ジェスターのひとり言Another



概要

「ねぇねぇ。私と琶月が日本って国に行っている間、向こうではどんな生活をしてたんだろうね?」

「まぁキュピルさんもファンさんも師匠もいますしそんな苦労せず過ごせているんじゃないんでしょうかね?」

キュピル
「否、断じて否。」


これはジェスターと琶月(日常傍観編)が日本に行っている間の物語である。

ジェスターのひとり言シリーズ(旧小説 あの時呟いたひとり言シリーズ(新小説
ナレーターなんか全くない。ただの会話だけ物語。
(シリーズ事によって変わります

主に ジェスター ファン ルイ がよくでる。 キュピルはただの副産物。
この部屋のジェスターはネタの引き出しがカナリ広い

たまにTWのキャラたちが何故か混ざる。
稀にTWやHPに全く関係ないキャラが来る。
極稀にキュピルのフレンドに入ってる人も来る


主な人物紹介(作成中)
ジェスターのひとり言シリーズの続編にあたります。
ラストシーズンを経てキュピル達はどうなったのか。
後書きの件を考えるとこのシナリオは「一つの世界線」ということになります。

今までが予備知識ないと全く楽しめなかったのですが今回は予備知識なしでも
ジェスターのひとり言読んでいなくても楽しめるようにしてみました。気に行ったらぜひジェスターのひとり言シリーズも
読んでみてください。

ちなみにジェスターのひとり言シリーズを読んでいた人宛ての言葉になりますが
キューは前世(ジェスターのひとり言シリーズ)の記憶を引き継いでいます。
シーズン1 よく分らない日常・1 END

シーズン2 外の世界 END


シーズン3 こんなゲームもあった END

シーズン4 良く分らない日常1.5

シーズン5 四字熟語&ことわざ END

シーズン6 集結!過去の人物 END

シーズン7 突入、異次元  END

シーズン8 よく分からない日常・2 END

シーズン9 それぞれの理想 END

シーズン10 放浪 END

シーズン11 よく分からない日常・3 END


シーズン12 異次元と探し物・END

シーズン13 アノマラド魔法大立学校 END(後半グロ注意

シーズン14 秘密と真実 END

シーズン15 よく分からない日常・4 END

ラストシーズン 無の中の有
シーズン1 その後の世界
ジェスターのひとり言Another

小説本編であるジェスターのひとり言の外伝的シナリオです。
詳しい説明はのちほど。
C H H編 移転 
 
キュピルの放浪 編(一時停止中)

本当に自分の意思で物事を決定してきたのか?
これまで俺が積み重ねてきた人生は本当に俺が選択して作りあげたものなのか?
今まで積み上げた者が本当に自分の意思によるものだったのか。
キュピルは答えのない答えを探すために大陸の外へ飛び出した。

目次

第一話:混乱の極み

第二話:加速する混乱

第三話:迷子の迷子の(前編)

第四話:迷子の迷子の(中篇)

第五話:迷子の迷子の(後編)

第六話:ルイvs輝月


第一話 「混乱の極み」




単価炭化
「余は戻ってきた!!皆の物!焼き討ちじゃああ!!」


キュピル
「うおぉぉぉい!!?誰だお前!?

うわあああああ!!!放火すんな!!だ、誰か火を消せえええ!!」

ジェスター
「あーー!!いつしかの変態武将だ!!」
単価炭化
「おのれぇぇー!余を変態と申すか!!あの白い子も焼き討ちじゃあああ!!!」
琶月
「普通、人に対して焼き討ちって言わないと思うんですけどねぇ・・。」
単価炭化
「あの貧乳も焼き討ちじゃあああああ!!!」
琶月
「貧乳じゃないですっ!!!!!!!1111111」
輝月
「(心底下らん・・・。)」
キュピル
「どうでもいいから火消せ。」


単価炭化
「皆の物突撃じゃあああああああぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」


ガッシャン、ガラガラドガーン

キュピル
「あああああああ家があああああ誰かなんとかしてくれえええ!!!!!」





・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


単価炭化
「ハッハー!撤退じゃぁ〜」
キュピル
「アアッ・・・アアァッ・・・俺の家が・・・俺のクエストショップが・・・・。」
ジェスター
「私のクエストショップだよ?」
キュピル
「うるさい。」




〜数時間後〜


キュピル
「え〜・・・・我が自宅は全焼し・・・クエストショップも全焼してしまいました・・・。」
ヘル
「俺とテルミットが依頼こなしている間にそんな事があったとはな・・・。おい、クソ月。てめぇ腕に自身があるんだったら追い払えよ。」
輝月
「ワシは低俗な者は斬らん。刃が汚れる。」
キュピル
「いや実害出たんだから追い払えよ。」

琶月
「・・・あのぉ〜・・・。これからどうするんですか?私のお給料。ちゃんと出ます・・・?」
キュピル
「この期に自分の給料を心配するとは非常に甚だしい。減給。」

琶月
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

キュピル
「いや、真面目に再建費用ないしどうすんのこれ・・・。」

琶月
「全員給料カットですね。」
キュピル
「琶月の給料全部カットしても全然届かないな・・・。」
琶月
「だって月々のお給料2000Seedなんですもん・・・。」
ヘル
「お小遣いかよ。」

キュピル
「うーん、どうしたものか・・・。このままでは寝るところにも困るぞ。」
ファン
「キュピルさーん。良い手が見つかりました。」
キュピル
「お、ファン。その良い手というのをぜひ話してくれ。」
ファン
「今瓦礫となった適当な資材と落ちてた部品使ってタブレットを組み立てたのですが・・・。」
キュピル
「ああうん、あいかわらずすごいね。それで?」
ファン
「外貨を稼げば早く家を購入できそうですよ。」
キュピル
「・・・外貨?例えばオルランヌに行って出稼ぎとか・・・。」
ファン
「いえ、それではだめですね。僕が調べたところ、今日本という国に行って出稼ぎしに行けば素早くお金が貯まる事が分りました。」
キュピル
「それは一体何故?」
ファン
「日本という国では黄銅が通貨に使われているようです。この黄銅、アノマラドでは技術不足により精製出来ない物質の一つで大変貴重な物です。」
キュピル
「へぇ、通貨に黄銅っていうものが使われているとはなぁ。ちなみになんという通貨なんだ?」
ファン
「データベースにはそれ以上の情報が載っていないですね・・・。異世界なので流石に情報が少ないようです。」
キュピル
「硬貨に使われている物質が分っている次点で相当なもんだと思うんだがな・・・。
よし、さっそく日本という国に向かおう!!」
琶月
「どうやってですか?」
キュピル
「・・・・・・・・・・・・。」
ジェスター
「あ、みてみて。特殊ワープ装置機だ。燃えなかったんだね。」
キュピル
「都合のいい展開で大変よろしい。
さぁ、さっそくみんなで日本という国へ行こう!!」
ジェスター
「私が一番最初に乗る〜〜〜!!!!!」
琶月
「操作方法知っているんですか?」
ジェスター
「こう見えても何度も特殊ワープ装置機を使って皆を困らせてきたんだよ。」
キュピル
「ジェスター、後で叱る。」

ジェスター
「こうやってこうやって、はい。日本にいけるよ!」
琶月
「あ!あ!いいなー!私も乗せてください!こういう近未来的な装置。好きなんですよねー。」
ファン
「それ一人ずつしか乗れませんよ。」
琶月
「密着すれば乗れない事ないですよ。ほら。」
ジェスター
「ぎゃー!狭いー!たすけてー!変態!!」
琶月
「やーん、ジェスターさんもふもふ〜。」
ジェスター
「ファン〜〜!!早く転送スイッチ押して〜〜!!」
ファン
「・・・・どうします?キュピルさん。」
キュピル
「まぁいいだろ・・・。早く押してやってくれ。すぐに俺達も行けばいいだろう。」
ファン
「分りました。」

ポチッ

・・・・・。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

キュピル
「・・・・・ん?・・・だ、だいじょうぶか?これ?相当振動してるけど。」
テルミット
「多分火事でダメージが入ってたんですかね・・・。」
ヘル
「お、おい。爆発しそうな雰囲気じゃないのか?」
キュピル
「や、やべ、逃げろ!」

琶月
「わああああああああやだああああああーーーー!!!やっぱりでるーーーーーー!!!!!!」
ジェスター
「い〜〜〜〜〜た〜〜〜〜〜〜〜い〜〜〜〜〜〜!!琶月押さないで!!!」
ファン
「ヒ、ヒエエェェッ。」


・・・・・・・。


カッ







キュピル
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
ファン
「セーフ・・・。」


キュピル
「いやアウトだろ。」



キュピル
「どうすんだよ!?ジェスターと琶月が死んじまったぞ!!!」

ファン
「だ、大丈夫ですよキュピルサン・・・。ちゃんとワープした後に爆発したみたいですよ・・・。」
ナルビク衛兵隊
「こらぁー!街中で爆発を起こした犯人は貴様かっー!逮捕するー!」

キュピル
「げぇっ!衛兵っ!!」






・・・・・。


・・・・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・。




ルイ
「キュピルさんが警察に捕まりました!」
キュー
「おとーさんが捕まったー!!」
ヘル
「くっ、あの時俺が衛兵をぶっ殺していれば・・・。」
ファン
「更なる混乱を招くおつもりですか。」

輝月
「主が窮地に陥っている。助けにいかぬ訳にはいかんじゃろう。で、どこを襲撃すれば良いのだ?」
ルイ
「えっとですね、ここ襲撃するといいですよ。」
ファン
「ルイさんも止めて下さいお願いします。建設的な提案をしましょうよ。」

キュー
「そうだよ、今日寝る所ぐらいは作らないと。」
ファン
「助けてくださいキュピルさん突っ込み役が足りません!」
ルイ
「オホン・・・。えーっと・・・とりあえず私が事情を伺ってきますね・・・。」
ファン
「オネガイシマス・・・。」



・・・・。


・・・・・・・・・。



==留置所


キュピル
「俺昨日まで平穏な一日を過ごしていたのに・・・たったの1日でこんな・・こんな・・・。」
ルイ
「ま、まぁまぁ・・・。今さっき係りの人とお話してきましたけど保釈金として10万Seed払えば釈放してもらえるそうですよ。」
キュピル
「マジか!10万Seedならすぐ払えるぞ!クエストショップの金庫に15万Seedぐらいあったはずだ、それで払ってくれ。」
ルイ
「分かりました!すぐ出してあげますから待っててくださいね!」
キュピル
「あぁ、それと金庫の鍵は俺の部屋の机の引き出しにしまってある。爆発して燃えちまったから探すの大変かもしれないが見つけ出してくれ・・・。」
ルイ
「大丈夫ですよ。」




・・・・・。



・・・・・・・・・・・・・・・。



ルイ
「かくかくしかじか!」
ファン
「金庫を探しましょう。」
キュー
「あったー!!」(早い
ヘル
「確かに金庫だな。」
キュー
鍵はー?」
ルイ
「キュピルさんのお部屋にある机の引き出しにあるって仰ってましたけど・・・・。」
ファン
「間取り的にこの辺がキュピルさんの部屋だったところですね。探しましょう。」
輝月
「どれ、ワシも手伝ってやろう。」
ヘル
「おい糞月、キュピルさんの私物にベタベタ触るんじゃねぇ。」
輝月
「私物だったものじゃろう。」
ファン
「良いから早く探してください。」

キュー
「でも瓦礫だらけの所で鍵探すのなんて無茶だよー・・・。」
マキシミン
「んっ?なんだなんだ?なんであいつの家がぶっ壊れてるんだ?」
キュー
「あ!!妖怪茶髪うたた寝回避マン!!」
マキシミン
「ククッ、その程度で煽っているつもりか?子供だな。」
ファン
「あぁ、マキシミンさんちょうど良いところに。実は・・・。」

ルイ
「(あー!ファンさんちょっとまってください!相手はマキシミンですよ!?お金にがめついあの人に金庫の鍵探してるなんて言ったら・・・・)」
ファン
「(・・・・見つけても報告しないでネコババしそうですね。適当にごまかしましょう。)」

マキシミン
「実は・・・なんだ?」
ルイ
「家が爆発してしまったんです。」
マキシミン
「見れば分かる。」

ルイ
「そしてキュピルさんが何故か逮捕されてしまい・・・うっ、うっ。」
マキシミン
「ざまぁwwwwww」
ルイ
「(スッ)」←銃を構える
マキシミン
「すいませんでした」(真顔

ファン
「と、とりあえず・・・今後片付けで忙しいのでお相手できないです。」
マキシミン
「ふーん、後で留置所に行ってからかいにいってやるか。」
ファン
「無駄にストレスかけさせないであげてください・・・。」
マキシミン
「んじゃな。」
ヘル
「うおーーーー!キュピルの金庫の鍵どこだー!!みつからねぇ!」
マキシミン
「手伝ってやるぜ!!!」
ルイ
「最低最悪の事態。」

マキシミン
「なんかすげぇ言われようだな!!?」




・・・・。

・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。




数時間後。



キュー
「あーもうだめー!疲れたぁ〜〜!」
ファン
「見つかりませんね・・・・。」
輝月
「爆発で鍵が遠くに吹っ飛んだ可能性はないか?」
ファン
「机の断片部分しか見えないということはありえますね・・・。」
キュー
「もう夕方だし探すのは厳しいよ・・・。」
ルイ
「・・・・・マキシミンさん?本当は見つけて持っているんじゃありませんか?(暗黒微笑」
マキシミン
「見つけてたらもうここにいねぇ。」

ヘル
「んじゃ次の手段しかないよな。この金庫をぶっ壊す!!」
ファン
「仕方がありませんね。では壊しちゃってください。」
ヘル
「まずは俺から行くぞ!ふんっ!!(全力パンチ」


ベコッ

キュー
「凄い!金庫が遠くまで吹っ飛んだよ!!」
ファン
「吹っ飛ばすんじゃなくて壊してください。」

輝月
「ふん、やはりただの筋肉馬鹿じゃな。ここはワシに任せ。居合いで斬ってみせる。・・・・一閃!!」

ズパッ!

キュー
「凄い!!金庫が真っ二つ!!」
輝月
「(ドヤッ)」

ファン
「ええ真っ二つですね。お金と一緒に。」

ヘル
「くそ月てめぇええええええええ!!!」
輝月
「わ、わざとではないっ!!!そもそもお主が自慢(笑)の馬鹿力で上げておれば済んだのだ!!」
ヘル
「んだとぉー!!!」
キュー
「ファンー!!輝月とヘルが殺し合い始めたーーー!!」
ファン
「卒倒しそうです。」


続く



第二話:加速する混乱

キュピルが逮捕されてから三日後・・・・。
お金もろとも叩き切ってしまった輝月はファンと一緒に切れた紙幣を一緒に探し、銀行で新しい紙幣と交換していた・・・。

輝月
「これがキュピルのためだと言うのならば仕方あるまい・・・。本来ならば琶月にやらせるのじゃが・・・。」
ファン
「琶月さんとジェスターさんも心配ですね。」
輝月
「うぬ・・・。まぁ、琶月は意外と生命力はあるほうじゃからすぐには死なんじゃろうて。」
ファン
「・・・・のまず食わずを想定していませんか?」
輝月
「別に?」
ファン
「とにかく早いところジェスターさんと琶月さんを助ける方法を探さないと・・・ですが。その前にまずはこっちですね。」

ファンが前足で古い建物を指す。

ファン
「早い所このお金でキュピルさんを留置場から出してあげましょう。」
輝月
「ワシはここで待っておる。」
ファン
「そうしてください。(変なトラブル起こされても困りますので・・・・)。」


・・・・。

・・・・・・・・・・・。





衛兵
「釈放だ。」
キュピル
「助かった・・・・。」

・・・・。

・・・・・・・・・・。

ファン
「遅くなってすみません、キュピルさん。ようやく釈放金がまとまりまして。」
キュピル
「最終的に出してくれたのなら良いよ・・。」
衛兵
「もう二度とここに戻ってくるんじゃないぞ。」
キュピル
「刑期全うしたわけじゃないんだが。もっと言うと俺本当に無罪。」

輝月
「やはりあの時私があの衛兵を斬り捨てても無罪を主張すべきだったか?」
キュピル
「やめてくれ。」




・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・。




キュピル
「しっかし・・・・。俺の家もクエストショップも見るも無残な姿になってしまったなぁ・・・。」

改めて焼け落ちた建物を見てキュピルは力なく項垂れる。
クエストショップと家があったそこは、もはや建物があったことが辛うじて分かる程度の骨組みしか残されていなかった。
その骨組みの近くでキューが走りまわし、燃え残った木材や燃えなかった貴金属を拾っては端に集めていた。

キュピル
「キュー、何やっているんだ?」
キュー
「あ、おとーさん。んーと、ファンに頼まれて資源を分別してる。」
ファン
「木材は薪に、貴金属は売って財源の足しにでもしようかと。」
キュピル
「余計悲しい気持ちになってきた。」

キュー
「あ、貴重品はこっちにおいてあるよ。」

キューがキュピルの服の袖を引っ張って貴重品を集めていた場所まで案内する。
キューが案内した先にはキュピルの愛剣、モナ怒りの血やジェスターの武器などが置かれていた。

キュピル
「おぉ、俺の剣だ。よかった、こいつは五体満足だな。さすが最強武器。」
ファン
「メギ・・・。」
キュピル
「知らないなぁ。」
キュー
「もうメギですら・・・。」
キュピル
「知らないなぁ。」

ファン
「コホン・・・。とにかく、今後の事についてキュピルさんのご意見を伺おうと思っていました。とりあえずどうしましょうか?」

キュピルが適当な瓦礫の上に座り、考える仕草を取る。
それを見てファンもその場に座り込む。キューだけは落ち着かなさそうにうろうろと周辺を歩き回る。

キュピル
「とにかく・・・衣食住だけはしっかりさせたいな・・・。」
キュー
「留置場に行けば解決だね。」
キュピル
「キュー、行ってみるか?」


キューが真顔で首を全力で横に振る。
長い後ろ髪がキュピルの顔を往復ビンタする。

キュピル
「・・・・・・・・・・。」

ファン
「食については外に出てモンスターを狩れば良いので簡単に解決しますね。」
キュー
「ゼリークリームはもう食べ飽きたからいらないよ。」
ファン
「今は選り好みできる状況ではありません。」

ふとキュピルが何かに気づき辺りを見回す。

キュピル
「そういえばルイとヘルは?」
ファン
「ちょうど食の問題を解決してもらっているところです。」
キュピル
「狩りか。じゃー衣食住の衣と住を考えるか。幸いこの三日間、雨は降らなかったみたいだけど雨風を凌げる環境を作らないとあっという間に体調崩しちまう。」
ファン
「仕事用に用意していたテントもまとめて燃えてしまったのが痛いですね・・・。」
キュピル
「よし、じゃーここの瓦礫を掃除して更地にした後はほったて小屋でも何でもいいから作ろう。」
ファン
「ではここの跡地を綺麗にしましょうか。」
キュー
「魔法でばぁーっと全部持ち上げて片付けられないの?」
ファン
「出来ますよ。」
キュピル
「出来るのか!!?」
ファン
「はい。ただ、僕1人だけでは厳しいのでルイさんが戻られたら力を合わせて外に持ち出しちゃおうと思います。」
キュピル
「いや、ほんと魔法ってすげぇーなぁー・・・。俺も魔法使えたらなぁ・・・。」

キュー
「おとーさんださい。」
キュピル
「傷つくわぁ・・。」



・・・・・。

・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


それから数時間後。
日も暮れだし、徐々に暗くなり始めた頃にルイとヘルは帰ってきた。

ルイ
「ふぅ、ただいま戻りましたー・・・・あ、キュピルさん!!」

ルイが笑顔でキュピルの元に駆け寄り、ほっと胸をなでおろす仕草を取る。

ルイ
「はぁ、よかった・・・。」
ヘル
「キュピルさん、お勤めご苦労様ですっ!」
キュピル
「俺が犯罪犯したかのようなコメントはやめてくれ。」

ファン
「ルイさん、今後の事についてキュピルさんと相談しました。」

キュピルが話していたことをそのままルイに伝える。

ファン
「というわけで、まずはここの瓦礫をまとめて掃除するために魔法で運ぼうと思うのですが明日手伝ってくれませんか?」
ルイ
「はい、勿論ですよ。」
ファン
「キュピルさん、魔法で運ぶと大事なものまで緒に廃棄場に持って行ってしまう可能性があります。なので今のうちに大事な物を探しておいたほうがいいかもしれません。」
キュピル
「俺はこの剣さえあれば大丈夫だよ。」
ファン
「他の皆さんは?」
ルイ
「あぁぁ、えーっと、あの幽霊グッズがないっ・・・魂のヘアピンも!あっ、霊感を上げるネックレスに指輪に・・・。」
キュピル
「ファン、ルイの言ってるあれはまとめて捨てて構わんよ・・・。」
ルイ
「ちょっとギュビルサン!!?」


ルイがキュピルの首根っこを掴み振り回す。

キュピル
「アババババババ。」

ルイ
「はっ、すいませんっ・・。」
キュー
「あ、幽霊刀がないよ。」
キュピル
「ん、それは探したほうがいいかもしれない。」
ルイ
「そうですよ!!!!!幽霊刀を捨てるだなんてとんでもないです!!!!!キュピルさん、明日までに見つけてください。いいですねっ!?」
キュピル
「アッ、ハイッ・・・ミツケマス・・・。」

ヘル
「おーい、飯にしようぜー。」
キュピル
「そうだ、ご飯にしよう。」
ファン
「ではヘルさん、肉を捌いちゃってください。」
ヘル
「任せろ。キュピルさんの前だからな、ちょっと本気出すか。うおらぁっ!」

ヘルが自分の身長以上ある巨大な剣を縦に振り落とす。肉は当然真っ二つになったが勢いよく斬られたせいか肉片の一つが砂浜へと落ち、もう一つが通行人に直撃した。

通行人
「・・・・・・・・・・。」
キュピル
「すいません!!すいません!!!本当すいませんっ!!!!」

ヘル
「避けない奴が悪い。」

キュピル
「頼むから口閉じてくれ。」


肉片とぶつかった不幸な通行人は怒りながらその場を去っていった・・・。

キュー
「あーあ、お肉片方砂だらけになっちゃったよ。」
ルイ
「お水で洗い流せば大丈夫ですよ・・・。」

ルイが魔法を唱えて上空に真水を生み出し、水流を生み出した後に肉へぶつけ綺麗に砂利を洗い落とした。
キュピルが拍手し自慢げな表情を浮かべるルイだが、それを見て輝月が不機嫌そうな顔をする。

輝月
「ふんっ、私の方が役に立てるという事を見せてやろう。ついでにどっかの馬鹿とも違って他人に迷惑をかけずに肉を捌く所も見せてやる。」
ヘル
「あ゙ぁ゙?゙」


輝月が刀を構える。
一呼吸置いた後に目にも留まらぬ斬撃を繰り出し、瞬く間に肉を捌いていく。

キュー
「おぉすごーい!」
輝月
「フフッ。」
ファン
「輝月さん、刀にお肉が沢山くっついてますよ。」

輝月が刃についた肉片を振り払うために横に大振りし振り落とす。
遠くに飛んでいった肉片が近くを通っていた通行人の顔面にいくつも張り付いた。

通行人
「・・・・・・・・・・。」
キュピル
「すいません!!すいません!!!本当すいませんっ!!!!」

輝月
「避けない奴が悪い。」

キュピル
「お前も口閉じてくれ。」


肉片とぶつかった不幸な通行人は怒り狂いながらその場を去っていった・・・。

ファン
「お、お肉は綺麗にスライスされましたから焼いていきましょうか。」
キュピル
「よし、火起こしなら俺に任せろ!!俺が本気出せば木の枝二本で火起こ・・・」

キュピルが言い終わる前にルイが初級魔法、イグニッションを唱えキューが集めた燃え残った廃材に火をつけた。

キュピル
「・・・・・・・・・・・。」
ルイ
「あ、あれ?」
キュピル
「魔法ってずるい!」
ルイ
「ほ、ほらキュピルさん・・・今度また一緒に覚えましょ・・?ね?」
キュー
「え、おとーさん魔法忘れたの?ださい。」
キュピル
「傷つくわああああ」

ヘル
「肉焼くぞぉー。」

その日、一同はルイとヘルが狩って来たモンスターの肉を食し、ファンがありあわせの資材で作った簡易テントで一晩を過ごした。




・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


翌日。

ルイとファンは跡地を綺麗にするために詠唱準備を行っていた。

ルイ
「はあぁっ・・・。」

ルイの足元に魔法陣が浮かび上がり、徐々に輪は大きくなっていく。
ファンも無言ではあるものの足元には魔法陣が広がっており、二人が同じ準備を行っていることが見て取れた。

キュピル
「かっこいいなぁ。」
輝月
「じゃが最後に頼れるのは己の肉体じゃぞ、キュピル。」
ヘル
「肉片飛ばして他人に迷惑かけた奴が何か言ってるぞ。」
輝月
「貴様もだろう、原始人。」
ヘル
「あぁ!?頭きた!!肉片にしてやる!!」
輝月
「今晩の食材が目の前におるようじゃな・・・。そぎ落とすっ!」

ヘルと輝月が武器を取り出し、喧嘩を始めるもキュピルはスルーを決め込む。
もはやキュピルにとってこれは何ら変わらない日常の一つなのだ。

キュー
「ねぇ、今はとめた方がいいんじゃないの?」
キュピル
「程ほどのところでとめるよ。」
キュー
「いや、そうじゃないの。」

キューが続きを言おうとした瞬間、強烈な地響きで会話が途切れた。ファンとルイが瓦礫を持ち上げたのだ。

キュピル
「おぉ、すげぇー!」

砂利一つこぼさず持ち上げるその様はまるで無重力空間にいるかのような光景だ。
ルイとファンは周りの音が聞こえなくなるほど強い集中力で魔力を維持しつつも、移動を開始した。
瓦礫がキュピルとキューの頭上を通る。瓦礫が太陽の陽射しを遮る。

キュー
「こ、こわいー!」
キュピル
「ハハハ、大丈夫だって落ちてこない。」

キュピルが笑いながら上空を見上げる。その瞬間。

ヘル
「うらぁっ!!」
輝月
「甘いっ。」
ルイ
「あっ!!!」

ヘルの攻撃を避けた輝月がルイとぶつかった。

ファン
「アアアアアア!!!!」

ルイの詠唱が途絶え、一人では支えきれなくなった瓦礫が一斉にキュピルの頭上に落下した。」

キュピル
「ギエエエエエエエェェッッ!!」

ルイ
「ワアアアッッーーー!!」


慌ててルイとファンがもう一度魔法を詠唱し瓦礫を浮かす。
そこにはボロボロになったキュピルの姿があった。

キュピル
「・・・・・・・・・・・・・。」

ヘル
「てめぇのせいでキュピルさんが怪我したじゃねーか!!死ね!!」
輝月
「貴様が攻撃を繰り出すのが悪い!!死ね!!」
衛兵
「こらぁー!!街中で危険行為を行ったのは貴様かー!!逮捕するっ!!」
キュピル
「げぇっ!!!衛兵!!!いや、まて!!何で俺が逮捕されるんだあああああ!!!!うわああああああ!!!!!」


キュー
「おとーさんが逮捕されたああーー!!!」
ファン
「モウダメダ。」



続く



第三話 『迷子の迷子の(前編)』

キュピルが再び逮捕されてから三日後。

輝月とヘルはアクシピター及びシャドウ&アッシュから依頼を引き受け、責任持って完遂していた。
ヘルはシャドウ&アッシュから、輝月はアクシピターから。決して2人は互いを助け合おうとはしない。
当然協力し合ったほうが効率も良いし、なにより1人では受注することのできない高額報酬が約束される依頼を引き受けることも出来る。
それでも2人は絶対にチームを組もうとしないし、ファンやルイも2人を組ませるようにはしない。組ませたほうが不利益が大きいことを重々承知しているからだ。

そしてこの日、ちょうど2人が同じタイミングでキュピルのクエストショップがあった所へ戻ってきたところだった。
崩れた建物の傍で座っていたファンが二人に気づき立ち上がった。

ファン
「今日もお疲れ様でした。ところでお2人ともいつからあのギルドのメンバーに?」
ヘル
「今だけだ。キュピルさんところのクエストショップが復活するまでの間、どうしても金は必要だからな・・・。それにあんなギルドで依頼を引き受けるよりキュピルさんが請け負った依頼の方がピンハネがない分手取りも良い。」
輝月
「不服じゃが同意見じゃ。」

2人ともギルドで稼いだお金をファンの前に放り投げた。袋から小銭が何枚か零れ落ちる。
お金を投げたのを見てファンが一度だけ溜息をつくが、前足で丁寧にかき集めていく。

ヘル
「しっかし何故こんなに金が必要なんだ?」
ファン
「それは貴方達のせいでまたキュピルさんが牢屋に入ってしまったからですよ。お忘れですか?」

ヘル
「反省しろ糞月!」
輝月
「それは貴様じゃ愚か者が。」
ファン
「お2人ともです。」


ファンが丁寧にお金を数えていく。
キュピルを再び釈放させるのに必要な金額が揃った事を確認する。

ファン
「ではキュピルさんを釈放させるために留置場に行ってきます。」
ヘル
「俺も行こう」
輝月
「ワシもだ。」
ファン
「お願いですからここで大人しくしててください。キューさん。」

キュー
「おーおー!私と遊べ〜!」

突如物陰からキューが飛び出しヘルに飛びついた。
ヘルが避け、キューも避け、地面にそのまま激突した。

キュー
「ぐぇっ。酷い酷い!」
ヘル
「しかしなぁ。」

キューがわーわー騒いでいるすきにファンは留置場へと向かった。




・・・・。

・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。




衛兵
「反省しているか!」
キュピル
「反省しています!」
衛兵
「声が小さい!もっと大きな声で言わなければ飯は抜きだ!」
キュピル
「反省していまぁーーす!!」
衛兵
「しんじられぇーん!・・・ん?おっと、釈放のようだ。」
キュピル
「もうここには戻りたくない・・・・。」



・・・・。


・・・・・・・・・・。


ファン
「遅くなってすみません、キュピルさん。ようやく釈放金がまとまりまして。」
キュピル
「つい三日前にも同じような台詞を聞いたような気がするんだよな・・・。」

ファン
「2人には私の方からよく言っておきましたから、もう大丈夫だとは思いますよ。」
キュピル
「言って聞くような2人じゃないが、信じるよ。」

ファン
「混迷極まった状況だからこそ統率者が必要です、今はキュピルさんがいないととてもじゃないですがマトマリマセン。さっそく戻って次の指示をオネガイシマス。」
キュピル
「ジェスターと琶月も早く助けてあげないといけないしな・・・。戻ろう。」
衛兵
「もう戻ってくるんじゃないぞ。」
キュピル
「だから俺は無実。本当に。釈放金カエシテ。」




・・・・。

・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



キュピルが再びクエストショップがあった場所へ戻る。
瓦礫は綺麗さっぱり片付けられ、アスファルトもない、むき出しになった土だけがあった。

キュピル
「おぉ、華麗さっぱり片付けたなぁ。」
ファン
「資材と人員さえ用意できれば新しくクエストショップを建築できる状態にしておきました。」
キュピル
「早くクエストショップと家を元に戻さないと・・。きちんとした住居がなければ装備も整えらないし何よりもファンに装置を作ってもらうこともできない。」
ファン
「正直な所あの特殊ワープ装置機をまた作れるかどうかは分からない所ですが・・・少なくとも交信するための機械は作れると思います。勿論そのためには安定したエネルギー供給が出来ること、ひいては拠点があることですね。」
キュピル
「まずは家を建てるための資金を集めよう。家がなければ全てが始らない。それに・・・。」

キュピルが横目で後ろの様子を伺う。

ヘル
「クソがぁー!」
輝月
「ふん、当たらぬ。」

キュピル
「一刻も早くヘルと輝月を違う空間に押しやられる環境を作らねば・・・。」

ルイ
「あ、キュピルさん戻られたんですね。あのあの、新しい家を建てる時はぜひ私に設計を。私が思うにですね前の家に足りなかったのは共有です、今度は私とキュピルさんは同じ部屋にぺらぺらぺらぺら」


ヘルと輝月が騒音を鳴らし、その横でルイが怒涛のように新しい家について理想を述べる。
キュピルはただ心を無にして次になすべきことを考えるのであった。



・・・・。

・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





ファンが作った簡易テントで一夜を明ける。
キュピルがやつれた顔をしながらテントから出てきた。

キュピル
「簡易所のベッドの方が寝心地がいいなんて皮肉にも程があるな・・・。」
キュー
「いい歳の娘にこんな所で寝させて罪悪感感じない?」
キュピル
「お前も俺の娘ならこのぐらいの生活には慣れなさい。」
キュー
「おーぼーなお父さんだ!」

キューがキュピルの背中に飛びつきガシガシと後頭部を噛むがキュピルは一向に気にしない。

ファン
「そろそろ良い加減地べたに寝るのは辞めたい所ですね。」
ルイ
「確かにそう思います。朝起きると必ず体が汚れてますから、毎朝銭湯とクリーニング屋さんに寄ってしまいます。」
キュピル
「行くなとは言えないから辛いところだな。」
ヘル
「あぁ、俺も朝の疲れを癒すために毎朝ブルーホエールでキングミート食ってしまう。」
キュピル
「それは我慢できるんじゃないのか?」

輝月
「これだから野蛮人は・・・。心頭滅却。空腹も疲れも瞑想で全て消せる。瞑想のためのお香を買ってはおるがな。」
キュピル
「お香代で良い朝ごはん食べられるんじゃ・・。」


キュピルが一度トントンと軽くジャンプして気合を入れなおす。

キュピル
「とにかくっ。掘っ立て小屋でも何でもいい。とにかく柔らかいベッドの上に寝れるために早急に資金を集めよう!」

キュピルがそういうとヘルが手を上げながらキュピルに近づいた。

ヘル
「それならシャドウ&アッシュに良い依頼があった。2人で組まなければ受注できない依頼だが俺とキュピルさんなら100%成功できる!」
キュピル
「お、それじゃ俺はヘルと一緒に・・・。」
輝月
「待たれ。」

輝月も手を上げながらキュピルに近づく。

輝月
「アクシピターにも良い依頼があった。2人で組まなければ受注できぬ依頼じゃが、私とお主であれば確実に遂行できるものじゃ。報酬金はコチラの方が大きいぞ。」
ヘル
「あ?てめぇ!最後の台詞は適当に言っただろ!」
輝月
「うつけものが。嘘をついてどうする。」

今ここでまた喧嘩されたらたまったもんじゃない。すかさずキュピルが割って入った。

キュピル
「まぁまぁまぁ・・・。ここはこうしよう。ヘルの元にはファンがついてってくれ。」
ヘル
「なにっ。」
輝月
「ふっ、ならお主は・・。」
キュピル
「輝月の元にはキューが行ってくれ。」
輝月
「なんじゃと。」

ファンとキューが立ち上がりヘル、輝月の傍に立つ。

ファン
「よろしくお願いします。」
ヘル
「・・・・・・。」
キュー
「にひひ、幽霊刀は持っていくから確実に遂行できるね!」
輝月
「・・・・・・・。」
キュピル
「さぁ、行った行った。皆宜しく頼んだぞ。」

キュピルが手を叩くと輝月とヘルは渋々ギルドへと向かい、ファンとキューはその後をゆっくりとついていった。
その場に残ったのはキュピルとルイだけになった。

ルイ
「私達はどうしましょうか?」
キュピル
「俺達も何か依頼を引き受けてこよう。アクシピターにもシャドウ&アッシュにも所属していないから寄る場所はひとつしかないな。」



・・・・。

・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・。



リカス
「おぉ、キュピルじゃねーか。久しぶりだな。」
キュピル
「やぁリカス。」

リカスとキュピルが握手し互いの背中を叩く。
リカスとキュピルは旧知の仲であり、クエストショップ経営のノウハウを教えたのはリカスだ。
ルイはキュピル程リカスと面識があるわけではないが、キュピルと度々訪れているので顔を知られていない訳ではない。
ルイもリカスに軽くお辞儀をする。

キュピル
「元気そうで何よりだ。」
リカス
「大丈夫か?噂によるとお前の家とクエストショップ、壊れたんだってな。」
キュピル
「あぁ、不慮の事故でちょっと・・・。」
リカス
「お前がわざわざ剣を持ってこっちに来るってことは依頼を引き受けに来たか。」
キュピル
「そんなところだ。高賃金な依頼は何かないか?」
リカス
「そうだな・・・。」

リカスがカウンターの傍にある棚からファイルケースを取り出す。

リカス
「ん・・・・。今の所コイツが一番高賃金だが・・・お前の性に合うかどうか・・・。」
キュピル
「見せてくれ。」

リカスから依頼書を手渡される。
ルイと一緒にその依頼書に目を落すが・・・。

キュピル
「『ペットを探しています』・・・?・・・おいおい、迷子のペット探しだなんて一番報酬金低い奴じゃないか。」
リカス
「ところがな、最近ナルビクに富豪が現れてな。そこの富豪が大事にしていたペットがあるとき居なくなってしまったらしいんだ。
相当可愛がっていたみたいで・・・見ての通り高額な報酬金を載せてきた。」
キュピル
「・・・・500,000Seed・・・?50万!?」

50万Seedもあれば二ヶ月は食費に困らなくなる。確かにリカスの言う通りこれは高額な依頼だ。

リカス
「ただペット探しってのは大体見つからずに終えてしまうことも多い。徒労に終わってしまえば当然報酬金は0。さて、どうする?」
キュピル
「任せろ、絶対に見つけてやる。」
ルイ
「それで、どんなペットを探せばよろしいのでしょうか?」
キュピル
「えーっと?・・・白い服を着ていて・・・白い髪で・・・黒い靴を履いた・・・ジェスター種・・?


(続く)



第四話 『迷子の迷子の(中篇)』

昼時。
海岸沿いにある安いレストランでキュピルとルイは食事を取りながら依頼書を眺めていた。
店内は海賊や汚い男達で賑わっていて集中できたような場所ではないがお金のない二人にとってここを選択せざるを得なかった。

ルイ
「ここうるさいですね・・・。」
キュピル
「しょうがないよな・・・。早く依頼を一杯こなして元の生活に戻そう。そのためにもまずはこの依頼だ。」

キュピルがリカスから貰った色んな書類を机の上に広げる。
広げた瞬間、近くを通りかかった男がよろめき、その表紙にビールがこぼれて書類をぬらす。


「おっと、アイムソーリー、ヒゲソーリー。ガハハハハハ。」
ルイ
「・・・・・・・・・。」

ルイが目を瞑りながら拳を握り締めている。明確に怒りを我慢しているのが分かる。
とうのキュピルは

キュピル
「おいおいおい、仕事の書類がぬれちまったぞ。飲み物二つ奢れ。」

「しょうがねーなー。」
キュピル
「気前がいいとかやるじゃん・・・。」

ルイにとってよくわからない流れで場を収めていった。



・・・・・・。



改めてぬれた書類に2人が目を通す。
否応にもジェスター種という言葉に2人は反応してしまう。

ルイ
「ここに書いてあるジェスターさん・・・じゃなくてジェスター種。
服装の色とか髪色とか私達が良く知っているジェスターさんにそっくりですね・・・・。」
キュピル
「というよりジェスターそのまんまのカラーリングなんだよな。まぁ、ペット用の衣装ってあんまりバリエーションないからよくある事なのかもしれないが・・・。ほら、同じ見た目に違う色の服が基本だし・・・。」
ルイ
「ペット用の洋服店でも開いたら繁盛しそうですね。」
キュピル
「そこまでペットに愛着わいている人が一杯いればいいんだがな。まぁ、うちのジェスターだったらとりあえず「三着買って。」とかは良いそうだな。」
ルイ
「でも全部白い服なんですよね?」
キュピル
「そう。俺には全然違いが分からん。・・・しかし、ジェスターは今頃大丈夫だろうか・・・。」

キュピルが片肘つきながら上を見上げる。考え事するときに良くとるポーズの一つ。

ルイ
「大丈夫ですよ。便りがないのはよい知らせ・・・・。」
キュピル
「便りを出したくても出せないの間違いじゃ・・・。」
ルイ
「ま、まぁまぁ・・・。ところで琶月さんは心配されないんですね?」
キュピル
「琶月は煮ても焼いても死なないような子だし平気だろう。」

                                        「凄く失礼な事言われてるきがする!」

                                        「いつものことでしょ」

キュピルがビールをこぼしたオッサンに奢ってもらった飲み物を一気飲みする。

キュピル
「あぁ、うまい。」
ルイ
「この依頼、どうします?闇雲に探しても見つからないのは当然ですし・・・。」

ナルビクは広い町だ。
細部を全て回ろうとすると1日では到底回りきれない。
大陸にとって沿岸部にある町は重要な交易拠点となり、輸送に旅行の玄関口と街としての需要は高く人口密度も過密気味。
それゆえにしらみつぶしに探しても見つからない可能性の方が高い。

ルイ
「どこかあたりがつけばいいんですけど・・・・。」
キュピル
「あたりをつけるのは難しいが、おびき寄せる事は出来るかもしれない。」
ルイ
「え?そうなんですか?」
キュピル
「ああ、これはペット界でもあまり知られて居ないんだがジェスター種は特定のお香の匂いが好き見たいでその匂いに寄ってくる傾向があるんだ。」
ルイ
「ええ!?そんなの初めて知りました!」
キュピル
「ジェスター本人も無意識だったからな。ちなみにそれがこれ。」

そういうとキュピルはポケットからオレンジ色の液体の入った瓶を取り出した。

ルイ
「何ですか、これ。」
キュピル
「ナルビクの雑貨店に売ってあるロシュ5号P。」
ルイ
「うぇ・・・。」

何か特別な品を期待していたルイだったが、よりによって自分が苦手とするものを出されて敬遠する。
ナルビクには「ロシュのよろず屋」と言われる雑貨店がある。
大きな亀の上に座り続けているちょっと小太り気味の変人、ロシュという男が店を経営している。
そのロシュがよくわからない材料を混ぜ合わせて作ったオリジナルポーションがあり、それがロシュ5号Pである。
確かに傷は癒えるし価格も正規品と比べれば若干安いので一部で評判なのだが後味の悪さ、時々やけに回復効果が低く感じる粗悪製、そしてなによりも臭いといわゆる「いわくつき」にしか見えない商品。
お金のないキュピルはよくこのポーションを多様している。

ルイ
「まさかこの匂いがジェスター種が好きな匂いだと言うのですか・・・?」
キュピル
「まさか。ジェスターも飛んで逃げる。」
ルイ
「では何のためにこれを?」
キュピル
「こいつをある物と混ぜるんだ。」

キュピルがニヤニヤしながら未開封のイチゴシロップをこれまたポケットから取り出す。

ルイ
「キュピルさんのポケットって何でも入ってるんですね。」
キュピル
「まさか・・・。この二つだけだよ。」

封を開けて半分ほどロシュ5号Pの中へ注ぎ込んだ。
見た目は茶色のような形になりもはや毒のようにも見える着色。ルイの顔がみるみるうちに不快な表情へと変えていく。
が、ルイがあることに気づく。

ルイ
「あれ、あのロシュ五号P特有の匂いが消えてます。」
キュピル
「そうそこなんだ。これが凄く不思議な所でこいつにイチゴシロップを垂らすとあの臭いが消えてなくなるんだ。
俺達には無臭に感じるんだがジェスター種には何かの匂いを感じ取っているらしい。
大昔、旅先で妙にまずいロシュ五号Pにぶちあたってダメ元で甘いイチゴシロップを入れてみたんだ。そしたらジェスターが
『なんかよくわかんないけどその匂いかいでたい』って言い出して、しかも滅多に人前に現さない野性のジェスターもちらほらやってきたんだ。」
ルイ
「凄い不思議なこともあるんですね・・・・。ますますロシュ五号Pを飲みたくありません。」
キュピル
「なんで・・・。ほら、い、一応傷癒えるから・・・・。」

キュピルが震え声でフォローをいれ、そしてロシュ五号とイチゴシロップを混ぜ合わせたものを半分だけ霧吹きスプレーの中に注ぎこんだ。

ルイ
「その霧吹きスプレー、使い終わったら処分してくださいよ。」
キュピル
「するってするって。」
ルイ
「それをナルビク中に振りかけるんですか?」
キュピル
「テロ行為じゃねーか・・・。全域に振りまいたら意味がなくなる。この残った半分の混ぜ合わせたものをナルビクのある場所においておく。
次にその周辺に霧吹きスプレーを吹きかけまくり、最後に大通りまでスプレーを吹きかけながら歩いていく。
五感が鋭いジェスター種ならこの僅かな匂いを嗅ぎ取って最終的にこの小瓶の所まで来てくれる・・・・という計算。正直ダメ元だけど。」
ルイ
「結局ナルビク中に振りかけてるじゃないですか。」
キュピル
「うるさい。」

ルイが無言でキュピルの足を笑顔で踏む。

キュピル
「あだだだだ!すいませんでした・・・・・。」
ルイ
「分かればよろしい。」
キュピル
「ルイってこんなキャラだったか・・・?」

キュピルがぼそぼそ呟きながら立ち上がり会計を済ませる。

キュピル
「さっそく実行に移そうか。」
ルイ
「そうですね。」
酔っ払った男
「ういぃ〜!昼間から酔っ払ったぁ〜〜。あぁ〜っと。」

酔っ払った男がキュピルとルイの間に割ってはいるがその先でバランスを崩し、両手でルイの胸を鷲づかみにした。

酔っ払った男
「フヒィーヒヒ。サーs・・・。」

次の瞬間、ルイが酔っ払った男を魔法を使って全力で投げ飛ばし壁に叩き付け、レストラン内で大いに盛り上がったのは言うまでもなかった。

ルイ
「さ、さいてーです!」
キュピル
「(ルイ怒らせるとこえぇー・・・・)」


続く


第五話 迷子の迷子の

その夜、キュピルとルイは霧吹きスプレーを手に持ってナルビク中を歩き回っていた。
人目を気にしながらジェスターが好き好む匂いの元をキュピルがあちこちに吹きかけている。

ルイ
「何で夜なんですか?」
キュピル
「公然とこんなことできないって・・・。変な目で見られる。」
ルイ
「あら、まだ変な人じゃないって思われていたのです?」
キュピル
「それどういう意味?」

ルイ
「ふふ、冗談ですよ。」
キュピル
「本当に冗談なのか分からない・・・。客観的に見れば俺の家だけ爆発したり炎上したり粉々になったり・・・。うぐぐぐ。」

ルイ
「まぁまぁ。」

ルイがキュピルの肩を揉む。
キュピルが一度大きく溜息をついてから再び霧吹きスプレーをあちこちにかける。

霧吹きスプレーはただ適当に吹きかけているわけではなく、原液に近づくに連れて徐々に匂いが濃くなってくるように調整しながら吹き付けている。
裏通りの人目につかないところに原液を置き、そこから何本にも枝分かれしている細い道を網羅するようにあちこちにスプレーを吹きかけていく。
これだけでも結構な時間がかかるためそれなりの労力がいる。

ルイ
「これですぐ探しているジェスター種が出てきたら良いですね。」
キュピル
「あっさりすぐ見つかる・・・・なんてことも無いとは言えない。それも期待しているが、まぁ寝ているだろうし本番は明日の昼間だな。
今日は手っ取り早く吹きかけて終わりにしよう。ほら、ルイ。ここに霧吹きスプレーもう一本あるからあっちに向かって吹きかけに行ってくれないか?」
ルイ
「えー。」
キュピル
「えーじゃない。」
ルイ
「ふふ、冗談ですよ。」

ルイが意地悪そうな表情でキュピルから霧吹きスプレーを受け取る。

キュピル
「じゃぁ、この地図に書いたルートの通りのお願い。各自終わり次第家に戻る形にしよう。」
ルイ
「はい。ではまたご自宅で。」

そういうとルイはあちこちにスプレーを吹きかけながら暗い路地を歩いていった。

酔っ払ったおじさん
「ういぃぃ〜。お、ネエチャン、こんな所を1人で歩いていると襲われちまうぞぉ〜〜」

酔っ払ったおじさんがルイに抱きつこうとするもルイが銃器を取り出し威嚇射撃すると酔っ払ったおじさんは裸足で逃げていった。

キュピル
「(1人で歩かせても全く心配がいらないっていいな)」




・・・・・。

・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





翌朝。

キュピルとルイはさっそくジェスター種が好み原液の傍で張り込みをしていた。
効果覿面だったようで、早くも数匹のジェスター種が原液の傍でうろうろしていた。

青い髪のジェスター
「これだ。」
黄色い髪のジェスター
「くんくん。」
赤髪のジェスター
「ぺろぺろ。」
キュピル
「あーこらこら!飲むなー!」

キュピルが飛び出すと三匹のジェスターは「わー」っと叫びながら蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

キュピル
「飲まれるとは思ってなかった。補充しないと。」
ルイ
「物好きなジェスター種もいるんですね。」
キュピル
「でも効果はしっかり現れているみたいで安心した。このまま張り込もう。」

近くの廃材に隠れること数分。再び数匹のジェスター種が表れた。

黒い服を着たジェスター
「なにこれ。」
緑色の服を着たジェスター
「ごくごく。」
キュピル
「だあーー!飲むなー!」
ジェスター種
「わぁあ〜〜!」

キュピルがぶつぶつ文句を言いながらまた原液を補充する。その後ろでルイが何故かくすくすと笑っている。

ルイ
「これ、そんなに美味しいんですかね?」
キュピル
「ためしに飲んでみる?」
ルイ
「うっ・・・・でもちょっとだけ・・・。」

ルイがちびっと液体を口に含む。が、すぐさまキュピルに向かって噴出した。

キュピル
「うわ、きたね!」
ルイ
「汚くないです!」
キュピル
「(何故か怒られた・・・・・。)」


・・・・そんな事を繰り返すこと数十分。

ついに探していたジェスター種がキュピル達の視界に飛び込んだ。

白い髪のジェスター種
「んっ?」
ルイ
「あっ、みてください。キュピルさん。」

ルイがキュピルの袖を引っ張る。
キュピルが振り返り、ルイが指差した先を見る。そこには白い髪で白い服を着た馴染み深いジェスターが立っていた。

キュピル
「ジェスター!・・・っと、違う違う。俺達の知ってるジェスターじゃない。微妙に顔のラインが違う。」
ルイ
「わ、さすがジェスターマニア・・・・。」
キュピル
「誰がマニアだ。」

目的のジェスター種が目を瞑って髪をゆさゆさし始める。
しばらくして何かに気づいたらしく、くるりと背を向ける。

キュピル
「まずい、逃げる。追いかけるぞ!」
ルイ
「え?あ、はい!」

キュピルとルイが飛び出した瞬間、集まっていたほかのジェスター種が驚いていっせいに逃げ出す。
当然探していた白い髪のジェスターも逃走を始める。

キュピル
「ジェスター種は危ない気配を感じ取る達人なんだ。俺達が張り込みしていることにあの白いジェスターは気づいたんだ。」
ルイ
「さすが見つからないジェスターだけはありますね・・・。でも、私からはそう簡単には逃げられませんよ。」

ルイの目がギラリと光る。
腰から2丁の銃を取り出すと白い髪のジェスター種に銃口を向けた。

キュピル
「撃つ気か!?」
ルイ
「安心してください!」

銃の引き金を引くと銃口からは鉛の弾丸ではなく、白い魔法弾のようなものが発射された。
数十メートル飛んだところで白い魔法弾のようなものは蜘蛛の巣状に広がり網となった。
白い髪のジェスターを覆うとする。

ルイ
「やりました!」
キュピル
「フラグ。」

今まさにジェスター種が網にかかろうとした瞬間、ジェスター種が笛を吹く。
笛から魔力が解き放たれ強い風が吹いた。ルイが放った網は風に吹き飛ばされ、逆にルイを絡めとった。

ルイ
「わっ!」

まるで靴紐を踏まれたかのようにバランスを崩し、前のめりに転んだ。
だがキュピルは気にせず白いジェスターを追いかけ続けた。

ルイ
「うー、『大丈夫か!?』の一言ぐらいくれてもいいじゃないですかー!」

ルイの抗議の声が虚しく響いた。

水色の髪のジェスター
「大丈夫?」
ルイ
「あ、はい・・・・。」



・・・・。

・・・・・・・・・・。



キュピル
「くそ、逃げ足速いな。」

一度逃走モードに入ったジェスターはそう簡単には追いつけない。
人間と違い、飛ぶことの出来るジェスター種は障害物を物ともしない。
廃材や空になった瓶、排気口や何かの機械が積み重なっている裏路地は人間が追いかけるには非常に厳しい道だ。
だがキュピルも数々の危機から走って逃げてきたため、この程度の障害物は楽々飛び越せる。

白い髪のジェスター
「こっちこないで〜〜。」
キュピル
「飼い主が君を探しているんだ。戻っておいで!」
白い髪のジェスター
「嫌〜〜〜。」
キュピル
「俺のジェスターにそっくり。くそなまいきなっ。」←口が悪い

白い髪のジェスターがT字路を右に曲がる。
キュピルも跡を追い右に曲がるがそこに白い髪のジェスターの姿は無かった。だがこのトリックをキュピルはすぐに見破る。

キュピル
「上か!」

上を見上げると白い髪のジェスターがパタパタと飛んで脱出を図っていた。

白い髪のジェスター
「あ!ぱんつみた!」
キュピル
「ジェスターのぱんつがなんだ。」

キュピルも壁の溝や排気口に手を伸ばし、足をかけニンジャのような身のこなしで登っていく。

白い髪のジェスター
「絶対に捕まらないよーだ。」

白い髪のジェスターが排気口の上に置かれていた廃材を蹴飛ばした。
長いベニヤ板や尖った藻屑がキュピルを襲う。

キュピル
「躾がなってないな。」

腰に結んでいたモナ怒りの血を抜刀し素早く振り回す。
ベニヤ板は真っ二つに割れ、細かな藻屑も先端を切り落とされ当たっても痛くないようにする。

白い髪のジェスター
「え、すご。」
キュピル
「いまだ!」

白い髪のジェスターが驚いて速度を緩めた瞬間、キュピルが力強くジャンプする。
急接近してきたキュピルに反応することが出来ず、そのまま白い髪のジェスターはキュピルに抱きつかれた。

白い髪のジェスター
「ぎゃー!変態変態!」
キュピル
「うるせぇお前は俺の飯の種になるんだあああああ。」

傍から聞けば明らかな問題発言。
そのまま白い髪のジェスターはキュピルと一緒に地面に落ちていき、着地した跡はすぐさま網の中に押し込まれ捕獲する。
白い髪のジェスターがギャーギャー騒ぐがキュピルは一切気にしない。ある意味扱いに慣れている。

キュピル
「ふぅ、これで依頼完了だな。」

網を担いでリカスのクエストショップまで戻っていく。




・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



リカス
「やるな、捕まえたか!」
キュピル
「おう。」

キュピルがリカスに捕まえたジェスターを見せる。
きっちり依頼書の特徴を捉えたジェスターだった。

リカス
「ちょっとまってな。今飼い主を呼ぶ。」

リカスが球体の石を二回突ついた後に依頼主の名を口にした。
しばらくすると球体の石に依頼主の姿が映し出された。

リカス
「俺だ、リカスだ。依頼したジェスターを捕まえた。」
飼い主
「あらやだ、今すぐ行きますわっ。」
キュピル
「(女の人?)」

待つこと数分、ドシンドシンと大きな音を立てながら飼い主こと依頼主がやってきた。

飼い主
「アッハァーン!!愛しいジェスターちぁーん!寂しかったわぁー!!」

胸が大きいがやたら筋肉質な女性が白い髪のジェスターを抱きしめる。

白い髪のジェスター
「ギャー!}
飼い主
「チュッチュ!!」
キュピル
「(オエッ、よくみたらこのオバハンっぽい人・・・男じゃねーか!オカマかよ!!!髭生えてるし!)」

どうりでジェスターが逃げるわけだ・・・・。

リカス
「オホン・・・まぁキュピル。後の事は俺に任せてくれ。これが報酬だ。」

キュピルはリカスから50万Seed受け取る。これは莫大なお金だ。
ガッツポーズをとり、喜びながら契約満了のサインを記入する。

キュピル
「ありがとうリカス!また良い依頼が入ってきたら教えてくれよな!」
リカス
「ああ、またな。」
飼い主
「ジェスターちゃぁーーん!!」
白い髪のジェスター
「やーーめーーーてーーーーー!!」
キュピル
「(オエッー。)」




・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。




家(のあった場所)に戻ると、拗ねたルイが座っていた。

ルイ
「あ、キュピルさぁ〜ん?」
キュピル
「ま、まぁまぁ・・・・。あそこで立ち止まっていたら捕まえられなかったわけだし・・・・。」
ルイ
「ムスリ。」
キュピル
「(うぅ・・・こうなるとルイはめんどくさいんだよなぁ・・・・)」

キュピルがキョロキョロと辺りを見回し誰もいない事を確認する。

キュピル
「ル、ルイルイ。」
ルイ
「・・・はい?」

ルイが振り向いた瞬間、ほっぺたにキスをする。
すぐにキュピルが恥ずかしさのあまりに走って逃げようとするが、ルイが抱きついて離さない。

キュピル
「ンガーーー。」
ルイ
「何がンガーですか!!」

ルイがゴツンと軽くキュピルの頭に頭突きする。

ルイ
「オホン・・・、今度は・・・ここにしてくださいね?」

ルイが指を唇にあてる。思わず照れくさくなって顔を背けるキュピル。
が、次の瞬間大事なことを思い出す。

キュピル
「あ、しまった。原液を置きっぱなしじゃないか!」
ルイ
「あ・・・・どうします?」
キュピル
「あのまま放置してたら大量のジェスターが集まってしまう。すぐに回収してくる!」
ルイ
「い、一応私も行ってきます。」

お金をファンの荷物袋に放り込み慌てて原液を置いていた裏路地へと走っていく。

ファン
「(おや?今のはキュピルさんとルイさん?ちょっと後をついていきましょうかね。)」





・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・。


大量のジェスター種
「わあああーーーーーー。」
キュピル
「うおぉっ!!?」

何十匹ものジェスター種が群がるようにして原液に集まってきた。
殆どのジェスター種は他人に飼われているもので、大量のジェスター種に紛れて飼い主と思われし人もいた。

バンダナを結んだ男
「うわぁ!なんだここ!?おーい、キリー!戻ってこーい!」
キリーと思わしきジェスター種
「くんくんくん。」

飼い主の呼びかけに応えず、ほとんどのジェスター種は原液の近くで匂いを嗅いだり体をこすり付けていたりした。

キュピル
「予想外なことになってしまった・・・・。」
メガネをかけた男性
「貴様カー!!このわけの分からん原液を置いた犯人はー!!」
キュピル
「えっ!?あ、いやー。まあぁ・・・アハハ・・・。」
ローブを着た女性
「貴方、お昼頃にジェスターを網で捕獲していませんでしたか!?」
メガネをかけた男性
「誘拐犯か!!」
キュピル
「いやいやいや違う違う!それはいr・・・」
オレンジ色の髪のジェスター
「私みたーー。あの人、白い髪のジェスターのぱんつがなんだ〜って言ってた。」
マッチョな男
「てめぇロリコンか!!性犯罪者だ!!」
キュピル
「誤解だ!!!」
衛兵
「ここに幼女誘拐犯がいると聞いた!!貴様かーーー!!!」

キュピル
「げぇぇ!!衛兵!!!待て!!真実はちゃんと・・・ウワアアアアア!!」

ルイ
「あーーー!!キュピルさーーーん!!!」
ファン
「モウダメダ」
ルイ
「あ、ファンさんだ。」

続く



第六話 ルイvs輝月(前編)

ルイ
「はぁ・・・。」
輝月
「ぬぅ・・・。」

キュピルが逮捕されてから三日。今度は誘拐の疑いがかかっているせいで保釈金が高く、資金が集まらないせいで中々釈放に至らない。
そのことについてルイと輝月は溜息をついているのだと周りは思っていた。

ファン
「大丈夫ですよルイさん。もう二日三日でお金の目処はたちます。」
ルイ
「あぁファンさん・・・そのことじゃないんです・・・。」
ファン
「アレ。」


キュー
「おーおー、輝月に心配されておとーさんも幸せ者だな〜。大丈夫だよー、お金はすぐに貯まるってー。」
輝月
「そのことではない。」
キュー
「え?」

ファン
「では聞きますが、最近の溜息の原因はなんですか?僕でよければ聞きますよ。」
ルイ
「まぁファンさんにならお話できますね・・・・・実は・・・。」

キュー
「んー、じゃーその溜息は何?アタシでよければ相談乗るよ!」
輝月
「・・・こんな話。本来ならば恥ずかしくて言えぬのじゃがワシも本気じゃからな。この際奴の娘であるお主に聞いてみるか・・・実はな・・・。」

ファン&キュー
「え?(ルイ|輝月)が気に入らない?」





・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。




==留置所

ヘル
「ふぅ、キュピルさん。今度は俺が救い出しますぜ。」

ヘルが小銭の詰まった袋を沢山もって留置所へと入っていく。
いつも肌身離さず身につけていた巨剣はファンに没収されてしまい、似つくわない格好をしていた。


・・・・・。



衛兵
「『私は小さい子が大好きな犯罪者です!生きる資格はありません!!』だ!さぁ大声で叫べ!!」
キュピル
「言いたくねえええええええ!!!!!!」
衛兵
「それを言うまで飯も水も抜きだ!!」
キュピル
『私は小さい子が大好きな犯罪者です!生きる資格はありません!!」
衛兵
「自白したぞ!!殺せ!!」
キュピル
「なんで!?」

衛兵
「むっ・・・釈放のようだ。」
キュピル
「俺逆に訴えたら勝てるよねこれ・・・。」




・・・。

・・・・・・・・・・。


ヘル
「キュピルさん!遅くなってすいません!ようやく釈放金がまとまりました。」
キュピル
「不思議なことに俺この一ヶ月以内に同じ台詞を三回聞いているんだよな・・・。」

衛兵
「この重犯罪者め。今度こそ二度と戻ってくるんじゃないぞ。」
キュピル
「俺超無実!!釈放金超カエシテ」

ヘル
「(過酷な拷問でも受けたのかキュピルさんの精神がおかしくなっている・・・)」




・・・・。

・・・・・・・・・・。



やつれた顔でクエストショップのあった場所へと戻るキュピル。
キュピルが誘拐容疑で逮捕される前。そこにはテントしかなかったが、今は簡単な掘っ立て小屋が出来上がっていた。

キュピル
「お、いつのまに小屋が出来ているぞ!」
ファン
「この間のキュピルさんの報酬に加えて少しお金が貯まっていたので簡単な小屋を作ってみました。お布団も完備です。」
キュピル
「やっと背中を痛めずに寝ることが出来るのか・・・。でもお金がまとまってたなら釈放金もっと早く用意できたんじゃなかったのか?」
キュー
「おとーさんの救出よりふかふかのベッドに早く寝たかった。」
キュピル
「この親不孝ものめが。」


キュピルがキューを追い掛け回し、キューの髪の毛をワシャワシャかき乱す。
ギャー!というキューの悲鳴が当たりに響くがファンは無視してキュピルに話しかけ続けた。

ファン
「キュピルさん。キュピルさんが居なかった間に一つ問題が・・・。」
キュピル
「今度は一体何が起きたというんだ・・・逮捕はもう嫌だぞ・・・。」
キュー
「あー、お父さんが羨ましいな〜。」
キュピル
「え?なになに?朗報?」

キュピルの背後に誰かが忍び寄る。
気配に気づきゆっくりと後ろを振り返ると神妙な顔つきをしたルイの姿がそこにあった。

キュピル
「どうしたんだ?」

ルイ
「キュピルさん!私と輝月どっちを取るのか決めてください!!」
キュピル
「ファッ!?」




・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



キュピル
「ルイがこういう話を持ちかけてくるのは初めてじゃないから分かるんだけど・・・。今回はなんかいつもと様子が違ったなぁ。」

キュピルが掘っ立て小屋の中に作られた椅子に座り、机に片肘つきながら机を人差し指でリズムよく叩き続けていた。

ファン
「ルイさんの言い分として、キュピルさんとは許婚関係であると主張しています。なのに輝月が色目使ってキュピルさんを誘惑し出し抜こうとしているとのことです。」
キュピル
「どこから突っ込めばいいんだろう。」


ルイがウィルスによって触手を生やした奇形モンスターに変身してしまい、アノマラドに深い爪あとを残した黒い渦を作ったあの事件の事をキュピルは勿論覚えていた。
あの黒い渦の中で確かにルイに愛の告白をしたし、過去自分が子供の頃に交わした婚約の相手も実は幼少時代のルイだった事もきちんと把握している。

心の中でルイとはきっといつか結婚して家庭を築くのだろう。なんとなくそう思い続けてはいたが、いざその段階になると踏ん切りがつかなかった。
キュピルもルイもアノマラド大陸ではなく別の世界で生まれた。しかも人と人の間に生まれたのではなく作者と呼ばれる圧倒的な力を持つ支配者が遊び道具にするために人工的に作られた存在なのではとキュピルが心中深く疑っていた。母と父の記憶がないのがその証明なのではと信じている。
もしルイもそうだったとするならば、ルイと家庭を築く事すらも作者の手によってそうさせられたんじゃないのかと疑ってしまい、結果距離を離しそしてルイを悲しませてしまっている。
その悲しみを理解していないわけではないためキュピルもルイの悲痛の訴えを聞くたびにいつも胸を痛めつけていた。

ルイが許婚関係であると主張するのはとりあえずよくわかる。というよりキュピル本人がそう告げている。
問題なのは・・・

キュピル
「いつ輝月が俺に色目使ってたよ・・・。」
ファン
「キュピルさん気づいていません?」
キュピル
「え?何に?」
ファン
「輝月さんのキュピルさんに対する態度です。特に言葉遣いに大きな変化が現れているんですよ。」
キュピル
「・・・・そんなに気にするポイントか?ヘルだって俺に対しては敬語・・じゃないけど丁寧な言葉遣い使ってくれてるしそんな感じのもんだろう?」

ファンが長い首を横に振る。

ファン
「そんなレベルの変化じゃないですよ。輝月さん、他の人たちに対しては一人称を「ワシ」にしていますがキュピルさんを前にしたときだけ「私」と言っている事。気づきました?」
キュピル
「え?」

キュピルが顎をさすりながら記憶を掘り返していく。
・・・・確かに。言われて見れば自分と話しているときだけ『私』と言っていたような気がする。そうキュピルは思った。

ファン
「どうして私なんて一人称にしているか分かりますか?キュピルさん。」
キュピル
「さぁ・・・分からないなぁ。」
ファン
「少しでも自分を可愛くアピールしてキュピルさんの気を引きたいと思っているんですよ。」

数秒間沈黙の間が流れ、そして。

キュピル
「・・・・ま〜さか!あの輝月に限ってそんなことはないない。いつも仏頂面浮かべて下手なこと言うと刀の鞘で叩いてくる輝月だぞ。よもやそんなこと考えているはずが・・・。」

いきなり後ろでガシャンと刀を落す音が聞こえた。
キュピルが顔を引きつらせながら後ろを振り返ると、棚の後ろに隠れていた輝月がそこにはいた。

輝月
「・・・・・・・・。」
キュピル
「・・・・いつからそこに?」
ファン
「すいません、最初から・・・。輝月さんにオドサレテイエマセンデシタ」
輝月
「・・・このうつけもの!!」

輝月が細い腕を必死に振り回してキュピルの後頭部を叩き、そのまま外に飛び出してしまった。

キュピル
「あ〜・・・・・。」

その様子を見て本気だったのかと・・後悔するキュピル。
更に窓の外にルイが立っている事にも気づき、冷や汗の量が増える。

ルイ
「フフン」

キュピル
「(・・・・俺どうしたらいいんだ・・・・)」



続く



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