ジェスター
「あーん」

目を瞑ったままジェスターが口を大きく開ける。輝月が頬り込むように焼いたお好み焼きの端を食べさせる。

ジェスター
「熱い!!!」
輝月
「出来たてじゃからな」
ジェスター
「熱いー!舌火傷したー!!わあああああああああ!!!!」
輝月
「よ、よせ!押すな!」
キュピル
「おっと、危ない」

キュピルがジェスターを抱きかかえる。さっきまで暴れていたのにすぐ大人しくなった。

キュピル
「ジェスターが暴れたら脇の方を持って持ちあげればすぐ大人しくなる」
ジェスター
「・・・・」

髪をふさふさ動かす。
そのまま地面に降ろすと「わぁー」と言いながら自宅に戻って行った。

琶月
「覚えておきます・・・」

その時誰かが外に出てきた。

ルイ
「おはようございます」
キュピル
「おはよう」

ルイがジェスターを抱きかかえながら出てきた。・・・捕まったのか。

ルイ
「琶月さん、ディバンさん。ちょっとお化け屋敷の最終調整を行いたいので来てくれませんか?」
琶月
「えっ!これから師匠のお好み焼きを食べようと思っていたのに!」
ディバン
「俺は構わん」
輝月
「後で食いに来ればよかろうて」
琶月
「うぅぅ・・」
ヘル
「たこ焼きなら今すぐ食えるぜ」
琶月
「別にいい」
ヘル
「・・・・・」


ヘルが針を持って琶月を脅す。
ぎゃーぎゃー言いながら二人は何処かに去って行った・・・。

キュピル
「本当に暇しないな」

キュピルが苦笑しながら答える。
その時ブデンヌがやってきた。

ブデンヌ
「キュピル。」
キュピル
「ん、あぁブデンヌか。どうした」
ブデンヌ
「検問とりあえず設置しておいたぞ。お前の忠告通り街に爆弾を持ち込んできてる奴がいるらしい」
キュピル
「えっ!?」

冗談で言ったつもりが本当に居たようだ。

ブデンヌ
「お前の方も少し巡回してくれ。危ない奴を見つけたらナルビクから叩きだせ」
キュピル
「了解」
ブデンヌ
「んじゃ、祭りを楽しめよ」

そういうとブデンヌは何処かに去って行った。

キュピル
「・・・っというわけだ。ちょっと街を巡回してくる」
ルイ
「わかりました。私達も行ってきます。
・・・あ、そうだ。キュピルさん。」
キュピル
「ん?」
ルイ
「例の作戦はお昼に決行しましょう」
キュピル
「わかった」
ジェスター
「例の作戦ー?なにそれ?」
ルイ
「ふふふっ」
ジェスター
「ルイが怖ーい!!」

そういうと各自それぞれバラバラに行動し始めた・・・。







それから数時間後。

午前10時を過ぎると本格的に人が集まりだしナルビクで人が溢れ始めた。
歩くだけで沢山の人と肩がぶつかり、移動が大変だ。

客A
「おい、前の方どうなってるんだよ!」
客B
「店員なんとかしろよー!」
客C
「物売るってレベルじゃねーぞ!」


キュピル
「どっかで聞いたことある台詞・・・」



しかし凄い人だ。
これだと簡単に盗る事も出来るし簡単に盗られてしまう。
この状態で巡察する方がむしろ危険だ。

キュピル
「と、とにかく一旦人の居ない所に逃げるか」

人の居ない端の方に移動する。

キュピル
「ふぅ・・・。やれやれ」

一息つく。

キュピル
「・・・そうだ。ここからファンの屋台まで近いな」

裏道を通ってファンの屋台まで移動してみよう。




客A
「おい、前の方どうn(ry」
客B
「店員なんt(ry」
客C
「物(ry」
ファン
「押さないでください!!」
キュピル
「あの異常な行列ってまさかここなのか?」

ファン
「あ、キュピルさん!良い所に!ちょっと売り子やってください!」
キュピル
「わかった!」

物凄い売れ行きである・・・。

キュピル
「それにしても凄い人だ!俺達二人でも捌き斬れない!
ファン、こんなに売れたら大儲けなんじゃないのか?」
ファン
「確かに一つ当たり8000Seedの利益を得ることができます。しかしこれを作成するのに
固定費が結構かかってしまいました」
キュピル
「固定費?」
ファン
「はい。固定費というのはその製品を作るのに必要な機材や広告費、何個製品が売れようが作ろうが
一定の費用がかかる費用を固定費と言います。固定費は1.5Mかかっています」
キュピル
「どこからその金持ってきた・・・」
ファン
「借金です・・・」
キュピル
「えっと、この場合いくら売れば元を取れるんだ?」
ファン
「赤字でもなく黒字でもない場所を損益分岐点と言います。この損益分岐点の出し方は
まず限界利益率を求めます。限界利益率の求め方は 売上-変動費=限界利益。
限界利益÷売上=限界利益率。 固定費÷限界利益率=損益分岐点となります」
キュピル
「日本語で頼む」

ファン
「計算式にしてみましょう」

 20000 売上
 12000 変動費
ーーーー
  8000 限界利益
1500000 固定費
ーーーー
    ? 利益

ファン
「変動費とはこの製品を一つ作るのにかかる費用の事です。一つ作れば1万2000Seedの製作費がかかります。
二つ作れば2万4000・・っと比例して増えて行きます。
まずは限界利益を求めましょう。限界利益とは一つ売れた際、いくらの利益が出るかを求める事が出来ます。
20000-12000=8000。つまり一つ売れば8000Seedの儲けが出ると言う事が分りましたね。
次に限界利益率を出しましょう。8000÷20000=0.4。これで限界利益率を求める事が出来ました。
最後に固定費から今求めた限界利益を割りましょう。 1500000÷0.4=3750000。
はい、これで結果が出ました。375万の利益を出せば全ての元を取れたことになります。」
キュピル
「・・・こういうのって誰が考えつくんだろうね・・・。で、結局いくつ売ればいいんだ?」
ファン
「187.5個です」
キュピル
「高額商品の屋台ってレベルじゃ(ry」



そんな事を会話しながら製品を売りさばく事数十分・・・・。
ようやく落ちついて来たようだ。

キュピル
「あー、疲れたー・・・」
ファン
「お疲れ様です。この時点で150個販売していますよ」
キュピル
「お、ってことは後37個売れば元は取れるのか?」
ファン
「正確には38個ですがそうですね」

その時見慣れた人がやってきた。

ギーン
「ふん、一体何の行列かと思えばお前等が出した出し物か」
キュピル
「一国の首相が頻繁に国抜け出していいものなのだろうか」

ギーン
「・・・挨拶もなしにいきなりそれか。」
キュピル
「まぁまぁ。」
ギーン
「で、こいつはファンが作ったのか?」

ギーンが指で摘まんで遠くに離してじっくり見る。

ファン
「そうです。」
ギーン
「・・・相変わらず技術力は高いな。」
キュピル
「・・・そうだ。ギーン」
ギーン
「何だ?」
キュピル
「俺の愛用の剣が盗まれてしまった」
ギーン
「なんだと?お前と言う者がとんだ馬鹿なことをしたな」
キュピル
「全くだ。・・・それで、魔法で俺の剣がどこにあるか分からないか?」
ギーン
「分かる訳ないだろうが!全く、もう少し魔法について勉強しろ!」
キュピル
「何が魔法で出来て何が出来ないのか全く分かりません」

ギーン
「仮に出来たとしたらファンが既に着手してるだろうが」
キュピル
「・・・・それもそうか」
ギーン
「ま、もし闇市場に流れたらその時は俺を呼べ。手を貸そう」
キュピル
「何で一国の首相が闇市場に詳しいのか俺は激しく問い詰めたい」

ギーン
「・・・・」

黙ってギーンがどっかに行ってしまった。

ファン
「・・・あ!ギーンさんからお代貰っていないです!」
キュピル
「なんてこったい!」


すると今度は別の人がやってきた。
・・・ルイだ。

ルイ
「キュピルさん、ここにいたんですね」
キュピル
「あぁ、ルイ。・・・しまった、もう午後一時だったか」
ルイ
「さっそく作戦を実行しましょう」
キュピル
「わかった」
ファン
「何をやるのですか?」
ルイ
「犯人の位置を割り出す奇策です」
ファン
「?」




キュピルとルイが手をつないで人ごみの中をわざと入って行く。
二人共ポケットには財布をわざとチラつかせている。

ルイ
「(もし誰かが盗った所見ましたらお願いしますね)」
キュピル
「(ルイも頼む。)」

・・・・・。




屋台が立ち並ぶ道を歩いて行くと声をかけられた。
輝月とヘルだ。

輝月
「お主等。もう昼飯は食べたか?」
ヘル
「食ってねーなら食ってってくれ!輝月より美味い事を保障してやる!」
キュピル
「そういえばまだ食べてないなぁ・・・」
ルイ
「私もです。せっかくですから頂いちゃいましょうか!」
キュピル
「よし、そいじゃ頂こう」
輝月
「うむ」
ヘル
「よしきた」

二人とも型や鉄板に種を注ぎ込み焼き始める。二人ともかなり手慣れた手つきで調理する。

キュピル
「おぉ、手慣れてるな」
ルイ
「期待できそうですね」

最初に出来あがったのはヘルの方だった。

ヘル
「いよし、食ってくれ」
ルイ
「いただきます!」

カリカリに焼き上がっているタコ焼きに爪楊枝を刺して食べる。

ルイ
「あ、熱い!」
ヘル
「当たり前だ」

キュピル
「熱いのには強い。・・・おぉ、美味いな。こういう外がカリカリしててタコがコリコリした触感出してるのが凄い好きだ。」
ルイ
「あ、しかもネギとかを入れてますね。これは好みが別れそうですけど私は好きですよ」
キュピル
「・・・ん、今違う味と触感が」
ヘル
「そいつはヘル特製の具材だ。タコだけを使って焼くのがタコ焼きじゃない。
恐らく今キュピルさんが食べたのはログルベルクの足肉だ。その軟骨部分だな。」
キュピル
「おぉ、なるほど!こりゃ確かに美味しいし触感が良い!これは中々ポイント高いな」
ヘル
「いよしっ!」

ヘルがどんなものだっとでも言うような目で輝月を見る。
が、輝月はお好み焼きを作るのに集中しているようで目もくれない。

しばらくして

輝月
「お主等。こっちも出来たぞ」

輝月が皿の上にお好み焼きを乗せ小さなヘラを置いて二人に渡した。

ルイ
「あれ、このお皿。私達が使ってるお皿ですね」
キュピル
「皿が必要だと輝月に言われたから貸し出している。」
輝月
「紙皿はお好み焼きの味を変えてしまうからな。紙に長時間触れている食べ物を美味しいと言った奴は舌馬鹿じゃな」
キュピル
「中々言うな。・・・で、皿洗いは一体誰がやっているんだ?」

輝月がキュピルの家の台所を示す。・・・琶月とジェスターがひたすら皿洗いしていた・・・。

キュピル
「・・・・ルイ」
ルイ
「はい?」
キュピル
「お化け屋敷って今やってるんじゃなかったのか?」
ルイ
「あ、夜からですよ。昼にやっても怖くないですからね。」
キュピル
「あぁ・・納得」


琶月
「もぉー!いつになったら解放されるんですかー!!」
ジェスター
「頑張れ〜」
琶月
「ジェスターさんも皿洗いやって!!」
ジェスター
「えー」
琶月
「何でそんな嫌そうな目を・・・」


輝月
「それよりも早くお好み焼きを食べたらどうじゃ?」
キュピル
「あぁ、そうだな」
輝月
「青海苔、マヨネーズはどうする?」
キュピル
「マヨネーズなしで頼む」


輝月が筆でソースを塗り青海苔を振りかける。

キュピル
「いただきます」
ルイ
「キュピルさん、半分ください」
キュピル
「でかいから半分でちょうど良いな」

半分に切って新しい皿に移し替えてルイに渡す。

ルイ
「いただきます!」

二人とも小さなヘラでお好み焼きを小さく切り、そしてヘラに乗せてお好み焼きを頬張る。

キュピル
「・・・おぉ!輝月!このソースどこのソースを使ってるんだ!?」
ルイ
「こんなにスパイシーなソース初めてです!」
輝月
「それは私が作った手製ソースだ。昨日お主に買ってきて貰った奴を材料にしている」
キュピル
「あの果物やハーブからなのか・・・!?」
輝月
「あの中に実はあっただろう?黒い奴じゃ」
ルイ
「もしかしてコショウの実・・ですか?」
輝月
「んむ。それを他のものと調合させてな。お好み焼きに特化させた特別なソースだ。
美味しくないはずがなかろう?」
キュピル
「いや、これは本当に美味しいな。お好み焼きってのは大抵誰が作っても同じ味がするもんだから・・。
それをソースで攻めてくるとは全く想像もつかなかった」
ヘル
「・・・・」

ヘルが少し不服そうな顔をしている。

ヘル
「で、キュピルさん。軍配はどっちにあがる?」
輝月
「引き分けはなしじゃぞ?」
キュピル
「そうだな。俺とルイで同時に美味しかった方を指差すからそれで決めよう」
ルイ
「はい」
キュピル
「せーの」

二人が同時に指差した。
キュピルは輝月。ルイはヘルだった。

輝月
「引き分けはナシだと言ったはずじゃ!!!」
キュピル
「俺に言うな!!!」

ヘル
「ちっ、あと一人いればな・・・」
輝月
「時にルイよ。何故ヘルのを選んだのじゃ?」
ルイ
「あ、確かにソースはよかったんですけど・・・やっぱり歯ごたえがなかったので・・・」
輝月
「ふむ・・・」
キュピル
「あー・・。確かにそれを考えるとな・・・。純粋に味で決めちまったけど総合的にみるとやはり・・・」

キュピルがヘルの方を指そうとした瞬間輝月が物凄い形相でキュピルを睨み思わず腕が止まってしまった。

ヘル
「おい、卑怯だぞ!」
輝月
「む?私は何もしておらぬが?」
ヘル
「いや、今あからさまに睨みで・・・」
輝月
「ほぉ、私にイチャモンをつける気か?いい度胸しておるな」
キュピル
「いや、今確かに俺は凄まじいプレッシャーを(ry」


ヘルと輝月があーだこーだとまた言い争いが始まった。

キュピル
「あー、わかった!今日の売り上げが一番多かった人に軍配をあげよう!!」

そういうと二人とも調理を始め客寄せもし始めた。
・・・・別の所を回ろう。

ルイ
「何だかお忙しいですね。あのお二人も」
キュピル
「そうだな・・・。・・・財布の方も今の所異常もないようだ」
ルイ
「そうですね・・・異常があったほうが本当は良いんですけど・・・」
キュピル
「次はテルミットの所に行こう。」




ワープポイント付近の所まで移動する。
・・・・結構人がいる。
3割ほどはテルミットが運営している屋台にだった。
友人Aも一緒にいるようだが・・・。

友人A
「さぁさぁ!!たったの500Seedで夢のような可愛いジェスターがあなたの物になるかもしれない!!
やらなきゃ損だ!!いや、当てるまでは損だ!!そこの君・・・って、げぇっ!キュピル!!!
テルミット!!隠せ!!!」
テルミット
「えっ!!」
キュピル
「何が隠せだ」

キュピルがすぐに屋台の景品を確認する。・・・・ジェスター人形からフィギュアに写真・・・
謎のDVDにジェスターの卵・・・。後半景品の枠を超えている。

キュピル
「ちょっとまて。このDVDと卵は何だ!!」
テルミット
「た、卵は見ての通りです!そのDVDは・・・えっと・・・」
キュピル
「・・・・・・・」
友人A
「俺が魂を込めて沢山のジェスター盗撮したビデオ集。その名もジェスたん集!!」
キュピル
「(パキッ)」
友人A
「あああああああああ!!!!こいつDVD割りやがったああああくぁwせdrftgyふじこlp;@:「」」

ルイ
「こ、これは・・・ちょっと引いちゃうかも・・・・しれませんね。」
友人A
「ルイは別に引かれても良い」
ルイ
「何ですって!!」

テルミット
「ま、まぁまぁ・・・アハハ・・・」

キュピルが1m程ある大きな人形を両手で掴む。

キュピル
「第一こんな巨大な人形。落とせるのか?しかも少し重いs・・・」
ジェスター人形?
「・・・あ、触らないで。私景品だから」
キュピル
「・・・・・」

そういうと人形そっくりなジェスターが自力で降りてまた棚の上に乗っかった。

キュピル
「・・・・・・・」
ルイ
「・・・・・・・」
テルミット
「キュピルさん。もう何も言わないでください」

友人A
「そうだ。男は黙って語る者だ」
キュピル
「(ポキッ)」
ルイ
「(バキッ)」
友人A
「ああああああああああああ!!!店の柱くぁwせdrftgyふじこlp;@:」

数秒後。屋台が傾きだしバラバラに崩れた。
・・・裏から沢山のジェスターが現れ何処かに逃げて行った。

友人A
「あああああああああああああ(ry」

キュピル
「ルイ。他行こう」
ルイ
「はい・・・」
テルミット
「と、とりあえず店をまず復旧させてそれからまともな物を起きましょう!!」

友人A
「今時普通な物は流行らない。誰かがそう言っていました」
キュピル
「五月蠅い」


もう一本店の柱を無駄にへし折りすぐに何処かに逃げた。





キュピル
「久々に呆れた。色んな事に対してすぐに呆れるのが昔の(ry」
ルイ
「流石に隠し撮りは・・・嫌ですね・・・。普通の人形とか本物は欲しいかなって思いm・・って、あっ・・!」

ルイが慌てて両手で口を押さえる。

キュピル
「ペットの可愛さだと思っておく

ルイ
「そうです!別に変な事は何も!!」
キュピル
「ん、ちょっとまて。ルイ」
ルイ
「は、はい!!な、何ですか!?」
キュピル
「ジェスターの件じゃない。・・・財布どうなってる?」
ルイ
「あ・・・・」

二人ともポケットに入れていた財布がなくなっていた。
・・・やられた!!

キュピル
「やられた!敵は相当のやり手だな!!」
ルイ
「絶対気付くと思っていたのに・・どうやって・・・!?」
キュピル
「・・・さーて、どうするか」
ルイ
「・・・ふふふ」
キュピル
「ついにルイが壊れた・・・」
ルイ
「違います!こんなこともあろうかと私の財布にこっそり魔法石を忍び込ませておいたんです!」
キュピル
「魔法石?」
ルイ
「はい。私がある魔法を唱えますとその魔法石が共鳴して場所を教えてくれます。
これで犯人の居場所を特定できますよ!」
キュピル
「おぉ、流石ルイ!!さっそく詠唱してとっ捕まえよう!」
ルイ
「では、いきますよ!」

ルイがちょっと変わった魔法を詠唱する。

ルイ
「・・・・こっちです!」


ルイの後についていくと人通りの少ないナルビクの裏道に入って行く。

キュピル
「いかにも犯人がいそうな場所だな・・・」
ルイ
「気を引き締めましょう」

二人とも念には念を入れて武器を抜刀して進む。
・・・しばらくするとルイが立ち止った。

キュピル
「どうした?」

ルイが鉄の箱で作られたゴミ捨て場に近寄り鉄の蓋を開ける。
・・・一番上にキュピルとルイの財布が乗っかっていた。

キュピル
「ちくしょう・・・。中身だけ抜いて財布は捨てたか」
ルイ
「・・・みたいです」

元々盗まれることを前提にしてあるため中身は1000Seed程しか入っていなかったが・・・。
律儀に中身は空になっていた。ルイの財布に魔法石は残っていた。

キュピル
「作戦は失敗に終わったか・・・」
ルイ
「・・・ごめんなさい。」
キュピル
「いや、別に良い。次の手を考えよう・・・」

一旦自宅に戻ることにした。



時刻は午後三時を回っていた。果たしてキュピルの剣は見つかるのか・・・。



続く


追伸


久しぶりに「よくわからない日常シリーズ」



第二話


ナルビクでアノマラド大陸一熱い(?)お祭りが開催されている。
キュピル達も出し物を出したがちょっとした不注意でキュピルの愛剣が盗まれてしまった。
果たして愛剣は見つかるのだろうか・・・・。




=キュピルの家


琶月
「あ、ルイさん!ちょっと食器洗い手伝ってください!」
ジェスター
「琶月〜。また洗い物だよー」

ジェスターが皿を回収し運んでいるようだ。
珍しく働いている。

琶月
「ひぃー!」
ルイ
「た、大変そうですね・・・。まだ時間があるので手伝います」
キュピル
「夜は一体誰に皿洗いしてもらうんだ・・・?誰もいなくなる訳だが・・・。」

その時クエストショップからディバンが現れた。

ディバン
「俺がやる事になっている。」
キュピル
「ん、ディバンはお化け屋敷やらなくていいのか?」
ルイ
「ディバンさんは内装と道具を提供してもらっただけですよ。」
キュピル
「なるほど」
ディバン
「キュピル。気が向いたらお化け屋敷に行ってやれ。中々面白い事になったぞ」
キュピル
「ディバンがそう言うなら楽しみにしよう。」
ディバン
「・・・・で、キュピル。お前の愛剣とやらは見つかったか?」
キュピル
「・・・残念ながら」
ディバン
「そうか。まぁ落ちこむな。夜になるまで剣探しを手伝ってやる」

ディバンがキュピルの肩を強く二回叩く。

ディバン
「じゃあな」

そういうとディバンは外に出て行った。

ルイ
「キュピルさんはこれからどうするんですか?」
キュピル
「・・・何としてでも愛剣は取り戻したい。俺も調査してくる」
ルイ
「分かりました。手が空いてましたら夜また来てくださいね」
キュピル
「ああ」

そういってキュピルは家から出て行った。







ディバン
「・・・反応ないな」
キュピル
「おーい!ディバン!」
ディバン
「ん、お前か。」
キュピル
「ディバンに探し物させておいて俺は自宅でノンビリっていう訳には行かないからな」
ディバン
「そうか、余程大事な剣らしいな」
キュピル
「あの剣一本で生きてきたからな。もう体の一部同然だ」
ディバン
「なら見つけ出そう。これを使え」
キュピル
「ん、何だこれは?コンパス?」
ディバン
「魔法物に反応する特製のコンパスだ。元々は上級魔法のトラップを回避する時に使う道具だが
お前の剣には特殊な魔力が秘められていたのをこの前見たからな。コンパスに反応するはずだ。
これで虱潰しに探せばいい」
キュピル
「わかった。」
ディバン
「俺は東を探す。お前は西を見てこい」
キュピル
「了解」

立場上、キュピルのが上ではあるがディバンの場合歳が20以上離れているため
思わず自分が下にいるという錯覚を持つ。実際ディバンの大人のふるまいは少し憧れている。




少し西に進んだ所でさっそくコンパスが反応した。

キュピル
「お」

反応した先を見る。・・・・ファンの屋台だ。

ファン
「おや?キュピルさん。どうかしましたか?」
キュピル
「・・・うーむ。反応しているのはこの商品か。」
ファン
「?」
キュピル
「何でもない。それより売れたか?」
ファン
「午前は凄い売れ行きでしたが午後はボチボチです。今の所350個です。
キュピル
「お、それでも損益分岐点は越えたじゃないか」
ファン
「キュピルさん。難点がまだ残っています」
キュピル
「?」
ファン
「先程の計算式は作った物が必ず売れる場合っという計算式です。
・・・実際に在庫を抱えた場合は変動費だけがかかって赤字っていうパターンがありますよ」
キュピル
「忘れてた・・・。作っても売れなきゃ意味がないもんな・・・。で、いくら作ったんだ?」
ファン
「600個です」
キュピル
「だから屋台の域を(ry」

ファン
「夜にまた人が一杯来るのでその時に頑張って売りさばきます。」
キュピル
「頼むよ・・・」

そういってキュピルがファンの屋台から離れた。




中央の復活ポイントに立って辺りを見回す。

キュピル
「(ここから北、西、南にいけるからな・・。・・・そういえばまだ南に行っていないな。行ってみるか)」

コンパスをチェックしながら南に進む。
・・・すると見知った人が屋台を経営していた。

ルシアン
「あれ!?キュピルじゃん!」
ボリス
「・・・おや、こんにちは」
キュピル
「お、ルシアンさんにボリスさん。お久しぶりです」
ルシアン
「何かギーンって人がこの世界に二度と戻って来ないかもしれないって行ってたから心配してたけど
ちゃんと戻って来たんだね!」
キュピル
「あの野郎。何て事を言う。」


・・・実際にミティアがルイだったっということを知らなければこっちの世界に戻ろうとは思わなかっただろうけど・・。
・・・そう思うと少し複雑な気持ちになる。

ボリス
「ルシアン。この話はやめよう」
ルシアン
「うん、そうだね。ところでキュピル。一つ買ってく?」

ルシアンとボリスが出している屋台はチョコバナナらしい。色んな物がトッピングされている。

キュピル
「なら一つ買おう。それにしても案外地味な物をやってるね。もっと派手な物をやってるイメージがあったが・・」
ルシアン
「うん・・・最初はもっと派手なものにしようと思ったんだけど・・・。ボリスが止めるんだー・・・」
ボリス
「ルシアンがトレジャーだとか冒険だとか言いだしたから止めただけです。流石に屋台の域を越すので」
キュピル
「すぐ傍で屋台の域を越してる人が二人もいるのだが」


ボリスが苦い表情をして人差し指で口で押さえるしぐさをする。
・・・あぁ、秘密にしているのか。

ルシアン
「え?今何か言った?」
キュピル
「いや、なんでもない。それよりこのチョコバナナ美味しいな」
ルシアン
「えへへ、このルシアン様の作ったチョコバナナが不味いわけないだろー」
キュピル+ボリス
「(誰が作っても大体同じ味になると思うが・・・)」


その時コンパスが反応し始めた。

キュピル
「おっと!ちょっと行く所あるから行ってくる!」
ルシアン
「ばいばい!」
ボリス
「お元気で」


キュピル
「・・・こっちからか?」

その時とある通行人に激しく反応し始めた。まさか犯人か!?

キュピル
「ちょっと失礼。・・・少しお伺いしたい事があるのですが?」
謎の女性
「・・・・なんだ?」
キュピル
「ん・・・どっかで聞いたことある声・・・」
謎の女性
「私だ。ミーアだ」
キュピル
「いぃっ!!?」

まさかこれはミーアの素性か!!?

キュピル
「ほ、包帯をつけていない!まさか素性か!?女性だったのか!!」
ミーア
「違う。・・・ これはギーンに頼んでこういう姿をさせてもらっているだけだ。
忍びたる者。素性は絶対に明らかにしてはいけない。」
キュピル
「なんだ・・そういうことか・・・。だからコンパスが反応したのか・・」
ミーア
「?」
キュピル
「いや、実は・・・かくかくしかじか」

ミーア
「・・・そういうことなら私も一肌脱ごう。」
キュピル
「本当か!助かる!」

ミーアが手伝ってくれると非常に頼もしい。こういうのはエキスパートっていうイメージがある。

ミーア
「そういえばギーンは見なかったか?」
キュピル
「ギーンなら昼ちょうどにファンの屋台で会ったが・・・それっきりだなぁ」
ミーア
「そうか。・・・見つけたら家に届けておく」
キュピル
「本当に助かるよ。ありがとう」

そういうとミーアは去って行った。・・・相変わらずあっさりとした性格をしている。
・・・引き続き剣を探そう。



港まで来ると海の男達が酒樽を持って飲んだくれていた。
・・・どうやら飲み比べをしているようだ。
・・・良く見るとマキシミンとシベリンも混ざっている。

コンパスを見る。

キュピル
「・・・うーむ。反応なしか」

・・・南は探索し終えた。次は西だ。





ロシュの万屋まで移動した。
この辺もしっかり屋台は立ち並んでいる。

・・・・コンパスが反応し始めた。

キュピル
「どこだ?」

・・・反応が強くなる方向へ歩いて行く。
・・・するととある屋台に辿りついた。

占い師の衣装を身につけた女性
「・・・ようこそ、占いの館へ」
キュピル
「なるほど。コンパスが反応したのはこの水晶玉か。」
占い師の衣装を身につけた女性
「・・・貴方。変わった運命を辿っているようね」
キュピル
「・・・分かるのか?俺の運命」
占い師の衣装を身につけた女性
「私の名前はカミラ。カーディフで魔法商店と占いを営んでいます。
・・・水晶玉に目を通せば全てが見える。」
キュピル
「・・・うーむ」

もし・・本当に見えるなら少し気になるな・・・。

この先の事も色々知りたい。

キュピル
「よし、占ってくれ。出来れば俺の未来が具体的に分るような占いを頼む」
カミラ
「・・・それでは」

カミラが魔法を詠唱し水晶玉にマナを注ぎ込む。
徐々に周りが闇に覆われ暗くなり神秘的な光が水晶玉に集まって行く。

カミラ
「はぁっ!!」

水晶玉が閃光を放ち辺りを覆っていた闇を吹き飛ばした。

カミラ
「・・・見えました」
キュピル
「それで、俺の未来は一体?」
カミラ
「結論から申しますと、しばらくは騒がしい日々が続くでしょう・・・。
ですがそれは必ずしも貴方にとって不幸とはならないもの。ストレスは溜まるでしょうけど」
キュピル
「思いっきり不幸じゃないか」
カミラ
「黙らっしゃい。」
キュピル
「はい・・・」

思わず謝ってしまった。

カミラ
「・・・今貴方は八人の仲間を従えているようだけど近いうちに10人に増えるわよ」
キュピル
「仲間が増える?それは・・いつだ?」
カミラ
「ここからは別料金」
キュピル
「・・・いくら?」
カミラ
「10万Seed」
キュピル
「ボッタクリじゃないか!!」
カミラ
「未来を教えてくれる人なんてそうそう居ないわよ?」
キュピル
「・・・まぁ、そうなんだが・・」
カミラ
「ここまでで1万Seedよ。さぁ、どうする?」
キュピル
「もういいです」


一万Seed置いてすぐに逃げた。

・・・・占ってもらうんじゃなかった。


しかし近い日に仲間が二人増える・・・?

まぁ、うちはクエストショップを経営している訳だから新入生として迎えるのは別に不思議ではない。
そんなに重く考えなくてもいいだろう。



キュピル
「・・・さて、コンパスはまだ反応しているようだが・・・」

・・・また別の屋台に反応している。
・・・どうやら綿菓子屋らしいが・・・何も反応する物はないと思うのだが一体何故?

ミラ
「ん、どっかで見たことある人だなって思えばキュピルじゃないか」
キュピル
「おっと、ミラさん」
ティチエル
「あ、キュピルさん。こんにちは!」

コンパスはティチエルに反応している。
・・・確かに大魔術師の彼女に反応するのは不思議ではない。

キュピル
「何で綿菓子屋をやっているんですか?少しイメージが(ry」
ミラ
「本当は魚介類を使った飲食物にしたかったんだがチビ達が勝手に綿菓子に決めちまったんだよ」
ティチエル
「あれ・・・ミラお姉さんもしかして嫌・・・でした?・・・ぐすん」
ミラ
「ち、違うって!!もう今日は朝からこの調子で困っているんだよ!なんとかしてくれないか!?」
キュピル
「人選間違えたなっと言わざるを得ない。ルシアンと組ませればよかったのに」

ミラ
「お、そいつは名案だな。ちょっとボリスの所に行ってくる。」

そういうとミラは逃げるようにして屋台から飛び出て行った。
・・・気まずいのでそそくさに立ち去ることにする。





キュピル
「まだコンパス反応している・・・!」

コンパスの示す先を見る。・・・一体何かと思えばルイの出しているお化け屋敷だった。

キュピル
「・・・なるほど。確かに魔法で作られた建て物だからな。しかも内装も魔法で飾り付けしていると言っていたし・・。
これも納得だな。」


これも違うっということを指示するとコンパスは何も反応しなくなってしまった。



・・・うーむ・・・・南も西も確認した。次は北を確認しよう。



中央エリアまで移動するとディバンと会った。

ディバン
「どうだ、収穫はあるか?」
キュピル
「残念ながらない・・・」
ディバン
「そうか。こっちも同じだ。もう全部調べ尽くしたのか?」
キュピル
「いや、また北を調べていない」
ディバン
「北はフリーマーケットか。・・・少し臭うな。調べるぞ」
キュピル
「もち」



ナルビクフリーマーケットまで移動した。
今日みたいな祭りの日は普段の日よりも更に露天の数が多い。

ディバン
「もしかすると盗品が売られているかもしれない。一つ一つ確認していくぞ」
キュピル
「わかった」

二手に別れて露天の商品を確認していく。

・・・・一時間ほど歩きまわるがキュピルの愛剣は見つからない。


キュピル
「参ったなぁ・・・。もしかしてもう流れちまったかな・・・・」
ミーア
「キュピル」
キュピル
「おっと、ミーア!もしや見つかったか?」
ミーア
「半分見つけたぞ」
キュピル
「・・・半分?」
ミーア
「正確には売られている場所だ」
キュピル
「まじか!何処だ!?」
ミーア
「今日の深夜一時に『酔っぱらいブルーホエール』の裏で取引するらしい。
偶然にもそれらしき人物に声をかけられた。しっかり購入するという意思を示しておいた。
指定された時間に行けば見つかるはずだ」
キュピル
「でかした!お手柄だ!ありがとう!」
ミーア
「・・・気をつけた方が良い。その者は相当熟達した腕を持っている。力づくで奪い返すつもりなら
戦闘になることは必須だ。・・・少し苦戦するかもしれない。」
キュピル
「忠告ありがとう。・・・仲間は連れて行く」
ミーア
「そうしたほうがいい。・・・では私はそろそろ帰る」
キュピル
「わかった。」


そういうとミーアは一瞬で消えてしまった。


ディバン
「今のは誰だ?」

ディバンが奥からやってきた。

キュピル
「戦友だ」
ディバン
「戦友か。」

まるで何ともないように答える。

キュピル
「その戦友から俺の剣の取引場所を探し出してくれた」
ディバン
「何だと。それでその場所は?」
キュピル
「深夜一時、『酔っぱらいブルーホエール』の裏で取引するらしい。
戦友が購入するという意思を示してくれたから必ず現れるはずだ」
ディバン
「時間、場所を指定するとは相当なやり手だな。検問されていることを見越している」
キュピル
「確かに・・・」
ディバン
「それなら深夜になるまで自由に行動して時間でも潰そう」
キュピル
「もうすぐ午後六時になるな。お化け屋敷は何時からだ?」
ディバン
「・・・まずいな。五時半からだ。洗い物をしなければ。」
キュピル
「輝月を怒らせると後がまずい。早く戻った方が良い」
ディバン
「ああ、そうする。じゃあな。」

そういうとディバンは走って戻って行った。

キュピル
「・・・五時半からということはもうお化け屋敷開いているな。よし、ちょっとどんなものか見てみるか」

少し緊張しながらお化け屋敷へと向かう。一体何が待ち受けているか・・・・。








==ルイのお化け屋敷


ルイ
「ようこそ・・戦慄き(わななき)の館・・・って、キュピルさんでしたか!」
キュピル
「うお、ルイ!」

壁から全身火傷と痣だらけになっているルイが現れた。

ルイ
「どうです?魔法で少しメイクしてみたんですけど」
キュピル
「そこを黙っていれば恐怖もかなり上がったというものを」

ルイ
「あ・・その。ま、まぁまぁ・・・。ところで・・剣の方は見つかりましたか?」
キュピル
「ああ。目星がついた」
ルイ
「本当ですか!?」
キュピル
「詳しい事は屋台が全て終わってから話そう。確か11時まで祭りは続くんだったよな?」
ルイ
「はい」
キュピル
「なら11時半までに家に戻ってきてくれ」
ルイ
「わかりました!・・・・で、改めて・・・。
・・・ようこそ・・・戦慄きの館へ・・・。・・・ここに居る者は皆・・・生前時にある呪いを受け
飢餓や咆哮を上げるような痛みに常に襲われている・・・・。
この呪いから解き放たれるには・・生きる者の血を全て・・飲み干せば呪いから解放され・・・
成仏することが出来る・・・・。
その者達はこの・・苦しみから解放されるために・・日夜人を襲っている・・・。

・・・不用意にこの屋敷へ足を運び入れたお前にもう明日はない・・・。」

そういうと突然扉が閉まり辺りが真っ暗になった。
そしてそのままルイが徐々に薄れてゆき消えてしまった。

キュピル
「良く出来てるなぁ・・・・」

どれ、もう先に進んで良いみたいだから進むとしよう。


真っ暗な道を歩いて行く。壁も何も見えず、時々ブラックライトで照らされた矢印だけが見える。
・・・・突然横から物音がした。
誰か出てきて驚かしてくると思いきや、いきなり誰かが肩に飛びかかり噛みついてきた!!

キュピル
「う、うわぁっ!!」

攻撃されるとは微塵に思っていなかったため思わず声をあげる。
すぐに振りほどこうと噛みついて来た奴を掴もうとするがすり抜けてしまい反撃できなかった。

キュピル
「は、反撃できない・・・!?」

以前誰かが肩に乗っかっておりまだ噛みついている。・・・それどころか本当に血を吸われている!

キュピル
「うわ、くそ!この!」

素早く体を一回転させて遠心力で無理やり引き剥がす。
そのまま走って逃走する。

キュピル
「マジで攻撃されるとは全く思っていなかった・・・!」

ルイの事だ。もしかすると本当に血を全部抜き取るかもしれない。
肩の出血を押さえながら走ると突然何かにぶつかった。

キュピル
「いてっ」

見上げると巨大なヴァンパイアがそこにいた。
ギロリとキュピルを睨みつけるとキュピルを掴もうと手を勢いよく伸ばしてきた。
すぐに回避し順路へと走る。


キュピル
「恐ろしいな・・・全く・・・」

地味に肩が痛い。・・・少し体が痺れている。

キュピル
「次の順路は・・・こっちか?」

進んで行くと突然足元の床が抜け深い穴へと落ちて行った。

キュピル
「ぐっ!」

床に叩きつけられたがすぐに起き上がろうとする。
しかし起き上がろうとした時大量のゾンビに囲まれ起き上がる前に数人が乗っかり
キュピルの腕や足、体に首に顔に色んな所に噛みついてきた!

キュピル
「やばい・・!!マジで洒落に・・・なら・・ね・・・!!くそっ!!」

剣を抜刀しようとするが気がつけば腕がなくなっている!
そのまま為すすべもなくゾンビに食われてしまった・・・。


・・・。

・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・。



ジェスター
「はーい!!残念でした〜!!」
キュピル
「・・・・あれ?」

気がつくと出口付近に立っていた。
目の前には可愛らしい悪魔のコスプレをしたジェスターがいる。
怖がってしまった人を落ちつかせるためなのだろうか。

ジェスター
「どう?どう?怖かった?怖かった?ってかキュピル死んじゃってるー。ださいー。」
キュピル
「怖いも何も今マジかと思っちまった・・・。何だ・・・どういう仕掛けか分からないけど死んではいないんだな・・」
ルイ
「ふふっ、魔法の力って凄いと思いませんか?」
キュピル
「そのえげつない姿で笑われると非常に怖い」

琶月
「はぁー・・・。魔法で幽霊にさせてもらってるから絶対に反撃されないって思ったら
まさかキュピルさんが一回転して遠心力で振りほどくなんて・・・」
キュピル
「最初に噛みついて来たのは琶月だったのか」

琶月が半透明でぼんやりと浮いている。これも魔法なのだろうか。

琶月
「そうです。やっぱりキュピルさんには勝てない気がしてきました・・・はぁ・・・」
ジェスター
「溜息ばっかり〜」
キュピル
「ところで・・・。俺の今回の死因となったあのゾンビは一体?」
ルイ
「・・・あれ?そんなの居ましたっけ?」
琶月
「え?てっきりルイさんが用意したのかと」
ルイ
「私はそんなことは・・ゾンビは苦手ですし・・・。・・・ジェスターさん?」
ジェスター
「えー。私がやる訳ないじゃんー」



・・・・。

・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

キュピル
「早急に退治すべき!」



そういうとキュピルはお化け屋敷から出て行った。


ルイ
「・・・・・・」
琶月
「・・・ど、ど、ど、どうします?まさか本物?」
ジェスター
「・・・・・・」




お化け屋敷を運営している本人ですら恐れてしまったお化け屋敷。
それが数十分後に知れ渡り大勢の物好きが来たとか。






キュピル
「(・・・気がつけば夜七時か)」

すっかり辺りは暗くなってきた。夜の出し物が賑わってきている。
しばらくすると巨大な球体を運ぶ男達が現れた。

ブデンヌ
「もっと気合いれて運べ!間にあわなくなるぞ!!」

『オーッス!!』

キュピル
「なんという漢。男ではなく漢。一体何を運んでいるんだ・・・。」
テルミット
「花火玉を運んでいるみたいですよ」
キュピル
「ほぉ。」


・・・・・・。

キュピル
「って、いつからそこに。屋台はいいのか?」
テルミット
「普通の出し物並べようとしたら友人Aさんに止められたのでいっそのこと屋台を渡しました」
キュピル
「なんという投げやり」

テルミット
「夜の9時に花火大会が行われるそうですよ。」
キュピル
「ほぉ・・。一人で見るのもあれだから何人か集めて皆と見るかな。テルミットはこの後予定は?」
テルミット
「特にありませんよ。」
キュピル
「それなら八時またこの中央エリアで落ち合おう」
テルミット
「分かりました。・・・ところで剣、見つかりましたか?」
キュピル
「目星はついた」
テルミット
「本当ですか!?よかったですね!」
キュピル
「ただ、裏取引として出回られているようだ。今日の深夜一時に指定された場所で取引していることになっている。
びた一文出す気はないから無理やり取り返す。・・・恐らく戦闘になる。すまないが一緒に来てくれないか?」
テルミット
「分かりました。」
キュピル
「この件については夜11時半、クエストショップで話すことにしてある。それまでは自由に行動してもらって構わない」
テルミット
「了解です」
キュピル
「それじゃまた」


そういうとキュピルが何処かに行った。




大分一通りナルビクを歩き回ったが昼と夜では全く違う出し物を出している場合がある。
もう一度ぐるっと一周回る事にする。

キュピル
「それにまだ夜飯食べていないからなぁ。何食べようかな」

海の幸ソーセージ・・・
酢ダコ・・・。
イカ焼き・・・


この辺は祭りじゃなくても食えるから別にいい。

キュピル
「焼きそば・・・ポテト・・・」
ジェスター
「飴ー、綿菓子ー、チョコー」
キュピル
「それは夜飯に食べるもんじゃないな。
・・・・・って、テルミットの時もそうだったが何時からそこに。というかお化け屋敷はどうした」
ジェスター
「ゾンビいるから嫌〜。」
キュピル
「・・・・・」

ジェスター
「ねーねー。私まだあんまりお祭り楽しんでないんだけど。何か買ってよー」

ジェスターが見上げてねだってくる。普段ならダメと言うのだが今日ぐらいは別に良いだろう。

キュピル
「今日はお祭りだから構わんよ」
ジェスター
「わーい!水飴食べるー」

ジェスターが近くの屋台に走って水飴をねだる。

キュピル
「ほいほい。水あめ二つ頼みま・・・って、誰かと思えば・・」
レイ
「・・・ん。・・・久しぶりね」
キュピル
「・・・何で水飴?出してる理由は想像がつくけど」

大方ブデンヌがギルドに要請したんだろうけど・・・。

レイ
「・・・簡単だから」

そういうと割り箸二つ取り出し水飴が入っているボールへと突っ込みグルグル回して手渡してきた。

レイ
「・・・剣は?」
キュピル
「・・・盗まれた・・・」
レイ
「・・・!」

急に険しい表情された。

キュピル
「結局俺の剣と・・・何だっけ・・。アータクト?アーティクト?」
レイ
「アーティファクト。」
キュピル
「それだ。アーティファクトと何か関係があったのか?」
レイ
「・・・わからない。あなたは審判者でも守護者でもない。それなのにアーティファクトに反応した。
・・・あの現象はまるで無理やり・・・そう、強引に共鳴させた感じだった・・。
アーティファクトの力を吸収していたわ」
キュピル
「(アーティファクトの力を吸収・・か。・・・そもそも俺はアーティファクトとやらについて全く知らない。
ただ作者は言っていた。アーティファクトに反応させたのはこの私だ・・っと。
・・・レイにとって当然意図していない出来事だったはずだ。・・・部外者な訳だからな・・・)」
ジェスター
「水飴早く頂戴ー。あーん」

ジェスターが口を大きく開ける。水飴を一本口の中に入れる。

ジェスター
「はむっ」

口を閉じてもごもご動かし始めた。

キュピル
「喉に詰まらせるとまずいからちゃんと手使いな」
ジェスター
「うん」
キュピル
「じゃ、また」

レイがコクンと頷く。そのまま何処かに行く。


ジェスター
「綿菓子食べたいー」
キュピル
「まだ水飴食べてる最中じゃないか。甘いものに甘い物の組み合わせとはどんだけ甘党なんだ」
ジェスター
「甘いの大好き!幸せな気持ちになる〜。」
キュピル
「まぁ分からんでもないけど・・・。・・・」
ジェスター
「んー?何か言いたい目してるね。言ってもいいよ?怒らないよ?」
キュピル
「太ったりしないのか?」
ジェスター
「わあああああああああ!!!!」
キュピル
「前振りなしに怒るな!!?」
ジェスター
「あ!」

ジェスターが持っていた水飴を落とした。

キュピル
「ほらみろ。持ったまま暴れるからだ」

しばらく沈黙が続いた後

ジェスター
「・・・・ぐすん。・・・わーん!!」

ジェスターが泣きだしてしまった。

キュピル
「こんな所で泣かれると色々面倒が起きる。

と、とりあえず後でまた買ってあげるから一旦家に戻ろう。な?」
ジェスター
「わーん!」

仕方ないので抱きかかえて家に戻ることにした。


輝月
「ん?どうしたのだ?」
ヘル
「何か起きたのですか?」
キュピル
「いや、単純に水飴落として泣いただけだ。何でもない」
輝月
「ほぉ、てっきり私はお主が泣かしたと思っておったが違うのか」
キュピル
「輝月じゃあるまいし・・・」

輝月
「何じゃと?」
キュピル
「な、なんでもない!」

そういって家に戻った。
・・・まぁ、一通り回ったし残りは家でゆっくりするのも悪くないか・・・・。


しばらく自宅でジェスターを慰める。
・・・・そのまま時間が進んで行くと時刻は9時近くまで回った。。

ジェスター
「・・・zzz・・・・zzz・・・・」

気が付いたら机の上で寝てしまった。
・・・ベッドに運んで今日はこのまま寝かせることにする。

キュピル
「虫歯になったりしないかな・・・」

でもジェスターが虫歯になった所は一度も見た事が無い。
人間とはちょっと違うから大丈夫?


その時花火の音が聞こえた。

キュピル
「まずい!自分で場所指定しておいて行っていない!!」

慌てて自宅を飛び出し中央エリアへと向かった。




テルミット
「あ、来ましたよ」
輝月
「ん。遅かったな?もう始まっとるぞ?」
ルイ
「こんばんわ、キュピルさん」
キュピル
「すまない。どうやらテルミット以外にも何人か集まっているようだね。」

テルミットの他に輝月、ルイ、ヘル、ディバンがいた。

キュピル
「ファンは・・・あそこで商売してるな・・・」

結構必死になっている。赤字になりそうなのだろうか・・・。

キュピル
「琶月は?」
ルイ
「一応店番させています。」
キュピル
「・・・ゾンビは?」
ルイ
「・・・何故か知らないですけどまだいます・・・」
キュピル
「・・・・・・」

ディバン
「話は聞いたが今は忘れて花火見たらどうだ?」
キュピル
「それもそうだな」

近くのベンチに座って全員で並んで見る。
・・・気合入れていただけあって花火は大きく、綺麗に弾けていた。

ルイ
「私も輝月さんみたいに和服着ればよかったかなー・・・」
輝月
「和服はいくつか余っているぞ?」
ルイ
「本当ですか!?今度少し貸してくれませんか?よかったら和服の着方も・・・」
輝月
「んむ。構わぬ」


ディバン
「・・・花火を見るとガキの頃を思い出す」
テルミット
「ディバンさんの子供の頃ですか?」
ディバン
「ああ。俺の姉貴と兄貴でよく花火をしたなっと思いだしてな」
キュピル
「兄弟いたのか。しかも末っ子とは。その兄弟は今何をやっているんだ?」
ディバン
「姉貴は嫁いだ。兄貴は俺の故郷で家業を営んでいる。お前等と比べれば俺等は大したことはしていない。
ただの一般人だ。」
テルミット
「僕達って何か大した事ってしましたっけ?」
ヘル
「さぁな?」


キュピル
「・・・・・」

キュピルの瞳に花火が映っている。
・・・目は確かに花火を捉えているが何処か上の空になっている。何か考えている・・・。


キュピル
「(・・・・・・。)」

ルイ
「・・・キュピルさん?」
キュピル
「ん?」
ルイ
「今また何か考えていましたね。・・・何を考えていたんですか?」

ルイが目を合わせて少し笑いながら答えた。

キュピル
「いや、何も考えていないよ。普通に綺麗な花火を見ていただけだ」
ルイ
「またそうやって誤魔化して・・・」
キュピル
「いや、別に誤魔化してなんか・・・。・・・・いや・・そうだな・・・。今度じっくり俺の悩み聞いてもらっていいかな?」
ルイ
「はい、喜んで」

ルイがにっこり笑う。
ルイになら・・・色々話しても良い気がする。


キュピル
「(・・・・・・・)」

花火を見ながら色々考える。

・・・・。



作者
「・・・シルクのせいで計画にズレが生じた。この世界を今終わらせる予定だったがそれは延期せねばならない。
とにかく・・せめて私に従順なキュピルとルルアを残しておくとしよう・・・。貴様等には少し力を与えすぎたようだ。
キュピル!また会うその時までゆっくりと自分の役割を見つめ直すがいい!」





キュピル
「(・・・・・・・・・・)」


いつかまた奴は訪れる。


俺に気紛れな力を与えたり・・また問題を起こしたりするだろう・・・。

・・・。



ルイ
「キューピールさん!!」
キュピル
「うお、ルイ」

気が付いたら目の前にいた。

ルイ
「今は悩まないで花火見ましょうよ。勿体ないですよ?」
キュピル
「・・・そうだな」

こういう感傷に浸りやすい物を見るとどうもあれこれ考えてしまう癖がある。
後は何も考えずに純粋に花火を楽しむことにする。




ブデンヌ
「おっしゃおらー!残りの巨大な花火一発打ち上げるぞおらー!!大砲に詰め込め!!」
ミラ
「おっさん。アタシの巨大な大砲は下手すると街が焦げるぞ?」
ブデンヌ
「なるべく高く打ち上げて貰いたい。」
ミラ
「あんた達!早く火薬を詰め込みな!」
ジュケル
「明日の掃除が大変な事になる・・・」





キュピル
「花火終わったのか?」
テルミット
「いえ、最後に巨大な花火が打ち上げられるはずです」
輝月
「最後の花火も中々大きかったと思うが?」
ルイ
「・・・・え?まさかあれが最後ですか?」

しばらくすると警報音と共に巨大な花火が打ちあがった。
ぐんぐん高く昇りそして、もはや爆音ともよべる破裂音と共に天を覆う程の巨大な花火が辺り一面に広がった。
破裂した花火から更に花火が吹きだされその連鎖で瞬く間にナルビクの空を覆った。

ヘル
「こいつは凄い!」
キュピル
「・・・ん、火花が落ちてきてるような・・・うわ、あぶない!」

街に落ちる、そう思った瞬間にバリアのようなもので防がれしっかり花火は着弾する前に消えて行った。

ルイ
「あー、びっくりした・・・」
テルミット
「同じく・・・」
キュピル
「・・・・・」

時計に目をやる。・・・夜10時か。


キュピル
「さて、残り一時間だ。最後まで運営して終わったら一旦クエストショップに集まってくれ」

全員了承すると各自持ち場に戻って行った。








一旦自宅に戻りジェスターの様子を伺う。
・・・もうすっかり熟睡している。布団が乱れていたのでかけ直し部屋を出た。



キュピル
「・・・・ん」


今何か異様な何かを感じ取った。
・・・・何だろうか。
こういう時は幽霊刀を抜刀すると感覚が鋭くなるので良く分かる。
腰に括りつけていた幽霊刀を抜刀する。

・・・霊感が急上昇し周りの気が可視できるようになった。

キュピル
「・・・・これは・・・?」

・・・感覚としては・・・昔使っていた・・・特殊ワープ装置機が放つマナの流れに似ている・・・。
今はまだほんの僅かなマナしか感じられないが・・・微量ながらも徐々にそのマナが溢れ始めている。
・・・・・そしてある一瞬だけ強烈なマナを感じその後、マナの気は感じ取れなくなってしまった。
幽霊刀を鞘に納める。

キュピル
「・・・今のは何だったのだろうか」

感覚的に誰かがワープしてきた感じ・・・。誰か今ここにいるのか?
自宅やクエストショップの中を歩き回り全ての部屋を確認するが誰も居なかった。
・・・ここ・・というよりは大分離れた場所にワープしてきた感じがした。





・・・・まさか作者か・・・?







キュピル
「・・・・・・・」


・・・断言は出来ない・・・。
それにもしかするとこのお祭りの何かかもしれない。
・・・あまり気にしないでおこう。


残りの時間はゆっくりすることにした。





時刻は11時を迎えた。

お祭りは終了し徐々にライトが消されていった。
さっきまで物凄い人が賑わっていたが今街を見るともう既に殆どの人は居なくなっていた。
出し物は明日片付けることになっている。

しばらくすると全員クエストショップに戻ってきた。

キュピル
「皆お疲れ様」
テルミット
「お疲れ様です」
ヘル
「へっ、輝月。悪いが俺の方が売上高は上だったな」
輝月
「まだ計算もしておらぬのに。お主はマヌケなのか?」
ヘル
「ぱっと見で分かるだろ。絶対勝ったな!さっさと計算するぞ」
キュピル
「不正がないように俺とテルミットで集計する」

キュピルは輝月のを、テルミットはヘルのを集計する。

・・・・結構売上多いな・・・。

・・・・・・・。



キュピル
「テルミット。そっちはいくらだった?」
テルミット
「21万Seedです」
キュピル
「わかった」

ヘルと輝月に向き直る。二人とも自身に満ちた顔をしている。

キュピル
「結果発表だ。ヘルの売上高は21万。
・・・輝月の売上高は・・・・」

全員固唾を飲んで何故か見守っている。


キュピル
「輝月の売上高は20万だ」
ヘル
「ほらみろ!!俺様の勝ちだ!!」
輝月
「・・・・・・」
キュピル
「確かにヘルのが売上高は上だが俺の判断基準は純利益なんだが。」

・・・・・

ヘル
「・・・純利益って何だ?テルミット」
テルミット
「変動費・・つまり材料費やお店を立てるのに使った固定費や・・・とにかく収入から支出を全て差し引いた金額です」
ヘル
「・・つまり材料費とかを差し引いた合計金額か?」
テルミット
「はい」
キュピル
「二人から領収書は貰っているから支出を差し引くぞ」
ヘル
「・・・・・・・・」
輝月
「・・・・・・・・」


二人とも黙ってしまっている。
ヘルにとっては、ここで逆転されたら非常につまらないだろう。
逆に輝月にとってはここで逆転勝利を上げるかもしれない。
またしても全員固唾をのんで見守っている。


キュピルが電卓を使って計算する。

・・・計算が終わりキュピルが溜息をついた。


輝月
「な、なんじゃ?」
ヘル
「一体・・どうなったんだ?」

キュピル
「まぁ・・・。正直な話。俺は計算する前から見えていたんだが・・・・。
ヘルの今回の利益は8万。輝月の利益は・・・」
輝月
「さっさと言わんか」
キュピル
「いで!」

輝月に鞘で頭を叩かれる。

キュピル
「輝月の今回の利益は3万だ」
輝月
「・・・・・・・」
ヘル
「ほらみろ!俺の勝ちだ!!」
ルイ
「私てっきりヘルさんが負けると思っていました。フラグ立っていたので」
琶月
「フラグブレイカー」

輝月
「キュ、キュピル!!どういう事じゃ!一桁間違えておらぬか!?」
キュピル
「輝月、そのなんだ。ちょっと材料費に資金かけ過ぎていたな」
輝月
「・・・・・・・・・」
ヘル
「ざまぁーみろ」
キュピル
「ヘルも程ほどにな。あんまりからかうと減給するぞ」
琶月
「そーだそーだ!師匠を愚弄するなー!」
キュピル
「減給」
琶月
「何で!!?」

キュピル
「俺が言った傍からお前さんが、からかうからだろ」

琶月
「そ、そんなぁ〜・・・」

とりあえず空気を変えよう。
盗まれた剣の話を持ち出す。

キュピル
「皆疲れてる所申し訳ないが俺の盗まれた剣について少し話がある」

全員黙りこっちを見る。

キュピル
「俺の剣が闇市場に流れている事がわかった。今日の夜一時、『酔っぱらいブルーホエール』で
その剣を取引することにしてある。・・・もちろん一銭も払うつもりはない。
力づくで奪い返す予定だが、こういう仕事をついている事だけはあって中々の実力者らしい。
恐らく戦闘になるはずだ。・・・体力のある者だけでいいから何人か一緒に来てくれないか?」
ヘル
「俺は行きます。キュピルさん。行くぞ、テルミット」
テルミット
「はい」
輝月
「お主等だけじゃやられるかもしれんからな?私も行こう。琶月。お主も来い」
琶月
「え!!もう疲れてるのに・・・」
ヘル
「俺等で十分だろ」
キュピル
「多い事に越したことはない。」
ルイ
「私も行きます!」
ファン
「誰かはクエストショップに残った方が良いと思うので僕は残っておきます。ジェスターさんもいるので」
ディバン
「俺も残る。・・・あいにく戦闘能力はないからな」
キュピル
「わかった。クエストショップを頼む」

戦闘の主力メンバーは全員来てくれるようだ。

キュピル
「それなら夜一時までゆっくりしててくれ。・・・眠いだろうけど」
ルイ
「コーヒー入れますよ」
テルミット
「あ、お願いします」
キュピル
「俺も頼む」
輝月
「コーヒー?コーヒーとは何じゃ?」
琶月
「師匠コーヒー知らなかったんだ・・・」

ディバン
「飲んでみれば分かる。カフェインという成分が含まれているから眠れなくなるぞ」
輝月
「不思議じゃな」

しばらくするとルイがコーヒーを淹れお盆の上に乗せて運んできた。
何人か受け取り飲む。

輝月
「・・・苦いぞ」
ディバン
「ということはまだ子供って証拠だな」
輝月
「ほぉ。私は苦いのは好きじゃが苦いと子供なのか?」
ディバン
「前言撤回する」
琶月
「苦い・・・しかも苦いの嫌いです・・」
キュピル
「苦味より酸味を感じる」
ディバン
「質が悪いな」
ルイ
「悪かったですね」




・・・・。

・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・。



キュピル
「・・・おっと、そろそろか?」

時刻は1時15分。・・・そろそろ行けばちょうどいいか。

キュピル
「よし、そろそろ行くぞ」
ヘル
「腕が鳴るぜ」
輝月
「ふっ、私が行くのだ。一瞬で終わるじゃろう」
琶月
「だといいんですけど・・・」
ファン
「ご健闘をお祈りしています」


ファンが白いハンカチを振って見送る。それはネタでやっているのか?

キュピル
「よし、いくぞー!」

真夜中の小さな進軍が始まった。





==酔っぱらいブルーホエール・店裏


キュピル
「さて、もうすぐ店裏に到着するが・・・。皆はここで待っててくれ。」
ヘル
「何故です?」
キュピル
「簡単な話奇襲を仕掛けたい。奇襲をしかければ楽に戦闘も終わるはずだ」
テルミット
「確かにそうですね」
キュピル
「交渉してる最中に俺が三回連続で瞬きしたら奇襲を仕掛けてくれ。」
テルミット
「了解です」

そういうとキュピルは幽霊刀をしっかり腰に掲げて店の裏へと移動した。


・・・・・。


誰もいない。


・・・・・。


しばらくすると誰かが現れた。


「お前が今回の取引相手か?」

キュピル
「そうだ」

声のした方を振り返る。








マキシミン
「あ?」








キュピル
「・・・・・・・・・・・」







三回瞬きする。






集団リンチが始まった。









==翌日


ジェスター
「ふあぁ〜・・。おはよ!おはよー!」
ファン
「朝から元気ですね」
ジェスター
「うんー!おはよー!おはよー!!」

ジェスターがおはようを連呼しながら辺りをドタバタ走り回る。

ジェスター
「ルイー!おはよー!」
ルイ
「私今猛烈に不機嫌何で後で構ってください」

ジェスター
「えー。キュピルー!おはよー!」
キュピル
「ルイに同じく」

ジェスター
「何でー?・・・あ!キュピルの愛剣見つかったんだ!よかったねー」
キュピル
「・・・はぁ・・・」

深いため息をつく。ジェスターはただ頭の上に?マークを浮かべるだけだった。





キュピル
「ところでルイ」
ルイ
「はい?」
キュピル
「お化け屋敷のゾンビはどうなったんだ?」
ルイ
「あ・・・・」
キュピル
「・・・・・・・・・・」



その日の片付け(二つの意味で)は非常に大変なものとなった。




ファン
「原因ですか?どうみてもルイさんのオカルトグッズが影響しているでしょう。
自分で出した事を自覚すらしてないので困った物です」



続く



第三話


祭りは無事(?)終了しキュピルの愛剣も戻ってきた。
しかし・・・?


ファン
「前回のお祭りで中々の利益を得たのでさっそく新しい技術開発しようと思います」
ジェスター
「おー!一体何作るの!?異次元転送?異次元転送?」
ファン
「・・・またですか。しかし特殊ワープ装置機が無くて皆さん非常に不便しているようなので
それをもう一度作ろうと思います」
ジェスター
「オプションで異次元転送機能も!!」
ファン
「オプション代は15GSeedです。」
ジェスター
「15円?わーい」
ファン
「15億です」

ジェスター
「聞かなかったことにしてあげる!」
ファン
「聞いたことにしてください」


ジェスター
「むーん。」
ファン
「とりあえずさっそく作業を開始しますから適当な時に部屋から出てください」
ジェスター
「ねーファンー?」
ファン
「はい?」
ジェスター
「前の異次元転送装置機って偶然出来たんだよね?」
ファン
「そうですね」
ジェスター
「じゃぁ私が適当に弄ればもしかしたら出来るかも!!」
ファン
「天文学的確率ですからやめてください」
ジェスター
「逆に言うと天文学的確率でそうなるかもしれないってことだよね?よーし、やるぞ〜!」
ファン
「ジ、ジェスターさん!!装置に触らないでください!!」

ジェスターがペンチを持ってベタベタと触ったり叩いたりネジを緩めたりしている。

ファン
「やめてください!危険です!」
ジェスター
「大丈夫!私ジェスターだよ!」

ファン
「ダブルZZネタはいいですから!もう手に負えません!キュピルさん!

ファンがキュピルを呼びに出る。


ジェスター
「ふんふんふ〜ん♪あ!なんだろうこれ!」

機械のカバーを外すと中央に白く光っている結晶があった。

ジェスター
「これに悪戯すればきっと何か出来る!!えい」
キュピル
「こら!ジェスター!」
ジェスター
「ビクッ!!」

ジェスターが驚いた勢いで強く結晶を叩く。
その直後白い光が辺りを包み始めた。

ファン
「ヒエエエェェェッッーもう駄目だ!!」


ファンがキュピルを置いて逃げる。

ジェスター
「わー!綺麗!」
キュピル
「ジェスターやめておけ!何か嫌な予感しかしない!」

キュピルがジェスターを抱きかかえて逃げようとした瞬間。
白い光は爆発的に広がりクエストショップとキュピルの家を飲みこんだ。



ディバン
「今日はあまり良い収穫がなかったな・・・。タバコでも吹かしながら新しい場所考えるか・・・って、何だあれは?」

しばらくすると白い光は消え元に戻った。






==クエストショップ

ディバン
「おい、一体何があった?」

ロビーに輝月と琶月とテルミットが倒れていた。

ディバン
「敵か!?」

揺すり起こそうとした時ある違和感に気付いた。


ディバン
「・・・輝月。お前こんなに小さかったか?
・・・琶月、お前も何か小さいな。・・・よくみりゃテルミット、お前もか。一体何が起きたんだ?」




==数時間後



キュピル
「一体ここはどこだー!頼むー!シルクー!ティルー!誰でもいいから知ってる奴目の前に来てくれー!!」
ルイ
「・・・ここは・・・。・・・・私は・・・一体・・・誰・・?」
キュピル
「・・・!ミティア!ミティア、分かるか!?俺だぜ!」
ルイ
「・・・あ・・。・・・キュピル君!」

ヘル
「テルミット。目覚めたらここにいたんだけど今ここがどこなのか分かる?」
テルミット
「全然わからない。ヘルなら分かると思ったんだけど・・・・」
ヘル
「ちくしょ〜それにしてもなんだよ、この巨剣!俺の武器はこんなにでかくない・・!
・・・でもいつか扱ってみたいな!!テルミット!決めた!俺いつかこの武器片手で振り回してやる!」
テルミット
「ヘルならきっと出来るよ」

輝月
「・・・・琶月!」
琶月
「ひぃっ!はい!!」
輝月
「今すぐこの場所を調べろ!ワシはここで道草食ってる暇はないのじゃ!!」
琶月
「は、はいぃぃ!!!」

琶月が外に出ようとするがディバンに止められた。

ディバン
「琶月。ちょっと外に出る前に俺達の話を聞け」
琶月
「・・・・誰?」
ディバン
「お前の事を知っている普通の中年オヤジだ」

そういうと琶月を押し戻して輝月の所に歩かせる。

ファン
「大体行動パターンが読めました」
ジェスター
「凄い不思議な事が起きてるー!わーい!」
ファン
「ジェスターさん。少しは反省してください」


皆おかしな状態になっている中。ジェスターとファンは全く影響を受けておらず
ディバンも偶然外に居たため影響を受けていない。

ディバン
「で、その行動パターンとやらは?」
ファン
「どうやら全員、体も記憶も全て六歳の頃に戻ってしまっているようです」
ディバン
「・・・だからこんなにも見覚えのあるクソガキがいる訳か。」
ジェスター
「記憶も六歳の頃に戻っているのー?」
ファン
「そうとしか思えません。まず僕達の事を見て識別できていないようなので・・。
それと幼馴染の人はしっかり覚えているみたいですのでやはり戻ったという説が強いと思います。」
ジェスター
「んー。でもさー。キュピルとルイは幼馴染じゃないよー?それにキュピル、ルイの事全然違う名前で
呼んでるよ?ミティアだっけ?」
ファン
「しかしミティアという名前にルイさんは反応しているようですが・・・。
・・・・もう一つ気になるのは輝月さんと琶月さんですね。彼女達は姉妹ではないようですが
非常に昔から付き合っているようですね」
ディバン
「みたいだな。」
ジェスター
「ヘルとテルミットは納得できちゃうけどねー」
ディバン
「・・・で、本題に戻すぞ。こいつ等は元に戻るのか?それとも未来永劫このままか?」
ファン
「それはもう少し分析してみないと何とも言えません・・・」
ディバン
「勘弁してくれ、店のオーナーがこんな六歳児じゃ客も来ないからな」
ファン
「そもそも営業できませんね。元に戻るまで店は閉じることにしておきましょう」

そういうとファンがボタンを押してシャッターを降ろした。

ディバン
「この先どうする?」
ファン
「・・・ひとまず大変なことになってるので僕達が仲間だということを意識させたいです」
ディバン
「それなら俺に任せろ」

そういうとディバンが前に立ち二回手拍子を鳴らした。
全員ディバンの方に注目し始めた。

ディバン
「ちびっ子共、聞いてくれ。不思議な話かもしれないがお前達は三時間前まで大人だった」
ヘル
「大人?どういうことだ?」
キュピル
「大人?大人って言えば・・酒とか煙草とか吸えるってことだよな?俺三時間前まで大人だったのか!」
ディバン
「この白い奴がとんでもない事故を起こしてお前等は六歳のころまで戻ってしまった。」
ジェスター
「白い奴言うな〜!」

ディバンがジェスターの頭を押さえながら喋る。

ディバン
「つまり何が言いたいのかと言うと今ここに居る人達全員、戦友という強い絆で結ばれた仲間だってことだ。
ただ今は六歳の頃に戻ってしまって覚えていない。その事をしっかり意識して欲しい」
輝月
「・・・ジジイ」
ディバン
「お前は少し口が悪すぎる。直せ」
輝月
「ならさっさと名を申せ」
ディバン
「ディバンだ。」
輝月
「ディバン。しかと覚えておこう。してディバン。ならばお主はどうなのじゃ?
何故お主は六歳の頃に戻っておらぬのか?理にかなっておらぬな」
琶月
「流石師匠です!文武両道!頭良いです!!」

輝月がまんざらでもなさそうな顔をするがディバンは鼻で笑った。

ディバン
「まぁ六歳にしちゃよく考えたな」
輝月
「何じゃと」
ディバン
「俺は偶然この場から離れていた。今回の事故に巻き込まれなかったってわけだ」
輝月
「・・・・」

輝月がディバンを睨みつける。今より昔の方がより一層鋭いようだ。

ディバン
「キュピル」
キュピル
「いよっしゃ、何だ!?」
ディバン
「お前がここのリーダーだった。それだけ覚えておけ」
キュピル
「・・・・」
ディバン
「どうした?」

しばらくしてキュピルがその場で大きくジャンプして喜び始めた。

キュピル
「うわ、すげぇ!!未来の俺はリーダーなんかやってたのか!ミティア聞いたか!?俺リーダーだってよ!!」
ルイ
「ちょ、ちょっと。キュピル君!少し落ちついて・・・凄いのは分かったから・・・」
ディバン
「キュピル。・・・一つ気になるんだが」
キュピル
「おう、何だ!」
ディバン
「そいつの名前はミティアじゃないぞ?ルイって言うんだが」
ファン
「(ついに言いましたね)」
キュピル
「何言ってるんだ。ミティアはルイって名前じゃないぜ。な、ミティア?」
ルイ
「うん」
ディバン
「(ここだけ謎だな・・・。ルイ本人も自分がミティアだとは自覚しているようだが・・・)」
ファン
「その件は後でゆっくり考えましょう。」
ディバン
「そうだな」
ファン
「とりあえず僕は皆さんを元に戻す方法を探すので仲良くしてくださいよ」

そういうとファンは自室に戻って行った。

ルイ
「服ブカブカだよ・・。私大人になったらこんな服来てるの?」
キュピル
「俺の服装見てみろよ。黒いコートによくわからないズボンだぜ!
輝月
「ふん・・・こういう時、和服というのは便利じゃな。琶月。締め直すぞ」
琶月
「あ、はい!」
輝月
「ディバン。さっさと個室を用意せぬか」
ディバン
「口の悪い子には用意しない。」
輝月
「ぬぅ、私を誰だと分かって申しておるのか!」
琶月
「そーだそーだー!あの羅月様の一番弟子、輝月様ですよ!!頭が高い!」

あーだこーだ言う二人にディバンは再び鼻で笑った。

ディバン
「知らないな。」
輝月
「ぬぅっ!!刀を抜け!決闘じゃ!!」
ディバン
「ジェスター、輝月の相手を頼む。たかが六歳だ。適当に体当たりしてれば勝てる」
ジェスター
「本当にー?勝ったら何か頂戴ー?」
ディバン
「・・・・リーダーに言え」
キュピル
「お?誰か呼んだか?」
ディバン
「キュピル。この白い奴の名前はジェスターと言う。お前のペットだ。後で構ってやってくれ」
ルイ
「・・・・・・」
キュピル
「な、なんだよミティア。大丈夫だって!俺はミティア一筋だからさ!」
ディバン
「・・・お前たちそういう関係だったのか」
キュピル
「いやー照れるなー」
ルイ
「恥ずかしいからやめて・・」

輝月
「ええい、ワシを無視するな!!」

輝月が刀を抜刀する。が、記憶の中の刀と17歳の輝月が扱っている刀は別物で
非常に重く、恰好も無様だ。

ジェスター
「ターックル!!」
輝月
「ぐっ!」

ジェスターがタックルし輝月を転倒させる。

ジェスター
「いつもキュピルにやられてる技!わああああああああ!!」
輝月
「や、やめぬか!!」

ジェスターが輝月の赤い髪をボサボサにかき乱す。

琶月
「あああああああ!!師匠ーーー!!!」
ジェスター
「ボサボサー!」

ジェスターが完全に遊びモードに入った。
当分の間輝月と戯れているだろう。


ディバン
「・・・そろそろこいつ等の面倒見るのも飽きてきたな。トレジャーハンターでも行くか。
おい、ちびっ子共。俺は少し出かけてくるからファンっていう恐竜みたいな姿をした人(?)の事は
ちゃんとよく聞くんだぞ。物を壊さない程度なら自由に遊んでも構わない。いいな?」
テルミット
「はい」
ディバン
「素直で良い子だ」

テルミットがにっこり笑う。
・・・そしてディバンは出て行ってしまった。










ファン
「・・・・・・」




「すげー、この刀!強い力を感じる!」
「その刀、私によこせ。私のような強者が一番似合う刀だ」
「おい!その刀は俺が持っていたものだ!渡さないぞ!」
「ほう?この私と勝負する気か。」
「師匠が仰っています!とっとと貸しなs・・・ぎゃあああ!」
「よぉー!リーダーとやら!面白そうだから加勢するぜ!喧嘩一発かかってこい!」
「よっしゃー!名前分からないがよろしく頼むぜ!」
「俺の名はヘル!リーダーとやら、お前は?」
「キュピルだぜ。よろしく頼む!」
「ぬぅ!琶月!ゆくぞ!」
「は、はい!」




ファン
「いい加減にしてください」





ファンが思いっきり怒鳴る。が、誰も言う事を聞かない。

ファン
「悪い子は眠らせます!」

ファンがスリープを唱える。

キュピル
「う・・急に眠気が・・・負けちまう・・・」
ヘル
「・・・耐えられない・・・」
テルミット
「・・・・おやすみなさい・・」
ルイ
「・・・zzz・・・・」
輝月
「くっ・・・何故じゃ・・・。・・・琶月・・・くっつくな
琶月
「おやすみなさい、師匠・・・」

ジェスター
「むーん!喧嘩と聞いてジェスターお姉ちゃんが止めに・・・ってあれ?」
ファン
「五月蠅かったので眠らせました。」
ジェスター
「なーんだ。じゃぁ私も昼寝する!!」
ファン
「ところでディバンさんは?」
ジェスター
「トレジャーハンターに行ったよー」
ファン
「最悪です」

ジェスター
「おやすみ〜」

そういうと枕を持ってジェスターも眠る体勢に入った。
・・・床の上で寝る7人の子供・・・

ジェスター
「私は子供じゃなーい!」
ファン
「誰に言ってるんですか」






==夜


夜は夜で大変な事が起きていた。


ファン
「・・・はっ、大変です。」
ジェスター
「んー?おはよ!おはよー!!」
ファン
「もう夜ですよ・・・って、話逸らさないでください!」
ジェスター
「しょうがないなぁ〜。どうしたのー?」
ファン
「いつも夜はルイさんかキュピルさんが作っていたので作る人が居ません!」
ジェスター
「・・・・あ」



ヘル
「おーい、テルミット。飯はまだかー?」
テルミット
「ヘル、ここは僕達の家じゃないからそういうのは慎んだ方が・・・」
ヘル
「でもよー、腹は減るぜ?」
輝月
「・・・琶月!」
琶月
「は、はい!」
輝月
「飯」
琶月
「そんなあっさり言わないで」

キュピル
「腹減ったぜ。誰が作ってくれるんだろう?」
ルイ
「・・・作る?」
キュピル
「お!流石ミティア!」
ルイ
「ふふ、ちょっとまってて。あ、ここの台所使ってもいいかな?」
ファン
「どうぞどうぞ。」
ジェスター
「ルイの幼少時代って凄くおしとやか系。」
ファン
「今は一言で言いますと?」
ジェスター
「ぎゃー系」
ファン
「良くわかりません。

・・・それはともかく、ミティアさん・・じゃなくてルイさんが作ってくれそうですね」
ジェスター
「うんうん」



・・・一時間後。


ルイ
「はい、どうぞ」
ヘル
「おぉ、美味しそうだ」
テルミット
「トン汁にご飯に魚・・ですね」
輝月
「ほぉ、私の好みをよく心得ておるな?琶月を解雇してこやつを雇用するか」
琶月
「や、やだ!!師匠見捨てないで!!!」
輝月
「ぬぅ、冗談じゃ!くっつくな!鼻水つけるでない!!
キュピル
「ありがとう。いただきまーす!」

キュピルが先に食べ始める。
何故か全員キュピルを見てる。

キュピル
「美味い!いやー、俺幸せ者だな〜」
ルイ
「ふふっ」

ジェスター
「何かキュピルとルイ見てるとイラつくんだけどどうすればいい?」

ファン
「抑えてください」

・・・キュピルにご飯を渡してからルイが動かない。

ヘル
「ん、俺の分は?」
輝月
「ぬ、私の分はないのか?」
ルイ
「え・・あ・・。・・・その、キュピルさんに食べて貰いたかったのでキュピルさんの分しか・・」
琶月
「・・・・・・」
テルミット
「・・・・・・」
ジェスター
「リア充くたばれ〜!!」
ファン
「どこでそんな言葉覚えたんですか」
ルイ
「あ、ちょ、叩かないでください!」
キュピル
「ミティアに手出すな!!」

そのまま一気に乱闘が始まった。

ファン
「本当にもう手がつけられません!!出前取りましょう!



数十分後


ヘル
「寿司うめーな」
輝月
「このような食べ物に巡り合えるとは人生捨てたものではないな?」
琶月
「師匠、まだそのような年齢ではないかと・・・」

キュピル
「寿司よりミティアのご飯の方が美味しいぜ。こんな化学調味料に頼った食い物なんて
ファン
「化学調味料殆どないと思いますが」

キュピル
「う、うるさい。ミティアの料理には愛がこもってる!愛!」
ルイ
「恥ずかしいからちょっとやめて・・。・・・でも嬉しい」
ジェスター
「あーあー、子供って純粋でいーなー!!!!」
ファン
「自分も子供なのによく言いますよ」

ジェスター
「いーだ!」


・・・そして数十分後。



ファン
「もう夜の10時ですよ。六歳児はもう寝てください」
テルミット
「もう眠い・・・。寝ましょう」
ヘル
「夜はこれからだってのになー」
ファン
「ですから六歳児が言う台詞では(ry
キュピル
「寝る場所ってどこだー」
ファン
「キュピルさんはこの部屋です」
キュピル
「おぉ、個室!!」
ファン
「ちなみにルイさんはこちらです」

・・・・・・・。

ファン
「失礼・・・ミティアさんはこちらです」
ルイ
「あ、はい」
ファン
「(やはり間違えてしまいます)」

ルイが部屋の中に入る。・・・が、しばらくしてすぐに出てきた。

ファン
「どうしました?」
ルイ
「怖いです・・・」
ヘル
「どれどれ」

・・・しばらくしてヘルもすぐに出てきた。

ヘル
「いや、俺こういうのだめ、本当に」

琶月
「どれどれー?」

琶月がルイの部屋に入る。が、しばらくして泣きながら出てきた。

琶月
「わああああん!!!」
輝月
「い、一体中に何があったと言うのじゃ・・・」

輝月も好奇心に唆され中に入る。
・・・・が、しばらくしてうっすらと目に涙を浮かべながら出てきた。

輝月
「な、泣いてなんかおらぬぞ・・・」
ジェスター
「可愛い!」

輝月
「さ、触るな!」
ジェスター
「髪の毛ボサボサの刑〜!」

輝月とジェスターが再び遊び始めた。
ファンが一体何かと思い中に入ると・・・。


ファン
「・・・・なるほど・・確かに子供達には怖いかもしれませんね」

オカルトグッズで埋め尽くされた部屋・・・
その中で一際目立つのは高い所に飾られた複数の骸骨・・・。これは恐ろしい。

ルイ
「わ、私・・将来こんなの好きになっちゃうんですか・・?・・・・うぅぅ・・・。」
ファン
「・・・・とりあえず怖いと思うのでしたら誰かと一緒に寝ても構いませんから早めに寝ちゃってください」

これ以上問題起こされても困るので早い所寝かせて元に戻す方法を探すとする。
流石に大人だったら問題だが子供なら問題ないはずだ。
・・・案の定キュピルとルイが同じ部屋で寝ることになった。

しばらくの間全員自室に戻るまで時間かかったがジェスターの髪の毛ボサボサの刑効果もあり
全員逃げるようにして自室に戻って行った。

ファン
「やっと静かになりましたね・・・」
ジェスター
「・・・あ、皆お風呂入ってないよ」

ファン
「もういいです。

とにかく僕は作業に入るので後はよろしく頼みましたよ」
ジェスター
「はーい」


・・・その日はもう特に何も起きなかった・・・。





==翌日


ヘル
「朝飯くれー」
テルミット
「う、うーん。それな言葉遣いでいいのかな・・・。確かにお腹減ったけど・・」
ルイ
「ふふっ、キュピルさん。今朝ごはんお作り致しますね」
ヘル
「俺の分も作ってくれよー!」
ルイ
「え・・・」
ヘル
「え、じゃねーし」

ファン
「朝ごはんぐらいなら僕も作れるので僕が作りますよ」

ファンが冷蔵庫から卵をいくつも取り調理を始める。

ルイ
「・・・お名前何て言いましたっけ」
ファン
「ファンです」
ルイ
「私とキュピルさんの分は作らなくていいです。私が作りますから」
ファン
「・・・?しかし一度に作った方が効率良いので・・」

が、そこでルイが恐ろしい表情をしてファンを脅した。

ルイ
「私がいるのに私以外の料理食べさせるなんて許さない」

ファン

「ヒィッ、ワ、ワカリマシターーーー!!」
ルイ
「はいっ!」
キュピル
「?」


十分後。食卓には目玉焼きと食パンが並んだ。

ファン
「(ルイさん・・・何て恐ろしい子)」
ジェスター
「ベルバラ?」

ファン
「分かる人絶対いません」


輝月
「朝食に味噌汁はないのか?朝の基本じゃぞ!」
琶月
「師匠が味噌汁を要求しています!」
ジェスター
「文句言うと髪の毛ボサボサの刑!!」
輝月
「ふっ、今の私は寝起きじゃ。ボサボサにされたところで・・・」
ジェスター
「じゃあ髪の毛引っ張り刑!!」
輝月
「ぎゃあぁっっ!!」
琶月
「あああああああああああ」


ジェスターが長い輝月の髪を引っ張る。
輝月らしくない叫び声をあげる。

ジェスター
「はーい、次我がまま言ったらもっと引っ張るよー」
輝月
「・・・・・・」
ファン
「児童虐待です」




・・・そして全員朝食を食べ終えファンは後片付けすることに。

他の皆は外で遊び始めた。

ファン
「やれやれ・・・」

ついキュピルの口癖を言うファン。





==ナルビク・砂浜


テルミット
「何して遊びましょうか」
ヘル
「喧嘩しようぜ喧嘩!」
テルミット
「無視します」
ヘル
「・・・・・」

キュピル
「こんなに人数いるならドッヂボールもいいなー」
ジェスター
「鬼ごっこ!」
キュピル
「鬼ごっこいいねー。足を鍛える事はすなわち回避力上昇に繋がる。戦闘能力が上がる遊びは歓迎だ。」
輝月
「お主、それは真か?」
キュピル
「おうー。俺は逃げ足だけは自信あるからなー。おかげであんまり戦闘になってもダメージ受けないぜー!」
輝月
「琶月、鬼ごっことやらをやるぞ!」
琶月
「えー!!」

結局多数決で鬼ごっこをやることに。
最初の鬼はジェスターだった。

ジェスター
「がおー」
琶月
「ひぃっ!」

凄いスピードで琶月に迫りタッチする。

琶月
「あーあ・・・」
輝月
「こっちへ来るな、琶月」
琶月
「嫌です!」

琶月が輝月を追うが二人とも鈍足なため一向に決着がつかない。
途中から琶月が近くに居たテルミットを追いはじめるがテルミットの方が遥かに足が速く置いてかれてしまった。
今度はヘルが琶月を挑発し始めたためヘルを追うがやはり追いつけなかった。
挙句の果てにはキュピルとルイも琶月を挑発し始め自ら近づくが琶月が狙いを定め走り始めると
二人とも凄い勢いで散って行き誰にもタッチ出来ない。
挙句の果てには全員で挑発し始める。

キュピル
「ほらほらー、俺はこんなにも近くに居るぞー。追って捕まえて見せろー」
ヘル
「かかってこいや、おらー!」
テルミット
「僕もこんなに近くに居ますよ?」
輝月
「ふっ、琶月よ。どうした?来ないのか?」
琶月
「うっ・・・うっ・・・うわあああああん!!!」

とうとう泣きだしてしまい全員慰め始める。

キュピル
「うっ、その。悪かった?俺が鬼やるからさ!な!?」
ヘル
「な、泣くなよ・・・。ごめんってば・・」
琶月
「わあああああん!!」
ヘル
「謝ってるだろ!泣きやめよ!」
琶月
「わあああああああああああん!!」
テルミット
「ど、どうしましょう・・」

おどおどしていると輝月が琶月の頭を蹴る。

輝月
「泣くな、泣き虫」
琶月
「わああああああああああああああああああああん!!」

ジェスター
「どうみても逆効果」

ヘル
「おい!お前が蹴ったから余計に泣いちまったじゃないか!」
ルイ
「蹴るのはよくないと思う!」
テルミット
「いけない事です!」
キュピル
「どうするんだよー」
輝月
「わ、私は関係ないじゃろ!」
ヘル
「関係ありありだろ!馬鹿、ドジ!」
キュピル
「まぬけ!」
テルミット
「アホ!」
輝月
「な、なんじゃ・・・。皆してワシを責めおって・・・うっ・・・ぐすっ・・・・」
ヘル
「おい、輝月まで泣き始めちまったじゃないか!誰だ、泣かせた奴は!」
輝月
「な、泣いてなんか・・・ひっくっ・・・お・・らぬわい・・・!!」

しかしどこからどう見ても泣いている。

キュピル
「泣かせたのはお前だ!」
ヘル
「いや、お前だ!」
キュピル
「おうおう、やる気か!」
ヘル
「やってやる!」

今度はキュピルとヘルが喧嘩し始めた。
ルイとテルミットが仲裁に入ろうとするが二人の拳が頭にぶつかりルイは泣き始め
テルミットはうずくまってしまった。

ジェスター
「もう子供は嫌〜〜!!」








==一時間後


ファン
「本当に困りましたね・・・。」

ファンが全員スリープで眠らせクエストショップまで運んできた。
全員すやすやと寝ている。

ファン
「早い所ディバンさんには戻ってきて貰いたいものですが本人は当分戻る気ありませんよね
ジェスター
「どうするー?」
ファン
「早く解決策を考えましょう。」
ジェスター
「早く早く!」
ファン
「元はと言えば全てジェスターさんの責任だということをお忘れなく」

ジェスター
「責任転嫁〜」
ファン
「違います!!」



そういいながら二人ともファンの部屋へ入って行った。
早い所解決策を考えて元に戻そう・・・。



・・・・。

・・・・・・・・・。

キュピル
「ふあぁ〜・・。お、いつのまにか昼寝しちゃったようだ。ミティアー、起きてくれー。暇だー」
ルイ
「ん・・・・。あ、おはよう」

魔法の効果が切れたらしく他の人も次々と起き始めた。

ヘル
「ん〜、いつ寝たか記憶にないぜ」
輝月
「・・・琶月!」
琶月
「は、はい!」
輝月
「私の記憶を呼び戻させろ」
琶月
「無茶言わないでください」


皆がまたゾロゾロと適当に行動し始める。
が、誰も何もしないので暇になり今度は何するか話し始める。

ルイ
「ねぇ、キュピル。今度は何して遊ぶの?」
キュピル
「そうだ!俺この世界の事よく知らないからさ!ちょっと外行ってみないか!?」
ルイ
「また砂浜?」
キュピル
「違うぜ!もっと広い世界だ!例えば城下町ギルドの外みたいなさ、広大なフィールドにいくんだよ!」
ヘル
「お、そいつはいいな!行こうぜ!」
輝月
「ワシもこの街の周辺は良く知らぬからな?琶月!支度じゃ!」
琶月
「は、はい!」
テルミット
「ヘル・・・でも僕達武器と防具ないよ・・・」
キュピル
「俺目が覚めたときから二本の剣持ってたんだよなー。一本貸してやるよ!」

そういうとキュピルはヘルに赤い剣を投げ渡した。

ヘル
「さんきゅ!こいつなら軽くて扱えそうだぜ」
輝月
「私も目覚めたときからこのような刀を持っていたが・・・重くて扱えぬ」
琶月
「師匠と同じです・・」
ルイ
「・・・これなんだろう?」

ルイが拳銃をちらつかせる。

キュピル
「あ!そいつはロビソンが持っていた銃にそっくりじゃないか!」
ルイ
「え?銃?銃って・・・あの銃!?」
キュピル
「そうだぜ!ミティアいつからそんなの持ってたんだ!?」
輝月
「ほぉ?強いのか?」
キュピル
「この穴から鋼鉄の玉が飛んでくるんだ!当たり所が悪いと一発でお陀仏しちまう強力な武器だぜ」
輝月
「貸せ!」
キュピル
「いてっ!」

輝月が無理やり拳銃を奪い取り懐に仕舞う。

キュピル
「あー!返せ返せ!」
ルイ
「あ、いいよ・・。私は怖いから・・」
キュピル
「そうか?」
ヘル
「それより早く外行こうぜ!」
テルミット
「あ、ヘル!待ってよ!」

ヘルが真っ先に外に出た。
他の皆もヘルに続いて行く。そしてそのままナルビクから出て行った。




ファン
「・・・やっと解決策が見つかりました」
ジェスター
「おぉー!」
ファン
「空間軸の暴発が原因だったみたいですね。この暴発を逆さにさせた状態で更に暴発させれば
元に戻るはずですよ」
ジェスター
「裏の裏って表じゃないの?」

ファン
「裏の表の裏です」
ジェスター
「裏の・・表の・・裏・・・表じゃないの?」

ファン
「もういいです。
とにかく皆さんを呼んで来てください」
ジェスター
「もう出来るのー?」
ファン
「はい。数分の調整ですぐに出来ますよ。これでやっと元通りです・・・」
ジェスター
「はーい!」


・・・・。

ファン
「このコードを逆さにすれば・・・」

ファンが魔法を唱えながらコードをゆっくり動かしていく。

・・・・・。

ジェスター
「わああああああああああ!!」
ファン
「ビクッ。・・・って、ああああ!!全然違うコードと繋がってしまいました!!!」
ジェスター
「直せばいいじゃんー」
ファン
「そんな簡単に直せるものじゃありません!!って、一体どうしたんですか!」
ジェスター
「皆いなーい!」
ファン
「砂浜も見ましたか?」
ジェスター
「どこにもいなーい!」
ファン
「・・・・夜になったらきっと戻ってくるでしょう。待ちましょう」
ジェスター
「うん」






==クライデン平原


キュピル
「お、さっそくモンスターがいるぜ!」

キュピルがゼリッピを示す。

ルイ
「あ、可愛い・・・」
琶月
「こういうペット欲しい!」
輝月
「で、これはどう使うのじゃ?琶月!」
琶月
「私に言われても分かりません!!」
輝月
「・・・役立たず」
琶月
「そ、そんなぁ!!」
ヘル
「適当に動かしたら?」
テルミット
「そ、それは危ないような・・」

輝月が引き金を引く。銃弾がゼリッピへ向けて飛びゼリッピがゼリー状に分裂した。

輝月
「な、なんじゃ、この威力は!」
テルミット
「・・・凄い」
キュピル
「こんな強い武器があるなら冒険できるな!行こうぜ!」
ルイ
「あ、待って!」

キュピルが先に走り始めた。
ヘルやテルミット、輝月と琶月も後を追うが輝月と琶月は大人だった時に来ていた服の
帯をきつく締めているだけなので非常に走りづらそうだ。

輝月
「ぬぅ、またんか!」

時々輝月が追い付いてくるまでたまに止まる。その繰り返しでドンドン奥へ行く。






==数時間後


ファン
「・・・夕方になりましたね」
ジェスター
「うん」
ファン
「・・・そうでした。子供というのは無邪気で恐れを何も知らないものでした・・・。
・・・もしかするとフィールドに行ってる可能性が・・・」
ジェスター
「・・・・ちょっと危ない?」
ファン
「ちょっとどころか結構危ないですよ」
ジェスター
「探しに行く?」
ファン
「探した方が良いですね」
ジェスター
「めんどくさーい!!」
ファン
「自分で言っておいて何て事を言うんですか」

ジェスター
「大丈夫だよ〜、もうちょっと待ってればきっと帰ってくるよ!くるよ!!」
ファン
「その自信は一体どこから沸いてくるのですか?」
ジェスター
「直感!」
ファン
「もうだめだ」





続く



第3.5話

(内容が薄い+オマケ的な話だったので3.5話にしておきました)




クライデン平原へ飛びだしたキュピル達だが・・・?



テルミット
「夜になってしまいましたよ。戻った方が・・・」
キュピル
「うーん、腹も減ってきたしそうするかー」
ルイ
「そうだよ、キュピル君。早く戻ろうよ・・」
琶月
「も、もう歩けない・・」
輝月
「雑魚」
琶月
「泣きたい・・・」

ヘル
「・・・・ん」

その時後ろから何かが接近してきているのにヘルが気付いた。
そのまま立ちつくしていると突然スカルウォーリアーの大軍が現れた。
見た目とは裏腹に温厚である彼らだがヘルが真っ先に反応し攻撃を仕掛けた。
攻撃され行軍の邪魔をしたヘル達に攻撃し始めた。

琶月
「ぎゃ、ぎゃああああーー!!」
輝月
「な、なんじゃ!」
キュピル
「敵だー!やってやる!」

キュピルが幽霊刀を抜刀しようとするが、他のスカルウォーリアーがキュピル達を
盾で押し流し始めた。

キュピル
「うわ!押すなー!」
テルミット
「ヘル!」
輝月
「くっ!」

完全に無力化され反撃してこない事が分かるとそのまま攻撃せず皆を押し流しながら行軍するスカルウォーリアー達。

ルイ
「あうっ」

途中でルイが抜け出しその場から急いで離脱する。

ルイ
「(助けを呼んで来ないと!)」





==キュピルの家


ジェスター
「zzz・・・・zzz・・・」
ファン
「寝てる場合じゃありません」


ファンがジェスターを起こす。

ジェスター
「うーん・・!人がせっかく気持ちいい眠りについていたのに!わああああああああ!!」
ファン
「ス、スイマセン!!・・じゃなくて!!もう夜九時ですよ!流石にまだ戻って来ないというのはいくらなんでも
問題があります!!」
ジェスター
「えー・・・・。・・・・うーん・・・探す?」
ファン
「当たり前です!」

その時誰かが帰って来た。

ジェスター
「あ!ほら!ルイが帰ってきたよ〜」
ルイ
「はぁ・・はぁ・・・。」

走ってきたのか息が切れている。

ファン
「随分とボロボロですね。どうかしましたか?」
ジェスター
「あれ?他の皆は?」
ルイ
「はぁ・・・ぜ、全部・・・説明します・・・」







キュピル
「おわ〜!いい加減降ろしてくれ〜!!」

スカルウォーリアーに担がれながら何処かに運ばれていくキュピル達。
願いが通じたのか言葉が分かったのか、それとも単純に飽きたのか途中でキュピルを
適当な場所に放り投げた。

キュピル
「いてっ」

それはキュピルだけじゃなくヘルやテルミット、輝月達も放り投げられていた。

琶月
「痛いよー!わああああん!!」
輝月
「泣き虫め」
琶月
「お腹も減った!!わああああん!!」
ヘル
「あいったたたた・・・。・・・で、ここどこだよ・・・」
テルミット
「全然分からない・・・」
キュピル
「ん・・・あれ?ミティア?おーい、ミティアー!!」

ミティアがいない。

キュピル
「大変だ!ミティアがいない!」
ヘル
「どっかで抜け出したんじゃね?」
キュピル
「だといいんだけど・・」
輝月
「足手まといな奴が減って、よしと思ったらどうじゃ?」
キュピル
「こんにゃろう!!」
輝月
「ぐっ!おのれ!」

二人が取っ組み合いを始める。
そんな二人を無視してテルミットが辺りを見回す。

テルミット
「あ、洞窟・・・。ここでゆっくり考えましょうよ」
琶月
「うん・・・」
ヘル
「そうだな・・」

・・・・。

キュピル
「ん、皆は?」
輝月
「ぬぅ、琶月!ワシを置いていくとはいい度胸しておるな!!」
キュピル
「そんな超上な態度じゃいつか逃げちまうぜ。第一なんでそんな態度で接するんだ?」
輝月
「私にとってこれが普通だ」
キュピル
「そんなんじゃ人を従える事は出来ないぜ!そうだなー、例えるなら
もし・・・・。・・・・・・」
輝月
「・・・・・なんじゃ?」
キュピル
「ごめん。名前なんだっけ」

輝月
「・・・・・・・・・」

輝月がキュピルの顔面に一発殴ると洞窟の中に入って行った。

キュピル
「いってええええええ!!!!!」





==洞窟

ヘル
「火を起こそう!テルミット!」
テルミット
「枝とかない?」
ヘル
「集めてくる!」
琶月
「お腹減った・・・」
輝月
「・・・・・・」
琶月
「師匠〜・・・」
輝月
「・・・適当に食える物がないか探して来てやろう」
キュピル
「よーし、俺も何か探すぞ〜!何探そう?」
テルミット
「枝とか食べ物とか・・・」
キュピル
「よっしゃー」

洞窟から三人が出て行った。



琶月
「うぅぅ・・・・」
テルミット
「マイナーバースト!・・・うーん、バースト!・・・・マナーバースト!」
琶月
「何やってるの?」
テルミット
「炎魔法を使おうとしてるんですけど上手く詠唱できなくて・・・」
琶月
「火?」
テルミット
「うん」
琶月
「イグニッション!」

二人の目の前に小さな火が現れた。

テルミット
「わぁっ!凄い!魔法扱う事が出来るんだ!」
琶月
「ちょっとだけ・・・」

しかし火は今にも消えそうだ。
早く枝とか持って来ないと・・・。
とにかく枯れ草などを適当に集めて被せ少しでも長持ちさせる。

テルミット
「ヘルー!まだー!?」

・・・・。

・・・・・・・・・。

テルミット
「ちょっと枝集めてくる!」
琶月
「あ!一人は嫌だ!怖い!!」

が、動かない琶月。
結局一人になってしまった。

琶月
「・・・・怖いよーー!!わあああああん!!!」






キュピル
「おー、これ食べれるんじゃないのか!?」
輝月
「・・・お主。こんな赤い実が食えるとでも?」
キュピル
「食えないのか?」
輝月
「ならば食うてみるがいい。じゃが命は保証せぬ」
キュピル
「うわ!」

それを聞いたキュピルがすぐに赤い実を放り投げた。

キュピル
「赤い実ってリンゴとかイチゴとか美味い果物が多いからてっきり食えると思ったのに!」
輝月
「おろかな・・・」
キュピル
「・・・なんでそんな酷い言葉しか言えないの?」
輝月
「宇宙の果てよりどうでもいい」
キュピル
「宇宙?」
輝月
「究極にどうでもいいということじゃな」
キュピル
「もっとさー、こうさー。人に対して優しくなろうぜー。なんというかさ、
シルクの周りにたくさんの人が集まるのって結局シルクが強くてカッコよくて優しいからだと思うし」
輝月
「シルク?誰じゃ?」
キュピル
「俺の師匠だぜ!世界で一番強い男だ!」
輝月
「それは真か!?」
キュピル
「おうー。シルクは絶対に負けないし死なないぜー。確か100mある建物から飛び降りても
地面にめり込むだけで生きてた気がする
輝月
「・・・・・人間じゃなく化け物のようじゃな」
キュピル
「人間だぜー」
輝月
「・・・信じられん・・・」

輝月が溜息をつく。

キュピル
「お、これは食えるんじゃないのか!?」

キュピルが落ちてる赤い実を拾う。

輝月
「それはさっきお主が投げ捨てた実だ。愚か者が。」








ヘル
「テルミットー。枝結構集めてきた・・・って、誰もいない」
琶月
「ガタガタガタガタガタガタガタ」
ヘル
「変なの発見。」

ヘルがドサッと火の上に枝を乗せる。普通なら消えてしまうが魔法の火なので
消えずに何とか燃え続けた。次第に枝に火が移り小さな焚火が出来あがった。

ヘル
「暖かいな」
琶月
「うん・・・」
ヘル
「・・・おわっー!!」
琶月
「ん?・・・ぎゃーー!!」




テルミット
「琶月さんー!枝もってきまs・・・って、蝙蝠!!!」

大量の蝙蝠が洞窟の天井にぶら下がっており火がついたことによって洞窟が照らされ
その眩しさに蝙蝠が暴れまわっている。
ヘルや琶月にぶつかってきている。

ヘル
「あっちいけ、このやろう!」
琶月
「あっちいくからやめてーー!!」
ヘル
「お前じゃねーよ!!」
テルミット
「えっと、えっと!ライト!!」

テルミットが下手な魔法を詠唱し光を召喚する。強い光が目の前に現れ
堪らなくなった蝙蝠の大軍は外に逃げて行った。

ヘル
「助かった・・・」
テルミット
「もう枝集まってたんだ。ならこれは予備ってことで・・」・

しばらくするとキュピルと輝月が戻ってきた。

キュピル
「美味しい木の実持ってきたぜー」
輝月
「この馬鹿が見つけた木の実は殆ど毒ばっかりじゃった。
結局私が見つけた物だけが食える」

そういうとキュピルと輝月が手のひら一杯に集めてきた茶色い木の実を地面の上に転がした。

琶月
「なにこれ、食べれるの?」
キュピル
「食ったけど鳥肉の味がしたぜ!」
テルミット
「変わった木の実ですね」
ヘル
「変わったどころじゃないと思うがな。さっそく食おうぜ」

意外と大きい木の実を指で摘まんで口の中に放り込む。
・・・確かに鳥肉の味がする。

ヘル
「確かに肉の味がするけど肉食った気分にならねーなー。むしろ感触は木の実なのに
味が肉だから気持ち悪い。モンスター狩って焼いて食おうぜ!」
テルミット
「・・・・さっきの骨の騎士って食える?」
ヘル
「・・・無理だな」
輝月
「我慢しろ」

全員焚火を囲んで茶色い不思議な木の実を食べる。


・・・・。

・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・。








ファン
「スイッチON!」

ファンがスイッチを入れる。マナが集まりしばらくすると装置の中から元の姿に戻ったルイが現れた。

ファン
「ルイさん?大丈夫ですか?」
ルイ
「ん・・・あれ?私一体何を・・」
ジェスター
「あれ?覚えてないの?」
ルイ
「全く・・・何が起きていたのですか?」
ファン
「かくかくしかじか」

・・・・・。

ルイ
「え、えーーー!!私六歳児に戻っていたのですか!?」
ジェスター
「うんー。」
ファン
「ルイさんだけじゃなくキュピルさん達も今六歳児に戻っていますけどね」
ルイ
「そ、それは早く会いに行かn・・じゃなくて今キュピルさん達は何処にいるのですか?」
ファン
「・・・それが行方不明です。ですが六歳児のルイさんから皆がどちらに向かって行ったのかは
聞いていますので追いかけに行きましょう」
ルイ
「分かりました!・・・って、あれ?・・・あああ!!私の愛銃がない!!」
ファン
「恐らくキュピルさん達が持っていますよ」
ルイ
「それなら安心・・・。さっそく行きましょう」
ジェスター
「うんー」



==クライデン平原


ジェスター
「ところでルイー?」
ルイ
「はい?」
ジェスター
「ルイの子供の頃の名前ってミティアだったのー?」
ルイ
「・・・はい?」
ジェスター
「何かキュピルがルイの事ミティアって呼んでいたよー」
ルイ
「・・・うーん・・・全然分かりません・・・ニックネームでしょうか?
ファン
「そうは思えませんでしたが・・」
ルイ
「(・・・あ、そうだ。今キュピルさんは六歳児って言ってましたね・・・。
・・・ってことは今のキュピルさんの記憶は元の世界に居た時の記憶・・・。
・・・色々聞いてみましょう!)」

ジェスター
「じぃー・・・」
ルイ
「・・・?どうかしましたか?」
ジェスター
「昨日ルイとキュピル一緒の部屋で寝てたの覚えてないんだー」
ルイ
「・・・・・・・・・」


ジェスター
「あ!!ルイが倒れた!!!」
ルイ
「(記憶が無い事を一番恨みたい・・・。)」















キュピル
「ふあぁ〜・・。眠い」
テルミット
「・・・ここで寝るのは難しいと思う」
キュピル
「何で?」
テルミット
「もしまた敵が来たらどうするんですか?」
輝月
「誰かが見張ればよかろう」
キュピル
「よーし、なら俺が見張る!」
輝月
「ふっ、自ら名乗り上がるとは有能じゃな。どこぞの誰かとは大違いじゃ」
琶月
「な、なんでこっち見るんですか!」
ヘル
「んじゃ、よろしく頼む」
キュピル
「おうよー」

キュピルが幽霊刀を持って外に出る。
輝月がその刀をじっと見ていたがキュピルは気付かなかったようだ。

ヘル
「寝よ寝よ。」

最初寝ていいものか全員戸惑ったがヘルがすぐに寝始めるとそれに釣られても他の人も寝始めた。

輝月
「・・琶月!」
琶月
「は、はい!」
輝月
「枕」

そういうと輝月が琶月の腹の上に頭を乗せた。

琶月
「泣きたい」











キュピル
「・・・・・・」


突然知らない世界へ飛ばされた感覚でいるキュピル。
ここまで明るく振舞ってきたけれども・・・・。

キュピル
「・・・・・・シルク・・・ティル・・・。普段皆が冒険してるのを遠巻きで眺めていたけど・・・。
知らない場所って結構不安になるんだね」

唯一、ミティアが傍に居てくれていたが今はいない。

キュピル
「・・・・・・・」

月を眺める。

キュピル
「この月は今誰が見ているかな?シルクも今見ているかな?」

・・・・。

キュピル
「いつか月に行きてー!月に行きゃ全員今何してるのか分るんだろ?
ぜってー大人になったら月にいってやる!」

・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・。

キュピル
「・・・・早く大人にならないかなー。そうすればあの設計図で・・・」

・・・・自分の机に隠してある未来の設計図・・・。

・・・・。


空飛ぶ船。



テルミット
「随分凄い夢を持っているんだね」
キュピル
「あれ?寝たんじゃなかったの?」
テルミット
「そんな大きな声で叫んでたら誰も寝れません・・・」
キュピル
「あ、わりぃわりぃ・・」
テルミット
「月に行くんですか?」
キュピル
「おうよー。ちゃんと月に行くための設計図は作ってあるんだぜ!」
テルミット
「本当ですか!?」
キュピル
「当然だぜ!設計図がなきゃ何も作れないってロビソンが言っていたからな!
今ここで設計図書けるぜ」
テルミット
「書いて見せてください」
キュピル
「おっけー!」

そういうとキュピルが適当に落ちている石を拾い地面をなぞって絵を書き始めた。
・・・しばらくすると子供の絵だが一つの船の絵が出来あがった。

キュピル
「ここにエンジン積むんだ。そしてその横には羽のオールを乗せるんだ。」
テルミット
「うんうん」
キュピル
「風に乗ってドンドン高く飛んでいくのがこの船の設計図だぜ!ちゃんと帆を立てるぜ。」
テルミット
「でも本当に飛べるの?」
キュピル
「鳥って羽を羽ばたかせて飛んでるだろ?その原理と同じでこの羽のオールを上下に動かして
船を飛ばすんだ!」

明らかに子供の発想。


常識的に考えて飛ぶはずのない船。


でも。


テルミット
「凄い!結構人はいるかもしれないけど確かに飛べるかもしれない!でも浮くだけじゃ前に進めないんじゃ?」
キュピル
「そのためのエンジンだぜ!このエンジンで火を吹かすんだ。そうすれば前にも後ろにも移動できる!
本当はフナ底にもつけて火の力で浮かそうって思ったけど火って上に向かって燃えているから
火事になっちまうからこれは無理だった・・・」
テルミット
「へぇー・・・」
キュピル
「大人になったら絶対これを作るんだ!」
テルミット
「子供の時じゃ作れないの?」
キュピル
「ロビソンが大人になったら手伝ってやるって言っていた」
テルミット
「へぇー・・」
キュピル
「君にも何か夢とかってないの?」
テルミット
「うーん、僕は特にないからヘルの手伝いでもしようかなって思う」
キュピル
「ヘルの手伝い?」
テルミット
「世界で一番強い人になりたいんだって。もし負けたら誰も助けてくれないからその時僕が助けようかなって」
キュピル
「いいね」

その時誰かやってきた。

ヘル
「絶対負けないし」
テルミット
「本当に?この前ナナミさんに負けたよね?」
ヘル
「うっ、あいつは化け物だからいいんだよ!」
キュピル
「ナナミ?」
ヘル
「幼馴染」
キュピル
「ほぉー」
ヘル
「今はまだ無理だがいつか大人になったらデカイ剣持ってこの大陸全土を制覇するのが俺の夢だ。
そんときはお前も俺と一戦してくれよ」
キュピル
「ふははは、悪いが俺には勝ててもシルクには勝てないぞー!」
ヘル
「・・・・誰?」
キュピル
「人間だけど化け物」
ヘル
「化け物は願い下げしたいな・・・」

するとまた誰かがやってきた。

輝月
「その言葉。聞き捨てならぬな?」
ヘル
「ん。人を枕にして寝てたんじゃなかったのか?」
輝月
「口では嫌がっておるが本性は嫌がっておらぬじゃろうて」
琶月
「嫌です」

輝月
「・・・・」

輝月が一回咳をした後話を続けた。

輝月
「私もこの世で最強の武人になるのが夢だ。・・・ということはいつかお主とぶつかる日がくるな?」
ヘル
「まーそうだなー。そのときゃ正々堂々と勝負しようぜ」
輝月
「うぬ。」
テルミット
「負けても恨み合いしないでくださいよ」
琶月
「いざこざもなし!」
輝月
「ふっ、私がそんな小さな者になるわけがなかろう」
キュピル
「琶月だっけ?琶月の夢は?」
輝月
「おい、お主。私の名は忘れてこいつの名は覚えているとはどういうことじゃ」

輝月がもう一発キュピルの顔面を殴る。が、今度は受け止められてしまった。

キュピル
「残念!!」

輝月
「・・・・・・」
琶月
「私の夢は一生遊んで暮らせる人生をあy・・・」

そういいかけて慌てて訂正した。

琶月
「一生師匠に仕える事です!!」
輝月
「うむ」
キュピル
「(将来働かなくなりそう)」


その時寒い風が吹いた。
・・・冬の風だ。

ヘル
「うお、さみぃ・・・」
テルミット
「せっかくだからこっちにも火を焚こうか。たまには夜ふかしも悪くないですよ」
キュピル
「今日は雲一つない綺麗な星が見えるぞー」

そういうと全員上を見上げた。
・・・冬の空は空気が澄んでいて星がとてもよく見える。
全員適当な枝や枯れ草を集めると琶月がイグニッションを唱え火を焚いた。

琶月
「あったか〜い」
輝月
「・・・悪くない」

大きい和服で身を完全に包む輝月。暖かそうだ。

キュピル
「・・・確か昨日まで俺達って大人だったんだっけ?」
テルミット
「みたい」
キュピル
「さっき俺の話した夢。実現してるといーなー。倉庫とか大きい庫に移動するとそこには
俺の作った空飛ぶ船が!!・・・ってね」
ヘル
「俺は既に世界で一番強い男になったかな」
輝月
「ふ、それはワシじゃろうて」
テルミット
「・・・僕も何か自分のやりたい道を見つけて突き進んでいたら嬉しいかな」
琶月
「私は全然未来が見えない・・・」



焚火の煙が星空へと上がって行く。




ファン
「おや?」
ジェスター
「んー?」
ファン
「煙ですね。あそこで誰かが焚火を焚いているようです」
ルイ
「行きましょう」




キュピル
「・・・・・」

・・・・・・・。

キュピル
「なー。今の俺達には大人だった時の記憶がないよなー」
琶月
「そうだね・・・」
キュピル
「・・・ってことは大人になった時、子供だった時の記憶もなくなっているのかな・・・」

・・・・。

輝月
「さぁな。覚えている者もおれば覚えておらぬ者もいるじゃろうて」
キュピル
「・・・誰かが言っていた気がするんだ。『子供のころはそれが日常で当たり前だけど
大人になると別の事で忙しくなってその日常を忘れてしまう』って・・・。
・・・・大人の俺は今俺が考えていた事を忘れて別の事をやっていたりするのかな・・・・。
・・・・だとしたら空飛ぶ船なんてないよな・・・」
テルミット
「・・・・・・・」
ヘル
「・・・あの恐竜みたいな見た目をした人は言っていただろ?元に戻す方法を探すって。
ってことは戻す方法が見つかれば俺達はすぐに大人になる。
だったら今、俺達が未来の俺達に向かって手紙を書けばいいじゃないか。
こんなことがあったけど信じてくれーって。」
テルミット
「まるでタイムカプセルみたいだね」
キュピル
「・・・そうだね。・・・よし、家に戻ったら俺宛てへの手紙書くぞ〜!」

その時草をかき分ける音が複数聞こえた。

キュピル
「ん?」
琶月
「わ、何々!?敵?敵?」
キュピル
「俺は向こう見てくるから誰か向こう見てくれ」
ヘル
「俺がいくぜ」

キュピルが東の方向に、ヘルは西の方向へ進んだ。


・・・・。


キュピル
「誰だー!モンスターか!?モンスターだったらギッタギタにしてやるぜー!」

その時目の前にジェスターが現れた。

キュピル
「あ」
ジェスター
「じー・・」

その瞬間後ろから誰かに抱きあげられた。

キュピル
「わっ!離せー!」
ルイ
「わああ!子供のキュピルさん可愛すぎます!!可愛い可愛い!!」
キュピル
「ぎええええええ、誰!?」



向こうの方からも叫び声が聞こえた。

キュピル
「敵か!?」
ジェスター
「ファンだよー。逃がされても困るから挟み打ちで捕獲〜

しばらくすると網で捕獲されたヘル達が現れた。

ヘル
「ちくしょ〜離せ〜!」
輝月
「ぬぅ、なんじゃ!この網は!」
ファン
「まるで悪者になった気分です。これ以上面倒起こされてはストレス死しそうなのでさっさと連れて帰ります」

ジェスター
「えー、ファンってストレス溜まるのー?ペチペチ」

そういいながらジェスターがファンの顔を手で叩く。

ファン
「ジェスターさん、後でキュピルさんに頼んでお小遣いなしにしてもらいますよ」
ジェスター
「わああああ!!!許して!!!」

琶月
「うぅぅ、もういや〜!」



こうして子供の小さな冒険(?)は終了した。
大した事はしていないが・・・。

一つだけ今に対して影響を及ぼす事をした。





==キュピルの家


ファン
「早くこの機械に乗ってください」
キュピル
「の、乗る前にちょっといいかな?」
ファン
「何ですか?」
キュピル
「ちょっと未来の俺に手紙を書きたいんだ」
ヘル
「俺も俺も!」
テルミット
「僕も書きたいです」
輝月
「ワシも書かせて貰おうか」
琶月
「わたしも!」
ルイ
「何か私が仲間外れにされた感じがして凄く悲しいんですが」

ファン
「まぁ手紙ぐらいでしたらいいでしょう。でもこの部屋から出ないように」
ジェスター
「拉致監禁!」

ファン
「キュピルさんに頼んでお小遣いを(ry」
ジェスター
「わああああああああ!!」



全員鉛筆と紙を受け取り何か書き始めた。

・・・・。

・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

ルイ
「(何書いてるんだろう?)」

ルイが気になってキュピルの手紙を覗き見る。が、ばれてしまい体全身使って隠してしまった。

ルイ
「あらら・・・。見せてくれないんですか?」
キュピル
「ミティア以外には見せない!」
ルイ
「・・・ミティア?」
ファン
「あ、そういえばルイさん。キュピルさんが子供時代のルイさんの事をミティアと呼んでいましたが
心当たりは何かありませんか?」
ルイ
「私が・・ですか?・・・うーん・・・・」

ルイが必死に思いだそうと頑張っているが全く心当たりがない。

ルイ
「うーん・・・全然分かりません・・・。」
キュピル
「・・・あれ?そういえばミティアは?てっきり帰って来たと思ってたんだけど」
ファン
「ミティアさんは既に大人に戻りましたよ」
キュピル
「え?ほんと?大人になったミティアは何処だー!?」
ファン
「(今です、ルイさん)」
ルイ
「(何か嘘ついてる感じもしますけど・・・ファンさんを信じて・・・!)」

ルイ
「キュピルさん」
キュピル
「ほい!」

ルイ
「私が大人になったミティアですよ」


・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

キュピル
「・・・そっか」
ルイ
「・・・え?」
キュピル
「大人になっても一緒に暮らせてて安心したよ。」
ルイ
「え?え?」
キュピル
「じゃ、もうちょいしたら俺も大人に戻ってきっと記憶も戻るだろうからよろしくな!」

バシッとルイの背中を叩く。
困惑するルイだがしばらくして笑い始めた。

ルイ
「はいっ!」

数分後・・・。

ファン
「手紙書き終わりましたか?」
キュピル
「書いたぜ!」
ヘル
「うわ、これはひでぇや・・・。何て書いてあるのか読めねぇ」

テルミット
「・・・僕がちゃんと読んであげますよ」
ヘル
「信じてるぜ」
輝月
「どうじゃ、琶月」
琶月
「流石師匠!!達筆です!!」
ジェスター
「態々鉛筆なのに筆みたいな持ち方で持って書くってどうなの?」
ファン
「薄過ぎて読みにくいですね」

輝月
「私の勝手じゃろう。」
ファン
「とにかくこの機械の中に入っちゃってください」
キュピル
「うわ、押すな押すな」
琶月
「きつい!!」

ファンが無理やり狭いカプセルに全員押し込む。
そしてカバーを閉める。中からぎゃーぎゃー叫び声が聞こえる。

ファン
「スイッチオン!!」

凄まじい音と共に強力な光に包まれ始めた。
しばらくすると五つの白い光が外に溢れ地面に転がった。
そして徐々に人の姿に変わって行き、全員大人へと戻って行った。

キュピル
「・・・・・・はっ・・・ここは・・・!?」
ヘル
「うっ、頭がマジでいてぇ・・・。テルミット!いるか?」
テルミット
「はい、ヘルさん。ここにいますよ」
輝月
「ぬぅ・・・。淡い夢を見ていた気がするぞ・・・。」
琶月
「はっ、師匠!大丈夫ですか!?」
輝月
「うぬ」

キュピルが辺りを見回す。

キュピル
「なんだ、ファンの部屋か。一体何があったんだ?」
ファン
「皆さんに手紙が届いていますよ」
キュピル
「手紙?送り主は?」
ファン
「六歳だった頃の皆さんですよ」

そういうとファンが今さっき書かれた手紙を皆に渡し始めた。
全員中身を見る。

ヘル
「はぁ?なんだこれ?全然よめねーぞ」
テルミット
「見せてください。・・・・・これは・・・本当に酷いですね。読めません
ヘル
「・・・・・・」
ファン
「(悲惨ですね)」


輝月
「ぬぅ、なんじゃこれは。薄過ぎて読めぬぞ」
琶月
「無駄に達筆ですね。わざわざ自分が達筆であることを証明したいがゆえにこんなに薄い文字になったんでしょうね。
きっと書いた人は傲慢で我がままでかつプライドの高い人だったと思いますよ」

その瞬間輝月が思いっきり琶月の頭を殴った。

琶月
「ぎゃああぁぁぁっっ!!」
輝月
「お主、さっきファンがこの手紙は子供だったワシが今の私へに向けて書いた手紙だと申していたが?
それはつまり私の事を言ってる事になるが?」
琶月
「ごめんなさい!!聞いていませんでした!!!」
ファン
「人の話はちゃんと聞いてください」



ルイがキュピルに話しかける。

ルイ
「キュピルさん。手紙には何て書いてありましたか?」
キュピル
「今読んでる」

キュピルが長い文章を読み進めて行く。

・・・・・。

しばらくして。

キュピル
「・・・・・・子供って無邪気で純粋で汚れなんて一切知らない。
だからこそこんな壮大な夢が描けるんだよな。
その壮大な夢に魅かれて色んな人が集まってくる・・・。」
ルイ
「・・・?」
キュピル
「その描いた夢はいつまでも色褪せることはなく永遠に続いていつか実現できると思っている。
だからこそまた次から次へと色んな夢を描き続ける事が出来るんだよな。
・・・・ルイ」
ルイ
「はい?」
キュピル
「子供のころから俺はルイにゾッコンしていたようだ」

そういうとルイに手紙を私キュピルはファンの部屋から出て行った。

ジェスター
「え?何々ー?今のって何ー?ねーねー!」
ルイ
「・・・・・・・・」

ルイが後ろに倒れた。

ジェスター
「あ、またルイが倒れた」








==翌日


キュピル
「ファンー!!」
ファン
「どうかしましたか?」
キュピル
「空飛ぶ船作ろうぜ!」






ファン
「キュピルさんが狂ってしまいました。どうすればいいでしょうか・・・」

ジェスター
「叩けば治るよ」

キュピル
「俺は機械か」




続く



第四話

子供になってしまうという妙なトラブルに巻き込まれたキュピル達だがファンの活躍により
元に戻ったキュピル達。子供の頃の自分が書き遺した手紙を見たクエストショップの一味は・・・?

ルイ
「私ってキュピルさんと幼馴染だったんですか?」
ファン
「あの様子を見るとどうもそんな感じがしましたが一体?」
ルイ
「でも私記憶にありません・・・。・・・そもそも一番古い記憶はいきなり辺境で突っ立ってた所ですから・・」
ファン
「それもまた随分と変な記憶ですね」









ジェスター
「むぅー!」
キュピル
「隙有り!!」
ジェスター
「あー!!わあああああ!!!」
輝月
「・・・・・」
ヘル
「うわっ、こいつ!!最後にカスリダメージ与えて自分の得点にしやがった!」
輝月
「ふっ・・・」
ジェスター
「もう嫌だ!リセット!!」
キュピル
「ぬわああ!!」
輝月
「っ!!」

ジェスターがリセットボタンを押しリセットされた。
キュピルと輝月が苦い表情をする。

ファン
「・・・で、一体皆さんは何をやっているんですか」

ジェスター
「スマブラ!」
ファン
「また懐かしい物を

・・・っというより空き部屋に玩具を一杯置かないでください!」
ジェスター
「今日からここはプレイルームにするー!仕事が無い時はここで遊ぶの!!あっても遊ぶ!!」
ファン
「今クエストショップが倒産する姿が安易に浮かびました」

キュピル
「ジェスター、いくら負けたからってリセットはよくない。」
ヘル
「俺のコントローラー言う事聞かないんだが・・・。・・・といかキュピルのジェスターは二位じゃなかったか?勝ちだろ」
ジェスター
「一位以外は全部0点!!負け!!」
ファン
「その精神をゲーム以外に活用してください」

キュピル
「(結局一位は輝月だったけどね)」
輝月
「ワシもこのゲームのように二段ジャンプができればな?戦いの幅が広がるというものを」
ヘル
「・・・・お前は二段ジャンプしなくたって高くジャンプ出来るだろ。俺もだが」
キュピル
「羨ましいんだが・・・。・・・っと、1時だ。休憩終了。仕事に戻るぞー」
ジェスター
「えー!もっと遊びたいー!」
キュピル
「悪いが俺と輝月とヘルはこれから遠出しなければいけない。・・・まぁ、ルイ辺りに遊んで貰えば・・・」

キュピルがドアを見る。
・・・・ドア越しにルイが立っているのが分かる。さっきから聞き耳を立てているようだが・・・。
混ざりたいなら混ざりたいと言えばいいものを・・・。

ジェスター
「ルイはもう飽きた〜〜〜!!」

・・・ドア越しからすすり泣く声が聞こえた。
そのままどっかに行ってしまったようだ。

キュピル
「と、とにかく!俺達はもう行かないと!ヘル、輝月。行くぞ」
ヘル
「わかりました」
輝月
「こいつと共に行かねばならんのが不服じゃが仕方あるまい」
ヘル
「うるせーな・・」

三人がプレイルームから出て行く。

ファン
「既にプレイルームっと表現されているんですが・・・」

ジェスター
「わーん・・・。誰か遊ぼうよー。」
ファン
「ジェスターさんも仕事を手伝ってあげたらどうですか?」
ジェスター
「何かモチベーションが上がらなーい!!」
ファン
「・・・・」

ジェスターが通路に出る。そしてリビングまで移動する。
ちょうどキュピル達が装備を整えてこれから行く所だった。

キュピル
「じゃ、行ってくる」
ルイ
「気をつけてくださいね」
テルミット
「ヘルさん。帰りがけに太陽草摘んで来てください」
ヘル
「十中八九失敗するぞ」
テルミット
「い、一応それでも構いません」
輝月
「・・・・我が弟子の見送りがない。後で一発お仕置きせねば」
キュピル
「輝月が言うとプレッシャーがあるな」


そして三人はクエストショップから出て行った。
三人が出て行くとちょうどディバンが帰って来た。あの後本当にトレジャーハンターに行ったらしく
五日ぐらい会わなかった。

ディバン
「今あいつ等とすれ違った。どうやら元に戻ったようだな。」
ジェスター
「あ、ディバンだー。何か面白い事ないのー?」
ディバン
「面白い事だ?・・・そうだな」

ディバンがポケットから一枚の地図を取り出した。

ディバン
「宝探しだ。探索しきって宝を持ち帰ったら全部やる」
ジェスター
「ほんと!?」
ディバン
「本当だ。ま、適当に頑張れ」

ディバンがそういうとしゃがんでジェスターに地図を渡した。
そして地図を広げ内容を確認する。
・・・しばらくしてジェスターが難しそうな表情をした。

ジェスター
「全然わかんなーい!!」
ディバン
「ハッハッハ、それが宝探しというものだ。ヒントはちゃんとその地図に書いてある。
ま、頑張れ。」

そういうとディバンは一旦自分の部屋に戻りしばらくするとまた外に出て行った。
荷物からするともう一回トレジャーハンターをしに行くのだろう。・・・取り残しでもあったのだろうか。
数十分の間、地図と睨み合いしていたジェスターだが全く分からないので誰かに聞くことにした。
通路の扉を開け誰かいないか確認すると琶月が居た。

琶月
「し、し、しまった〜〜〜!!師匠のお見送りを忘れてしまった!!
帰ってきたら何をされるのか・・・うぅぅ・・・」
ジェスター
「ねーねー。」
琶月
「まさか斬ったりしてこないよね・・・!?そ、それとも一週間パシリ・・・!?あーー!どうしようー!!」
ジェスター
「むぅー!聞いて!」

ジェスターがジャンプして琶月の頭を叩く。

琶月
「イダっ!」
ジェスター
「・・・えっと、名前なんだっけ?
琶月
「ジェスターさんにも名前忘れられてる。もうだめだー!!」
ジェスター
「あ、思い出した!琶月だった!これ分かるー?」

ジェスターが地図を見せる。

琶月
「これは何ですか?」
ジェスター
「ディバンから貰った地図ー。宝が隠されている地図なんだってー」
琶月
「・・宝が隠されている地図・・・」

琶月が何か想像している。
・・・しばらくして

琶月
「見つけて師匠に献上すれば汚名挽回間違いなし!!」
ジェスター
「ねー、分かるー?」
琶月
「見せて」

琶月が地図を受け取り解読する。
・・・・しかし全く分からない。

琶月
「・・・・・」
ジェスター
「どうー?」
琶月
「えと・・その・・・。・・・・」
ジェスター
「・・・・役立たず〜」
琶月
「一言一言の鋭さが師匠より鋭いんですが・・・・・・」
ジェスター
「あ、そうだ!ファンに聞こうっと〜」
琶月
「そうです!知識人のファンさんに聞きましょう!」

二人とも地図の端を持って同時に歩きファンの元まで行く。





ファン
「地図の解読ですか?」
琶月
「そうです!」
ジェスター
「できるー?」
ファン
「見せてください」

ファンが地図を受け取り内容を確認する。
しばらくしてファンが魔法を唱えて地図の真の姿を暴いた。
全く違う内容が現れた!

ジェスター
「えー。何でわかったの?」
ファン
「そもそも見た事のない大陸の地図だったので街の位置を解読してみました。
すると街がいくつか点在する事がわかりそれを高度の高い街から順に線を引いていきますと
ルーン文字が現れました。そのルーン文字の意味は「魔」。試しに簡単な魔法をかけてみましたら
案の定真の姿を晒し出しました」
琶月
「・・・なんで一瞬でそんな事が分るんですか・・・」
ファン
「ヒントが書いてありました」
ジェスター
「ヒントー?」
ファン
「今は地図の姿が変わってしまったので見えないのですが右下にルーン文字が書かれていました。
そのルーン文字には『天に近き街、高位と為す』っと書かれていました。比較的簡単な解読だったと思います」
ジェスター
「私ルーン文字読めないからわかんなーい!!」
ファン
「ま、まぁ・・・とりあえず解読しましたのでお渡ししておきます」
ジェスター
「んー?」

ジェスターが再び地図の内容を確認する。
ジェスターの頭の上に顎を乗せて一緒に地図の内容を確認する琶月。

ジェスター
「じぃー・・・」
琶月
「・・・・あの、全然分からないんですが」

ファン
「後は知識勝負ですね。少なくともアノマラド大陸の何処かの地図ですので後はご自分で解析してください」
ジェスター
「えー!わかんなーい!」
ファン
「何でもかんでも頼っちゃいけません。自分で解いて見つけた時が一番楽しいのですよ」
ジェスター
「ケチー!」
ファン
「今僕の言った言葉ちゃんと聞いていましたか?」

ジェスター
「いいもん、いいもん。ルイがいるもん」

そういって二人はファンの部屋から出て行った。

ファン
「・・・・・」






ルイはキュピルの家のリビングにいた。
ちょうど自分の部屋に入ろうとしていた所を捕まえた。

ジェスター
「ルーイ!」
ルイ
「わっ!」
ジェスター
「わぁー♪」

後ろから抱きつき思いっきり甘える。

ルイ
「きゅ、急にどうしたんですか?」
ジェスター
「読めない地図があるの!」
ルイ
「地図ですか?」
琶月
「こ、これです」

琶月がルイに地図を渡す。

ジェスター
「ディバンがその地図に宝があるって言ってたんだけど・・・・。
アノマラドのどこにあるのかわかんなーい!!」
ルイ
「・・・・うーん・・・・。」

ルイが地図の向きを変えたり角度を変えたりして様々な方向から見るが
かなり拡大された地図らしく中々場所を特定できないようだ。

ルイ
「・・・比較的地形がなだらかな場所にあるみたいですが・・
うーん・・・。・・・・ごめんなさい・・すぐに判別できそうもありません・・」
琶月
「・・・・・」
ジェスター
「えー!ルイなら分かると思ったのに!役立たずー」
ルイ
「えっ!!」
ジェスター
「いこー、琶月」
琶月
「う、その。何かごめんなさい!」

琶月がルイに一言謝ってジェスターの後を追う。
一人ポツンと取り残されたルイが間を置いてから叫んだ。

ルイ
「猫かぶりはよくないと思います!!」





ジェスター
「うーん、ファンは教えてくれないし・・・ルイはダメだった・・・次誰に聞こう?」
琶月
「あ」

琶月が偶然テルミットを見つけた。テルミットなら分かるかもしれない。

琶月
「テルミットさん!」
テルミット
「はい?」
ジェスター
「これってどこの地図なのー?」

ジェスターが地図をテルミットに渡す。

巨弓を横に置いて地図を受け取る。
しばらく考えた後・・・

テルミット
「・・・これはピライオンダンジョンだと僕は思いますよ」
ジェスター
「ピライオンー?」
テルミット
「このなだらかな地形。そして垂直の曲がり角。間違いないですね。
ここに宝があるらしいですよ」

テルミットが赤いペンでグルッと丸をつけた。

ジェスター
「わーい!場所がわかったー!流石テルミット〜!ルイより役に立つ〜!」
琶月
「ほんと流石!!これで師匠に褒められる!」
テルミット
「??」

テルミットが分からなさそうな表情をする。
が、思い出したかのように言葉を付け加えた。

テルミット
「あ、でも気をつけてくださいよ。そこはシクルやバンテージヴァンプなどといった
幽霊がうじゃうじゃいまs・・・」

突然扉が開いてルイが飛び出て来た。

ルイ
「ジェスターさん!!一緒に行きましょう!!」
ジェスター
「えー!」
ルイ
「露骨に嫌がられた・・・もう私立ち直れません」

琶月
「うっ、お化け・・・・。・・・ジェスター?ほら、お化けは怖いから・・・ルイさん連れてこ?」
ジェスター
「今さり気なく呼び捨てで呼ばれた気がする。別にいいけど」
琶月
「(あ、いいんだ)」
ジェスター
「お化けやっぱり怖いからルイも連れて行くー。ルイがいればお化けも逃げると思うし」
ルイ
「逃げないでください」

琶月
「テルミットさんは来ないのですか?」
テルミット
「僕はちょっとこれから出かけないといけないので・・・。」
琶月
「戦力が・・・」
テルミット
「・・・・・」



かくして、三人でピライオンダンジョンへ行くことになった。


ジェスター
「よーし!ジェスター隊出陣〜!」
琶月
「そのネーミングセンス何とかした方がいいと思う」
ジェスター
「えー、じゃぁ琶月なら何て名前にする?」
琶月
「漆黒を照らす月光!」
ジェスター
「中二病。私より酷いネームセンス」
琶月
「う、うるさーい!」
ジェスター
「わぁ〜!」
ルイ
「あぁ、置いてかないでください!ただでさえ会話でも置いてけぼりなのに!!空気になりたくないです!
ジェスター
「空気がないと生きていけないよ。空気は大切!だからルイが空気になっても大切にしてくれるよ!」
ルイ
「そう言われると一見言いようにも思えますがやっぱり嫌です!」




==ピライオンダンジョン


ピライオンダンジョンに辿りついた。
入ってさっそく琶月が辺りを見回し始めた。

琶月
「ん?」

琶月が何かに気付く。

琶月
「・・・あれ?モンスター居ませんね」
ジェスター
「集団で固まってたり・・・」
琶月
「・・・・・」
ルイ
「ご安心ください!私が全力でお守りいたしますから!」
ジェスター
「あ、ルイが頼もしい!」
ルイ
「ふふふ・・・」
琶月
「うーん、師匠には及ばないけど私も頑張ろうっと」

琶月が刀を抜刀する。

ジェスター
「どこに宝があるのー?」
ルイ
「ピライオンダンジョン2にあるようですよ」
ジェスター
「よーし!ジェスター隊出陣〜!」
ルイ
「結局その名前になったんですね・・・」

三人が奥へ進み始める。
ルイを先頭に地図と照らし合わしながら道順通りに進んで行く。

琶月
「この様子ならすぐ宝見つかりそうだね。ふー・・そんなに緊張しなくてもよかったかな」
ルイ
「うーん」
ジェスター
「んー?」
ルイ
「ここから先かなり道順が複雑みたいです。ちょっと今確認中です・・・」
ジェスター
「早くー」
ルイ
「あぁ、せかさないでください・・・」

三人が十字路で突っ立っていると突然琶月が反応し刀を振るった。

琶月
「ぎゃぁー!」
ルイ
「!」

ルイが振り返ると琶月が刀でバンテージヴァンプをちょうど切り倒していた。・・・大丈夫そうだ。

ルイ
「び、びっくりさせないでください!ぎゃーって言うもんですからてっきりやられたのかと!」
琶月
「本当はかっこよく「たぁー!!」とか「やぁー!!」とか言いたかったのですが何故か「ぎゃー!」に」

ジェスター
「これが本当のぎゃーぎゃー言いながら戦うって事?」
ルイ
「どうなんでしょうかね」
ジェスター
「考えてみたけど皆何か起きた時の台詞『ぎゃー』じゃん。」

ルイ
「・・・・・・」
琶月
「・・・・・・」
ジェスター
「チーム名『ぎゃー』に変えておく?」
ルイ
「やめてください・・・。それより宝は向こうですよ。」

再び三人が進み始める。

・・・・。

・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。




ルイ
「・・・ここ・・です!!」

ルイがビシッと扉を示した。

琶月
「・・・・少し怖い。幽霊出たりしないかな・・・。」
ルイ
「幽霊・・・!!」
琶月
「・・・・・・・」
ジェスター
「よーし、ルイー。扉開けてー!」
ルイ
「・・・は、琶月さん手伝ってください」
琶月
「は、はい・・」

後ろでジェスターが応援している。しているだけである。

二人が頑張って重たい扉を押す。しかし一向に開く気配がない。

ルイ
「はぁ・・はぁ・・。ダメです。全然ビクともしません」
琶月
「石の扉ってやっぱり重たいんだ・・・」
ジェスター
「えー」

ジェスターも手伝うが押しても引いてもスライドさせても叩いてもビクともしない。

ジェスター
「全然だめじゃーん!!」
琶月
「開く手順があるのかな・・・・」
ルイ
「色々試してみましょう」

魔法を唱えてみたりジェスターが鉄の棍棒で本気で殴ってみたり歌ってみたり祈ってみたり踊ってみたり
それらしいことをしてみたが全く反応しなかった。

ジェスター
「そーれ、そーれ」
琶月
「もう踊らなくていいよ」
ルイ
「(もう少し見たかった・・・)

ジェスター
「色々試したけど全然効果なーい!!わあああああ!」
ルイ
「とりあえず・・・一旦戻りましょう。もう一時間以上経過していますし・・・。
それに午後五時ですよ。戻ってご飯の支度をしないと・・・」
ジェスター
「あ、ごはーん。じゃー戻ろうー?」
琶月
「食べるの好きなんだね・・・」


ルイがウィングを三つ取り出しナルビクへと戻って行った・・・・。






==夜


キュピル
「ん?開かない扉?」

四人でご飯を食べながら会話する。

ルイ
「そうなんですよ!もう色々疲れました・・・」
ジェスター
「むーん!」

ジェスターが口をもごもご動かす。歯がゆい思いをしている時よくやっている。

キュピル
「ファン、どう思う?」
ファン
「ダンジョンの仕掛け等は僕にはさっぱりです」
キュピル
「明日ディバンに聞いてみたらどうかな。」
ジェスター
「そうするー!」
キュピル
「ごちそうさま」

食器を台所まで運ぶと寝る支度に入った。

ルイ
「もう寝るんですか?」
キュピル
「明日は完了したクエストをまとめる作業があるんだ・・・。だから早めに寝ようっと。」
ファン
「トップならではの苦労ですね。」
キュピル
「名前ばかりのトップだけどね」
ジェスター
「じゃぁ、私がトップ!!」
キュピル
「それはダメだ」

ジェスター
「えー!酷い!」
キュピル
「酷いも何も・・・」

軽くシャワーを浴びて歯を磨きすぐにベッドの上で横になった。
・・・さーて、明日は大変だ・・・。



==翌日



ディバン
「開かない扉だと?」
琶月
「そうなんですよ!!これはもうプロのディバンさんに任せるしかない!!」
ジェスター
「うん」
琶月
「踊っても歌っても押しても引いてもスライドさせても叩いても蹴っても開かないんです!」
ジェスター
「うん」
ディバン
「・・・・」

ディバンが少し考えた後

ディバン
「お前等は一体どこへ行ったんだ。地図を見せてみろ」
ジェスター
「あ、ルイが持ってるから呼んでくる〜」

ジェスターが両手を広げながら走って行った。

・・・しばらくして


ルイ
「持ってきました」
ディバン
「お前達は何処の扉で試した?」
ルイ
「ここです」

ルイが○をつけている場所を示す。

ディバン
「・・・・・」

ディバンが無言で地図を返す。

ジェスター
「もうわかったの?」
ディバン
「分かったも何もお前等ダンジョン自体間違えているぞ」




・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ジェスターと琶月が何処かに走って行く。

ディバン
「?」
ルイ
「・・・はぁ・・・。」

ルイがガッカリした様子でトボトボと何処かに歩いて行った。





ヘル
「今日はタッグマッチだ」
輝月
「よかろう?琶月!・・・・む、琶月?」
ヘル
「弟子に見放されたな。」
輝月
「うるさい!奴は今たまたま居ないだけじゃ!」
テルミット
「最近いつも居ない気がしますが・・・」
輝月
「ぬぅ!ならばキュピルじゃ!キュピル、来い!!」
キュピル
「オーナーに向かって何て言う物言い。これはもうだめかもしれんね。ってか仕事が(ry

その時琶月とジェスターとがやってきた。

ジェスター
「居たー!!」
輝月
「見ろ!しっかり琶月は来おったぞ!」

が、二人ともそのままテルミットに体当たりする。

テルミット
「わっ!!何をするんです!?」
ジェスター
「馬鹿!!」

琶月
「アホ!!」









キュピル
「・・・何かしたのか?」

ボロボロのテルミットに何故か機嫌の悪いジェスターと琶月。
ヘルと輝月は未だによく状況がつかめないらしい。

テルミット
「・・・単純に浅はかでした・・・」
キュピル
「・・・?」
ヘル
「・・・?」
輝月
「・・・??」

キュピルも状況が掴めなかった。






ジェスター
「結局この地図ってどこの地図なの?」
ディバン
「それを自分で考えて探すのがトレジャーハンターの醍醐味だ」
ジェスター
「もうわかんなーい!!飽きて諦めそう!!」
ディバン
「それもまた一つの手段だ。諦めたら地図は返してくれ」
ジェスター
「むぅー!」
ディバン
「・・・キュピル辺りに頼めばいいだろう。お前の必殺技の駄々こねとイチャモンで協力してくれるんじゃないのか?」
ジェスター
「むぅー!!」

更に不機嫌になるジェスターだが何だかんだでキュピルの元まで行く。

ディバン
「・・・やれやれ。灯台もと暗しっとは良く言ったもんなんだがな」



ジェスター
「キュ〜ピ〜ル!!」
キュピル
「ん?おっと・・!」

後ろからジェスターが抱きつき思いっきり甘える。

キュピル
「・・・・ジェスター、それ昨日ルイにもやったろ?」
ジェスター
「えー、何で知ってるの?」
キュピル
「ルイから聞いた」
ジェスター
「むぅー!」
キュピル
「第一ルイはともかく長年住んでる俺に甘える戦法なんて通じるはずがないじゃないか」
ジェスター
「ケチッ!」
キュピル
「まるで俺が何も協力しないとでも言うような台詞。これは酷い」

ジェスター
「じゃー協力してくれる?」
キュピル
「まぁ地図を見せてくれ」
ジェスター
「テルミットも分らなかった地図なのにわかるのー?」
キュピル
「何だかんだでこの辺は詳しいから分かるだろう。・・・どれどれ」

キュピルが地図を見る。
・・・・しばらくしてニヤニヤし始めた。

キュピル
「なるほど。ディバンも中々手の込んだ事をしてくれてるな」
ジェスター
「わかったの!?」
キュピル
「おう分かったぞ」
ジェスター
「教えて!!」
キュピル
「ジェスター。これは本当によくよく考えて自分で見つけた方が面白いぞ」
ジェスター
「えー・・・・」
キュピル
「大丈夫。ジェスターは絶対知っている場所だ」
ジェスター
「本当に?」
キュピル
「うむ。でもヒントぐらいは上げておこう。・・・そうだなぁ・・・」

キュピルが地図を色んな方向に変えて様々な視点で見る。

キュピル
「・・・・ここに宝がある」

キュピルが青いペンで○をつける。

ジェスター
「わーい!・・・・でもここってどこのダンジョンなの?」
キュピル
「それは自分で考えるべきだ」
ジェスター
「えー!!」
キュピル
「大丈夫、本当によくよく考えれば分かるよ」
ジェスター
「むぅー」
キュピル
「・・・それなら特大ヒントだ。もうこれ以上のヒントは言わないぞ」
ジェスター
「うん」
キュピル
「正確にはダンジョンじゃない」
ジェスター
「えー?」
キュピル
「後は自分で考えるんだ」

そういってキュピルは再び椅子に座りデスクワークをこなし始めた。

ジェスター
「むーん」





琶月
「ダンジョンじゃない?」
ジェスター
「みたいだよ?」
琶月
「・・・・直角が多いこの通路・・・」
ジェスター
「・・・わかんなーい!!」
琶月
「あ、わかった!シノプダンジョンかも!」
ジェスター
「琶月、そこダンジョンじゃん。お馬鹿〜」
琶月
「もう嫌」


どれだけ考えても全く検討がつかない二人。

ジェスター
「あ、そうだ。まだヘルと輝月に聞いてなかったね。もしかしたら分かるかも?」
琶月
「・・・お二人とも分からないような気もしますけどダメ元で聞いてみましょう」
ジェスター
自分のお師匠さんに向かって凄い物言い・・・
琶月
「ぜ、絶対言わないでくださいよ!?」




輝月
「ん?この地図はどこを示しているのか・・・じゃと?」
琶月
「はい、師匠!師匠の優れた英知ならきっとわかりますよね!!」
ジェスター
「琶月、会話で首絞めてるよ」

輝月
「・・・・・・・・」

・・・・・。

・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

輝月
「そんなことより修行せい、お主」

ジェスター
「あ!逃げた!!」
輝月
「逃げておらぬ!!第一私は分かったぞ!」
ジェスター
「本当に?」
輝月
「うぬ」
ジェスター
「じゃぁ教えてー」
輝月
「琶月に聞かれたくない」
琶月
「そ、そんなぁっ!!」
ジェスター
「じゃー私だけでもいいから教えてー?」

ジェスターが耳を近づけさせる。
が、輝月は何故か後ろに下がっている。

ジェスター
「教えてくれないの?」
輝月
「・・・・・」
ジェスター
「あ!わかった!本当は分らないんだ!!」
輝月
「違う!」
ジェスター
「じゃー教えてー?」
輝月
「・・・・・・・・・」
ジェスター
「きーつーきー!!」

その時輝月がピンと閃いたらしく大きな声を上げた。

輝月
「ぬ、もしや・・・!!」
琶月
「流石師匠!何か分かったのですか!?」



輝月
「この地形。クエストショップではなかろうか?」




・・・・・。

・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


狭い土地にメンバー用の小部屋を無理やり積め込んだ結果曲がり角だらけになった建物。
垂直で平面な土地。

そして所々広い間取り・・・。




輝月
「ふっ、この私に感謝するのじゃな?琶月よ」
琶月
「・・・・・・・・」
ジェスター
「・・・・・・・・」
輝月
「お主等、どうした。感謝せい」
ジェスター
「わああああああああああ!!!!!」

輝月
「っ!」

ジェスターが輝月を突き飛ばして丸の書かれた部屋へ向かった。
その部屋は・・・。

琶月
「あ、ジェスター待って!!」

輝月
「・・・・・・・」








==クエストショップの使われていない小部屋


樽や箱がいくつか積み重ねられている部屋に入る。
その奥に小さな宝箱が置いてあった。

ジェスター
「あったー!!!」
琶月
「あ、開けてみましょう!ジェスターさん!!」
ジェスター
「んーーーーっしょ!!」

ジェスターが力いっぱい箱を押し上げる。
中には一枚の手紙だけが入っていた。

ジェスター
「・・・・・・・」
琶月
「・・・・・・・」

手紙の手に取る事なく上から読む。


『よく見つけたな。お前等はここに辿りつくまでかなり苦労したことだろう。
頑張りはいつか報われる。それを常に忘れずにこれからも頑張って行け。
こいつは俺からのプレゼントだ』


・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



ジェスター
「わああああああああん!!!」
琶月
「あああああーーー!!!!」







その場でジェスターが思いっきり泣きだした。
・・・当然琶月が泣かしたと勘違いを受け減給された琶月であった。





==深夜


ディバンが宝箱を置いた部屋へと入る。

ディバン
「全く、灯台もと暗しとは本当によく言ったものだな」

そういうとディバンは宝箱の中に置いた手紙を拾い裏に張りつけた一枚の金貨を剥がしそれをポケットに入れた。

ディバン
「売れば10万Seedにはなったのにな。ま、別にどうでもいいけどな」



哀れジェスターと琶月。




ディバン
「・・・しかしピライオンの開かない扉か・・・・。」




続く



第五話


ナルビクの出入口に小さい子が一人仁王立ちしていた。

???
「おー、ここが昔のナルビクかー!明るいなー!それで、お父さんの家はどこだー?」







キュピル
「・・・・・・・」

ひたすらクエストショップの書類、契約書に印鑑を押したり依頼の整理をしたりと
デスクワークをこなす。一昔前だったらこういうのは嫌がっていただろう。

ヘル
「俺はああいう仕事に就かなくてよかったと思っている」
輝月
「あいつが黙ってデスクワークやっていると全く戦えない貧弱な秘書に見えるな?」

その時誰かが入ってきた。
しかしキュピルは気付いていない。

ヘル
「ん、随分と小さい依頼主だな」
輝月
「子供じゃな」

入ってきた人がキュピルの目の前までにやってきて初めて誰かが来た事に気付いたようだ

キュピル
「あぁ、これは大変失礼しました。本日はどういったご用件・・・」
ボサボサ髪の女の子
「よぉっー!!!やっと会えたな!!」
キュピル
「・・・・は?」

ジェスターと同じぐらいの身長の子がいきなり机の上に乗っかり堂々とビシッと指差す。
黒い髪に黒い瞳・・・。癖毛がかなり激しい。

ボサボサ髪の女の子
「さぁー!アタシが誰だか分かるかな?いや、絶対分かるはずだ!!ちょっと顔も似てるしな!」

喋ろうとした所を思いっきり遮られてしまった。
鼻息が当たるぐらいまで顔を近づけられる。
だが全く誰だか分からない。というか知らない。

キュピル
「・・・人違いじゃありませんか?全く分からないのですが。・・とりあえずお名前の方を」
ボサボサ髪の女の子
「あちゃー、ダメかー。アタシの名前は『キュー』だぜ、『キュー』!」

ますます誰だか分らない。知り合いにキューという名前の人はいない。
キュピルが困っているとヘルがやってきた。

ヘル
「・・・キュピルさんは本当に知らないようですが?」
キュー
「うーん、やっぱ分かんないかー。私のお父さんだから分かると思ったんだけどなー。」


・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


その5秒後、ヘルに思いっきり殴り飛ばされた

キュピル
「ぐあっ!」
ヘル
「自分の子を忘れるとは見損なった!!」
キュピル
「いや、マジで知らないぞ!!横暴だ!
輝月
「お主・・・。あまり下手な言い訳すると刀の錆になるぞ」
キュピル
「輝月お前もかよ!!!」
テルミット
「一部始終見てました。確かに言われてみるとギラギラと闘志に燃えたその眼・・。キュピルさんと似ています・・」
キュー
「お父さんを殴るなー!」

キューが輝月とヘルの足元をすくい上げ転ばせる。

ヘル
「ぐあっ!」
輝月
「ぐっ!」
テルミット
「強い!」

二人とも強く腰を打ち、さすっている。

キュー
「ふははははー!お父さんに教えてもらった技だ!」

腰に手を乗せて勝ち誇ったポーズを取る。ジェスターと同じポーズ・・・。

キュピル
「大体・・・!俺今二十歳だぞ!キュー、今何歳だ」
キュー
「8」
キュピル
「12歳で子供作るとかどんだけだよ」


輝月
「・・・確かに言われてみればそうじゃな・・・」
ヘル
「だとしたらこいつ。未来から来たと言うのか?」
キュー
「そうだぜー。アタシは未来から来た未来っこ!」
キュピル
「はいはい・・・」
キュー
「・・・酷いぜ」

その時キューが何かを思い出したらしく小さな鞄の中に手を突っ込んだ。

キュー
「あ、そうだ。お父さんに頼まれてお父さんに渡す物があるんだった」
キュピル
「これは酷い自作自演」


キューが手紙をキュピルに渡す。

キュピル
「むむ・・・」

手紙を広げ内容を確認する。


そこにはたったの三行しか書かれていなかった。
それも焦っていたのか殴り書きだ。




『娘を頼む。
その子は未来を変える唯一の希望だ。
作者から守ってくれ』




・・・・・。


キュピル
「(・・・・)」

一瞬眉間にシワをよせたがすぐに戻した。


・・・・・。

輝月
「一体何と書いてあるのだ?」
キュピル
「・・・・今はまだ話すべきじゃないだろう」
輝月
「ほぉ?」
キュピル
「キュー・・・だっけ?」
キュー
「いえす!」
キュピル
「・・・一つだけ確認させてくれ。本当に俺とキューが親子関係なのかっていうのを」
キュー
「そうくると思っていたぜ!ファンのおじさんならそういうのすぐ調べられるよな?」
キュピル
「ま、まぁ多分」

ファンのおじさん・・・・
笑いをこらえながらキューと共にファンの部屋へ行く。さり気なく輝月とヘルもキュピルの後を追う。




==ファンの部屋


ファン
「・・・事情は分りました」
キュピル
「というわけだ。DNA検査出来るか?」
ファン
「魔法ですぐに出来ますよ」
キュピル
「本当に魔法は何が出来て何が出来ないのか全く分からない」

ファン
「でも血液は採集する必要があります。キューさん。注射するので怖かったら言ってください」
キュー
「にひひひ!アタシが怖いと思うときはお父さんに叱られる時だけだよ!」

そういうと長袖を勢いよくめくり腕を突き出した。
強い・・・・。

キューの血液とキュピルの血液を採集し魔法を通して混合させる。


・・・。

・・・・・・・・。

ファン
「結果が出ました」
キュピル
「どうだった?」
ファン
「・・・正真正銘。キュピルさんの子です」
キュピル
「・・・そうか」
キュー
「だからアタシは嘘なんてついてないってー。その手紙は私のお父さんが書いたものだし!」

この手紙の内容から見ると確実に俺しか知らない事が書かれている。


キュピル
「(・・・・未来を変える唯一の鍵・・・か。
・・・・あの作者相手にどこまで隠す事が出来るか)」
キュー
「?」

見た感じキューはまだ何も知らなさそうだが・・・はたして・・。
・・・よし、未来の俺からの頼みだ。ここは一つ、仮の父親・・いや、実際には本当の父親なんだろうが
ここは一つ。覚悟を決めよう。

キュピル
「キュー。お父さんの事情がよくわかった。・・・キューから見れば俺は過去のお父さんってことになるが
改めて色々とよろしく頼むよ」
キュー
「子供に向かって色々とよろしく頼むよって変だけどなー」
キュピル
「・・・もう口は立つんだね」
キュー
「おうよ」

中々勝気な子だ。
ファンが一度咳払いし注目を集める。

ファン
「僕は別に構いませんが・・・・。」

ファンが何か物凄く言いたげな顔をしている。
・・・・何だろうか・・・・。

ファン
「と、とりあえずです。部屋はどうしましょうか?」
キュピル
「そうだなぁ・・・。・・・流石に俺の部屋は色々とまずいよな・・・。ジェスターはケチだから拒否するだろう」
ジェスター
「じぃー・・・・」
キュピル
「うお!!ジェスター!!」

ジェスターが扉の隙間から覗いていた。

ジェスター
「ケチじゃないもーん!!!」

ぴょーんと怒りながら飛んできた。

キュー
「あ、ジェスターだ。全然見た目変わってない・・・」
ジェスター
「私は100年立っても若いよ!」

それは定かではないが・・・。

キュピル
「何時からそこに?」
ジェスター
「キュピルがその子と一緒に部屋に入った時からー」
キュピル
「最初からじゃないか」

キュー
「ところでジェスター意外にも一杯覗かれてるんだけど」

よくみると輝月やヘル。テルミットにディバンと何気に覗かれている。

キュピル
「こr・・」
キュー
「これは酷い」
キュピル
「台詞先に盗られた・・・」」
キュー
「何時も言ってるからなー。にひひ」

口を横に広げてと笑うキュー。

キュピル
「とにかくキューの事で色々と話さないといけない。全員クエストショップに集まってくれ。」

そう言うと、わらわらとクエストショップに全員移動し始めた。





ルイ
「話って一体なんでしょうか・・・」
ジェスター
「面白い事になってるよ!」
ルイ
「面白い事ですか?」

琶月
「ふぁ〜あー・・・。せっかく良い気持ちで昼寝してたのにー」
輝月
「お主後でぶっ飛ばす」
琶月
「ぎゃっ!!すいません、師匠!!つい私語に!!」
キュー
「表の顔と裏の顔がハッキリしてる人って正直近寄りがたいでござるな」
琶月
「何?この生意気そうな子・・・。シッシっ!!」

琶月が手で追い払う。

キュピル
「減給」

琶月
「何で!?」

輝月
「お主・・・今完全に墓穴掘ったな・・・」
琶月
「え?え?何で?何で!?」
キュピル
「これから説明するから悔い改めよ」

ルイ
「キュピルさん。この子は誰ですか?」
キュピル
「まぁ、今から説明する」

全員集まった事を確認する。

キュピル
「今日クエストショップに新しいメンバーが入った。キュー、自己紹介だ」
キュー
「アタシの名前は『キュー』!!まぁー色々とよろしく頼むな!あ、そうそう。
コイツはアタシのお父さんだぜ!DNAも一致してるぜ!」

キューがキュピルの背中をビシッと叩く

キュピル
「父親に向かって『コイツ』言うな」








・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



琶月
「あああああああ!!!!
だから私減額されたんだあああああああ!!!!」


輝月
「ふっ、口は災いの元と言ってじゃな?」
ルイ
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょっとまってください!!!!」
ジェスター
「ルイ噛み過ぎー」
ルイ
「だ、だ、だ、だ、誰が母親何ですか!!!!!!」
キュピル
「あ・・・・」
ファン
「(さっき僕が言いたかった事をズバリと言ってくれましたね。)」

キューが少し悩んで言う。

キュー
「んー、何か知らないけどアタシ会ったことないんだよなー。生まれてこの方シングルファザーだぜ!!」
ディバン
「自信もって言うとはこのチビ、中々強いな」
キュピル
「そこは同意する」
琶月
「ちょっとまって私より今酷い事言ったと思うんだけど何で減給されないの、なんで」

キュー
「ヒント:年齢」
琶月
「あぁ・・・って、何でアンタが!!」
キュー
「あ、お父さん。この人にアンタって言われちゃった。減給すべきじゃないの?」
琶月
「もう嫌だ!!!」

ルイがキューに近づいて目をじっと見る。

キュー
「ん?」
ルイ
「お母さんの名前も知らないのですか?」
キュー
「おう、お母さんの名前なら知ってるぞ」
ルイ
「な、名前は!?」
キュー
「えーっとなー?確か・・・」

全員黙って耳を傾ける。

キュー
「ジェスター!!」

・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・。

ルイ
「キュピルさん!!!!」
キュピル
「ぐおっ!!」

ルイが激怒し思いっきりキュピルを殴る。
それに続いてヘルや輝月にディバンが倒れたキュピルを踏みつける。

キュー
「っていうのは冗談だぜ!!」

・・・・・。

・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


琶月
「減給です!今キュピルさんを叩いた人は減給にすべきです!!!」
輝月
「こやつ、師匠を裏切るとは良い度胸しておるな?」


が、次の瞬間。ディバンがキューの頭に拳骨した。

琶月
「あーー!!減給!!減給減給!!!ディバンを即刻減給にすべき!!」

キュピル
「うるさい、琶月。減給」


琶月
「もう嫌」



キュー
「いってー!何するんだい!」
ディバン
「お譲ちゃん。今のはブラックジョークだ。」
キュー
「んー?そうかー?」
ディバン
「お前の嘘でお父さんが殴られた。意味分かるか?」
キュー
「・・・・お父さん、ごめん・・」
キュピル
「い、いや。別に俺は平気だ。むしろディバンが父親に見えた
琶月
「結局母親って誰なんだろう・・」
キュー
「本当の事言うとアタシは知らない。お父さん、誰なの?」
キュピル
「今の俺に言っても分かるわけないじゃないか」

ジェスター
「桃から生まれた!!」
キュー
「あ、それいいなー!」
キュピル
「いいのか・・・」
輝月
「お主、戦いはどのくらい出来るのだ?」
キュー
「戦ってみる?」
輝月
「ほぉ、望む所じゃ」

キュピル
「いやいやいやいやいや、やめてくれ!!!」


キュピルが慌てて間に入る。

キュピル
「大人気もなく望む所だとか言わないでくれ」

キュー
「お父さん邪魔。」
キュピル
「俺は今大ダメージ受けた。」

ヘル
「俺の目利きだとそこ等の奴と比べればかなり腕は立ちそうだな」
キュー
「にひひ、悪いけどここに居る誰にも負ける気はしないぜ」
ヘル
「む、言ってくれるな・・・こいつ」

琶月が物凄く言いたげな顔をしている。恐らく減給だろう。

テルミット
「何の武器を使うんですか?」
キュー
「刀だぜ」
輝月
「ほぉ、刀か?お主も刀の良さが分かるようじゃな?」
キュー
「刀は刀でも幽霊刀だけどなー」

幽霊刀を知っている者は一瞬驚いた表情を見せた。

輝月
「キュピル、キューに貸せ」
キュピル
「これは酷い命令口調」


と、言いつつも一旦自宅の部屋に戻り幽霊刀を持ちだしてきた。

キュピル
「キュー。今のは本当か?冗談じゃないよな?」
キュー
「アタシは嘘をつかないぜ」
キュピル
「・・・まぁ、嘘か本当かは抜刀すればわかるか。素質が無ければこの刀は抜刀できないし。」

キューに幽霊刀を渡す。・・・普通に受け取った。
そして幽霊刀を抜刀した。
幽霊刀を抜刀した瞬間物凄いオーラーを発しながら目の色が深い青色へと変わって行く。
あまりの強烈なオーラーとプレッシャーに全員一歩後ろに後ずさりする。

キュー
「にひひ、さぁ誰かアタシと勝負するかい?」
ディバン
「・・・こいつは驚いたな」
ジェスター
「・・・・・・」
ファン
「・・・出来れば誰か戦って頂けませんか?彼女の力量を一度確かめておきたいです。
一度力量を知れば適切な指示を与えられるので。」
ヘル
「よし、なら俺が!!」
輝月
「お主では役不足だ」
ルイ
「あの、役不足って褒め言葉なんですが」

輝月
「何じゃと!?」
ヘル
「へっ、ありがとよ」
キュピル
「(何だかんだで、あの二人いいコンビしてるよな・・・・。)」
テルミット
「うーん、確かにキューさんから強いオーラーを感じますが・・・でも容姿のせいで
見た目の威圧感が・・・」
キュー
「でも強いぞー」
ヘル
「俺が!!」
輝月
「私だ!!」

キュピルが前に出る。

キュピル
「・・・先に俺が戦う」

全員黙る。

キュー
「お父さんとはもう戦い慣れちゃってるよ。」
キュピル
「お父さんの勝率は?」
キュー
「1割」

全員顔を見合わせた。

キュピル
「なら良い勝負だ」
キュー
「アタシはそうは思えないんだけどなー?」
ルイ
「・・・念のため聞きたいのですが・・・。その勝率は幽霊刀を使っている場合ですか?」
キュー
「もちろん!」
ルイ
「では使わなかった場合は?」
キュー
「お父さん全勝。何で?」
ルイ
「ほっ・・・」

ルイが胸をなでおろす。・・・ルイだけじゃなく他の人も何人か撫でおろしている。
10回戦って9回キュピルが負けてしまうということは必然的にヘルも琶月も勝率がグッと低いと言う事になる。
が、それはあくまでも幽霊刀の力を借りている場合なのでそれを聞いて少し安心する一同。

キュピル
「よし、道場に移動しよう。」
ファン
「準備しておきます」
ジェスター
「準備ー!」

ジェスターがクエストショップから飛び出て行った。
ファンもその後を追う。めんどくさがり屋なジェスターだがその先に面白い事があると分かると
面倒だとは思わないらしい。

残りの者はゆっくり道場に移動し始めた



==思った事を呟く道場



キュピル
「何でここに来るたびに打ち消し線引かれるんだ」

ファン
「準備は出来ていますよ」

観戦者は全員端に移動する。

キュー
「お父さん、いつも通り手加減しないからね!!」
キュピル
「俺にとって今回が初めてなのに」

キュー
「ん?そういえばそうだねぇ・・・。じゃ、手加減する?」
キュピル
「いや、いらない。悪いけどこっちも手加減なしでいくぞ。その代り見事俺が勝って見せよう」
キュー
「アタシにとって利点が何一つないんだけど・・・。でもそれでこそお父さん!」

キューが幽霊刀を抜刀する。再び強烈なプレッシャーを放つ。
キュピルもいつもの愛剣を抜刀する。

キュピル
「・・・・一つだけ・・すごい不安な事がある」
キュー
「何?」
キュピル
「・・・全力でやりあったらお互い無事じゃすまないよな・・・。どっかで歯止めかけないと・・・。
出来れば木刀とか竹刀とかその辺にしたいがキューの実力を最大限まで引き出すならその幽霊刀じゃないと
ダメだもんな・・・うーむ」
ファン
「危険だと判断しましたら僕がすぐに止めるのでご安心ください」
キュピル
「頼む」

キュピルが愛剣を抜刀する。

キュピル
「さぁ、俺の娘らしいキューよ!俺を倒してみろ!」
キュー
「昔のお父さんはこんなにも熱血だったんだなー」
キュピル
「今でも十分クールGAIだと思っていたのに・・・。」

そう言いながら二人ともジワジワと間合いを詰めて行く。
・・・・キューから放たれるプレッシャーが凄まじい。近づくだけで体全体がピリピリとする。

ルイ
「この戦い・・・凄く異質です」
ファン
「若干小柄なキュピルさんですが今回の場合体型は完全にキュピルさんのが上です。
・・・ですがキューさんから発しているこのプレッシャーのせいでキューさんの方が圧倒的に
体型が上に感じます」
ヘル
「・・・俺の師匠の戦いっぷり。しっかり見届けるぜ!」
輝月
「琶月。見物じゃぞ?」
琶月
「はい・・・」
ジェスター
「じぃー・・・」

キュピル
「・・・・・・・・」
キュー
「・・・・・・・・」

二人の剣先が一瞬だけぶつかった。
その瞬間キューが物凄い勢いでキュピルの剣を弾き突進してきた!

キュピル
「ぐっ!?」
キュー
「ていやっ!!!」

キュピルの剣が吹き飛びファンの目の前に突き刺さった。

ファン
「ヒエエェェェェッッ」

ジェスター
「・・・前にも飛んで来なかった?」

残像を出しながらキューが物凄いラッシュを仕掛けてくる!
このまま防衛戦を張った所で負けを見るのは確実。そう考えたキュピルは機転を利かせて
キューにタックルを仕掛ける。

キュー
「甘い!」
キュピル
「!?」

キューがキュピルの肩を自らの体で受け止め跳ね返した!

ヘル
「強い!」
ジェスター
「戦ってるキューの姿がキュピルに見えてきた・・・」
ルイ
「・・・確かに、小さなキュピルさんが戦っているような感じがします」
ディバン
「そこはやはり親子みたいだな」

キュピルをはじき返したキューが幽霊刀を構え突進してきた!

キュー
「一閃!」

キューが通った道に青い残像が現れる。
瞬きした瞬間には向こう側に飛んでいた。

キュピル
「うぐあぁっ!」

キュピルが思いっきりその場で転倒する。

キュー
「よっしゃー!アタシの勝ちだー!」
ルイ
「・・・え・・。今のでキュピルさん負けちゃったのですか・・・?」
キュー
「お父さん私の一閃喰らうともう立ち上がれないからな〜?」
ヘル
「・・・・」

ヘルが何のリアクションも示さないがある事に気が付いているらしい。
テルミットもそれに気付きヘルの視線の先を追う。

キュピル
「キュー。甘い」
キュー
「・・・!!」

キュピルが思いっきりキューの首根っこを掴み全力で床に叩きつける。

キュー
「痛いっ!あれ!?どうしてお父さんまだ動けるの!?」
キュピル
「根性論。喰らえっ!!!」

キュピルが余った左腕でキューの顔面を思いっきり殴りつけようとする。
・・・しかし直撃する瞬間拳がピタッと止まった。

ヘル
「・・・・?」
琶月
「どうしたんでしょうか?」

キュー
「・・・・?」
キュピル
「・・・・・・・・・」

拳が震えてる。

・・・・・。

キューの首を掴むのを止め解放する。

キュピル
「・・・・殴れない・・・。何故か知らないが殴ろうとした瞬間急に・・・。急に・・・。」
ディバン
「子を殴れないか。お前いつか親ばかになるな。」
キュピル
「うるさい」


キュー
「・・・お父さん・・・。・・・お父さん・・そうやって・・・またあのチャンスを逃しちゃうの・・・・?」

キュピル
「え?今何か言ったか?」
キュー
「・・・あ、悪い悪い!今のお父さんは知らない事だから何でもないぜ!」
キュピル
「・・・・・・・?」

よく聞き取れなかった。

キュー
「なー、お父さん。さっきみたいに私をあそこまで追い込んだのは久々だったぜー?
もう一回勝負してくれよー」
輝月
「ならば私が相手しよう」
キュー
「やだ」

輝月

「・・・・・」
キュピル
「ま、まぁ・・・そう言わないであげて。さり気に輝月は俺より強いぞ?」
輝月
「そうじゃ。私はキュピルより強いぞ?」
ヘル
「(嘘だ。)」
琶月
「(そういえばこの前師匠勝ちましたもんね)」
ファン
「・・・・・」

ジェスター
「ファン、今心読んだ?」
キュー
「よーし!とりあえずその長いロングヘアーを斬る!」
輝月
「ぬ、ぬぅっ!!それは勘弁願いたいものだな」

自分の髪を掴みながら後ろに下がる輝月。今の一言で戦意喪失してしまったようだ。

ヘル
「お前別に髪斬られたっていいだろ。軽量化できるぞ
輝月
「先祖代々、髪の長さは階級の高さを表している!斬られては琶月同等に落ちる!」
琶月
「今さり気なく酷い事言われた気がします」

キュピル
「その髪ってそういう意味があったんか・・・」



結局その後キューは誰とも戦わなかった。




キュピル
「とりあえずジェスターの部屋を使わせてもらうといいよ」
ジェスター
「えー!クエストショップの部屋まだ空いてるんだからそっち使えばいいじゃん!」
キュピル
「あんまり目を離したくない・・・」
ジェスター
「親馬鹿!馬鹿馬鹿!ただの馬鹿!」
キュピル
「これは酷い」

キュー
「んー、アタシは別にどこでも構わないけど寒い所は嫌だぜ」
キュピル
「今の季節どこの部屋も寒い。」
キュー
「ま、ジェスターが子供みたいに嫌々言ってるからアタシはそのクエストショップとやらの部屋を
使わせてもらうぜ」
ジェスター
「わ〜い」
キュピル
「わーいって・・・」

・・・まぁ、別にいいか・・・。本人もそう言っている訳だし・・。

キュピル
「・・・そうだ、キュー」
キュー
「何?」
キュピル
「部屋の整理が終わったら一回俺の部屋に来てくれないか?」
キュー
「何で?」
キュピル
「未来について少し色々知りたい。」
キュー
「未来は自分で作る物ってお父さん言ってたぜ。聞いていいのかー?」
キュピル
「時と場合による。」
キュー
「時と場合じゃしょうがないなー」

まるで自分と話しているかのような錯覚に陥る。

キュピル
「ジェスター。キューの荷物運び手伝ってあげて」
ジェスター
「えー」
キュピル
「お小遣いあげるから」
ジェスター
「やるやるー!!」
キュー
「金の亡者、ジェスター」
ジェスター
「あー、そんな事いったらやらないよー?」
キュー
「やらなかったらお父さんからお小遣いは貰えないぜ。にひひ」
ジェスター
「・・・いじわる!!」
キュピル
「・・・テルミット、ヘル、ディバン。一応手伝ってやっておくれ・・」
ヘル
「了解」
テルミット
「わかりました」
ディバン
「・・・輝月と琶月の奴。上手い具合にこの場にいないな・・・」


そういうとキュピルは自室に戻って行った。




・・・そして数十分後



キュー
「おー、中々いい部屋が出来たな〜!ちょっと狭いのが気になるけど」

5畳ぐらいの狭い部屋だがキューの年齢なら普通の大人と比べて広く感じるはずだ。
その時ルイが部屋に入って来た。

ルイ
「良い部屋になりましたね」
キュー
「どうだー!」
ジェスター
「私のセンスが良い!」
キュー
「そうかー?」
ルイ
「・・・キューさん」
キュー
「何だ?」
ルイ
「・・・本当にお母さんの事知らないんですか?」
ジェスター
「・・・じぃー・・・」
ルイ
「そ、そういうつもりで聞いているわけじゃ・・・」

今のジェスターの視線で全て分かったようだ。
勿論ヘルとテルミットはちんぷんかんぷん。ディバンは少し把握しているらしい。

キュー
「本当に知らないぜ。」
ルイ
「本当に?」
キュー
「しつこい女は嫌われるぞ」
ルイ
「うっ・・・」
ディバン
「ハハハッ!こいつはいい!ルイ、嫌われるだとよ」
ルイ
「わ、わかりました・・・うぅぅ・・」

ルイが肩を落としながら引き下がって行った。

キュー
「あ、そういえばお父さんに呼ばれてるんだった。ちょっくら行ってくるぜ」

そういうとキューは部屋から出て行った。

ジェスター
「凄い男勝りな喋り方してるよねー」
ヘル
「どうみても父親の影響だな」
テルミット
「子は親を見て育つと言いますけど・・・う〜ん・・・」

テルミットは何か引っかかっているらしい。
勿論単純に今の状況にまだ馴染めていないだけである。



キュー
「よー、来たぜ!」
キュピル
「ノックぐらいせい」
キュー
「おー?何かやましい事でもしてるのかー?」
キュピル
「・・・本当に八歳か?」
キュー
「子を疑うとは父親失格だな」
キュピル
「なんという奴。これは間違いなくジェスターを上回る厄介者」
キュー
「にひひ」

厄介者と言われて逆に嬉しがっている・・・。

キュー
「で?アタシに何か聞きたい事でもあるのかー?」
キュピル
「山ほど。まぁ、お茶でも飲みながらゆっくり話そう。」



・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。







適当に雑談しながら知りたい事を聞いて行こうとする。しかし。

ジェスター
「じぃー」
ルイ
「見物・・・!」
ファン
「(気になりますね)」

キュピル
「・・・・・・・・」

こっちが気になってしょうがない。
気になるのはある意味仕方がない。

キュピル
「・・・もう午後六時半か」
キュー
「腹減ったぜ」
キュピル
「んじゃ、今日はキューの迎え祝いとして何処か食べに行くか」
ジェスター
「わ〜い!!」

ジェスターが真っ先に部屋に飛び込んでくる。

ルイ
「(料理の支度するの忘れてました。助かりました・・・)」
キュー
「寿司が食べたいなー」
ジェスター
「お寿司〜!」
キュピル
「肉がいい・・・」

キュー
「ルーイー!お寿司食べに行こうぜ!」
ジェスター
「食べに行こう〜よ〜!」

キューとジェスターがルイに甘える。

ルイ
「え!あ!は、はい!」

キュピル
「これはもうダメかもしれんね」


・・・結局寿司を出前で頼む事になった。


キュー
「これは食べに行ったと言うのか?」

キュピル

「最後の抵抗」

キュー
「やられたぜ」
ファン
「(意味がわかりません・・・)」












==??年後の世界



「神に忘れられ、全ての者がその世界を忘れた時。その世界は無に帰る・・・」

「永遠というものは存在しない。いつかは忘れられ世界は無に帰ってしまう」

・・・。

・・・・・・・・・・・・・。


「それは神と戦うと言っているようなものだ」


・・・・・。



「この世界は・・何処へゆくというのだろうな?」


・・・・。

・・・・・・・・・・・・・。



「過去の出来事がどんどん小さなものに見えて行くな」

「・・・・今度の敵は目に見えない。原因も追求できない。
・・・・・残された選択肢は限られている」



・・・・・






「今を楽しむ。それでも十分な選択肢じゃないのか?」



「お前らしい」



・・・・


・・・・・・




「いや、だけどまて。解決策・・・あるじゃないか・・・」



・・・・・



「一体どうやって?」




「もうじきこの世界は消えてなくなる。・・・そして新しい世界が生まれる」





「世界が消える要因を過去のうちに取り除くしかなかった」



・・・・・。


「だから過去に戻って要因を取り除く」











「・・・・・・・誰が行く?」






「・・・・・・・・・ルイが残した最後の希望の光。・・・・キューを送ろう。」



「・・・キューを送る・・・?そんな事をすればこの世界は・・・」


「一瞬で消えるだろう。居なくなった瞬間にこの世界は消えてなくなる」





「だけど・・・・過去は変わる。過去が変われば未来は変わる」






「キュー。・・・・新しい世界でまた会おうな」






続く



第六話

キュピルの娘らしいキューが未来(?)からやってきた。

ルイ
「結局母親は誰なんですか!!!」
ファン
「ルイさん、落ちついてください・・・」




キュピル
「・・・はい、こちらジェスターのクエストショップのオーナー。きゅp・・・って、ギーンか。どうした。
・・・おう。・・・えっ!?」

キュピルの驚きの声に全員振り向く。

キュピル
「それでどうなってる?・・・・。・・・・ふむ・・・わかった。すぐに派遣する。ただ俺はちょっと動けないから
いつものメンバー送る。頑張ってくれ。そいじゃ」

キュピルが受話器を置く。

キュピル
「トラバチェスの周辺に魔物達が砦を作りあげトラバチェスを頻繁に攻撃しているようだ。
原因は分かっていないが・・・とにかくトラバチェスへ続く関門を守りとおして砦を破壊しなければならない。」
ヘル
「・・・あの黒い渦があった場所か?」
キュピル
「そうだな・・・。流石にあの事件とは何ら関係ないと思うが・・・とにかくチームを編成して
トラバチェスに派遣する。メンバーは・・・そうだな・・・。手始めにヘル、テルミット、輝月、琶月を送る。
もし厳しいと感じたらすぐに言ってくれ。その時はルイとファンとディバンを送る。それでも厳しかったら
残った俺達もすぐに行く」
テルミット
「分かりました。さっそく支度して行ってきます!」
ヘル
「久々に乱戦になるな。腕が鳴る」
輝月
「琶月よ。久々にお主の特訓の成果を見させてもらおうか?」
琶月
「は、はいぃっ!」

四人共自室に戻り支度し始めた。

キュー
「んー?何があったんだー?」
キュピル
「依頼。未来の父親は何をして稼いでるのか知らないが今はこうやって他人の依頼を引き受けて
お金を貰っている。通称クエストショップだな。」
キュー
「早い話便利屋って事か?」
キュピル
「・・・まぁ、そうだな」
キュー
「で、アタシの根本的な質問に答えてないぜ。何があったんだ?」
キュピル
「とある旧知に国の王が居てな。ちょっとモンスターに攻められてるから援軍要請が来た。」
キュー
「ほぉー」
キュピル
「ま、強い仲間を送ったからな。高い確率で何とかしてくれるはずだよ。一人あんまり強くない人居るけど」



琶月
「・・・・・・・・」

輝月
「ん?どうした?」



その時また電話が鳴った。

キュピル
「今度は誰だ。」

再び受話器を手にし会話を始める。

・・・・・また誰かからの依頼のようだ。

キュピル
「・・・・分かりました。一週間後までに指定した素材を集めれば良いのですね?
了解しました。失礼します」

受話器を置く。

キュピル
「うーむ。素材集めの依頼がかぶったか。まぁ、そんなに難しくないからルイとディバンとファンに任せるか」
キュー
「お父さんは行かないのか?ニートになっちまうぜ」
キュピル
「ニート違う!少なくとも管理能力をもった人一人はここに残らないといけない。
そして素材集めで必要になってくるのは難易度に応じた戦闘メンバー数人と知識を持った人一人。
そこそこの難易度だと判断したからディバンとルイ、そしてファンを派遣した訳だ。
ジェスターはちょっと力不足なので外した。するとこの三人しか残らなくなる。
ファンを外して俺が行ってもいいが・・・ジェスターを抑える事は出来ないだろうし・・・。」
キュー
「良くわかんない。」
キュピル
「まぁ、八歳じゃしょうがない」

とりあえず後で三人を呼んで素材集めに行かせよう。

・・・・その時正面玄関から誰かが入って来た。

商人
「ちょっといいか?」
キュピル
「はい」
商人
「ここ周辺に謎の建物が出来たっという話しがあるんだが・・・調査してきてくれないか?
謎の建物周辺には俺達商人が使うルートがあってな・・・。こういった不安要素は全部取り除きたいんだ」
キュピル
「分かりました。・・・しかし今こちらの都合でメンバーが・・」
商人
「五日以内に調査結果を報告してくれ。報酬は100Kでどうだ」
キュピル
「うっ・・・」

100Kはかなり高額だ。
・・・しかしメンバーが足りない。が、ここで先延ばしにすれば他に頼む口だろう。
・・・・・どうするか。

キュー
「はいはーい。やるぜー!お父さんなら速攻で終わらせちゃうぜ!」
商人
「頼もしい父親だ。よろしく頼むよ。契約書は置いておくから」
キュピル
「ちょ、ちょtt・・・」

キュピルが言う前に商人は出て行った。

キュピル
「・・・・・・・」
キュー
「いやー?100Kあったら何が買えるんだろうなー?楽しみだぜ!」


キュピル
「勝手に承諾しないでくれ!!」

キューがビクッと震える。

キュー
「な、何でだぜ?美味しい話しじゃなかったのかよー?」
キュピル
「確かに美味しい話しではあった!しかし出来もしない依頼を出来ると言って
結局出来なかった時の信用の失墜度は計り知れないものだぞ!
できなさそうならどんなに美味しい話でも出来ないと素直に言う!じゃなきゃ仕事は務まらない!」

真面目にキュピルが怒る。
すると暫く平静を装っていたキューだが次第にぐずりはじめ

キュー
「わ、悪かったよぉ・・。謝るから・・お、怒らないでくれよぉ・・・」
キュピル
「うっ・・・」

ジェスターの時のように勢い余って怒りすぎた。
間の悪い時にヘル達が廊下から出てきた。

ヘル
「・・・娘泣かせたな」
輝月
「廊下にも聞こえる怒鳴り声じゃったな?次から琶月を叱るときはキュピルに頼もう」
琶月
「キュピルさんなら師匠より優しそうです」
輝月
「・・・・斬るぞ」
琶月
「じょ、冗談です!!(冗談じゃないけど!」
テルミット
「え、えーっと。とりあえずトラバチェスへ行って参ります。後はよろしく頼みますね」
キュピル
「お、おう。頼んだ」

横で泣く娘を慰めながら四人を見送る。

キュー
「うわぁーん!!」
キュピル
「良い事ない!」

考えてみたらキューはまだ八歳な訳だ。
・・・常識的に考えて分かる訳ないよな・・・。

しばらくして・・・・



ジェスター
「泣き止んだー?」
キュピル
「泣きつかれて寝てしまった。思ったよりメンタル強くないのかもしれないな」

そう言って自分の部屋に続く扉を見る。
今はキュピルのベッドで寝ている。

ジェスター
「どんな事が起きても私は動揺しないもん!」
キュピル
「ジェスターの場合もうちょっと・・・」
ジェスター
「何?」
キュピル
「何でもない」

クエストショップに続く扉からルイとファンが出てきた。

ルイ
「キュピルさん。私とファンさんとディバンさんでチームを編成しておきました。
なるべく早く済ませてきます」
ファン
「早く終わればキューさんが引き受けてしまった依頼を手伝うことも出来るでしょう」
キュピル
「迷惑かけてすまない。それじゃ頼んだ」
ルイ
「はい!」

そういうと二人は自室へ戻って行った。支度だろう。
恐らくディバンも支度しているはずだ。

キュピル
「・・・さて、とりあえずどうするか考えておくか」
ジェスター
「何を考えるのー?」
キュピル
「キューが引き受けてしまった謎の建物調査。とりあえず周辺の状況だけでも確認しておこう」

そういうとキュピルは大きな地図を机の上に広げた。

キュピル
「商人の言っていたポイントはここだ」

そういうとキュピルはペナインの森の近くを指した。

キュピル
「・・・・普通にドッペルゲンガーの領域に入っているな。」
ジェスター
「えー。じゃぁドッペルゲンガーの仕業ってことでいいじゃん!」
キュピル
「・・・でもそう言う訳にも行かないな・・・。ドッペルゲンガーはあくまでもその領域内に入らない事には
偽物も何も現れない。ましてや建物が現れるとかそんな話は聞いた事が・・・。
・・・何にせよ調査は必要なのは確かだ・・・・」
ジェスター
「キュピルは行くのー?」
キュピル
「・・・出来る事なら自分で行ってこの依頼を片付けたい。
・・・しかし今はデスクワークをこなさないといけない・・・。ちゃんと期限守らないとクエストショップ没収されちまう」
ジェスター
「怖いね・・」
キュピル
「お役所は怖い、全く。さて、何とかしておくか・・・・」





==三時間後


紙に何かひたすら書くキュピル。
既にルイ達は出発し家に残っているのはキュピルとジェスターとキューだけになった。


キュピル
「よし、大体こんなものか」

基本的なプランは出来あがった。
これらの事を調査すれば良いだろう。・・・一日だけ何とかなればいけるか・・?
その時キュピルの部屋からキューが出てきた。

キュー
「・・・お父さんまだ怒ってる?」
キュピル
「いや、怒ってない。むしろ悪かった。常識的に考えてまだ分かる年齢じゃないよな」
キュー
「んー、確かに良くわかんないけどアタシにも出来る事はあったぜ!」
キュピル
「ん?」
キュー
「アタシとジェスターで謎の建物を調査するぜ!」
ジェスター
「えー!何で私も!?
キュピル
「・・・大丈夫か?」

一応キューの実力は知っているので幽霊刀さえ持たせればそんなに怖くはないだろうけど・・・。

キュー
「にひひ、まぁアタシはお父さんより強いからね。アタシが負けたらお父さんでもダメってことだぜ」
キュピル
「(本当かー・・・?)」

キュピルが疑いの眼差しを向ける。
・・・確かに強かったが・・・はて・・・。

ジェスター
「単純に未来のキュピルは弱かったんじゃないのー?」
キュー
「おーっと、お父さんは強いぜ。アタシよりは強くないけど」
ジェスター
「幽霊刀に頼ってるからだよね?」
キュー
「まぁーそうだなー?」
ジェスター
「インチキ!」
キュー
「あー!言ったなー!」

そういうと二人は堂々と目の前で喧嘩し始めた。

キュピル
「やめい!とにかくキューに幽霊刀貸してやるから建物調査しに行ってくれ。
まだ時間は昼の二時だから十分間に合うだろう。」

そういうと二人のポケットにウィングを二枚持たせる。

キュピル
「七時になったらちゃんとウィング使って戻るんだぞ」
ジェスター
「報酬は〜?」
キュピル
「・・・機械のネジ」
ジェスター
「えー!お金がいい!」
キュピル
「これは酷い・・」・
キュー
「じゃぁーアタシはさっきの事帳消しにして欲しいぜ。」
キュピル
「さっきの事?」
キュー
「勝手に承諾しちまったこと!まぁー、悪かったって思ってるからなぁー。」
キュピル
「・・・思ったより可愛い事言うな」
ジェスター
「あ!ロリコン!」
キュピル
「・・・がああああ!!」
ジェスター
「わあああー!」


久々にジェスターを追いかけまわす。
両手を横に広げて逃げ回るジェスター。昔はよくこうやって追いかけまわしたものだ。
本人は楽しんじゃっている。

キュー
「娘が可愛く見えない父親は父親じゃないぜ」
ジェスター
「見た目も顔も私の方が可愛いもん!」
キュー
「おーおー、言うねー?ただのジェスターの癖に」
ジェスター
「あー。ただのジェスターって言ったね?私は特別なジェスターだもん!」
キュピル
「まぁ、こんなにペラペラ生意気な事言うジェスターはそうそう居ないな」

ジェスター
「・・・わああああ!!」
キュピル
「ぎえぇー!」


気がつけばキュピルが追いかけまわされることに。
後ろでキューはニヤニヤ笑っていた。

そして数分後。二人ともしっかり準備し出発した。

キュピル
「・・・まぁ大船に乗ったつもりで自分の仕事をやるか」










==森の小道


キュー
「マジックテレポートサービス使えば一瞬でドッペルゲンガーの入り口まで行けたのに何で徒歩?」
ジェスター
「交通費ねこばば!」
キュー
「悪い奴だぜ」

キューが嬉しそうな表情しながら答える。

キュー
「もちろんアタシにも半分くれるんだよな?」
ジェスター
「・・・四分の一!」
キュー
「おーおー、ずるいなー。」
ジェスター
「えー。・・・しょうがないなー。私は優しいから半分!」
キュー
「よく言うぜ」

そういって2000Seed渡すジェスター。

ジェスター
「・・・じぃー」
キュー
「ん?何だよ?」
ジェスター
「何でそんなに髪の毛ボサボサなの?手入れとかしないの?」

輝月程ではないが背中まで伸びている髪。
しかしかなり癖毛が激しく長い事手入れしていないように見える。

キュー
「生まれつきだぜ。何度櫛通しても風呂入っても癖毛が直らないんだ。
ま、個性があると思えばそれはそれでいいけどな!」
ジェスター
「・・・ちょっと生意気!」
キュー
「にひひ。それより早く行かないと日が暮れちまうぜ?」
ジェスター
「私は早く移動できるからいいもーん」

そういうとジェスターは両手を横に広げ髪も羽のように上下に動かして風に乗り空を飛び始めた。結構早い。

キュー
「おー、便利だなー。ならアタシも早く行くかー」

そういって幽霊刀を抜刀し身体能力を強化させ常人とは思えない速度で走り始めた。




==ペナインの森3



ルイ
「そこですっ!」

ルイが銃口の長いスナイパー銃を発射する。
命中し飛んでいたクリスタルウィングを打ち落とした。

ディバン
「やるな。あの逃げ足の速いクリスタルウィングを発見される前に仕留めるとは」

ルイが狙撃銃の台座事持ちあげて答える。

ルイ
「射撃の腕は抜群ですよ!」
ファン
「確かに凄いのですが・・・・」

ファンがバラバラに砕けたクリスタルウィングの破片を拾う。

ファン
「これ砕けているので使い物になりませんね」

ルイ
「・・・・・・」
ディバン
「・・・ここまで砕けてるとダメだな。」
ルイ
「・・・・・・うぅぅ・・・・」

その時青いオーラを身にまとった小柄な人物が駿足で横を通り抜けて行った。

ルイ
「わっ!」
ディバン
「未知のモンスターか?」
ファン
「だとしたら危険ですね。キュピルさんに報告した方がよいかと」
ルイ
「・・・あれ。これ幽霊刀の間隔?・・・・キューさん?」
ファン
「・・・・・・・・」
ディバン
「・・・・・・・ん、必要な素材がここにあるぞ」

そういうとディバンが活力草を採集し始めた。
全く気にしていないらしい。

ルイ
「・・・・はぁ・・・」







==ドッペルゲンガーの森


ジェスター
「いっちばーん!」
キュー
「いーやー?同着だぜ!」

キューが滑りながら減速する。
止まると幽霊刀を納刀する。

ジェスター
「あー!ずるい!」
キュー
「飛べるから別にいいだろー?・・・ふぅー。」

キューが服で額の汗を拭く。

キュー
「やっぱりお父さんみたいに幽霊刀を上手く扱えないぜ。」
ジェスター
「えー?そうかな・・・」
キュー
「結構疲れる・・・」
ジェスター
「ふーん・・・・」
キュー
「お、お得意のふーんっか。興味無さそうだなー?」
ジェスター
「あ!あれじゃない?キュピルの言っていた謎の建物って!」
キュー
「また無視か。どれどれ?」

キューが小さな鞄から双眼鏡を取り出す。
・・・結構大きい屋敷がある。

キュー
「おー、でかいなー!今日からあの家に住まないか?家賃無料だぜ?」
ジェスター
「でも今にも壊れそうじゃん!きっと雨漏りするよ?」
キュー
「そいつは困るなー」

そう言いながら二人とも歩いて建物に向かう。
・・・15分ほど歩くと屋敷の敷地内が見えてきた。

キュー
「本当にでかいなー!これ随分と前からある建物なんじゃないのかー?」
ジェスター
「えー。でも私最後にここ来た時はこんなデカイ建物なかったよ?
それにここドッペルゲンガーがいるから襲撃されるじゃん!ここ絶対家として機能しないよ?」
キュー
「ドッペルゲンガーが住んでるかもしれないな!」
ジェスター
「あ、その考え方はなかった・・・。・・・住んでるかも」
キュー
「仮に居たらばっさりアタシが斬り捨ててやるぜ」
ジェスター
「今だけ頼もしい!」
キュー
「今だけじゃなくてずっと頼もしいぜ。にひひ」

キューが口を大きく横に広げて怪しげに笑う。

ジェスター
「それ癖なの?可愛くない」
キュー
「わ、悪かったなぁー!でもちゃんとオシャレ用の服があるんだぜ。
今はお父さんに言われてこんな子供用の簡単な防具身につけてるけどな」

そういって肘や膝についている鉄の防具を見せる。胴体にも一応内側に鉄が一枚入っているが
軽装の部類に入るだろう。キュピルの判断曰くキューは重装タイプではないらしい。

ジェスター
「どんな服?」
キュー
「冬場はセーターとマフラーとスカート!」
ジェスター
「暖かさを取ってるのかファッション取ってるのか分かんない・・・。
というよりそれってオシャレなの?」
キュー
「んー、自分で選んだ奴じゃないけどなー」
ジェスター
「・・・・・・・」

雑談しながら二人とも前に進んで行く。





==古ぼけた屋敷・正面玄関


キュー
「・・・・・」
ジェスター
「・・・・・」

外から見てもかなり大きかったが実際に近づくともっと大きく感じられた。
正面玄関の木製の扉はボロボロで穴が空いている。
ドアノブは錆ついており回せそうにない。

ジェスター
「・・・どうやって入る?」
キュー
「穴が空いてるからここ潜って入ろうぜ。」
ジェスター
「じゃー先入って」
キュー
「・・・しょ、しょうがないなー?」

苦し紛れに答えながら穴に近づく。
そして刺に気をつけながら空いた穴を潜り中に入る。

ジェスター
「大丈夫ー?」
キュー
「おー、大丈夫だぜー。それより明りが無いからカンテラが欲しいぜ」
ジェスター
「今持ってくー」

ジェスターも穴の中に入る。



==古ぼけた屋敷・入口


キュー
「火つけるぜ」
ジェスター
「うん」

キューがカンテラに火を灯す。
気持ちちょっと明るくなったがそんなに先までは見通せない。

キュー
「んー、どこを調べればいいんだ?」
ジェスター
「キュピルが調べてほしい事紙に書いてあったよー」

ジェスターがポケットの中から紙を一枚取り出し広げた。


『目的地に辿りついたら以下の事について調べて欲しい。

・建物の室内全て(入れそうもなかったら入らなくても大丈夫
・建物周辺
・人の気配

もし誰かに襲われたら正当防衛だから戦っても問題・・が、
危ないと感じたらすぐにウィングで戻ってくれ。』

キュー
「よーし、適当に歩きまわればいいんだなー?」
ジェスター
「先頭お願い」
キュー
「お、なんだー?怖いのかー?」
ジェスター
「ちょ、ちょっと怖い・・・」

素直である。

キュー
「ま、まぁー?アタシがいれば大丈夫!」

と、キューも強がるがやはり大人が一緒に居ないので何処か心細いらしい。
とにかく屋敷内を歩き回ることにした。



==通路


ジェスター
「長い通路だね」
キュー
「内装はかなりボロイなー。本当にここに建物はなかったのかー?
こりゃ築百年は絶対越えてるぜ」
ジェスター
「うーん・・・流石にそこまでは行ってないと思うけど・・・でも本当に一年ちょっと前まではなかったよ!」
キュー
「んー・・・。とりあえずこういう事を紙に書いたほうがいいんじゃないのかー?」
ジェスター
「あ、そうだね。」

ジェスターが用紙を取り出しボロボロの机の上で文字を書き始めた。
そのまま書き続けていると突然机が砕けてしまった!

ジェスター
「ぎゃっ!」
キュー
「おーっと・・。ボロボロだったからなー。重さに耐えられなくなったのか?」
ジェスター
「私は重くないもん!!」
キュー
「ほんとかー?」

その時、おぞましい殺気を感じた。

キュー
「っ・・・!」
ジェスター
「!!」

二人ともその異様な殺気に気付き振り返る。
・・・さっき通った扉から殺気を感じる・・・。何かいる・・?
途端に二人とも恐ろしくなり我を忘れて逃げるようにして通路を走る。

L字型の通路を進みつきあたりの扉を開けて入る。
ちょっと広いホールに出た。


==古ぼけた屋敷・ホール


ジェスター
「い、今の何?」
キュー
「・・・さ、流石に今のは怖かったぜ」
ジェスター
「・・・ん?」

ホールには四つの扉があるがそのうちの一つの扉は半開きになっていた。

ジェスター
「・・・・・」
キュー
「ん?どうしたんだ?」

半開きだったドアがゆっくりと閉じられた。
・・・常識的に考えて今のはおかしい。

ジェスター
「今あの扉が閉まった!さっきまで半開きだったのに!」
キュー
「怖い事言うなよ。」

その時さっきの通路からまた異様な殺気を感じた。
・・・何かが来ている!

二人とも急いで正面の扉を開けて先に進んだ。



==古ぼけた館・通路2


何かが来ている。
二人ともそう感じ急いで進んで行く。

キュー
「こっちだ!」

キューが通路の途中にあった扉を開けて中に入る。
中に入るとそこは客室だった。

ジェスター
「えー!行き止まりじゃん!」
キュー
「隠れる!」

ジェスターも渋々客室に入る。




==古ぼけた館・客室


客室は埃だらけだった。その中に大きいクローゼットがあったのでその中に隠れることにした。
二人とも狭いクローゼットの中で密着して座る。

キュー
「・・・・・・」
ジェスター
「・・・・・・」


・・・・・。

・・・・・・・・・・・。

殺気をまた感じた。近づいてきている。

・・・・・。

・・・・・・。

キュー
「・・・・・・」
ジェスター
「・・・・・・」


ガチャ


キュー
「(客室の中に入って来た・・・!)」
ジェスター
「(しぃっー!)」


・・・・。


ドン


・・・・・。



ドン



・・・・・。

・・・・・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



鳴り止んだ。




・・・・・・。





突然目の前から鋼のような棒が突き刺さってきた!!!


ジェスター
「わああああああああああああああ!!!!!」
キュー
「わああああああああああああああ!!!!!」




二人とも大声を上げながらクローゼットから飛び出した。
さっきの棒は頭上に現れ二人とも縮こまっていたのが幸いした。

クローゼットの外に飛び出して敵を確認する。しかし誰もいない。

ジェスター
「あれ・・・?」
キュー
「殺気は感じる!」

キューが幽霊刀を抜刀する。抜刀した瞬間周りに無数の亡霊が可視化された。
それはジェスターにも見えたらしくあまりの恐怖に二人とも叫び客室から飛び出して行った。



==古ぼけた館・通路2

ジェスター
「ウィングで戻ろうよ!キュピル居ないと絶対死んじゃう!」
キュー
「さ、流石にアタシもこれは怖くてやってられないぜ!」

二人ともウィングを取り出し使用する。・・・が、何故か発動しない。

キュー
「な、何でだ?何で動かないんだよー!」

ぶんぶん振り回すが発動しない。
するとさっきの客室の扉が勢いよく開かれ亡霊が沢山飛び出て来た!

ジェスター
「わああああああああああ!!!」



ジェスターが思いっきり叫ぶ。
キューが幽霊刀で亡霊を斬り捨てるが斬った感触が全くなく平然と動いている。
するとまた目の前に鋼鉄の棒が現れキューの心臓を思いっきり突き刺してきた!

キュー
「うっ!・・・危なかった!」

服の中に隠していた防具のお陰でダメージはなかった。

キュー
「ジェスター!こいつ等攻撃しても全然ダメージない!逃げるよ!」

キューが亡霊のいない方向へ突き進む。
ジェスターもキューの後を追う。

そして突き当りの扉を幽霊刀で真っ二つにし館の奥へと進んで行く。
頭の中が真っ白になり目の前に階段があったので階段を二段飛ばしで登って行く。
ジェスターは直接飛んで上の階へと移動した。

キュー
「あ・・・光!」

初めてカンテラ以外の光が視界に入った。
どうやらテラスのようだ。

キュー
「ジェスター!外だぜ!出れる!!」
ジェスター
「た、助かった?」

亡霊の移動速度は遅いらしくまだ階段の所まで来ていない。二人とも窓ガラスへと近づく。
そして開けようとするが鍵が錆ついていて開かない。

ジェスター
「壊す!」

ジェスターが鉄の棍棒を振り上げ窓ガラスを思いっきり叩く。
が、割れるどころか傷一つ、つかなかった。

ジェスター
「え・・・・」
キュー
「な、なんで割れないんだ?」

キューも幽霊刀で思いっきり窓ガラスを叩き割ろうとした。
が、割る事は出来ずむしろ弾き返されてしまった。
その時真後ろからおぞましい断末魔と共に亡霊が接近してきた!

キュー
「い、入口だ!入口に戻って逃げようぜ!」
ジェスター
「でも道が分かんない!それに亡霊が・・・!」
キュー
「う、うぅー!ちくしょうー!こっちだ!」

キューが亡霊の居ない方向へと走って行く。ジェスターもその後を追う。
十字路の分かれ道が現れたが後方だけでなく前方と右方からも亡霊が現れた。
残った左方にしか逃げ道はなく必然的にそっちへと逃げる事に。

この時既に亡霊の策略にはまっていたが二人ともその事に気がつかない。
キュピルならばこのあからさまな動きに気付いただろう。

更に進んで行くとT字路についた。
が、後方と左方から亡霊が現れたため右方へと逃げる。
息も絶え絶えに走り続けると目の前に扉が現れた。
逃げ道はここしかないためキューが幽霊刀で真っ二つに扉を斬り、逃げる。



==古ぼけた屋敷・広い部屋


広い部屋に出た。何故ここだけ広いのかよくわからないが今はそんな事を考えている場合じゃない。
しかし重要な事に気がついた。

行き止まりだ。

ジェスター
「い、行き止まりだよ!!どうするの!?」
キュー
「ウィングはやっぱり使えないのか・・・!?」

二人ともウィングを取り出し使用するが全く反応しない。

ジェスター
「ダメ!使えない!」
キュー
「くっ・・・。ど、どうすれば・・・お父さんなら・・こんな時どうする・・・?」


その時声が直接頭に響いて来た。







『ここの亡霊の一員になるがいい・・・』






目の前に数え切れないほどの亡霊が現れた。
ジワジワりと接近されとうとう背が壁についてしまった。

キュー
「く、くそー!!」

キューが幽霊刀の力を最大限まで引き出し青いオーラを身にまとう。
そして全力で亡霊を切り捨てるが全く効果がない。

キュー
「な、何でだ・・!?何で効かないんだ・・・!?い、今までこの刀で斬った敵は・・全部・・一撃で・・・。・・・!!」

先の尖った鋼鉄の棒がキューの肩に突き刺さる。
そしてそのまま壁に刺さり抜けなくなってしまった。

キュー
「うっ!!あ、あああああ!!
だ、誰か・・・・・た、助けて・・・・・」
ジェスター
「わ、わああああああああああ!!!」

ジェスターがパニック状態に陥り部屋の隅に縮こまる。

キュー
「こ、ここで死んだら・・・死んだら・・・!!!
未来が・・・未来が終わっちゃう・・・!!過去に送りこまれた意味が無くなっちゃう・・・!!!!





しかしそこで二人の意識は途切れてしまった。




















==キュピルの家



ルイ
「ただいま戻りました!」
ファン
「必要なアイテムは大体三分の一ほど集まりました。間に会いそうです」
キュピル
「・・・・・」
ルイ
「あれ?何でそんな重装備してるんですか?」
キュピル
「・・・すまん。ちょっと出かけてくる」
ルイ
「え?あ、いってらっしゃい・・?」

キュピルが本気装備で固めている。
鋼鉄の鎧で全身を包み背中には分厚い盾を背負っている。
盾には窪みがありその窪みにはバズーカが装填されている。バズーカを取り出せばその窪みに
誰かを入れて守る事が出来る。

キュピル
「浅はかだった・・・。完全に俺の責任だ」
ファン
「何の事ですか?」
キュピル
「キューとジェスターが帰って来ない。ウィングを持たせていたが来ない所を見ると
何か異常事態にあったとしか思えない。行ってくる!!」

そういうとキュピルは家を飛び出した。

ルイとファンも顔を見合わせ

ルイ
「・・すぐに準備しましょう!」
ファン
「分かりました。ディバンさんに伝えてきます」






古ぼけた屋敷が異様な空気に包まれていた。



続く



第七話


キューとジェスターが調査しに行ったきり帰って来ない。
責任を感じつつもキュピルが装備を固めて行く事に。



==ドッペルゲンガーの森


キュピル
「・・・あれか?」

大きな屋敷が見える。
・・・あれほどの大きな屋敷・・・建設するとしたら少なくとも数年はかかる・・・。
その間一度もドッペルゲンガーの襲撃に合わなかったと言う事は少ないだろうしなによりも
こんな所に建設すること自体がおかしい。

何があっても良いように武器と盾を構えながら前進する。


==古ぼけた屋敷・正面玄関


キュピル
「ここか。・・・かなりボロボロだな・・・」

ドアノブは壊れており人の気配は全くしない。
ドアを押すが鍵がかかっている。・・・右下に小さな穴が空いているが流石に入れそうもない。
ここまでボロボロだと良心的な人は絶対に住んでいないだろう。
ドアを思いっきり蹴り破り中に侵入する。



==古ぼけた屋敷・入口


キュピル
「さて・・・キューとジェスター達はどこに向かったか・・・」

カンテラはキューとジェスターに貸し出しているため今は手持ちにない。
荷物から松明を取り出し火をつける。カンテラより周囲を明るく照らす。

キュピル
「・・・・ん」

長年使われていないのか床は埃に塗れている。
が、その上を誰かが通ったのか二つの足跡が残っていた。
・・・キューとジェスターで間違いなさそうだ。

左方のドアに続いている。・・・ドアが半開きになっている所を見ると合っていそうだ。

キュピル
「向こうか」

その時後ろから声が聞こえた。

ルイ
「キュピルさーん!待ってください!」
ファン
「お気持ちは分りますがお一人では危険ですよ」
ディバン
「自分の娘が消えて焦っているのは分る。が、そんな時こそ冷静に考える時じゃないのか?」
キュピル
「何か相当動揺しているように見られてる。もうだめだ」

ディバン
「ドッペルゲンガーに出来る屋敷の事を『幻城』と言うのだが知らないのか?」
キュピル
「・・・幻城?ファン、知ってたか?」
ファン
「・・・いえ、初めて知りました」
ディバン
「数年に一度だけドッペルゲンガーの領域に建物が現れる事がある。
俺達トレジャーハンターはその建物の事を『幻城』と呼んでいる。
何故突然現れては消えたりするのかは分からない。だがこう言う所に俺の探している金銀財宝があるのは確かだ」
ルイ
「き、金銀財宝!」
ディバン
「キューとジェスターを探すついでに俺は噂の金銀財宝を探すことにする。この屋敷は明日にでも消えるだろう」
キュピル
「・・・明日?」
ディバン
「そうだ。常にそこにあるわけではない。跡形もなく建物は消える。まるで夢でも見ていたかのようにな。」
キュピル
「・・・とにかく夜が明ける前にキューとジェスターを見つけ出そう。」

そういうとキュピルが先頭に立ち左方の扉を開けて通路に入った。
その後をルイとファンとディバンが追う。



==古ぼけた屋敷・通路


キュピル
「ん」

目の前に砕けた机がある。
・・・割れた所が異様に綺麗だ。っということはついさっき壊れたばっかりということだ。
間違いなくキューとジェスターはここを通った。

ディバン
「恐ろしい場所だな。いかにも亡霊が出てきそうだ」
ルイ
「幽霊!」
ファン
「ディバンさん。ルイさんの前ではその言葉は言わないでください」

ルイ
「確かにこんな所だったら絶対幽霊に会えてもおかしくないですね!!」
キュピル
「お、落ちつけ。」

その時異様な殺気を感じた。それは全員気付いたらしく殺気を感じた方へ振りむく。
・・・さっきの入り口の所だ・・・。

ルイ
「さ、さっき居た場所から殺気が・・・」
ファン
「ギャグですか?」
ルイ
「ち、違います!」
キュピル
「迎撃態勢に入ろう。俺とルイが前に出るからファンとディバンは後方で援護してくれ。この殺気・・。相当の強者だ」
ファン
「分かりました」
ディバン
「俺は全く戦闘出来ないが出来る限りの事はしてやる」

その時目の前の扉が勝手に開いた。
・・・・誰もいない。だが殺気がより強く感じられる。

キュピル
「・・・・・・・」
ルイ
「・・・・・・・」
ファン
「・・・・・・・」
ディバン
「・・・・・・・」


全員今かと待ちかまえる。

ルイ
「あ、そうだ」

ルイが胸元からクリスタルのついたペンダントを取り出す。

ルイ
「幽霊だったら目に見えない訳ですからこれ使わないと!」
キュピル
「おいおい・・・本気でここで幽霊が居る訳が・・・」

ルイがどこで買ったのか知らないが謎のペンダントの力を発揮させ見えない敵を可視化させる。
その瞬間目の前におぞましい数の亡霊が居ることが分かり全員びっくりして後ろに下がる。

キュピル
「ま、まじで亡霊がいる!!」
ルイ
「幽霊!!記念写真!!」

ルイが謎のカメラを取り出し激写する。

ルイ
「満足です・・。」

うっとりした表情で満足げな笑みを浮かべる。
勿論他の人達はそんな状況じゃない。

キュピル
「喰らえ!」

愛剣を抜刀し果敢に斬りこむ。が、透けてしまい全く手ごたえがなかった。

キュピル
「くそ、やっぱり相手が亡霊じゃ効果はないか!どうすればいい!」
ファン
「魔法で攻撃しましょう。魔法は亡霊にも効果があります」
キュピル
「初耳」


ファンがメガバーストを唱え亡霊にぶつける。効果があったらしくおぞましい断末魔を上げながら
亡霊が後ろに下がって行った。だが、まだまだ沢山残っている。

ルイ
「いいですね、いいですね!!」

一人完全に場違いな事をするルイ。さっきからずっとカメラを使って激写している。

ディバン
「空気読め、馬鹿野郎。」
ルイ
「いたっ!な、何も叩かなくても!」
ディバン
「お前の思い人を見てみろ。戦っているぞ」
ルイ
「はっ・・・・。・・・って、何で知ってるんくぁwせdrftgyふじこlp;
ディバン
「(分かりやすい奴だな・・)」


キュピル
「魔法しか効果がないならどうすればいい?」
ファン
「キュピルさんの武器にエンチャントを付与させます。ライトニングブレイド!」

ファンがエンチャント魔法を唱えキュピルの武器に雷を宿らせる。

ファン
「これで斬りかかってください!」
キュピル
「よし、百倍返しだ!!」
ファン
「まだ一撃も喰らってないのでそれだと0倍になります」


重装備で固めているためキュピルの突進速度は遅く簡単に避けられてしまった。
が、すぐに身をひるがえして体重の乗った重たい一撃をお見舞いする。
剣が亡霊に触れその直後に雷が落下したかのような衝撃が走り亡霊が弾き飛んだ。

キュピル
「よし!!」
ディバン
「おい、喜んでる最中悪いんだがまだまだ亡霊がいるぞ」

前方から数え切れないほどの亡霊がいる。
これは全て相手していると先に夜が明けてしまう。

キュピル
「確かにこれは部が悪い・・・。幽霊刀があれば・・・・。
・・・・ん・・・ちょっと待てよ・・・。キューは幽霊刀をもってしても何かあったのか・・?」
ディバン
「考えている場合じゃないぞ。ここは俺がどうにかしてやるからとっとと先に行け」

ディバンがキュピルの肩を二回叩く。後退しろとの合図である。
キュピルはその言葉を信じ後ろに撤退する。

キュピル
「ディバンが何とかしてくれるらしい。向こうへ逃げよう」
ファン
「分かりました」
ルイ
「ああ、名残惜しいです」


ディバンが足元に地雷のようなものを設置する。

ディバン
「トレジャーハンターは亡霊にも良く出会う。墓荒らしもするからな」

そして亡霊が一斉にディバンに襲いかかった!
が、足元に設置された地雷が爆発し強烈な閃光と共に亡霊が次々と消えて行った。
暫くの間この地雷は残り続けるようだ。
ディバンもキュピル達の後を追う。






==古ぼけた屋敷・ホール


キュピル
「扉が四つに別れているな・・・。」

そのうちの真正面にある扉は半開きになっていた。恐らくキューとジェスターはこの扉を通ったのだろう。

キュピル
「・・・・ん?」

よくみると左方の扉も半開きになっている。
・・・・?さっきまで閉まっていたような気もするが・・・。

ルイ
「キュピルさん。どっちに行くのですか?」
キュピル
「真正面。ディバンに分かるように印はつけておく」

そういうと壁に傷をつけ先に進む。




==古ぼけた屋敷・通路2


キュピル
「・・・・・・」
ルイ
「・・・・・・!」

また殺気を感じた。今度は前方からだ。

ファン
「まだエンチャントの効果は付与されていますから見つけたらその剣で戦っても問題ありません」
キュピル
「・・・ドンドン近くに来ている。だけどまだ見えないぞ」
ルイ
「あ、忘れてました。これ一々使わないとダメなんです」

そういうとルイが再び胸元から謎のペンダントを取り出し掲げる。
するとすぐ目の前まで亡霊が迫っていた!

キュピル
「うおっ!びっくりした!」

キュピルが脊髄反射で目の前の亡霊を叩き斬った!
強い衝撃が走り亡霊が退散した。だが相変わらず数が多い。

キュピル
「全部まとめて斬り倒してやる!」

キュピルが前に出た瞬間、ディバンが後ろからやってきた。

ディバン
「おい、前にも亡霊がいるのか」
ファン
「どうかしましたか?」

ファンが魔法を詠唱しながら答える。常人には出来ない技だ。

ディバン
「後ろから変わった亡霊が接近してきているぞ」

ファンとルイが後ろに振り向く。キュピルは目の前の亡霊と戦うのに必死のようだ。


ルイ
「・・・・?あれは・・?」
ファン
「・・・!!デ、デビルジュネラルです!」
キュピル
「え!?」

目の前の亡霊を斬り捨て後ろに振り返る。
両腕を前に突き出し捻りつぶそうとしている!
ディバンが閃光玉を投げつけるがキャッチされ捻りつぶされてしまった。

ディバン
「高い物投げるんじゃなかったな」
キュピル
「あいつは小回りが劣悪だが正面から戦うと恐ろしい程強い。こんな狭い通路で戦ったら
確実に捻りつぶされる!逃げるぞ!」
ファン
「に、逃げるって・・前方には亡霊がいますよ!」
キュピル
「幽霊刀がなくたって俺は戦える!根性!!」

持てる力を最大まで引き出し高速で亡霊をなぎ倒していく。
が、戦い方は剣術というよりは乱闘に近い。

すると亡霊がキュピルを一斉に囲み目の前に鋼の棒を突き出し一斉に突き刺してきた!
が、キュピルの装備している重防具を貫通する事は出来ず全て跳ね返されてしまった。

ディバン
「強いな」
ファン
「キュピルさん!デビルジュネラルがすぐ後ろまで接近しています!」
ルイ
「スロー!」

ルイが風魔法を唱え少しでもデビルジュネラルの足を遅くする。

キュピル
「こうなったら・・・奥の手だ!ちょっと皆来てくれ!」

三人ともキュピルの後ろに立つ。

キュピル
「バズーカ装備!全員この盾の窪みの中に入ってくれ!」
ディバン
「おい、一人しか入れないぞ」
キュピル
「言いかえる。俺と盾の間に入ってくれ」

キュピルがデビルジュネラルの方向に盾を構える。
そして三人とも盾とキュピルの間に入る。窪みにはディバンが入った。

キュピル
「自爆!」
ルイ
「え、ええええ!!!!」

足元に向けてバズーカを発射し爆発を引き起こす。
強烈な爆風に巻き込まれ信じられない程後ろに吹き飛んだ。そのままボロボロの扉を突き破り
上り階段を少し登った所で止まった。

ルイ
「い、痛い・・・!きゅ、キュピルさん・・・相変わらず無茶な事しますね・・・。」
ディバン
「肩が痛いぞ」
ファン
「ワイドヒール!」

ファンが範囲魔法を唱え全員の痛みを緩和させる。
一応走れる程度までは回復したようだ。

キュピル
「どちらにせよ亡霊を突き抜けてここまで脱出できたんだ。早く逃げよう。
ルイ
「逃げるってどこに!?」
ディバン
「階段登るしかないようだな」

階段下から沢山の亡霊が現れた。逃げ道は階段を上る他にない。

キュピル
「行こう」
ルイ
「は、はい。・・・・ん?」

階段を上るとルイが真っ先に外の光に気がついた。

ルイ
「あ、見てください!ここから外に出れそうですよ!」
キュピル
「確かに外出ればデビルジュネラルとは戦いやすくなるかもしれないが・・・。
先にキューとジェスターを探しだす事の方が先決だ。それに道が一本通路じゃないか。
挟み打ちされるときつい」
ルイ
「あ、そっか・・・」

そういうとキュピルはテラスとは反対側の方向へ突き進み始めた。
松明がなければ何も見えない暗い通路を進んで行く。

しばらく突き進んで行くと十字路の道が現れた。
すると突然後方からデビルジュネラルがワープしてきた!

キュピル
「げっ!こいつワープできるのか!」
ディバン
「おい。右方左方からも亡霊が現れたぞ。ここにも罠を設置しておいてやる。早く先行け」
キュピル
「・・・いや、ちょっとまて。前方には何も現れていない・・・。
そしてこのタイミングで挟み打ちをかけてくるって・・・。
・・・これは罠なんじゃないのか?」
ディバン
「何にしてもここには罠仕掛けるぞ」

ディバンが目にもとまらぬ速さで足元に地雷を仕掛ける。まさに職人芸。
たったの五秒で設置を完了させる。

ディバン
「目の前を通れば爆発する。それでどうする?」
キュピル
「・・・・」

キュピルが三秒間考える。そして

キュピル
「・・・もしこれが意図的に向こうが仕組んだ罠だとすれば・・・。
間違いなくキューもジェスターもこの罠に引っ掛かっただろう。あえてこの罠に乗っかるとしよう。
亡霊の居ない前方に進もう」

キュピルが再び盾を剣を構え直し前方に突撃し始めた。
三人もキュピルの後を追う。
しばらくすると後方から地雷が爆発した音が聞こえた。
恐らく亡霊には効果がないだろうがデビルジュネラルには効果があったはずだ。
どこまでダメージを与えられたかは定かではないが少しでもダメージが入っている事を祈る。


==古ぼけた屋敷・広い部屋


キュピル
「む、行き止まりか!」

案の定罠だったようだ。
・・・それにしても広い。
長い卓にシャンデリア・・・。貴族の食事場と言ったところか。
・・・しかしもしここが食卓だとすると普通キッチンと繋がっていなければおかしい。
仮に繋がって居なかったとしても近くにキッチンがあるはずなのだが・・・。

何故こんな長い通路を歩かせた場所に食卓がある?何で行き止まりだ?

一瞬の間に様々な事を考える。

ファン
「キュピルさん、どうしますか?」
キュピル
「ファン。緊急テレポートは発動できそうか?」
ファン
「試してみます」

ファンが魔法を詠唱する。・・・ところが

ファン
「・・・・!キュピルさん。移動系統の魔法が詠唱できません!
これは時空座標がゆがめられている証拠です!」
キュピル
「・・・すまん。魔法に詳しくないから良くわからない・・・」
ファン
「簡単に言いますと簡易異次元と考えても良いです」
キュピル
「異次元?・・・なるほど」

キュピルが歩いて奥の壁を調べる。

・・・血の痕がある。その痕を指で触れなぞってみる。
・・・全く固まっていない。ということは相当新しい痕だ・・・。

キュピル
「・・・」


『ここの亡霊の一員になるがいい・・・・』


キュピル
「っ・・!」
ルイ
「!」
ファン
「来ました!」
ディバン
「多いな」

全員後ろを振り返る。
デビルジュネラルだけでなく無数の亡霊がゾロゾロと現れた。

キュピル
「ファン!まだこの武器にエンチャント効果は付与されているか?」
ファン
「まだ続いていますがあと少しで効果が切れそうです。効果が切れたらまた付与します!」
キュピル
「了解。手始めにこいつを喰らえ!」

キュピルが盾からバズーカを取り出しデビルジュネラルに向けて砲撃する。
鉄鋼弾がデビルジュネラルに突き刺さり爆発する!
が、微動だにしていない。

キュピル
「この様子じゃさっきの地雷は全くダメージ入って居なさそうだな・・・」
ディバン
「よくみろ。鎧にヒビが入っているぞ。攻撃し続ければ割れるかもしれないぞ」
キュピル
「なるほど。よし、亡霊は俺が全部相手する!ルイとファンはデビルジュネラルを頼む!
ディバンは何とか二人に守ってもらってくれ」
ディバン
「すまないな」
キュピル
「ファン!盾にもエンチャント魔法を付与してくれ!」
ファン
「分かりました」

ファンが魔法を唱えキュピルの盾にもエンチャント効果を付与する。
盾から電撃が走る。
付与された事を確認するとキュピルは亡霊の方へ突撃していった。

ルイ
「改造を施したSVD(スナイパー)の出番ですね!」

ルイが鞄から四つの部品を取り出し高速で組み立て始めた。
とはいえど組み上がるのに数分はかかりそうだ。

ルイ
「ウィングクリスタルをも一撃で砕くこのスナイパーで・・・でもちょっと組み上がるまで待ってください」
ディバン
「おい、俺が組み立ててやる。それまで別の銃器で戦ったらどうだ」
ルイ
「お願いします!」

ディバンがスナイパーを組み立て始める。こういう知識はある程度あるらしい。

ファン
「強力な範囲魔法を詠唱します」

ファンが詠唱体勢に入る。
しばらくは身動きできなさそうだ。




キュピル
「せいやっ!」

重たい盾を前に突き出し亡霊にぶつける。ぶつけるたびに強烈な衝撃が走り亡霊が消えていく。

キュピル
「どおりゃぁっ!!」

剣と盾で思いっきり床を叩く。
床にヒビが入りそれと同時に周囲3mに電撃が走った。
その電撃が次々と亡霊を巻き込み退散させていく。

キュピル
「悪霊退散!」


が、まだまだ亡霊はいる。

キュピル
「喰らえ!」

剣で亡霊を攻撃する。が、普通に通りぬけてしまった。

キュピル
「・・・!しまった、今の範囲攻撃で剣からエンチャント効果がなくなったか!」

まだ盾には残っているようだ。
すぐさま盾で追撃し撃退していく。

キュピル
「ファン!剣にエンチャント魔法を付与してくれ!」
ディバン
「ファンは今強力な範囲魔法を唱えているらしい。中断できないぞ」
キュピル
「ちょっと辛いな!」

一々重たい攻撃で亡霊を退散させていく。
盾で攻撃する度に疲労が蓄積していく。

ルイ
「キュピルさん!デビルジュネラルがすぐ傍まで迫っています!」
キュピル
「え?」

あんな巨体なのに真後ろまで接近している事に全く気付かなかった。
腐っても亡霊らしく完全に気配を押し殺していた。

キュピル
「こんな近くに!」

デビルジュネラルが馬鹿でかい巨剣を振り落としてきた!
慌てて盾で防ぐが衝撃を防ぐ事は出来ずそのまま押しつぶされてしまう。

キュピル
「ぐっ!」
ルイ
「ディバンさん!スナイパーの組み立てまだですか!?」
ディバン
「あと10秒待て!」
ルイ
「この銃で壊せるかどうか・・・!」

ルイがデザートイーグル(ハンドガン)を取り出し巨剣に向けてひたすら打ち続ける。
しかし金属音がなるだけでビクともしない。
デビルジュネラルが巨剣を振り上げる。もう一度落とす気のようだ!
キュピルはさっきの一撃で大きなダメージを負ったらしく動けないでいるらしい。

ルイ
「ディバンさん!!」
ディバン
「ほらよ!」

ディバンが最後に装弾させルイにスナイパーを投げつける。台座までは組み立てる余裕はなかったようだ。
すぐにルイがそれを受け取り狙いすら定めずデビルジュネラルの巨剣に向けて発射した!
凄まじい轟音と共に一発の弾が飛んで行きデビルジュネラルの巨剣に命中する。


ガギン!!


耳の痛くなるような金属音が鳴り響く。
だが壊れていない。

ルイ
「連射!!」

本来スナイパーは連射する武器ではない。一発一発の反動が大きいため狙いが定まりにくい。
それだけでなく肩にかかる負担も大きい。
しかしそんなことは無視してひたすら連射する。

だが途中から全く命中しなくなり、そして肩に激痛が走った。

ルイ
「くっ・・・!」

これ以上発砲できない。ここまでか、そう思った瞬間突然スナイパーが消えた。

ルイ
「え?」
ディバン
「銃って引き金引きゃいいんだろ?」

ディバンが真横に立っていた。そして適当に狙いをつけ発射した!


ガン!!


鈍い音が響き渡った。巨剣にヒビが入った!
だがついに巨剣が振り落とされキュピルの盾に命中する。
が、今の衝撃に耐えられなかったのかデビルジュネラルの巨剣が粉々に砕け散った!

キュピル
「あぶね・・・砕け散ってくれなかったら間違いなく即死物だったな・・・」
ファン
「メテオ!!」

ファンの強力な範囲魔法の詠唱が完了した。
天井からメテオを呼びだし次々と隕石を落下させていく!
亡霊を一網打尽にやっつけデビルジュネラルにもダメージを与える。

ファン
「キュピルさん!大丈夫ですか!」
キュピル
「体が痛む・・・が、大丈夫だ」

重々しい動きでその場から離脱する。
その場に残った敵はデビルジュネラルだけになった!

ルイ
「台座を組み立てないと・・・素の状態で持って射撃するのはこれ以上厳しいです・・!」
ディバン
「組み立ててやる」

その時、デビルジュネラルが両腕を前に突き出した。

キュピル
「今度は何だ?」


デビルジュネラル
『・・・ツイニミツケタ。・・・キョウジャヲ・・・』



ルイ
「で、デビルジュネラルが喋りました!!」
ディバン
「こいつは貴重だな・・・」
キュピル
「静かに」


デビルジュネラル
『・・・ヤカタノ ノロイ・・。オマエナラ トケル・・・』



キュピル
「・・・呪い?この館は呪いがかけられているのか?」


デビルジュネラルの両手から青色の光が集まり始めた。
そして大きな球体となりしばらくすると破裂し当たりの景色が変わった。






==???


キュピル
「何だ?何が起きたんだ?」
ディバン
「おい、人がいるぞ。・・・数十人はいるな。」

ディバンがスーツを着た男性の肩を叩こうとする。が、透けてしまった。

ディバン
「・・・亡霊なのか?」
ファン
「・・・よくみれば先程の部屋と全く同じ光景ですね。」
ルイ
「だけど部屋が綺麗・・それに電気もついている・・・。」
キュピル
「・・・ボロボロどころか新築みたいだな。」

その時一斉に部屋の中に居た人たちが拍手し始めた。これから一体何が始まると言うのだろうか。
一つしかない大きな扉が開かれた。何かが入って来たらしくより一層拍手が強くなる。

キュピル
「一体何が来た?」
ファン
「前に行きましょう」

キュピル達が前に前進する。人とぶつかることはなくそのまま通りぬけてしまった。
そして入って来た物を見る

キュピル
「・・・人?」

滑車の上に人が倒れている。使用人らしき人物がその滑車を押し、そして卓上の上に乗せた。
卓上に乗せられた人は貴族とは言い難い服装をしておりその辺の人間を連れてきたという感じだ。

ルイ
「一体これから何が・・・」

その時一人の男が卓上に乗せられた人間に近づき噛みついた!

キュピル
「!」

そのまま肉を食いちぎり血をすすり始めた。

ディバン
「こいつ等・・・ヴァンパイアか!」
ルイ
「ヴァンパイア・・・・」

流石のルイもこの光景を前にしてカッコイイとは言えないようだ。
しばらくするとまわりに居た人たちも一斉に噛みつき血を吸い始めた。

・・・そして卓上に乗せられていた人は見るも無残な姿になり、再び滑車の上に載せられた。
そのまま暖炉の前まで運ばれ暖炉の中に捨てられた。



そこで再び景色が変わった。




・・・。


キュピル
「ん?」
ディバン
「景色が変わったと思ったが同じ部屋のようだな。強いていえば少し内装が変わったぐらいか」
ファン
「何年か経過した感じがしますね」

相変わらず周りに沢山の人・・いや、ヴァンパイアがいる。
そして再び大勢の人が拍手し扉が開いた。
まだ誰かが運ばれてきたようだ。

ルイ
「・・・こ、子供じゃないですか!それもまだほんの5,6歳ぐらいの・・」
ディバン
「年齢は関係ないようだな」

そして卓上に乗せられいつも通り一人の男が近づき噛みついた。

・・・だがしばらくするとさっきと違う出来事が起きた。

突然噛みついた男が苦しみ出し人とは思えない叫びと共に嘔吐する。

ディバン
「何だ?毒でも盛られていたのか?」
キュピル
「・・・そうとは思えないが・・・一体・・・」

そして男は破裂し得体のしれない何かに変化した。
・・・デビルジュネラルだ。まだ小さい。
そして噛みつかれた小さな男の子がほくそ笑んだ。


『・・・まんまと引っ掛かったね?悪魔であるこの僕の血を吸ったからにはもうここの一族も終わりだね?』


そして小さなデビルジュネラルが負のオーラを出しながらドンドン巨大化していく。

・・・そして景色が変わった・・・。





==古ぼけた屋敷・広い部屋


キュピル
「・・・・はっ」

・・・さっきの部屋に戻ってきたようだ。
何故か全員寝ていた。

キュピル
「・・・夢のようで夢じゃないみたいだ」
ルイ
「・・・あ・・・」

他の人も全員起きたようだ。

ルイ
「・・・ここの亡霊って・・」
ディバン
「・・・さあな。もしかしたらここで殺された奴等かもしれないしあのデビルジュネラルに殺されたヴァンパイア共
かもしれないな。勝手に想像しよう」
ファン
「・・・そういえばデビルジュネラルがいませんね」
キュピル
「・・・探索を再開しよう。今何時だ?」
ファン
「午前二時です。あと三時間半程で夜明けです」
ディバン
「急いだ方がいいぞ」
キュピル
「よし」

全員立ちあがる。

キュピル
「さて、キューとジェスターは一体どこに居るのか・・・・」
ルイ
「キュピルさんはキューさんとジェスターさんがここの部屋に来たと思いますか?」
キュピル
「絶対に来たはずだ。
・・・ここに来てそこから何処に行ったか・・・・」

・・・真ん中近くの壁にボロボロの暖炉がある。

キュピル
「・・・・これか」
ルイ
「?」

キュピルが暖炉を覗き見る。松明を近づけさせ中を確認する。
・・・血だらけだ。

キュピル
「ふむ・・」

暖炉の中に入る。入った瞬間突然足場が抜け落ちそのまま落下した。

キュピル
「うわっ!」




==古ぼけた屋敷・地下


数十メートル程落下し続けたが穴はとにかく狭かったため突っかかりながらゆっくり落ちて行った。
大体50m程落ちると一番下に辿りついたようだ。

キュピル
「あいったたた・・・・」

その時上から声が聞こえた。ルイだ。

ルイ
「キュピルさん!!大丈夫ですか!!!」
キュピル
「大丈夫だ。何ともない。だが落ちない方がいい。まだ何があるか分からない」

大声で叫ぶ。
すると誰かが近づいて来たのが分かった。

キュピル
「むっ」

松明を前方に放り投げ剣と盾を構える。

キュー
「お、お父さん!!お父さん!!!」
キュピル
「キュー!」
ジェスター
「きゅ、キュピルが来た!助かった!!わああああああああ!!!」

二人とも泣きながらキュピルの元まで走ってくる。盾と剣を放り投げて二人の突撃を受け止める。
受け止めた際前方を確認する。

キュピル
「(・・・なるほど。あのデビルジュネラルが見せてくれた通りの状態か)」

完全に腐敗した死体がいくつも転がっておりとんでもない異臭を漂わせていた。
二人とも相当怖かったのか離れようとしない。

キュピル
「(二人とも強がってばっかりだが実際はまだまだ子供ってことか・・・)」

壁に背をつけ座り、しばらく黙って二人を受け止め続ける。
10分ほど経過してやっと二人とも落ちついたようだ。

キュピル
「怪我とかはしなかったか?大丈夫か?」
ジェスター
「うん・・。キューがヒール覚えてたから・・・」
キュピル
「魔法使えるのか!」
キュー
「下位魔法なら・・使えるぜ・・」
キュピル
「やるな。・・・さて、ここから脱出しようか。どうやってここにきた?」
ジェスター
「凄い広い部屋にいたんだけどそこで気絶して・・目覚めたらここに・・」
キュピル
「(・・・亡霊の仕業だろうか?恐らくデビルジュネラルに殺されたここのヴァンパイア達・・。
死んでもなお繰り返すか。・・・推測材料が少なすぎて何とも言えないけど・・・。)」

落ちてきた場所から一本の縄が落ちてきた。
しばらく見ているとディバンが降りてきた。

ディバン
「キューもジェスターも無事だったようだな」
キュピル
「この縄を登ればいいのか」
ディバン
「そういうことだな。さて」

ディバンが死体の山を蹴って歩く。

キュー
「の、呪われちまうぜ?」
ディバン
「ハッハッハ、可愛い事を言う。
・・・ふむ、身ぐるみ全部剥がされているな。」

片っ端から死体を掴みあげ蹴って粉々にする。
そんな事を繰り返しながら部屋の片隅まで移動するディバン。
そしてその場で屈み懐中電灯や虫眼鏡を取り出した。一体何をやっているのだろうか。

ディバン
「・・・・ここだな」

ディバンが爆弾のようなものを取り出し壁に張りつける。

ディバン
「ちょっと離れてろ」

壁から離れディバンが起爆させる。壁が吹っ飛び空洞が現れた。

キュピル
「一体何をやっているんだ?」
ディバン
「忘れたか?俺はトレジャーハンターしに来た。こういうお屋敷の死体処理場ってのはな、
一見放置してるように見せかけてしっかり金目のもんだけは盗ってってるんだよ。ほらよ」

ディバンが空洞に懐中電灯を向ける。金貨や金延べ棒が反射して鈍い光を見せる。

ジェスター
「お、お宝!!!」
キュー
「す、すげー!!大金だぜ!?」
キュピル
「こ、これは魂消たな!」
ディバン
「・・・少ないな。もう少しあると思っていたんだが。
ま、これはいい土産が出来たな。」

空洞の中に入りディバンがポケットから大きな袋を取り出し全て中に入れる。
ジェスターも近づき取ろうとしたがディバンが制止させた。

ディバン
「まぁ、待て。クエストショップに帰ったら触らせてやる。この袋には呪いを消す効果がある。
迂闊に触ると呪われるぞ?」
キュー
「ディバンはもう触ってるぜ?」
ディバン
「安心しろ。俺がいつも嵌めているこの皮の手袋にもそういう効果がある」
キュピル
「用意周到だな・・。よし、この場はディバンに全部任せて俺達は先に上に戻ろう。」

ロープは結構丈夫のようだ。

キュピル
「登れるか?」
ジェスター
「私は飛ぶ!」
キュー
「登れるぜ」
キュピル
「んじゃ俺が先に登る」

そういってキュピルが一番先に登り、次にキュー。最後にジェスターが飛んだ。




==古ぼけた屋敷・広い部屋


キュピル
「ぜぇ・・重たい鎧着けているとこういうのは大変だ・・・」
ファン
「大丈夫ですか?キュピルさん」
キュピル
「おう、大丈夫だ」

続いてキュー、ジェスターが外に出る。

ルイ
「キューさん!ジェスターさん!」
ジェスター
「あ、ルイだ!」

ジェスターがルイに飛びつく。

キュピル
「何とか二人も無事に見つけた。後はこの屋敷から脱出するだけだ。ファン、相変わらずテレポートは無理か?」
ファン
「・・・残念ながら詠唱を封じられています。自力で入口に戻るしかないかもしれません」
キュピル
「ふーむ・・・」
ファン
「ディバンさんは?」
ディバン
「待たせたな」

ディバンが大きな袋を前に放り投げ暖炉から這い出てきた。
放り投げられた衝撃で袋の中から金貨が数枚こぼれた。

ルイ
「こ、これって!」
ディバン
「お前等の大好きなお宝だ。」
ファン
「・・・ディバンさんは毎回トレジャーハンターに行くたびにこれだけの宝を見つけてきているのですか?」
ディバン
「そうだな。今回は割と多い方だが」
ジェスター
「頂戴!」
ディバン
「お前と琶月が宝探ししてた時、本当は10万Seedの価値のある金貨を隠してたんだぞ。
結局見つからなかったようだがな」
ジェスター
「えーーー!!」

その時重たい雰囲気が再び流れた。

キュピル
「・・・!」
ルイ
「この感じ・・・」

中央に幻影のようにデビルジュネラルが再び現れた。今度は両手に巨剣を持っている・・・。

デビルジュネラル
「・・・・・・・・」
キュピル
「言わなくても分かる。俺がお前を倒すか、お前が俺を倒すか。その二択以外この屋敷から出れないってことだろ。
・・・あ、やられたらここの亡霊の一員になって結局出れないか・・・」
キュー
「・・・?どういうことだ?お父さん・・」
キュピル
「今回最後の大仕事だ。行くぞ!」

キュピルが愛剣を抜刀し盾を構えて突撃した!

キュー
「あ、お父さん・・!アタシも加勢・・」
ルイ
「キューさん。大丈夫です」

ルイが後ろからキューを抑える。

キュー
「は、離せよー!アタシはお父さんより強いんだぞー!」
ルイ
「大丈夫ですよ、キューさん。・・・本気になったキュピルさんは想像以上に強いですよ」
キュー
「・・・・?」

真っ先に相手の懐に潜り込みデビルジュネラルのヒビの入った鎧を思いっきり盾で叩きつける。
激しい金属音が鳴り響き強い衝撃を与える。ヒビが広がる。

デビルジュネラルがその場で回転し巨剣を振り回す。

ルイ
「わっ!」
ディバン
「危ないな!」
ファン
「バリア!」

壁事切り刻む攻撃。バリアで何とか防ぐ。

ジェスター
「キュピルは?」
ファン
「大丈夫です。デビルジュネラルに張り付いています」


キュピル
「俺がお前の肩に乗っかっている限りそんな攻撃当たらないぞ」

盾からバズーカを取り出し片手でリロードする。

キュピル
「これでも喰らえ!」

零距離射撃でデビルジュネラルの鎧に強烈な一撃を叩きこむ。
更にヒビが広がる。
デビルジュネラルが肩に乗っかったキュピルを叩きつぶそうと巨剣を自らの肩に強打させる。
その前にキュピルは離脱し距離を置く。
今の自爆に肩にもヒビが入ったようだ。

キュピル
「弾は惜しまないに限る」

盾を放り投げバズーカを両手で構える。
そして空になった装弾を放り投げ次の弾を詰め込む。

キュピル
「ルイ!ファン!援護射撃をしてくれ!一斉にあの鎧のヒビを攻撃して破壊する!」
ルイ
「了解です!」
ファン
「分かりました!」

ルイが狙撃銃を取り出し弾をリロードする。
ファンも強烈な単発攻撃の魔法を詠唱し始める。
キューはその光景を見て戦えなくてうずうずしているようだ。

キュピル
「いまだ、全弾発射!」

キュピルが高速でバズーカを連射しルイも狙いを定めて一気に連射する。
二人の攻撃が全て命中しガラガラと音を立てて崩れていく。

ファン
「フルメガバースト!」

ファンが高圧縮させた強烈な炎の弾をデビルジュネラルの鎧にぶつける。
激しい爆発を引き起こし瞬く間に広間を火の海にした。

キュピル
「やり過ぎだ」
ファン
「すいません、火は自動鎮火します」
キュピル
「なんて便利な魔法」

ルイ
「あ・・!見てください!今の攻撃で・・」

鎧が完全に破壊されデビルジュネラルの姿が変化していく。
・・・マントが消え巨剣も風化していき、そして崩れた鎧の先から黒いエネルギーの玉が現れた。
その黒い玉はデビルジュネラル事吸収し床の上に降り立つと人の姿に変わった。

・・・スーツを着た男の姿・・・。

デビルジュネラルへと変貌する前の元の姿・・・。


キュピル
「・・・やっと成仏できるな。キュー、幽霊刀」
キュー
「・・・はい。・・・あ、だけどお父さん・・・。幽霊刀で攻撃しても亡霊には効果がなかったぜ?」
キュピル
「まだ扱いこなしていない証拠だな」
キュー
「・・・え?」

キューから幽霊刀を返してもらう。
スーツを着た男がフッと笑う。その表情には何の悔いもなさそうだ。

キュピル
「安からに成仏してくれ」

キュピルが幽霊刀から全ての力を引き出し青いオーラを発し始める。
そして前に走り始め刀を大きく振りかぶる。


キュピル
「でええぇぇいっ!!」


幽霊刀でバッサリとスーツを着た男・・いや、ヴァンパイアを斬る。


・・・・。

・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


スーツを着た男の姿
『・・・迷惑をかけたな・・。ありがとう。君達に依頼して正解だった。』





キュピル
「え・・・?」






次の瞬間。白い光が一斉に広がり全員意識を失った。










==ジェスターのクエストショップ





輝月
「・・・おい、起きろ。」
琶月
「何で皆ここで寝てるんですか・・・あんな大変な目にあったのに皆して昼寝だなんて・・酷い!
給料UP!給料UP!!」
テルミット
「キュピルさん。起きてください・・ただいまトラバチェスから帰還しました。」
ヘル
「・・・なんで五人も寝てるんだ?」


キュピル
「・・・・ん・・・・」

重たい頭を上げて起き上がる。
・・・ここは・・?

キュピル
「・・・クエストショップ?戻って来たのか?」
テルミット
「何処か行ってきたのですか?」
キュピル
「・・・まぁ、ちょっと依頼を・・。・・・キュー、ジェスター。起きろ」
ジェスター
「んんん〜〜・・・!もうちょっと寝たい!」
キュー
「ふあぁ〜・・・。・・・お、いつの間にか戻って来たのかー」
キュピル
「ルイ、ファン、起きるんだ」
ルイ
「うぅ〜ん・・・。・・・あれ?」
ファン
「・・・。・・・?まるで狐に化かされた気分です」
キュピル
「ディバン、起きてくれ」
ディバン
「・・・ん?何だ?一体何があったんだ?」
キュピル
「分からない」
輝月
「お主等の事情はどうでもいい。それより・・」
ディバン
「そうか。俺達の事情はどうでもいいか。それならこれは俺達五人で山分けするとしよう」
輝月
「ぬ・・・なんじゃ。そのいかにも何かありそうな言い方は・・」

ディバンが鞄から大きな袋を取り出し広げる。中には金銀財宝が入って行った。

琶月
「ひ、ひえええぇぇぇっっっ!!!」
ヘル
「こ、これは!!」
テルミット
「も、もしかして皆さんトレジャーハンターに?」
キュピル
「厳密には違うんだけどある意味そうだな」
輝月
「・・・うぬ、なんじゃ。お主等の事情は多少聞いてもよかろう」
キュー
「おーおー、こういう可愛い性格した奴大好きだぜ!!」

キューが輝月の背中に飛びつく。

輝月
「ぬ、ぬぅ!離れぬか!」
キュピル
「・・・そうだ。依頼の方は・・・」

起き上がり机の方を確認すると一枚の書類があった。
・・・既に判子も押されている。




『ドッペルゲンガーに作られた建物 

依頼状況 「達成」


依頼人からのコメント

君達に頼んで正解だった。ありがとう』




キュピル
「・・・・・???」

・・・こんな書類作った記憶はない。いつ作った?

琶月
「・・あのー、ディバンさん。それ勿論私含めて皆で山分けを・・・」
ディバン
「何言ってるんだ。お前の師匠がどうでもいいって言ったじゃないか。恨むなら師匠恨め」
琶月
「・・・し、師匠ーーー!!!!!」
輝月
「ぬぅっ!離れろ!」
ジェスター
「あ、何か楽しそう!私も!わああああ!」

気がつけばキュー、琶月、ジェスターに絡まれ歩くことすらままらない状態の輝月。

キュピル
「・・・そうだ、テルミット。そっちはどうだった?」
テルミット
「はい、砦に引きこもってひたすら迎撃戦でしたが無事守り切れました。
何故モンスターが活発化したのは現在ギーンさんが調査しています」
キュピル
「そうか。それならこっちも依頼達成の判子押さないといけn・・・って・・・」

三枚の書類のうち、一枚の見たくない書類が目に入った。


ルイ、ファン、ディバンに頼んでいた素材集め・・・。


キュピル
「・・・・今日何日だ?」
テルミット
「11月19日ですよ」
キュピル
「・・・俺が確か屋敷に出発したのが12日だから・・・何で一週間も経過してるんだよ!!!
これもうあと一時間で猶予時間なくなるぞ!!全員今すぐ支度してくれ!依頼だ依頼!!」
ジェスター
「えー!」



ちょっと不思議な経験をしたキュピル達であった。






==後日


ジェスター
「・・・あれ?そういえばお宝はどうしたの?」
ディバン
「もう売り払ったぞ。いい収入だった、しばらくはぐーたらできる」
ジェスター
「えー!山分け山分け!」
ディバン
「また今度な」
ジェスター
「えーーーーー!!!」




続く



第八話

大昔、ヴァンパイアが住んでいた幻の建物を探索しデビルジュネラルを撃破したキュピル達。
そしてその建物からお宝を手に入れたディバン。

ルイ
「ふふふふ・・・つ、ついに・・写真を現像する時!!」
ジェスター
「悪趣味!」
ルイ
何とでも言ってください!
よーし、現像!」

・・・数秒後。

ジェスター
「・・・あれ?現像する写真間違えてない?」
ルイ
「え?」

現像された写真を手にし確認するルイ。
・・・そこにはただドッペルゲンガーの木々が写っているだけであった。
前方にキュピルやファンが見えない何かと戦っている・・・のだが何にも移っていないせいで
素振りしているように見える。

ルイ
「・・・え、えええええ!!!何で写ってないんですか!!!」
ジェスター
「わーいわーい。呪われずに済んだ〜!わーいわーい!」
ルイ
「全然喜べません!!」
ジェスター
「ぎゃー!!」

腹いせにジェスターを思いっきり抱きしめる。やられ損である。






==クエストショップ



キュピル
「ぐおおおお!!本気出せばこんな書類10分で終わらせてやるー!!!」
テルミット
「おお、凄いです。山積みにされていた書類がドンドン消費されて行きます」
琶月
「・・・でも文字が・・汚い・・」
キュピル
「俺が読めればいい!うおおお!」


キュー
「せいやっ!」
ヘル
「なっ!」
ファン
「一本です。」
キュー
「どうだー!お父さんより強いだろー!」
輝月
「ヘルよ。こんな子供に負けるとはお主も見納めじゃな?」
キュー
「きーつき!アタシと勝負しろー!」
輝月
「ふっ、望む所じゃ。悪いがワシはヘルのようには行かぬぞ?」
ヘル
「速攻でやられろ」

二人とも愛用の武器を使っているが専用のカバーをファンが発明し当たっても大丈夫なようにしてくれた。
これのお陰で練習でもキューの実力が最大限まで引き出せるようになった。

輝月
「・・・先手!」
キュー
「甘すぎるよ!」
輝月
「っ!」

先手を取ったつもりがいつの間にか足元に潜りこまれそのまま思いっきり頭突きを貰う。
顎を強打し後ろによろめく輝月。

キュー
「どりゃー!」

キュピルと全く同じタックルを浴びせ輝月を転倒させる。そしてトドメに思いっきり刀で頭を叩く。

輝月
「っ!」
ファン
「一本です。キューさん強いですね。小さいので本当に小回りが利いています」
キュー
「にひひ。アタシは世界でいちばーん強い人間さ!」
ヘル
「ならアンタを倒せば俺は世界で一番強い人間になれるのか」
琶月
「でもその前にキュピルさんに負けてたような・・・ってことは今世界で一番強い人間はキュピルさんってこと?」
キュー
「・・・・お父さん!!アタシと勝負しろー!!!」
キュピル
「だああああ!!うるせーー!!!!
お前等道場で戦え!道場で!!」


キュー
「ちぇー」
キュピル
「ちぇーじゃない・・・」


・・・でもキューもこの場に馴染んできたようだ。
周りも別段気を使っている訳でもないようだし。

かなり良い風が吹いている。







ルイ
「キュピルさん!」
キュピル
「どうした?ルイ」

ルイが一冊の雑誌を持って横に座って来た。

ルイ
「最近仕事頑張りすぎていませんか?たまには息抜きしません?」
キュピル
「・・・ははん、なるほど。何処か行きたい所があるんだな?」
ルイ
「えっ!あ!いや、そういうわけじゃ・・・」
キュピル
「バレバレ。で、その行きたい場所とやらってどこなんだ?」
ルイ
「・・・ここです」

観念したのか普通に雑誌を渡してきた。
・・・ブルーコーラル。

キュピル
「ブルーコーラルかー。そういえば以前一度だけ皆と行った事があったなー。」
ルイ
「え、えっと・・それでですね。・・・その、出来たら二人で・・・」
キュピル
「・・・二人で?」
ルイ
「・・・わ、忘れたとは言わせませんよ?『ルイ、愛してる』って言ってキスしてくれたのを・・・」

キュピル
「うわ!
うわ!うわ!何で記憶に残ってるんだ!?
狂気化してたんじゃなかったのか!?


ジェスター
「えー?何ー?今何か聞こえたよー!」

ジェスターが自分の部屋から出てきた。
キュピルが机に突っ伏している。

ジェスター
「何々ー?何か面白い事でもあるのー?」
キュピル
「・・・・・・・・」
ジェスター
「何かあったの?」
ルイ
「ふふっ、どうしようかなー?恥ずかしがりやなキュピルさんですから言ったらきっと焼死しちゃいますね」
ジェスター
「えー!気になる!」
キュピル
「頼む言うな聞くな」
ジェスター
「ぎゃー!」

ジェスターに飛びかかるキュピル。
ひらりと回避してルイの元まで駆け寄るジェスター。

ジェスター
「なーに?なーに?」
ルイ
「キュピルさん。分かってますよね?」
キュピル
「わかった。数日後にでも行こう。」
ルイ
「よし!」
キュピル
「ルイ・・・お前意外と黒いな・・・」
ルイ
「ふふふ・・・」
ジェスター
「えー!それで結局何なの?ねーねー!」
ルイ
「怖いお話ですよ。聞きます?」
ジェスター
「あ、いい」

そういうとピューンと自分の部屋に戻って行った。

ルイ
「期待してますからね!」
キュピル
「・・・完全に負けた」


・・・そして三日後。ルイとキュピルは三日間の休みを取って行くことになった。




==翌日・クエストショップ

キュー
「今日もデスクワークなのか?」
キュピル
「従来の感情だけで動いては真に経営できないものなんだよ」

キュー
「ロナ家1000年の夢かー?」
ファン
「普通にガンダムネタを持ちこまないでください」


その時突然目の前にテレポートポータルが現れた。

キュピル
「ん、連絡もなしにいきなりテレポートポータル飛ばしてくるなんて一人しかいないな」
キュー
「お、何だ何だ?」
キュピル
「いでで、髪引っ張るな!」
キュー
「子には遊び道具が必要なんだぜ」
キュピル
「俺は玩具じゃない。玩具ならファンの部屋に一杯ある」
ファン
「やめてください」


テレポートポータルからギーンが現れた。

キュー
「おー、オールバック白髪が現れたぞー」
ギーン
「・・・おい、キュピル。この生意気な小娘は誰だ。お前の新しいペット?」
キュー
「ペットとは失礼な奴だなー!アタシはキュピルの娘だぜ!」
ギーン
「・・・キュピル。お前。」
キュピル
「1から説明するとかなり長くなる・・・それよりここに来たってことは何かあったんだろ?」
ギーン
「・・・お前の言った通りだ。・・・校長がまたこの世界に現れた」
キュピル
「・・・・!!!」


・・・・校長・・。


校長。それは



作者・・・・


作者については誰一人話していない。

だが校長としてならギーンなどに話してある。



キュピル
「・・・・ついに現れたか・・・これで三度目だな・・・」
ギーン
「ここだと人目が多い。キュピル、ファン。会議室で話し合うぞ」
キュー
「おーおー!アタシは無視かー!?」
ギーン
「子供の出る幕じゃない。昼寝でもしてろ。」
キュピル
「あー・・・ギーン。その件についてなんだが・・・。キューは校長と深い関係にある。
・・・連れてっていいか?・・・ただ、ちょっと状況を飲みこんで貰うのに時間かかりそうだが・・」
ギーン
「・・・・お前が言うなら好きにしろ」
キュピル
「相変わらず口の悪い首相だ」
ギーン
「他の者が来る前に行くぞ」

キュピル、ファン、キュー、ギーンがテレポートポータルに乗る。
そしてトラバチェスにある会議室へ移動した・・・。




・・・・・。


ルイ
「キュピルさん!これなんてどうd・・・ってあれ?キュピルさん?
・・・せっかくいいプラン見つけたのに・・」











==深夜


キュピル
「ただいま」
キュー
「今戻ったぜー!」
ファン
「戻りました」
ルイ
「あ、おかえりなさい。どこ行ってたんですか?」
キュピル
「ちょっとキューを鍛えるために簡単な依頼を達成しに行っていた」
キュー
「おーおー、言ってくれるぜ。」
ルイ
「そうでしたか。・・・あ、キュピルさん。明後日の件についてなんですけど・・」
キュピル
「・・・・・・」
ルイ
「キュピルさん?」

その時後ろからキューが飛び乗りキュピルの耳元に囁いた。

キュー
「(行けって。当分は校長も活動しないぜ?)」
キュピル
「(・・・そうだな。普通に行ってくる)」
キュー
「(お土産頼んだぜ。にひひ)」

キュピル
「悪かったな、ルイ。それで明後日の件がどうした?」
ルイ
「あ、えっとこれです。海を前にしたフレンチレストラン!」
キュピル
「海なんて毎日(ry」

ルイ
「ナルビクの海と比べちゃいけません!」
ファン
「少なくともブルーコーラルの方が綺麗でしょう。観光地な訳ですから」
キュピル
「そんなもんなのかね」
ルイ
「あー、明後日が楽しみです!」
キュピル
「・・・ファン、俺とルイが居ない間はクエストショップ任せるよ」
ファン
「任せてください」
キュー
「アタシには言わないのかー?」
キュピル
「キューも頼む」
キュー
「ま、アタシがいりゃここも安泰だけどな!」
キュピル
「おっと、悪いけど幽霊刀は持っていくぞ」
キュー
「えー!そりゃないぜ!」
キュピル
「幽霊刀なしでも強くなりな」

キューの頭をポンと叩いて自室に戻る。

キュー
「つーか、観光地に武器持ってくのか?変な奴だぜ!」
ファン
「転ばぬ先の杖という物です」
キュー
「遊園地に化け物でも来るのか?がおー!」
ファン
「・・確かに普通来ませんけど。」





そして二日経過し・・・。









ルイ
「わー!やっぱり暖かくていいですね!ブルーコーラルは!」
キュピル
「船に乗るのも随分と久々なもんだ。最後にブルーコーラルに来たのはいつだ?」
ルイ
「えーっと・・・前回来た時は私とキュピルさんの他にもジェスターさんとファンさんが居ましたから・・・。
確か二年程前でしたっけ?」(シーズン11・第七話参照
キュピル
「たったの二年なのか。何だかもっと時が経過してるような感じがするよ。・・・それにしても・・・」

ぐらぐらと揺れる船。かなり荒い。

キュピル
「ふ、船酔いする直前なんだが・・・。ちゃんと調整してくれ、船員」
船員
「船員の悪口を言うお客様には強制謝罪が与えられます。謝ってください」
キュピル
「うお!懐かしい奴が現れたな!ってかまだここで働いていたのか!」
船員
「謝らないお客様には強制労働が与えられますがよろしいですか?」
キュピル
「ごめんなさい」
ルイ
「あ、相変わらず最強・・・。」
キュピル
「というかそんな事言う暇あったらとっとと船調整せい!」

船員
「船員を脅すお客様には今すぐ海へ投げ込みますがよろしいですか?」
キュピル
「よろしくないです」
船員
「よい旅を」

船員がキュピルを片手で持ちあげ海へ放り投げた。

キュピル
「ぎええええええぇぇぇぇぇぇっっっっ!!!」
ルイ
「あああああ!!キュピルさん!!!」
船員
「天罰です」
ルイ
「天罰も何も自分の手で下してましたよね?」

船員
「痛い所を突っ込むお客様にはもれなく海の旅をプレゼントしますがよろしいですか?」
ルイ
「これって完全に脅しですよね!?」



数秒後。ルイも海へ投げ飛ばされた。




==ブルーコーラル


キュピル
「ぜぇ・・・とんでもない目にあったぞ。訴えてやる!
ルイ
「よ、よく解雇されませんね・・・はぁ・・・」
キュピル
「荷物はホテルにもう運ばれているはずだから早い所気球に乗って部屋へ行こう」
ルイ
「・・・嫌な予感がします・・・」
キュピル
「・・・何故だろう・・俺もだ・・・」


==気球

船員
「また私だけが残ってしまいました。」
キュピル
「はいはい・・前回と同じ同じ・・・」
船員
「船員の悪口を言うお客様には強制謝罪が与えられます。謝ってください」
キュピル
「そんな事一々言うから残るんだろ!?」
船員
「傷付きました。私一人で行きます」

そういって気球に一人で乗り込み勝手に何処かに行ってしまった。

キュピル
「ああああああああ!!!気球がないとどうやって崖の上にある施設にいくんだよ!」
ルイ
「キュピルさん!謝ってください!」
キュピル
「うわ、なんか凄い抵抗が!」
ルイ
「良いから早く!」
キュピル
「いでっ!」

ルイに頭を叩かれる。そして

キュピル
「す、すいませんでしたーーー!!!」

・・・・しばらくして

船員
「分かれば良いのです。どうぞ」
キュピル
「(凄い殴りたい)」






==ブルーコーラル 本島

キュピル
「やれやれ・・・やっと到着だ・・・。」
ルイ
「服が中途半端に乾いて気持ち悪いです・・・」
キュピル
「早い所ホテルへ行こうか。さて、この世界じゃ珍しい車に乗ろう」

そういうとキュピルが運転席に座ろうとする。が

ルイ
「あああ!!ダメです!!」
キュピル
「ぐえっ!」

ルイに思いっきり横から突き飛ばされ硬い地面の上を転がる。

ルイ
「キュピルさんに運転させたら命がいくつあっても足りません!!」
キュピル
「ナニヲー」

ルイ
「ダメったらダメです!!」
キュピル
「ごめんなさい」


ルイが運転席に乗りキーを回す。

ルイ
「さ、乗ってください。快適運転でお送りいたしますよ」
キュピル
「見せて貰おう。ルイの運転技術とやらを!」
ルイ
「・・・・?」
キュピル
「(ジェスターがいないからガンダムネタ分かってくれる人がいない。寂しい)」

ルイ
「とりあえず行きますよ」

・・・・・。

ルイ
「・・・あ、失礼。サイドブレーキかけたままでした」
キュピル
「・・・ん・・・これって・・」

ルイがサイドブレーキを解除しアクセルペダルを踏む。が、車がバックし後ろのブロックに衝突した。



ガン!


ルイ
「ぎゃぁっ!」
キュピル
「ぐえぇっ!!・・・って二年も運転してないんだから運転技術も何もないだろ!!
このペーパードライバー!
ルイ
「あー!!言いましたね!?さ、流石に今のは酷いミスしましたけど今度こそちゃんと・・!!」
キュピル
「よしわかった。俺が運転しよう」
ルイ
「やめてください!」





==一時間後 本島・ホテル



スタッフ
「ようこそ、いらss・・・って、その車の凹み・・いかがなされましたか?」
キュピル
スリルドライブはゲームだけにしよう。」

ルイ
「・・・と、とにかくチェックインしましょう・・・」
スタッフ
「・・・あ、お客様。まことに申し訳ないのですが修理代の方を・・」

二人ともそそくさに歩いて逃げてしまった。




==客室



ルイ
「あー、なんかもう来るだけで疲れてしまいました・・・」
キュピル
「主に車でな・・・」

素早く着替えてベッドの上にドサリと倒れる二人。

ルイ
「・・・ふふっ」
キュピル
「どうした?」
ルイ
「いえ、やっとキュピルさんと一緒に旅行できたなーって」
キュピル
「とんでもない旅行になるのは約束しよう。カオスだ
ルイ
「雰囲気は変わっても根は全く変わっていませんね」
キュピル
「そうか?」
ルイ
「はい。・・さてと!」

ルイが起き上がる。

ルイ
「今何時です?」
キュピル
「午後五時半。」
ルイ
「えぇっ!?まだ三時ぐらいかと思っていました・・・。外もまだこんなに明るいですし」
キュピル
「ブルーコーラルはちょっとナルビクと比べて日が長いからな。白昼夜とまでは行かないけど」
ルイ
「うーん・・」
キュピル
「どうかしたか?」
ルイ
「いえ、ちょっとブルーコーラルで遊びたかったなーっと」
キュピル
「明日思う存分遊べばいいさ」
ルイ
「そうですよね」
キュピル
「もうちょい休憩したら早めに何処か食べに行こうか。確か良い店探しておいたんだっけ?」
ルイ
「はい!ここです、ここ!パブレストラン!!」
キュピル
「どれどれ」

キュピルが雑誌を受け取り内容を確認する。
船の中に存在する高級レストランのようだ。
・・・値段の所が黒く塗りつぶされている。

キュピル
「ルイ。コース料理の値段が黒く塗りつぶされているんだが・・・」
ルイ
「気のせいです」
キュピル
「無理あるだろ」

ルイ
「うっ・・・そ、その・・・。やっぱり高くて・・」
キュピル
「・・・ルイの好みのコース食はいくらだった?」
ルイ
「・・・12万Seed」
キュピル
「いぃっ!?ひゃ、120KSeed・・・!!」
ルイ
「ああああ!ごめんなさい!ちょっといくらなんでも贅沢しすぎました!」

そういって雑誌を取り返すルイ。
・・・が、時々チラッとこっちを見る。

キュピル
「(どっからどうみてもあれは期待している・・・・)」

・・・・・。

・・・・・・・・・。

その時、ふと三日前の会議の事を思い出す。



・・・・。


こうやってルイとのんびり平和に過ごせるのは最後なのかもしれない。




キュピル
「ルイ。」
ルイ
「はい!」
キュピル
「行こうか。その高級レストランに」
ルイ
「いいのですか!?」
キュピル
「特別な、特別。ジェスターには内緒にしてくれよ?」
ルイ
「大好きです!!」

そう言ってキュピルに飛びつく。

キュピル
「おっと。」
ルイ
「ふふっ、ブルーコーラルに居る間はとことん甘えちゃうとします」
キュピル
「どんと来い。」

そう言って腕を組みながら部屋から出た。




==パブ


いくつもの樽酒が並べられたレストラン。
甲板の上で適当な席に座りコースメニューを注文する。
揺れは全くなく地上にいるような錯覚に陥る。

キュピル
「甲板の上で食事か。なんだかいいな」
ルイ
「夜でも暖かいですし気持ちが良いですよね」
キュピル
「多分今頃ナルビクは結構寒いだろうなぁ・・。まぁ、それでも10℃は超えてるかな。
ルイ
「雪滅多に振りませんもんね・・・」

キュピルが船の上から見えるブルーコーラルの遊園地を見る。

キュピル
「明日は起きてすぐ遊園地に入る?」
ルイ
「んー、それもいいですけどせっかくですから私達じゃないとできない遊びなんてどうでしょうか?」
キュピル
「俺達じゃないと出来ない遊びか。そうだな」

ルイから雑誌を受け取りペラペラとページをめくって行く。
何ページかめくってキュピルの手が止まった。

キュピル
「・・・お、これなんてどうだ」

そう言ってあるページをルイに見せた。
ルイに見せたページはスカイダイビングである。気球に乗りパラシュートを開いたらそのまま海に
着水するという物。

ルイ
「ふふっ、確かにジェスターさんやファンさんが居る時じゃ出来ない遊びですね」
キュピル
「んー、なんかヘルとか輝月とか連れて来てもよかったなー。あいつ等どんな反応するか凄く気になる」
ルイ
「・・・むー」
キュピル
「・・・おっと、悪い。今回は二人で行くっていう約束だったな」

苦笑いして誤魔化す。
ちょうどその時ウェイトレスが現れワインを置いていった。

キュピル
「乾杯しようか」
ルイ
「はい」

グラスとグラスを軽くぶつけ音を鳴らす。
キュピルはそのまま一気に飲み、ルイは軽く飲んで置いた。

ルイ
「ビールじゃないんですから」
キュピル
「まぁまぁ。・・・・お、これもジェスターじゃ入れない場所だな。」
ルイ
「見せてください」

ブルーコーラルにあるカジノの事が書かれていた。・・・・レートが高い。

キュピル
「一攫千金の夢を見るってのも案外嫌いじゃない」
ルイ
「キュピルさん運ありますからそこで一発当てたらどうです?」
キュピル
「え?俺って運あるか?かなり運悪い方だと思っているんだが」
ルイ
「それで運が悪いなんてよく言えますね!だって考えてみてください。
いつもキュピルさんが前衛に出て戦ってる時何回死にそうな目にあいました?」
キュピル
「1回」
ルイ
「ええええ!!もっと一杯あるじゃないですか!!・・・ちなみにどの場面でそう思ったんですか?」
キュピル
「狂気化したルイの攻撃受けて手足なくなった時」
ルイ
「それは言わないでください・・・本当にもう・・・。
・・・でもこの時だってキュピルさんは生きて返ってきました。
あの時に限らずどんなに絶望的な状況に立たされてもキュピルさんは絶対に生きてる。
これって凄く幸運だと私は思いますよ?」
キュピル
「どんなに絶望的な状況に立たされても生きて帰ってくる・・か」


・・・・違う。


正確には生かされているんだ・・・。


作者に。



作者を楽しませるために俺は生きている。生かされている。



ルイ
「・・・キュピルさん?」
キュピル
「あ、悪い。ちょっと昔の事考えていた。」
ルイ
「・・・また昔の事ですか?いつもそれですよね。
せっかくですから今考えていた事言ってみてください。」
キュピル
「参ったなぁ。」

すると今度は料理が運ばれてきた。

キュピル
「お、来た来た。さっそく食べようぜ」
ルイ
「あ!話しから逃げないでください!」
キュピル
「よし、わかった。ならこうしよう。俺とルイで交互に知りたい事を聞こう。聞かれたら絶対答える。どうだ?」
ルイ
「いいですね!根掘り葉掘り聞いちゃいますよ?」
キュピル
「一度に二つ聞かないでくれよ」

そう言って箸で刺身を挟み口に頬張る。

ルイ
「そうですね・・。キュピルさんが八歳の頃のお話してください」
キュピル
「俺が八歳の頃か。まだ俺が元の世界に居た頃の話だな。
八歳のころは平和だ。停戦していたし街は復興状態に入っていた。
まだ八歳だった俺はひたすら外で遊びまくってたよ。」
ルイ
「例えばどんなのですか?」
キュピル
「確か、ティルが薬調合してる時に気付かれずに違う材料を入れたりしてよく遊んだな。
そのまま気付かず調合を進めていくと爆発するんだよな。キョトンとしたあの表情を見て俺達は笑っていた」
ルイ
「ただの悪戯じゃないですか・・・」
キュピル
「いやいや、こういう事もあったぞ。その辺の石ころを入れて気付かれないように戻って窓から覗いていたら
石ころが変化して宝石になっちまってさ。その時ティルが凄い自慢してきて滅茶苦茶悔しかった。
当時俺は『それは俺が悪戯で入れた石だ!返せ!』って言って墓穴掘って魔法撃たれたな・・・。
でも最終的にその宝石は爆発したけどね。」
ルイ
「今良い事聞きました。今度薬調合するので石入れてください」
キュピル
「今人の話聞いていたか?」

ルイ
「ええ、もちろんですとも。石が宝石になって爆発するんですよね?
・・・いいプレゼントじゃないですか」
キュピル
「言うんじゃなかった。悪用する気だ

・・・さて、今度は俺の番かな?」
ルイ
「もうちょっとお話聞きたかったですけどいいですよ」
キュピル
「ルイはどうして俺の過去をそんなに聞きたがるんだ?
かなり前から過去の事を詮索してきてるようだが」
ルイ
「私が初めてキュピルさんに会った時。まだキュピルさんは18歳でしたね。
最初はちょっと強い普通の人間だと思っていたんですけど突然意識が変わったのは
鋼管の霊簪の時でしたね」
キュピル
「懐かしいな。・・・あの頃から既にもう幽霊刀を使っていたな」
ルイ
「純粋に幽霊刀を扱えるキュピルさんに興味を持ちましたけど・・・死闘していた時の
キュピルさんの姿を見た時・・何故か前にもこんな事があったような感じがして・・。」
キュピル
「前にもこんな事があったような感じ・・って・・」
ルイ
「あ、もちろん私の記憶上そんな死にそうな目にあったことはその場が初めてでしたよ」
キュピル
「(・・・もしかして前の世界の事を言っているのだろうか。
・・・俺は作者によって作られた存在。しかしそれと同時にルイも作者に作られた存在・・・。
・・・・・・くそっ、あまり考えたくない・・・・)」

キュピルが一瞬強く瞬きした。

ルイ
「・・・・キュピルさん。何か知ってますよね?」
キュピル
「え?」
ルイ
「・・・死闘してる時のキュピルさんの姿を見るたびに何故か大昔にもキュピルさんと会った事があるような
錯覚に陥るんです。・・・何か知ってるんじゃないんですか?」
キュピル
「そうだなぁ・・・。正直つい最近知った事なんだが・・・ルイの言った通り俺とルイは二年前に初めて
会った訳じゃない。実はもっと大昔に会っていた。」
ルイ
「え、えええええぇぇぇぇ!!!?い、一体それは何時ですか!?」
キュピル
「一体何時だと思う?」
ルイ
「・・・え、えーっと・・・もしかして街中で偶然見た事があるとかそういうのですか?」
キュピル
「違う。しっかり会話したこともあるし親友以上の仲だったよ」
ルイ
「え、ええええええええ!!!全然知らないです!!!」
キュピル
「答えを言うと俺がまだ6歳の頃だ。ルイも6歳の時だったかな・・・。」
ルイ
「ろ、6歳って・・幼馴染じゃないですか!でも待ってください!私全く記憶に・・・
そ、それに・・キュピルさんまだ前の世界に・・・・。・・・・まさか」
キュピル
「半年ぐらい前に一度俺が元の世界に帰れた時。真実を知った」
ルイ
「・・・そうだったんですか。だから私、キュピルさんと会っても他人の感じがしなかったんですね。」
キュピル
「まだ話さなければいけない事は一杯あるんだが今度ゆっくり話してあげるよ。
今は料理を楽しまないか?」
ルイ
「ふふっ、そうですね。」

そう言うとワインを更にグラスに注ぎ飲み始めるルイ。

キュピル
「・・・ん、何かこれ嫌な予感がするぞ・・・」


==二時間後



ルイ
「それにしてもです!輝月さんは一体何時までここにいるんですか!
元の道場があるんですから、こっち使わないで自分の道場を使ってもらいたいものです!
いつもいつも壊れた物を修理するのは私の仕事なんですから!!
でも、それを言うとヘルさんも何ですがまだテルミットさんがsdじょあsjどさいじょいさじょいあs
キュピル
「ルイ、もう帰って寝よう。盛大に悪酔いしたな
ルイ
「帰る?帰るってまさか自宅ですか!?いやですよ、私は!まだここに残ってキュピルさんと
ブルーコーラルを楽しむんですからそりゃもう!」
キュピル
「わーってる!わかってるから今日は早く寝よう。」
ルイ
「店員さーん!ワインもう一本くd・・・」
キュピル
「ああああああ、もう背に腹は変えられん!!!」

卓上に代金をパッと置きルイが言いきる前に速攻で口を塞ぐ。

ルイ
「あぐぐぐぐぐっ・・・・」
キュピル
「帰るぞ」

酔っぱらっているルイを連れて帰ろうとするが椅子から立ち上がろうとしない。

ルイ
「嫌ですよー!私はここに残りますからねー!」
キュピル
「これは酷い

・・・恥ずかしいけど仕方ない。」

ルイの背中と足に手を回し無理やりお姫様抱っこする。

キュピル
「行こう」
ルイ
「あれ?あれ?」
キュピル
「しっかりしてくれ・・・」

・・・何人かチラチラと見られながらホテルへ帰って行った・・・。



==客室

部屋に入るなりいきなりキュピルが投げる体勢に入る。

キュピル
「どっこいしょ!」
ルイ
「ぎゃああぁっ!」

ベッドの上へ向けてルイを投げる。そのままドサリと落ち一回バウンドして着地した。

ルイ
「び、び、びっくりしたー!!!」
キュピル
「はよ寝ろ」


その晩、速攻で寝る体勢に入り酔いまくったルイの言動は全て無視した。

ルイ
「冷たいです!」






一方その頃。





==キュピルの家


ジェスター
「ルイがいなーい!ご飯が作れない!!ってことは出前〜!!」
キュー
「おー!いいなー!出前取ろうぜ出前!」
ファン
「また出前ですか!キュピルさん達は三日間いないのですから全て出前にすると・・・
ヒ、ヒエェェ!こ、こんなにも費用が!だ、誰か料理できる方を募りましょう。」
ジェスター
「えーー!!」
キュー
「そりゃないぜ。」
ファン
「文句言わないでください!」


==クエストショップ


ファン
「すいません。誰か料理できる方いらっしゃいませんか?」
ヘル
「俺等は黙って缶詰だからな」
テルミット
「(野宿の方が焚火も使えて料理のバリエーションが増えてる・・・)」

ヘル
「おい、輝月。お前女なんだから料理の一つや二つできるだろ」
ファン
「男も女も関係ないと思いますが」

輝月
「お好み焼きなら作ってやるぞ?」

ジェスター
「えー!お寿司作ってー!」
輝月
「お主・・・琶月以上に我がままじゃな」
琶月
「えっ!私って我がままだったんですか!?むしろ師匠の方が・・・って、なんでもありません」

数秒後。髪の毛を引っ張られる琶月であった。

ディバン
「何だ何だ、お前達。料理できないのか?」
テルミット
「ディバンさんはできるのですか?」
ディバン
「なんだかんだで40代だからな。ある程度の料理ならできる。」
ファン
「ディバンさんにお願いしてもよろしいですか?」
ディバン
「構わん。最初に言っておくが俺は料理には自信あるぞ」
ファン
「これは期待できそうです」
輝月
「ふぬ、せっかくお好み焼きを作ってやろうと思ったのじゃがな・・」

ジェスター
「輝月ー。お寿司作って〜」

ジェスターが輝月に抱きつく。
頭をスリスリ擦りつけて盛大に甘える。

輝月
「・・・そ、そこまで言うのであれば作ってやってもよいぞ?」
ジェスター
「本当に!?わーーい!!」
キュー
「どうなっても知らないぜ」
ファン
「・・・輝月さん。本当に作れるのですか?」
輝月
「・・・琶月!」

琶月
「私に振らないでください!!」



結局作れなくてジェスターが不機嫌になったとかどうとか。



ディバン
「おい、作ったぞ」

ディバンが卓上にガーリックパンとその上に乗った薄くスライスしてカリカリに焼き上げたベーコンを出す。
それと同時にソースとスパイスのかかった肉料理も卓上に出す。

ディバン
「俺の十八番だ」
ヘル
「おお!この肉美味そうだな!」

ヘルが真っ先に頂く。

ジェスター
「あー!ずるいー!」
琶月
「そーだそーだ!」

ディバン
「黙ってまずは食え」


全員箸やらフォークやら持って手を伸ばし一口食べてみる。

テルミット
「・・・!凄いです!ソースとスパイスの合わせ具合が絶妙です!」
ヘル
「肉の味を最大限まで引き出している!こいつはうめー!」
キュー
「にひひ、皆がそっち食べてる隙にアタシはこっちを頂くぜ」

キューがカリカリのベーコンが乗ったガーリックパンを食べる。

キュー
「おー!アタシこういうの好きだぜ!今度お父さんに自慢するか!」
ディバン
「そいつは俺の親父から教わったメニューだ。料理の腕はお袋からなんだがな」
琶月
「戦闘は全くできないけど人生の知恵袋を一杯持っている人・・・。何だか凄く輝いて見える・・・」
ディバン
「お前の師匠よりもか?」

輝月が琶月の足を踏む。

琶月
「痛い!痛い!でも美味しいです」

ファン
「ディバンさん。ルイさんが帰ってくるまで料理を頼んでもよろしいでしょうか?」
ディバン
「そうだな、報酬次第と言ったところか?」
ファン
「・・・検討しておきます」
ジェスター
「あー!ずるーい!」
ファン
「どの辺がずるいのかA4用紙一枚の作文用紙に書いて提出してください」

ジェスター
「あ、やっぱずるくない」
キュー
「調子が良すぎるぜ、ジェスター!」
ジェスター
「ぎゃー!」

キューとジェスターがまたじゃれ合う。

ヘル
「しばらくはディバンの料理が食えるのか最高だな」
ファン
「あ、食材代が勿体ないので希望する方は食費お願いいたします」
ヘル
「・・・これ一食いくらだ?」
ディバン
「5000Seedくらいだな」
ヘル
「・・・缶詰いくつ食えるんだ」
テルミット
「15個くらいですね」
ヘル
「だー、くそー!」
輝月
「・・・・琶月!」
琶月
「は、はい!」
輝月
「金!」

琶月
「減給されまくった私の給料明細見せたいです」


ディバン
「可哀相な奴だな。しょうがないな、お前の分だけ俺が負担してやる」
琶月
「ほ、ほんとですか!!?万歳!!」
ジェスター
「あー!ずるーい!」
キュー
「するいぞー!」
ディバン
「お前等は元々ファンが出してくれてるだろ。」
ファン
「正確にはキュピルさんのお金ですけどね」

その晩、ディバンの極上料理を平らげた皆であった。





・・・一方その頃。






ルイ
「キュピルさーん!やっぱり気になるんで今すぐ話してください!
覚えてるんですよね?六歳の頃の私達のやり取り。何で私も六歳だったんですか?キュピルさんー!」
キュピル
「(寝たい・・・)」



第九話


ブルーコーラルへ遊びに行ったキュピルとルイ。
しかしこの世界に再び校長・・作者が現れた気配をキュピルに告げた。



==トラバチェス

ギーン
「ちっ・・・。奴の事だ。どうせお得意のウィルスだとか何とかでまた滅ぼそうとしてくるはずだ。
・・・だがあの時と違って今はアノマラド連合が結成されている。まず戦争は起きないはずだ」
ミーア
「・・・戦争は、か?」
ギーン
「・・・そうだ。戦争は、だ」

ギーンが立ちあがり高い塔の最上階からトラバチェスを見渡す。

ギーン
「奴ほどの行動力と力があればもっと弱小の大陸を狙ってそこを制圧する方が得策だろう。
・・・奴だってそれは当然理解しているはずだ。それにも関わらずこのアノマラド大陸だけを狙う・・。
そして必ずと言っていいほど俺達はその戦いに巻き込まれている。いや、狙われている。
・・・ミーア、何故だと思う?」
ミーア
「・・・・・。」
ギーン
「俺は今回の一件に関して一つ疑問が拭えないでいる」
ミーア
「何だ?」
ギーン
「何故キュピルは再びこのアノマラド大陸に校長が降り立つ事を予測できたんだ?」

ミーア
「・・・・・」
ギーン
「・・・あいつは何か知っている。・・・重要な何かをな」

そういうと持っている杖を一回地面を突きテレポートポータルを開く。

ミーア
「キュピルを呼ぶのか?」
ギーン
「あいつは今頃ルイとデートでもしているはずだ。今はのんびりさせてやりたい。
各地にいるアノマラド連合軍を早めに集結させて有事に備えておく」
ミーア
「ギーン。私はもう一つ気になる事がある」
ギーン
「・・・キューの事か?」

ミーアが頷く。

ギーン
「・・・校長に対する切り札らしいが俺はあの小娘に何ができるのか全く予測できない。
何故切り札なのかキュピルすら理解していなかったがな」
ミーア
「彼女はまだ実力を開花させていないように見えたが・・・?」
ギーン
「本当にキュピルの娘ならば磨けば光る。・・・母親にもよるけどな。」
ミーア
「ルイじゃないのか?」
ギーン
「生まれた時から母親を知らないらしい。・・・一つの可能性が見えてこないか?」
ミーア
「・・・まさか?」
ギーン
「調べてみる価値はあるな」








==ブルーコーラル・朝


ルイ
「キュピルさーん!起きてくださーい!」
キュピル
「ぐあー・・・。寝不足だー!
ルイ
「酔ってましたけど大丈夫ですよ。ちゃんと記憶に残っていますから」
キュピル
「自覚しているなら一言(ry」
ルイ
「それより早く行きましょうよ」
キュピル
「どこに?」
ルイ
「スカイダイビングに」











==気球乗り場


キュピル
「・・・本当にやるのか?」

既に受付を済ませバックパックを背中に背負いながら言う。

ルイ
「あら?もしかしてキュピルさん怖気ついちゃいました?」
キュピル
「別に高い所は怖くないが正直不安と言えば不安だ」
ルイ
「大丈夫ですよ。死ぬときは一緒ですから!」
キュピル
「まだ死にたくない」

ルイ
「さ、乗りましょう!」

キュピルの腕を引っ張って気球に乗る。

船員
「何故高い所から飛び降りて海に激突するのか理解できません」
キュピル
「激突とかパラシュート開かなかった人の末路かよってかまたお前か
船員
「文句を言うお客様にはパラシュートなしで飛び降りて貰いますがよろしいですか?」
ルイ
「うーん、キュピルさんと心中できるなら私はそれでも・・・」
キュピル
「よくない」



全力で否定しさっさと専用の気球に乗る。

ルイ
「キュピルさん。荷物は地上に置いておいた方がよろしいですよ。財布が飛んだりすると困りますし・・」
キュピル
「まぁ、そうだな」

キュピルがコートを脱ぎ、荷物も専用の置き場所に置く。
が、幽霊刀は手元に残すらしい。

ルイ
「何で幽霊刀も置かないのですか?」
キュピル
「・・・何故か知らないけどこの幽霊刀が手元から無くなると不安になる。」
ルイ
「・・・依存症ですか?」
キュピル
「分からない」

愚痴をこぼしながら船員も乗り気球はドンドン空高く飛んでいく。
通常の気球と違ってかなりの速さで空高く飛んでいく。
たったの数分で高度は3000mを越え更に数分立てば5000mを越えるだろう。

ルイ
「み、耳が痛いです!」
キュピル
「急激すぎるこの気圧変化!」
船員
「指定の高度に到着しました。早く飛び降りてください」
キュピル
「まるで飛び降り自殺を強制させるかのような言い方・・・」
ルイ
「さ!キュピルさん!行きますよ!」

ルイがキュピルと腕を組み引っ張って気球から飛び降りる。

キュピル
「うおあぁっ!?」
ルイ
「わあああ!」
キュピル
「ジェスターもきっとそう言う」

ルイ
「こんな状況でも冷静に食いつくキュピルさんって一体・・・」


雲を突き抜け遠くにブルーコーラルの島がいくつか見えてきた。
このまま落下すれば海に着水するだろう。
もちろん仮に島の上だったとしてもパラシュートがあるため無事に着地は出来る。

ルイ
「鳥になった気分です!!気持ちいいですね!」
キュピル
「今なら何だって出来るぞ。普段は出来ないことだってやってやるー!」

キュピルがルイから少し離れ意味不明な動きをし始める。
遠くからルイがそれを眺めしばらくして笑い始めた。

ルイ
「アハハハ!キュピルさん!それ何の動きですか?凄くおかしいです!」
キュピル
「東方不敗。デッドーウェーブ(ry」

ルイ
「せっかくなので私も。キュピルさんの格闘技!」

ルイが体を捻って前に二回転し踵押しで閉める。

ルイ
「どうです?」
キュピル
「俺そんな技使った覚えない」

ルイ
「あれ?そうですか?」
キュピル
「推進力がないから全く前に動かない格闘技。」

キュピルがまた何かやる前にルイが接近しキュピルの手を掴む。
そしてキュピルと腕を組み額と額を当てて答える。

ルイ
「キュピルさん。改めて一つ言ってもよろしいですか?」
キュピル
「何だ?」
ルイ
「こっちにいる間とことんキュピルさんに甘えちゃいます。」

そういうとキュピルの背中に回って後ろから抱きつく。

ルイ
「だからキュピルさんも・・・私の事、受け止めてくださいよ?」
キュピル
「もちろん・・・っと言いたいんだが一つだけ忠告がある」
ルイ
「何ですか?」
キュピル
「パラシュートが開く。」

そういってパラシュートが自動的に開いた。

ルイ
「ぎゃっ!!!」

当然背中にルイが抱きついていた訳だから巻き込まれキュピルと強制的に引き離されてしまった。

ルイ
「び、びっくりしました!!本当にもう!!」

しばらくしてルイのパラシュートも自動的に開きお互いバラバラに降下しそのまま着水した。
・・・ルイがもがいている。
キュピルが不安になり泳いでルイに近づく。

キュピル
「どうした?」
ルイ
「わ、私・・!!じ、実は泳げ・・あっぷ・・!て、てっきり浮き輪ついてるか・・と・・!た、助けて!」
キュピル
「そ、そういえば泳げないんだったな」

キュピルがルイの傍に近づく。すぐさまルイがキュピルの上に乗っかろうとする。
勿論そんな事をすればキュピルも沈みそうになる。

ルイ
「あああああ!キュピルさん、沈まないでください!!」
キュピル
「ぎ、ぎええぇ!と、とにかく落ちつけ!そんな暴れたら俺まで溺れる!」

必死に足を動かして浮力を得る。
・・・しばらくしてルイもやっと落ちついたようだ。

ルイ
「はぁ・・・はぁ・・・。凄く怖かったです・・・」
キュピル
「全くだ」


・・・しばらくして船がやってきて二人を回収し島に戻って行った。








代えの服に着替え終わり次は何処に行くか相談し始める。

ルイ
「どこ行きます?・・・あ、海はもう勘弁してください・・・」
キュピル
「んー、そうだなぁ。一度でいいからやってみたい事があるんだがいいか?」
ルイ
「いいですよ。一体何ですか?」
キュピル
「ゴルフ」






ルイ
「こうやって構えて、こうやってスィングするんですよ」

ルイがドライバーを持ち、大きく振りかぶって綺麗なショットを見せる。

キュピル
「おー!凄いな!一体何ヤード飛んだんだ?」
ルイ
「恐らく250ヤードぐらいですね。結構飛んだ方だと思います」
キュピル
「・・・相当飛んでる気がするな。ってか、初めてじゃなかったのか・・・」
ルイ
「ええ、だって私はメイド長ですからっ♪」
キュピル
「関係が全く見当たらない」

ルイ
「あら、凄く大ありですよ」
キュピル
「何故?」
ルイ
「接待ゴルフです」

キュピル
「ルイ、偉い人と接待ゴルフしてもガンガン勝ちに行っただろ?」


ルイ
「え?・・・どういう事ですか?」
キュピル
「・・・だ、だから・・なんというか・・手加減してお偉いさんを勝たせたりしなかったのか?ってこと」
ルイ
「別にそんなことは・・・」
キュピル
「これは酷い」

ルイ
「ほ、ほら!キュピルさんの番ですよ!」
キュピル
「よーし、初めてだけどやってやる」

キュピルもドライバーを構え思いっきり振りあげる。

キュピル
「うおーーりゃぁぁーー!!」

一気にドライバーを振る。
・・・が、ボールに当たるどころか地面に激突する。

キュピル
「・・・・・・」

暫くして手がジーンと来て悶え始める。

キュピル
「くぁwせdrftgyふじこlp;@:」

ルイ
「あらら・・・」




数時間経過し途中昼食も挟んでやっと18ホール全て回り終えた。
かなり広かった・・。

ルイ
「私は-12ですねー。」
キュピル
「何だ、マイナスか。得点悪いなー」
ルイ
「・・・何を言ってるんですか、キュピルさん!ゴルフってのは-のが良いんですよ!」
キュピル
「・・・そうなのか!?俺+212だから圧勝かと思っていたのに!」
ルイ
「すみません、一言言っていいですか?」
キュピル
「何だ?」
ルイ
「滅茶苦茶下手です」




キュピル
「・・・・・・だああああああ!」

ルイ
「あ、襲っちゃいます?」

キュピル
「・・・・・・・・・」






==午後4:00

キュピル
「ここまで酷いスコアは初めて見ただってさ・・・」
ルイ
「池ポチャ連続、OB連続・・・やっぱりそう言われますよ・・・。
見ててちょっとだけイライラしました・・・」
キュピル
「す、すまんすまん」
ルイ
「さ、キュピルさん!次は何をしましょうか?」
キュピル
「体力あるな。そうだなぁ。そろそろ行くか!」
ルイ
「え?何処にですか?」
キュピル
「カジノだ!」





==カジノ入口


中に入ろうとした時店員に引きとめられた。

店員
「お客様。私服でのご入場はご遠慮くださいませ」
キュピル
「え?私服がダメなら何で行けばいいんだ?」
店員
「男性の方はスーツ、女性の方はドレスでお願いいたします」
キュピル
「ようはお洒落しろってことか」
ルイ
「いいですね、キュピルさん。私ドレス着たいです!」
キュピル
「まぁルールには従おう。どこでスーツとドレス着れるんだ?」
店員
「お隣のブティックでご購入いただけます」
キュピル
「・・・レンタルはないのか?」
店員
「申し訳ございません。レンタルは取り扱っておりません」

・・・誰にも気付かれないように小さくため息をつく。
ルイが目を輝かせている。

キュピル
「・・・しゃあないな」





数十分後




ルイ
「じゃーん!キュピルさん!どうですか!?」
キュピル
「おぉ・・・」

パーティードレスを着たルイがキュピルの目の前に現れた。
比較的薄着であるが瀟洒(しょうしゃ)な身なりをしている。
一方キュピルもタキシードを身につけ若い男爵を連想させる。

ルイ
「キュピルさん、カッコイイですよ。」
キュピル
「ありがとう。さて、さっそく中に入ろうか。」

何故かメンズショップから足早に去ろうとするキュピル。

キュピル
「(俺とルイの服、合わせて15万Seedもしたことを早く忘れたい)」
ルイ
「?」




==カジノ


店員
「お客様、とても素晴らしい服を身につけていらっしゃいますね。どうぞ、中に入って
楽しいひと時をお送りください。」
ルイ
「ふふっ、ありがとうございます」
キュピル
「どっかの船員と大違いの態度」



中に入りまずカウンターへと移動する。チップを購入しなければならない。

店員
「ようこそいらっしゃいました。チップのご購入でございますね?」
キュピル
「ああ。推奨するチップの量はいくつだ?」
店員
「お客様の本日の運勢にもよりますが500$程チップがございましたら長く遊ぶ事ができるでしょう。」
キュピル
「わかった。二人合わせて1000$で。いくらだ?」
店員
「1Mでございます」
キュピル
「・・・・・・・・・・・・」


ルイ
「キュ、キュピルさん・・・さ、流石に1Mは・・・」
キュピル
「・・・・・・・よし!買おう!」
ルイ
「え、ええええええええええ!!!!」
店員
「かしこまりました。少々お待ち下さい」

店員がカウンターにチップケースを置きチップを並べ始めた。
その間に財布からカードを取り出し別の店員に渡し会計を済ませる。

店員
「お客様に最高の幸運が訪れる事を心からお祈りしております。
それではどうぞ、お楽しみくださいませ。」

店員からチップケースを二つ渡され一つをルイに渡す。

店員
「これは私どもの景気づけでございます」

別の店員が現れ二人にワイングラスを渡し高級なワインを注ぐ。
キュピルは少しだけ口に含み飲み下す。
ルイはさっきの1Mが頭の中でグルグル回って不安になりそれどころじゃないようだ。

キュピル
「ありがとう。」

二人ともカウンターから離れた。




ルイ
「きゅ、キュピルさん!どうするんですか!もし1M全・・・」

キュピルがルイの額の髪をめくり額と額を当てる。
そして小さな声、優しい声で答えた。

キュピル
「大丈夫。今日は何もかも忘れてこの時だけを楽しむ。
不安な事は全て頭の中から消える。そして楽しい事だけが頭の中に入る。」
ルイ
「・・・楽しい事だけ?」
キュピル
「そう。・・・さ、スリルな世界に身を投じよう」

そういって景気づけにルイの口に軽くキスをする。

ルイ
「・・・・あどjそfじおあsjふぃおあsf!!!!」

キュピル
「催眠術。使えないけど催眠術にかかったふりをしてくれ。」
ルイ
「え!あ!は!はい!!」
キュピル
「よし、ルーレットでも挑戦してみようか」

ルイの手を引いて中央にあるでかいルーレットに近づく。

ルイ
「(・・・キュピルさん。何だか何時もと違う・・・その、なんていうか・・・大人・・・・)」




ディーラー
「赤の23番でございます」
超難強
「ンッー!どういうことなんだろうねー!このワタシともあろうものがまた外すなんて!
これじゃ踊り子の目も引けないなー!」
キュピル
「なんであいつここにいるんだ?ここナルビクじゃないぞ」


・・・無視してさっそく輪の中に入る。

ディーラー
「次のゲームは1分後です。お好きなマスにチップを置いてください」
ルイ
「うーん、私は無難に赤のマスに5$チップを・・・」
キュピル
「ルイ。夢を見よう」
ルイ
「夢ですか?」
キュピル
「黒の35番に50$置こう。」
ルイ
「・・・結構多くないですか?」
キュピル
「それでこそ夢があるというものだ。」

一分経過しルーレットが回り始めた。
銀の弾がルーレットの上をまわり全員固唾を飲んで見守る。
そしてボールが止まった。

ディーラー
「赤の36番でございます」
キュピル
「惜しい!」
ルイ
「キュ、キュピルさん!惜しいですよ!」
ボーイ
「見事勝ち得たお客様は担当のボーイからチップをお受け取りください」

ルイの傍に一人のボーイが現れ倍の10$チップを渡した。

ルイ
「1$チップで1000Seedの価値があるから・・・わぁ!5000Seed増えました!」
キュピル
「5万Seed消えたぜ」

ルイ
「やっぱり堅実に狙って行きましょうよ?」
キュピル
「いや、俺は男だ!」
ルイ
「ああああ、もう嫌な予感しかしません!」

キュピル
「ルイ、もう一回催眠術をかけてあげよう」
ルイ
「あ、ぜひ!」

ディーラー
「次のゲームは一分後でございます。お好きなマス目にチップを分配してください」
キュピル
「おっと、次のゲームだ」
ルイ
「・・・・・・・・」

次はキュピルは堅実に攻め3rd12のマスに30$置く。三分の一の確率で勝ちが狙え配当額も三倍という物。
ルーレットが回り始め銀の玉がルーレットの上で踊りだす。
・・・そして再びルーレットが止まり銀の弾もどこかのマスに止まった。

ディーラー
「黒の26番でございます」
キュピル
「っしゃぁ!勝った!」
ルイ
「あー・・・私赤のマスを選んでいたので負けです・・これで+-0です・・」
キュピルの元に90$が配られる。
キュピル
「俺は一応-10$だけど長く遊べそうだ」
ルイ
「・・・何かその考え間違っている気がします」

キュピル
「さーて、次は何処に置くか」
ルイ
「私はまた赤のマス目にします」
キュピル
「二倍額の所ばっかり狙ってるな。それも赤ばっかり。何で?」
ルイ
「ふふ・・・私とキュピルさんを結ぶ運命の赤い糸っていうことで・・」
キュピル
「ロマンチックな事を言う。それならルーレットで試してみようじゃないか。
俺とルイが本当に俺とルイを結ぶ赤い糸なのかどうか」
ルイ
「え?」

キュピルが赤のマス目に490$・・全チップを置く。

ルイ
「え、えええぇぇっ!!?」

通貨に換算すると490Kをかけることになる。
この大博打に周りの観客もどよめいた。

ディーラー
「大勝負となりました。まもなくゲームを開始致します」

ルイは気が動転してチップを置けていない。
そのままゲームは開始された。
ルーレットがいつもよりも早くまわり銀の玉が放り込まれた。

ルイ
「あ、あわわわわ・・・・」

キュピル
「さて、どうなることか」

いつもよりも長く回っている気がする。
二人とも若干心拍数が早くなりルイに至っては胸が苦しくなってきた。

ルイ
「う、うぅぅ・・・」
キュピル
「・・・来る」
ルイ
「え?」

ルーレットが止まった。
そしてボールもすぐに慣性が減衰し何処かのマス目に止まった。

ディーラー
「赤の7番でございます」
キュピル
「どうやらルイの言う通り、俺とルイは運命の赤い糸で結ばれていたようだな」

安心したのか、それともあまりの嬉しさにかルイはそのまま目の前が真っ暗になり
キュピルによりかかるようにして倒れ込んだ。

キュピル
「おっと。・・・弱いなぁ。・・・・気絶したか?」
ルイ
「(か・・カッコイイ・・・カッコイイです・・・キュピルさん・・・)」

気絶したふりをする。
・・・しばらくして

キュピル
「いや、まじでびびった。我ながら本当に馬鹿なことをしたもんだっというかなんだこの博打
っつか俺ナルシストすぎるいやほんとおれどうした酔っぱらってる?
ってかやべぇ超大儲けじゃんこれガチでラッキーとしか言いようがsこdじゃおいjあしdじゃおじょいあsjだs(ry」

ルイ
「(あぁ・・・やっぱりキュピルさんはキュピルさんでした・・・)」




何故か一気に幻滅してしまったルイであった。











==キュピルの家


キュー
「あー!今頃お父さんは美味しい物でも食べてるんだろうな〜!
アタシも美味しい物が食べたいぞ〜〜〜!!」

そう叫びながら缶詰を食べるキュー。

ヘル
「俺の缶詰を分けてやってるんだから黙って食え」

キュー
「何で今日はディバンが居ないんだよー!」
ファン
「急遽珍しいダンジョンの地図を手に入れたと言い、トレジャーハンターに行ってしまいました・・・。」
テルミット
「ある意味職業柄ですよね・・・。」
輝月
「キューよ。美味しいお好み焼きを作ってやろうか?」
キュー
「本当か!?作ってくれー!」
輝月
「ふっ・・・」
ヘル
「へっ、悪いが俺のタコ焼きの方が美味いぜ。あいつと勝負して俺の方が勝ったからな!」
キュー
「そうなのか?だったらアタシはヘルの作るタコ焼きのがいいぜ」
輝月
「何じゃと。・・・琶月!!」
琶月
「は、はい!!」
輝月
「今すぐ鉄板プレートを用意しろ!」
琶月
「は、はいいぃぃぃっ!」
ジェスター
「何でも良いから缶詰は嫌〜〜〜!!」

ファン
「切実ですね・・・」




==三十分後


輝月
「これが私の作る最高傑作のお好み焼きだ。余りの美味しさに頬が落ちるぞ?」
ジェスター
「え・・・ほっぺたがなくなったらゾンビになる!嫌だーーー!!」

ファン
「そういう意味じゃありません・・・」
ヘル
「カリッカリの最高のタコ焼きができたぜ!こいつを食って美味いと言わない奴は居ない!!」
テルミット
「う〜ん、流石ヘルさん。良い匂いがします」
輝月
「食うてみろ」
ヘル
「こっちを先に食え」
キュー
「んー・・・」
輝月
「はよ食え」
ヘル
「こっちのを先に食え!」

二人ともキューの目の前に皿を突き出す。
が、次の瞬間。

ジェスター
「私が先に食べるーーー!」
輝月
「っ!」
ヘル
「ぬあ!こいつ!」

ジェスターが二人の皿を奪い先に食べ始めた。

ジェスター
「美味しい〜。わぁ〜。はふはふ」
キュー
「おーおー、ずるいぜ!アタシにもよこせやー」
ジェスター
「わああああああ」
キュー
「そいやー!」
ジェスター
「ぎゃぁーー!」

またいつも通りじゃれ合う二人。見てて大分微笑ましいが食事中にやる事ではない。
・・・気が付いたらお好み焼きとタコ焼きは放置されている。

輝月
「・・・・・・・」
ヘル
「・・・・・・・・」
ファン
「引き分けってことで。」

琶月
「わーい、師匠のお好み焼きだ!」
テルミット
「ヘルさん、僕が食べますから無駄にはなりませんよ」
輝月
「むぅ・・・」
ヘル
「・・そうだな」
琶月
「あれ、何か私(ry」







そして数時間が経過し・・・


午後9時になった。






==カジノ


キュピル
「ルーレットにブラックジャックにポーカー。
更にはビンゴにバカラにマネー・ホイールもやった。」
ルイ
「私の手持ちのチップは150$です。・・・大負けしてます・・」
キュピル
「俺も何だかんだで手持ちは100$だ。あの大当たりは何処・・・。
ルイ
「本当ですよ!!!」


キュピル
「と、とりあえず最後にあるゲームやって終わりにしよう」
ルイ
「あるゲームですか?」
キュピル
「スロットマシンだ」

キュピルがスロットマシンの置かれている場所に移動し適当な台に座る。

キュピル
「いいな、これ。ここに1$チップを投入してこのでかいレバーを引いてスロットを回すんだ」
ルイ
「あ、これ私も見たことあります。メイド長やってた頃に領主様がやっていたのを後ろで見てました」
キュピル
「よし。どうせだから俺はチップ全部使っちまうか。」
ルイ
「・・・私はその都度入れます」

キュピルは全部のチップをスロットに投入しさっそくレバーを引いて遊び始めた。

キュピル
「眼力!」

が、もちろん狙って当てられるほど緩やかな動きではないため狙った絵柄が中々揃わない。
たまに小さな当たりがHITするぐらいである。

キュピル
「うーむ。777でも狙うか」
ルイ
「ロマンですよね」

ルイも隣でスロットを回し絵柄を揃えようと頑張っているが中々揃わない。

キュピル
「・・・・・・」
ルイ
「あれ?どうかしましたか?キュピルさん」
キュピル
「幽霊刀を使えばもしかすると揃えられるかもしれない」



・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・。

ルイ
「キュピルさん」
キュピル
「ん?」
ルイ
「使いましょう」


キュピル
「なんという悪者」


ルイ
「さっそく!・・・って、あ・・・」
キュピル
「もう分ってると思うけどカジノに武器は持ち込めん。結局幽霊刀は使えないってことさ。残念」
ルイ
「本当に残念です」

キュピルが足を組みながら適当にボタンを押していく。
みるみるチップの残高が減って行く。
そしてそのまま小当たりがいくつか当たっただけでついにチップは0になってしまった。

キュピル
「あー、終わっちまった」
ルイ
「キュピルさん。私のチップを差し上げますよ。元々はキュピルさんのお金ですし」
キュピル
「いいのか?」
ルイ
「はい。私はキュピルさんのプレイを後ろから眺めていますから」
キュピル
「ありがとう。よし・・・」

ルイから残り少ないチップを受け取りスロットに投入する。
何度か777が揃いそうになるがやはり揃わない。

ルイ
「うーん、やっぱり揃いませんねー」
キュピル
「全くだ。・・・もうすぐで10時になる」
ルイ
「本当ですね・・・ここに6時間もいたことになりますよ」
キュピル
「随分と長くいたもんだ。もうこの辺で切り上げて今日は寝るか」
ルイ
「そうですね。さり気なくカジノでのご飯も斬新で美味しかったです」
キュピル
「考えてみればそこでチップかなり消費した気がする」

ルイ
「チップはなくなってもドレスだけは手元に残りました!ふふっ・・・」
キュピル
「なるほど、そういう考え方もありか。よいしょっと」

キュピルがスロットのボタンを三つ同時に押す。


7   7    7




・・・・・。





キュピル
「いいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃっっっっっ!!!!!!!???????」
ルイ
「え、えええええええええぇぇぇぇぇっっっっっっ!!!!!!!?????????」













店員
「1万54$を換金でございますね?かしこまりました。こちらにサインをお願いいたします」
キュピル
「は、は、はい」

キュピルが震える手つきでサインする。

店員
「改めてご祝福を申し上げます。キュピル様の口座に約10MSeedをお振り込み致します。
翌日にはお振り込みされていますのでご確認ください」
ルイ
「は、は、はい!あ、あ、ありがとうございましたー!」


二人ともそのまま無言でカジノから立ち去り、そして数秒後。入口で大はしゃぎする二人であった。







==ホテル・客室


キュピル
「いよっしゃああああぁぁぁぁっっっっ!!!ここでまさかの大金持ち来たあああああ!!!!」
ルイ
「ばんざーーーーーーーーい!!!!」
キュピル
「明日はこの金でもっと贅沢な遊びを楽しむか!」
ルイ
「そうですね!」

二人とも夢を膨らませつつ、適当にシャワーを浴びて寝る支度をし
しばらくしてやっと気持ちも落ちついて来た。


キュピル
「ふぅ・・・しかし本当にこんな事が起きるなんて全く夢にも思わなかった・・・」
ルイ
「クエストショップが後15軒ぐらい建てられますね」
キュピル
「そんなにいらない」


二人とも苦笑いする。

キュピル
「さて、そいじゃそろそろ寝るとしようか」
ルイ
「はい。」
キュピル
「ん〜〜!よいしょっと。」

大きく背伸びした後、ベッドの上に倒れるようにして寝る。
・・・何だかんだで疲れた。

キュピル
「おやすみ」
ルイ
「おやすみなさい、キュピルさん。」




・・・・・。



・・・・・・・・・・・・。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。






ん・・・・。

・・・・何だ・・・・?



キュピル
「・・・・はっ・・」

異様なオーラを感じ目を覚ます。
鼓動が物凄く早い。
素早く起き上がろうとした時誰かに抑えつけられている事がわかった。
意識がはっきりし誰が乗っているのか確認するとルイだった。
だが様子がおかしい。

キュピル
「どうした、ルイ」
ルイ
「・・・何で起きたの」
キュピル
「・・・・?」
ルイ
「起きなければあと少しで完全に私の『物』になったのに」

その時ルイの後ろに更に誰かが立っている事に気がついた。

キュピル
「・・・まさか・・!!!」

ルイには悪いが突き飛ばしその後ろに立っている物を確認する。



作者
「おぉ、キュピルよ。愛する者を突き飛ばすとは些か問題だな」


キュピル
「作者!!!」



すぐにベッドの横に置いてあった幽霊刀を手に取り抜刀する。


キュピル
「貴様!!何故ここに!!」
作者
「もう忘れたと言うのか。私は作者だ。自ら作りだした物をしっかり管理、監視する義務がある」
キュピル
「良く言う!!くそっ!!」

我を忘れて作者に斬りかかる。だが瞬間的に回避され部屋の隅に移動する。

キュピル
「今度は一体何をしに来た!!」
作者
「全く・・・こうも毛嫌いされていてはお前を作りだした私としても悲しい・・・ああ、本当に悲しい・・・。
シルクもティルもだ・・・。奴らには本当に参った・・・」
キュピル
「シルク・・!」

・・・奴は・・・シルクの猛攻を回避してここに来たというのか?

作者
「奴は私の管理能力を突破する恐れがあった。そうなる前に少し黙らせただけだ。安心するがいい」
キュピル
「・・・・・・」

もう一度武器を構え直す。
作者が口調を変えて再び話し始める。

作者
「キュピル。君がどれだけ足掻こうが私には勝てない。
シルクを越えることは出来ない。・・・私の手から逃れることは出来ない。
私の許可なしに死ぬ事はおろか、生きることすらできない」
キュピル
「ほざくな・・・!」
ルイ
「キュピルさん・・・」
キュピル
「!」

突然後ろからルイにきつく抱きしめられ持っていた幽霊刀を落とす。

作者
「どうした、キュピル。私はここにいるぞ。かかってこないのか?」
キュピル
「くそ!ルイ!!一体何をやっている!!離してくれ!!」
ルイ
「・・嫌・・!離したくない・・・!キュピルさんを離したくない・・・・!!!」
キュピル
「そういう意味じゃない!!・・・作者ぁぁあああ!!」

キュピルがこれまでにない程怒りを露わにする。

作者
「・・・ふむ。一度真実を知り身も心もボロボロにされ、そして未来のナルビクを見たお前は
新たな道を生きる決心し心を一時的に修復した・・・。
だがどうやら完全に立ち直った訳ではなさそうだな。キュピルよ・・・」
キュピル
「ルイを・・ルイを元に戻せ!!お前が操ったルイなんて見たくない!!!
お前の命令を聞くルイは・・・ルイは!!!」
作者
「あまり騒ぐと隣の客人から苦情が来るな。クックック・・・。
だが一つだけ貴様に教えてやる!
私が作りだし、私が操作したルイが居なければ貴様は立ちなおるどころが生きようともしなかったはずだ!!」

キュピル
「っ!!!!」

・・・・・・・。

作者
「・・・今はほんの僅かに、ルイの感情を増幅させただけだ。むしろ感謝してもらいたいものだな?」
キュピル
「一体・・・一体今度は何をするつもりだ・・何を目的にしている・・・!」
作者
「目的?それは変わらん。ただ、私を楽しませてもらえればそれでい・・・。さらばだ・・・」
キュピル
「!!、逃がすかあああぁぁぁっっっ!!!!」

キュピルから物凄いプレッシャーが放たれルイを再び突き飛ばす。そして幽霊刀を拾い
作者に向かって突進し始めた。

キュピル
「うおおおぉぉぉぉっ!!!!」
作者
「愚かな!!」

作者の作りだしたエネルギー弾が直撃し壁まで吹き飛ぶ。

キュピル
「ぐっ!」
作者
「また会おうぞ、キュピル・・そして、ルイよ」

そういって作者は消えた。

キュピル
「・・・・・・早く・・・早くギーンに知らせないと。
・・・校長が・・作者がついに俺達の前に現れた・・・。」
ルイ
「キュピルさん・・・キュピルさん・・・」

何も知らないルイがまた近寄って来た。
・・・だが今そのルイが作者と時々重なり酷く残酷な憎しみな感情が時々湧いてくる。






キュピル
「・・・・くそ・・・くそおおおぉぉっ!!!」







キュピルに訪れた一時の変わった日常。よくわからない日常。


決して平凡とは言えなかった日常。


だけど戦いのなかった日常。







ついにその日常が崩れた。



第十話


ついに作者が現れた。

この先どうしていけばいいのか。





==朝


ルイ
「・・・・あれ・・・」

異様なまでに目覚めのいい朝。
・・・何故か昨日の疲れが全く残っておらずスッキリと起きる事が出来た。

ルイ
「う〜ん!おはようございます、キュピルさん。」
キュピル
「・・・・・・・」
ルイ
「あれ?キュピルさん?聞こえませんでした?」
キュピル
「ルイ。」
ルイ
「あ、はい」

・・・。

キュピル
「すまない。一旦ナルビクに帰ろう」
ルイ
「え・・!?」
キュピル
「昨日の夜・・・。・・・ついに校長が現れた」
ルイ
「・・・校長・・・って・・・。・・・まさか・・!?でも、校長は・・死んだはずでは・・・!?」
キュピル
「俺だって疑いたい。何故何度殺しても生き返るのか。とにかく早急に対策を整える必要がある。
次はどんな手を打ってくるのか全く分らないからな・・・」
ルイ
「・・・じゃぁ・・やっぱり・・。ブルーコーラルは・・?」
キュピル
「本当に申し訳ないけど中止だ。すぐに帰ろう」
ルイ
「・・・・はい」

ルイが残念そうな顔をするが事情が事情だと悟りすんなり諦めてくれた。


・・・。


キュピル
「(この様子だと・・・。ルイは昨日の出来事は全く記憶に残っていないらしいな・・・。やはり作者の仕業か)」


・・・・・・。


キュピル
「さて、スムーズに帰るためにこれを使うか」

そういうとキュピルが鞄から色違いのウィングを取り出した。

ルイ
「それは何ですか?」
キュピル
「ファンが作ってくれた特殊なウィングだ。これを使うと一瞬でクエストショップに戻る事が出来る。
さて、戻ろう」
ルイ
「あ、待ってください。チェックアウトとかやっておいた方がいいのでは・・・」
キュピル
「大丈夫だ。既にしてある」
ルイ
「してあるのに何で部屋にいるんですか?」

キュピル
「噂の前払い!」
ルイ
「聞いたことありません!」

キュピル
「大丈夫、ちゃんと会計は済ませてある。行こう」
ルイ
「うーん・・。何だか名残惜しいですけど・・行きましょう」

二人とも荷物をまとめて特殊なウィングを使いクエストショップへと戻って行った。





==ジェスターのクエストショップ



琶月
「あーあー!いーいーな〜!今頃キュピルさんとルイさんは遊園地で遊んで美味しい物たべてるんだろうーなー!」
ジェスター
「いーなー!いーなー!・・・・わああああ!」
琶月
「あいてててて!髪の毛引っ張らないで!」
ファン
「二人して一体何を愚痴ってるのですか。琶月さんは道場に行かなくても良いのですか?」
琶月
「あああああ!!!しまったーー!!忘れてた!!」
ファン
「早く言った方が良いです」
琶月
「また師匠に怒られる!」

琶月が外に出ようとした瞬間、扉が開き後ろに倒れた。

琶月
「ぎゃぁぁっ!・・・誰!」
キュピル
「俺だ。」
琶月
「あれ?ブルーコーラルにいるはずでは・・・。さては偽物!!偽物帰れ!」
キュピル
「減給」

琶月
「偽物に言われても怖くない!」
ルイ
「あの・・・。ちょっと事情があって戻って来たのですけど・・・」
琶月
「事情?・・・ああああああ!!!」
キュピル
「すまないけど本物だ。更に減給
琶月
「ああああああああ!!!!!!」

ジェスター
「ねーねー!琶月の月給はいくらなのー!?ねーねー!」
キュー
「お、ここに給料明細があるぜ。どれどれ。お、1万Seedだってさ。こりゃ給料とは言わないな。
更に少なくなるんだよな?」
琶月
「あああああああああ(ry」


ジェスターとキューがけたけたと笑う。もはや悪魔。

キュピル
「そんなことより重大な事が起きた。輝月とヘル達とディバンは何処行った?」
ファン
「輝月さんとヘルさんとテルミットさんは今道場にいらっしゃいます。ディバンさんはトレジャーハンターに
出かけています」
キュピル
「そうか。ディバンは仕方がないとして道場に居る人達を早く呼んで来てくれないか?」
ファン
「了解です」

ファンが道場に向かう。

キュー
「何かあったのかー?」
キュピル
「ついに校長が一種の攻撃を仕掛けてきた」
キュー
「・・・・・・・」

会議の内容を思い出したらしい。一気に無口になった。

ジェスター
「え?校長・・・って。」

ジェスターも前回の戦争の事を思い出したらしい。一気に平穏な空気が崩れていく。

キュピル
「今回の狙いはまだ明確には分っていないがアノマラド連合軍が存在する限り
戦争は余程の事が起きない限り・・いや、余程の事が起きたとしても絶対に戦争はおきないはずだ。
・・・だからこそ今回何をしでかすのか全く分らない」
ルイ
「・・・・・・・・」

キュピル
「(・・・校長が作者だと分ってしまった以上。・・・前回みたいに気軽に手を打つ事は出来ない・・。
・・・・・・。今回はルイの事をよく見張っておこう。昨日の件がある。)」

その時、ファンが皆を連れてきた。

ヘル
「キュピルさん、また奴が現れたのですか」
輝月
「・・・・・・」
テルミット
「この先どう行動しますか?」
キュピル
「とにかくまだ大きく目立った行動はしてきてはいない。だからといってのんびりしていたらまた前回のように
大苦戦する羽目になる。今回はそうなる前にあらかじめ、出来る限りの対策を取る」
ファン
「それでは、一体どのように?」
キュピル
「・・・ファン。あのワープ機能を備えていたコンテナ型拠点の事を覚えているか?」
ファン
「覚えていますよ。」
キュピル
「あれを再び作る事は出来ないだろうか?時間はかかってもいい」
ファン
「・・・あれを再び作るのは簡単な事ですが、特殊ワープ装置機を作るのに莫大な費用がかかります」
キュピル
「いくら?」
ファン
「恐らく2Mは手堅くかかると思います。それだけでなく特殊なアイテムがいくつも必要になってきます。」
琶月
「ひ、ひぃぃ・・・。2Mもあったら・・・豪遊できる・・・」
輝月
「殴るぞ」
琶月
「何で!?」
キュピル
「アイテムは頑張って揃えよう。資金なら既に用意できている」
ジェスター
「え!?」
ファン
「どういうことですか?」
キュピル
「いや・・。昨日ルイと一緒にカジノで遊んでいたら偶然スロットで大当たり当てちまって・・。10Mあるんだ」

それを発言した瞬間真っ先に琶月が食いついた。

琶月
「10Mもあるんでしたら私の悲惨な給料をあげてくださいいいい!!!!」

キュピル
「うるさい、空気読め。減給。」


そう発言した瞬間、琶月は後ろに倒れた。

輝月
「・・・馬鹿な奴じゃ。それよりお主。他に対策すべき物もあるのじゃろう?」
キュピル
「ああ。前回俺達が最も困った事は圧倒的な人手不足だった。
・・・ここにいる皆は基本的には精鋭揃いだと思っている。だけど人数が足りない。
例え弱い敵でも群れられたりその中心に強い者がいると圧倒的な苦戦を強いられた。
良い例がトラバチェス兵の中心にいた校長と狂気化したルイだ。」
ルイ
「う・・・ごめんなさい・・」
キュピル
「別に責めてる訳じゃない。正直な所、狂気化したルイは俺達より遥かに上を行く強さを持っていた。
しかしそんなルイでも複数で攻めかかった時は流石に防戦に回る事があったのも覚えている。
・・・人手を集めよう。・・いや、言いかえる。仲間を集める」
ヘル
「街中にビラでも配るのか?」
キュピル
「流石にそんなことで精鋭が来てくれるとは思えない。まずはギーンに相談しよう。
後は偶然強そうな人を見つけたらスカウトする」
テルミット
「一つ質問してもよろしいですか?」
キュピル
「どうぞ」
テルミット
「仲間を集めるのは賛成なのですがクエストショップの部屋数問題が絡んできます。」
キュピル
「・・・そうだな、そこは考えておこう。別にクエストショップに常駐していなくても構わない。
すぐに合流できればそれでいい。例えばワープとかね。」
ファン
「ひとまずこの事をギーンさんに伝えてはいかがですか?」
キュピル
「そうだな。すぐに連絡しよう。」

キュピルが受話器を掴み電話番号を入力する。

・・・・・・。

・・・・・・・・・・・。


ギーン
『おい。電話じゃなくて魔法で連絡しろとあれ程言ったはずだ』
キュピル
「魔法が使えない」
ギーン
『とっとと勉強しろ、このクズオーナーが!』
キュピル
「なんて口の悪い首相だ。それより問題が起きた」
ギーン
『どうした』
キュピル
「ついに校長が俺の目の前に現れた」
ギーン
『なに!もう行動を起こしてきたか・・・。それでどうした?』
キュピル
「その時は奴からすぐに身を引いてくれたが・・・・。・・・次何を仕出かすか分らない。
目的も今だ何もつかめていない。だけど早いうちに対策を整えようと思う」
ギーン
『ふむ。それでその対策とは何だ?』
キュピル
「奴がどこに現れてもいいようにコンテナ型拠点を再建築する。」
ギーン
『わかった。資金をそっちに送ってやる』
キュピル
「資金よりアイテムが欲しい」
ギーン
『アイテムは無理だ。アイテム集めはお前のお家芸だろうが』
キュピル
「物にもよる。確か特殊ワープ装置機に必要な材料に賢者の石と魔法師の石が含まれていたような気がして・・。
・・・流石にそのアイテムを手に入れるのは骨がいる」
ギーン
『知らん。何とかしろ。』
キュピル
「なんて口の悪い首相だ。」
ギーン
『それで、他にも対策案を用意しているのだろう?』
キュピル
「もちろん。・・・仲間を募りたい」
ギーン
『仲間?』
キュピル
「そうだ。精鋭な仲間が集まれば例え強い敵が現れたとしても数で押せる」
ギーン
『中々卑劣な作戦に出たな。だが事実でもある。』
キュピル
「そっちにいつでも出せる強い仲間はいないか?もし手が空いてる人ならできればこっちに回してくれると
物凄く助かるんだが・・・」
ギーン
『ミーアとラテスは悪いが俺の右腕となる存在だ。そっちに回す事は出来ない」
キュピル
「流石にそこまでは期待していない。精鋭とは言わなくても普通よりちょっと強い人でも構わない」
ギーン
『・・・それならあいつ等を回してやる』
キュピル
「あいつ等?」
ギーン
『前回の戦争で活躍した一般兵士達だ。俺が目をつけ直々に訓練してやり昇格させてやった。
お前の期待には多少は答える事は出来るはずだ。だがミーアやラテス程は期待するな』
キュピル
「一般兵士より強ければいい。」
ギーン
『わかった。すぐに魔法で飛ばしてやる。5分後にはそっちに飛ばす』
キュピル
「早いな。お茶でも用意して待ってるよ」
ギーン
『それで、他に何か対策案はあるのか?』
キュピル
「・・・今の所ないが大人数で攻められても跳ね返す事の出来る対策が欲しい」
ギーン
『そんな物が存在してればどれ程先の戦争は楽に済んだか』
キュピル
「まぁ、そうなんだけど・・。・・・とにかく今はそれぐらいだ。
また目立った動きが出るまではしばらくは訓練に時間を割くよ」
ギーン
『わかった。また何かあれば連絡をよこせ。こっちで何かあった時も連絡を出す。』
キュピル
「魔法じゃなくて電話でもいいよな?」
ギーン
『ファンが傍にいるならファンを使え。電話は盗聴されやすい』
キュピル
「わかってる。それじゃ仲間の方は頼んだ」
ギーン
『ああ。・・・先に仲間の件について一つ言っておく』
キュピル
「何だ?」
ギーン
『五月蠅い連中だ。ついでにお前はもう合ったことあるぞ』
キュピル
「え?」
ギーン
『じゃあな』

そこで通話が途切れた。


キュー
「・・・新しい仲間が来るのか?」
キュピル
「今来るらしい。・・・会ったことあるらしいけど・・・一体誰なんだ・・・?」
ルイ
「とりあえずお茶を用意しておきます。」
キュピル
「頼む」
琶月
「イケメン来ないかな?お金持ちで優しい人来ないかな?」
ヘル
「キュピルさんは?」

琶月
「・・・はぁっ・・」
キュピル
「人の顔見て溜息する奴は向こう三カ月給料なしにするぞ」

琶月
「し、死んじゃいます!!お、お情けを〜〜〜!」
ジェスター
「最近輝月から小物の悪党の臭いしかしなーい!!」
輝月
「・・・近々、弛んだ精神を叩き直す。」
琶月
「ひぃぃ・・・」
ルイ
「ほうじ茶用意しましたよー」
ジェスター
「あ、私飲む〜〜」
ルイ
「こ、これはお客様用で・・・」
ジェスター
「えー!」

その時目の前でマナの光が集約し始めた。
・・・三つ、ポータルが開かれた。

キュピル
「え?三つ?一人じゃないのか?」
輝月
「・・・ぬ・・・まさか・・・」
テルミット
「知り合いですか?」
輝月
「・・・・・ぬぅ・・」
ヘル
「・・・?」

全身重火器に包まれた兵士が三人現れた。

小隊長
「おい!敵地に来たぞ!」
戦車兵
「隊長!早くも囲まれてます!」
戦車兵2
「こりゃ自爆しかねーかもな」
キュピル
「自爆するな。

輝月
「ぬぅっ・・・。お主等か・・・」
戦車兵2
「お、いつかのお譲ちゃんじゃねぇか!」
小隊長
「お前の振られた相手か。」
戦車兵2
「違います、隊長。俺が振った相手です!」

その直後、三人とも誰かに頭を殴られた。

キュピル
「お」
ギーン
「貴様等、念のため来てみればさっそく馬鹿丸出しか!」
小隊長
「なんてこった・・!?全員!ギーン殿に敬礼!」

三人共ギーンに敬礼する。

キュピル
「ギーンが物理攻撃を使った。感謝した方が良い」

戦車兵
「われわれーはー、光栄ーでありますー」
ギーン
「ならもう一発殴るか?」
戦車兵
「勘弁してくだs・・」
小隊長
「やっちまってください!殴れ殴れ!」
小隊長2
「フルボッコの刑ですよ!!」

そして、また三人ともギーンに殴られる。

戦車兵2
「くっ・・なんて、恐ろしい戦場なんだ・・」
ギーン
「キュピル。念のため手短に紹介しておく。おい、自己紹介しろ」
キュー
「紹介すると言ってすぐに丸投げかー?」
戦車兵
「お、可愛いお譲ちゃん。今彼氏とか、いな・・」

そう言いかけた瞬間、男全員が殴りかかりボコボコにされる。

戦車兵
「・・・ジョークです。偉い人にはそれがわからんとです」
ギーン
「とっとと自己紹介しろ!」
小隊長
「トラバチェス第一特殊隊所属の隊長を務めるヴィックスと申します!」
戦車兵
「えー、トラバチェス第一特殊隊所属のボロと申します」
戦車兵2
「トラバチェス第一特殊隊所属のガムナと申します!」
ギーン
「以上、三馬鹿トリオだ」
ヴィックス
「三馬鹿ってのは絶対に死なないらしいぞ」
ガムナ
「しかもリア充にもなるらしいぜ」
ボロ
「最高っすね」

何故かまた殴られる三馬鹿トリオ。

ギーン
「キュピル、こいつらは適当にこき使っていい。」
キュピル
「ふーむ・・・しかし一度に三人か。・・・そっちの事情も考えると永続的には置けないな。
とりあえず彼らには色々手伝ってもらって適当な所で返そう」
ガムナ
「俺等は物か。」
ヴィックス
「割れ物だから大切に扱ってくれよ」
キュー
「具体的にどこがどう割れ物何だ?」
ガムナ
「ピュアな心だ!」

そう叫ぶと何故かギーンに殴られた。

ギーン
「うるさい。とにかく俺は校長対策をしなければならない。キュピル、他に何かしなければいけないことはあるか?」
キュピル
「・・・。・・・うーむ・・・」
ギーン
「何か案でもあるのか?」
キュピル
「・・・。・・・・・・。・・・・・・・・・・・」

珍しく深く、そして長く考え込んでいる。

キュピル
「・・・あるにはあるんだが今はその時じゃない。また今度連絡する」
ギーン
「・・・準備の居るものなら早めにな」
キュピル
「わかった」

そういってギーンは戻って行った。

輝月
「キュピルよ。・・・こ奴等は精鋭ではない。」
ヴィックス
「今の一言で俺のピュアな心は割れた!!」
ボロ
「器物損害!」
ガムナ
「慰謝料請求!」

ギーンの見よう見まねで輝月も一瞬で三人の頭を殴る。
完璧なまでにそっくりな行動・・・。

ガムナ
「お譲ちゃん・・・あんな鬼首相の真似しちゃだめだぜ・・。」
ヘル
「おい。お前等は一体何の武器で戦うんだ?」
ヴィックス
「俺達はこいつだ!」

隊長が叫ぶと三人ともバックパックから部品を取り出し一瞬で銃器を組み立てた。
三人が持っている武器は全てミサイルランチャーである。

ボロ
「戦車兵なだけあって扱う武器もド派手な物だ」
ガムナ
「全部粉砕するぞ。」
輝月
「俊敏性は最悪じゃな・・・。そんな武器を持って早く動き回れるとは思えぬ。」
ヴィックス
「そうなんだよ、お譲ちゃん。もっと行ってやれよ。ボロの野郎、一度トイレに入ると中々出ないんだぞ。」
ガムナ
「腸の中で渋滞起こしてんじゃねーぞ」

そう言うと三人で勝手にまた話し始めた。

輝月
「ワシはこ奴等が苦手だ・・・」

琶月
「あぁっ!師匠!」

キュピル
「・・・どうでもいいが、さっそく指令下すぞ?」
ヴィックス
「サーイエッサー!」
キュピル
「ファン。特殊ワープ装置機で一番何が手に入り難いんだ?」
ファン
「魔法師の石と賢者の石です」
キュピル
「っというわけでそのアイテムを取ってきてくれ」

ヴィックス
「鬼畜!!鬼畜な野郎だ!!」
ボロ
「鬼首相の次は鬼オーナーだ!」
ガムナ
「いや、逆に考えるんだ!俺達は超期待されているんだと!」
ヴィックス
「そいつだ!お前最高だ!」
ボロ
「よっしゃ、いくぞー!」
ヴィックス
「てめぇ、何勝手に隊長権限奪ってやがる!!死ね!!」
ボロ
「ああ!俺の繊細な心が割れた!慰謝料と(ry
キュピル
「はよいけ」


キュピルが一喝を入れると三人ともすぐに外に出て行った。



ジェスター
「・・・話しの輪に入れなーい!!!」
キュー
「入らなくても全然いいと思うぜ」
テルミット
「何も喋れませんでした」

キュピル
「まぁ・・・向こうがアイテム探してきてくれているうちにこっちも行動は移しておこう」
ファン
「何をやるのですか?」
キュピル
「とりあえず戦闘とかその場の状況を潜り抜ける力を持っている者は三馬鹿同様アイテム集めに行ってもらおう。
必要な材料はファンから聞いてくれ。とりあえず、今から読み上げるメンバーはアイテム集めに行ってくれ。
ファン、ルイ、ヘル、テルミット、輝月、キュー、ジェスター。以上」
ルイ
「わかりました!」
キュピル
「呼ばれなかった人はちょっとこれから簡単な訓練をしよう。これからに備えてなるべく力をつけていきたい」

・・・・・・・。

琶月
「あの、この場で呼ばれなかったのは私だけなんですけど」


ヘル
「結果的にお前役立たずってことじゃないのか?」
輝月
「お主の給料が物語っておるな」
琶月
「あああああああ!!もう皆して酷い!!!!!」


キュピル
「・・・ディバンは当分トレジャーハンターで帰って来ないだろうから仕方ないとして・・・。
とにかく今はコンテナ型拠点の再建築に勤しむとしよう。それじゃ皆ファンの指示に従って動いてくれ」

そういうと琶月以外の人達はファンの元に集まり集めるアイテムの種類などを聞く。

キュピル
「さて、琶月」
琶月
「は、はいいい!!」
キュピル
「実際な所、琶月がどれ程戦えるのか俺は全く理解できていない。
しばらくみっちり特訓するぞ」
琶月
「お、お手柔らかにお願いします・・・」
輝月
「キュピルよ。こやつの精神は最近腐れきっておる。厳しく頼むぞ」
琶月
「うぅぅ・・・」
キュピル
「まずは手始めに道場へ行こう。戦いの腕を確認するぞ」
琶月
「は、はい!」




==思った事を呟く道場


キュピル
「だから何故、ここに来るたびに打ち消し線が(ry」

琶月
「あ、あの!!竹刀で戦えば良いんですか!?」
キュピル
「刀。俺も愛剣で行く」
琶月
「・・・え、え、えええ!!?ほ、本物の武器でやるんですか!!?」
キュピル
「当然だ。よし、さっそくだけど試合だ。遠慮なしにいくからそっちも本気を出すんだ。
琶月
「う、うぅぅぅ・・・」

琶月が手に持っていた刀を抜刀し鞘を放り投げる。

キュピル
「(・・・・・)」

琶月
「大丈夫・・・私は出来る・・・!」
キュピル
「お、言ったな。よし、行くぞ!」

キュピルが前に突進し大きく剣を振り上げ大きく振り下げる。

琶月
「ひ、ひぃぃっ!」

琶月が刀でそれを受け止めようとするが今の技はフェイクだったらしく、直前になってキュピルの動きが変わり
突然横から足が飛んで来て蹴りが炸裂した。

琶月
「ぎゃっ!!」
キュピル
「追撃!」

衝撃で横に倒れる琶月を蹴り飛ばそうとする。が、あえて大技で追撃し隙を見せる。
琶月がその隙を活かして攻撃を回避しすぐに立ちあがる。
キュピルはあえてまだ隙を晒している。

琶月
「く・・ええい!!!」

琶月が突進しキュピルの持っている剣を思いっきり叩き飛ばす。武器を叩き落とそうとしているらしい。
しかし力で勝っているキュピルは逆に押し返し琶月の体勢を崩す。
そして思いっきりタックルを仕掛ける。
が、意外な事に自ら横に転がって回避した。

キュピル
「ほぉ」
琶月
「ま、まだまだー!」

今度は何処かで見た事のあるようなポーズを取る。
・・・輝月が一閃をやる時の姿勢だ。

琶月
「一閃!」
キュピル
「む・・来るか・・!?」

しっかり技は教えこんであるらしく、大分完成度の高い一閃を繰り出してきた。
輝月程ではないものの、少なくとも一般人相手なら致命傷となりうる攻撃だ。
しかし

キュピル
「遅い!」
琶月
「うわっ!」

飛んできた琶月の攻撃を剣で防御し、弾き返して体勢を崩させる。
崩れた所をサイドキックを叩きこむ。腹にクリーンヒットし後ろに大きく吹き飛ぶ。

琶月
「っ・・!ぁ・・!」
キュピル
「打撃技は喰らった事ないか?刃物と違って鈍い痛みが襲いかかってくるから
相手のスタミナも同時に奪うぞ」

琶月が起き上がろうとするが鈍い痛みに悶絶し立ちあがろうとしない。

キュピル
「なんだ、もう降参か?」
琶月
「も・・無理・・!うぐぐ・・。」
キュピル
「やれやれ」


しばらく休ませることにした。



・・・・一時間ほど経過した。




キュピル
「どうだ?回復したか?」
琶月
「はい・・・。・・・どうすればそんなに強くなれるんですか?生まれつきですか?」
キュピル
「違う。正直な所あの一閃を見る限りだと、同い年の頃の俺よりかは強いだろうな。」
琶月
「うそ!?絶対にそれはないです!」
キュピル
「ここで嘘ついてどうする。・・・まぁ、俺が一気に強くなったと実感できたのはつい最近だ。
やっぱり日々の鍛錬を怠らない事が重要かな。それと良い師匠に巡り合う必要もある」
琶月
「じゃー、私がこんなに弱いのは師匠のせいなんですね。納得ー」

キュピル
「今の言葉輝月に言うぞ」

琶月
「あああああああああ!!!ごめんなさい!!!ごめんなさい!!!!!」


キュピル
「・・・とにかく人のせいにする前にまずは自分の腕を磨け。いいね?」
琶月
「はい・・・」
キュピル
「っというわけで今の戦闘で琶月の弱点を克服する訓練スケジュールを適当に考えたから明日からやるぞー」
琶月
「え、えーっと・・・具体的に何をやるのですか?」
キュピル
「まずは基礎体力の向上から。登山で持久力を鍛えるぞ」
琶月
「えー・・・。私登山はちょっと・・」
キュピル
「楽して強くなれると思うな。覚悟せい」

琶月
「ひぃぃ・・・」



・・・・過酷(?)な特訓が始まった。





==翌日




クエストショップは誰もいなかった。恐らく全員アイテムを集めに行ったのだろう。
バックパックに必要な荷物を詰め込み支度を済ませる。
支度が済むと同時に、動きやすい服を着た琶月が現れた。
普段は道着なのだが今日に限っては道着は止めるように言っておいた。

琶月
「あ、あのー!準備終わりました!」
キュピル
「終わったか?よし、今日はここから、ここまでいくぞ」

そういってキュピルは琶月に地図を見せる。
・・・クライデン平原からペナインの森にかけて存在する大きな山・・・。

琶月
「・・・え、ええええええ!!!!一体何Kmあると思ってるんですか!!?絶対100Kmはありますよ!!100は!」
キュピル
「問答無用!その腐った根性と共に叩き直してやる!」
琶月
「わあああん!・・・・・・・。・・・チラッ」
キュピル
「これはムカつくな」

琶月
「す、すいません!」
キュピル
「やれやれ・・。もっとこう前向きに考えられないか?」
琶月
「前向きに?」
キュピル
「琶月の趣味は良い景色を見ることだったろ?」
琶月
「・・・あ・・。覚えていてくれたのですか?」
キュピル
「当然だ。というか自殺すれすれの事をやっていたらそりゃ忘れるわけが(ry」
琶月
「き、気にしないでください!!」
キュピル
「本当はただのジョギングでもよかったんだがあえて登山選んだのは最終的に良い景色が見られるから
登山を選んだ」
琶月
「お、おぉ・・・。」
キュピル
「ほら、行くぞ。夜までには登頂するぞ」
琶月
「うぅぅ・・・」





・・・・。


・・・・・・・・・・・。




琶月
「はぁ・・・はぁ・・・。あ、あの・・。休憩・・まだですか?」
キュピル
「まだ走って20Kmだぞ。」
琶月
「走ってること自体がおかしい!!」
キュピル
「グダグダ言ってると置いてくぞー。」
琶月
「あ!いいですよ!私この辺の地域は知ってるので!」
キュピル
「お、本当か。それなら速度あげる」

そういうとキュピルは速度をあげていった。

琶月
「あああ!いいですか!?本当にはぐれて迷子になって私帰っちゃいますよーー!?」

・・・聞こえなかったらしい。

・・・・・・・。

琶月
「・・・ま、待ってくださーい!!本当は道知りません!!迷子になったら空腹で死にます!!
置いてかないでーーーーー!!!」








・・・・そして走り続ける事数時間。

結局最初の休憩はナルビクを出てから五時間後であった。



==セルバス平原・山岳地帯

琶月
「ぜ、ぜぇ・・ぜぇ・・・も、もう・・無理・・・」

そういってバックパックをクッションにして後ろに倒れた。

キュピル
「まぁ、大分頑張ったほうだな」
琶月
「ほんとに・・ですよ!!私は・・・ぜぇ・・超・・頑張りました!!給料UP!!
キュピル
「やれやれ、輝月が溜息つくのもよくわかる」
琶月
「うぅぅ・・・」
キュピル
「どれ、昼の一時になったことだし飯でも食べようか」
琶月
「万歳!!・・・って、あ!そういえば私弁当とか持ってきてないです・・・。」
キュピル
「その辺は全部俺が用意してあるから安心していい。水もたっぷり持ってきてあるから遠慮しなくていいよ。
そんでもって今日は琶月もきっと大好きなご飯を持ってきた。」
琶月
「おぉ!して、今日のご飯は!?」
キュピル
「何だと思う?」
琶月
「んー、そりゃ絶対キュピルさんの事ですからハンバーグとかお寿司とかその辺でしょう!!」
キュピル
「・・・今自分が好きなメニュー言ったな?」
琶月
「何故分ったんですか!!」
キュピル
「15歳じゃそうなるわな・・」
琶月
「今馬鹿にしてなかった?」


キュピル
「おっと、口の悪い奴には弁当n(ry」
琶月
「あああああああ!!!すみませんでした!!!
うぅぅ・・何でキュピルさんからも苛められるようになったんですか・・」
キュピル
「自らそういうオーラ出してる事にはよ気付け。・・おっと、ほい、ご飯」
琶月
「わーい・・・って・・・・」

キュピルが差し出したのは輝月が作ったお好み焼きだった。

琶月
「・・・何でこれ何ですか?」
キュピル
「ブルーコーラルから帰ってきたら輝月が超不機嫌になりながら『何故ヘルのタコ焼きは食べられ
ワシの作ったお好み焼きは誰も食わぬのじゃ!!!』と怒鳴り散らしながら
いきなり袋に入ったお好み焼き渡されてな・・・。」
琶月
「・・・師匠、結局あのお好み焼きはご自分では食べなかったのですか・・・」
キュピル
「何?これはハズレなのか?」
琶月
「そう言う訳じゃないですけれども!!・・・でもやっぱりヘルさんのタコ焼きの方が美味s・・・
あああ!!何でもありません!!間違って聞こえてしまったとしても今のは絶対に師匠には!!」
キュピル
「言ったらどうなる?」
琶月
「死にます」

キュピル
「弱みを握ったっということでいいか?」

琶月
「ダメです!!!」

そう叫んでガツガツお好み焼きを食べ始めた。
・・・冷めてるせいか微妙に美味しくなかった・・・。


数十分後


キュピル
「さて、腹ごしらえも済んだ事だし。一気に山頂まで登るぞー!」
琶月
「も、もちろん休憩は・・?」
キュピル
「山頂についたら休憩」
琶月
「休憩なしじゃないですか!!!」
キュピル
「さー行くぞー。」
琶月
「悪魔!幽霊!鬼!ブデンヌ!!」
キュピル
「最後の一言だけは勘弁してくれ。俺のどこにあんな筋肉がついている。」

琶月
「えー?またまた御冗談をー。実はヘルさんにも負けない超ムキムキなんじゃないんですか?」
キュピル
「余分な筋肉は鈍重にさせるだけだぞ。特に剣や刀は筋肉なんて殆ど必要ないからなぁ」
琶月
「え?」
キュピル
「勿論鍔迫り合いが起きると力勝負になるけどな・・・。だから極力俺は鍔迫り合いは避けてる」
琶月
「ふーん・・・」
キュピル
「興味ないだろ」

琶月
「だ、だって戦ったって勝てないので・・・」
キュピル
「・・・そういえばケルティカで大軍のモンスターを相手に戦っていたような記憶が・・・」
琶月
「あ、あの時は・・・あれです。適当に刀振り回してたら(ry

・・・あぁ、そっか!!刀を適当に振り回してれば勝てるんだ!!!」
キュピル
「なら俺と戦うか?」

琶月
「ごめんなさい。許して下さい」

キュピル
「全く。とにかく持久力をつけるぞ。ダッシュダッシュ!!」

そういうとキュピルは走り始めて行った。
・・・結局、またヒーヒー言いながらキュピルの後を追うはめになった琶月である。
途中脱落しかけたがその時はあえて全力の振りをして速度を落とし何とか無理やり食いつかせて行った。




山頂にたどり着いたのは午後六時である。




==山岳地帯・山頂



琶月
「あああーーー!!もう無理ーーーーー!!」

山頂に辿りつくなり琶月がバタンと地面の上に倒れた。そして大きく背伸びをする。

琶月
「はぁ〜・・・。眠いー・・」
キュピル
「お疲れさん。まぁ、これを後一週間も続けりゃ相当な体力がつくだろう」
琶月
「えええええ!!!一週間もやるんですか!!!?」
キュピル
「俺個人としては一カ月でもいいぞ」
琶月
「嫌です!!死んじゃいます!!」
キュピル
「死にはしない」

琶月
「酷い・・・」
キュピル
「うーん、琶月にここからの夕日を見せたかったのだが今日は曇ってるな
琶月
「もう嫌!!!」
キュピル
「ま、仕方ない。こんな日もあるさ。よし、飯の支度しよう」
琶月
「・・・またお好み焼きですか?」
キュピル
「いや、ここで作る」
琶月
「作る・・?っと、いいますと?」
キュピル
「薪を集めて火を焚くんだ。火を焚いたら飯盒を使ってご飯を炊く。
そしてこの具材を切って別の鍋に突っ込む。突っ込んで軽く炒めたら水とこのルーを入れる。」

そういうとキュピルは袋から人参やジャガイモを見せる。それを見て琶月がハッとする。

琶月
「あ!!カレーライス!?」
キュピル
「ビンゴ」
琶月
「それも現地でやる・・まるでキャンプ!!」
キュピル
「まるで、じゃなくてキャンプです」

琶月
「う、うぅぅ・・」
キュピル
「さ、琶月も手伝ってくれ。まずは薪を集めるぞ。・・・おっと、最初に言っておこう。
俺のカレーは美味しいぜ」
琶月
「信じてますよ?」
キュピル
「信じてくれ」
琶月
「では、薪を集めてきます・・・・動きたくないけど」
キュピル
「俺は今のうちに具材でも切るか。」



・・・・数分後


琶月
「こんなもんでどうですか?」

そういうと琶月は細い枝を一杯持ってきた。

キュピル
「とても火が長持ちするとは思えない。もっと太い薪を集めないと」
琶月
「・・・でも、そんなの落ちてませんし・・」
キュピル
「・・・そうだ。」

キュピルが立ちあがり木々を見始める。

キュピル
「・・・・この木はもう養分が足りなくなって死ぬな・・・。
よし、琶月。この木を刀で切って真っ二つにしてみろ」

そういってキュピルは直径1m程の木を示した。

琶月
「無理です」


キュピル
「出来なきゃ飯は抜き」

琶月
「いいですよ、もう・・・。師匠のお好み焼き食べますから・・・」
キュピル
「あと二時間以内に出来なかったら減給
琶月
「あああああああああ!!!!!!!!!」

琶月が刀を取り出しひたすら木を斬り始めた。
・・・どちらかというと叩きつけているのに等しい。武器を痛めている。

キュピル
「だめだ、琶月。そんな斬り方じゃ一生斬れない」
琶月
「じゃぁ、どうやれば!!」
キュピル
「まずこう持て」

キュピルが琶月の腕を掴んで正しい持ち方を教える。

キュピル
「この状態で斜め上から刀をこうやって降ろせ。袈裟切りだ。この時なるべく平行に降ろすようにな。
それと叩くんじゃなくて後ろに引いて刃で切りつける事もしっかり念頭に置いてくれ。
イメージとしては包丁で肉を斬るような感じだ。」
琶月
「こ、こうですか?」

琶月が試しにやってみる。ぎこちないが慣れて何回もやればそのうち斬れるだろう・・・。

キュピル
「まぁ、そんな感じだな。さて、薪待ってるからな」
琶月
「うぅぅ・・・。・・・てい!!やぁっ!!わああぁぁっっ!!
キュピル
「(こりゃ時間との勝負だな)」




・・・・2時間後




メキメキと音を立てて木が倒れる音が聞こえた。

キュピル
「お」
琶月
「や、やりました・・・!!ついにやりました!!木を斬りましたよ!!!」

・・・しかし斬り口を見るとどちらかというと木を薙ぎ倒したに近い。

キュピル
「・・・・これじゃ、まだまだ剣の腕はヒヨッコレベルだな」
琶月
「常識的に考えて一発で木を斬れる人はおかしい!」

キュピル
「・・・気になる時間だが」
琶月
「は、はいぃぃ!」
キュピル
「二時間三分。残念、減給だな

そう言った瞬間、琶月が真っ白になってその場で倒れた。

キュピル
「・・・ま、でもこんなデカイ薪を用意してくれたから昇給してやるか。」
琶月
「ほ、ほんとですか!!!!?」

倒れた琶月が速攻で起き上がって来た。

キュピル
「+-0だがな」

そういうと何故か後ろにまた倒れる琶月で合った。

キュピル
「我がままな奴だ!」



・・・余程疲れていたのかそのまま寝始めてしまった。

・・・・とりあえず、火を熾しさっそく調理することにした。


・・・・。

・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・。

琶月
「・・・・・あ・・・。良い匂い」
キュピル
「お目覚めかな?ほい、カレーだ」
琶月
「いただきます!!!」

キュピルからカレーとスプーンを受け取りガッツリ食べ始めた。

琶月
「美味しい!!久々にまともなご飯食べました!!!!
キュピル
「普段一体どんな飯食べてるんだ・・・」
琶月
「師匠の失敗作のお好み焼きと蕎麦です・・・。だってキュピルさんが私の月給1万Seedにするから・・・
キュピル
「(てっきり輝月から食わせてもらってるのかと思ったら違うのか・・。今度ちょっとあげてやるか・・)」
琶月
「おかわり!!」
キュピル
「早!」

再びご飯とルーをかけ、琶月に渡す。キュピルも食べ始めた。

キュピル
「・・・お、晴れてきたな」
琶月
「あ、本当だ」

雲の切れ目から月が見えていた。

キュピル
「・・・月か。そういえば琶月は名前に月が入ってるな。輝月にも入っているが・・・。これは偶然なのか?」
琶月
「えっとですね。師匠の道場に入門しますと一番上の方が直々に名前が与えるんです。
当時私は入門した時は羅月様が当主様だったので羅月様から琶月という名前を頂きました」
キュピル
「・・・ん、ってことは別に本名があるってことなのか?」
琶月
「そうなりますね」
キュピル
「む、凄く本名が気になる。ってか、雇用契約書には実名で書いてくれ
琶月
「難しい事は良く分りません!」
キュピル
「・・・で、本名は?」
琶月
「・・・じ、実は破門するまでは本名は一切明かしては行けない約束で・・・」
キュピル
「ここには誰もいない。さぁさぁ」
琶月
「ダメです!言えません!」
キュピル
「ハハハハ。変な所で無駄に忠誠心があるんだな〜。感心感心。
・・・そいじゃ、いつか実名教えてくれよ?」
琶月
「い、いつか・・・」
キュピル
「・・・ん、っということは輝月にも実名が・・・?」
琶月
「あ、師匠は元々そういった名前です。羅月様の娘でしたので」
キュピル
「何だ、つまらないなぁ・・」

琶月
「無責任な!」

二人して笑う。

キュピル
「よし、俺もカレーおかわりするか。琶月はどうする?」
琶月
「私はもういいです。ごちそう様でした!」
キュピル
「ほいほい。」

キュピルがおかわりし、再び食べ始める。

琶月
「・・・あ、そういえば地味に気になってた事があるんですけど良いですか?」
キュピル
「ん?」
琶月
「今ルイさんとはどういう関係なんですか!!!」

キュピルがカレーを吹きだしそうになる。

キュピル
「・・・・知りたいのか?」
琶月
「誰に聞いたって答えは一つ!『そりゃもう絶対に!』です!!
私が見た感じでは結構良い感じじゃないですかー?んー?」
キュピル
「大人をからかうな。」
琶月
「それで、それで、どうなんですか?」
キュピル
「子供は黙ってもう寝ろ」

琶月
「逃げた!!・・・でも、明日もまた修行なんですよね?」
キュピル
「当然。明日は下山してまた山頂に登るぞ」
琶月
「ひぃぃぃ・・・・。・・・もう寝ます・・・。それで、どこで寝れば良いのですか?」
キュピル
「あ、しまった。テントまだ張ってなかった」

キュピルがリュックサックからテントを取り出す。

琶月
「・・・あ!テントいくつ持ってきてるんですか?」
キュピル
「一つ」
琶月
「・・・え?まさか一緒のテントで寝るんですか?」
キュピル
「・・・あ・・。しまった。その辺の事よく考えていなかった・・・。
すまん、琶月も年頃の女性だしな。なんなら俺が外で寝ても良い」
琶月
「あ、別にそういう意味で言った訳じゃないから良いんですが・・・。
・・・・最初に言っておきます。」








==深夜1時




キュピル
「・・・・・・・・・・」
琶月
「んがああぁぁー・・・。グゴォォッーーー・・・・」


キュピル
「・・・・・・・・・・・」


琶月
「クゴゴゴゴ・・・クゴォー・・・。ズビビビー・・・・」






キュピル
「うるさいっ」





翌日、キュピルは寝不足になった。



追伸

最終回って書いてたけどもうちょい先延ばし。



最終話


琶月を強くするために、まずは基礎トレーニングを叩きこむキュピル。
しかし琶月のいびきにより寝不足になった


キュピル
「zzzz・・・・zzz・・・」
琶月
「うぅ〜ん!!よくねt・・・あ、キュピルさんまだ寝てる。チャ〜ンス・・・。」

キュピル
「(・・・・琶月・・・何がチャ〜ンスだ・・・。誰かが起き上がったら目が覚めるぞ俺は。
・・・しかしここはあえて泳がせて何をしでかすか監視してやるか・・・)」

そのまましばらく寝た振りをしていると琶月は起き上がりテントの外に出て行った。

キュピル
「(・・・・?琶月の事だから財布からこっそり金でも盗むかと思ったんだが)


何気に酷い事を思うキュピル。
・・・・。

キュピル
「ただの散歩だろうか?・・・あぁ、眠い・・・。ちょっと寝るか・・・・」

もう一度寝袋の中に入り再び寝始めるキュピル。


・・・・・。

・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・。



目ざましがなった。



キュピル
「・・・・うーむ・・・。・・・・はっ、やばい!!二度寝したら一時間ほど寝てしまった!!」

辺りを見回す。・・・琶月はまだ帰ってきていないらしい。

キュピル
「一体何をやっているんだろうか」

念には念を入れて剣を腰に結び付けてテントの外に出る。
・・・琶月はいない。

キュピル
「おーい!琶月!近くに居るか?」

キュピルが叫ぶ。するとどこからか声が聞こえた。

琶月
「キュピルさーん!こっこですよー!」
キュピル
「お?」

声の聞こえた方に目をやる。
・・・琶月が高い木の枝に腰をかけていた。

琶月
「しっかり朝日見させて頂きました!!キュピルさんの言っていた通り良い景色でしたよ」
キュピル
「そうかそうか。そりゃよかった。・・・昨日誰かさんのせいで俺は全く寝れなかった」
琶月
「うっ・・・わ、私はしっかり言いましたから!!!!」
キュピル
「まぁ、別にどうこう言うつもりはないけど・・・。一番初めに輝月が別の部屋にしてくれって言ったのも
よくわかった」
琶月
「き、昨日疲れていたからです!!」
キュピル
「いびきは横になって眠ると止まる。寝返りうつんだったら抱き枕抱いてれば大丈夫」

琶月
「もう嫌!」

キュピル
「さて、それより大分長く寝てしまったな。朝飯食べたらここを降りてまた登るぞ。覚悟はできてるか!」
琶月
「できてません!!」
キュピル
「準備はいいか!」
琶月
「できてません!」
キュピル
「やる気はあるか!」
琶月
「ありません!」


拳骨が落ちてきたのは言うまでもない。


琶月
「あーもう何で皆私にだけ手を出すんですかーー!!!師匠やジェスターにルイさんには手出さない癖にー!」
キュピル
「何でだろう」




・・・三十分後、結局訓練はやることに。






琶月
「あ゙ぁ゙ー、待ってくださいー!・・・あ!」
キュピル
「ん?どうかしたか?」

琶月が寄り道し、茂みの中に入った。
不審に思ったキュピルが琶月に元に近寄る。

琶月
「キュピルさん、見てください!太陽華花ですよ!この付近じゃとても珍しい花です!」
キュピル
「た、太陽華花?」
琶月
「はい!太陽草が一度も太陽の光を浴びないで実をつける時期になりますと
実の変わりにこの太陽華花が咲くんです!!本来、こんな条件が重なるのは稀ですから
凄く貴重な花です!」
キュピル
「へぇー、かなり詳しいんだな。」
琶月
「運動は苦手ですけど、こういうのは大好きですから。えっへん」
キュピル
「ジェスターの物まねするな・・・

しかしそういうのが好きなのか」
琶月
「運動よりかは」

キュピル
「最悪だ・・・」

琶月
「うっ・・・。・・・と、とにかく・・。この花を持ち帰って師匠にプレゼントしようっと!」

そういうと琶月は地面を掘り、根を傷つけないように土ごと袋に入れた。

キュピル
「念のため言っておくけど、後五日ぐらいここで修行するぞ」

琶月
「・・・・・・あああああああああああ!!!!!!!!!」


キュピル
「・・・・仕方ない・・・。可哀相だから今日は夜になったらクエストショップに戻るか」
琶月
「ばんざーい!」



一方・・・その頃。





==トラバチェス


ギーン
「・・・・ぬ・・・」

一瞬強烈なマナのオーラを感じた。
本来人では感じられないマナのオーラ。
・・・この特製の杖を持っていなければ今のはいくらギーンでも感じられなかっただろう。

非常に遠くで何か強力なマナが動いた・・・。一体・・・。

ギーン
「・・・・嫌な予感がするな。校長か?」

・・・あれから何度も考えた。
アノマラド連合軍を集結させ再度各国の情勢を確認した。
・・・とても戦争が起きる気配はない。それどころかギーンが召集をかけたことによって
改めて連合軍を再認識し結束力が高まっている。

・・・仮に校長が単独で軍を立ちあげた所で賛同する人は皆無のはず・・・。

・・・・いや・・・

ギーン
「・・・・これまでの戦いのパターンを考えてみれば・・」


・・・・・。ウィルス。

まさか?

その時目の前でテレポートポータルが開いた。

ラテス
「ギーン殿!報告します!!トラバチェスより10Km離れた地点にて突然、モンスターが大量に出現!!
モンスター全てトラバチェス目掛けて一直線との事!!」
ギーン
「あのクソ野郎!!今度はモンスターっという手を使ってきやがったか!!!!」



流石にモンスターまで使ってくるとは誤算だった。

・・・・一体どうやって。

だが、それは後で考える。

それよりも10Km先の地点で出現したということは・・・。
行軍速度にもよるが平均で30分ほどで到着する可能性がある・・・。30分以内に迎撃態勢を敷かなければ。

ギーン
「すぐに部隊を前に出せ!!ネズミ一匹街に通すな!」
ラテス
「了解!」

ラテスが再びテレポートを唱え何処かに移動する。
・・・・それと同時に別の間者がギーンの元に現れた。

間者
「ギーン様!!レコルダブルより救援信号です!モンスターが突然付近に大量出現したとのこと!!」
ギーン
「なに!?ここだけじゃないと言うのか!」

するとまた別のテレポートポータルが開き魔術師が現れた。

魔術師
「突然の訪問、お許しください。オルランヌに夥しい数のモンスターが出現しました。救援をお願いいたします」
ギーン
「ちっ!この様子だと他全ての国に来たか・・!ナルビクにあるアクシピターとシャドウ&アッシュに連絡入れろ!
精鋭をありったけ呼んで来い!」








==紅の林

ジェスター
「んー?」

ジェスターが何かに気付いたらしく立ち止った。
大抵誰も気づかないのにジェスターだけ気付くというのは遠くで何かが起きているという事だ。

キュー
「おーおーどうかしたか?」
ジェスター
「・・・何か来る?」
ルイ
「何か来るって・・何ですか?」

・・・途中からその気配が強くなり普通の人でも感じられるようになってきた。

ヘル
「何だ?」
輝月
「ぬ・・・。この気配は・・何じゃ?」
テルミット
「・・・・寒気がします。何処かに強力なモンスターが・・・」
キュー
「んー・・・来てるような来てないような・・」
ルイ
「・・・?私は全く感じません・・・」
ファン
「僕もそういうオーラ全く分りませんが正体不明モンスターが現れた可能性がありますね。
危険そうでしたら一旦撤退しましょう」
ヘル
「へっ、この程度で引く俺じゃ・・・」

その時突然、複数の刃が襲ってきた。

ヘル
「ぐおっ!」
テルミット
「ヘル!」

身に着けていた鎧が防いでくれた。
今の攻撃・・・どこからだ?

輝月
「・・・・・・!」

輝月が刀を抜刀し空(くう)に向けて斬りつけた。
空かと思えば突然次元が乱れ謎のお面を被った黒髪の男が現れた。
衣服は輝月と若干似ており、鞘を持っている。

輝月
「こやつ・・・。もしや伝説の『達人』か・・・!」
ジェスター
「・・・達人?名無しのごんべえ!」
ファン
「懐かしい事言わないでください」

輝月
「お主等!こやつの実力を侮るでない!」
ヘル
「へっ、輝月がビビる程の強さか。面白い!仮に本当に輝月より実力が上だとしても
数で勝ってやる!」
キュー
「お、こりゃ小悪党の臭いがするぜ」
ヘル
「うるせぇ」

全員武器を抜刀し戦闘準備に入った。








琶月
「はぁ・・はぁ・・・ま、待ってくださ〜い・・も、もー無理でーす・・!」
キュピル
「やれやれ。もう降参か。まだ登り始めてたったの10分だぞ」
琶月
「降りた時点でもうへとへとです・・・」
キュピル
「しょうがないなぁ・・・。1分だけ休憩しよう」
琶月
「鬼!!!!」


二人とも近くの木によりかかり休憩する。

琶月
「でもたったの一分じゃ休憩って言えない気がー!」
キュピル
「・・・ちょっと待って」
琶月
「あれ?もしかして休憩延長してくれるんですか?流石キュピルさん!!」
キュピル
「・・・敵だ!!」

キュピルがそう叫んだ瞬間、突然四方八方から突然モンスターが現れ襲いかかって来た!!

琶月
「う、うわっ!!」
キュピル
「うおりゃぁっ!!」

速攻で抜刀しその場で回転切りして敵を薙ぎ払う。細い剣なのに重たい一撃。
大昔と違って完全に剣の正しい扱い方をマスターしている。

キュピル
「こいつは・・・一体何だ!?」

突然異次元から現れたようにも見えた。
だが今目の前に現れているモンスターはサンドグラスや斥候ダックウォーリアなど
確かにこの世界に存在するモンスター達だ。だがダンジョンの最奥地まで行かなければ出会えない
モンスターばかりだ。・・・一般人ならばたったの一合でやられてもおかしくない敵ばかりだ。
現に先程の薙ぎ払いを受けても平然と立っていられている。サンドグラスに関しては傷一つ付いていない。

キュピル
「・・・琶月!戦闘だ!サポートしてやるから戦え!」
琶月
「は、は、はい!!」

琶月も刀を抜刀する。そして突撃する。

キュピル
「待て!突撃はするな!」
琶月
「え?」

キュピルより前に出た瞬間、一斉に敵モンスターが琶月を狙ってきた!
すぐさまキュピルが琶月をタックルで横に転ばせキュピルが身代わりになる。

キュピル
「ただではやられないぞ!!」

斥候ダックウォーリアの攻撃を辛うじて避け剣がキュピルの肩をかすめる。
すぐにキュピルが敵を蹴り飛ばし後ろに立っていた敵ごと転倒させる。

キュピル
「とどめだああっ!!」

剣を逆手に持って思いっきり敵の胸を貫き下敷きになったモンスター事串刺しにする。

キュピル
「次だ!琶月、俺より前には出るな!あと自分から攻撃はなるべく仕掛けるな。
相手が攻撃してきた所を受け流してから攻撃しろ!」
琶月
「りょ、了解です!」

キュピルが前に出て先制攻撃を仕掛ける。・・・だがその攻撃は反撃を強要させるための攻撃。
すぐさまサンドグラスがキュピルの嘘の隙をついて反撃を仕掛けてきた!その攻撃を待ってましたと言わんばかりに
キュピルが身を翻してサンドグラスの攻撃を受け止め思いっきり蹴り飛ばす。
サンドグラスが横に転倒する。

キュピル
「ここから落ちろ!」

サンドグラスを持ち上げ急な崖下へと叩き落とす。
落下している最中に尖った岩にぶつかりガラスが割れ動かなくなった。

琶月
「私は大丈夫・・・出来る・・・やれる・・!」

琶月が刀を構えて敵の出方を伺う。
斥候ダックウォーリアが琶月の刀を叩き落とそうとしてきた!

琶月
「ひっ・・!」

刀を引っ込めて攻撃を回避する。
だが不自然な構えをしたせいで隙が出来た。ここぞと言わんばかりに斥候ダックウォーリアが強烈な突きを
繰り出してきた!!

キュピル
「うおぉぉっ!」

横からキュピルがドロップキックしながら飛び込んできた!
攻撃が琶月に当たる前にドロップキックが命中し何とか守る事が出来た。

キュピル
「大丈夫か、琶月!?」

・・・・完全に足を引っ張っている

琶月
「は、はい・・。」
キュピル
「よし、ドンドン行くぞ!」

そういうと再びキュピルは琶月の前に立ち剣を構える。
そして再び敵と激しい攻防戦を繰り広げ始めた。

琶月
「(どうして・・・キュピルさんはそんなにも強いのですか・・・?
・・・師匠が認める程の実力の持ち主・・・。師匠と違ってちゃんとした訓練を受けている訳じゃないのに・・・。
・・・それなのに、こんなにも戦えてる。・・・私はたまに怠ける時もあるけどちゃんと修行を積んで
強くなってるはずなのに・・・実戦になると急に・・・。・・・・何で・・?)」

ぼーっとしていると突然背後から別の敵が現れ琶月の背中を叩き斬った!!

琶月
「うぎゃっ!!!」
キュピル
「しまった・・後ろか!」

そのまま琶月が前に倒れる。

キュピル
「ちくしょう、やらせるか!」

敵が琶月にトドメを刺す前に剣を投げつけ強烈な一撃を与える。
すぐにキュピルが飛んで来て剣を引き抜き、追撃として思いっきり叩き斬る。
琶月の傷を確認する。

キュピル
「(・・・かなり傷が深い。早く敵を倒さないと出血多量になる)」

しかしさっきから次々と敵が現れ一向に居なくなる気配がない。一体これは・・・。



その時、ふと思った。



・・・・作者か・・・?



・・・・・


キュピル
「・・・・・・」

急に心の内に怒りが芽生え始めた。
作者に関する出来事が起きると毎回耐えがたい怒りに襲われる。

・・・・。

キュピル
「くそ!!」

とにかくこの場から早く離脱しなければ。
すぐにウィングを取り出し琶月と共に離脱しようとする。・・・ところがウィングが発動しない。

キュピル
「またこのパターンか!?くそ、こうなったら!」

一旦琶月の元から離れ敵を適当にあしらう。
敵を少し琶月から離すとすぐに琶月の元まで戻り、背中に背負って下山を始めた。
幸い、下山したばっかりなため頂上と比べればナルビクまで距離はそんなに長くない。

キュピル
「琶月、すぐにナルビクまで戻る!」

荷物を投げ捨て、ひたすらナルビクへと向かう。




琶月
「うっ・・・・」

薄れゆく意識の中で、周りの景色が凄い勢いで変化していくのが分る。

キュピル
「はぁっ・・!はぁっ・・・!」

キュピルの呼吸が凄く荒い。本人でもかなり辛い速度で走っているらしい。

琶月
「キュピル・・さん・・ごめんなさい・・。私が・・弱いばかりに・・・」
キュピル
「最初から強い人間はいない。もしそんな人間がいれば、そいつは人の形をした化け物だ。」
琶月
「・・・なら・・キュピルさんは・・化け物ですね・・・」

キュピル
「っ!」

・・・・何気ない琶月の一言がキュピルの心にかなり重く響いた。

・・・化け物・・・。



・・・・・俺は作者に作られた存在・・・。


奴が俺に力を与えて人間の域を超えた実力を持たせているのかもしれない・・・。



・・・・・・・・。



キュピル
「・・・・・」
琶月
「・・・・ま、前・・・!」
キュピル
「・・・!!」

目の前にガトリングキャノンがいる・・・!異次元から次々と現れている・・・。
別の事に意識が行っていたため存在に気付かなかった・・・!
一斉にガトリングガンが発射され蜂の巣にする。

琶月
「うっ・・!」

キュピルが後ろに転倒し押しつぶされる。
・・・やられたかと思ったが違った。辛うじて後ろに倒れる事によって被弾個所を少なくしている。
それでも完全な回避ではないため、体のあちこちに被弾している。
幸いキュピルの下敷きになっているお陰で琶月自身に銃弾が当たる事はなかった。

琶月の体に血が大量に付着する。・・・キュピルの血だ。
突然キュピルから強力なオーラが溢れる。

キュピル
「こんな所でまだ死ぬ訳には行かない!!!!」

満身創痍になっているはずなのに何処からそんな力が湧き出てるのか。
再び琶月を背負い、敵の銃弾を回避するように林の中へ突っ切って行く。
・・・ガトリングキャノンがその場から動く事が出来ない。銃口が向けられない位置にさえ来てしまえばこっちのものだ。

琶月
「きゅ、キュピル・・・さん。血・・・」
キュピル
「はぁ・・・はぁ・・・。」

・・・とにかく今は早くナルビクまで移動しなければ。









キュー
「だ、だめだぜ!幽霊刀の力を借りてもコイツの速さは何ともならない!!」

キューが幽霊刀の力を最大限まで引き出して戦うが達人の目にもとまらぬ太刀捌きに全員防戦一方だった。

ヘル
「爆!!!」

巨剣を思いっきり地面に叩きつけ地脈から爆炎を吹きださせる。
・・・しかしその攻撃をまるで予測していたかのように平然と回避され、そして見えない方向から攻撃を受ける。

ファン
「撤退しましょう!勝てる敵ではありません!」
輝月
「こやつ・・・以前にも道場破りしてきた事はあったが、ここまでの実力は持っておらんかったぞ・・・!」
ルイ
「ウィングを使います!」

ルイがウィングを掲げる。
・・・ところがウィングが発動されない。

ルイ
「え・・・何で・・・!?」
ジェスター
「早くー!」
ルイ
「ファ、ファンさん!ウィングが発動しません!」
ファン
「緊急テレポートを発動させます!皆さん、近寄ってください!」

ファンが緊急テレポートを詠唱する。すぐさま全員集結し、緑色の光に包まれて
全員クエストショップへ戻って行った。


達人
「・・・・・・・」












ギーン
「戦況の方はどうなっている」
ラテス
「優勢です。流石のモンスターも我が軍の前では歯が立たないようです」
ギーン
「手の空いてる者から他国の援軍に行ってやれ。」
ラテス
「トラバチェスの防衛はよろしいのですか?」
ギーン
「トラバチェスが陥落する事はまずない。この都市には限られた物しかテレポート出来ないように
結界を張ってあるからな。直接モンスターがこの中に入ってくる事はない。
・・・ましてやどこの街もそうだがモンスターが街の中に入らないように通常の結界も常時張ってある。
その結界が破られない限りモンスターが都市に入ってくる事はない。」
ラテス
「了解致しました。手の空いている者から他国の救援へ向かわせます」

そういうとラテスはテレポートを唱え何処かに飛んで行った。

ギーン
「・・・さっきからキュピルに交信を送っているのだが連絡が帰って来ないな・・・。
・・・やはり校長の線が強いと考えて良いか。
・・・だとすると、奴も今このような状況に合っている可能性が高いな。・・・ミーア、ちょっと来い」








キュピル
「ナルビクまで後1Km・・・!」

キュピルの通った場所に血痕が沢山残っている。・・・出血多量を起こしている。

琶月
「・・・・・・・」

痛みのせいなのか、出血多量を起こしているせいか途中で琶月は気絶してしまった。
・・・その時回りの空間が一瞬歪んだ。

キュピル
「な、なんだ?」

時空の裂け目が現れ、そこから再び大量のモンスターが現れた!
今度はバルカンキャノンが現れ一斉にキャノンを打ちだした!

キュピル
「くっ・・・!」

あのキャノン砲をまともに食らえばキュピルも琶月もただではすまない。
真横に避けて攻撃を回避する。・・・足が震える。疲労が限界に達している。

キュピル
「後1Km・・・後1Km何だ・・・!!・・・許せ、琶月!」

キュピルが思いっきり琶月をバルカンキャノンの方へ高く投げ飛ばす。
一斉にバルカンキャノンが琶月をロックオンしキャノン砲を打ちだそうとする。

キュピル
「隙有り!!」

琶月の持っていた刀とキュピルの愛剣を同時に抜刀し二刀流でバルカンキャノンを一気に叩き壊す。
慌てて接近してきたキュピルにターゲットを移すが、ロックオンした瞬間に全てキュピルに壊されてしまった。
刀と剣を納刀し空から降ってくる琶月を受け止める。

キュピル
「後1Km・・・」

ひたすらそう呟いてナルビクへ目指す。もうナルビクは見えている。
・・・その時キュピルの後方で時空が歪んだ。本人は気付かずそのまま前進を続ける。
後ろでキャノンが打ち出される音が聞こえた。

キュピル
「!!!」

気付いたころには既に遅かった。もう目の前にキャノン砲が迫っていた。


直撃する。

そう、思った瞬間、キャノン砲が真っ二つに斬れた。

キュピル
「!」
ミーア
「・・・ギーンの言った通りか。」
キュピル
「ミーア!」
ミーア
「援護する。」
キュピル
「助かる。」

再びナルビクへと向けて走り始める。
途中再び敵の増援が現れたが全てミーアが何とかしてくれた。

・・・・瀕死の状態で何とかナルビクに辿りついた。




==ナルビク

キュピル
「・・・・・・・・」
琶月
「・・・・・・・・」

血だらけのキュピルが血だらけの琶月を背負ってクエストショップへと戻る。
その光景は明らかに異様であり、人々の視線が釘付けになっていた。

ミーア
「・・・よし」

ミーアが何処からか取り出したのか分らないが『危険、外に出るな』と書かれた看板を取り出し
アスファルトを貫いて地面に突き刺した。





==クエストショップ



キュピル
「・・・今戻った」
ルイ
「おかえりn・・って、ふ、二人とも・・!!その傷は・・・!?」
キュー
「お、お父さん!!」
キュピル
「後で話す。・・・それより琶月の容体が悪い。早く治療・・してやってくれ・・」

二人の容体を見たジェスターがすぐにクエストショップに戻りテルミットを呼びに行く。
キュピルが地面に琶月を降ろし傷を確認する。
・・・数秒後、すぐにヘルや輝月も飛んできた。

輝月
「・・・琶月」
キュピル
「・・・すまない。・・実力不足だった」
輝月
「・・・当たり前じゃ!!こやつの戦いの腕はお主も知っておるはずだ!」
キュピル
「とにかく琶月の容態が良くない。琶月を優先的に治療してやってくれ」
ヘル
「・・・おい、それは本気で言ってるのか?」
キュピル
「・・・?」
テルミット
「・・・キュピルさん。僕達の目から見ますとキュピルさんの方が琶月さんの10倍以上酷い怪我してますよ
キュピル
「・・・・。俺は二十歳でもう大人だ。琶月は15歳でまだ子供。生命力的に琶月の方が危ないだろう。
とりあえず琶月に治療を施したら俺にも頼む」
ファン
「わかりました」




・・・・それから数十分後。ヒールや包帯などを巻いて一通りの治療を終える。
キュピルに関しては銃弾の摘出など治療は長引いたが無事治療は完了した。

キュピル
「ありがとう」
ルイ
「キュピルさん、あまり無茶をしないよう・・・」
キュピル
「まぁ、何だかんだでいっつも俺は生きてるから。実質死んで生き返った事もチラホラあるぐらいだ
ルイ
「・・・確かにある意味不死身です、キュピルさんは・・」
キュピル
「それより地味に不安なのは、あの三馬鹿は何処行ったんだ?」
ルイ
「・・・そういえば私達とは別行動させてましたよね。」
キュピル
「うーむ・・・」




==ケイレス砂漠


ヴィックス
「俺の砲撃を受けとれ!」

ヴィックスがミサイルランチャーを発射する。一度に四発のミサイルがサンドゴーレムに向かって突撃していく!!
ところがサンドゴーレムは形状を変え、巨大な手の形に変化してミサイルを素手(?)でキャッチしてしまった。

ガムナ
「隊長!本当に受けとっちまった!!」
ボロ
「告白成功っすね」
ヴィックス
「うわ、やべぇ。俺もう奥さんいるのに浮気しちまった!」
ボロ
「砂と浮気するとか、隊長の趣味は理解できない!」
ガムナ
「諦めろ、そういう人間だ隊長は!」
ヴィックス
「お前等後でぶっ飛ばす!」

サンドゴーレムが握っていたミサイルランチャーを三馬鹿に投げつける。

ガムナ
「うわ、やべ!今吹っ飛ばされる!」
ヴィックス
「奴の攻撃でぶっ飛ばされるのは許可しない!俺がぶっ飛ばす!」
ボロ
「隊長のツンデレとか見たくねーー!!!」
ヴィックス
「お前後で優先的にぶっ飛ばす!」

そんな馬鹿なやり取りしていたせいか、回避が遅れ見事にミサイルランチャーが三馬鹿に命中。
そのまま何処か遠くに吹き飛んでしまった。

ヴィックス
「職業柄、爆発系の攻撃は全く効かないが・・・」
ボロ
「吹き飛んだ後の衝突は防いでくれないっすよね、この服」
ガムナ
「経費けちってるからだろ」
ヴィックス
「よっしゃ、岩に激突しても大丈夫なように体を丸めろー!」
ガムナ
「余程尖った岩でも来ない限り俺達は悲鳴上げないぜ!!」
ヴィックス
「つーか、砂漠に岩があること自体が稀だけどな!!」



数秒後、サボテンに激突し悲鳴を上げる三馬鹿であった。










==キュピルの部屋

キュピル
「何故だろう、絶対あいつ等は何があっても死なない気がする」

ルイ
「私もそんな気がします・・・。・・・ひとまず私は琶月さんの容態を見てきますね。」
キュピル
「頼む」

ルイが部屋の外に出る。

キュピル
「(そういえばミーアは何処行ったんだろう)」

その時、ノックが入った。

キュピル
「誰だ?」
輝月
「私だ」

輝月が扉を開けて中に入る。

キュピル
「許可する前に入って来た

輝月
「どうせ、よかろうに?」
キュピル
「まぁ、そうだけど・・・。・・・ちょうどいい。輝月に聞きたい事があった」
輝月
「ほぉ?」
キュピル
「琶月の件だ」
輝月
「奴が大怪我した事にまさか責任を感じてる訳ではあるまい?」

輝月が片方の眉を吊り上げて怪訝そうに溜息をつく。

キュピル
「まぁ、多少は感じてるが別にそんなことはない。」
輝月
「ほぉ、では何じゃ?」
キュピル
「・・・輝月。琶月は何故入門してるんだ?」
輝月
「入門・・・つまりどういうことじゃ?」
キュピル
「何て言うんだっけか・・・。まだ羅月・・輝月の父が生きてる頃に琶月は道場に入門したんだろ?」
輝月
「んむ。」
キュピル
「今回の訓練も今までの訓練も。訓練に限らず今までの素行を見る限りだと琶月本人は
戦いをあまり好き好んでいない。訓練になれば逃げるし戦いが始まればどちらかと言えば引き気味。
かと言って前に出たかと思えば突撃・・言いかえればヤケクソ。
・・・正直、入門した明確な理由が分らない。」

輝月が道場を抜け出した(?)時に同時に琶月も付いて来た理由は分っている。
・・・声にこそ出すつもりはないが琶月は輝月の事を好いている。
しかし輝月の御家柄上、会うには入門していなければならなかったはず・・・。

・・・入門してまで輝月に会いたかった?
いや、それは話しの流れ的におかしい。・・・普通何年も居なければ・・。

輝月
「色々考えておるようじゃが、ワシの記憶上、奴と初めて会った時は既に入門しておったな。
・・・その時の記憶が5歳じゃからな。」
キュピル
「5歳・・・ってことは琶月は3歳じゃないか!!一体・・・どういうことだ・・・!?」
輝月
「・・・・・」
キュピル
「・・・何か知ってるのか?」
輝月
「私は知らぬ」

・・・一瞬何か知っているのかと思ったが輝月の目を見る限り、嘘はついていなさそう。
むしろ本人自身、言われてみて初めて気になり始めたようだ。

輝月
「今度琶月に話しを聞いてみるとしよう」
キュピル
「まぁ、そうしてくれ。・・・あぁ、そうだ。一方的にこっちが話してしまったな。そっちも何か
用件があるんじゃないのか?」
輝月
「んむ。琶月との訓練はどうだったか聞きに来ただけじゃ。」
キュピル
「成果は大木一本斬った」
輝月
「・・・何」
キュピル
「・・・・2時間3分かけてね」
輝月
「何じゃ、てっきりそこまで腕を上げたのかと思うたぞ」
キュピル
「刀はちゃんと砥いであげたから刃毀れはしていないはず」
輝月
「ふむ。・・・まぁ、よい。奴に戦いの才能はないがゆっくり付き合うとしよう」
キュピル
「そうしてやってくれ」

そういうと輝月は部屋の外に出て行った。




キュピル
「・・・・・・・」



キュピル
「(一体、輝月と琶月の間には何があったのだろうか。
・・・常識的に考えて3歳の琶月が自ら入門を志願するということは考えられない。
だとすれば、琶月の親が?・・・いや、雇用契約書を見る限りじゃ親は分らないらしい・・・。
いつ、何処で入門したか・・・。・・・・・。)」





一方その頃・・・トラバチェスでは・・・。





ラテス
「放て!!」

トラバチェスの城壁に備え付けられている大量の砲門が一斉に開き砲弾が射出される。
この一斉射撃にモンスターは近寄ることすら出来ずその場で消滅していく。




ギーン
「(今回は何とも起きずに終わりそうだな。
・・・しかし理解できないな・・。強いモンスターだけではなく、ゼリッピやトゥートゥーなどといった
あからさまに弱いモンスターも混じってるな・・・。・・・何故だ?)」

しばらくして、ついにモンスターの襲撃が止んだ。
・・・どうやら防衛は成功したようだ。

ギーン
「終わったか?」
ラテス
『終わった模様です。』
ギーン
「最低限の防衛隊を残して他国の援軍に行ってやれ」
ラテス
『了解です。第1から第8までの部隊をお借りします』
ギーン
「ああ」


・・・・・物語は再び交差し始める。



シーズン15 END




追伸


シーズン16の大方の物語の骨組みがやっと完成。
・・・さてはて、どうなることやら(口癖